以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
[動力伝達装置]
この動力伝達装置1は、エンジンの動力を車軸に伝達する装置であり、例えば、エンジンと発電機とを併用して走行するハイブリッド車両に適用される。この動力伝達装置1は、トルクコンバータ2、モータ・ジェネレータ3および変速機4(図1参照)と、ECU(Electrical Control Unit)5(図2参照)と、シフト操作装置6(図3参照)とを備える。また、動力伝達装置1は、入力軸11側にてエンジン(図示省略)に連結されると共に、出力軸12側にて車軸(図示省略)に連結される。
トルクコンバータ2は、流体式のトルク伝達構造を有する(流体式トルクコンバータ)。このトルクコンバータ2は、インペラ21およびタービン22と、ステータ23と、ロックアップクラッチ24とを有する。インペラ21およびタービン22は、相対回転により作動流体を介して相互にトルクを伝達する回転部材である。トルクコンバータ2は、インペラ21側にてエンジンのクランクシャフト10に連結されると共に、タービン22側にて入力軸11に連結される。ステータ23は、インペラ21およびタービン22間にて回転可能に配置される回転部材である。このステータ23は、その固定状態にて、タービン22(インペラ21)からの排出流を整流してインペラ21(タービン22)に還元する。これにより、インペラ21およびタービン22間の伝達トルクが増幅される。ロックアップクラッチ24は、インペラ21とタービン22とを機械的に係合する機構である。
このトルクコンバータ2では、エンジンからのトルクによりインペラ21が回転すると、このインペラ21の回転が作動流体を介してタービン22に伝達されて、タービン22が回転する(正駆動状態)。これにより、エンジンからのトルクが増幅されて入力軸11に伝達される。また、上記の場合とは逆に、入力軸11(モータ・ジェネレータ)のトルクによりタービン22が回転すると、このタービン22の回転が作動流体を介してインペラ21に伝達されて、インペラ21が回転する(逆駆動状態)。これにより、入力軸11のトルクがエンジンに伝達される。
また、トルクコンバータ2では、正駆動状態(逆駆動状態)にてステータ23が回転すると、インペラ21からタービン22(タービン22からインペラ21)に伝達されるトルクが増幅される。また、ロックアップクラッチ24が係合状態にあるときには、インペラ21とタービン22とが機械的に連結されて、インペラ21およびタービン22間のトルク伝達が直接的に行われる。一方、ロックアップクラッチ24が解放状態にあるときには、インペラ21およびタービン22間のトルク伝達が作動流体を介して行われる。
モータ・ジェネレータ3は、回転機であり、例えば、交流同期型のモータ・ジェネレータにより構成される。このモータ・ジェネレータ3は、トルクコンバータ2の出力側にて入力軸11に連結される。また、モータ・ジェネレータ3は、電動機としての機能と発電機としての機能とを併せ持つ。例えば、モータ・ジェネレータ3は、その駆動により動力を発生して入力軸11にトルクを付与でき(電動機としての機能)、また、入力軸11からのトルクにより発電してバッテリ(図示省略)を充電できる(発電機としての機能)。
変速機4は、入力軸11の回転数を変速して出力軸12に出力する機構である。言い換えると、変速機4は、トルクコンバータ2あるいはモータ・ジェネレータ3の出力を変速して出力する機構であり、トルクコンバータ2およびモータ・ジェネレータ3の後段に連結されて配置される。この変速機4は、第一変速部41および第二変速部42がケース43内に収容されて構成される。第一変速部41は、ダブルピニオン型の遊星歯車411を主体として構成される。第二変速部42は、シングルピニオン型の遊星歯車421を主体として構成される。
第一変速部41では、遊星歯車411のキャリアCA1が入力軸11に連結され、また、サンギアS1がケース43に連結されて回転不能に固定される。また、リングギアR1が第二変速部42の遊星歯車421のサンギアS2にクラッチC1を介して連結される。また、キャリアCA1が回転体(第二変速部42の遊星歯車421のサンギア)S3にクラッチC4を介して連結される。また、リングギアR1がこの回転体S3にクラッチC3を介して連結される。また、この回転体S3が、ブレーキB1に連結されて、このブレーキB1の作動によりケース43に対して回転停止できる。
第二変速部42では、遊星歯車421のキャリアCA2が入力軸11にクラッチC2を介して連結される。また、このキャリアCA2が、ブレーキB2に連結されて、このブレーキB2の作動によりケース43に対して回転停止できる。また、リングギアR2が出力軸12に一体的に連結されて回転を出力できる。
なお、クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2は、摩擦係合要素であり、いずれも油圧シリンダにより摩擦係合できる多板式の油圧式摩擦係合装置である。
この変速機4では、各摩擦係合要素(クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2)が所定の作動係合表(図4参照)にしたがって係合あるいは解放されることにより、各変速段の設定が行われる。なお、図4の作動係合表では、「○」のときに、対応する摩擦係合要素が係合状態にあることを示し、空欄のときに、対応する摩擦係合要素が解放状態にあることを示している。
