《第1実施形態》
以下、本発明の第1実施形態を、図1〜図3を用いて説明する。図1には、第1実施形態に係るレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
このレーザプリンタ1000は、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングユニット1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、排紙トレイ1043、通信制御装置1050、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置1060などを備えている。なお、これらは、プリンタ筐体1044の中の所定位置に収容されている。
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
感光体ドラム1030は、円柱状の部材であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、図1における矢印方向に回転するようになっている。
帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングユニット1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に沿って、帯電チャージャ1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングユニット1035の順に配置されている。
帯電チャージャ1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。
光走査装置1010は、帯電チャージャ1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、上位装置からの画像情報に基づいて変調されたレーザ光により走査し、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した潜像を形成する。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。
トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ1032に供給される。
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着した潜像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、該給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。該レジストローラ対1039は、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、該記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。
定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次スタックされる。
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電チャージャ1031に対向する位置に戻る。
次に、前記光走査装置1010の構成について説明する。この光走査装置1010は、一例として図2に示されるように、光源装置14、カップリングレンズ15、開口板16、シリンドリカルレンズ17、反射ミラー18、ポリゴンミラー13、偏向器側走査レンズ11a、像面側走査レンズ11b、及び走査制御装置(図示省略)などを備えている。そして、これらは、ハウジング30の中の所定位置に組み付けられている。
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。そして、図2に示されるようなXYZ3次元直交座標系を用いて説明する。この場合、X軸方向が主走査対向方向であり、Y軸方向が副走査対応方向である。
光源装置14は、レーザ光をZ軸方向に射出する。光源装置14については、後に詳述する。
カップリングレンズ15は、光源装置14からのレーザ光を略平行光とする。
開口板16は、開口部を有し、カップリングレンズ15を介したレーザ光のビーム径を規定する。
シリンドリカルレンズ17は、開口板16の開口部を通過したレーザ光を、反射ミラー18を介してポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に副走査対応方向に関して結像する。
光源装置14とポリゴンミラー13との間の光路上に配置される光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。本実施形態では、偏向器前光学系は、カップリングレンズ15と開口板16とシリンドリカルレンズ17と反射ミラー18とから構成されている。
ポリゴンミラー13は、一例として内接円の半径が18mmの6面鏡を有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面となる。このポリゴンミラー13は、副走査対応方向に平行な軸の周りを等速回転しながら、反射ミラー18からのレーザ光を偏向する。
