JP2010540020A - 骨盤底治療関連ツール、および、インプラント - Google Patents

Abstract

本明細書では、骨盤の症状、インプラントを載置することで骨盤組織を支持し、例えば脱出症を治療するために有用な、インプラント、ツール、および方法について記載する。なお、インプラント、ツール、および方法は、鞘、調節用嵌合部、特定のインプラント、およびインプラント部材、骨盤領域内でインプラントをある場所に載置すること、ならびに挿入、調節、およびグロメット管理ツールと連携して機能する１つ以上の挿入ツールを利用する。

Description

本発明は、骨盤の各種症状を治療するために外科インプラント、例えば骨盤用インプラントを移植する装置および方法に関する。上記方法は、組織を支持するためのインプラントを備えている。症状の例としては、女性または男性の生体組織の症状があげられ、具体的には骨盤の症状、例えば女性のまたは男性の尿失禁および便失禁の治療法を含み、さらに、腸瘤、直腸瘤、膀胱瘤、膣断端脱、骨盤底の各種症状などの女性の膣脱症の治療法、およびこれらの症状の任意の組み合わせを含む。

優先権の主張
本願は、米国特許仮出願シリアル番号６０／９７４，３１４（出願日：２００７年９月２１日、名称：“固定送出デバイスおよび方法”）および米国特許仮出願シリアル番号６１／０１２，２６０（出願日：２００７年１２月７日、名称：“骨盤底治療法および関連インプラント”）に対して優先権を主張する。

医学的症状を治療するための組織支持用生体的インプラントは広く公知であり、各種病状の治療に使用されている。女性および男性の骨盤の生体組織の各種症状は、支持用インプラントによって治療することができる。例えば、骨盤脱の症状、例えば膣脱は、骨盤支持系の各部、例えば骨盤底または膣の周囲の組織が衰弱または破損することによって引き起こされる。同様に、組織が衰弱すると、その結果、便失禁、尿失禁、挙筋剥離などの骨盤底の病状が発生する。広くは、支持がなくなることが原因となって、例えば子宮、直腸、膀胱、尿道、小腸、骨盤底の挙筋および筋肉、ならびに膣などの構造物が、その正常な位置から下方へずれ始めることがある。こういった骨盤の症状は、その他の生物組織の症状とともに、合成または生体的インプラントを載置して、衰弱または影響を受けた組織を支持することによって治療することができる。

本発明は、組織支持用外科インプラントを載置するためのインプラント、システム、キット、および方法を含む。本発明の実施形態では、遠位のシャフト端部に対して相対的に“カバー付き”配置および“カバー無し”配置において、シャフトと、そのシャフトに嵌合する鞘とを備えたツール（時には“挿入ツール”または“導入ツール”と称する）を使用する。１つの代表的な実施形態では、鞘が中空部材を備えている。該中空部材の例としては、例えば、導入ツールのシャフトの一部またはその長さ方向全体を少なくとも部分的に囲む形状を有する、硬質プラスチック製または可撓性を有するプラスチック製の管があげられる。カバー付き配置では、上記鞘はシャフトの遠端部と、その遠位のシャフト端部に嵌合可能な組織固定器具とを覆い、保護することができる。カバー無し配置では、上記鞘は依然シャフトに嵌合しており、遠端部または嵌合している組織固定器具を覆わず、組織固定器具は組織に接触し、そこに固定することができる。一例としてのこの実施形態では、鞘（例えば、管または管状部材）は、固定部品（例えば、組織固定器具、つまり、自己固定用先端部（ｓｅｌｆ−ｆｉｘａｔｉｎｇ ｔｉｐ）などの組織嵌合器具）を外科手技中に利用可能な限られた空間内に導入および載置することが可能な外形を有している。上記管状部材は、固定部品および固定デバイスが骨盤組織に引っかかるのを防止する。また、管状部材は、医師の手袋が引っかかったり破れたりしないように保護する。管状部材は、さらに、挿入ツール上で固定部品を所定の位置に保持するのにも役立つ。

鞘（例えば管状部材）の両端部は、開口していてもよい。第１の端部は、挿入ツール（例えば固定デバイス）のシャフト（遠端部）が進入することができるように開口していてもよい。

必要に応じて、管または管状部材の形態を有する鞘が、深さ制限特徴を備えていてもよい。深さ制限特徴とは、組織固定器具、例えば自己固定用先端部が組織に貫入する深さを制限することのできる特徴を指す。固定を行う際に、組織固定器具を組織に取り付けると、固定部位において固定部品を不注意によって過度に挿入することを防止するように、上述の深さ制限特徴が作用する。管の第２の端部は、組織固定器具を載置するために、ツールのシャフトの遠端部（例えば先端部）を露出させることができるように開口している。シャフトの遠端部（例えば先端部）は、怪我や近くの器官の穿刺を防止するために、組織固定器具に嵌合する構成、例えば球形状、スロット状、半球状、鈍角形状などであってもよい。

上記挿入ツールは、組織固定器具に嵌合しているツールのシャフトの遠端部（例えば針の先端部）が鞘（例えば管状部材）から外へ露出されたときに、組織固定器具を固定することを可能にする。この露出は、管状部材と針との間の相互作用によって可能となっている。この相互作用は、機械的（例えば、取っ手、シャフト、または鞘に組み込まれた機構を利用する）または手動式（例えば、使用者が鞘を移動させる）であってもよい。上記シャフトまたは鞘のいずれかが動かず他方が移動してもよく、あるいは別の実施形態では、両方の部品が動いてもよい。ピン、ボタン、ばね、または引き金を使用して、針の先端部および固定部品の露出させてもよい。

本開示では、以下にあげる骨盤の症状を治療するための、骨盤用インプラント、インプラント部品、これらを備えた関連デバイス、システム、およびキット、ならびにこれらの使用方法を特定する。すなわち、例えば、失禁（例えば便失禁、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、混合型尿失禁など各種失禁）、膣脱（例えば、腸瘤、膀胱瘤、直腸瘤、膣頂端脱または膣断端脱、子宮下垂などの各種形態を含む）、骨盤底の症状、骨盤底筋肉、例えば挙筋（“肛門挙筋”）または尾骨筋（包括的には骨盤底）の衰弱または外傷の結果、および筋肉および靱帯の衰弱によって引き起こされるその他の症状である。方法の代表的な例としては、前膣脱、後膣脱、または膣断端脱を含む膣脱の治療法などがあげられる。方法は、外切開をともなわない、一回の膣組織の切開を含んだ経膣方法が使用可能である。

記載された任意のインプラントまたは方法は、インプラントの延伸部分を組織に固定するように設計された組織固定器具を利用してもよい。該組織固定器具は、軟組織に挿入可能または軟組織に連結可能であり、組織内に留まってまたは組織に接触して留まって、インプラントを支持する軟組織固着器具、自己固定用先端部、固定部品などの形態であってもよい。

インプラントは、組織、例えば骨盤組織（例えば、尿道、直腸、骨盤筋（例えば、肛門挙筋）、直腸など）を支持する際に有用である。インプラントは、組織支持用支持部、組織を内部的に組織に連結する延伸部分、および必要に応じてその他の特徴部を備えていてもよい。必要に応じて備えられるその他の特徴部の例としては、例えば調節用嵌合部（単方向または双方向）、インプラントの同一部分（例えば、延伸部材または延伸部位、もしくは足場部材または足場部分）の上に存在する単方向調節用嵌合部と双方向調節用嵌合部との組み合わせ、前述の足場部分、および複数部品からなる部材（ＰＣＴ／ＵＳ０８／００９０６６を参照、出願：２００８年７月２５日、発明の名称：ＰＥＬＶＩＣ ＦＬＯＯＲ ＴＲＥＡＴＭＥＮＴＳ ＡＮＤ ＲＥＬＡＴＥＤ ＴＯＯＬＳ ＡＮＤ ＩＭＰＬＡＮＴＳ、この文献全体を参照によってここに引用する）。インプラントおよび方法の代表的な実施形態は、メッシュ部と非メッシュ部とを備えた延伸部材を利用する。必要に応じて、インプラントおよびインプラントの移植方法は、グロメット管理ツール、調節ツール、またはその両方をさらに利用してもよい。

本発明の一実施形態は、外部から針を通さずに脱出症を修復するシステムを備えている。上記システムは、一回の経膣切開によって移植可能なインプラントを備えている。上記インプラントは、上記インプラント部品を仙骨座骨棘の靱帯、尾骨筋、またはその両方で取り付けることによって、後膣脱または前膣脱を治療することができる。上記インプラントは、一回の膣切開によって経膣的に載置、固定、および調節され得る。後膣脱の治療に現在使われているある種のシステムとは異なり、このシステムは、外部から経臀部に針を通さずに身体に移植することができ、それゆえ観血性が低い。上記はシステム一般に、固定用腕部、中心グラフト、送出デバイス、および／またはロックシステムを備えている。

脱出症のほかに、本発明は、骨盤の治療、例えば便失禁、男性の尿失禁および女性の尿失禁、ならびに前立腺切除後の修復に使用されてもよい。また、本発明は、組織の固着が行われる、その他の外科的治療、例えば、グラフト、ヘルニア修復、および肩部修復などに使用されてもよい。

１つの態様において、本発明は、骨盤用インプラントを移植するために有用な外科的挿入ツールに関する。該ツールは、取っ手と、上記取っ手に取り付けられた近位のシャフト端部と、遠位のシャフト端部とを有するシャフトと、上記シャフトに嵌合する鞘であって、該鞘が遠位のシャフト端部を覆っている状態とするカバー付き配置、および、該鞘がシャフトの一部を覆っているが、遠位のシャフト端部は覆っていない状態とするカバー無し配置の、少なくとも２つの配置を可能にする鞘とを備える。

別の態様において、本発明は、インプラントの延伸部分との組み合わせにおける上述の鞘を備えたツールに関する。該延伸部分は遠端部において組織固定器具を有し、該組織固定器具はシャフトの遠端部に嵌合可能である。

別の態様において、本発明は、インプラントを患者に移植する方法に関する。該方法は、上述の鞘に対して機能するツールの組み合わせと、遠位のシャフト端部に組織固定器具を備える延伸部分を有するインプラントとを準備し、上記組織固定器具を上記遠位のシャフト端部に嵌合させ、遠位のシャフト端部および嵌合している組織固定器具が覆われるカバー付き配置に鞘がある状態で、鞘をシャフトおよび嵌合している組織固定器具を覆うように載置し、カバー付き配置において上記鞘がシャフトを覆うように載置された状態で、シャフトおよび嵌合している組織固定器具を患者に挿入し、組織固定器具からカバーがはずされるカバー無し配置に鞘を移動させ、組織固定器具を組織に留めることを含む。

米国特許出願公開第２００５／０２５０９７７ Ａ１号明細書、米国特許出願公開第２００５／０２４５７８７ Ａ１号明細書、米国特許出願公開第２００２／０１６１３８２ Ａ１号明細書、米国特許出願公開第２００６／０２６０６１８ Ａ１号明細書、米国特許第６，６５２，４５０号明細書、米国特許第６，６１２，９７７号明細書、米国特許第６，８０２，８０７号明細書、米国特許第７，０４８，６８２号明細書、米国特許第６，６４１，５２５号明細書、米国特許第６，９１１，００３号明細書、米国特許第７，０７０，５５６号明細書、米国特許第６，３５４，９９１号明細書、米国特許第６，８９６，６５１号明細書、米国特許第６，６５２，４４９号明細書、米国特許第６，８６２，４８０号明細書、米国特許第６，７１２，７７２号明細書、米国特許第６，９８１，９８３号明細書、米国特許第７，１３１，９４４号明細書、米国特許第７，１３１，９４３号明細書、米国特許第７，２６７，６４５号明細書、米国特許第６，９７１，９８６号明細書、米国特許第６，６２６，９１６号明細書、米国特許第７，４０７，４８０号明細書、米国特許第７，３５１，１９７、および国際出願公開番号ＷＯ２００７／１４９３４８ Ａ２（出願日：２００７年６月１５日、（名称：“骨盤の症状を治療するための外科インプラント、ツール、および方法”）の特許文献は、その全体が参照によってここに引用される。

