JP2011050956A - 小気孔分子篩を有する混合マトリックス膜、その膜の製造方法及びその膜の使用方法 - Google Patents

小気孔分子篩を有する混合マトリックス膜、その膜の製造方法及びその膜の使用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の膜と比較して、優れた分離性能を与える分子篩を用いた混合マトリックス膜を提供する。
【解決手段】連続相有機重合体及びその中に分散した小気孔分子篩を含む混合マトリックス膜が与えられている。分子篩は3.6Å以下の最大結晶学的自由短径を有する。これらの分子篩を連続相重合体の中に適切に分散させると、その膜は混合マトリックス膜効果、即ち、分子篩を含まない元の膜に対し少なくとも10%の選択性の増大を示すであろう。最後に、二種類以上のガスを含む混合物からガスを分離するために、そのような混合マトリックス膜の製造及び使用方法も開示されている。
【選択図】なし

Description

本発明は、一般にガス分離膜及びその製造と使用方法に関し、特に、膜のガス分離性を向上させるため分子篩を用いた混合マトリックス膜(mixed matrix membrane)に関する。
多くの文献が、分子篩が中に分散した連続的重合体相キャリヤーを含む混合マトリックス膜を使用することを教示している。それらの例には、ロジェイ(Rojey)その他による米国特許第4,925,459号及びクルプラチパニア(Kulprathipanja)その他による米国特許第5,127,925号明細書が含まれる。それらの膜は、一般に異なった有効直径を有する少なくとも二種類のガス成分を含む混合物又は供給原料からガスを分離するのに特に有用である。適当な条件下で、分子篩は重合体膜を通る希望のガス成分の相対的有孔透過率を増大し(且つ/又は他のガス成分の有効透過率を減少し)、それにより重合体膜材料のガス分離(選択性)を増大することができる。もし混合マトリックス膜が、分子篩を含まない同じ膜よりも大きな選択性を持つならば、その混合マトリックス膜は、「混合マトリックス」効果を示すものとして言及する。
膜の性能は、その膜を通るガス成分の流量(flux)によって特徴付けられる。この流量は、与えられた成分の圧力及び厚さについて標準化した流量である透過率(P)と呼ばれる量として表すことができる。ガス混合物の分離は、一つの成分についての透過速度を、他の成分の透過速度よりも大きくすることができる(即ち、一層高い透過率をもつ)膜材料により達成される。透過流中で或る成分が別の成分よりも富むようにする膜の効率は、選択性と呼ばれる量として表すことができる。選択性は、膜を通るガス成分の透過率の比(即ち、A及びBを二つの成分としてP/P)として定義することができる。膜の透過率及び選択性は、膜材料自身の材料特性であり、従って、これらの性質は、理想的には供給圧力、流量、及び他の工程条件により一定になる。しかし、透過率及び選択性は、両方とも温度依存性である。希望の成分に対し大きな透過率(生産性)を維持しながら、その希望の成分に対し大きな選択性(効率)を有することは膜材料にとって望ましいことである。
ハッセ(Hasse)その他による、「キャバザイト型分子篩を配合した混合マトリックス膜」(Mixed Matrix Membranes Incorporating Chabazite Type Molecular Sieves)と題する米国特許第6,626,980号明細書は、分子篩の気孔の大きさが、膜の性能にとって重要であることを示唆している。或る大きさの分子が分子篩の骨格を出入りすることができるかどうかを気孔孔径が決定する。ハッセその他は、実際に、そのような骨格を定めるリングの大きさが非常に僅かでも減少すると、分子篩を通る特定のガス成分の運動を効果的に妨げるか又は遮断することができることが観察されていることを述べている。ハッセその他は、ガス分離のためにキャバザイト型構造を有するゼオライト分子篩、SSZ−13を用いることを教示している。このキャバザイト型構造は、約3.8×3.8Åの大きさを有する8員環に基づく気孔を有する。この特別なSSZ−13分子篩の合成は、米国特許第4,554,538号明細書に記載されている。
透過率が充分なものになるように、充分大きな気孔を中に有する分子篩を更に選択する必要がある。透過速度が不充分であると、膜をガス分離に用いるのに経済的に実行できなくなることがある。それに対し、膜の選択性が不充分であると、希望しないガス成分が余りにも多く膜を透過することもあるので、その膜はやはり経済的に利用できなくなるであろう。本発明は、従来の膜と比較して、優れた分離性能を与える構造、組成、及び他の特徴を有する分子篩を用いた混合マトリックス膜を与える。更に、ガス分離のためのこれらの膜を製造及び使用する方法も教示する。
小さな気孔のアルミナ含有分子篩が中に分散した連続相有機重合体を含む混合マトリックス膜が与えられる。それら分子篩は、理想的には3.6Å以下の最大結晶学的自由短径(a largest minor crystallographic free diameter)を有する。
これらの分子篩が連続相重合体に適当に内部分散されると、膜は、理想的には混合マトリックス効果を示すであろう。これら分子篩の気孔の最大結晶学的自由短径は、3.6Å、3.4Å位に小さく、3.0Å以下位にさえなることがある。或る場合には、断面が円状ではなく全体的に楕円又は長円である気孔を有するのが有利である。分子篩の例には、次のIZA(国際ゼオライト協会)(International Zeolite Association)構造型のもの:ERI、DDR、RHO、PAU、LEV、MER、AFX、AFT、及びGIS;が含まれるが、それらに限定されるものではない。好ましい分子篩の例には:AlPO−17、SAPO−17、MeAPSO−17、CVX−7、ZSM−58、LZ−214、ECR−18、SAPO−34、ゼオライトW、SAPO−56、AlPO−52、及びSAPO−43;が含まれる。一層好ましい分子篩は、CVX−7、SAPO−17、及びMeAPSO−17であり、CVX−7が最も好ましい分子篩である。
本発明の別の態様として、小さな気孔を有する分子篩を用いた混合マトリックス膜を製造する方法も教示される。最後に、二種類以上のガス成分を含有する混合物からガスを分離するためにそのような混合マトリックス膜を用いる方法も記載されるであろう。ここに記載する膜を用いて、大きさが異なるガス、例えば、窒素と酸素、或いはエチレンとメタンを分離することができる。一つの好ましい態様として、メタンと二酸化炭素を含有するガス混合物は、混合マトリックス膜を通る気相法によりメタンに富むようにすることができる。別の場合として、限定ではなく例として、ガス混合物からヘリウム、水素、硫化水素、酸素、及び/又は窒素を分離するのにそれら膜を用いることができる。
本発明の一つの目的は、3.6Å以下の最大結晶学的自由短径を有する小気孔分子篩を用いた混合マトリックス膜を与えることにある。
別の目的は、粒径及びアスペクト比が小さい分子篩を有する混合マトリックス膜を与えることである。
本発明を実施するのに最良の方式
本発明に従って製造された混合マトリックス膜は、連続相重合体中に分離させた小気孔分子篩を含む。
理想的には、本発明の分子篩は、3.6Åより小さく、一層好ましくは3.0〜3.6Åの最大結晶学的自由短径を有する気孔を有する。分子篩の気孔の結晶学的自由直径についての記述は、例えば、C.ベルロッチェル(Baerlocher)その他により編集された「ゼオライト骨格型図解」(Atlas of Zeolite Framework Types)第5改訂版(2001)で出版されている。この文献は、参考のため全体的にここに入れてあり、特にゼオライト及び他の非ゼオライト状分子篩の結晶学的自由直径に関するその教示のためにここに入れてある。
分子篩を支持することができる連続相重合体について先ず記述する。次に、その連続相重合体中へ配合する分子篩の例を教示する。次に、重合体及び分子篩を用いて混合マトリックス膜を製造する方法を記述する。最後に、実施例により、本発明に従って製造された混合マトリックス膜は、従来の膜と比較して大きな選択性及び透過性を有するものにすることができることを示す。好ましい態様として、それらの膜は、二酸化炭素及びメタンを含有するガス混合物を分離するのに有用である。
本願と同時に出願された「アルミナに対するシリカの比が低い分子篩を有する混合マトリックス膜、その膜の製造方法及びその膜の使用方法」(Mixed Matrix Membranes With Low Silica-to-Alumino Ratio Molecular Sieves and Methods for Making and Using the Membranes)と題する米国特許出願をここに参考のため全体的に組み入れる。
I.重合体の選択
