JP2011021235A - 深絞り性と曲げ加工性に優れた成形加工用アルミニウム合金板 - Google Patents

深絞り性と曲げ加工性に優れた成形加工用アルミニウム合金板 Download PDF

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Abstract

【課題】 Al−Mg−Si系成形加工用Al合金板として、成形加工性、特に深絞り性と曲げ加工性がともに優れたものを提供する。
【解決手段】 曲げ加工を施した際に、曲げの山側表面となる板面から全板厚の1/4の深さの位置までの領域内について、{111}、{011}、{112}、{123}各面の平均方位密度を、その順にA、B、C、Dとしたとき、2.0≦A>(B+C+D)を満たし、かつ板厚全域にわたっての{111}、{001}各面の平均方位密度を、その順にE、Fとしたとき、E/F≧1.5を満たす、平均ランクフォード値が1.0以上のAl−Mg−Si系高成形性Al合金板。
【選択図】なし

Description

この発明は、自動車のボディシート、その他各種車両用部品や、電子・電気機器のシャーシやパネル等の各種電子・電気機器部品等として、深絞りおよび曲げ加工を施して使用される成形加工用のアルミニウム合金板に関するものであり、特に深絞り性と曲げ加工性に優れたAl−Mg−Si系合金からなる成形加工用アルミニウム合金板とその製造方法に関するものである。
自動車のボディシートには、従来は冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では地球温暖化抑制やエネルギーコスト低減等のために、自動車を軽量化して燃費を向上させる要望が高まっており、そこで従来の冷延鋼板に代えて冷延鋼板とほぼ同等の強度で比重が約1/3であるアルミニウム合金板を自動車のボディシートに使用する傾向が増大しつつある。また自動車以外電子・電気機器等のパネル、シャーシの様な成形加工部品についても最近ではアルミニウム合金板を用いることが多くなっている。
ところで各種アルミニウム合金のうちでも、Al−Mg−Si系合金は、軽量であるばかりでなく、成形後の塗装焼付け処理時(ベーク時)に強度が向上するというベークハード性(BH性)を有するところから、自動車のボディシート等のプレス成形部品素材としてその有用性が増しつつある。自動車ボディシート向けのAl−Mg−Si系合金としては、AA6016合金、AA6022合金あるいはAA6111合金のT4処理材が多用されるようになっている。このようなAl−Mg−Si系アルミニウム合金からなる成形加工用素材の製造方法としては、従来一般にはDC鋳造法によって鋳造して均質化処理を施し、続いて熱間圧延してからさらに冷間圧延を行い、その後に溶体化処理を行う方法が適用されている。しかしながら従来の一般的な方法により製造されたAl−Mg−Si系の成形加工用アルミニウム合金板は、強度は冷延鋼板とほぼ同等であるものの、成形加工性、とりわけ深絞り性と曲げ加工性が冷延鋼板と比較して劣っているのが実情である。
ところで、冷延鋼板においては成形加工性、とりわけ深絞り性の指標としてr値(ランクフォード値)が従来から広く使用されている。そしてr値、特に平均r値が高いほど深絞り性が優れることが知られている。ここで平均r値とは、圧延方向に対して0°、45°、90°の各方向で測定したr値(r、r45、r90)の平均値であり、平均r値=(r+2×r45+r90)/4で表される値である。
一般に成形加工用素材では、深絞り性、曲げ加工性の両者ともに集合組織によって大きな影響を受けることが知られており、従来技術としても、{111}面に属する方位密度を高めて深絞り性を向上させるようにした特許文献1、2、3の技術、最終熱処理後も圧延集合組織を残存させて深絞り性を向上させるようにした特許文献4の技術、さらには、主に{001}面に属する方位密度を高めて曲げ加工性を向上させるようにした特許文献5、6、7、8の技術等がある。