図１Ａは、記載された挿入ツールの一例の側面破断図を示す。 図１Ｂは、記載された挿入ツールの一例の側面破断図を示す。 図１Ｃは、記載された挿入ツールの一例の側面図を示す 図１Ｄは、記載された挿入ツールの一例の側面図を示す。 図１Ｅは、図１Ｄの挿入ツールの遠端部の拡大側面図を示す。 図１Ｆは、図１Ｄの挿入ツールの遠端部の端面図を示す。 図２Ａは、停止機構を備えた挿入ツールの取っ手の一例の側面破断図を示す。 図２Ｂは、停止機構を備えた挿入ツールの取っ手の一例の側面破断図を示す。 図３Ａは、記載された鞘の一例をそれぞれ横から見た図および俯瞰図を示す。 図３Ｂは、記載された鞘の一例をそれぞれ横から見た図および俯瞰図を示す。 図４は、記載された、一例としてのインプラントの一部を示す。 図５Ａは、記載された、一例としての延伸部材を示す。 図５Ｂは、記載された、一例としての延伸部材を示す。 図６Ａは、記載された、一例としてのグロメット管理ツールを示す。 図６Ｂは、記載された、一例としてのグロメット管理ツールを示す。 図７Ａは、記載された、一例としての調節ツールを示す。 図７Ｂは、記載された、一例としての調節ツールを示す。 図８Ａは、記載された、一例としての調節ツールを示す。 図８Ｂは、記載された、一例としての調節ツールを示す。 図９は、記載された、一例としてのキットを示す。 図１０Ａは、記載された挿入ツールの一例の側面破断図を示す。 図１０Ｂは、記載された挿入ツールの一例の側面破断図を示す。

図面は全て概略的なものであり、縮尺は必ずしも実物と同じではない。

以下の記載は、説明的なものであって、限定的なものではない。本発明の他の実施形態は、この記載を見れば当業者にとって明らかである。

本発明は、外科的ツール、機器、組み立て部材、組織支持用の移植可能な物品、ならびにこれらの組み合わせを備えたキットおよびシステムを含む。例としては、例えば骨盤底障害、例えば便または尿失禁（腹圧性尿失禁（ｓｔｒｅｓｓ ｕｒｉｎａｒｙ ｉｎｃｏｎｔｉｎｅｎｃｅ： ＳＵＩ）を含む）、膣脱（例えば、前膣脱または後膣脱）、例えば挙筋の筋肉に関連する骨盤底の症状などを治療するためのツール、機器、組み立て部材、および物品などがあげられる。各種実施形態によれば、外科インプラントは、骨盤用インプラントを外科的に載置して、例えば脱出症（例えば膣脱またはその他の部位の脱出症）、失禁（男性の失禁または女性の失禁）などの症状を治療することによって、骨盤状態の治療に使用され得る。さらに具体的な例としては、インプラントは、以下に列挙するような症状を治療するために、男性患者または女性患者に移植され得る。すなわち、例えば、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、混合型尿失禁、流性尿失禁、機能的失禁、便失禁、脱出症（例えば膣脱または子宮脱）、腸瘤（例えば子宮の腸瘤）、直腸瘤、膀胱瘤、解剖的運動機能亢進、骨盤底筋肉、例えば挙筋（“肛門挙筋”）または尾骨筋（包括的には骨盤底）などの衰弱または外傷によって引き起こされる骨盤底の症状、筋肉衰弱および靱帯衰弱によって引き起こされるその他の症状；およびこれらの組み合わせなどである。

一般に、ここに記載された方法およびデバイスは、取っ手と、シャフトと、少なくとも鞘の一部を覆う鞘とを備えた挿入ツールを利用する。代表的な一例としての挿入ツールは取っ手およびシャフトを備え、シャフトは遠位のシャフト端部と、取っ手に取り付けられた近位のシャフト端部とを有していてもよい。鞘は、カバー付き配置およびカバー無し配置の少なくとも２つの配置において、シャフトに嵌合可能な別の部材である。カバー付き配置では、鞘が、例えば、遠位のシャフト端部と遠位のシャフト端部に嵌合可能な必要に応じて設けられる組織固定器具とを保護および遮蔽するように遠位のシャフト端部を覆う。カバー無し配置では、鞘が遠位のシャフト端部を覆わず、遠位のシャフト端部と遠位のシャフト端部に嵌合可能な組織固定器具とを組織に嵌合できるようにする。カバー無し配置では、鞘は近位のシャフト端部と、近位のシャフト端部および遠位のシャフト端部の間のシャフトの長手方向の一部とを（完全に、または部分的に）覆う。

本明細書の記載の挿入ツールの一例を（側面破断図）図１Ａおよび図１Ｂに図示する。ツール１０は、取っ手２、シャフト４、および鞘６を備えている。シャフト４は、遠位の取っ手端部１２に取り付けられた近位のシャフト端部８と、組織固定器具に嵌合するように設計された遠位のシャフト端部１４とを備えた、堅い針状シャフトである。窪み１６は、取っ手２の遠端部１２に配置された空間であり、取っ手２内部に向かって長手方向に伸びている。一般に上記窪みは、シャフト６の近端部またはその一部を受け止めることのできる、シャフト４と遠位の取っ手端部１２の一部との間の開空間である。図中に示すように、窪み１６は、シャフト４の外側の円筒状面と取っ手２の遠端部１２の内側の円筒状面１６ａとの間の環状の空間である。窪み１６は、カバー付き配置およびカバー無し配置のそれぞれの場合に異なる深さで、鞘６の近端部（例えば図面中では中空円筒として示す）が窪み１６にぴたりとはまりその中に配置されるようなサイズを有する。

窪み（例えば窪み１６）のサイズは、長さ（取っ手の長手方向にそった長さ、“Ｌ”と表記する）および幅または直径（取っ手の幅方向にそった幅または直径）を有していてもよい。もう一つの関連する長さは、長さｄであり、この長さは停止機構（ピン２２）から窪み１６の端部、つまり面１５までの距離である。この距離ｄ（図１Ａを参照）は、“カバー無し“配置（図１Ｂを参照）において覆われないシャフト遠端部の長さと同じである。この距離はシャフト遠端部が組織に貫入することのできる最大の深さにも関連しており、これは鞘の遠端部がそれ以上の貫入を防止する。

窪み、例えば窪み１５の直径は、鞘の近端部が進入するのに充分な大きさがあり、鞘の直径よりわずかに大きい。有用な直径は、例えば０．５ｃｍ〜１．０ｃｍである。鞘が収められる、取っ手の窪みの長さ（Ｌ）は、鞘が取っ手の中に入ることによって、またはさらに取っ手の奥に入ることによって、つまり、シャフトにそって取っ手に向かう方向に鞘が移動することによって、鞘がカバー付き配置からカバー無し配置に変わることができるだけの充分な大きさがある。この窪みの長さは、例えば１．５ｃｍ〜３．５ｃｍ、例えば２．０ｃｍ〜３．０ｃｍである。

図１Ａおよび図１Ｂにさらに示すように、レバー２０がばね２４によって付勢され、鞘６の近端部で表面に接触するように、ピン２２を窪み１６内部のある場所に載置する。こうすることによって、鞘６が窪み１６の奥へ取っ手２に向かって移動することを制限している。図１Ａは、カバー付き配置における鞘６を図示している。このカバー付き配置では、鞘６の遠端部が伸びて、遠位のシャフト端部１４を覆い、内包する。図１Ｂは、カバー無し配置における鞘６を図示している。このカバー無し配置では、鞘６の遠端部が遠位のシャフト端部１４を内包せず、遠位のシャフト端部１４は覆われていないままである。カバー無し配置は、カバー付き配置において、鞘６を近位の方向（図中では矢印Ａで示す）に移動させて、鞘６を取っ手２に向かって滑らせ、鞘６の近端部を窪み１６のさらに奥に配置できるようにすることによって実現される。

挿入ツールの一実施形態に関して、図２Ａおよび図２Ｂは、窪みと、近位のシャフト端部と、鞘と、該鞘に嵌合する機械的停止部とを含む、遠位の取っ手端部の構造の詳細などを示している。破断側面図に示すように、ツール４０は取っ手４２、シャフト４４、および鞘４６（例えばプラスチック製の管の形態の鞘）を備えている。シャフト４４は、遠位の取っ手端部５２に取り付けられた近位のシャフト端部４８を備えた、堅い針状シャフトである。窪み５６は、取っ手４２の遠端部５２に配置された空間であり、取っ手４２内部に向かって長手方向に伸び、鞘４６の近端部が窪み５６にぴたりとはまりその中に配置されるようなサイズを有する。レバー６０はばね６４によって付勢され、ピン（近位のピン６２および遠位のピン６３）（例えば“延伸部”）を窪み５６内部のある場所に載置して鞘４６に嵌合させ、鞘４６が窪み５６の外から中あるいは中から外へ移動することを制限する。近位のピン６２の遠位の面６１は、鞘４６の近端部面５４に接触する。その一方で、遠位のピン６３は、鞘４６の近端部に配置された開口部５９に嵌合する。近位のピン６２は、取っ手４２の遠端部５２の開口部５３を通って伸び、遠位のピン６２は、取っ手４２の遠端部５２の開口部５５を通って伸びている。

図２Ａは、カバー付き配置における鞘４６を示している。このカバー付き配置では、鞘４６の遠端部（図示せず）は、シャフト４４の遠位のシャフト端部（図示せず）を覆うように伸びている。さらに、このカバー付き配置では、ピン６２およびピン６３が、シャフト４６の近端部の面５４および開口部５９に嵌合して、鞘４６がシャフト４４に対して相対的に遠位の方向または近位の方向に移動することを防止しているので、鞘４６は窪み５６内部に向かって途中までしか伸びていない。図２Ｂは、カバー無し配置における鞘４６を示し、鞘４６の遠端部（図示せず）は、シャフト４４の遠位のシャフト端部（図示せず）を内包せず、遠位のシャフト端部は覆われていないままである。図２Ｂに示すように、カバー無し配置は、カバー付き配置において、鞘４６を近位の方向（図中では矢印Ａで示す）に移動させて、鞘４６を取っ手４２に向かって滑らせ、鞘４６の近端部を窪み５６のさらに奥に配置できるようにすることによって実現される。

図１Ａ、図１Ｂ、図２Ａ、および図２Ｂの挿入ツールは、鞘に関連する取っ手に配置された停止機構を含む。別の実施形態では、停止機構が取っ手以外のどこか、例えば、挿入ツールのシャフトにそって配置されていてもよい。あるいは、さらに別の例としては、ツールが停止機構を備えていないくてもよいし、停止機構が不要であってもよい。取っ手には停止機構が不要な挿入ツールの一例を、図１Ｃに示す。挿入ツール８０は、取っ手８２と、シャフト８４と、近端部８７および遠端部８９を有する鞘８６とを備えている。シャフト８４は、遠位の取っ手端部８３に取り付けられた近位のシャフト端部８１と遠位のシャフト端部９１とを備えた、堅い針状シャフトである。図中で遠位のシャフト端部９１は、メッシュ延伸部分８８の遠端部に配置された組織固定器具９０に嵌合している。（延伸部分８８は、インプラントと一体化されていてもよく、あるいはインプラント、例えばインプラントの支持部に他の形態で連結されていてもよいし、もしくはインプラントとは別の部材であってもよい。）親指面８５が鞘８６の近端部８７に配置され、使用者が、取っ手８２を保持しながら親指を使って鞘８６を操作でき、例えば、鞘８６をカバー付き配置からカバー無し配置へ移動させることができるようになっている。所望であれば、必要に応じて設けられる停止機構（図示せず）がシャフトに配置されてもよい。この停止機構は、シャフト８４（例えば鞘８６の面に嵌合する延伸部）に配置された面を備えていてもよい。上記面が嵌合することで、鞘８６がシャフト８４に対して相対的に移動することが防止される。また、該面が嵌合から解放されることで、鞘８６がシャフト８４に対して相対的に移動することが可能になる。