分離したいガス、例えば、二酸化炭素及びメタンを通過することができる適当に選択された重合体を用いることができる。その重合体は、一種類以上の希望のガスを、他の成分とは異なった拡散速度でその重合体を透過させることができるのが好ましく、それにより個々のガスの一種類、例えば二酸化炭素が、その重合体を通ってメタンよりも速い速度で拡散する。
CO及びCHを分離するための混合マトリックス膜を製造するのに用いられる最も好ましい重合体には、ウルテム(Ultem)(登録商標名)1000、マトリミド(Matrimid)(登録商標名)5218、6FDA/BPDA−DAM、6FDA−6FpDA、及び6FDA−IPDA(全てポリイミド)が含まれる。6FDA/BPDA−DAM及び6FDA−IPDAは、デラウエア州ウイルミントンのE.I.デュポン・ド・ヌマー・アンド・カンパニーから入手でき、米国特許第5,234,471号明細書に記載されている。マトリミド5218は、ニューヨーク州、ブルースターのアドバンスド・マテリアルズ(Advanced Materials)から市販されている。ウルテム1000は、インデアナ州マウントベルノンのゼネラル・エレクトリック・プラスティクス(General Electric Plastics)から商業的に得ることができる。
適当な重合体の例には置換又は非置換重合体が含まれ、次のものから選択してもよい:ポリスルフォン;アクリロニトリルスチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、及びスチレン・ビニルベンジルハロゲン化物共重合体のようなスチレン含有共重合体を含めたポリ(スチレン);ポリカーボネート;酢酸セルロース・ブチレート、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース等のようなセルロース重合体;アリールポリアミド及びアリールポリイミドを含めたポリアミド及びポリイミド;ポリエーテル;ポリエーテルイミド;ポリエーテルケトン;ポリ(フェニレンオキシド)及びポリ(キシレンオキシド)のようなポリ(アリーレンオキシド);ポリ(エステルアミド・ジイソシアネート);ポリウレタン;ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(アクリレート)、ポリ(フェニレンテレフタレート)等のようなポリエステル(ポリアリーレートを含む);ポリピロロン;ポリスルフィド;上で言及したもの以外のα−オレフィン系不飽和を有する単量体からの重合体、例えば、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(ブテン−1)、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリビニル、例えば、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルエステル)、例えば、ポリ(酢酸ビニル)、及びポリ(プロピオン酸ビニル)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルケトン)、ポリ(ビニルアルデヒド)、例えば、ポリ(ビニルホルマール)、及びポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルアミド)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルウレタン)、ポリ(ビニル尿素)、ポリ(燐酸ビニル)、及びポリ(硫酸ビニル);ポリアリル;ポリ(ベンゾベンズイミダゾール);ポリヒドラジド;ポリオキサジアゾール;ポリトリアゾール;ポリ(ベンズイミダゾール);ポリカルボジイミド;ポリホスファジン;等、及び上記のものからの反復単位を含むブロックインターポリマーを含めたインターポリマー、例えば、パラ−スルホフェニルメタリルエーテルのアクリロニトリル・臭化ビニル・ナトリウム塩の三元重合体;及び前述のいずれかを含むグラフト及び混合物。置換重合体を与える典型的な置換基には、フッ素、塩素、及び臭素のようなハロゲン;ヒドロキシル基;低級アルキル基;低級アルコキシ基;単環アリール;低級アシル基等が含まれる。それらの膜は、少なくとも約10、一層好ましくは少なくとも約20、最も好ましくは少なくとも約30の二酸化炭素/メタン選択性を示すのが好ましい。
重合体は、ゴム状重合体又は可撓性ガラス状重合体ではなく、堅いガラス状重合体であるのが好ましい。ガラス状重合体は、重合体鎖のセグメント移動速度によりゴム状重合体とは区別される。ガラス状態の重合体は、ゴム状重合体がそれらの液体状の性質を可能にし、長い距離(>0.5nm)に亙ってセグメントの形状を迅速に順応させるそれらの能力を与える迅速な分子運動を持たない。ガラス状重合体は非平衡状態で存在し、凍結した立体的配置で不動の分子主鎖とからまった分子鎖を有する。ガラス転移温度(Tg)は、ゴム状態とガラス状態とを分ける点である。Tgより高いと、重合体はゴム状態で存在し、Tgより低いと重合体はガラス状態で存在する。一般にガラス状重合体は、ガス拡散に対し選択的環境を与え、ガス分離用途に好ましい。堅いガラス状重合体は、分子間回転運動性が低く、高いガラス転移温度(Tg>150℃)を有することをしばしば々特徴とする堅い重合体主鎖を有する重合体と言える。
堅いガラス状重合体では、拡散係数が支配する傾向があり、ガラス状膜は、小さな低沸点分子に都合がよい選択性を有する傾向がある。好ましい膜は、二酸化炭素(及び窒素)を、メタン及び他の軽い炭化水素よりも優先的に通過させる堅いガラス状重合体材料から作られている。そのような重合体は当分野でよく知られており、例えば、モンサントによる米国特許第4,230,463号明細書、及びデュポンによる第3,567,632号明細書に記載されている。適当な膜材料には、ポリイミド、ポリスルホン、及びセルロース重合体が含まれる。
II.分子篩
分子篩は、二酸化炭素のようなガスを通過させるが、メタンのような他のガスは通過させないか、又は著しく一層低い速度でしか通過させないようにする孔径を有する選択的穴/気孔を含ませることにより、混合マトリックス膜の性能を改良するものと考えられる。分子篩は、混合マトリックス膜の性能を向上させるため、元の重合体よりも一層高い選択性を希望のガス分離について持つべきである。混合マトリックス膜による希望のガス分離について、分子篩中の一層速く透過するガス成分の定常状態透過率は、元の重合体マトリックス相中での一層速く透過するガスのそれと少なくとも同等であるのが好ましい。
分子篩は、「大気孔」、「中間気孔」又は「小気孔」分子篩として特徴付けることができる。ここで用いられる用語「大気孔」は、分子篩の骨格構造中に12員環に等しいか又はそれより大きな開口を有する分子篩を指し、用語「中間気孔」は、それらの骨格構造中に10員環の開口を有する分子篩を指し、用語「小気孔」は、それらの骨格構造に8員環に等しいか又はそれより小さな開口を有する分子篩を指す。更に、用語「一次元的」又は「一次元的気孔」とは、分子篩中の気孔が本質的に平行になっており、交差していない事を指す。用語「多次元的」又は「多次元的気孔」とは、互いに交差した気孔を指す。本発明の分子篩は、二次元的でもよく、最も好ましくは三次元的である。この多次元的特徴は、分子篩及び膜を通る拡散を一層よくすることができると考えられている。
気孔系統は、一般に長径と短径により特徴を付けられている。例えば、ERIのIUPAC構造を有する分子篩は、5.1Åの長径と3.6Åの短径を有する。或る場合には、分子篩は1つ、2つ、又は3つにさえなる異なった気孔系統を有することがある。特定の理論に限定されたくはないが、最大の結晶学的短径を有する気孔系統は、分子篩を通る拡散速度を効果的に制御すると考えられている。一例として、GIS構造を有する分子篩は、長径と短径が、4.5×3.1Åのものと、4.8×2.8Åのものとの二つの気孔系統を有する。この場合には、制御に効果的な短径は、最大の短径を有する気孔系統のもの、即ち、4.5×3.1Åの結晶学的自由長経と短径を有する気孔系統のものであると考えられる。従って、本発明の目的から、GIS構造については、最大結晶学的自由短径は3.1Åである。
理想的には、分子篩の全粒径は、同様に小さいであろう。粒径は、数平均粒径を指す。ここで用いられる記号「μ」は、ミクロンを、又は別の表記として、ミクロメーターの長さの単位を表す。ここに記載する小さな粒子の粒径に関しては、この長さの単位は、それらがほぼ球形であると仮定した粒子の公称又は平均直径の単位であるか、又は長い粒子の場合にはその長さを粒径であるとしている。