特開2003−266104号公報 特開2005−139495号公報 特開2008−063623号公報 特開2006−161153号公報 特開2003−226927号公報 特開2003−268475号公報 特開2003−277870号公報 特開2004−323952号公報
上述のような従来技術は、いずれも、深絞り性と曲げ加工性をそれぞれ個別に向上させる上では有効であるが、深絞り性と曲げ加工性との両者が同時に優れたAl−Mg−Si系の成形加工用アルミニウム合金板を得るには未だ不充分であった。すなわち、深絞り性を向上させる目的で組織制御を行った特許文献1、2、3、4の技術の場合は、曲げ加工性が充分であるとは言えず、一方{001}面方位密度を高めて曲げ加工性を向上させる特許文献5、6、7、8の技術では、r値が低く深絞り性に乏しい板となってしまう。
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、自動車のボディシートをはじめとする各種車両部品、あるいは電子・電気機器のパネル等の各種電子・電気機器部品等として、成形加工を施して使用されるAl−Mg−Si系の成形加工用アルミニウム合金として、高強度を有すると同時に成形加工性、特に深絞り性と曲げ加工性の両者に同時に優れた高成形性アルミニウム合金板を提供することを課題とするものである。
前述のような課題を解決するべく本発明者等が種々の実験・検討を重ねた結果、板表面付近の特定の領域および板厚方向の全領域について、集合組織を前記各従来技術とは異なる態様で規制することにより、深絞り性に優れるばかりでなく、曲げ加工性も良好で平均r値が1.0以上となる高成形性Al−Mg−Si系合金板が得られることを見出した。すなわち、板表面から全板厚の1/4の深さまでの領域について、{111}面、{011}面、{112}面、{123}面のそれぞれの平均の方位密度を、相互の関係のもとに適切に制御すると同時に、板厚方向全領域における{111}面、{001}面のそれぞれの平均の方位密度を、相互の関係のもとに適切に制御することによって、深絞り性と曲げ加工性とが同時に優れたAl−Mg−Si系合金板が得られることを見出し、この発明をなすに至ったのである。
具体的には、請求項1の発明の深絞り性と曲げ加工性に優れた高成形性アルミニウム合金板は、深絞りおよび曲げ加工が施されて使用されるAl−Mg−Si系アルミニウム合金からなる成形加工用アルミニウム合金板において、曲げ加工を施した際に、曲げの山側表面となる板面から全板厚の1/4の深さの位置までの領域内において、X線回折による{111}、{011}、{112}、{123}の各面のそれぞれの平均方位密度をその順にA、B、C、Dとしたとき、下記(1)式を満たし、かつ板厚全域におけるX線回折による{111}、{001}各面のそれぞれの平均方位密度をその順にE、Fとしたとき、下記(2)式を満足し、しかも平均ランクフォード値が1.0以上であることを特徴とするものである。
2.0≦A>(B+C+D) ・・・(1)
E/F≧1.5 ・・・(2)
この発明によれば、集合組織を適切に制御することにより、ベークハード性を有し、かつ深絞り性に優れると同時に、曲げ加工性にも優れたAl−Mg−Si系の成形加工用アルミニウム合金板を確実かつ安定して得ることができる。
図1は、この発明の実施例で用いた曲げ評点見本である。
この発明に適用されるアルミニウム合金は、Al−Mg−Si系合金(いわゆる6000番系合金)であれば良く、その具体的組成は限定されないが、例えばMg0.3〜2.0%(mass%、以下同じ)およびSi0.3〜2.5%を含有し、残部がAlおよび不回避的不純物よりなる合金を使用することが望ましい。また上記のMgおよびSiのほか、さらにCu0.05〜1.5%、Mn0.01〜0.8%、Cr0.01〜0.3%、Zr0.01〜0.2%、およびV0.01〜0.2%のうちの1種または2種以上を含有するものを用いることができる。
ここで、この発明で適用されるAl−Mg−Si系合金について、その成分組成として上記の範囲内のものが望ましいとした理由は、次の通りである。