挿入ツールの別の実施形態は、取っ手に配置された停止機構は有するが、例えば図１Ａおよび図１Ｂに示すように、シャフトが取っ手に連結する場所に、シャフトを完全に囲む“窪み”を備えていない実施形態である。図１Ｄを参照すると、挿入ツール９２は、取っ手９７と、シャフト９６と、近端部９３および遠端部１０５を有する鞘９５とを備えている。シャフト９６は、遠位の取っ手端部に取り付けられた近位のシャフト端部と、遠位のシャフト端部とを備えた、堅い針状シャフトである。図中で遠位のシャフト端部は、メッシュ延伸部分１１１の遠端部に配置された組織固定器具１０７に嵌合している。（延伸部分１１１は、一体化されていてもよく、あるいはインプラント、例えばインプラントの支持部に他の形態で連結されていてもよいし、もしくはインプラントとは別の部材であってもよい。）機械的停止部の部品の一つが停止部材９８であり、取っ手９７から遠位の方向に伸び、鞘９５の近端部の面に嵌合する。例えば上記停止部を取り外すためには、（例えば、使用者の親指を使って圧力をかけることによって）鞘９５の近端部９３をシャフト９５に向かって屈曲させて、停止部材９８との接触を回避すればよい。この場合、鞘９５の近端部はシャフト９５と停止部材９８との間の空間９９内に移動できて、鞘９５がＡ方向に移動することが可能になり、鞘９５をカバー付き配置（図面を参照）からカバー無し配置へ変化させる。別の必要に応じて設けられる機械的停止部（ここではシャフト９５に配置された面（例えば凸部）１０１）は、鞘９５の面（例えば凹部）１０３と噛み合う。この停止部材も、面１０１を凹部１０３との嵌合から解放する方向に、近位の鞘端部９３を屈曲させることによって取り外し可能であり、こうすることによって鞘９５はＡ方向に移動できるようになる。

鞘は、可撓性を有するあるいは有しない、硬質、半硬質、または非硬質の物質からなる。一般的な種類の物質の例としては、外科的ツールと一緒に使用されることが多い物質、例えば金属、セラミックス、およびプラスチック、またはその他の高分子材料などがあげられる。湾曲したシャフトを備えた挿入ツールの場合、鞘は充分な可撓性を有し、必要に応じて弾性を有し、鞘をシャフトの長さ方向の所望の部分（曲線を含めて）に対応して載置することができるようになる。

好ましい物質の例としては、可撓性を有するが自己支持可能な鞘を形成するために、鞘を形成可能な高分子材料（例えば、２つの開端部を有する円筒状の管）などがあげられる。好ましい鞘は、鞘がある程度曲がる可撓性を有していてもよく、例えば湾曲したシャフトに載置することができ、必要であれば曲がったままの状態を維持し、ツールのシャフトの曲率にそうことのできる可撓性を有していてもよい。好ましい鞘は自己支持可能でもよい。これは、鞘の１つの端部が支持されれば、鞘自身の重量が力となってかかっても、鞘はほぼ折れたり曲がったりしないということを意味している。

鞘、あるいは必ずしも必要ではないが必要に応じて可撓性を有する自己支持可能な鞘を生成するために有用だと思われる高分子材料の例としては、例えば、ポリエチレン（例えば、低密度ポリエチレン）、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ウレタン、シリコーンなどのポリオレフィンを含む重合体などがあげられる。

鞘は、挿入ツールのシャフトを覆うことができるような形状および寸法を有することができる。鞘のある実施形態では、遠位のシャフト端部と取っ手取り付け部における近位のシャフト端部との間のシャフトの長さ、ただし取っ手の窪みの中に収まるシャフトの長手方向部分は含まない長さにおよそ等しい長さを有する連続した管を備えていてもよい。代表的な例としての鞘の長さは、挿入ツールの使用によって変わる。膣切開によって組織固定器具を骨盤領域の後よりの位置に載置するために使用することを意図して作られた挿入ツールの場合、鞘の長さは、例えば約１５ｃｍ〜２８ｃｍ、例えば約１８ｃｍ〜２４ｃｍである。膣切開によって組織固定器具を閉塞筋の孔に載置するために使用することを意図して作られた挿入ツールの場合、鞘の長さは、例えば約８ｃｍ〜１５ｃｍ、例えば約９ｃｍ〜１３ｃｍである。鞘が曲線部を有しているのであれば、鞘の長さは、真っ直ぐに伸ばした状態の湾曲部分（アーク長）の長さを含む、全体の長さである。

鞘（例えば半硬質管）の直径は、挿入ツールのシャフトとインプラントの延伸部分とを組み合わせたものを、中空となっている管の内部に覆うのに充分な大きさを有する。例えば、鞘の内径は、０．５ｃｍ〜１．２ｃｍ、例えば０．５ｃｍ〜０．８ｃｍである。鞘のある実施形態によれば、遠位の鞘端部における直径は、遠位側に向かって徐々に小さくなってもよい（図１Ｅを参照）。

鞘の側壁の厚さは、鞘の長さ方向について一定であってもよく、また、ある好適な実施形態では、鞘が自己支持可能になる程度の厚さであってもよい。こういった機能を達成するために有用な側壁の厚さは、側壁の材質によって変化する。高分子材料、例えばポリオレフィンからなる鞘の場合に有用な側壁の厚さは、０．３ｍｍ〜１．５ｍｍの範囲である。

鞘の近端部は、必要に応じて、機械的停止部（例えばピンや延伸部）を嵌合させるために使用することのできる開口部を側壁に備え、挿入ツールのシャフトの長さ方向に鞘が移動することを抑制する。

図３Ａは、近端部７２、遠端部７４、側壁７６、および開口７８を有する鞘７０の側面図を示している。図中に示すように、鞘７０は、例えばポリエチレンなどの高分子材料からなる、自己支持可能な連続した管である。上記管は、堅い重合体で作成され、近端部および遠端部のそれぞれにおいて開口部（端部開口部）を有し、また、近端部７２の側壁に側壁開口部７８を有する。曲線のアーク部分の長さを含む、対向する端部から測定された鞘７０の長さは、膣切開によって骨盤の後よりの位置に達するツールの針を覆うのに充分な大きさ、例えば２０ｃｍ〜２２ｃｍである。膣切開によって別の位置、例えば閉塞筋に達する場合、長さは異なり、例えば短くなる。鞘の内径は、堅い針状シャフトおよび細長い形状の延伸部分のメッシュ材を内包するのに充分な大きさであり、例えば０．５ｃｍ〜１．０ｃｍである。側壁開口部７８は、鞘が挿入ツールのシャフトに対して相対的に移動することを制限するのに有用な、ピン、延伸部、またはその他の機械的停止部が側壁開口部７８に嵌合する際に、上記ピン、延伸部、または機械的停止部を受け止められるような寸法を有している。

鞘は、組織固定器具を覆う遠端部を備えていてもよく、また、鞘の遠端部は、組織を通して挿入しやすくするために、必要に応じて高さが低く抑えられている。例えば鞘の遠端部がテーパ形状を有していて、断面寸法、例えば直径が低減されてもよい。図１Ｄ、図１Ｅ、図１Ｆは、テーパ形状を有する鞘の遠端部を示している。図１Ｅ（側断面図）および図１Ｆ（端面図）に示すように、鞘の遠端部１０５は、テーパ形状を有しており、直径が、鞘の遠端部の長さ方向に遠位側に向かって減少することによって具現されている。テーパ形状を有する遠端部は、好ましくは、例えば自己固定用先端部の横方向延伸部の通過を可能にすることによって、低減された直径を有する遠端部を組織固定器具が通過可能となる開口部を備えていてもよい。図１Ｆは、横方向延伸部１１８が遠端部１１５を通過することを可能にする、横方向スロット１１７を示している。

使用の際には、記載されたツール（例えば、ツール１０、ツール４０、ツール８０、ツール９２、またはその他の形態で記載されたツール）は、インプラントを患者内に設置するために用いることができる。記載されたツールを使用する際の一般的なステップは、インプラントの組織固定器具を遠位のシャフト端部（例えば遠位のシャフト端部１４）に嵌合させ、鞘（例えば鞘６、鞘４６）を、シャフトおよび嵌合している組織固定器具を覆うように設置することを含んでもよい。一般に、カバー付き配置において、インプラントの延伸部分（例えば延伸部材）またはその一部、および挿入ツールのシャフトは、少なくとも部分的には鞘に覆われている、つまり、鞘の内部に位置している。例えば図１Ｃおよび図１Ｄを参照。上記ツールと鞘および嵌合している組織固定器具とのアッセンブリーは、カバー付き配置において、遠位の鞘端部が遠位のシャフト端部および嵌合している組織固定器具を覆っている状態で、患者内部に挿入可能である。患者内部に一旦挿入されると、鞘の位置はカバー付き配置からカバー無し配置に変化して、組織固定器具を遠位のシャフト端部において露出させることができる。カバー無し配置では、一例をあげると、シャフトの遠端部は、０．３ｃｍ〜１．５ｃｍ、例えば０．８ｃｍ〜１．５ｃｍの長さ分だけ覆われていなくてもかまわない（この測定は、組織固定器具が嵌合している状態で行っても、嵌合している組織固定器具がない状態で行ってもかまわない。前者の場合、組織固定器具の長さが含まれる）。この配置の変化は、必要に応じて、機械的停止部の、例えば取っ手における移動、シャフトにそった移動、またはツールの任意の選択された場所における移動とともに実施してもよい。露出させた組織固定器具は、組織に留めることができる（例えば、組織に固定しても、組織内部に挿入しても、または組織に他の形態で嵌合させることができる）。そして、鞘を含んだ上記ツールを、取り出すことができる。

記載された挿入ツールを使った載置に使用可能な、代表的な一例としてのインプラントは、生体の骨盤組織を含めた一般的な任意組織を支持するために有用である。骨盤組織支持に使用する場合、インプラントは、骨盤組織、例えば、尿道（膀胱頸部を含む）、膀胱、直腸、膣組織（レベル１、レベル２、レベル３、またはこれらの組み合わせ）、骨盤底組織（例えば挙筋組織）などを支持するために使用可能な組織支持部を備えていてもよい。使用中、上記組織支持部は通常、例えば１針以上の縫合で取り付けることによって、支持するべき組織に接触して載置され、取り付けられる。インプラントは、組織支持部に取り付けられたまたは取り付け可能な１つ以上の延伸部分をさらに備えている。延伸部分は、“足場”と呼ばれる部分であってもよく、組織支持部または別の延伸部分に取り付け可能である。組織固定器具、組織拡張器具、または組織連結器具などが延伸部分の端部に備えられていてもよい。

上記組織支持部は、特定種類の骨盤組織、例えば尿道、膀胱（膀胱頸部を含む）、膣組織（前後膣脱、後膣脱、膣頂端脱など）、直腸、骨盤底組織（例えば挙筋）などを支持するように設計可能である。上記組織支持部は、設置された際に所望の組織に接触するようにサイズおよび形状が決定可能であり、例えば“投石器”状または“ハンモック”状の形状に形成し、骨盤組織に接触し骨盤組織を支持するようにしてもかまわない。

延伸部分は、物質からなる部材であり、一般に細長い形状を有するかあるいは他の形態で、組織支持部から伸びているか、あるいは足場部分の場合には別の延伸部分から伸びている。延伸部分の実施形態は、骨盤領域の組織を通過させる、または該組織に取り付けるために有用であり、こうすることによって、組織支持部および支持されている組織を支持できる。１つまたは複数の（例えば、１つ、２つ、４つ、または６つの）延伸部分が組織支持部から伸び、例えば、内部の固着点（または“固定点”）まで伸びることによって（記載された骨固着器具、組織固定器具などによって取り付けられて）、または組織経路を通って外切開まで伸びることによって、骨盤領域の組織に取り付けられていてもよい。