小さな粒子の粒径を決定するために種々の分析方法を、実施する人は入手することができる。そのような方法の一つは、開口の両側にある白金電極により生じた電流を用いて、その穴を通過した粒子の数を数え、個々の粒子の大きさを決定するコールター・カウンター(Coulter Counter)を用いている。コールター・カウンターは、J.K.ベドウ(Beddow)編集、「粒子の特徴決定法」(Particle Characterization in Technology)、第1巻、「適用及びマイクロ分析」(Applications and Microanalysis)、CRC出版社(CRC Press,Inc.)、1984年、pp.183−6、及びT.アレン(Allen)、「粒径測定」(Particle Size Measurement)、ロンドン、チヤップマン・アンド・ホール、1981年、第392頁〜第413頁に一層詳細に記載されている。空気の垂直振動カラム及び積層篩への反復機械振動の組合せにより粒径に従って粒子を分離する超音波シフター(sonic sifter)も、本発明の方法で用いられる粒子の粒径分布を決定するのに用いることができる。超音波シフターは、例えば、T.アレン、「粒径測定」、ロンドン、チヤップマン・アンド・ホール、1981年、第175頁〜第176頁に記載されている。平均粒径は、例えば、マルバーン・マスターサイザー(Malvern MasterSizer)装置を用いてレーザー光散乱法により決定することもできる。次に平均粒径は種々のよく知られたやり方で計算することができ、それには次の式が含まれる:
式中、zは、長さが間隔L内に入る粒子の数である。
本発明の目的から、平均結晶粒径は、数平均として定義される。
粒径は、理想的には0.2〜3.0μ、一層好ましくは0.2〜1.5μ、更に一層好ましくは0.2〜0.7μである。粒径が小さい程、分子篩と重合体との接着を一層よいものにし易くすると考えられる。分子篩は、好ましくは1μより小さく、一層好ましくは0.5μより小さい数平均粒径を持つように合成する。それ程好ましくはないが、高剪断湿式粉砕又はボールミルにかけるなどして、合成後に粒径を減少させてもよい。
分子篩の構造型は、ゼオライト命名についてのIUPAC委員会によって設定された規則に従い、IZA構造委員会により指定されたそれらの構造型コードにより判別することができる。三つの大文字からなる構造型コードにより、夫々独特の骨格位相構造(framework topology)が指定される。本発明で用いられる好ましい分子篩には、ERI、DDR、RHO、PAU、LEV、MER、AFX、AFT、及びGISのIZA構造記号を有する分子篩が含まれる。そのような小気孔アルミナ含有分子篩の組成の例には、或るアルミノ燐酸塩(AlPO)、シリコアルミノ燐酸塩(SAPO)、メタロアルミノ燐酸塩(MeAPO)、エレメント(element)アルミノ燐酸塩(ElAPO)、メタロシリコアルミノ燐酸塩(MeAPSO)、及びエレメンタル(elemental)シリコアルミノ燐酸塩(ElAPSO)を含む非ゼオライト系分子篩(NZMS)が含まれる。
特に、好ましい非ゼオライト分子篩は次の組成を有するであろう:AlPO−17、SAPO−17、MeAPSO−17、CVX−7、ZSM−58、LZ−214、ECR−18、SAPO−34、ゼオライトW、SAPO−56、AlPO−52、及びSAPO−43。
1984年4月3日に公告されたロック(Lok)その他による米国特許第4,440,871号明細書(それらの記載の全体は参考のためここに入れてある)には、マイクロポーラスと結晶質との両方である、珪素置換アルミノ燐酸塩非ゼオライト系分子篩(SAPO)の種類のものが記載されている。これらの材料は、[PO]、[AlO]、及び[SiO]四面体単位の三次元結晶骨格構造を有し、場合により存在することがあるアルカリ金属又はカルシウムは除いて、無水物基準で次の合成したままの経験的化学組成を有する:
mR:(SiAl)O
〔式中、「R」は内部気孔系中に存在する少なくとも一つの有機テンプレート剤を表し;「m」は、(SiAl)Oの1モル当たり存在する「R」のモル数を表し、0から0.3までの値を有し、夫々の場合の最大値は、テンプレート剤の分子の大きさ及び含まれる特定のシリコアルミノ燐酸塩物質の気孔系の有効空隙体積に依存し;「x」、「y」、及び「z」は、四面体酸化物として夫々存在する珪素、アルミニウム、及び燐のモル比を表す〕。
「x」、「y」、及び「z」の夫々の最小値は、0.01であり、0.02であるのが好ましい。最大値については、「x」は0.98であり、「y」は0.60であり、「z」は0.52である。これらのシリコアルミノ燐酸塩は、アルミノ珪酸塩ゼオライト及びアルミノ燐酸塩の両方に特徴的ないくつかの物理的及び化学的性質を示す。
ウィルソン(Wilson)による米国特許第4,310,440号明細書(これは参考のため全体的にここに入れてある)は、アルミノ燐酸塩(AlPO)の合成を教示している。この文献の教示は、参考のため全体的にここに入れてある。アルミノ燐酸塩の一般的種類のものは、酸化物のモル比に関して表した化学組成が次のような、本質的に結晶質の骨格構造を有する:
Al:1.0±0.2P
この骨格構造は、気孔が均一で、夫々の種類で3〜10Åの範囲内の公称直径を有する;4.6トール及び24℃で内部結晶の水吸着能力が少なくとも3.5重量%であり、その水吸着性は、水和状態と脱水状態の両方で同じ本質的骨格位相構造(framework topology)を維持しながら完全に可逆性である。用語「本質的骨格位相構造」とは、主たるAl−O及びP−O結合の空間的配列を意味する。骨格位相構造に変化がないことは、これらの主要な結合に混乱はないことを示している。
アルミノ燐酸塩は、燐酸塩の反応性原料、アルミナ、及び水、及び少なくとも一種類の構造指向剤(structure-directing agent)、即ち、テンプレート剤を一緒にすることにより調製された反応混合物の水熱結晶化により製造され、そのテンプレート剤は有機アミン及び第四級アンモニウム塩を含むことができる。合成したままの形態では、構造指向剤はアルミナ燐酸塩の骨格構造内に含まれており、その量は種類毎に異なるが、通常そのAlの1モル当たり1モルを超えない。この構造指向剤は、水洗又はか焼により容易に除去されるが、合成したままの組成物でイオン交換性が本質的に完全に欠除していること及び一般的種類の少なくとも一種類のものの合成したままの形態には内部に含まれる有機分子が存在しないことにより証明されるように、生成物アミノ燐酸塩の必須の成分になっているとは思われない。構造指向剤が決定的な成分である証拠は、後に記載する例示としての実施例の或るものに含まれており、その場合、テンプレート剤の存在を別として、本発明の生成物を生ずる反応混合物と他の点では同等な反応混合物は、その代わり、従来既知のアルミノ燐酸塩相AlPO−トリジマイト、AlPO−石英、及びAlPO−クリストバライトを生ずる。
広義には、製造方法は、酸化物のモル比に関して、
Al:1±0.5P:7−100H
である反応混合物を形成し、Alの1モル当たり約0.2〜2.0モルのテンプレート剤を含有させることを含んでいる。この反応混合物を、反応系に対して不活性な反応容器に入れ、少なくとも約100℃、好ましくは100℃〜300℃の温度に、結晶化するまで、通常2時間〜2週間加熱する。次に固体結晶質反応生成物を、濾過又は遠心分離のようなどのような便利な方法でも、それにより回収され、水で洗浄し、空気中周囲温度と110℃の間の温度で乾燥する。
ウィルソンその他による1986年1月28日に公告された米国特許第4,567,029号明細書(これの全体的記載は参考のためここに入れてある)には、[MO]、[AlO]及び[PO]、四面体単位の三次元的マイクロポーラスな骨格構造及び次の式で表される無水状態に基づく経験的化学組成を有する結晶質金属アルミノ燐酸塩非ゼオライト系分子篩の種類(そこでは「MeAPO」として指定されている)のものが記載されている。
mR:(MAl)O
〔式中、「R」は、内部結晶気孔系中に存在する少なくとも一つの有機テンプレート剤を表し;「m」は(MAl)Oの1モル当たり存在する「R」モル数を表し、0から0.3までの値を有し;「M」は、マグネシウム、マンガン、亜鉛、及びコバルト群の少なくとも一種類の金属を表し、「x」、「y」、及び「z」は、四面体酸化物として存在する金属「M」、アルミニウム、及び燐のモル分率を夫々表す〕。
1990年11月27日に公告されたロック(Lok)その他による米国特許第4,973,785号明細書(それらの記載の全体は参考のためここに入れてある)には、結晶質非ゼオライト系分子篩で、そこで「ElAPSO」として指定されている種類のものが記載されている。そのElAPSO組成物は、[AlO]、[SiO]及び[PO]四面体単位の存在下で骨格構造酸化物単位を形成することができる元素を用いて形成し、この場合、元素「El」は、アルミニウム、燐、及び珪素酸化物単位の存在下で三次元的酸化物骨格構造を形成することができる少なくとも一つの元素であり、結晶質三次元的酸化物構造中に安定なEl−O−P、El−O−Al、及びEl−O−El結合を形成することができる。