Mg:
Mgはこの発明で対象としている系の合金で基本となる合金元素であって、Siと共同して強度向上に寄与する。Mg量が0.3%未満では塗装焼付時に析出硬化によって強度向上に寄与するG.P.ゾーンの生成量が少なくなるため、充分な強度向上が得られず、一方2.0%を越えれば、粗大なMg−Si系の金属間化合物が生成され、成形性、特に曲げ加工性が低下するから、Mg量の望ましい範囲は0.3〜2.0%とした。
Si:
Siもこの発明の系の合金で基本となる合金元素であって、Mgと共同して強度向上に寄与する。またSiは、鋳造時に金属Siの晶出物として生成され、その金属Si粒子の周囲が加工によって変形されて、溶体化処理の際に再結晶核の生成サイトとなるため、再結晶組織の微細化にも寄与する。Si量が0.3%未満では上記の効果が充分に得られず、一方2.5%を越えれば粗大なSi粒子や粗大なMg−Si系の金属間化合物が生じて、曲げ加工性の低下を招く。したがってSi量は0.3〜2.5%の範囲内が好ましい。
Cu:
Cuは強度向上および成形性向上のために添加されることがある元素であるが、0.05%未満ではその効果が少なく、一方その量が1.5%を越えれば成形性や耐食性(耐粒界腐食性、耐糸錆性)が低下するから、Cuの添加量は0.05〜1.5%の範囲内とすることが望ましい。
Mn、Cr、Zr、V:
これらの元素は、強度向上と結晶粒の微細化および組織の安定化に効果がある元素であるが、いずれも含有量が0.03%未満では上記の効果が充分に得られず、一方Mnが0.8%を、Cr含有量が0.3%を、Zr、Vの含有量がそれぞれ0.2%を越えれば、上記の効果が飽和するばかりでなく、多数の金属間化合物が生成されて成形性、特に曲げ加工性に悪影響を及ぼすおそれがあり、したがってMnは0.01〜0.8%、Crは0.01〜0.3%、Zrは0.01〜0.2%、VはV0.01〜0.2%の範囲内が好ましい。
なおまた、一般のAl合金においては、結晶粒微細化のために0.005〜0.2%程度のTiを添加することがあり、また同じ目的でTiと同時に500ppm以下のBを添加することもあり、この発明の場合も上記の範囲内でTi、あるいはTiおよびBを添加することは許容される。
この発明の高成形性アルミニウム合金板においては、集合組織に関する条件として、曲げ加工を施した際に、曲げの山側表面となる板面から全板厚の1/4の深さの位置までの領域内において、X線回折による{111}、{011}、{112}、{123}各面についてのそれぞれの平均方位密度をその順にA、B、C、Dとしたとき、下記(1)式を満たし、かつ板厚全域におけるX線回折による{111}、{001}各面についてのそれぞれの平均方位密度をその順にE、Fとしたとき、下記(2)式を満足し、更に平均ランクフォード値が1.0以上であることを規定している。
2.0≦A>(B+C+D) ・・・(1)
E/F≧1.5 ・・・(2)
ここで{001}面は、曲げ異方性が少なく、かつ曲げ加工性に優れるが、深絞り性に乏しい面であり、一方{011}、{112}、{123}の各面は深絞り性の指標である平均r値向上には効果があるが、曲げ異方性が強くなって曲げ加工性を劣化させる面である。一方{111}面は、既に述べたように深絞り性に優れた面であり、かつ{001}面には及ばないものの、曲げ異方性が少なく曲げ加工性も良好な面である。そこで板厚方向の各位置におけるこれらの各面の方位密度と深絞り性および曲げ加工性との関係について、本発明者等が詳細な実験を繰返した結果、(1)式、(2)式を満たすことにより、深絞り性と曲げ加工性を同時に満足させ得ることが判明した。
ここで、再結晶集合組織が(1)式を満たさない場合、良好な曲げ加工性を得られず、また(2)式を満たさない場合は良好な深絞り性が得られない。r値も成形性、特に深絞り性の指標として活用されており、既に述べた式で示される平均r値が0.9未満では良好な深絞り性が得られず、また好ましくは1.0以上であることが特許文献2に記載されており、この発明でも特に良好な深絞り性を得るため、平均r値は1.0以上であることが必要である。したがってこの発明では、高成形性アルミニウム合金板の集合組織、特性条件としてこれらの条件を規定した。