偏向器側走査レンズ11aは、ポリゴンミラー13で偏向されたレーザ光の光路上に配置されている。
像面側走査レンズ11bは、偏向器側走査レンズ11aを介したレーザ光の光路上に配置されている。そして、この像面側走査レンズ11bを介したレーザ光が、感光体ドラム1030の表面に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー13の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム1030上を走査する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」である。また、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
ポリゴンミラー13と感光体ドラム1030との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施形態では、走査光学系は、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bとから構成されている。なお、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bの間の光路上、及び像面側走査レンズ11bと感光体ドラム1030の間の光路上の少なくとも一方に、少なくとも1つの折り返しミラーが配置されても良い。
光源装置14は、一例として、図3に示されるように、メサ構造を有する発光部100aを含む面発光レーザ素子100、該面発光レーザ素子100が実装されるパッケージ(不図示)などを有している。
各面発光レーザ素子100は、一例として、発振波長が780nm帯の面発光レーザ素子であり、基板101、バッファ層102、第1反射鏡103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、第2反射鏡107、コンタクト層109、金属配線110(p側電極)、保護層111、n側電極112などを有している。
基板101は、例えばn−GaAs単結晶基板である。
バッファ層102は、例えばn−GaAsからなる層であり、基板101の+Z側に積層されている。
第1反射鏡103は、一例として、Z軸方向に交互に積層された低屈折率層及び高屈折率層を含む半導体多層膜反射鏡であり、バッファ層102の+Z側に積層されている。詳述すると、第1反射鏡103は、発振波長をλとしたとき、光学的厚さがλ/4となる膜厚のn−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層と、光学的厚さがλ/4となる膜厚のn−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアがn−Al0.9Ga0.1Asから始まり、40.5ペア積層されている。なお、光学的厚さがλ/4のとき、その層の実際の厚さDは、D=λ/4n(但し、nはその層の媒質の屈折率)である。
各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層が設けられている。なお、上記各屈折率層の膜厚はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んでいる。
下部スペーサ層104は、例えばノンドープのAl0.6Ga0.4Asからなる層であり、第1反射鏡103の+Z側に積層されている。
活性層105は、例えばAl0.15Ga0.85As/Al0.3Ga0.7Asからなる3重量子井戸構造の活性層であり、下部スペーサ層104の+Z側に積層されている。
上部スペーサ層106は、例えばノンドープのAl0.6Ga0.4Asからなる層であり、活性層105の+Z側に積層されている。
下部スペーサ層104と活性層105と上部スペーサ層106とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、その厚さが1波長の光学的厚さとなるように設定されている。なお、活性層105は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
第2反射鏡107は、一例として、Z軸方向に交互に積層された低屈折率層及び高屈折率層のペアを25ペア含む半導体多層膜反射鏡であり、上部スペーサ層106の+Z側に積層されている。
詳述すると、第2反射鏡107では、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアが、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層から始まり、24.5ペア積層され、該24.5ペアの+Z側にGa0.5In0.5Pからなる高屈折率層107aが積層されている。各屈折率層の間には組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