インプラントは、患者内部で延伸可能であり、骨盤領域の組織またはインプラントのある場所に固定される足場部分（一種の延伸部分と考えてよい）を、必要に応じて備えていてもよい。足場部分は、例えば、足場部分の長手方向にそって、かつ、足場部分２つの端部間において、組織支持部を支持、または足場部分に取り付けられた別の延伸部分を支持するために使用可能である。足場部分は２つの端部を有していてもよい。いずれかの端部が、骨盤領域の組織またはインプラント、例えば組織支持部、別の延伸部分、または別の足場部分に内部的に取り付けられればよい。足場部分の端部は、例えば縫合、鋲、留め金などによって組織支持部またはその他の延伸部分に頑強に（つまり微調整さえできないように）取り付けてもよく、組織支持部または延伸部分と一体形成されてもよいし、あるいは組織支持部または延伸部分に調節用嵌合部を使って調節できるように取り付けられてもよい。足場部分が必要に応じて、さらに足場部分の長さ方向に調節用嵌合部を備えていてもよい。

“複数部品”インプラントとは、１つ以上の“支持部材”と１つまたは複数個の“延伸部材”（この一例が“足場部材”である）とを、インプラントの別々の部材として備えたインプラントを指している。延伸部材または足場部材は、支持部材から分岐し、１つのまたは複数の調節用嵌合部を介して連結可能である。上記支持部材は組織支持部を備えている。

代表的な一例としてのインプラントは、従来型のインプラントに見られる個々の特徴を有する材料、形状、およびサイズを有していてもよいが、ここに記載された特徴、例えば足場部分、調節用嵌合部、ここに記載された各種組織固定器具のうちの任意のもの、複数部品からなる部材などを備えるように改造されていてもよい。さらに、上記代表的な一例としてのインプラントは、ここに記載された方法、例えば鞘を組み込んだツールを利用する方法による使用にあわせて構成されていてもよい。インプラントは、以下に例として列挙する文献に記載された特徴を有していてもよい。すなわち、米国特許出願シリアル番号１０／８３４，９４３（出願日：２００４年４月３０日）、米国特許出願シリアル番号１０／３０６，１７９（出願日：２００２年１１月２７日）、米国特許出願シリアル番号１１／３４７，０６３（出願日：２００６年２月３日）、米国特許出願シリアル番号１１／３４７，５９６（出願日：２００６年２月３日）、米国特許出願シリアル番号１１／３４７，５５３（出願日：２００６年２月３日）、米国特許出願シリアル番号１１／３４７，０４７（出願日：２００６年２月３日）、米国特許出願シリアル番号１１／３４６，７５０（出願日：２００６年２月３日）、米国特許出願シリアル番号１１／３９８，３６８（出願日：２００５年４月５日）、米国特許出願シリアル番号１１／２４３，８０２（出願日：２００５年１０月５日）、米国特許出願シリアル番号１０／８４０，６４６（出願日：２００４年５月７日）、国際特許出願番号ＰＣＴ／ＵＳ２００６／０２８８２８（国際出願日：２００６年７月２５日）、国際特許出願番号ＰＣＴ／ＵＳ２００７／００４０１５（発明の名称：“ＳＵＲＧＩＣＡＬ ＡＲＴＩＣＬＥＳ ＡＮＤ ＭＥＴＨＯＤＳ ＦＯＲ ＴＲＥＡＴＩＮＧ ＰＥＬＶＩＣ ＣＯＮＤＩＴＩＯＮＳ”、出願日：２００７年２月１６日）、国際出願公開番号ＷＯ２００８／０１３８６７（発明の名称：“ＳＵＲＧＩＣＡＬ ＡＲＴＩＣＬＥＳ ＡＮＤ ＭＥＴＨＯＤＳ ＦＯＲ ＴＲＥＡＴＩＮＧ ＰＥＬＶＩＣ ＣＯＮＤＩＴＩＯＮＳ”、公開日：２００８年１月３１日）、国際出願番号ＰＣＴ／ＵＳ２００８／０８００６（発明の名称：“ＳＵＲＧＩＣＡＬ ＡＲＴＩＣＬＥＳ ＡＮＤ ＭＥＴＨＯＤＳ ＦＯＲ ＴＲＥＡＴＩＮＧ ＰＥＬＶＩＣ ＣＯＮＤＩＴＩＯＮＳ”、出願日：２００８年６月２７日）、国際出願番号ＰＣＴ／ＵＳ２００８／０９０６６（発明の名称：“ＰＥＬＶＩＣ ＦＬＯＯＲ ＴＲＥＡＴＭＥＮＴＳ ＡＮＤ ＲＥＬＡＴＥＤ ＴＯＯＬＳ ＡＮＤ ＩＭＰＬＡＮＴＳ”、出願日：２００８年７月２５日）、および国際出願番号ＰＣＴ／ＵＳ２００８／００００３３（発明の名称：“ＭＥＴＨＯＤＳ ＦＯＲ ＩＮＳＴＡＬＬＩＮＧ ＳＬＩＮＧ ＴＯ ＴＲＥＡＴ ＦＥＣＡＬ ＩＮＣＯＮＴＩＮＥＮＣＥ， ＡＮＤ ＲＥＬＡＴＥＤ ＤＥＶＩＣＥＳ”、出願日：２００８年１月３日）である。なお、これらの開示は、その全体が参照によってここに引用される。

市販のインプラントの例としては、Ａｍｅｒｉｃａｎ Ｍｅｄｉｃａｌ Ｓｙｓｔｅｍｓ， Ｉｎｃ．（米国ミネソタ州ミネトンカ）が、骨盤脱（膣断端脱、膀胱瘤、腸瘤などを含む）の治療用に、Ａｐｏｇｅｅ（登録商標）、Ｐｅｒｉｇｅｅ（登録商標）、およびＥｌｅｖａｔｅ（商標）の商品名で販売しているものや、同社が尿失禁の治療用にＳｐａｒｃ（登録商標）、Ｂｉｏａｒｃ（登録商標）、Ｍｏｎａｒｃ（登録商標）、およびＭｉｎｉＡｒｃ（商標）の商品名で販売しているものなどがあげられる。本明細書の記載において有用なインプラントは、これらの市販のインプラントの１つ以上の特徴を備えていてもよい。

インプラントは、合成物質または生体的物質（例えばブタ由来の物質、屍体由来の物質など）でできた部分、部材、または部品を備えていてもよい。延伸部分および足場部分（単一の部材として形成されても、２つ以上の部材として形成されてもよい）は、例えば合成メッシュ、例えばポリプロピレンメッシュであってもよい。組織支持部は、合成されたものであっても（例えばポリプロピレンメッシュ）よいし、生体に由来するものであってもよい。（なお、ここで使用するように、“インプラントの一部”（または“インプラント部品”）という用語は、一般にインプラントの任意の部材、部分、または部品（例えば延伸部分または足場部分）を指している。“インプラントの一部”（または“インプラント部品”）という用語は、インプラントを構成する物質でできた細長い形状の長手部分、例えば、延伸部分または足場部分の細長い形状を有する部分の長手方向の一部を指している。）

膣脱（例えば前膣脱、後膣脱、膣断端脱）治療用インプラントの例は、中央支持部を備えて、２つないし４つあるいは２つないし６つの延伸部分を形成していてもよく、さらに、メッシュまたはその他のインプラント材料からなる一体的部材、またはメッシュまたはその他のインプラント材料からなりモジュールとして取り付けられる複数部品からなる部材の形態をとってもよい。例えば、本発明の譲受人の同時係属中の米国特許出願シリアル番号１１／３９８，３６９、１０／８３４，９４３、１１／２４３，８０２、１０／８４０，６４６、ＰＣＴ／２００６／０２８８２８などの文献を参照されたい。ここに記載されたデバイスまたは方法の任意の１つまたは複数を組み合わせて使用する、膣脱治療に特に有用なインプラントの例は、記載されたインプラントであってもよい。本発明の譲受人のｓ同時係属中の国際特許出願番号ＰＣＴ／ＵＳ２００７／０１４１２０（発明の名称：“ＳＵＲＧＩＣＡＬ ＩＭＰＬＡＮＴＳ， ＴＯＯＬＳ， ＡＮＤ ＭＥＴＨＯＤＳ ＦＯＲ ＴＲＥＡＴＩＮＧ ＰＥＬＶＩＣ ＣＯＮＤＩＴＩＯＮＳ”、出願日：２００７年６月１５日）、および国際出願番号ＰＣＴ／ＵＳ２００８／０９０６６（発明の名称：“ＰＥＬＶＩＣ ＦＬＯＯＲ ＴＲＥＡＴＭＥＮＴＳ ＡＮＤ ＲＥＬＡＴＥＤ ＴＯＯＬＳ ＡＮＤ ＩＭＰＬＡＮＴＳ”、出願日：２００８年７月２５日）。なお、これらの文献は、その全体が参照によってここに引用される。

ここに記載されたインプラントの各種実施形態によれば、インプラントは、単方向調節用嵌合部または双方向調節用嵌合部のいずれかである調節用嵌合部によって、調節可能に互いに連結された部材または部分を備えていてもよく、インプラントの一部材または一部分を別の一部材または一部分に対して相対的に移動可能、および長さ、張力、または位置について調節可能にする。一例をあげると、延伸部材を、調節用嵌合部において支持部材に取り付けて、延伸部分の長手方向の一部を調節できるようにしてもよい。上記の構成の代わりに、あるいは、上記の構成に加えて、足場部分または足場部材を、調節用嵌合部において支持部材または延伸部分に取り付けて、足場部分の長さまたは張力を調節できるようにもよい。

調節用嵌合部の中には、１つの部材が別の部材に対して相対的に自由に双方向に移動できるようにするものがある（例えば“双方向”調節用嵌合部）。この種類の調節用嵌合部は、インプラントの一部が調節用嵌合部を介して簡単に双方向に移動することを可能にする。インプラントの一部をある単方向に移動させるために必要な力は、その部分を反対方向に移動させるために必要な力にほぼ等しい。また、好ましくは、上記双方向調節用嵌合部は、摩擦面によって、例えばインプラントの一部が移動する開口部内部に伸びる延伸部（例えば“歯”）によって、インプラントの一部が調節用嵌合部を介して移動することを阻害することはほとんどない。例えば、双方向調節用嵌合部は、円形形状、卵型形状、あるいは細長い形状（例えばスリットまたはスロットなどの形態）を有する（平滑）開口部を備えていてもよい。上記開口部は、必要に応じて開口部と同様の、円形形状またはその他の形状を有する補強部材によって、例えば織物または高分子材料（例えばグロメット（例えば、“緩いグロメット”または“アイレット”））によって補強されてもよい。上記補強部材（例えば、グロメット）は、インプラントの一部が比較的自由に、同じ抵抗を受けながら異なる二方向に通過できる被補強開口部を規定する。

その他の調節用嵌合部には、単方向の調節、例えば、延伸部分または足場部分の長手方向の一部を短くするこができるようにするものもある。これらの調節用嵌合部は、“単方向”調節用嵌合部と称されることもあり、インプラントの一部における長手方向の一部を単方向に調節することはできるが、その反対方向の調節はできない。代表的な一例としての単方向調節用嵌合部は、インプラントの一部が中を通って伸びる開口部と、インプラントの上記一部に摩擦によって嵌合する、１つまたは複数個の面（例えば延伸部または歯）とを備えていてもよい。なお、この摩擦による嵌合は、例えば、開口部の内部を通って伸びる、または開口部に向かって伸びる、または他の形態でインプラントの上記一部に接触し、インプラントの上記一部が調節用嵌合部に対して相対的に移動することを抑制することによって実現する。上記単方向嵌合部は好ましくは、インプラントの上記一部が開口部を通って単方向に移動することを可能し、その一方で、インプラントの上記一部が反対方向に移動することを抑制する。

調節用嵌合部のさらに別の実施形態では、１つの配置（“開”配置）において延伸部分の長手方向の一部の双方向の調節を可能にしてもよく、さらに切換え、駆動、移動、取り外し、閉鎖、または開放可能な構造または機構を備え、摩擦調節用嵌合部を選択された場所において固定して、どちらの方向にも移動しないようにしてもよい。