これらの分子篩を、連続相重合体中に適切に内部分散させた場合、その膜はシラノール化を行わなくても、混合マトリックス効果を示す。それら分子篩は3.6Å以下の最大結晶学的自由短径を有する気孔を有する。これらの分子篩の気孔の結晶学的自由短径は、3.6Å、3.4Åのように小さいか、或は3.0Å位にさえ小さいものであってもよい。或る場合には、それは、断面が円形であるよりもむしろ全体的に楕円状又は細長い気孔を持つのが有利である。
限定することよりもむしろ例として、本発明で用いることができる小気孔アルミナ含有分子篩の例を、下の表1に入れてある。表1には、分子篩の合成の仕方を記載した米国特許及び文献が含まれている。これらの米国特許及び文献は、参考のため全体的にここに入れてある。
本発明で用いるのに最も好ましい分子篩は、ERI構造シリコアルミノ燐酸塩分子篩であるCVX−7の分子篩である。この好ましいCVX−7の合成についての一層詳細な説明は、下の例4に記載されている。また、極めて好ましい分子篩には、SAPO−17、MeAPSO−17が含まれる。MeAPSO−17分子篩は、限定するのではなく例として、チタン、マグネシウム、クロム、ニッケル、鉄、コバルト、及びバナジウムを含めた金属成分を有することがある。
III.混合マトリックス膜を形成する方法
場合により、好ましくは、希望のマトリックス重合体、又はマトリックス相のために用いられる有機重合体と混和することができるどのような適当な「サイジング剤(sizing agent)」でも、それを少量添加することにより分子篩を「下塗り(prime)」(又は「サイジング化」(sized))することができる。一般に、この少量の重合体又は「サイジング剤」は、分子篩を適当な溶媒中に分散させた後に添加し、超音波撹拌器により超音波処理する。場合により、重合体又は「サイジング剤」が溶解しない非極性非溶媒を希釈懸濁物に添加し、重合体の分子篩の上への沈澱を開始させてもよい。「下塗りされた」分子篩は、濾過により取り出し、慣用的手段、例えば真空炉中で乾燥し、然る後、注型するための適当な溶媒に再分散させる。少量の重合体又は「サイジング剤」は、分子篩表面上に最初の薄い被覆(即ち、境界層)を与え、それは粒子を重合体マトリックスと相容性にするのに役立つであろう。
好ましい態様として、最終的混合マトリックス膜のために添加される全重合体材料の量の約10%を、分子篩を「下塗り」するために用いる。スラリーを撹拌し、好ましくは約6時間〜7時間混合する。混合後、残りの量の添加すべき重合体を、スラリー中に入れる。分子篩の量及び重合体の添加量は、最終的混合マトリックス膜の「導入量」(即ち、固体粒子濃度)を決定する。本発明を限定するものではないが、分子篩の導入量は、好ましくは約10体積%〜約60体積%、一層好ましくは約20体積%〜約50体積%である。希望の粘度を達成するため、溶媒中の重合体溶液濃度は、約5重量%〜約25重量%であるのが好ましい。最後に、スラリーを再びよく撹拌し、適当な手段により約12時間混合する。
粒子を重合体フィルム中に配合する前に、少量の重合体で粒子を「下塗り」するこの方法は、粒子を一層重合体フィルムと相容性のあるものにすると考えられる。それは、粒子と重合体との親和力/接着性を一層大きく促進すると考えられ、混合マトリックス膜中の欠陥を無くすことができるであろう。
混合マトリックス膜は、典型的には、上に記載したように、粒子と希望の重合体を含む均一なスラリーを注型することにより形成されるのが典型的である。例えば、重合体又は重合体溶液中への粒子の分散を最大にするためホモジナイザー及び/又は超音波を用いてスラリーを混合することができる。注型法は、3つの工程:
(1)平らで水平の表面(好ましくはガラス表面)の上に溶液を注ぐ;
(2)溶液から溶媒をゆっくりではあるが実質的に完全に蒸発させ、固体膜フィルムを形成する;そして
(3)その膜フィルムを乾燥する;
工程により行うのが好ましい。
膜の厚さ及び面積を制御するため、溶液を金属環型中に注入するのが好ましい。ゆっくりした溶媒の蒸発は、その面積を覆い、溶媒の蒸発速度を抑制することにより行うのが好ましい。一般に、蒸発は完了するのに約12時間かかるが、用いる溶媒により更に長くなることがある。固体膜フィルムを平らな表面から取り外し、真空炉中に入れて乾燥するのが好ましい。真空炉の温度は、約50℃〜約110℃(又は溶媒の正常な沸点より約50℃高く)設定し、残りの溶媒を除去し、最終的混合マトリックス膜をアニールするのが好ましい。
最終的乾燥混合マトリックス膜を、そのガラス転移温度(Tg)より高く更にアニールすることができる。混合マトリックス膜のTgは、適当な方法(例えば、示差走査熱量測定)により決定することができる。混合マトリックスフィルムは、平らな表面上に固定し、高温真空炉中に入れることができる。真空炉〔例えば、サームクラフト(Thermcraft)(登録商標名)環状炉〕中の圧力は、約0.01mmHg〜約0.10mmHgであるのが好ましい。その装置は、圧力が0.05mmHg以下になるまで減圧にするのが好ましい。加熱プロトコルは、好ましくは約2〜3時間で温度が混合マトリックス膜のTgに到達するようにプログラムされている。次に温度をTgより好ましくは約10℃〜約30℃、最も好ましくは約20℃高い温度へ上昇させ、その温度に約30分〜約2時間維持する。加熱サイクルが完了した後、混合マトリックス膜を真空中で周囲温度へ冷却させる。
得られた混合マトリックス膜は、希望の成分(一種又は多種)及び他の成分を含むガス混合物から、一種類以上のガス成分を分離するのに有効な膜材料である。限定するのではなく、使用例として、得られた膜はメタンから二酸化炭素を分離する能力を有し、これらの物質を透過することができ、商業的精製で用いるのに適切な強度、耐熱性、耐久性、及び耐溶媒性を有する。
IV.膜を含む分離装置
膜は、当分野で知られているどのような形態をとってもよく、例えば、中空繊維、管状、及び他の膜形態を持っていてもよい。他の膜形態の幾つかには、渦巻き、ひだ状、平坦なシート、又は多角形管が含まれる。多重中空繊維膜管は、それらが比較的大きな流体接触面積を有するため好ましい。接触面積は、更に管又は管状外観を加えることにより更に増大することができる。接触は、流体乱流又は渦流を増大することによりガスの流れを変化させることによっても増大することができる。
平らなシート膜の場合には、混合マトリックス選択的層の厚さは、約0.001〜0.005インチ、好ましくは約0.002インチである。対称的中空繊維形態の場合、混合マトリックス選択的表皮層の厚さは、約1,000Å〜約5,000Åであるのが好ましい。連続相重合体中の分子篩導入量は、体積で、約10%〜60%、一層好ましくは約20%〜50%である。
良好なガス選択性、例えば、二酸化炭素/メタン選択性を与える好ましいガラス状材料は、比較的小さな透過率を有する傾向がある。従って、膜についての好ましい形態は、大きな膜面積を利用し易くするため、非常に薄い選択的表皮層と、大きな充填密度との両方を与えることができる表皮一体化又は複合体対称的中空繊維である。中空管も用いることができる。
複数のシートを用いて、供給物保持スペーサー及び透過物スペーサーにより交互に分離された複数の膜層を含む平らな積層体透過器を作ることができる。それらの層を、供給物保持領域と透過物領域とを別々に定めるように、それらの縁に沿って接着することができる。この型の機器は、米国特許第5,104,532号明細書に記載されており、その内容は参考のためここに入れてある。
膜は分離装置中に入れることができ、その装置は混合マトリックス膜を含む一つ以上の内部管を取り巻く外側有孔殻を含む。殻及び内部管は、汚染物収集領域を分離するようにパッキングで取り巻くことができる。
一つ操作方式として、ガス混合物は、外側有孔殻にあけた孔を通って汚染物収集領域を経て分離装置に入る。ガス混合物は内部管を通って上方へ通過する。ガス混合物が内部管を通過する時に、その混合物の一つ以上の成分が内部管から選択的膜を通って透過し、汚染物収集領域へ入る。
膜はカートリッジ中に入れて、ガス混合物から汚染物を透過させるために用いることができる。汚染物は膜を通って透過し、一方希望の成分は膜の頂部から出続ける。膜は有孔管内に積層して内部管を形成するか、又は自立した管を形成するように相互に接続してもよい。
積層した膜部材の夫々を、ガス混合物の一つ以上の成分を透過するように設計してもよい。例えば、一つの膜は、二酸化炭素を除去するように設計し、第二の膜を硫化水素を除去するように設計し、第三の膜を窒素を除去するように設計してもよい。それらの膜を異なった配列で積層し、異なった順序でガス混合物から種々の成分を除去するようにしてもよい。
異なる成分を、一つ汚染物収集領域中へ取り出し、一緒に廃棄してもよく、或いはそれらを異なった領域中へ取り出してもよい。特定の用途に依存して、複数の膜を直列又は平行、又はそれらを組合せた形状に配列してもよい。