第2反射鏡107には、p−AlAsからなる選択酸化層が厚さ30nmで挿入されている。なお、選択酸化層108は、p−AlAs層の+Z側及び−Z側の少なくとも一方に例えば組成傾斜層、中間層などの層を含んでいても良く、ここでは、実際に酸化される層を併せて選択酸化層108と呼ぶ。この選択酸化層の挿入位置は、上部スペーサ層106から数えて2つ目の高屈折率層と低屈折率層のペア内である。
コンタクト層109は、例えばp−GaAsからなる層であり、第2反射鏡107の+Z側に積層されている。なお、コンタクト層の材料は、p−GaAs以外であっても良い。
コンタクト層109からは、電極パッド(不図示)に延伸する、p−SiNからなる光学的に透明な誘電体層である保護層111によって絶縁された、p側電極としての金属配線110が形成されている。金属配線110及び電極パッドは、オーミック材料のAuZnと配線材としてのAuがリフトオフ法により形成される。
次に、面発光レーザ素子100の製造方法について説明する。なお、基板101上に複数の半導体層が積層されたものを、以下では、便宜上「積層体」ともいう。
(1)有機金属気相成長法(MOCVD法)あるいは分子線エピタキシャル成長法(MBE法)による結晶成長によって、積層体を作成する。ここでは、MOCVD法を用いた例を示す。また、ここでは、III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料には、フォスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を用いている。また、AlGaAs系のp型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)、AlGaInP系のp型ドーパントにはジメチルジンク(DMZn)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
ここでは、有機金属気層成長法を用いて、基板101上にバッファ層102、第1反射鏡103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、第2反射鏡107及びコンタクト層109を、この順に積層して積層体を作成する。
(2)積層体の+Z側の面上に、例えば一辺が25μmの正方形のレジストパターンを形成する。
(3)積層体を、上記レジストパターンをフォトマスクとして、ICPドライエッチング法を用いてエッチングする。ここでは、エッチングは、第1反射鏡103に達するまで行われる。この場合、エッチング底面は、第1反射鏡103の+Z側の面となる。結果として、後に詳述するように、XY断面が+Z側ほど小さくなる四角錐台形状のメサが形成される(図3参照)。
この場合、メサの+X側の側面、−X側の側面、+Y側の側面及び−Y側の側面それぞれを含む仮想平面と、メサの+Z側の面(頂面)を含む仮想平面との成す角は、鈍角である。すなわち、鋭角及び直角のいずれでもない。
そして、メサの+Z側の面と、+X側、−X側、+Y側及び−Y側の各側面との接続部であるコーナーは、図3の部分拡大図から分かるように、曲率が小さい曲面、より詳細には、互いに鈍角を成す微小な複数の平面で構成されている。以下では、便宜上、メサの+Z側の面と、+X側、−X側、+Y側及び−Y側の各側面との接続部であるコーナーを、メサ頂部のコーナーと総称する。
(4)レジストパターンを除去する。
(5)メサが形成された積層体を酸化対象物として、酸化処理を行う。ここでは、メサの外周部から選択酸化層108中のAl(アルミニウム)が選択的に酸化される。そして、メサの中央部に、酸化領域108aによって囲まれた酸化されていない領域108bを残留させる。これにより、発光部の駆動電流の経路をメサの中央部だけに制限する、酸化狭窄構造体が形成される。上記酸化されていない領域108bが電流通過領域(電流注入領域)である。
(6)酸化処理が完了した積層体に対して、スクライブラインを形成するために、メサの周囲のみを露出させるようにリソグラフィによってレジストパターンを形成した後、ICPドライエッチング法を用いてメサを分離するための分離溝を形成し、該レジストパターンを除去する。
(7)積層体を加熱チャンバーに入れ、窒素雰囲気中に380〜400℃の温度で3分間放置する。これにより、大気中で表面に付着した酸素や水、もしくは加熱処理用のチャンバー内の微量な酸素や水による自然酸化膜が、窒素雰囲気中での加熱処理により安定した不動態皮膜になる。
(8)気相化学堆積法(CVD法)を用いて、SiN、SiONあるいはSiO2からなる保護層111を形成する。
(9)メサ頂部にp側電極コンタクトの窓開けを行う。すなわち、コンタクトホールを形成する。ここでは、メサ頂部上にレジストを均一に塗布し、該レジストの周辺部上にフォトマスクを形成した後、露光して該レジストの中央部のみを除去する。次いで、メサ頂部の中央の保護層111を、BHFをエッチャントに用いてウエットエッチングし、開口(コンタクトホール)を形成する。また、このとき同時に、(6)の工程で形成した分離溝の底面に形成された、スクライブする領域の保護層111も除去する。
(10)メサ頂部の光射出口となる領域に一辺が10μmの正方形状のレジストパターンと、電極パッドとコンタクト層109とを電気的に接続する金属配線110を形成するためのレジストパターンを形成し、配線材料の蒸着を行い、p側電極としての金属配線110を形成する。ここでは、金属配線110の配線材料としてはTi/Pt/Auからなる多層膜が用いられる。