ECU5は、エンジン、トルクコンバータ2、モータ・ジェネレータ3および変速機4を制御する装置であり、各種の入力信号に基づいて所定の出力信号を出力する(図2参照)。このECU5は、例えば、後述するエンジンの始動/停止制御を行う。各種の入力信号には、例えば、モータ・ジェネレータ回転数センサ、エンジン水温センサ、シフトポジションセンサ、エンジン回転数センサ、エアコンスイッチ、マニュアルモードスイッチ、車速センサ、AT(Automatic Transmission)油温センサ、ECT(Electronic Controlled Transmission)スイッチ、サイドブレーキセンサ、フットブレーキセンサ、触媒温度センサ、アクセル開度センサ、カム角センサ、スノーモード設定スイッチ、車両加速度センサ、オートクルーズ設定信号、タービン回転数センサ、車重信号センサ、バッテリの充電状態を検出するSOC(State of Charge)センサなどからの入力信号が含まれる。出力信号には、例えば、電動エアコン、エンジンの点火信号、電子スロットル弁、レンジインジケータ、過給圧、ギア比インジケータ、スノーモードインジケータ、ATライン圧コントロールソレノイド、ABS(Antilock Brake System)アクチュエータ、マニュアルモードインジケータ、ATソレノイド、ATロックアップコントロールソレノイド、AT電動オイルポンプ、電動ヒータ、ギア比インジケータ、クルーズコントロール制御コンピュータなどへの出力信号が含まれる。
シフト操作装置6は、そのマニュアル操作によりシフトポジションを切り換える装置である(図3参照)。このシフト操作装置6は、例えば、運転席の側方に配設され、複数種類のシフトポジションを選択するためシフトレバー61を有する。このシフトレバー61の操作により、「P(パーキング)」、「R(リバース)」、「N(ニュートラル)」、「D(ドライブ)」または「M(マニュアル)」のいずれか一つのシフトポジションが選択されて設定される。「P」ポジションは、変速機4における第一変速部41および第二変速部42の動力伝達経路が遮断されたニュートラルポジションであり、且つ、出力軸12をロックするための駐車ポジションである。「R」ポジションは、後進走行のための後進走行ポジションである。「N」ポジションは、第一変速部41および第二変速部42の動力伝達経路が遮断されたニュートラルポジションである。「D」ポジションは、所定の変速比の範囲内にて自動変速制御を実行させ得る前進自動変速ポジションである。「M」ポジションは、手動変速操作モード(マニュアルモード)を成立させて変速レンジを設定するための前進自動変速走行ポジションである。
なお、この動力伝達装置1に連結されるエンジンには、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジン、ガスタービンエンジン、ジェットエンジンなどの内燃機関が含まれる。例えば、この実施の形態では、燃料噴射装置、吸排気装置および点火装置を備えた公知のエンジンが採用されている。
この動力伝達装置1では、エンジンからのトルクが、クランクシャフト10を介してトルクコンバータ2に入力され、トルクコンバータ2にて増幅されて入力軸11に入力される(図1参照)。そして、このトルクが変速機4にて変速されて出力軸12に出力される。これにより、エンジンからのトルクが車両の車軸に伝達される。
また、この動力伝達装置1では、バッテリ(図示省略)から電力が供給されて、モータ・ジェネレータ3が駆動される。これにより、モータ・ジェネレータ3が電動機として機能して、入力軸11に車両走行用の駆動力が付与される。このとき、モータ・ジェネレータ3による駆動力とエンジンによる駆動力との双方を用いて車両を走行させることが可能であり、また、いずれか一方の駆動力のみを用いて車両を走行させることも可能である。なお、この実施の形態では、後述する所定の変速線図(図5参照)に基づいて、いずれか一方の駆動力のみが用いられて車両が走行する。
また、この動力伝達装置1では、エンジンが駆動力を発生することにより、モータ・ジェネレータ3が駆動される。これにより、モータ・ジェネレータ3が発電機として機能して、バッテリが充電される。また、エンジンが停止されて回生走行が行われることにより、モータ・ジェネレータ3が発電機として機能してバッテリが充電される。
[変速線図]
図5は、エンジン走行領域およびモータ走行領域と変速パターンとの関係を示す変速線図である。また、同図では、変速機4が8段階の変速比を有しており、7つの変速線が示されている。また、同図において、点Aは、比較的低速にてエンジンを始動するときの走行ポイントを示し、点Bは、比較的高速にてエンジンを始動するときの走行ポイントを示している。なお、変速線図は、ECU5に記憶されている。
同図において、例えば、車両の発進時には、モータ・ジェネレータ3の駆動力のみが用いられて車両が走行する(モータ走行領域)。そして、車速およびアウトプットトルクの要求量(アクセル開度)が上昇した後に、モータ・ジェネレータ3の駆動力からエンジンの駆動力のみに切り換えられて車両が走行する(エンジン走行領域)。また、車両の急発進時や急加速時には、大きな駆動力が必要となるため、モータ・ジェネレータ3の駆動力とエンジンの駆動力との双方が用いられて車両が走行する(図示省略)。
