以下、本発明の一実施形態を図1〜図14を用いて説明する。図1には、一実施形態に係るレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
このレーザプリンタ1000は、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングユニット1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、排紙トレイ1043、通信制御装置1050、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置1060などを備えている。なお、これらは、プリンタ筐体1044の中の所定位置に収容されている。
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
感光体ドラム1030は、円柱状の部材であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、図1における矢印方向に回転するようになっている。
帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングユニット1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に沿って、帯電チャージャ1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングユニット1035の順に配置されている。
帯電チャージャ1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。
光走査装置1010は、帯電チャージャ1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、上位装置からの画像情報に基づいて変調された光束により走査し、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した潜像を形成する。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。
トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ1032に供給される。
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着した潜像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、該給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚づつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。該レジストローラ対1039は、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、該記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。
定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次スタックされる。
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電チャージャ1031に対向する位置に戻る。
次に、前記光走査装置1010の構成について説明する。
この光走査装置1010は、一例として図2に示されるように、偏向器側走査レンズ11a、像面側走査レンズ11b、ポリゴンミラー13、光源14、カップリングレンズ15、開口板16、シリンドリカルレンズ17、反射ミラー18、及び走査制御装置(図示省略)などを備えている。そして、これらは、ハウジング30の中の所定位置に組み付けられている。
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
カップリングレンズ15は、光源14から出力された光束を略平行光とする。
開口板16は、開口部を有し、カップリングレンズ15を介した光束のビーム径を規定する。
シリンドリカルレンズ17は、開口板16の開口部を通過した光束を、反射ミラー18を介してポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に副走査対応方向に関して結像する。
光源14とポリゴンミラー13との間の光路上に配置される光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。本実施形態では、偏向器前光学系は、カップリングレンズ15と開口板16とシリンドリカルレンズ17と反射ミラー18とから構成されている。
ポリゴンミラー13は、一例として内接円の半径が18mmの6面鏡を有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面となる。このポリゴンミラー13は、副走査対応方向に平行な軸の周りを等速回転しながら、反射ミラー18からの光束を偏向する。
偏向器側走査レンズ11aは、ポリゴンミラー13で偏向された光束の光路上に配置されている。