この際、金属配線110は、メサの+Z側の面(頂面)、メサの+X側の側面、及び該側面に連続する、メサの周囲部の+Z側の面に沿って形成される(図3参照)。
(11)リフトオフ法によって、光射出口となる領域上の不要な配線材料をレジストと共に除去する。この結果、メサ頂部に金属配線110で囲まれた光射出口が形成される。
(12)基板101の裏側を所定の厚さ(例えば100μmなど)まで研磨した後、n側電極112を形成する。ここでは、n側電極112はAuGe/Ni/Auからなる多層膜である。
(13)アニールによって、p側電極(金属配線110)とn側電極112のオーミック導通をとる。これにより、メサは発光部となる。
(14)スクライブ・ブレーキングにより、素子毎に分割する。
(15)そして、種々の後工程を経て、面発光レーザ素子100となる。
ここで、上述の如く、第2反射鏡107の最も+Z側の高屈折率層107a、すなわち第2反射鏡107の複数の屈折率層のうち、コンタクト層109の直下に位置する屈折率層は、Ga0.5In0.5Pからなる層である。
このようなInを含む層では、Inを含まない層(メサ形成時にエッチングされる層である、例えばAlGaAs、AlAs、GaAs等からなり、低屈折率層又は高屈折率層に用いられる層)に比べて、エッチング速度が遅いため、すなわちエッチングされ難いため、Inを含まない層よりも深さ方向(−Z方向)へのエッチングが緩やかになる。以下では、例えばInのようなエッチングされ難い材料を、難エッチング材料とも称する。
すなわち、Inを含む高屈折率層107aは、第2反射鏡107のInを含まない他の屈折率層(高屈折率層及び低屈折率層)よりもエッチング選択比が小さい。ここで、エッチング選択比とは、非エッチング対象物であるレジストのエッチングレート(エッチング速度)に対するエッチング対象物のエッチングレート(エッチング速度)の比率を意味する。
この場合、深さ方向へのエッチングが緩やかになるため、メサ側壁を保護する側壁保護作用が十分に働き(側壁保護作用が相対的に大きくなり)、メサ頂部のコーナーが、曲率が小さい曲面となり、メサ側面の勾配(XY平面に対する傾斜角)が緩やかになる。
この結果、電極形成時(配線蒸着時)に、メサ頂部のコーナーに十分な厚さで成膜できるため、配線の断線を防止でき、かつ配線抵抗の増加を防止できる。
一方、仮に第2反射鏡107の最も+Z側の高屈折率層を、難エッチング材料を含まない層とした場合、ドライエッチング時にメサ頂部が容易にエッチングされるため側壁保護作用が追いつかず、メサ側面が基板101(XY平面)に略垂直に形成される。すなわち、メサ頂部のコーナーが略直角に形成される。この結果、配線蒸着時にメサ頂部のコーナーに成膜され難くなり、配線の断線が発生し、かつ配線抵抗が増加してしまう。
上述した製造方法により、面発光レーザ素子100を1000個製造し、各面発光レーザ素子100の出力特性を測定したところ、全ての面発光レーザ素子100に配線断線が発生していないことが確認された。また、ワイヤーボンディング時に、保護層111上及び電極パッド上に形成された金属配線110の剥離は発生しなかった。
一方、従来の面発光レーザ素子を1000個製造し、各面発光レーザ素子の出力特性を測定したところ、20個の面発光レーザ素子で配線断線が発生していることが確認された。
また、メサの周囲にポリイミドを成膜し、メサと周囲とを平坦化した面発光レーザ素子を製造したところ、ワイヤーボンディング時に、多くの配線剥離が発生した。
以上説明した本実施形態の面発光レーザ素子100は、基板101と、該基板101上に積層された第1反射鏡103と、該第1反射鏡103上に積層された活性層105と、該活性層105上に積層された、複数の半導体層を含む第2反射鏡107と、該第2反射鏡107上に積層されたコンタクト層109とを含む積層体がエッチングされて形成されたメサと、該メサの頂面及び側面に沿って形成された、活性層に電流を供給するための金属配線110と、を備えている。そして、第2反射鏡107の複数の半導体層のうちのコンタクト層109の直下に位置する一の半導体層(例えばGa0.5In0.5Pからなる高屈折率層107a)は、複数の半導体層のうちの一の半導体層以外の半導体層(例えばAl0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層及びAl0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層)よりもエッチング選択比が小さい。
この場合、第2反射鏡107の複数の半導体層のうち、一の半導体層は、該一の半導体層以外の半導体層に比べてエッチングされ難いため、積層体がエッチングされるとき、一の半導体層のエッチングは、緩やかに進行する。
この結果、メサの頂面を含む仮想平面と、メサの側面を含む仮想平面との成す角は、鈍角になり、メサ頂部のコーナー(メサ頂面とメサ側面との接続部)は、曲率が小さい曲面となる。
この場合、金属配線110を、メサ頂面、コーナー及びメサ側面に沿って十分な厚さで均一に成膜できるため、配線の断線及び配線剥離を防止でき、歩留りを向上できる。また、配線抵抗の増加も抑制できる。