なお、モータ走行領域では、バッテリが十分なSOC値を有することを条件となる。したがって、バッテリが十分なSOC値を有さない場合には、エンジンの駆動力が用いられる。
また、モータ・ジェネレータ3の駆動力とエンジンの駆動力との双方を用いて車両を走行させる場合には、変速線図の変速パターンが図5の変速パターンに対して相異する。すなわち、エンジンの駆動力を用いて車両を走行させるときは、低回転かつ高負荷となる走行領域にてエンジンを稼動させることにより、車両の駆動効率が向上する。逆に、モータ・ジェネレータ3の駆動力を用いて車両を走行させるときは、高回転かつ低負荷となる走行領域にてモータ・ジェネレータ3を駆動することにより、車両の駆動効率が向上する。したがって、モータ・ジェネレータ3の駆動力とエンジンの駆動力との双方を用いて車両を走行させる場合には、変速比を変更すべき車速およびアクセル開度(アウトプットトルクの要求量)が図5に示す変速パターンに対して相異する。
[トルクコンバータのステータ固定用ブレーキ]
また、この動力伝達装置1では、トルクコンバータ2がブレーキBsを有する(図1参照)。このブレーキBsは、ステータ23の回転を規制するための回転規制手段である。ブレーキBsは、その係合状態にてステータ23を固定して、ステータ23の回転を禁止する。また、ブレーキBsは、その解放状態にてステータ23を解放して、ステータ23の回転を許容する。また、ブレーキBsは、そのスリップ率を連続的に変化させ得る。
図6は、ブレーキBsのスリップ率と逆駆動時容量係数との関係を示すグラフである。同図に示すように、ブレーキBsのスリップ率が増加(減少)すると、トルクコンバータ2の逆駆動時容量係数が増加(減少)することが分かる。例えば、ブレーキBsのスリップ率が減少すると、ステータ23がフリー回転し難くなり、トルクコンバータ2内における作動油の流れが阻害されて、トルクコンバータ2の逆駆動時容量係数が小さくなる。逆に、ブレーキBsのスリップ率が増加すると、トルクコンバータ2の逆駆動時容量係数が大きくなる。また、ブレーキBsのスリップ率を制御することにより、トルクコンバータ2の容量係数を連続的に制御できることが分かる。また、ブレーキBsのスリップ率を0にしてステータ23を固定すると、トルクコンバータ2の逆駆動時トルク比は1に近づく。また、正駆動時のトルク増幅機能が通常通り確保される。
図7は、トルクコンバータ2の逆駆動時における比Ne/Ntとトルク比との関係を示すグラフである。図8は、トルクコンバータ2の逆駆動時における比Ne/Ntと容量係数との関係を示すグラフである。これらの図において、比Ne/Ntは、エンジン回転数Neとタービン回転数Ntとの比である。また、トルクコンバータ2のトルク比は、タービン22のトルクとインペラ21のトルクとの比である。
この動力伝達装置1では、トルクコンバータ2の正駆動時(インペラ21からタービン22に向かって駆動力が伝達されるとき)にて、ブレーキBsが係合状態に設定される。すると、ステータ23が固定されて、トルクコンバータ2のトルク増幅機能が通常どおり確保される。
一方、トルクコンバータ2の逆駆動時(タービン22からインペラ21に向かって駆動力が伝達されるとき)には、ブレーキBsのスリップ率を制御することにより、トルクコンバータ2の逆駆動時容量係数を連続的に制御できる(図6参照)。このとき、ブレーキBsのスリップ率を小さく設定してステータ23を係合状態(ロック状態)に近づけると、トルクコンバータ2のトルク比が1.0に近づき(図7参照)、また、トルクコンバータ2の逆駆動時容量係数が低下する(図8参照)。かかる状態では、例えば、車両のコースト走行時(アクセルオフの惰性走行時)にてタイヤからの逆駆動トルクがエンジンに作用しても、エンジンのフリクショントルクの方が強いため、エンジンが回転しない。これにより、エンジンの引きずりトルク(回転抵抗)が低減され、その分、モータ・ジェネレータ3の回生量を増加することができる。
なお、この実施の形態では、ステータ23の回転を規制するための回転規制手段として、摩擦係合要素である湿式の油圧ブレーキBsが採用されている。しかし、これに限らず、回転規制手段として、例えば、電磁クラッチが採用されても良い。
[エンジンの始動/停止制御]
近年の動力伝達装置では、車両走行中にモータ・ジェネレータを用いてエンジンを始動あるいは停止させる制御が行われる場合がある。例えば、車両の走行状態(車速およびアクセル開度)がモータ走行領域からエンジン走行領域に移行するときに、モータ・ジェネレータを用いてエンジンを始動させる制御が行われる(車両走行時におけるエンジンの始動制御)(図5参照)。これにより、車両の駆動力源がモータ・ジェネレータからエンジンに切り替えられる。逆に、車両の走行状態がエンジン走行領域からモータ走行領域に移行するときに、モータ・ジェネレータを用いてエンジンの回転数を制御しつつエンジンを停止させる制御が行われる(車両走行時におけるエンジンの停止制御)。これにより、車両の駆動力源がエンジンからモータ・ジェネレータに切り替えられる。
ここで、上記のようなモータ・ジェネレータを用いたエンジンの始動制御あるいは停止制御では、トルクコンバータが逆駆動状態となる。かかる逆駆動状態では、一般に、ロックアップクラッチを係合状態として、モータ・ジェネレータからエンジンへの駆動力伝達が確保されている。