膜は、ワイヤーライン(wire line)、コイルチュービング(coil tubing)、又はポンピング(pumping)のような慣用的回復技術により除去及び取り替え可能にすることができる。取り替えの外に、膜部材を、ガス、液体、洗剤、又は他の材料をポンプでその膜を通って送り、膜表面に蓄積した物質を除去することにより、適所で清浄にすることができる。
ここに記載する膜を含むガス分離装置は、特定の用途に依存して種々の長さにすることができる。ガス混合物は膜(単数又は複数)を通って内側から外側へ行く流路に沿って流れ、この場合、混合物は膜の管(単数又は複数)の内側に流入し、除去される成分は管を通って外へ透過する。別法として、ガス混合物は、外側から中へ入る流路に沿って膜を通って流れてもよい。
液体又は粒状汚染物と膜との接触を悪化する可能性を防ぐか又は減少するために、流れるガス混合物を外側管内で回転するか又は渦巻くようにさせてもよい。この回転はどのような既知の仕方で達成してもよく、例えば、一つ以上の渦巻き偏向器を用いて達成することができる。ガス混合物から除去された成分を除去し且つ/又は試料採取するための出口を設けてもよい。
V.精製法
分離すべきガス、例えば、二酸化炭素及びメタンを含有する混合物は、例えば、上記形態のいずれかの混合マトリックス膜を通る気相法により富化することができる。
混合物を富化するのに好ましい条件は、約25℃〜200℃の温度及び約50psia〜5,000psiaの圧力を用いることを含んでいる。これらの条件は、供給物流に依存して、日常的な実験を用いて変化させることができる。
他のガスは、上記構成のいずれかの混合マトリックス膜により精製することができる。例えば、それらの適用には、空気を窒素又は酸素に富むものにすること、メタン流から除去された窒素又は水素、或は合成ガス流からの一酸化炭素に富むものにすることが含まれる。混合マトリックス膜は、製油所流及び他の工程流、例えば、パラフィンの接触脱水素化での脱水素反応流出物からの水素の分離にも用いることができる。一般に、混合マトリックス膜は、例えば、水素、窒素、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素、ヘリウム、及び酸素を含むガス混合物を用いたどの分離方法でも用いることができる。また、それらの膜は、エタンからエチレンを、プロパンからプロピレンを分離するために用いることができる。分離することができるガスは、分子篩を通過することができる運動直径を有するガスである。ガス分子の運動直径(ここでは「分子の大きさ」としても言及されている)はよく知られており、分子篩中の空洞の運動直径もよく知られており、例えば、D.W.ブレック(Breck)による「ゼオライト分子篩」(Zeolite Molecular Sieves)Wiley(1974)(その内容は参考のためここに入れてある)に記載されている。
VI.膜の評価
平らな混合マトリックス膜フィルムの透過率測定は、マノメーター又は定容量法を用いて行うことができる。緻密で平らな重合体フィルムについて透過測定を行うための装置は、オ・ブライエン(O’Brien)その他による、J.Membrane Sci.,29,229(1986)及びコステロ(Costello)その他による、Ind.Eng.Chem.Res.,31,2708(1992)(それらの内容は参考のためここに入れてある)に記載されている。透過装置は、上昇流及び下降流のための二つの受容器体積を含む自動温度調節室、膜セル、下降流のためのMKSバラトロン(Baratron)(登録商標名)絶対圧力トランスデューサー(0〜10トール又は0〜100トール範囲)、上昇流のためのアナログ又はデジタル高圧ゲージ(0〜1000psia)、溶接ステンレス鋼管、ヌプロ(Nupro)(登録商標名)ふいご密封弁、及びカジュオン(Cajon)VCR(登録商標名)金属面密封接続部を含む。その室の温度は、透過測定のためには、25℃〜75℃の範囲に調節することができる。
透過試験装置の模式的図が図1に示されている。図中、1は加熱室であり、2は供給ガスシリンダーであり、3は真空ポンプであり、4は供給物受容器域(volume)であり、5は透過物受容体器域であり、6は圧力トランスデューサーであり、7は膜セルであり、8は自動温度調節加熱器であり、9はファンであり、10は圧力ゲージである。
平らな膜フィルムは、その膜を通って透過させるための円形に予め切って露出した表面を有する接着性アルミニウムマスクでマスクされていてもよい。膜とアルミニウムマスクとの間の界面には、そのアルミニウムマスク接着剤と膜との間の非選択的ガス流を防ぐのに、5分硬化エポキシを用いて適用してある。膜の厚さ(高解像力マイクロメーターによる)及び膜透過表面積(イメージ走査及び面積計算ソフトウェアーによる)を測定する。
約12〜約24時間エポキシを乾燥した後、マスクされた膜を透過セル及び透過装置中に入れることができる。透過装置の上昇流区域及び下降流区域の両方を、約24時間〜48時間真空にし、膜に収着されていたガス又は蒸気を全て除去する(脱ガス)。膜の透過試験は、希望の圧力で希望のガス(純粋ガス又はガス混合物)を用いて上昇流を加圧することにより行うことができる。MKSバラトロン絶対圧力トランスデューサーの時間と共に上昇する圧力及び既知の下降流(透過物)体積から透過速度を測定することができる。圧力上昇データーは、高精度データー取得ハードウェアー/ソフトウェアーで記録する(又は別法として、速度調節帯状図表記録器でプロットする)。ガス混合供給物を試験する場合、透過率物流をガスクロマトグラフィーにより分析し、組成を決定する。与えられたガスの透過試験に続き、上昇流と下降流の両方の区域を一晩真空にした後、次のガスの透過試験を行う。
本発明の目的から、混合マトリックス膜は、元の膜に対しガス分離選択性を少なくとも10%増大するならば、混合マトリックス効果を示すものとして言及されるであろう。分子篩が、向上した透過性を有する混合マトリックス膜を形成するように適切に製造されて成功したことを証明するための試験を準備することができる。この試験は、試験重合体及び特定化した導入量の分子篩粒子を用いて混合マトリックス膜フィルムの試料を調製し、分子篩を添加しない同じ試験重合体の膜フィルムに対し、CO/CH透過選択性を比較することを含んでいる。CO/CH透過選択性は、CHの透過率に対するCOの透過率の比を取ることにより決定される。透過ガス成分「i」の透過率は、膜を通るその成分の圧力及び厚さ標準化流量であり、次の式により定義される:
式中、Piは、成分iの透過率であり、lは膜層の厚さであり、Niは、成分iの膜を通る流量(膜単位面積当たりの体積流量)であり、△Piは、成分iの分圧駆動力(上昇流と下降流の間の分圧差)である。透過率は、しばしば慣用的バレル単位〔1バレル=10−10cm(標準状態)・cm/cm・s・cmHg〕で表される。透過率測定は、マノメーター、定容量法を用いて行うことができる。フィルムでの透過測定を行うための装置は、オ・ブライエン(O’Brien)その他による、J.Membrane Sci.,29,229(1986)及びコステロ(Costello)その他による、Ind.Eng.Chem.Res.,31,2708(1992)(それらの内容は参考のためここに入れてある)に記載されている。
混合マトリックス向上試験では、混合マトリックス膜について、CO及びCHの純粋ガス、又はガス混合物(例えば、10%のCO/90%のCH)の透過試験を行う。混合マトリックス膜フィルムを、約50psiaの上昇流圧力及び真空下降流を用いて夫々のガスで別々に試験した。透過装置内部は、約35℃の温度を維持した。CO及びCHの純粋ガス、又はガス混合物(例えば、10%CO/90%CH)の同様な透過試験を、分子篩粒子を添加していない同じ試験重合体から調製した膜フィルムについて行う。分子篩粒子が、ここに記載した方法により適切に製造され、調製されたことを確かめるためには、混合マトリックス膜フィルムは、混合マトリックス向上試験で、純粋な試験重合体単独膜のCO/CH選択性に対し10%以上のCO/CH選択性の向上を示すべきである。
向上試験で用いられる混合マトリックス膜の試料を形成する方法は、次の通りである:
(1)微細粒子を、約300℃の温度の真空炉中で、少なくとも12時間真空中で高温に予め調整する。予め調整する処理をした後、これらの分子篩粒子を用いて、混合マトリックス膜フィルムの試料を調製することができる。向上試験の目的から、それら粒子を溶媒であるジクロロメタン(CHCl)中に分散する。
(2)CHCl中に分散した後、ガラス瓶中に入れた超音波棒で約1分間分子篩粒子を溶液中で超音波処理し、前に記載したように充分混合する。スラリー中の大きな分子篩粒子を、慣用的手段、例えば、傾瀉又は遠心分離機により微細粒子から分離する。微細分子篩粒子を超音波処理及び分離した後、それら分子篩粒子をそのままマトリックス重合体で「下塗り」(即ち、「サイジング」)する。向上試験の目的から、マトリックス相のために用いられる重合体は、ウルテム1000(GEプラスチックス)である。