結果として、第1実施形態では、低消費電力の面発光レーザ素子100を低価格で提供できる。
また、第2反射鏡107の複数の半導体層のうちのコンタクト層109の直下に位置する一の半導体層(高屈折率層)は、GaInP系の化合物からなる。
この場合、一の半導体層と、他の半導体層を格子整合させることができ、結晶内のバンド構造の変化を抑制でき、熱力学的に安定化することができる。
また、光走査装置1010は、面発光レーザ素子100を備えているため、安価で低消費電力な光走査装置を提供することができる。
また、レーザプリンタ1000は、光走査装置1010を備えているため、安価で低消費電力な画像形成装置を提供することができる。
以下に、他の実施形態を説明するが、以下の実施形態では、主に上記第1実施形態と異なる点を説明し、上記第1実施形態と同様の構成を有する部材には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
《第2実施形態》
第2実施形態は、図4に示されるように、面発光レーザ素子の構成が、上記第1実施形態と異なる。第2実施形態の面発光レーザ素子200では、下部スペーサ層104及び上部スペーサ層106を、一例として(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5P層としている。また、発光部200a(メサ)の底面(エッチング底面)を、上部スペーサ層106内に位置させている。すなわち、メサ形成の際に、積層体を上部スペーサ層106の内部に達するまでエッチングしている。
すなわち、面発光レーザ素子200では、下部スペーサ層104及び上部スペーサ層106は、第2反射鏡107の複数の半導体層のうちの一の半導体層(例えばGa0.5In0.5Pからなる高屈折率層107a)以外の半導体層(例えばAl0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層及びAl0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層))よりもエッチング選択比が小さい。
この場合、メサ形成時のエッチングの際に、メサ底部がエッチングされ難くなり、エッチングが緩やかに進行するため、結果として、メサの各側面を含む仮想平面と、該側面に連続する、メサの周囲部の+Z側の面を含む仮想平面との成す角が鈍角となる。そして、メサ底部のコーナー、すなわちメサの側面と該側面に連続する、メサの周囲部の+Z側の面との接続部は、図4の部分拡大図から分かるように、曲率が小さい曲面、より詳細には、互いに鈍角を成す微小な複数の平面で構成されている。
以上説明した第2実施形態の面発光レーザ素子200では、上記第1実施形態と同様のメサ頂部のコーナーでの配線断線防止効果に加えて、メサ底部のコーナーを曲率が小さい曲面とすることで、メサ底部での成膜を十分な厚さで行うことができ、該底部での配線断線及び配線抵抗の増加を防止できる。すなわち、上記第1実施形態よりも歩留りの向上及び低消費電力化を図ることができる。
結果として、第2実施形態では、上記第1実施形態の面発光レーザ素子100よりも低消費電力の面発光レーザ素子200を、より低価格で提供できる。
また、第2実施形態では、光源装置は、面発光レーザ素子200を有しているため、より低消費電力な光走査装置及びレーザプリンタをより低価格で提供できる。
また、面発光レーザ素子200を1000個製造し、各面発光レーザ素子200の出力特性を測定したところ、配線断線がないことが確認された。また、面発光レーザ素子200では、上記第1実施形態の面発光レーザ素子100と比較して、配線抵抗が約30%小さかった。また、ワイヤーボンディング時に、保護層111上及び電極パッド上に形成された金属配線110の剥離は発生しなかった。
なお、上記第2実施形態では、メサの底面(エッチング底面)は、上部スペーサ層106内に位置しているが、これに限らず、要は、上部スペーサ層106の+Z側の面と下部スペーサ層104の−Z側の面との間、すなわち上部スペーサ層106内、活性層105内又は下部スペーサ層104内に位置していることが望ましい。
これは、メサ頂部の場合と同様に、難エッチング材料を含む層の側面の勾配を緩やかにすることができるからであり、エッチング底面が下部スペーサ層104よりも−Z側に位置すると、発光部の底部のコーナーの曲率が難エッチング物を含まない層の場合と同様に大きくなり、上部スペーサ層106及び下部スペーサ層104に難エッチング材料を用いた効果が十分に得られなくなるからである。
なお、上述したように、エッチング底面は、活性層105内に位置していても良い。これは、活性層105の膜厚は極僅かであり、上部スペーサ層106に難エッチング材料を用いた効果が十分に得られるためである。
また、上記第2実施形態では、上部スペーサ層106及び下部スペーサ層104のいずれにも、難エッチング材料であるInが含まれているが、+Z側の面がエッチング底面よりも+Z側に位置する上部スペーサ層106に難エッチング物が含まれていれば良く、+Z側の面がエッチング底面よりも−Z側に位置する下部スペーサ層104には、難エッチング物が含まれていなくても良い。すなわち、発光部の底部のコーナーの曲率を小さくすることに寄与するスペーサ層にのみ、難エッチング材料が含まれていれば良い。