しかしながら、エンジンの始動時あるいは停止時には、モータ・ジェネレータからエンジンへの駆動力伝達によりショックが発生する。すると、上記の構成では、発生したショックがロックアップクラッチの係合により乗員室に伝達される可能性がある。
そこで、この動力伝達装置1では、モータ・ジェネレータを用いたエンジンの始動制御時あるいは停止制御時にて発生するショックの伝達を抑制するために、以下の制御が行われる(図9参照)。
ステップST1では、シフトポジションが「D」ポジションに設定されて車両が走行しているときに、モータ・ジェネレータ3を用いたエンジンの始動制御あるいは停止制御が必要であるか否かが判定される。例えば、車両走行時にて駆動力源をモータ・ジェネレータ3からエンジンに切り替える場合には、モータ・ジェネレータ3を用いたエンジンの始動制御が必要となる。逆に、車両走行時にて駆動力源をエンジンからモータ・ジェネレータ3に切り替える場合には、モータ・ジェネレータ3を用いたエンジンの停止制御が必要となる。なお、ステップST1の判定条件の具体例については、後述する。このステップST1にて、肯定判定が行われた場合には、ステップST2に進み、否定判定が行われた場合には、処理が終了される。
ステップST2では、車速が所定の閾値V1よりも小さいか否かが判定される。この判定は、例えば、車速センサの出力値と所定の閾値V1との比較により行われる。なお、車両走行時には、車速が0にならない。この判定は、車両が高速走行状態にないことの確認を目的とする。したがって、閾値V1は、例えば、車速60[km/h]を基準として規定される。このステップST2にて、肯定判定が行われた場合には、ステップST3に進み、否定判定が行われた場合には、ステップST8に進む。
ステップST3では、変速機4による変速比の変更が必要か否かが判定される。この判定は、車速(車速センサの出力値)およびアウトプットトルク要求量(アクセル開度センサの出力値)と、所定の変速線図(図5参照)とに基づいて行われる。なお、一般に、エンジン走行時には、低回転高負荷領域でエンジンを作動させることが効率的であり、逆に、モータ走行時には、高回転低負荷領域でモータ・ジェネレータ3を作動させることが有利である。このため、エンジン走行領域とモータ走行領域とでは、使用すべき変速段が相異する(図5参照)。したがって、車速およびアウトプットトルク要求量の条件が一定であっても、変速比の変更が必要となる場合がある。このステップST3にて、肯定判定が行われた場合には、ステップST4に進み、否定判定が行われた場合には、ステップST5に進む。
ステップST4では、変速機4により変速比の変更が行われる。変速比の変更の具体例については、後述する。この変速比の変更が行われると、モータ・ジェネレータ3と出力軸12との連結が一時的に解除されて、モータ・ジェネレータ3が出力軸12に対して自由に回転できる。また、変速比の変更により、変速比が駆動力源(エンジンあるいはモータ・ジェネレータ3)に対して適正化される。このステップST4の後に、ステップST6に進む。
ステップST5では、ギアニュートラル制御が行われる。ギアニュートラル制御は、変速機4の係合要素(クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2)の油圧を低下させて、変速機4のトルク容量を低下させる制御である。なお、ギアニュートラル制御が行われると、変速機4が完全ニュートラル状態あるいは一部のトルク容量を残した状態となる。このため、エンジンの始動後あるいは停止後に再び係合要素の油圧を上昇させて、変速比を元に戻す制御が必要となる。このステップST5の後に、ステップST6に進む。
ステップST6では、トルクコンバータ2のステータ23の回転を許容する制御が行われる。例えば、ブレーキBsのスリップ率を増加させる制御、あるいは、ブレーキBsの油圧をOFF(解放状態)にする制御が行われる。これにより、トルクコンバータ2の容量係数が増加する。また、ステータの制御では、エンジン回転数が十分に低いので、車速が低いときは、ロックアップクラッチをONにする。このステップST6の後に、ステップST7に進む。
ステップST7では、モータ・ジェネレータ3によりエンジンを始動あるいは停止させる制御が行われる。このとき、トルクコンバータ2のロックアップクラッチが解放しているときは、エンジンの始動時あるいは停止時にて発生したショックがトルクコンバータ2に吸収されて緩和される。これにより、エンジンの始動時あるいは停止時におけるショックの伝達が抑制される。
ステップST8では、トルクコンバータ2のステータ23の回転を許容する制御が行われる。例えば、ブレーキBsのスリップ率を増加させる制御、あるいは、ブレーキBsの油圧をOFF(解放状態)にする制御が行われる。これにより、トルクコンバータ2の容量係数が増加する。なお、このステップST8では、長時間の変速によるタイヤからのトルク抜けを回避するために、変速比の変更が行われない。このステップST8の後に、ステップST9に進む。