調節用嵌合部を使用する際には、延伸部材の片方の端部にある組織固定器具は、望ましい組織に載置（および“固着”または“固定”）されてもよい。また、延伸部材のもう一つの端部（非固定端部）は、調節用嵌合部、例えば双方向調節用嵌合部を通してもよい。この嵌合部は、延伸部材の所望の位置（長手方向の部分）に支持部材を載置するように調節される。第２の調節用嵌合部、例えば単方向グロメットは、滑らせて延伸部材の非固定端部の上に載せ、双方向調節用嵌合部が位置する場所まで延伸部材にそって滑らせる。上記単方向調節用嵌合部は、延伸部材にそって双方向調節用嵌合部に向かう方向に容易に移動するが、その反対方向には容易に移動しない。上記支持部材の双方向調節用嵌合部の近くの位置に一旦載置されると、支持部材は、延伸部材にそって上記単方向調節用嵌合部の方向に移動することが防止される。

記載されたインプラントは、延伸部分の遠端部において組織固定器具（ここでは“固定部品”とも称する）を備えていてもよい。延伸部分の遠端部とは、組織支持部、その他の部分、またはインプラントの一部に取り付けられていない端部のことである。（ここで使用する“遠位”という用語は、ある構造物の、別の構造物からは“離れた”端部を指して使用することがある。例えば、延伸部分の遠端部とは、組織支持部につながる連結部から離れた側の端部である。“遠位”という用語は、さらに（任意選択に基づいて）一般に患者に対して相対的に後側、記載された方法を実施している外科医からは相対的に遠い側の場所を指すこともある。また、“近位”とは一般に患者に対して相対的に前側、記載された方法を実施している外科医からは相体的に近い側の場所を指す。任意の他の命名法、例えば上記の命名法とは逆の命名法を代わりに使用して、記載されたデバイスおよび方法の特徴（部）を呼称してもよい。）

組織固定器具は各種のものが使用でき、例えば、軟組織に挿入されると摩擦で担持される自己固定用先端部、軟組織固着器具、生体的粘着剤、一般に必要に応じて付勢されて、閉じると組織を挟む、互いに対向する顎状のものを備えた軟組織用留め具、および嵌合すると延伸部分の端部を組織に固定する、互いに対向する雄型および雌型の連結器具部品などが例としてあげられる。（国際特許出願番号ＰＣＴ／ＵＳ２００７／０１４１２０（発明の名称：“Ｓｕｒｇｉｃａｌ Ｉｍｐｌａｎｔｓ， Ｔｏｏｌｓ， ａｎｄ Ｍｅｔｈｏｄｓ ｆｏｒ Ｔｒｅａｔｉｎｇ Ｐｅｌｖｉｃ Ｃｏｎｄｉｔｉｏｎｓ”、出願日：２００７年６月１５日）を参照されたい。なお、この文献は、その全体が参照によってここに引用される。）例えば、上記遠端部が、他の方法（例えば縫合）によって組織に固定されるように設計されている、あるいは外切開部を通ることを意図されているのであれば、インプラントはさらに、遠端部に組織固定器具を備えていない延伸部分を有していてもよい。この場合、上記延伸部分は、連結器具、拡張器具、または拡張連結器具を、組織経路を通して外切開部まで押すまたは引くために使用可能な細長い形状のツールに連結する連結器具、拡張器具、または拡張連結器具を備えていてもよい。

組織固定器具は、骨盤領域の内部組織内に載置し固定（または“固着”）され、上記インプラントとインプラントによって支持される骨盤組織とを支持できる。組織固定器具は、閉塞筋の孔の筋肉組織（例えば閉塞筋の内筋）、腱弓の組織または腱弓の周囲の組織、仙骨座骨棘の靱帯組織、仙骨座骨棘の靱帯の領域内の組織、尾骨の領域の組織、坐骨棘の領域の組織、尾骨筋の組織、腸骨尾骨筋の組織、仙骨子宮靱帯の組織、挙筋の組織、または骨盤領域の他の組織に載置されてもよい。

組織固定器具の一実施形態は自己固定用先端部である。“自己固定用先端部”は、一般に、自己固定用先端部の位置を維持し、取り付けられたインプラントを支持するような手法で組織（例えば、筋肉組織、腱組織、または靱帯組織）に移植可能な延伸部分に連結された構造物（軟組織固着器具と称されることもある）であってもよい。代表的な一例としての自己固定用先端部は、挿入ツール（例えば、細長い形状の針、細長い形状の管など）の端部に嵌合することで、挿入ツールを使って組織を通って組織内部へ自己固定用先端部を押して移植できるように、設計されてもよく、好ましくはさらに切開部を通って骨盤領域内部に到達するように設計されてもよい。上記自己固定用先端部は、自己固定用先端部の内部チャンネル、外部の場所、例えば基部、または所望の横方向延伸部において挿入ツールに嵌合する。

代表的な一例としての自己固定用先端部は、自己固定用先端部が軟組織に挿入されること、および組織内で効果的に固着されることを可能にする、１つ以上の横方向延伸部を備えていてもよい。横方向延伸部は、可動であっても固定されていてもよい。自己固定用先端部および必要に応じて設けられる横方向延伸のサイズは、組織内に貫入し固着されるのに有用である。代表的な一例としての自己固定用先端部は、本発明の譲受人の同時係属中の国際特許出願番号ＰＣＴＵＳ２００７／００４０１５（出願日：２００７年２月１６日、発明の名称：“Ｓｕｒｇｉｃａｌ Ａｒｔｉｃｌｅｓ ａｎｄ Ｍｅｔｈｏｄｓ ｆｏｒ Ｔｒｅａｔｉｎｇ Ｐｅｌｖｉｃ Ｃｏｎｄｉｔｉｏｎｓ”）に記載されている。なお、この文献は、その全体が参照によってここに引用される。他の構造も有用である。

代表的な実施形態によれば、自己固定用先端部は、近位の基部の端部および遠位の基部の端部を有する基部を備えた構造を有していてもよい。近位の基部の端部は（直接的または間接的に、例えば連結縫合によって）延伸部分（さらにここで使用されるように、足場部分も意味している）の遠端部に連結可能されてもよい。基部は、近位の基部の端部から遠位の基部の端部まで伸びている。また、この基部は、近位の基部の端部から遠位の基部の端部に向かって、少なくとも部分的には基部の長手方向の一部にそって伸びる内部チャンネルを必要に応じて備えている。必要に応じて設けられる内部チャンネルは、挿入ツールの遠端部と相互作用（つまり嵌合）を起こし、挿入ツールを使って患者の骨盤組織内の場所に自己固定用先端部を載置できるように設計されてもよい。自己固定用先端部の実施形態は、基部から、例えば近端部と遠端部との間の場所から、遠位の基部の端部におけるある場所から、または近位の基部の端部におけるある場所から横方向（例えば、半径方向）に伸びる１つ以上の横方向延伸部をさらに備えている。

自己固定用先端部は、任意の有用な物質で製造すればよく、この物質には一般に所望の構造に成形または形成可能で、インプラントの延伸部分の端部に連結されるまたは取り付けられる物質を含む。有用な物質には、プラスチック、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、およびその他の熱可塑性または熱形成性物質、さらに、金属、セラミックス、およびその他の種類の生体適合性および必要に応じて生体吸収性を有する物質、または生体分解吸収性を有する物質などが含まれる。代表的な一例としての生体吸収性を有する物質には、例えば、ポリグリコール酸（ｐｏｌｙｇｌｙｃｏｌｉｃ ａｃｉｄ： ＰＧＡ）、ポリ乳酸（ｐｏｌｙｌａｃｔｉｄｅ： ＰＬＡ）、ＰＧＡおよびＰＬＡの共重合体などが含まれる。

組織固定器具の他の実施形態は多種多様であり、インプラント延伸部分またはインプラント足場部分を軟組織に固定できる、ある種の固定または可動構造を備えていてもよい。ここに記載された方法によれば、組織固定器具は、挿入ツールのシャフトの端部に対して取り外し可能に嵌合し、一方で、延伸部分の端部に取り付けられ、さらに、シャフトの端部に嵌合すると鞘によって覆われるように設計されてもよい。組織固定器具の例としては、軟組織固着器具および自己固定用先端部と称されることがあるものなどがあげられ、さらに、組織内に挿入可能または組織を把持し担持できるばね付勢式固定器具、雌型部品に嵌合する雄型部品を備えた固定器具（例えば組織内部で）、または送出ツールから延伸されて軟組織内へ横方向広がることのできる延伸部（枝状部または歯状部）を利用する固定器具などもあげられる。

本明細書の記載によるインプラントおよびキットの実施形態は、記載されているように、各種構造を有する延伸部材を備えていてもよい。一般に延伸部材は、片方の端部に組織固定器具を有する部材（ここでは“メッシュ部”と称するが、必ずしもメッシュである必要はない）を備えていてもよい。延伸部材は、調節可能な長さを有する延伸部分を備えた構造をメッシュ部が提供できるような手法で、支持部材に嵌合するように配置されてもよい。延伸部材の端部は、支持部材の調節用嵌合部を通して載置されてもよい。また、上記組織固定器具を備えた支持部材の端部は、（組織固定器具が嵌合する）組織と（延伸部分が調節可能な合部において嵌合する）支持部材との間で、延伸部分を形成する。

ここに記載された方法およびインプラントとともに使用される延伸部材の実施形態は、非メッシュ部をさらに備えていてもよい。非メッシュ部は、例えば１針の縫合、１組の縫合、テープ、または処理済み（例えば融解または圧縮）メッシュであってもよい。非メッシュ部は、例えば調節用嵌合部を介して、延伸部材を支持部材に対して相対的に載置または移動することを容易にする。延伸部材のメッシュは、調節用嵌合部、例えば直径が小さいグロメット、寸法が小さいスロット、鋸歯状のスロットなどに載置するには扱いにくいほど大きくてもかまわない。非メッシュ部を設けることで、それほど扱いにくくはなく、一体的（非メッシュ）であり、容易に扱える端部が提供され、延伸部材の端部は調節用嵌合部の開口部を通って簡単に載置される（狭空間の貫通できる）ようになる。例えば非メッシュテープは、単方向調節用嵌合部または双方向調節用嵌合部のスロットまたは鋸歯状のスロットに、もっと容易に挿入できる。円筒状の非メッシュ部、例えば可撓性を有するが堅いプラスチック製の“ロッド”であれば、メッシュ材でできた非固定端部に比べて、丸い開口部、例えばグロメットの開口部にもっと容易に挿入できる。

非メッシュ部であれば、調節部品内で延伸部材の調節がより簡単にできるようになる。非メッシュ材は、メッシュ材に比べて断面および摩擦が小さい。また、長手方向部分全体がメッシュ材でできた延伸部材は組織に嵌合し、その組織はメッシュに付着して調節部品にひっかかってしまい、望ましくない。非メッシュ部の方が使用中は比較的組織に付着しにくい。

延伸部材のメッシュ部および非メッシュ部は、所望の長さに調節した際および遠端部組織固定器具を所望に応じて組織に留める際に、メッシュ部が調節用嵌合部に嵌合できるように寸法を決める。非メッシュ部は、延伸部材を操作および調節できるような長さを有すればよい。延伸部材全体の代表的な一例としての長さは、メッシュ部を含めると（非メッシュ部を設けていればこれも含めると）、４インチ〜１０インチの範囲である。メッシュ部および非メッシュ部を含む延伸部材の場合、メッシュ部は例えば１インチ〜４インチの長さであればよく、非メッシュ部（例えば重合体製ロッド、縫合部など）は例えば３．５インチ〜５．５インチの長さであればよい。

図４は、ここに記載された特徴をいくつか有する、有用なインプラント（２３１）の１つの例を示している。支持部材２０５は、例えば前膣脱を治療するために載置される。インプラント２００は、双方向開口部（例えば、グロメットまたは開口部）２０４および２０６を有する支持部材２０５を備えている。延伸部材（図示せず）は、各開口部２０４および２０６に遊びを持たせて通すことができ、各開口部（２０４、２０６）を通る延伸部材がそれぞれほぼ自由に双方向移動でき、調節可能となっている。組織固定器具２１６は、患者の、互いに対向する閉塞筋の孔に載置可能であり、一方で、支持部材２０５は、膣組織を支持するために載置される。後側組織支持延伸部２２６は、必要に応じて設けられ、後側膣組織を支持するために載置されてもよい。調節用嵌合部２０４および２０６は単方向調節用嵌合部（例えばグロメット）であってもよく、または双方向調節用嵌合部（例えばグロメット）であってもよい。図５Ａおよび図５Ｂまたはここに記載した他の形態のように、延伸部材（図示せず）は長手方向が全てメッシュであってもよく、またはメッシュ部と非メッシュ部とを備えていてもよい。図６Ａおよび図６Ｂのいずれかに図示されたグロメット管理ツール、またはここに記載された他の形態のグロメット管理ツールを使用して、その延伸部材の各非メッシュ部の上にグロメットを載置してもよい。調節ツールを使用して、調節用嵌合部の位置を調節してもよい。