また、上記第2実施形態では、上部スペーサ層106及び下部スペーサ層104の材料として、Alを含む(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pを用いているが、例えばAlを含まないGa0.5In0.5Pを用いても良い。この場合、Alを含まない材料を使用することで、Alの酸化物に起因する結晶品質の低下を防ぐことができ、ひいては素子の長寿命化を図ることができる。
なお、上部スペーサ層106及び下部スペーサ層104の材料として、例えばAlを含まないGa0.5In0.5Pを用いた面発光レーザ素子を1000個製造したところ、上記第2実施形態の面発光レーザ素子200と同様の効果が得られ、かつ面発光レーザ素子200よりも寿命が伸びた。
《第3実施形態》
第3実施形態は、図5に示されるように、光源装置の構成が上記第1及び第2実施形態と異なる。第3実施形態の光源装置は、面発光レーザアレイ300、該面発光レーザアレイ300が実装されるパッケージなどを有している。
面発光レーザアレイ300は、XY平面に沿って2次元配列(アレイ状に配列)された複数(例えば16個)の面発光レーザ素子100と、該複数の面発光レーザ素子100の周囲に配置された複数(例えば16個)の電極パッド115とを含む。
複数の電極パッド115は、複数の面発光レーザ素子100に対応し、対応する複数の面発光レーザ素子100の発光部100aと、複数の金属配線を介して電気的に接続されている。なお、図5におけるM方向は主走査対応方向であり、S方向は副走査対応方向である。
すなわち、面発光レーザアレイ300は、図5のA−A断面図である図6に示されるように、複数の面発光レーザ素子100が集積された構造を有している。
複数(例えば16個)の面発光レーザ素子100の発光部100aは、図7に示されるように、すべての発光部100aをS方向に伸びる仮想線上に正射影したときに、発光部間隔が等間隔cとなるように配置されている。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいう。また、図7におけるM方向は主走査対応方向であり、S方向は副走査対応方向である。また、発光部の数は16個に限定されるものではない。
ここでは、一例として、間隔cは6μm、S方向の発光部間隔dは24μm、M方向の発光部間隔Xは30μmに設定されている。
この場合に、面発光レーザアレイ300では、各発光部100aを副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光部間隔が等間隔cであるので、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム1030上では副走査方向に等間隔で発光部が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。
そして、上記間隔cが6μmであるため、光走査装置1010の光学系の倍率を約1.8倍とすれば、2400dpi(ドット/インチ)の高密度書込みができる。もちろん、主走査対応方向の発光部数を増加したり、前記間隔dを狭くして間隔cを更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、発光部の点灯タイミングで容易に制御できる。
また、この場合には、レーザプリンタ1000では書きこみドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷することができる。また、同じ書きこみドット密度の場合には印刷速度を更に速くすることができる。
ところで、2つの発光部の間の溝は、各発光部の電気的及び空間的分離のために、5μm以上とすることが好ましい。あまり狭いと製造時のエッチングの制御が難しくなるからである。また、メサの大きさ(1辺の長さ)は10μm以上とすることが好ましい。あまり小さいと動作時に熱がこもり、特性が低下するおそれがあるからである。
面発光レーザアレイ300は、前述した面発光レーザ素子100の製造方法と同様の製造方法で製造することができる。すなわち、面発光レーザ素子100の製造方法において、レジストパターンをアレイ用に変更することで、面発光レーザアレイ300を製造可能である。
そこで、前述した面発光レーザ素子100と同様の製造方法で面発光レーザアレイ300を1000個製造し、各面発光レーザアレイ300の出力特性を測定したところ、全ての面発光レーザ素子100で配線断線が発生しなかった。また、ワイヤーボンディング時に、保護層111上及び電極パッド115上に形成された金属配線の剥離は発生しなかった。
一方、従来の面発光レーザアレイを1000個製造したところ、30個のチップで少なくとも1箇所以上の配線断線が発生した。
以上説明した第3実施形態の面発光レーザアレイ300は、複数の面発光レーザ素子100が集積された構成を有しているため、低消費電力化及び低価格化を図ることができる。
また、第3実施形態では、光源装置は、面発光レーザアレイ300を有しているため、低消費電力な光走査装置及びレーザプリンタを低価格で提供できる。
なお、上記第3実施形態の面発光レーザアレイ300では、複数の面発光レーザ素子100が2次元配列されているが、これに限らず、1次元配列されていても良い。