ウルテム1000重合体は、使用する前に、真空炉中少なくとも12時間、真空中で約100℃の温度で乾燥する。分子篩粒子を「下塗り」するためには、スラリーに添加すべきマトリックス重合体(ウルテム1000)の全量の典型的には10重量%を用いる。向上試験のためには、次の性質を有する分子篩粒子及び重合体の最終的スラリーを調製することが望ましい:ウルテム1000対粒子の重量比が、約4〜1(即ち、最終混合マトリックス膜中の分子篩の「導入量」が約20重量%)、及びCHCl溶媒中の固形物(分子篩粒子及び重合体)のスラリー濃度が約15〜約20重量%。分子篩粒子をウルテム1000で「下塗り」した後、そのスラリーを慣用的手段により約12時間よく混合する。残りの量のウルテム1000重合体をスラリーに添加し、その最終的スラリーを、再び慣用的手段により約12時間よく混合する。
(3)重合体/分子篩粒子スラリーを、制御された環境(例えば、プラスチック・グローブバッグ(plastic glove bag)中に入れた平らな安定化した清浄な水平ガラス表面上に注ぐ。蒸発速度を低下するため、制御した環境を、CHCl溶媒でほぼ飽和する。分子篩粒子/重合体スラリーを均一な厚さに引いて広げるため、ステンレス鋼フィルムアプリケーター〔ポールN.ガードナー社(Paul N.Gardner Co.)〕を用いる。ガラス漏斗を逆に用いて溶液を蓋した。漏斗の先端は更に蒸発速度を抑制するため糸屑のないティッシュペーパーで覆った。重合体フィルムからの溶媒は、約12時間の時間に亙ってゆっくり蒸発する。乾燥したフィルムは、ほぼ約30〜約60μの厚さを持つ。乾燥後、膜フィルムを、真空中で約12時間約100℃の温度でアニールする。
(4)向上試験を行うためには、平らな混合マトリックス膜フィルムの透過率測定が必要である。それらの測定は、マノメーター、又は定容量法を用いて行うことができる。装置は、この節で前に引用した参考文献に記載されている。最終的混合マトリックスフィルムからの試料フィルム領域を、膜を通って透過させるため、予め切った円形の露出領域を有する接着性アルミニウムマスクでマスクする。マスクした膜を、透過セル及び透過装置中に配置することができる。透過装置の上昇流及び下降流の両方の区域を、膜に収着されていた全てのガス又は蒸気を除去する(脱ガス)するため約24時間〜48時間真空にする。膜の透過試験は、上昇流側を希望のガスで希望の圧力に加圧することにより行う。透過速度は、圧力トランスデューサーの圧力上昇から、既知の下降流(透過物)体積を用いて測定することができる。与えられたガスの透過試験に続き、上昇流及び下降流の両方の区域を、少なくとも12時間真空にした後、次のガスの透過試験を行う。
上記手順を用いて、試験混合マトリックス膜及び純粋試験重合体(ウルテム1000)についてCO及びCH透過率を測定する。混合マトリックス膜のCO/CH選択性を、純粋試験重合体(ウルテム1000)単独のCO/CH選択性と比較する。混合マトリックス膜フィルムでは、10%以上のCO/CH選択性の向上が観察されるはずである。
VII.実施例
比較例1:元の重合体膜フィルム
ウルテム1000はポリエーテルイミドであり、インデアナ州マウントベルノンのゼネラル・エレクトリック・プラスティクス(General Electric Plastics)から市販されている。その化学構造を下に示す:
ウルテム1000単独の膜フィルムを溶液注型により形成した。ウルテム1000を先ず110℃の真空炉中で一晩乾燥した。次に、0.55gの乾燥ウルテム1000重合体を、40mlガラス瓶中の5mlのCHCl溶媒に添加した。そのガラス瓶を、振盪機械で約1時間よく撹拌混合し、重合体を確実に溶液に溶解させた。その重合体溶液を、制御された環境(例えば、プラスチック・グローブバッグ)中に入れた平らな清浄な水平安定化ガラス表面上に注いだ。注型/ドクターブレードを用いて溶液を引き伸ばすか、又は「注型」し、均一な厚さの湿潤フィルムを形成した。液体フィルムを、ガラス皿を裏返したカバーで覆い、蒸発を遅らせ、塵等と触媒しないようにした。重合体フィルムからの溶媒は約12時間の時間に亙りゆっくり蒸発した。厚さが約30μであると測定された乾燥フィルムを、ガラス基体から取り外した。得られたウルテム1000単独フィルムを、150℃の真空炉中で約12時間乾燥した。
ウルテム1000単独の重合体フィルムの透過特性を、前の「膜評価」の節に記載した装置及び手順を用いて決定した。透過試験中、供給物ガスとして10%CO/90%CHを含むガス混合物を用いた。ウルテム1000単独フィルムの上昇流側を、50psiaの圧力のこのガス混合物に露出した。ウルテム1000単独の下降流側を真空に維持し、その結果、ウルテム1000単独膜フィルムを通って50psiaの圧力差駆動力を与えた。35℃の一定温度に維持した透過装置を用いて、膜を通るガスの透過速度を、圧力上昇法を用いて測定し、透過物ガスの組成をガスクロマトグラフィー(HP6890)で分析した。個々のガスの透過率及びそれらガス間の全選択性についての結果を表2に示す。
表2の透過率値から、ウルテム1000単独膜フィルムの35℃でのCO/CHについての透過率比(選択性)は39.2であった。
比較例2:シラノール化SSZ−13含有混合マトリックス膜
SSZ−13ゼオライト粒子を、米国特許第4,544,538号明細書に記載されている方法に従って製造した。これらの分子篩のシリカ対アルミナモル比は、ICP主要部元素分析により測定して、約25であった。SSZ−13は、結晶学的自由長径及び短径が3.8×3.8ÅであるCHAのIUPAC構造を有する。SSZ−13ゼオライト粒子は、シランカップリング剤により表面変性された。用いたシランカップリング剤は、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン(APDMES)であり、次の化学構造を有する:
シラノール化手順を次のように行なった。イソプロピルアルコール(ACS保証級)及び蒸留水の95:5体積比の200mlの溶液を調製した。別の500ml容器中で、4.0gのシランカップリング剤(3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、即ち、APDMES)を、2gのSSZ−13ゼオライトに添加した。第一工程で調製したイソプロパノール溶液を、この500ml容器に添加し、スラリーを形成した。SSZ−13/APDMES/イソプロパノール/水スラリーを、超音波ホーン〔ソニックス・アンド・マテリアルズ(Sonics and Materials)〕を用いて5分間隔(5分超音波をかけ、次に5分間の休み)で、合計30分の超音波処理/30分の休みとして超音波処理した。
超音波処理後に、1時間高速度(〜9000rpm)でスラリーを遠心分離にかけ、底の方に沈澱固体を残し、頂部にイソプロパノール/水液体混合物を残した。遠心分離が完了した後、イソプロパノール/水液体を傾瀉し、底に沈澱固体(APDMES・シラノール化SSZ−13)を残した。その沈澱固体に新しいイソプロパノール100mlを添加し、上記第三工程に従い1時間超音波処理した(30分超音波処理/30分休み)。超音波処理後、スラリーを1時間高速度(〜9000rpm)で遠心分離にかけ、底に沈澱固体(APDMES・シラノール化SSZ−13)を、頂部にイソプロパノール液体を残した。上記遠心分離手順を、更に二つのイソプロパノール部分を用いて繰り返した。容器からAPDMES・シラノール化SSZ−13粒子を、アルミニウム箔裏打ペトリ皿上に掻き取り、150℃で一晩真空炉中で乾燥した。分子篩は、フィルムに配合するまで別にしておいた。
APDMES・シラノール化SSZ−13粒子(上の工程で調製したもの)を分散相として用い、混合マトリックス膜フィルムを形成した。比較例1に記載したように、その混合マトリックス膜の重合体マトリックス相としてウルテム1000を用いた。この例では混合マトリックス膜フィルムは、ウルテム1000マトリックス中に18重量%のAPDMES・シラノール化SSZ−13粒子を含んでいた。
混合マトリックス膜フィルムを、次の工程で形成した。約5mlのCHCl溶媒の入った40mlのガラス瓶に、合計0.249gのAPDMESシラノール化SSZ−13粒子(上のシラノール化により調製したもの)を添加した。そのガラス瓶中で、強力超音波ホーン〔バイブラセル(VibraCell)(商標名)、ソニックス・アンド・マテリアルズ社〕を用いて、約2分間スラリー中の粒子を超音波処理した。振盪機で、約1時間スラリーをよく撹拌混合した。