像面側走査レンズ11bは、偏向器側走査レンズ11aを介した光束の光路上に配置されている。そして、この像面側走査レンズ11bを介した光束が、感光体ドラム1030の表面に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー13の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム1030上を走査する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」である。また、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
ポリゴンミラー13と感光体ドラム1030との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施形態では、走査光学系は、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bとから構成されている。なお、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bの間の光路上、及び像面側走査レンズ11bと感光体ドラム1030の間の光路上の少なくとも一方に、少なくとも1つの折り返しミラーが配置されても良い。
光源14は、一例として図3に示されるように、面発光レーザ素子100を有している。なお、本明細書では、レーザ発振方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な面内における互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向として説明する。
面発光レーザ素子100は、発振波長が780nm帯の面発光レーザ素子であり、基板101、バッファ層102、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109などを有している。
基板101は、表面が鏡面研磨面であり、図4(A)に示されるように、鏡面研磨面(主面)の法線方向が、結晶方位[1 0 0]方向に対して、結晶方位[1 1 1]A方向に向かって15度(θ=15度)傾斜したn−GaAs単結晶基板である。すなわち、基板101はいわゆる傾斜基板である。ここでは、図4(B)に示されるように、結晶方位[0 −1 1]方向が+X方向、結晶方位[0 1 −1]方向が−X方向となるように配置されている。
図3に戻り、バッファ層102は、基板101の+Z側の面上に積層され、n−GaAsからなる層である。
下部半導体DBR103は、バッファ層102の+Z側の面上に積層され、n−Al0.93Ga0.07Asからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを42.5ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学的厚さとなるように設定されている。なお、光学的厚さがλ/4のとき、その層の実際の厚さDは、D=λ/4n(但し、nはその層の媒質の屈折率)である。
下部スペーサ層104は、下部半導体DBR103の+Z側に積層され、ノンドープのAl0.33Ga0.67Asからなる層である。
活性層105は、下部スペーサ層104の+Z側に積層され、GaInAsP/Al0.33Ga0.67Asからなる3重量子井戸構造の活性層である。
上部スペーサ層106は、活性層105の+Z側に積層され、ノンドープのAl0.33Ga0.67Asからなる層である。
下部スペーサ層104と活性層105と上部スペーサ層106とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、その厚さが1波長の光学的厚さとなるように設定されている。なお、活性層105は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
上部半導体DBR107は、上部スペーサ層106の+Z側に積層され、p−Al0.93Ga0.07Asからなる低屈折率層とp−Al0.33Ga0.67Asからなる高屈折率層のペアを32ペア有している。各屈折率層の間には組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
上部半導体DBR107における低屈折率層の1つには、p−Al0.99Ga0.01Asからなる被選択酸化層が厚さ30nmで挿入されている。この被選択酸化層の挿入位置は、上部スペーサ層106から2ペア目の低屈折率層中である。
コンタクト層109は、上部半導体DBR107の+Z側に積層され、p−GaAsからなる層である。
なお、このように基板101上に複数の半導体層が積層されたものを、以下では、便宜上「積層体」ともいう。
図5には、面発光レーザ素子100を製造する際に用いられる酸化装置6000が示されている。この酸化装置6000は、水蒸気供給部6010、ステンレス製反応容器6020、導入管6030、排気管6040、水捕集器6050及び温度コントローラ(図示省略)などを有している。
水蒸気供給部6010は、マスフローコントローラ6011、気化器6012、液体マスフローコントローラ6013、及び水供給器6014を備えている。また、ステンレス製反応容器6020内には、酸化対象物が載置されるトレイ6021、該トレイ6021を介して酸化対象物を加熱するためのセラミックヒータ6024を内蔵する円板状の加熱テーブル6022、酸化対象物の温度を計測する熱電対6025、加熱テーブル6022を保持し回転可能な基台6023が収容されている。
温度コントローラは、熱電対6025の出力信号をモニタしながらセラミックヒータ6024に供給する電流(又は電圧)を制御し、酸化対象物を指定された温度(保持温度)で指定された時間(保持時間)保持する。