なおこれらの範囲内でもより好ましくは、次の(3)式、(4)式を満たすことが望ましい。
3.0≦A>(B+C+D) ・・・(3)
E/F≧2.0 ・・・(4)
これらの(3)式、(4)式を同時に満たすことにより、深絞り性と曲げ加工性をより高い水準で両立させた板材を得ることができる。
さらに、より一層高い水準で深絞り性と曲げ加工性を両立させるためには、次の(5)式、および前記(4)式とを満たさせることが望ましい。
8.0≦A>(B+C+D) ・・・(5)
ここで、通常の圧延板は、板表面から板厚内部まで集合組織が変化しているのが一般的である。そこで上述のような各面の方位密度A〜Fは、それぞれの領域の平均で表わすこととした。但し実際の測定においては、曲げ加工を施した際に、曲げの山側表面となる板面から全板厚の1/4の深さの位置までの領域での平均方位密度は、板表面の位置と、板表面から板厚方向に全板厚の1/8、2/8の各位置における方位密度を測定し、それらを平均することで求めた。同様に全板厚での平均の方位密度は、板表面、板裏面の各位置に加え、板表面から板厚方向に全板厚の1/8毎の各位置で測定した方位密度の平均値とした。
またここで、X線回折による各面の方位密度は以下のように定義される。
すなわち、{111}、{200}、{220}面の正極点図から3次元結晶方位分布関数(ODF)を計算し、各面毎に以下に示すBunge法における角度範囲から10°の角度内にある最大方位密度を各面の方位密度とした。
{001}面(φ=0〜90°、Φ=0°、φ=0°)
{011}面(φ=0〜90°、Φ=45°、φ=0°)
{112}面(φ=0〜90°、Φ=35°、φ=45°)
{123}面(φ=0〜90°、Φ=35°、φ=65°)、(φ=0〜90°、Φ=35°、φ=25°)
{111}面(φ=0〜90°、Φ=55°、φ=45°)
この発明の高成形性アルミニウム合金板を製造する方法は特に限定されるものではなく、要は各領域の方位密度が前述のように制御されれば良く、そのための方法としては種々考えられるが、後述するように熱間圧延後に、温間での異周速圧延、あるいは片ロール駆動圧延などを行なって、板に充分な剪断歪みを付与することが、前記条件を満たす板を得るために好適である。
そこで次にこの発明の高成形性アルミニウム合金板を得るための代表的な製造方法について説明する。
例えば、先ずAl−Mg−Si系合金からなるアルミニウム合金の溶湯を常法に従って溶製し、半連続鋳造(DC鋳造)などの通常の鋳造法により鋳造する。得られた鋳塊に対し、450〜570℃で0.5〜24時間の均質化処理を行ない、その後、従来の一般的な方法に従って熱間圧延を行なう。なお熱間圧延開始温度は350〜520℃、熱間圧延の終了板厚は10〜120mmとするのが好ましい。
熱間圧延後には、対となる上下圧延ロールのロール径が異なるロールを用いて、異周速圧延の一種である異径圧延を温間で行ない、板に充分な剪断歪を付与することが望ましい。なおこのように板に充分な剪断歪みを付与するためには、上述した異径圧延のほか、上下のロール径は同じであるが回転数が異なる異周速圧延、あるいは片ロール駆動圧延などを適用することができる。
異径圧延の条件としては、150〜300℃の温度域で、上下ロール径比を1.2〜2.5の範囲内とし、さらに最終2パスに関しては、以下の(1)〜(3)の条件を満足させることが望ましい。
(1)最終パス前のパスでのロール径比1.7〜2.5
(2)最終パスでのロール径比1.2〜1.5
(3)最終2パスでの圧延率80%以上
但し、この異径圧延は2パスのみで行なっても良い。
異径圧延後は、大径ロール側の板表面から板厚深さ方向に3/5以上の部位を除去することが好ましい。このように大径ロール側から板厚方向に3/5以上の部位を面削除去して、小径ロール側の板表面に近い部分の集合組織からなる板材とすることにより、非面削側の表面層(表面から全板厚の1/4の深さの位置までの領域)と全板厚の集合組織が前述の(1)式、(2)式の条件を同時に満たす板を得ることが可能となるのである。このような面削の具体的手法は、特に限定されるものではなく、例えば通常の面削と同様の手法により、必要としない3/5以上の部位を切削すれば良い。