合計0.123gの乾燥ウルテム1000重合体を、ガラス瓶中のスラリーに添加した。振盪機で、ガラス瓶を約2時間よく混合した。次に1.008gの乾燥ウルテム1000重合体をスラリー溶液に添加し、導入量18重量%のAPDMES・シラノール化SSZ−13粒子を含む溶液を形成した。振盪機で約16時間ガラス瓶を再びよく混合した。閉じることができるプラスチック・グローブバック〔ペンシルバニア州チェルテンハムのインストルーメンツ・フォア・リサーチ・アンド・インダストリー(Instruments for Research and Industry)(登録商標名)〕を設定し、約200mlのCHCl溶媒でほぼ飽和させた。ウルテム/APDMES・シラノール化SSZ−13スラリー溶液を、プラスチック・グローブバック中に入れた平らで清浄な水平安定化ガラス表面上に注いだ。ほぼ飽和した環境は、CHClの蒸発を遅くした。
注型/ドクターブレードを用いて、溶液を引き伸ばすか、又は「注型」し、均一な厚さの湿潤膜を形成した。得られた液体膜を、ガラス皿を裏返しにしたカバーで覆い、蒸発を更に遅らせ、塵等と接触しないようにした。重合体フィルムからのCHCl溶媒は、約12時間の時間に亙りゆっくり蒸発した。厚さが約35μであると測定された乾燥フィルムを、ガラス基体から取り外した。得られた混合マトリックス膜フィルムを、150℃の真空炉中で約12時間乾燥した。
この例の1枚のウルテム1000・SSZ−13混合マトリックスフィルム(18重量%のSSZ−13)を、適当な大きさ及び形状に切断し、透過試験セル(「膜評価」節で記載したもの)中で使用し、10%CO/90%CHを含む混合ガス混合物について透過率及び分離係数を測定した。ウルテム1000・SSZ−13混合マトリックス膜フィルムの上昇流側を、50psiaの圧力でこのガス混合物に露出した。ウルテム1000・SSZ−13混合マトリックス膜の下降流側を真空に維持し、その結果、ウルテム1000・SSZ−13混合マトリックス膜を通って圧力差50psiaの駆動力を与えた。35℃の一定温度に維持した透過装置を用い、膜を通るガスの透過速度を、圧力上昇法を用いて測定し、透過物ガスの組成をガスクロマトグラフィー(HP6890)で分析した。個々のガスの透過率及び全選択性についての結果を表3に示す。
表3の透過率値から、ウルテム1000・SSZ−13混合マトリックス膜のCO/CHについての透過率比(選択性)は51.1である。ウルテム1000・SSZ−13混合マトリックス膜のCO/CH選択性及びCO透過率は、比較例1で調べたウルテム1000単独の重合体膜フィルムについて測定したものよりも向上していた。
ウルテム1000・SSZ−13混合マトリックス膜について、比較例1のウルテム単独膜の対応する値よりも、CO/CH選択性が30%高く、CO透過率が90%高い。従って、この混合マトリックス膜は、混合マトリックス効果を示している。これらのAPDMES・シラノール化SSZ−13ゼオライト粒子を添加すると、元の膜よりも混合マトリックス膜に有利な性能向上を与えた。
例3:CVX−7の合成
エリオナイト骨格構造を有するシリコアルミノ燐酸塩分子篩CVX−7を、次の手順に従い合成した。最初634gのアルミニウムイソプロポキシド〔チャッテム・ケミカル社(Chattem Chemical,Inc)〕を100(US)メッシュに粉砕し、1,600gの脱イオン水に激しく撹拌しながら添加した。この混合物を2時間撹拌した。次に、352gのオルト燐酸(水中85重量%、EMS)を、アルミニウムイソプロポキシド/水混合物に強く撹拌しながらゆっくり添加した。得られた混合物を激しく30分間混合した。
次の工程では、31.2gのコロイドシリカ、LUDOX AS−30(デュポン)を、その混合物に撹拌しながら添加し、次に64.8gの48重量%フッ化水素酸〔ベーカー(Baker)〕を添加した。得られた混合物を1時間撹拌した。最後にその混合物に155gのシクロヘキシルアミン〔アルドリッヒ(Aldrich)〕を添加し、次に30分間撹拌した。その調製物に、製造したままのSAPO−17を7gを種子として添加した。この材料は、米国特許第4,440,871号明細書に従い製造された。最終混合物のpHは4.8であった。この混合物2,000gを、1ガロンステンレス鋼ライナー(liner)中に移し、そのライナーを撹拌器付き反応器中へ入れた。この材料を、200℃で150rpmで42時間撹拌しながら合成した。
生成混合物のpHは7.1であった。この生成物を真空濾過により母液から分離し、次に1.5ガロンのHCl/メタノール溶液(メタノール1部対5部の0.05M HCl)で洗浄し、2ガロンの水で濯いだ。生成物を室温で一晩乾燥した。然る後、生成物を、室温から630℃まで1℃/分の速度で温度を上昇させながらか焼した。混合物を630℃で6時間保持し、次に室温まで冷却した。得られた生成物のPXRD像は、エリオナイト型材料と同じであった。この生成物は、ICP主要部元素分析で測定して、アルミナに対するシリカのモル比(silica-to-alumina molar ratio)が0.1の値を持っていた。
CVX−7の合成は、多くの仕方でSAPO−17の通常の合成とは異なっている。第一に、少量のSAPO−17を種子として用いた。SAPO−17種子は、PXRD及びSEMにより純粋な相であった。PXRDによる用語「純粋な相」とは、実験条件(X線波長、アノード電圧及び電流で定められるビーム強度、スリットサイズ、及び走査範囲)で、回折像中に、エリオナイト型結晶構造に起因させることができない線は検出されなかった。
アルミニウムイソプロポキシドの加水分解は、室温で激しく撹拌しながら完了させた。SAPO−17混合物は、アルミニウムイソプロポキシド加水分解工程で生成したイソプロピルアルコールを除去するため、オートクレーブへ入れる前に通常加熱する。CVX−7合成の場合には、この工程は省略された。反応混合物中にプロピルアルコールが存在することは、生成物の平均結晶粒径を約10μから約1.5μへ減少させ、SEMで明らかにされるように、結晶のアスペクト比を著しく減少させるのに役立つ。CVX−7結晶の粒径を小さくするため、就中、アルコール、アミン、エステル、又はグリコールのような有機物質を含む良好な表面錯化剤を用いることが好ましい。特別な理論に拘束されたくはないが、分子篩粒子を凝集しないようにするのにアスペクト比の減少が役に立つと考えられ、それは特に繊維紡糸操作で価値がある。結晶が小さい程、比較的欠陥のない繊維を形成するのに役立つ。
SEM結果に基づき、CVX−7の最大アスペクト比(結晶の長さ対幅又は直径)は約5:1であった。典型的な比は約2〜2.5:1である。SAPO−17については、典型的なアスペクト比は約10:1である。エリオナイト結晶は針状形態を持つのが典型的であり、従って、非常に大きなアスペクト比を有する。理想的には、分子篩のアスペクト比は10より小さく、一層好ましくは5より小さく、最も好ましくは1〜3である。
例4:CVX−7を含む混合マトリックス膜
混合マトリックス膜を、分散相として例4で製造した非シラノール化CVX−7粒子を用いて製造した。前のように、比較例1に記載したように、ウルテム1000を、混合マトリックス膜中の重合体連続マトリックス層として用いた。ウルテム1000マトリックス中に18重量%の非シラノール化CVX−7粒子を含有する混合マトリックス膜を、比較例3に記載したのと同じやり方で製造した。換言すれば、「合成したままの」CVX−7粒子を用い、シランカップリング剤で更に表面を変性することはしなかった(即ち、非シラノール化)。
混合マトリックス膜フィルムを、次の工程で形成した。約5mlのCHCl溶媒の入った40mlガラス瓶に、非シラノール化CVX−7粒子を最初0.250gを添加し、スラリーを形成した。そのガラス瓶中で、強力超音波ホーン(バイブラセル、ソニックス・アンド・マテリアルズ社)を用いて、約2分間スラリー中の粒子を超音波処理した。振盪機で、約1時間スラリーをよく撹拌混合した。0.160gの乾燥ウルテム1000重合体を、ガラス瓶中のスラリーに添加した。次に、振盪機で、ガラス瓶を約2時間よく混合した。1.003gの乾燥ウルテム1000重合体をスラリー溶液に添加し、導入量18重量%の非シラノール化CVX−7粒子を含む溶液を形成した。振盪機で約16時間ガラス瓶を再びよく混合した。閉じることができるプラスチック・グローブバック〔ペンシルバニア州チェルテンハムのインストルーメンツ・フォア・リサーチ・アンド・インダストリー(Instruments for Research and Industry)(登録商標名)〕を設定し、約200mlCHCl溶媒でほぼ飽和させた。
ウルテム/非シラノール化CVX−7スラリー溶液を、プラスチック・グローブバック中に入れた平らで清浄な水平安定化ガラス表面上に注いだ。ほぼ飽和した環境は、CHClの蒸発を遅くした。注型/ドクターブレードを用いて、溶液を引き伸ばすか、又は「注型」し、均一な厚さの湿潤膜を形成した。得られた液体膜を、ガラス皿を裏返しにしたカバーで覆い、蒸発を更に遅らせ、塵等と接触しないようにした。重合体フィルムからのCHCl溶媒は、約12時間の時間に亙りゆっくり蒸発した。厚さが約35μであると測定された乾燥フィルムを、ガラス基体から取り外した。得られた混合マトリックス膜フィルムを、150℃の真空炉中で約12時間乾燥した。