インプラント２３１上の標識２１７には、中心線標識および向き標識が含まれる。標識は、例えば、インプラントの底面に対してその上面を特定するために、インプラントの片側に設けられている。中心線標識２１７ａは（図示するように）鉛直方向に、つまりインプラント上の前よりの位置から後よりの位置まで伸び、インプラント部品の中心線を示すように配置されている。中心線標識２１７ａに垂直な、標識２１７ｂの一部は、インプラントの特定の側を示しており、図示するように、これは患者から見るとインプラントの左側である。これは、例えば、インプラントの正しい向きを確認し、例えばインプラントの正しい側を上向きに載置するために有用である。

図４に示したインプラントの代表的な一例としての寸法は以下のようになる。長さＡが５ｃｍ〜７ｃｍ、例えば５．５ｃｍ〜６．５ｃｍ。長さＢが１０ｃｍ〜１２ｃｍ、例えば１０．５ｃｍ〜１１．５ｃｍ。長さＣが５．５ｃｍ〜７．５ｃｍ、例えば６ｃｍ〜７ｃｍ。長さＤが３．５ｃｍ〜５．５ｃｍ、例えば４ｃｍ〜５ｃｍ。長さＥが２ｃｍ〜４ｃｍ、例えば２．５ｃｍ〜３．５ｃｍ。長さＦが４ｃｍ〜６ｃｍ、例えば４．５ｃｍ〜５．５ｃｍである。

図５Ａは、メッシュ部および非メッシュ部を備えた延伸部材（ここでは“固定腕部”とも称される）の一例を示している。延伸部材１１０は、メッシュ部１１４および非メッシュ部１１２を、２つの縫合部１１３の形態で備えている。組織固定器具（例えば自己固定用先端部）１１６は、メッシュ部１１４の遠端部に取り付けられている。縫合部１１３は、メッシュ部１１４の近端部に、例えば結び目によって取り付けられている。図面には、非メッシュ部１１２が２つの縫合部の形態で示されているが、代わりの構成として、縫合部が２つよりも多いまたは少なくてもよく（例えば１つまたは３つの縫合部）、必要に応じて結んでもまたは編んでもよい。非メッシュ部１１２のさらに別の構成としては、重合体製テープ、狭幅の織物などがあげられ、所望の調節用嵌合部の開口部を容易に貫通させられるように、これらの中から任意のもの選択すればよい。

図５Ｂは、メッシュ部および非メッシュ部を備えた延伸部材（ここでは“固定腕部”とも称される）の別の一例を示している。延伸部材１００は、メッシュ部１０４および非メッシュ部１０２を備えている。組織固定器具（例えば自己固定用先端部）１０６は、メッシュ部１０４の遠端部に取り付けられている。重合体（例えばポリプロピレン）製のロッド１０２が、メッシュ部１０４の近端部に（好ましくは一体的に）取り付けられている。重合体製ロッド１０２は、任意の方法によって形成可能であり、メッシュ部１０４に、一体的にまたは任意の手法によって取り付けられている。一例をあげると、重合体製ロッド１０２の作製は、メッシュ部１０４に一体化された、ある長さを有するメッシュ材から始める。メッシュはその長手方向全体が（メッシュを構成する重合体の種類によって決まる）所望の融解温度で加熱処理されてメッシュは融解し、堅固ではあるが可撓的な機械的性質を有する重合体製ロッドを形成する。ポリプロピレンの場合、所望の加熱処理温度は、４５０°Ｆ〜５２０°Ｆの範囲である。重合体製ロッド１０２は、有用な寸法を有し、例えば長さは約３．５インチ〜５．５インチの範囲であり、幅（例えば直径）は、拡張器具に嵌合するのに有用な、例えば約１／１６インチ、または約１ｍｍ〜４ｍｍである。

図５Ｂに示すように、必要に応じて、重合体製ロッド１０２の近端部１０９は、グロメット管理ツールの端部を受け止められる形状か、または該端部に噛み合って嵌合できる形状で形成される。なお、このグロメット管理ツールは、グロメットまたはその他の調節用嵌合部を、延伸部材の非メッシュ部の近端部上に容易に載置できるようにするものであり、例えば重合体製ロッドである。グロメット管理ツールがなければ、延伸部材、例えば延伸部材１００の使用者は、グロメット（例えば単方向グロメット）を手で指を使って非メッシュ部の近端部上に載置してもよい。これは作業がしにくく、骨盤領域の限られた空間の中やその奥まった場所では特に作業がしにくい。グロメット管理ツールは１つのまたは複数個のグロメットを保持する。グロメット管理ツールの端部は、グロメット管理ツールの端部が一列に並んで延伸部材の近端部に噛み合うことができるような手法で、延伸部材の非メッシュ部の近端部に嵌合可能である。端部が一旦嵌合すると、グロメットを、グロメット管理ツールから、直接延伸部材の非メッシュ部の近端部上へ滑らせることができる。

グロメット管理ツールは、一つのグロメットまたは複数個のグロメットを備えていてもよい。また、グロメット管理ツールを使用して、１つのグロメットまたは複数個のグロメットを、一つのまたは複数個の骨盤用インプラントの異なる複数個の延伸部材上へ移送してもよい。グロメット管理ツールを使用すれば、外科手技中に、グロメット（または他の調節用嵌合部）が制御できなくなったり、グロメットの位置が分からなくなったりしないことが保証できるという効果がある。そして、グロメットを、外科手技中に他の部材から離れて自由に動くことができるようになって、どこにあるのか分からなくなるという事態が防止できるという効果もある。

図６Ａは、グロメット管理ツール１２０を示していて、このツール１２０は、ロッド、例えば、重合体製ロッド１０２の直径に合う直径を有する、重合体製（例えばポリプロピレン製）ロッドである。単方向（または双方向）グロメット１２４は、グロメット管理ツール１２０の長手方向に一列に並べられている。遠端部１２４は、円筒状の延伸部１０８に対して相補的なチャンネルまたは穴１２２を、延伸部材１００近端部１０９に備えている。これらの相補的な面は嵌合可能であり、グロメットがツール１２０から重合体製ロッド１０２へ移動できるようにする。

使用する際には、延伸部材１００の非メッシュ部１０２は、インプラントの調節用嵌合部を通過することができる。インプラントおよび延伸部材は所望に応じて操作され、例えば骨盤領域の場所に載置される。グロメット管理ツール１２０のチャンネル１２２は、円筒状の延伸部１０８を覆うように載置される。そして、グロメット１２４をＢ方向（図６Ａ参照）に滑らせて、グロメット管理ツール１２０から延伸部材１００の近端部１０９上へ移動させる。単方向グロメット１２４は、延伸部材にそってＢ方向に容易に移動し、例えばメッシュ部１０４のようなメッシュ部の上に載置されたとき、Ｂ方向の反対の方向に移動することが制限される。延伸部材１００上に一旦載置されると、グロメット１２４は滑ってメッシュ部１０４に嵌合し、組織支持部または支持部材の調節用嵌合部に接触し、組織支持部または支持部材に対するメッシュ部１０４の相対的な位置を固定して、例えばメッシュ部１０４の延伸部分の長さを固定する。

グロメット管理ツール、例えばツール１２０はプラスチック、金属、またはその他の有用な材料で作製すればよい。一例として、グロメット管理ツールは、重合体製ロッド非メッシュ部１０２を製作するのに使用されるのと同じ手法で、例えば、メッシュの長手方向の一部を融解させ、重合体製ロッドを形成するように成形することによって作製すればよい。他の方法、例えば押し出し、射出成形などを使用してもかまわない。

図中に示すように、グロメット管理ツール１２０の遠端部１２４と非メッシュ部１０２の近端部１０９との間の嵌合部は、相補的円筒状面を備えている。他の嵌合形態、例えば相補的な円錐面、正方形の面なども有用である。

必要に応じて、延伸部材の非メッシュ部の特徴またはグロメット管理ツールの特徴は、単方向グロメットが所望の方向の移動のために正しく向いているときに限って、単方向グロメットが通過することを可能にする特徴を備えていてもよい。この特徴の一例として、延伸部材の非メッシュ部の近端部（またはグロメット管理ツールの遠端部）に配置された肩部または切り欠きがあげられる。

図６Ｂに示すように、グロメット管理ツール１３０は、延伸部材の近端部１３２に嵌合する。この嵌合形態は相補的円錐面１３４を含み、上記２つの端部の整列および噛み合わせを可能にしている。切り欠き１４０および肩部１４２は、単方向グロメット１３６がツール１３０から非メッシュ部１３２上へ移動できるようにする。これは、グロメット１３６がＣ方向の移動を可能にし、Ｃ方向とは反対の方向の移動を抑制する方向を向いているからである。切り欠き１４０および肩部１４２は、単方向グロメット１３８が非メッシュ部１３２上に移動するのを防止する。グロメット１３８は、Ｃ方向の移動ではなく、Ｃ方向とは反対の方向の移動を可能にする方向を向いている。グロメット１３８の歯１３９は、肩部１４２に嵌合し、グロメット１３８が肩部１４２を通過してＣ方向に移動しないようにする。図中では、切り欠き１４０および肩部１４２は、非メッシュ部１３２の上に配置されているように示されているが、この構成の代わりに、グロメット管理ツール１３０の上に設けられてもよい。

記載されたシステムは、一般に取っ手およびシャフトを備えた挿入ツールをさらに備えている。該シャフトは、堅い構造、例えば必要に応じて二次元または三次元で湾曲した堅い針であってもよい。この針の遠端部は、例えば、自己固定用先端部の別の実施形態のように、組織固定器具の基部のチャンネルの内側にぴたりとはまることによって組織固定器具に嵌合する面を備えていてもよい。別の構成としては、シャフトが、例えばトロカールのように、中空の中心を備えていてもよく、もしくは、把持することによって自己固定用先端部に嵌合する可動機構か、または他の機械的嵌合形態の可動機構を備えていてもよい。挿入ツールを含めて、様々な異なる種類の外科的ツールが、記載されているように、一般にインプラントの延伸部分（またはここに記載されているように、足場部分）に固定された組織固定器具に嵌合し、該組織固定器具を載置するのに有用である。各種挿入ツールが公知であり、これらの種類のツール、およびこれらを改良したツールは、本明細書の記載にしたがってインプラントの設置に使用可能である。

有用な挿入ツールの例としては、一般に薄い細長い形状のシャフト（例えば針）と、そのシャフトの片方の端部（近端部）に取り付けられた取っ手とを備え、さらに必要に応じて、延伸部分（足場部分を含む）に連結された組織固定器具に嵌合できるようになっているシャフトの遠端部（または“先端”）を備えた種類のツールなどがあげられる。この針は、延伸部または足場部分の遠端部を、所望の内部の解剖的場所、または組織経路を通して外切開に載置しやすくする。

失禁および膣脱の治療法用の、代表的な一例としての挿入ツールは、例えば以下の特許文献に記載されている。すなわち、米国特許出願シリアル番号１０／８３４，９４３、１０／３０６，１７９、１１／３４７，５５３、１１／３９８，３６８、１０／８４０，６４６、ＰＣＴ出願番号２００６／０２８８２８、およびＰＣＴ出願番号２００６／０２６０６１８である。なお、これらの特許文献は、その全体が参照によってここに引用される。これらの特許文献に記載されたツールは、脱出症、男性の失禁、または女性の失禁などの治療用インプラントを骨盤領域に載置するために設計される。