また面削に続いては、圧下率5%以下のスキンパス圧延を施すことが好ましい。このスキンパス圧延は、板材の平坦度および表面形状の改善を目的とするものである。なお、スキンパス圧延として5%を越える圧下率を加えた場合には、最終板で前述の集合組織が得られない可能性がある。
以上のようにして所定の板厚としたAl−Mg−Si系合金板に、再結晶と兼ねて溶体化処理を施すことにより、前述した(1)式、(2)式による集合組織の規定を満足する、深絞り性と曲げ加工性に優れた高成形性アルミニウム合金板を容易に得ることができる。この溶体化処理は、加熱温度460〜580℃とすることが望ましい。ここで溶体化処理は、CAL(連続焼鈍装置)により実施可能であり、その場合の保持時間は0分(すなわち温度到達直後直ちに冷却)〜5分とし、5℃/秒以上の急速加熱及び急速冷却で実施することが好ましい。このような連続式の溶体化処理は、実験室的にはソルトバス加熱及び水焼入れあるいは強制空冷することによって模擬することができる。
なおAl−Mg−Si系合金は、溶体化処理後の室温時効性が高いため、溶体化処理後加工するまでの期間が長ければ、強度が上昇して成形性が低下してしまう。そこでこのような室温時効性を緩和するため、溶体化処理後、安定化処理として、連続焼鈍炉と同様な炉を用いての150〜300℃で5分以内の連続加熱処理、もしくは60〜150℃で0.5〜24時間のバッチ加熱処理を施しても良い。
なおまた、既に述べたように、熱間圧延後の充分な剪断歪み導入のためには、異径圧延に代えて、上下のロール径が同じで回転数が異なる異周速圧延を適用しても良い。
この場合の異周速圧延の具体的条件は特に限定しないが、異径圧延と同様の温度、上下のロール周速比で行なうことが望ましい。またこの場合も、異径圧延を適用した場合と同様に、圧延後、高周速ロール側の板表面から3/5以上の部位を除去し、その後に前記同様に圧延率5%以下のスキンパスを行なうことが望ましい。さらに、その後の溶体化処理や安定化処理についても前記と同様である。
表1の合金符号A〜Dに示す各成分組成のAl−Mg−Si系合金を常法に従って溶解し、厚さ80mm、幅200mmの断面を有するDC鋳塊とした。得られた鋳塊に500℃×5時間の均質化処理を施し、さらに450℃×2時間の予備加熱を施した後、表2中に記載された各板厚まで熱間圧延した。これらの熱延板について、表2中に示す製造プロセス番号1〜8に示す条件で圧延加工(製造プロセス番号1〜4、7、8は異径圧延、製造番号5、6は通常の同径ロールでの圧延)を行ない、所定の最終板厚(1.0mm)とした後、再結晶処理を兼ねて溶体化処理を行なった。この溶体化処理はソルトバスを用いて、530℃に加熱して30秒保持した後、強制空冷する条件で実施した。なお、表2中の圧延前(熱間圧延後)には、各元材をそれぞれ所定の圧延温度で2時間保持する予備加熱を行なった。なお熱間圧延後の各圧延は、圧延機において直径180mmの圧延ロールを基準ロール(異径圧延での小径側ロール)とし、対となるロール(異径圧延での大径側ロール)を、設定したロール径比に応じて交換して行なった。またここで、外部に取り付けたヒーターで加熱を行ない、ロールを所定温度に維持しながら圧延を行なった。更に、ロール交換作業中に材料温度が低下してしまった場合は、所定の圧延温度で再度2時間保持した後、圧延を行なった。
ここで、材料評価を行う際には、基準ロール側の面を表と定義し、表側と裏側とを明確に区別して試験を行なった。
以上のようにして得られた溶体化処理後の各板について、圧延方向(0°)にJIS5号試験片を切り出し、引張試験により引張強さ(TS)、耐力(YS)および伸び(EL)を評価した。またベークハード性の評価としては、塗装焼付け処理を想定した185℃×20分の加熱後の耐力(ABYS)を調査した。これらの結果を表3、表4に示す。