ステップST9では、モータ・ジェネレータ3によりエンジンを始動あるいは停止させる制御が行われる。このとき、先のステップST8により、トルクコンバータ2のロックアップクラッチが解放しているので、エンジンの始動時あるいは停止時にて発生したショックがトルクコンバータ2に吸収されて緩和される。これにより、エンジンの始動時あるいは停止時におけるショックの伝達が抑制される。なお、ステップST9では、車速が所定の閾値V1以上であるため(ステップST2の否定判定)、エンジン回転数がエンジンを始動可能な回転数まで容易に上昇する。
なお、この実施の形態では、上記のように、ステップST6およびステップST8にて、ステータ23の回転を許容することにより、トルクコンバータ2の容量係数を増加させる制御が行われている。かかる構成では、エンジンの始動時あるいは停止時にて発生したショックがトルクコンバータ2に吸収されて緩和されるので、エンジンの始動時あるいは停止時におけるショックの伝達が抑制される点で好ましい。
[実施例1]
図10は、図1に記載した動力伝達装置の実施例1を示すタイムチャートである。同図は、逆駆動時にてSOC値が低下したときに、モータ・ジェネレータが用いられてエンジンの始動制御が行われる場合を示している。以下、この実施例1について、図9のフローチャートを参照しつつ説明する。
まず、初期状態(t=t0)では、シフトポジションが「D」ポジションに設定されて、車両が走行している。このとき、車速およびアウトプットトルク要求量がモータ走行領域(図5の点A)にある。このため、エンジンが停止状態(エンジン回転数が0[rpm])にあり(図10(a)参照)、モータ・ジェネレータ3の駆動力のみが用いられて車両が走行している(図10(b)参照)。また、変速機4では、変速比の変速信号が2ndに設定されて(図10(d)参照)、各係合要素(クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2)が所定の係合状態(図4参照)に設定されている。具体的には、ブレーキB1の油圧PB1がON(係合状態)となり、クラッチC3の油圧PC3がOFF(解放状態)となっている(図10(e)参照)。また、トルクコンバータ2では、ブレーキBsの油圧がON(係合状態)となっており(図10(f)参照)、ロックアップクラッチ24の油圧がOFF(解放状態)となっている(図10(g)参照)。このため、トルクコンバータ2の逆駆動状態におけるトルク容量が低くなっている。また、SOC値が所定の閾値S1よりも大きく、十分に残存している(図10(h)参照)。
次に、時間t=t1にて所定の判定条件が満たされると、エンジンの始動制御が必要であると判定(ステップST1の肯定判定)される(図9参照)。例えば、この実施例1では、SOC値と所定の閾値S1とが比較され、SOC値が所定の閾値S1以下となったときに(図10(h)参照)、ステップST1の肯定判定が行われる。なお、SOC値は、SOCセンサの出力値としてECU5に取得されている。
ステップST1にて肯定判定が行われると、車速が閾値V1よりも低いこと(ステップST2の肯定判定)および変速比の変更が必要であること(ステップST3の肯定判定)を条件として、変速比の変更が行われる(ステップST4)。この変速比の変更は、駆動力源をモータ・ジェネレータ3からエンジンに切り替えるために行われる。
例えば、この実施例1では、ECU5が変速機4の変速比を2ndから3rdに変更するための変速信号を出力し(図10(d)参照)、この変速信号により、変速機4の各係合要素(クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2)が駆動制御される。具体的には、ブレーキB1の油圧PB1がOFF(解放状態)に設定され(t=t1)、クラッチC3の油圧PC3がON(係合状態)に設定される(t=t2〜t8)(図10(e)参照)。これにより、変速比の変更が行われる。また、変速比の変更により、モータ・ジェネレータ3と出力軸12との連結が一時的に解除されて、モータ・ジェネレータ3が出力軸12に対して自由に回転できるようになる。
また、クラッチC3の油圧PC3をON状態とするときに、アンダーラップ状態にて油圧PC3の立ち上げが行われる(図10(e)のPC3の実線部参照)。すなわち、解放圧と係合圧とのラップ状態がアンダーラップ状態となるように、油圧PC3の立ち上げが行われる。かかる構成では、クラッチC3の立ち上がり時間が長い。したがって、変速比の変更(ステップST4)にかかる変速時間が、駆動力源の切り替えを行わないとき(ステップST1の否定判定)の変速比の変更にかかる変速時間(図10(e)のPB1およびPC3の波線部参照)と比較して、長く設定される(図10(e)のPC3の実線部参照)。すると、変速比の変更時にて、変速機4がギアニュートラル状態(モータ・ジェネレータ3と出力軸12との連結が一時的に解除された状態)あるいは弱係合状態となる時間が長くなる。これにより、エンジン回転数の上昇に必要な時間が確保されるので、モータ・ジェネレータ3を用いたエンジン回転数の制御が適正に行われる。
次に、モータ・ジェネレータ3の回転数を一時的に減少させる制御が行われる(t=t2)(図10(c)参照)。この制御は、このときのエンジン回転数が0であること(図10(a)参照)から、エンジン始動時に発生するショックを緩和するために行われる。