代表的な一例としての挿入ツールは、上記の特許文献に記載されたツールと同様のものでもよく、または該ツールの特徴を備えたものであってもよい。ここに記載されたある方法にしたがって使用する場合、これらの挿入ツールは、例えば、膣切開または内切開（ｍｅｄｉａｌ ｉｎｃｉｓｉｏｎ）を介して挿入ツールを使用して自己固定用先端部を載置し、骨盤領域内で組織に嵌合できるように、改良されてもよい。上記挿入ツールは、細長い形状のシャフトを備えるように設計、形状、および寸法決定されてもよく、なお、このシャフトは、真っ直ぐもしくは二次元または三次元で湾曲しており、（雌型生体組織の場合には）膣切開を介して、または（雄型生体組織の場合には）会陰切開を介して挿入可能であり、さらに、切開口から骨盤組織まで、または切開口から骨盤組織を介して延伸部分の遠端部が載置できるように伸びている。

記載された方法、例えば調節機構を利用した方法において必要に応じて使用される、その他のツールは調節ツールである。調節ツールは、調節機構に嵌合する遠端部を備えた細長い形状のツールであってもよく、これは調節機構を操作、および必要に応じて調節機構をインプラントの一部に対して相対的に移動させるためである。図７Ａおよび図７Ｂは、インプラントの一部、例えば延伸部分または足場部分の一部の長手方向にそって調節用嵌合部、例えばグロメットを移動させるために有用な、調節ツール１７０の側面図および俯瞰図を示している。ツール１７０は、細長い形状のシャフト１７２と遠端部１７４とを備えている。遠端部１７４に設けられたスロット１７６は、インプラントの一部を通過して滑らせることができ、こうすることでインプラントの一部を開口部１７９内の場所に載置することができる。開口部１７９は、互いに対向する腕部１７８によって形状が規定されている。上記腕部１７８は、図中では湾曲しているように示してあるが、必要に応じて真っ直ぐなでもよく、角度がついていてもよく、横方向および必要に応じてシャフト１７２の遠端部から遠位に向かって伸びていて、開口部１７９およびスロット１７６の形状を規定している。腕部１７８の底面を使用して、インプラントの一部の上に配置された調節用嵌合部（例えばグロメット）に圧力を加え、グロメットを好ましくはインプラントの上記一部にそった方向に移動させることによって、延伸部分または足場部分の長さを調節することができる。スロット１７６は必要に応じて設けられる。遠端部１７４は、上記とは別の構成として、インプラントの一部が貫通する閉じた開口部を備えていてもよく、遠端部１７４を調節可能な嵌合部に接触するように載置してもよい。

スロット（必要に応じて設ける）および開口部の寸法は、インプラントの一部に嵌合するために有用である。スロットは、例えば開口部の形状を規定し、開口部は０．５ｃｍ〜１．２ｃｍ、例えば０．５ｃｍ〜１．０ｃｍの範囲である。開口部は、スロットと同一またはそれに近い寸法を有していてもよいし、スロットと同一または大きい幅を有していてもよい。例えば開口部は、直径が０．５ｃｍ〜１．２ｃｍ、例えば０．５ｃｍ〜１．０ｃｍの範囲である。調節用嵌合部に嵌合する面は調節用嵌合部の面のサイズに対応していて、例えばグロメットのフランジの面に合う面を有している。

調節ツールの別の一実施形態を図８Ａおよび図８Ｂに示す。調節ツール１７０のこの実施形態は、図７Ａおよび図７Ｂに図示するツール１７０の特徴を備え、さらに必要に応じて開口部１７９の周囲に、腕部１７８と一列に並んで配置された腕部をもう一組を備えている。図８Ａおよび図８Ｂは、調節ツール１７０の本実施形態の側面図および俯瞰図を示している。腕部１７８に加えて、記載されたように特徴および面を規定し、ツール１７０の本実施形態は、さらに、腕部１７８と一列に並び、かつ開口部１７９の付加的な長さを規定する、もう一組の腕部１８４を備えている。

これも図８Ａおよび図８Ｂに示すように、必要に応じて設けられた腕部１８６は、グロメット３２がインプラントの一部にそってＮ方向に移動中に、組織が調節用嵌合部（例えばグロメット）の内側でひっかかることを防止する構造をしている。例えば、調節ツールを使用してメッシュインプラントの一部にそってグロメットを移動させる際に、患者内部で組織がメッシュまたはグロメットに接触するかもしれない。また、（腕部１８６が設けられていなければ）組織がグロメットの開口部に無理やり押し込められる傾向がある。腕部１８６は、組織内に移動するグロメットの側面に配置され、組織を横へ押しやって、組織がグロメットの開口部に入るのを防ぐ。上記の構成の代わりに、あるいは、上記の構成に加えて、第２の腕部１８６を使用して、双方向グロメットを、腕部１７８によって実現される移動方向とは反対方向に移動させることができる。つまり、調節ツールの本実施形態は、双方向グロメットが、インプラント部品にそって２つの異なる方向（遠位の方向と近位の方向）に移動できるようにする。

使用の際には、遠端部１７４に設けられたスロット１７６および１８４にインプラントの一部を滑らせて、インプラントの一部を開口部１７９内の場所（腕部１７８の組および腕部１８６の組によって、その２組の腕部の間に規定される場所）に載置する。図１０Ａは、腕部１８６の底面１８２が組織を横へ押しやって、組織が調節用嵌合部１９２の開口部に入るのを防ぐ様子を示している。なお、この調節用嵌合部１９２は、例えば、インプラント部品１９８に対する相対的なインプラント部品１９０の場所の調節に使用される単方向グロメットまたは双方向グロメットであり、インプラント部品１９８は、組織１９４内に載置された組織固定器具１９６を備えている。

使用において、記載されたインプラントの実施形態は、インプラントの組織支持部をある場所に載置して骨盤組織を支持すること、およびインプラントの延伸部分に（例えば延伸部材）取り付けられた組織固定器具を載置することを含み、さらに、記載された鞘を含んだ挿入ツールを使用することを必要に応じて含む方法にしたがって移植可能である。方法は、例えば、組織固定器具を遠位のシャフト端部に嵌合させるステップ、鞘をシャフトおよび嵌合した組織固定器具を覆うように載置するステップ、カバー付き配置において上記鞘がシャフトを覆うように載置された状態で、シャフトおよび嵌合している組織固定器具を患者に挿入するステップなどを備えていてもよい。必要に応じて設けられる機械的停止部に鞘が嵌合し、カバー付き配置における鞘の位置を維持してもよい。上記機械的停止部が取り外されて、組織固定器具からカバーがはずされるカバー無し配置に、鞘が移動できる（例えば、シャフトにそって近位の方向に滑らせられる）ようにしてもよい。この場合、組織固定器具は患者の組織、例えば骨盤領域の軟組織に留めてもよい。上記組織固定器具が自己固定用先端部である場合、自己固定用先端部は、取っ手およびシャフトを使って自己固定用先端部を軟組織内へ押しつけるようにすることによって、軟組織に留めてもよい。組織固定器具が別の機構によって、例えば機械的な把持と、必要に応じて、組織固定器具の把持機構を開閉するシャフトを使用することによって組織に留められるのであれば、上記組織固定器具は、駆動部またはその他の駆動機構の操作によって組織固定器具を組織に固定することによって、組織に嵌合するようにされてもよい。

１つ以上の延伸部分および必要に応じて設けられる足場部分は、（挿入ツールを鞘とともに使用することによって、または他の形態で）組織支持部を支持する際に使用するために載置される。例えば、延伸部分の遠端部に設けられた組織固定器具は、骨盤領域の内部組織、例えば筋肉、靱帯、腱、筋膜、骨などに載置可能である。別の構成としては、延伸部分が連結器具を備え、連結器具および延伸部分を外切開に通じる（例えば、外部の直腸周囲の領域における外切開に通じる、または閉塞筋の孔を通って内腿における外切開に通じる）組織経路を介して引くツールに連結されていてもよい。さらに別の構成としては、延伸部分は連結器具や自己固定用先端部を備えず、組織に連結されているか、患者内部の組織経路を通されるか、または組織経路および外切開を通されてもよい。必要に応じて、足場部分の遠端部に設けられた組織固定器具は、骨盤領域の内部組織、例えば筋肉、靱帯、腱、筋膜、骨などに連結可能されてもよい。上記の構成の代わりに、あるいは、上記の構成に加えて、足場部分の端部も、組織支持部またはインプラントの延伸部分に取り付けられてもよい。延伸部分または支持部材は、足場部分の両端部の間の場所において足場部分に取り付けられてもよい。

方法の実施形態は、内切開（ｍｅｄｉａｌ ｉｎｃｉｓｉｏｎ）を使って、例えば、（雌型生体組織の場合には）膣切開を介して、または（雄型生体組織の場合には）会陰切開を介して、挿入ツール（例えば、ここに記載された挿入ツールのうち任意のもの）を使用することによって実施可能である。なお、ここで使用する挿入ツールは、延伸部分の遠端部に（例えば、組織固定器具に嵌合することによって）嵌合し、遠端部を通過して患者の骨盤領域内の所望の場所に到達する。

延伸部分または足場部分の端部は、骨盤領域の任意の所望の組織に取り付けられても、または所望の組織経路を通って外切開に達してもよい。延伸部分または足場部分の遠端部を組織に取り付けるために、組織固定器具が延伸部または足場部分の端部に取り付けられてもよい。インプラントを設置する間に、組織固定器具は、以下に列挙するような任意の所望の組織に取り付けられてもよい。すなわち、例えば筋肉（例えば、閉塞筋の孔、閉塞筋の内筋、閉塞筋の外筋、肛門挙筋、尾骨筋、腸骨尾骨筋）などの軟組織；例えば仙骨座骨棘の靱帯などの靱帯または周囲の組織；例えば腱弓などの腱または周囲の組織（例えば腱弓の領域、国際出願公開番号ＷＯ２００７／０１６０８３を参照（公開日２００７年２月８日、発明の名称：“Ｍｅｔｈｏｄｓ ａｎｄ Ｓｙｍｐｔｏｍｓ ｆｏｒ Ｔｒｅａｔｍｅｎｔ ｏｆ Ｐｒｏｌａｐｓｅ”）なお、この特許文献はその全体が参照によってここに引用される）；さらに、坐骨棘またはその近くにおいて、例えば坐骨棘の領域における組織などである。

上記のインプラントおよびツールを組み合わせて、ここに記載されたインプラント、インプラント部品、挿入ツール、および他のツールからなる異なる複数の組み合わせを含むキット（例えばシステム”）にしてもよい。上記インプラントの任意のものを、挿入ツール、延伸部材、支持部材、調節ツール、グロメット管理ツール、および組織固定器具と任意に組み合わせてキットにしてもよい。図９はこのような組み合わせを示している。キット５００は、支持部材５０２、２つの延伸部材５０４（図面中ではそれぞれメッシュ部および非メッシュ部を有している）、挿入ツール５１０とともに使用する鞘５２０、挿入ツール５３０、必要に応じて設けられる調節ツール５０６、および必要に応じて設けられるグロメット管理ツール５０８を備えている。

鞘５２０は、近端部５２２、遠端部５２４、および側壁開口５２６を有する、自己支持可能な重合体（例えばポリプロピレン）製の管の形態である。挿入ツール５１０は記載されたとおりのものでよく、例えば、図１Ａ、図１Ｂ、図１Ｃ、図１Ｄ、図２Ａ、および図２Ｂに図示されたとおりでよい。図中に示すように、挿入ツール５１０は、窪み５３２を有する取っ手５０７と、ピン（機械的停止部）５３０を有するレバー５２８とを備えている。挿入ツール５１０のシャフト５１１の遠端部は、延伸部材５０４の組織固定器具５１２に、例えば、組織固定器具５１２を骨盤領域の後よりの位置、例えば仙骨座骨棘の靱帯に載置するために嵌合する。鞘５２０の開口５２６は、カバー付き配置において鞘５２０がシャフト５１１を覆う際に、ピン５３０に嵌合し、近端部５２２は部分的に窪み５３２に入る。カバー無し配置では、近端部５２２が窪み５３２のさらに中部へ到り、シャフト５１１の遠端部のカバーをはずす。