板の表側の表面と裏側の表面の位置に加え、板厚方向に全板厚の1/8毎の各位置でX線回折により純アルミニウム粉末(ランダム方位試料)に対する圧延板の極点図を測定し、3次元方位分布密度(ODF)解析を行ない、{111}、{011}、{123}、{112}、{001}面の方位密度を求めた。ここで、各面の方位密度は以下に示すBunge法における角度範囲から10°の角度内にある最大方位密度とする。
{001}面(φ=0〜90°、Φ=0°、φ=0°)
{011}面(φ=0〜90°、Φ=45°、φ=0°)
{112}面(φ=0〜90°、Φ=35°、φ=45°)
{123}面(φ=0〜90°、Φ=35°、φ=65°)、(φ=0〜90°、Φ=35°、φ=25°)
{111}面(φ=0〜90°、Φ=55°、φ=45°)
また、板の表側の表面から全板厚の1/4までの領域における方位密度は、板の表側の表面の位置と、その表面から板厚方向に全板厚の1/8、2/8の各位置における方位密度を測定し、それらを平均することにより求めた。同様に全板厚領域での平均方位密度は、板の表側の表面の位置と、板厚方向に全板厚の1/8毎の各位置および板の裏側の表面の各測定位置における方位密度の平均値とした。平均r値は、圧延方向に対して0°、45°、および90°方向にJIS5号試験片を採取し、15%歪みでの各方向r値を測定して前述の式から算出し、深絞り性は限界絞り比(LDR)を測定して評価した。さらに曲げ加工性は、圧延方向に対して0°、45°、90°方向に曲げ試験片を採取し、1mmt(曲げ半径0.5mmt)の中板を挟んで、表面が曲げの山側となるように180°曲げ試験を行った。図1に示す曲げ評点見本と照らし合わせて、各方向の曲げ評点を評価し、それらを平均することで平均曲げ評点を算出した。これらの結果を表5、表6に示す。なお、曲げ評点は、高いほど曲げ加工性が良好であることを表す。
表3、表5に示すように、上述の(1)、(2)式を供に満たす本発明例1〜16では、いずれも高いBH性を示すと同時に、平均r値1.0以上が得られ、LDRで表される深絞り性、平均曲げ評点で表される曲げ加工性も良好であった。
一方、表4、表6に示すように、比較例1〜13の場合は、いずれかの性能が本発明例より劣っていた。
すなわち、従来の通常の冷間圧延を施して得た比較例1、4、8、11では、前述の(1)、(2)式をともに満足せず、平均r値、LDR、平均曲げ評点が本発明例より低くなってしまった。
また、高r値材である比較例2、6、9、12では、平均r値が高く良好な深絞り性を示したが、前述の(1)式を満足せず、平均曲げ評点が発明例より低くなってしまった。
一方、発明例と面削量が異なる比較例3、7、10、13では、曲げ加工性は良好であったが、前述の(2)式を満足せず、平均r値、LDRが発明例より低くなってしまった。
さらに、{001}面方位密度を高めた比較例5では、良好な曲げ加工性を示したが、上述の(1)、(2)式をともに満足せず、平均r値、LDRが発明例より低くなってしまった。

Claims (1)

  1. 深絞りおよび曲げ加工が施されて使用されるAl−Mg−Si系アルミニウム合金からなる成形加工用アルミニウム合金板において、
    曲げ加工を施した際に、曲げの山側表面となる板面から全板厚の1/4の深さの位置までの領域内において、X線回折による{111}、{011}、{112}、{123}の各面のそれぞれの平均方位密度をその順にA、B、C、Dとしたとき、下記(1)式を満たし、かつ板厚全域におけるX線回折による{111}、{001}各面のそれぞれの平均方位密度をその順にE、Fとしたとき、下記(2)式を満足し、しかも平均ランクフォード値が1.0以上であることを特徴とする、深絞り性と曲げ加工性に優れた成形加工用アルミニウム合金板。
    2.0≦A>(B+C+D) ・・・(1)
    E/F≧1.5 ・・・(2)
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