水蒸気供給部6010では、水蒸気を含むN2キャリアガスが酸化雰囲気ガスとして生成される。この酸化雰囲気ガスは導入管6030を介してステンレス製反応容器6020内に供給される。
ステンレス製反応容器6020内に供給された酸化雰囲気ガスは、酸化対象物の周囲に供給される。これによって、酸化対象物は水蒸気雰囲気にさらされることとなり、酸化対象物は酸化される。その後、酸化雰囲気ガスは、排気管6040及び水捕集器6050を介して排気される。
トレイ6021は、図6(A)及び該図6(A)のA−A断面図である図6(B)に示されるように、外形が円柱状のカーボン製の部材である。トレイ6021の+Z側の面は、球面状の凸面であり、その周囲が壁で囲まれている。ここでは、R1=84.5mmφ、R2=77.3mmφ、R3=73.3mmφ、h1=6.2mm、h2=5.5mm、h3=5.3mm、である。
このトレイ6021の凸面は、上記保持温度での酸化対象物のそり形状に倣った形状である。
ここで、基板の厚さD、基板の熱膨張係数αs、基板のヤング率Es、基板のポアソン比νs、薄膜の膜厚d、薄膜の熱膨張係数αf、薄膜のヤング率Ef、薄膜のポアソン比νf、温度変化ΔTを用い、t=d/D、e=[Ef/(1−νf)]/[Es/(1−νs)]としたときに、e・t≪1であって、基板のそりが、基板と薄膜の熱膨張率の差による熱応力だけに起因すると仮定した場合、基板の曲率(1/R)DTEは、次の(1)式で示される(馬来、「薄膜の内部応力の推定法と発生原因」、応用物理、57巻、p1856−1867、1988参照)。
(1/R)DTE=6[Ef(1−νs)d/Es(1−νf)D2](αf−αs)ΔT ……(1)
本実施形態では、酸化温度を365℃とするため、酸化対象物のそり形状は、上記(1)式から、曲率半径100cmの曲面である。
そこで、トレイ6021の凸面は、曲率半径100cmの曲面としている。
また、凸面の周囲の壁は段付き構造部を有している。この段付き構造部は、互いに120度離れた3ヶ所の段部に突起が形成されている。そして、一例として図7に示されるように、段付き構造部の突起で酸化対象物が支持されるようになっている。この場合、酸化対象物は、トレイ6021の+Z側の面に3点で支持されている。
また、支持されている部分を除き、トレイ6021の+Z側の面と酸化対象物との間隔は、酸化対象物の中心部から少なくとも一つの方向の周辺部にかけて均一である。
なお、図6(A)、図6(B)及び図7では、分かりやすくするため、トレイ6021の凸面は誇張して図示している。同様に、図7では、酸化対象物のそりを誇張して図示している。
次に、面発光レーザ素子100の製造方法について説明する。
(1)上記積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)あるいは分子線エピタキシャル成長法(MBE法)による結晶成長によって作成する。
ここでは、III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料には、フォスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を用いている。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)、ジメチルジンク(DMZn)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
(2)積層体の表面に所望のメサ形状に対応する1辺が25μmの正方形状のレジストパターンを形成する。
(3)ICPドライエッチング法で、上記レジストパターンをフォトマスクとして四角柱状のメサを形成する。ここでは、エッチングの底面は下部スペーサ層104中に位置するようにした。
(4)フォトマスクを除去する。
ここで積層体のそりを三次元測定器によって計測したところ、一例として図8に示されるように、外周部に対して中心部が盛り上がるような上に凸面状を示し、中心部からある一つの方向でのそり量は135μmであった。
(5)メサが形成された積層体を酸化対象物として、上記酸化装置6000にセットし、酸化処理を行う。ここでは、メサの外周部から被選択酸化層108中のAl(アルミニウム)が選択的に酸化される。そして、メサの中央部に、Alの酸化物108aによって囲まれた酸化されていない領域108bを残留させる。これにより、発光部の駆動電流の経路をメサの中央部だけに制限する、酸化狭窄構造体が形成される。上記酸化されていない領域108bが電流通過領域(電流注入領域)である。
ここで、酸化装置6000による酸化処理の詳細について説明する。
(5−1)トレイ6021にメサが形成された積層体を載せる。積層体は、トレイ6021に3点で支持されている。
(5−2)積層体とともにトレイ6021を加熱テーブル6022上に載置する。
(5−3)水蒸気供給部により、所定の水蒸気量と所定のN2キャリアガスからなる酸化雰囲気ガスをステンレス製反応容器内に導入する。
(5−4)温度コントローラに対して保持温度を365℃に設定し、セラミックヒータ6024によるトレイ6021の加熱を開始する。これにより、トレイ6021は、一定の昇温速度で365℃に加熱される。
(5−5)保持温度に到達後、所定の時間(保持時間)が経過すると、加熱を停止し、温度を急激に下げる。なお、ここでの処理は、温度コントローラによって自動的に行われる。
(5−6)ステンレス製反応容器から積層体を取り出す。これにより、積層体の酸化処理が完了する。