1枚のウルテム1000・CVX−7混合マトリックスフィルム(非シラノール化CVX−7が18重量%)を、例2に記載したように試験した。結果を、個々のガス透過率と共に表4に示す。
ウルテム1000・CVX−7混合マトリックス膜のCO/CHについての透過率比(選択性)は62.9であった。ウルテム1000・CVX−7混合マトリックス膜のCO/CH選択性及びCO透過率は、比較例1で調べたウルテム1000単独フィルムについて測定したものよりも向上していた。従って、この混合マトリックス膜は、混合マトリックス効果を示している。
18重量%のCVX−7ゼオライトを含むこのウルテム1000・CVX−7混合マトリックス膜について、ウルテム1000単独膜の対応する値よりも、CO/CH選択性が60%高く、CO透過率が107%高くなっていた。これらのCVX−7ゼオライト粒子を添加すると、膜の有利な性能向上を与えた。従って、これらのCVX−7ゼオライト分子篩粒子は、混合マトリックス膜中の分散相(挿入物)として良好な候補である。
3.6Åの結晶学的自由短径を有するCVX−7分子篩粒子は、膜への同じ導入量で一層大きなCO/CH選択性を生ずる点で、SSZ−13分子篩粒子に勝る利点を与えることに注意されたい。
例5:SAPO−17の製造及び試験
SAPO−17を、次のようにして製造した。48.8gのアルミニウムイソプロポキシド(アルドリッヒ)を、64.6gの脱イオン水に激しく混合しながら添加した。次にこの混合物を、混合機を用いて17.58gのオルト燐酸(85重量%)と混合し、10分間激しく混合した。次に1.56gのコロイドシリカ(ルドックスAS−30、デュポン)を添加し、次に3.24gのフッ化水素酸HF(48重量%、アルドリッヒ)を添加し、混合物を10分間撹拌した。次に、7.74gのシクロヘキシルアミン(アルドリッヒ)を添加し、混合物を5分間撹拌した。その混合物をプラスチック容器中に入れ、その容器を80℃の水浴中へ入れ、イソプロポキシドの分解生成物であるイソプロパノールを除去した。混合物の体積は、この手順の結果として、約40%減少した。
混合物を、テフロン(登録商標)裏打反応器へ入れ、200℃の炉中で撹拌することなく24時間加熱した。生成物を真空濾過により母液から分離した。それを、メタノール中に入れた0.1NのHCl溶液300mlで洗浄し、次に2.0リットルの脱イオン水で洗浄した。生成物を室温で一晩乾燥した。生成物の回折像は、文献から得られたSAPO−17エリオナイトのものと一致していた。
この材料を次の方法に従い空気中でか焼した。温度は室温から630℃まで1℃/分の速度で上昇させた。試料を630℃に6時間保ち、次に室温へ一晩で冷却した。この分子篩のマイクロポアー体積は、0.233cc/gであり、BET表面積は414m/gであった。
これらの分子篩のシリカ対アルミナ比(即ち、アルミナに対するシリカのモル比)は、約0.1であった。これらの分子篩を用いて、分子篩導入量15重量%の混合マトリックスフィルムをポリ酢酸ビニル(PVAc)を用いて製造し、然る後、そのフィルムを75℃で乾燥した。このフィルムのO、N、及びCO透過率について35℃及び50psiで試験し、0.54バレルの酸素透過率、7.2のO/N選択性及び47.4のCO/N選択性を与えた。
対照的に、PVAc単独膜の酸素透過率を測定し、0.53バレルであり、O/N選択性は5.91であり、CO/N選択性は34.7であった。
本明細書中上で、本発明を、その或る好ましい態様に関連して記述し、多くの詳細な点を例示の目的で記述してきたが、本発明は、変化させ易く、ここに記載した或る他の詳細な点は、本発明の基本的原理から離れることなくかなり変化させることができることは当業者に明らかであろう。
図1は、特別な膜の透過率及び選択性を試験するために用いられる分離装置の模式的図である。

Claims (20)

  1. 連続相有機重合体及びその中に分散した小気孔分子篩を含み、前記分子篩が、3.6Å以下の最大結晶学的自由短径を含んでなり、混合マトリックス効果を示す混合マトリックス膜。
  2. 分子篩が、3.0〜3.6Åの範囲の最大結晶学的自由短径を有する気孔を有する、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  3. 分子篩が、3.0〜3.4Åの範囲の最大結晶学的自由短径を有する気孔を有する、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  4. 分子篩が、3.0〜3.2Åの範囲の最大結晶学的自由短径を有する気孔を有する、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  5. 分子篩が、ERI、DDR、RHO、PAU、LEV、MER、AFX、AFT、及びGISの少なくとも一つのIZA構造型を有する、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  6. 分子篩が、MER、AFX、AFT、及びGISの少なくとも一つのIZA構造型を有する、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  7. 分子篩が、AFT、及びGISの少なくとも一つのIZA構造型を有する、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  8. 分子篩が、GISのIZA構造型を有する、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  9. 分子篩が、AlPO−17、SAPO−17、CVX−7、ZSM−58、LZ−214、ECR−18、SAPO−35、ゼオライトW、SAPO−56、AlPO−52、及びSAPO−43の少なくとも一種類を含む、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  10. 分子篩が、ゼオライトW、SAPO−56、AlPO−52、及びSAPO−43の少なくとも一種類を含む、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  11. 分子篩が、CVX−7を含み、CVX−7分子篩の数平均結晶子粒径を減少させるために表面錯化剤が用いられている、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  12. 分子篩が、3μより小さい平均粒径を有する、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  13. 分子篩が、0.2〜3.0μの平均粒径を有する、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  14. 分子篩が、0.2〜1.5μの平均粒径を有する、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  15. 分子篩が、0.2〜0.7μの平均粒径を有する、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  16. 分子篩が、全体的に長い形態を有し、10より小さなアスペクト比を有する、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  17. 分子篩が、全体的に長い形態を有し、5より小さなアスペクト比を有する、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  18. 分子篩が、全体的に長い形態を有し、1〜3のアスペクト比を有する、請求項1に記載の混合マトリックス膜。
  19. 連続相有機重合体相を与え、
    3.0〜3.6Åの範囲の最大結晶学的自由短径を有する小気孔分子篩を与え、
    前記連続相有機重合体を含む溶液中へ前記分子篩を分散させ、そして
    前記連続相有機重合体を分子篩の周りに固化し、混合マトリックス膜を生成させる、
    ことを含み、それにより前記混合マトリックス膜が混合マトリックス効果を示す、混合マトリックス膜の製造方法。
  20. 異なった分子の大きさを有するガス成分を、それらガス成分を含む供給物流から分離する方法において、
    (a)連続相有機重合体及びその中に分散した小気孔分子篩を有する混合マトリックス膜で、前記分子篩が3.0〜3.6Åの範囲の結晶学的自由短径を有し、供給物側及び透過物側を含む混合マトリックス膜を与え、そして
    (b)第一及び第二ガス成分を含む供給物流を前記膜の供給物側へ送り、前記供給物側から前記第一ガス成分が欠乏した保持流を取り出し、前記膜の前記透過物側から前記第一ガス成分に富む透過物流を取り出す、
    ことを含む、上記分離方法。
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