次に、トルクコンバータ2のステータ23の回転を許容する制御(ステップST6)が行われる。具体的には、ブレーキBsの油圧をOFF(解放状態)にする制御が行われる(t=t3)(図10(f)参照)。これにより、トルクコンバータ2の容量係数が増加する。なお、このとき、ブレーキBsの油圧をOFFにする制御に代えて、ブレーキBsのスリップ率を増加させる制御が行われても良い(図示省略)。かかる構成としても、トルクコンバータ2の容量係数を増加させ得る。
同時に、モータ・ジェネレータ3を用いたエンジンの始動制御(ステップST7)が行われる(t=t3〜t6)。このとき、ステップST6により、トルクコンバータ2のロックアップクラッチが解放しているので、エンジンの始動時あるいは停止時にて発生したショックがトルクコンバータ2に吸収されて緩和される。これにより、エンジンの始動時あるいは停止時におけるショックの伝達が抑制される。また、トルクコンバータ2の容量係数が増加した状態では、モータ・ジェネレータ3の回転数を上昇させたときに、エンジンの回転数を上昇させる制御を行い得る。
例えば、この実施例1では、まず、モータ・ジェネレータ3のトルクを増加させることにより、エンジンのトルクアシストが行われて、エンジンの始動が開始される(t=t3〜t5)(図10(b)参照)。このトルクアシストのトルクは、エンジン回転数を上昇させるためのイナーシャルトルクに相当する。したがって、モータ・ジェネレータ3のトルクは、モータ走行時における正トルクにイナーシャルトルクを付加した大きさまで増加される。このトルクアシストにより、アウトプットトルクの低下が抑制されて、減速感が低減される。
次に、エンジン回転数が所定の閾値を越えると、燃料点火が行われて、エンジンの自立運転が開始される(t=t5)(図10(a)参照)。すると、モータ・ジェネレータ3のトルクがモータ走行時の正トルクから負トルクに反転して、トルクコンバータ2の駆動状態が逆駆動状態から正駆動状態に移行する(図10(b)参照)。また、モータ・ジェネレータ3の回転数が3rdの変速比に同期する回転数に制御され(図10(c)参照)、これと共に、変速機4のクラッチC3の油圧PC3が増加されて、必要なトルク容量が確保される(図10(e)参照)。そして、モータ・ジェネレータ3の駆動モードが動力発生状態から充電状態に切り替えられることにより、バッテリの充電が開始されてSOC値が上昇する(図10(h)参照)。
なお、この実施例1では、上記のように、モータ・ジェネレータ3のトルクアシストによりエンジンの始動制御(ステップST7)が行われる。しかし、これに限らず、プッシュスタート(エンジンの押し掛け)により、エンジンの始動制御(ステップST7)が行われても良い。
[実施例2]
図11は、図1に記載した動力伝達装置の実施例2を示すタイムチャートである。同図は、「D」ポジションでの回生走行時にて、アウトプットトルク要求量の増加(アクセルON)によりエンジンの始動が必要となった場合を示している。以下、この実施例2について、図9のフローチャートを参照しつつ説明する。
まず、初期状態(t=t0)では、シフトポジションが「D」ポジションに設定されて、車両が走行している。また、車速およびアウトプットトルク要求量がエンジン走行領域(図5の点B)にある。ただし、車両がエンジンを停止させた状態で(図11(a)参照)、アクセル開度をOFFにしたまま回生走行している(図11(h)参照)。したがって、モータ・ジェネレータ3には、負トルクが作用している(図11(b)参照)。また、変速機4では、変速比の変速信号が5thに設定されて(図11(d)参照)、各係合要素(クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2)が所定の係合状態(図4参照)に設定されている。具体的には、クラッチC1の油圧PC1およびクラッチC2の油圧(図示省略)がON(係合状態)となり、クラッチC4の油圧PC4がOFF(解放状態)となっている(図11(e)参照)。また、トルクコンバータ2では、ブレーキBsの油圧がON(係合状態)となっており(図11(f)参照)、ロックアップクラッチ24の油圧がOFF(解放状態)となっている(図11(g)参照)。このため、トルクコンバータ2の逆駆動状態におけるトルク容量が低くなっている。
次に、時間t=t1にて所定の判定条件が満たされると、エンジンの始動制御が必要であると判定(ステップST1の肯定判定)される(図9参照)。例えば、この実施例2では、アクセル開度がONとなったときに(図11(h)参照)、ステップST1の肯定判定が行われる。なお、アクセル開度は、アクセル開度センサの出力値としてECU5に取得されている。
ステップST1にて肯定判定が行われると、車速が閾値V1よりも低いこと(ステップST2の肯定判定)および変速比の変更が必要であること(ステップST3の肯定判定)を条件として、変速比の変更が行われる(ステップST4)。この変速比の変更は、回生走行からエンジンを駆動力源としたエンジン走行に切り替えるために行われる。
例えば、この実施例2では、ECU5が変速機4の変速比を5thから6thに変更するための変速信号を出力し(図11(d)参照)、この変速信号により、変速機4の各係合要素(クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2)が所定の係合状態に設定される。具体的には、クラッチC1の油圧PC1がOFF(解放状態)に設定され(t=t4〜t8)、クラッチC4の油圧PC4がON(係合状態)に設定される(t=t5〜t8)(図11(e)参照)。これにより、変速比の変更が行われる。