上記のようにして酸化処理された各メサにおける酸化狭窄構造体をIR顕微鏡で観察したところ、X軸方向において(図6(A)参照)、積層体の中心部にあるメサとの酸化速度の差は、図9に示されるように、0.015μm/min以内であった。
そして、各メサにおける電流通過領域の面積は、図10に示されるように、ばらつきが小さくなり、製造歩留りが向上した。
(6)酸化処理が完了した積層体に対して、気相化学堆積法(CVD法)を用いて、SiN、SiONあるいはSiO2からなる保護層111を形成する。
(7)メサ上部にP側電極コンタクトの窓開けを行う。ここでは、フォトレジストによるマスクを施した後、メサ上部の開口部を露光してその部分のフォトレジストを除去し、BHFにて保護層111をエッチングして開口した。
(8)メサ上部の光射出部となる領域に一辺10μmの正方形状のレジストパターンを形成し、p側の電極材料の蒸着を行なう。p側の電極材料としてはCr/AuZn/Auからなる多層膜、もしくはTi/Pt/Auからなる多層膜が用いられる。
(9)光射出部の電極材料をリフトオフし、p側の電極113を形成する。
(10)基板101の裏側を所定の厚さ(例えば100μm程度)まで研磨した後、n側の電極114を形成する。ここでは、n側の電極114はAuGe/Ni/Auからなる多層膜である。
(11)アニールによって、p側の電極113とn側の電極114のオーミック導通をとる。これにより、メサは発光部となる。
(12)チップ毎に切断する。
また、同様の積層体をさらに2枚作製し、酸化装置6000を用いて上記と同様にして酸化処理を行った。その結果、3枚の積層体間での酸化速度のばらつきは、±0.005μm/minであり、従来よりも、非常に小さくなった。
ところで、比較のために、メサが形成された積層体を酸化処理する際に、前記トレイ6021に代えて、図11(A)及び該図11(A)のA−A断面図である図11(B)に示されるように、+Z側の面が平坦な面である従来のトレイ6021Gを用いた。この場合には、積層体はトレイ6021Gの底面と線接触で支持されている(図12参照)。そして、各メサにおける酸化狭窄構造体をIR顕微鏡で観察したところ、積層体の中心部にあるメサとの酸化速度の差は、図13に示されるように、0.080μm/minにまで達した。これは、本実施形態の5倍以上である。そして、各メサにおける電流通過領域の面積は、図14に示されるように、ばらつきが大きく、製造歩留りは本実施形態よりも低かった。
また、特許文献4及び特許文献5に開示されている気相成長用サセプタにおける底面の形状では、ばらつきが大きく、製造歩留りは本実施形態よりも低かった。
以上の説明から明らかなように、上記面発光レーザ素子100の製造方法において、本発明の酸化装置が用いられ、本発明の面発光レーザ素子の製造方法が実施されている。
以上説明したように、本実施形態に係る面発光レーザ素子100の製造方法によると、基板101上に下部半導体DBR103、活性層105を含む共振器構造体、被選択酸化層108を有する上部半導体DBR107などが積層された積層体を作成し、該積層体を上面からエッチングし、少なくとも被選択酸化層108が側面に露出しているメサを形成している。そして、酸化装置6000を用いて被選択酸化層108をメサの側面から選択的に酸化させ、酸化物が電流通過領域を取り囲んでいる狭窄構造体を作成している。
酸化装置6000は、ステンレス製反応容器6020を有し、該ステンレス製反応容器6020内には、積層体が載置されるトレイ6021、該トレイ6021を介して積層体を加熱するためのセラミックヒータ6024を内蔵する円板状の加熱テーブル6022などが収容されている。
トレイ6021は、+Z側の面が酸化温度での積層体のそり形状に倣った形状を有し、その周囲が壁で囲まれている。そして、壁における互いに120度離れた3ヶ所には、それぞれ突起が形成され、その突起で積層体が支持されるようになっている。また、支持されている部分を除き、トレイ6021の+Z側の面と積層体との間隔は、均一である。
この場合は、積層体に形成された複数のメサにおける被選択酸化層の酸化距離のばらつきを小さくすることができる。
そこで、面発光レーザ素子100の製造歩留まりを、従来よりも向上させることが可能である。
また、本実施形態に係る光走査装置1010によると、光源14が面発光レーザ素子100を含んでいるため、高コスト化を招くことなく、高い精度の光走査を行うことが可能である。
また、本実施形態に係るレーザプリンタ1000によると、光走査装置1010を備えているため、結果として高コスト化を招くことなく、高品質の画像を形成することが可能である。
なお、上記実施形態において、複数のメサが形成された積層体を酸化処理する際に、前記トレイ6021に代えて、図15(A)及び該図15(A)のA−A断面図である図15(B)に示されるように、+Z側の面が周辺部から中心部に向かってステップ状に高くなっている多段形状であるトレイ6021Aを用いても良い。この多段形状は、上記保持温度での酸化対象物のそり形状に倣った形状に近似している。
このトレイ6021Aの+Z側の面は、一例として7段構造である。そして、最も低い位置を1段目、最も高い位置を7段目とすると、Z軸方向からみたときに、7つの段部は同心円形状であり、7段目の直径R9は20mm、6段目の直径R8は28mm、5段目の直径R7は34mm、4段目の直径R6は40mm、3段目の直径R5は46mm、2段目の直径R4は50mmである。
また、一例として図16に示されるように、1段目と7段目の高さの差S6は0.06mm、2段目と7段目の高さの差S5は0.025mm、3段目と7段目の高さの差S4は0.02mm、4段目と7段目の高さの差S3は0.015mm、5段目と7段目の高さの差S2は0.01mm、6段目と7段目の高さの差S1は0.005mmである。