また、上記第3実施形態の面発光レーザアレイは、面発光レーザ素子100に代えて、上記第2実施形態の面発光レーザ素子200を有していても良い。
なお、上記第1〜第3実施形態では、第2反射鏡107の最も+Z側の高屈折率層(コンタクト層109の直下の半導体層)を、難エッチング材料を含む層としているが、これに代えて又は加えて、例えばコンタクト層109を、難エッチング材料を含む層としても良い。
また、上記第1〜第3実施形態では、第2反射鏡107の最も+Z側の高屈折率層は、第2反射鏡107の他の屈折率層と格子整合される層であるGa0.5In0.5P層とされているが、結晶品質が保てる範囲であれば、第2反射鏡107の他の屈折率層と格子整合されない層とされても良い。
すなわち、第2反射鏡107の最も+Z側の高屈折率層は、例えばInのような難エッチング材料を含み、第2反射鏡107の他の屈折率層よりもエッチング選択比が小さいものであることが好ましい。
また、上記第1〜第3実施形態では、第2反射鏡107の最も+Z側の高屈折率層は、Ga0.5In0.5Pとされているが、これに限らず、要は、難エッチング材料を含む層であれば良く、例えばGa0.5In0.5Pと組成が異なるGaInP系の化合物であっても良い。
また、上記第1〜第3実施形態では、上部スペーサ層106及び下部スペーサ層104に、同じ組成の材料を用いているが、異なる組成の材料を用いても良い。
また、上記第1〜第3実施形態では、発光部(メサ)の形状が四角錐台形状に形成されているが、これに限らず、例えば円錐台形状、楕円錐台形状、四角錐台以外の角錐台形状等のXY断面が+Z側ほど小さくなる形状に形成されることが好ましい。
また、上記第1〜第3実施形態では、発光部の発振波長が780nm帯の場合について説明したが、これに限定されるものではない。感光体の特性に応じて、発光部の発振波長を変更しても良い。
また、上記面発光レーザ素子100、面発光レーザ素子200及び面発光レーザアレイ300は、画像形成装置以外の用途に用いることができる。その場合には、発振波長は、その用途に応じて、例えば650nm帯、850nm帯、980nm帯、1.3μm帯、1.5μm帯等の波長帯であっても良い。
また、上記第1〜第3実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、光走査装置1010を備えた画像形成装置であれば良い。
また、本発明の画像形成装置は、例えば、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
また、本発明の画像形成装置は、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
また、本発明の画像形成装置は、一例として図8に示されるように、複数の感光体ドラムを備えるカラープリンタ2000であっても良い。
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、ブラック用のステーション(感光体ドラムK1、帯電装置K2、現像装置K4、クリーニングユニットK5、及び転写装置K6)と、シアン用のステーション(感光体ドラムC1、帯電装置C2、現像装置C4、クリーニングユニットC5、及び転写装置C6)と、マゼンタ用のステーション(感光体ドラムM1、帯電装置M2、現像装置M4、クリーニングユニットM5、及び転写装置M6)と、イエロー用のステーション(感光体ドラムY1、帯電装置Y2、現像装置Y4、クリーニングユニットY5、及び転写装置Y6)と、光走査装置2010と、転写ベルト2080と、定着ユニット2030などを備えている。
各感光体ドラムは、図8中の矢印の方向に回転し、各感光体ドラムの周囲には、回転方向に沿って、それぞれ帯電装置、現像装置、転写装置、クリーニングユニットが配置されている。各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。帯電装置によって帯電された各感光体ドラム表面に光走査装置2010によりレーザ光が照射され、各感光体ドラムに潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像装置により各感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写装置により、転写ベルト2080上の記録紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着ユニット2030により記録紙に画像が定着される。
光走査装置2010は、上記第1、第2又は第3実施形態の光源装置と同様な光源装置を色毎に有している。そこで、上記光走査装置1010と同様な効果を得ることができる。また、カラープリンタ2000は、光走査装置2010を備えているため、上記レーザプリンタ1000と同様な効果を得ることができる。
ところで、カラープリンタ2000では、各部品の製造誤差や位置誤差等によって色ずれが発生する場合がある。このような場合であっても、光走査装置2010の各光源装置が前記面発光レーザアレイ300と同様な面発光レーザアレイを有していると、点灯させる発光部を変更することで色ずれを低減することができる。