なお、この変速比の変更(ステップST4)は、後述するエンジンの始動制御(ステップST7)によりエンジンの回転数が上昇し始めた後(t=t2以降)にシーケンス的に行われる(図11(a)および(e)参照)。
また、トルクコンバータ2のステータ23の回転を許容する制御(ステップST6)が行われる。具体的には、ブレーキBsの油圧をOFF(解放状態)にする制御が行われる(t=t2〜t4)(図11(f)参照)。これにより、トルクコンバータ2の逆駆動時容量係数が増加する。なお、このとき、ブレーキBsの油圧をOFFにする制御に代えて、ブレーキBsのスリップ率を増加させる制御が行われても良い(図示省略)。かかる構成としても、トルクコンバータ2の容量係数を増加させ得る。
また、モータ・ジェネレータ3を用いたエンジンの始動制御(ステップST7)が行われる(t=t2〜t9)。このとき、ステップST6により、トルクコンバータ2のロックアップクラッチが解放しているので、エンジンの始動時あるいは停止時にて発生したショックがトルクコンバータ2に吸収されて緩和される。これにより、エンジンの始動時あるいは停止時におけるショックの伝達が抑制される。また、トルクコンバータ2の容量係数が増加した状態では、モータ・ジェネレータ3の回転数を上昇させたときに、エンジンの回転数を上昇させて制御できる。
例えば、この実施例2では、まず、モータ・ジェネレータ3のトルクを負トルクから正トルクに反転させることにより、エンジンのトルクアシストが行われて、エンジンの始動が開始される(t=t2)(図11(b)参照)。このトルクアシストのトルクは、エンジン回転数を上昇させるためのイナーシャルトルクに相当する。このトルクアシストにより、アウトプットトルクの低下が抑制されて、減速感が低減される。
次に、エンジン回転数が所定の閾値を越えると、燃料点火が行われて、エンジンの自立運転が開始される(t=t4)(図11(a)参照)。また、エンジンの始動後に、モータ・ジェネレータ3によるトルクアシストが停止される(t=t3)(図11(b)参照)。そして、エンジン回転数が十分に上昇した後に、ロックアップクラッチ24がON(係合状態)に設定される(t=t8)(図11(g)参照)。
なお、この実施例2では、上記のように、モータ・ジェネレータ3のトルクアシストによりエンジンの始動制御(ステップST7)が行われる。しかし、これに限らず、プッシュスタート(エンジンの押し掛け)により、エンジンの始動制御(ステップST7)が行われても良い。
また、この実施例2では、回生走行時(t=t0)にて、変速機4の変速比が5thに設定される。かかる構成では、変速比が6thである場合と比較して、モータ・ジェネレータ3を高回転数低負荷にて稼動させ得る。これにより、モータ・ジェネレータ3の発電が効率的に行われる。一方、モータ・ジェネレータ3を用いたエンジンの始動制御時(t=t1以降)には、変速機4の変速比が6thに設定されることが好ましい(図11(d)参照)。これにより、モータ・ジェネレータ3を低回転数高負荷にて稼動させ得るので、エンジンの始動制御が効率的に行われる。
また、この実施例2では、上記のように、エンジンの始動制御(ステップST7)によりエンジンの回転数が上昇し始めた後(t=t2以降)に、変速比の変更(ステップST4)がシーケンス的に行われる(図11(a)および(e)参照)。かかる構成では、高速での車両走行時にて、長時間に渡って変速比の変更制御が行われることを回避できる点で好ましい。しかし、これに限らず、モータ・ジェネレータ3をエンジン回転数の制御に用いる場合には、このエンジン回転数の制御に先立って変速比の変更が行われても良い。なお、変速比の変更が不要である場合(ステップST3の否定判定)には、変速比の変更が行われない。
[その他]
なお、上記した実施例1および実施例2では、モータ・ジェネレータを用いたエンジンの始動制御について説明したが、同様に、モータ・ジェネレータを用いたエンジンの停止制御にも、上記の制御を適用し得る。
[効果]
以上説明したように、この動力伝達装置1では、トルクコンバータ2のステータ23の回転を規制する回転規制手段(例えば、ブレーキBs、電磁クラッチなど)が設置され、且つ、モータ(例えば、モータ・ジェネレータ3)の駆動力を用いたエンジンの始動制御時あるいは停止制御時にて、回転規制手段がステータ23の回転を許容する(ステップST6)(図9参照)。かかる構成では、ステータ23が回転できるので、ステータ23が固定状態にあるときと比較して、トルクコンバータ2の容量係数が変化する。この容量係数の変化によりエンジン回転数が増加あるいは減少し、エンジンの始動あるいは停止が実行される(ロックアップクラッチが解放した状態で、エンジンが始動する)。よって、ロックアップクラッチを係合する必要がない。したがって、エンジンの始動時あるいは停止時にて発生したショックがトルクコンバータ2に吸収されて緩和される。これにより、エンジンの始動時あるいは停止時におけるショックの伝達が抑制される利点がある。
また、トルクコンバータ2のロックアップクラッチが解放した状態でエンジンが始動する構成では、モータの回転数を上昇させたときに、エンジンの回転数を上昇させて制御できる。これにより、モータによるエンジンの回転数制御の制御性を確保できる利点がある。