このときも、積層体は、トレイ6021Aの+Z側の面に3点で支持されている。また、支持されている部分を除き、トレイ6021Aの+Z側の面と積層体との間隔は、ほぼ均一である(図17参照)。
トレイ6021Aを用いて酸化処理された各メサにおける酸化狭窄構造体をIR顕微鏡で観察したところ、X軸方向において(図15(A)参照)、積層体の中心部にあるメサとの酸化速度の差は、図18に示されるように、0.030μm/min以内であった。
そして、各メサにおける電流通過領域の面積は、図19に示されるように、ばらつきが従来よりも小さくなり、面発光レーザ素子100の製造歩留りが従来よりも向上した。
なお、トレイ6021を用いた場合と、トレイ6021Aを用いた場合と、トレイ6021Gを用いた場合とをまとめたものが、図20及び図21に示されている。これからも明らかなように、トレイ6021を用いた場合及びトレイ6021Aを用いた場合は、トレイ6021Gを用いた場合よりも著しくばらつきが小さい。
また、上記実施形態において、メサが形成された積層体を酸化処理する際に、前記トレイ6021に代えて、図22(A)及び該図22(A)のA−A断面図である図22(B)に示されるトレイ6021Bを用いても良い。このトレイ6021Bの+Z側の面は、球面状の凸面であり、その周囲が壁で囲まれている。そして、壁は、全周にわたって段付き構造部を有し、一例として図23に示されるように、その段部で積層体が支持されるようになっている。すなわち、積層体は、トレイ6021Bの+Z側の面に線接触している。
トレイ6021Bを用いて酸化処理された各メサにおける酸化狭窄構造体をIR顕微鏡で観察したところ、積層体の中心部にあるメサとの酸化速度の差は、0.015μm/min以内であった。これは、トレイ6021を用いた場合と同じである。そして、各メサにおける電流通過領域の面積は、ばらつきが小さくなり、面発光レーザ素子100の製造歩留りが向上した。
また、同様の積層体をさらに2枚作製し、トレイ6021Bを用いて上記と同様にして酸化処理を行った。その結果、3枚の積層体間での酸化速度のばらつきは、±0.015μm/minであった。これは、トレイ6021を用いた場合の3倍であるが、従来よりも小さい値である。
また、積層体のそり量を詳細に測定したところ、積層体のそり量は中心から各方向に対称に均一にそった球面状ではなく、図32に示されるように、0°方向では約135μm、90°方向では約125μmであり、中心部からの方向でそり量に違いが見られた。
そこで、X軸方向の曲率半径を100cm、Y軸方向の曲率半径を110cmとし、その間は両者の勾配を均等に補正するような曲率半径を有する形状を持つトレイを用いて、酸化処理を行った。なお、該トレイと積層体との間隔は、支持されている部分を除き、均一である。そして、酸化処理された複数のメサにおける酸化狭窄構造体をIR顕微鏡で観察したところ、積層体の中心部にあるメサとの酸化速度差は、積層体全面で0.015μm/min以内であった。さらに、同様の積層体を2枚作製し、酸化装置6000を用いて上記と同様にして酸化処理を行ったところ、酸化速度のばらつきは、トレイ6021を用いたときと同程度で、従来よりも非常に小さくなり、面発光レーザ素子の製造歩留りが向上した。
また、トレイ6021Aにおける、X軸方向の1段目と7段目の高さの差S6(図16参照)を0.06mmとし、Y軸方向のS6を0.055mmとし、その間の方向におけるS6が、X軸方向とY軸方向の高さの差を均等に補正するような形状をし、それ以外はトレイ6021Aと同じ形状をもつトレイ用いて酸化処理を行った。なお、該トレイと積層体との間隔は、支持されている部分を除き、ほぼ均一である。そして、酸化処理された複数のメサにおける酸化狭窄構造体をIR顕微鏡で観察したところ、積層体の中心部にあるメサとの酸化速度差は、積層体全面で0.030μm/min以内であり、従来よりも面発光レーザ素子の製造歩留りが向上した。
また、上記実施形態では、水蒸気供給部6010におけるキャリアガスとして窒素(N2)ガスを用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、アルゴン(Ar)ガスを用いても良い。
また、上記実施形態では、基板101の主面の法線方向が、結晶方位[1 0 0]方向に対して、結晶方位[1 1 1]A方向に向かって15度傾斜している場合について説明したが、これに限定されるものではない。傾斜基板を用いるときには、基板101の主面の法線方向が、結晶方位<1 0 0>の一の方向に対して、結晶方位<1 1 1>の一の方向に向かって傾斜していれば良い。
また、上記実施形態では、基板101が傾斜基板である場合について説明したが、これに限定されるものではない。
また、上記実施形態では、発光部の発振波長が780nm帯の場合について説明したが、これに限定されるものではない。感光体の特性に応じて、発光部の発振波長を変更しても良い。
また、面発光レーザ素子100は、画像形成装置以外の用途に用いることができる。その場合には、発振波長は、その用途に応じて、650nm帯、850nm帯、980nm帯、1.3μm帯、1.5μm帯等の波長帯であっても良い。
また、上記実施形態において、光源14は、前記面発光レーザ素子100に代えて、一例として図24に示されるように、前述した面発光レーザ素子100の製造方法と同様な製造方法で製造された面発光レーザアレイ500を有していても良い。