また、この動力伝達装置1では、エンジンの始動制御時あるいは停止制御時にて、変速機4により変速比の変更が行われる(ステップST4)(図9参照)。かかる構成では、変速比の変更により、モータ・ジェネレータ3と出力軸12との連結が一時的に解除されて、モータ・ジェネレータ3が出力軸12に対して自由に相対回転できる。すると、モータ・ジェネレータと出力軸とが連結された状態でモータ・ジェネレータが駆動される構成と比較して、モータ・ジェネレータ3の回転数制御の自由度が向上する利点がある。例えば、モータ・ジェネレータと出力軸とが連結された状態では、変速機の機械的連結によりモータ・ジェネレータの回転数が制限されるため、モータ・ジェネレータの回転数を自由に制御できないという問題がある。
また、上記の構成では、エンジンの始動制御あるいは停止制御と駆動力源(エンジンおよびモータ・ジェネレータ3)の切り替えに伴う変速比の変更(ステップST4)とを同時に行い得るので、エンジンの始動制御あるいは停止制御と必要な変速比の変更とがシーケンスに行われる構成と比較して、応答性に優れるという利点がある。
また、この動力伝達装置1では、エンジンの始動制御時あるいは停止制御時にて駆動力源を変更するときに、エンジンの動作点をエネルギー効率的に好ましい動作点に設定するために、変速比の変更が行われる。例えば、実施例2では、モータ・ジェネレータ3を用いたエンジンの始動制御時(t=t1以降)にて、変速機4の変速比が5thから6thに変更されている(図11(d)参照)。これにより、モータ・ジェネレータ3が低回転数高負荷にて稼動するので、エンジンの始動制御が効率的に行われる。かかる構成では、制御の応答性が向上することにより、燃費が向上する利点がある。
また、この動力伝達装置1では、エンジンの始動制御時あるいは停止制御時における変速比の変更(ステップST4)と、それ以外の変速比の変更とで、変速比の変更にかかる制御が相異する(図10(e)参照)。
例えば、実施例1の動力伝達装置1では、変速比の変更(ステップST4)にかかる変速時間が、駆動力源の切り替えを行わないときの変速比の変更にかかる変速時間と比較して、長く設定される(図10(e)のPC3の実線部参照)。かかる構成では、変速機4がギアニュートラル状態(モータ・ジェネレータ3と出力軸12との連結が一時的に解除された状態)あるいは弱係合状態となる時間(変速時間)が、長くなる。これにより、エンジン回転数の上昇に必要な時間が確保されるので、モータ・ジェネレータ3を用いたエンジン回転数の制御が適正に行われる利点がある。
また、この動力伝達装置1では、エンジンとモータ・ジェネレータ3との間に流体式のトルクコンバータ2を備える構成において、エンジンの始動時あるいは停止時にて、トルクコンバータ2のインペラ21およびタービン22の相対回転数が制限される(ステップST6およびステップST8)。
例えば、実施例1の動力伝達装置1では、上記したように、トルクコンバータ2のステータ23の回転を規制するブレーキBsが設置され、エンジンの始動制御時あるいは停止制御時にて、ブレーキBsがステータ23の回転を許容する(ステップST6)ことにより、インペラ21およびタービン22の相対回転数が制限されている(図9参照)。これにより、エンジンの始動時あるいは停止時におけるショックの伝達が抑制されている。
しかし、これに限らず、エンジンの始動時あるいは停止時にて、インペラ21およびタービン22がロックアップクラッチ24を介して係合されることにより、インペラ21およびタービン22の相対回転数が制限されても良い。かかる構成としても、エンジンの始動時あるいは停止時におけるショックの伝達が抑制される。
また、この動力伝達装置1では、エンジンの始動時あるいは停止時にて、車両の車速が速いとき(ステップST2の否定判定)は、変速比の変更が行われずに、インペラ21およびタービン22の相対回転数が制限される(ステップST8)(図9参照)。これにより、長時間の変速によるタイヤからのトルク抜けが回避される。例えば、車両の車速が速いときに、変速比の変更を行いつつインペラおよびタービンの相対回転数を制限すると、変速比の変更時間が長いとき(例えば、図10(e)参照)に、タイヤからのトルク抜けが発生するおそれがある。
また、上記の構成では、エンジンの始動時あるいは停止時にて、プッシュスタートあるいはモータ・ジェネレータ3(ステップST9)によるトルクアシストが実施されることが好ましい。かかる構成では、トルクアシストにより、エンジンのフリクション分のトルクが補われる。なお、このとき、モータ・ジェネレータ3によるエンジン回転数の制御が行われない。また、車速が十分に高い場合には、エンジン回転数も高くなるため、エンジン回転数の制御が不要である。
また、上記の構成では、エンジンの始動制御時あるいは停止制御時にて、ブレーキBsがステータ23の回転を許容する(ステップST8)ことにより、あるいは、インペラ21およびタービン22がロックアップクラッチ24を介して係合されることにより、インペラ21およびタービン22の相対回転数が制限されても良い。これらにより、エンジンの始動時あるいは停止時におけるショックの伝達が抑制される。
また、この動力伝達装置1では、車両走行時にて、モータ・ジェネレータ3により力行運転が行われても良いし、回生走行が行われても良い。