この面発光レーザアレイ500は、同一基板上に2次元的に配列されている複数(ここでは32個)の発光部を有している。図24におけるM方向は主走査対応方向であり、S方向は副走査対応方向である。なお、発光部の数は32個に限定されるものではない。
複数(ここでは32個)の発光部は、図25に示されるように、すべての発光部をS方向に伸びる仮想線上に正射影したときに、発光部間隔が等間隔cとなるように配置されている。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいう。
ここでは、間隔cは3μm、S方向の発光部間隔d(図25参照)は24μm、M方向の発光部間隔X(図25参照)は30μmである。
各発光部は、図25のA−A断面図である図26に示されるように、前述した面発光レーザ素子100と同様な構造を有している。すなわち、面発光レーザアレイ500は、面発光レーザ素子100が集積された面発光レーザアレイである。そこで、面発光レーザ素子100と同様な効果を得ることができる。
この場合に、面発光レーザアレイ500では、各発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光部間隔が等間隔cであるので、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム1030上では副走査方向に等間隔で発光部が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。
そして、上記間隔cが3μmであるため、光走査装置1010の光学系の倍率を約1.8倍とすれば、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書込みができる。もちろん、主走査対応方向の発光部数を増加したり、前記間隔dを狭くして間隔cを更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、発光部の点灯タイミングで容易に制御できる。
また、この場合には、レーザプリンタ1000では書きこみドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷することができる。また、同じ書きこみドット密度の場合には印刷速度を更に速くすることができる。
ところで、2つの発光部の間の溝は、各発光部の電気的及び空間的分離のために、5μm以上とすることが好ましい。あまり狭いと製造時のエッチングの制御が難しくなるからである。また、メサの大きさ(1辺の長さ)は10μm以上とすることが好ましい。あまり小さいと動作時に熱がこもり、特性が低下するおそれがあるからである。
また、上記実施形態において、前記面発光レーザ素子100に代えて、前記面発光レーザ素子100と同様の製造方法で製造され、前記面発光レーザ素子100と同様の発光部が1次元配列された面発光レーザアレイを用いても良い。
また、上記実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、光走査装置1010を備えた画像形成装置であれば良い。
例えば、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
また、一例として図27に示されるように、複数の感光体ドラムを備えるカラープリンタ2000であっても良い。
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、ブラック用のステーション(感光体ドラムK1、帯電装置K2、現像装置K4、クリーニングユニットK5、及び転写装置K6)と、シアン用のステーション(感光体ドラムC1、帯電装置C2、現像装置C4、クリーニングユニットC5、及び転写装置C6)と、マゼンタ用のステーション(感光体ドラムM1、帯電装置M2、現像装置M4、クリーニングユニットM5、及び転写装置M6)と、イエロー用のステーション(感光体ドラムY1、帯電装置Y2、現像装置Y4、クリーニングユニットY5、及び転写装置Y6)と、光走査装置2010と、転写ベルト2080と、定着ユニット2030などを備えている。
各感光体ドラムは、図27中の矢印の方向に回転し、各感光体ドラムの周囲には、回転方向に沿って、それぞれ帯電装置、現像装置、転写装置、クリーニングユニットが配置されている。各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。帯電装置によって帯電された各感光体ドラム表面に光走査装置2010により光が照射され、各感光体ドラムに潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像装置により各感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写装置により、転写ベルト2080上の記録紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着ユニット2030により記録紙に画像が定着される。
光走査装置2010は、前記光源14と同様な光源を色毎に有している。そこで、上記光走査装置1010と同様な効果を得ることができる。また、カラープリンタ2000は、光走査装置2010を備えているため、上記レーザプリンタ1000と同様な効果を得ることができる。
ところで、カラープリンタ2000では、各部品の製造誤差や位置誤差等によって色ずれが発生する場合がある。このような場合であっても、光走査装置2010の各光源が前記面発光レーザアレイ500と同様な面発光レーザアレイを有していると、点灯させる発光部を変更することで色ずれを低減することができる。