延伸部材５０４は、メッシュ部分および非メッシュ部を備えているが、全体がメッシュからなる延伸部材を使用してもよい。必要に応じて設けられる調節ツール５０６は、記載されたとおりのものでよく、例えば、図７Ａおよび図７Ｂ、または図８Ａおよび図８Ｂに図示されたとおりでよい。必要に応じて設けられたグロメット管理ツール５０８は、記載されたとおりのものでよく、例えば、図６Ａまたは図６Ｂに図示されたとおりでよい。グロメット管理ツール５０８の端部５１４は、延伸部材５０４の非メッシュ部の端部５１６に、例えば円筒状の穴（影をつけて図示）において噛み合って嵌合する。

挿入ツール５３０は、取っ手およびシャフトを備えており、シャフトの遠端部は、インプラント支持部材５０２の組織固定器具５１３に嵌合できて、挿入ツール５３０が組織固定器具５１３を経膣的に骨盤領域の前よりの場所に、例えば各組織固定器具５１３を閉塞筋の孔の互いに向かい合う場所に載置することを可能にする。

支持部材５０２は、後膣組織、前膣組織、膣断端組織、またはその他の骨盤組織を支持するように設計してもよく、例えば別の延伸部分または足場部分、または別の調節用嵌合部（図示せず）などの特徴部を必要に応じて備えていてもよい。例えば、支持部材５０２は、ここで記載または図示された支持部材またはインプラントを備えていてもよい。開口部５１８は、単方向調節用嵌合部または双方向調節用嵌合部であってもよい。

使用の際には、挿入ツール５１０、延伸部材５０４、および鞘５２０は、まず組織固定器具５１２をツール５１０の遠端部５１５に接触するよいに載置することによって使用可能である。図１０Ａに示すように、この場合、鞘５２０は、シャフト５１１および延伸部材５０４（それぞれ鞘５２０内に覆われている）を覆うように載置されてもよい。鞘５２０の近端部５２２は、ピン５３０に接触し、近端部５２２が取っ手５０７の窪み５３２に完全に入ってしまわないようにする。これがカバー付き配置であり、鞘５２０の遠端部５２４は、挿入ツール５１０のシャフト５１１の遠端部５１５に嵌合している組織固定器具５１２を覆う。。カバー付き配置は、嵌合している組織固定器具および延伸部分（例えば延伸部材）とともに、ツールを、例えば経膣または他の切開によって、患者内部に挿入し、組織固定器具５１２を体内の固定部位の近くの場所に載置するのに使用可能である。

一旦固定部位の近傍に達すると、上記ツールおよび鞘はカバー無し配置に変えることができ、組織固定器具５１２は組織に嵌合可能になる。図１０Ｂはカバー無し配置を示しており、鞘５２０の遠端部５２４は、挿入ツール５１０のシャフト５１１の遠端部５１５に嵌合している組織固定器具５１２を覆っていない。また、ピン５３０は近端部５２２に嵌合した状態から移行し、近端部５２２は窪み５３２の中部に移動している。このカバー無し配置において、組織固定器具５１２は、固定部位において組織に嵌合することができる。

ここに記載された膣脱、例えば前膣脱または後膣脱（膣断端脱を含む）の治療を目的とする方法の一例は、組織支持部を前膣または後膣または膣断端の組織に載置すること、上記組織支持部から仙骨座骨棘の靱帯まで伸びている、１つのおよび必要に応じて２つの後側延伸部分を固定すること、および２つの前側延伸部分を互いに対向する閉塞筋の孔に固定することを含んでいてもよい。上記延伸部分の１つのまたは全ての載置は、ここで記載された鞘の使用を組み込んだ挿入ツールを使って実施されてもよい。

本明細書の記載によるシステムの一例は、膣脱治療用インプラントおよび挿入ツールを備えており、以下に記載するようなシステムであってもよい。

上記システムは、一回の経膣切開を採用することによって、外部から針を通さない膣脱の治療または修復に使用可能である。この種類システムの一実施形態は、仙骨座骨棘の靱帯、尾骨筋、または両方を含んだ場所にインプラントの延伸部分を載置することによって、後膣脱を治療する際に有用である。上記インプラントは、所望に応じて経膣的に一回の膣切開によって移植、固定、および調節可能である。他の類似のシステムおよび方法とは異なり、この上記実施形態は、外部から針を臀部に通さないでも体内に移植可能であり、したがってより非観血的である。

上記システムは、一般に、固定用腕部（延伸部材）（例えば、図５Ｂに示す中心グラフト（支持部材））（例えば図４に示す）と、送出デバイス（挿入ツール）（例えば、図１Ａ、図１Ｂ、図１Ｃ、図１Ｄ、図２Ａ、または図２Ｂに示す）と、調節用嵌合部とを備えている。これらのツールおよびインプラント部品は、図９に示されるシステムの一部であってもよい。

固定用腕部は、内部の固定部位に固定可能であり、中心グラフトを体内でガイドでき、内部での中心グラフトの調節を補助する。各固定用腕部は、一般に、幹部（非メッシュ部）と、メッシュ部（メッシュ部）と、固定部品（組織固定器具）とを備えている。固定用腕部の部品は、ポリプロピレンもしくは公知または当業者によって今後開発される任意の物質で作製できる。

図５Ｂは、堅い重合体製の幹部（１０２）を備えた固定用腕部の一例を示している。幹部１０２の遠端部は、メッシュ部１０４の端部（近端部）上にオーバーモールド成形可能である。別の構成としては、幹部１０２およびメッシュ部１０４が、高分子材料からなる単一の部材で作製されてもよい。固定部品（１０６）は、別の（遠位の）端部またはメッシュ部１０４の一部の上にオーバーモールド成形可能である。幹部の近端部（１０９）は、手術中に医師が使用することができ、こうすることで、中心グラフトの緩いアイレット（例えば単方向調節用グロメット）と、ロック用アイレット保持具（例えばグロメット管理ツール）と、ロック用アイレット（例えば、単方向調節用グロメット）と、アクセサリー・ツール（調節ツール）との載置を互いに対して相対的にガイドし、操作することができる。上記幹部は、組織に引っかかるという問題を起こさずに、中心グラフトの緩いアイレットおよびロック用アイレットを患者の体内へ移送できるようにする。例えば、幹部は、固定用腕部を載置した後に、切開口から延ばされて、体外で、かつ、閉じられた外科的部位から離れたところで、緩いアイレットを通される。固定用腕部のメッシュ部（メッシュ部）は、緩いアイレットが自由に通過でき、その一方で、少なくとも１つのロック用アイレットが単方向に移動して、上記緩いアイレットを固定することを可能にする。上記固定部品は、仙骨座骨棘の靱帯または任意の他の軟組織に、頑強に鋭角で固定することを可能にする。

中心グラフトは、一般にグラフト部分（例えば、メッシュまたは生体物質）および必要に応じて設けられる緩いアイレットを備えている。グラフト部分は、超軽量ポリプロピレン（ＥＬＰＰ）、ブタのグラフト、もしくは公知または生体的インプラントに使用のために当業者によって今後開発される任意の物質、または物質の組み合わせで作製できる。１つの緩いアイレットをグラフト部分の側面上にオーバーモールド成形し、別の緩いアイレットを該グラフト部分の別の側面または前記の側面とは反対の側面上にオーバーモールド成形することができる。上記の緩いアイレットは、医師が中心グラフトを体内へ平行移動および体外へ平行移動させ、ふさわしい位置決めをすることを可能にするために使用できる。一実施形態において、中心グラフトの位置決めおよび再度の位置決めは、ロック用アイレットで固定される前に幹部上で実現される。

このインプラント、その他のインプラント、インプラント部品、システムによれば、メッシュ腕部の各部（例えば延伸部分）は、その長手方向にそって設けられた１つ以上の巻取り部または折り畳み部を有していてもよく、この場合、この巻取り部または折り畳み部は、例えば縫合、留め金、粘着剤、またはその他の固定器具によってシステムの移植の前に縫合され、共に保持される。インプラント部がきつすぎるのであれば、医師またはその他の医療専門家が、巻取り部または折り畳み部をまとめて保持している縫合をインビボで切断して、１つ以上のメッシュ腕部の長さを増加させればよい。長さを増加させることで、中心グラフトは緩む。

上記ロック用システム（調節機構）は、一般に上記ロック用アイレット（例えば単方向調節用グロメット）と、必要に応じて設けられるロック用アイレット保持具（グロメット管理ツール）と、緩いアイレット（例えば双方向調節用グロメット）と、必要に応じて設けられるアクセサリー・ツール（例えば調節ツール）を備えている。ロック用システムの部品は、全てポリプロピレンもしくは公知または当業者によって今後開発される任意の物質で作製できる。上記ロック用アイレットは、一旦固定用腕部のメッシュ部に嵌合させると、中心グラフトの張り具合を増加させることだけしかできない、単方向張力付与デバイスであってもよい。

上記ロック用アイレットは、中心グラフトの緩いアイレットと協働して、中心グラフトを固定用腕部のメッシュ部上に固定することができる。上記ロック用アイレットは、一般に内向きの放射状の歯を特徴としてもよく、この場合、上記歯は、ある角度に向けると、固定用腕部の幹部にそって、固定用腕部にそった単方向または双方向の平行移動が可能になり、また、一旦メッシュ部（例えばメッシュ部）に嵌合させると固定用腕部の幹部に向かった方向の平行移動を防止できる歯である。ロック用アイレット保持具は、医師またはその他の医療専門家によって操作可能であって、ロック用アイレットを正しい向きに保持し、必要があれば、固定用腕部の端部に噛み合ってロック用アイレットを平行移動させられる。緩いアイレットは、中心グラフト上にオーバーモールド成形できる。緩いアイレットは、それぞれが固定用腕部の幹部の近端部上に載せることができ、固定用腕部上で平行移動させて中心グラフトをふさわしい位置に移動させることができる。上記アクセサリー・ツールは、中心グラフトの緩いアイレットおよびロック用アイレットを固定用腕部上で平行移動させる際に、医師またはその他の医療専門家を補助できる。アクセサリー・ツールは、小さな体腔または患者体内の届きにくい場所、例えば骨盤領域（ただしこれに限定されるものではない）では、特に役立つ。

上記送出デバイス（挿入ツール）は、一般にシャフト（例えば堅い針）と取っ手とを備えている。針は一般にシャフトに匹敵する長さを有し、遠端部に先端部を有し、上記先端部は、固定部品（例えば自己固定用先端部などの組織固定器具）に嵌合する。針は、固定用腕部の固定部品を、所望の固定部位（例えば骨盤領域の軟組織における位置）へ搬送することができ、固定部品を軟組織または医師またはその他の医療専門家が選択した組織に載置することができる。

以下に記載するのは、上記膣脱治療用システムの移植方法の一例である。この方法は、記載されるように鞘を含む挿入ツールを用いても、鞘を含まない挿入ツールを用いても実施可能である。

１．膣尖と横方向の各仙骨子宮凹点とを決定する。

２．好ましい切開方法を使用して後膣壁を切開する。直腸膣筋膜を厚さ方向全体において切開する。膣尖に対して遠位の側で膣壁をおよそ２ｃｍ、取り付けのために切開せずに残しておく。

３．坐骨棘に向かって切開し、坐骨棘を人差し指で触診する。

４．仙骨座骨棘の靱帯にそって内方向（ｍｅｄｉａｌ ｄｉｒｅｃｔｉｏｎ）に鈍的切開を開始する。仙骨に向かって指２〜３本分の幅を切開する。

５．対側部位についてステップ３〜４を実施する。

６．固定用腕部の固定部品を、送出デバイスの針の先端部上に挿入する。

７．送出デバイスの取っ手を左手で把持する。

８．患者の右側の固定領域の位置を特定するために、仙骨座骨棘の靱帯を、坐骨棘から内側へ向けて（ｍｅｄｉａｌｌｙ）指２本分の幅で（坐骨棘から少なくとも２ｃｍ）触診する
９．人差し指および中指を二本とも膣腔に挿入する。

１０．針の第１の湾曲部を固定点および中指の先端部に載置する。

１１．針の先端部が第１の湾曲部に挿入されるまで、固定部品を靱帯に押し込む。

１２．指を移植領域に載置して、固定部品との嵌合から解放されるまで針状シャフトを穏やかに手前に引くことによって、針の先端部を固定部品から取り外す。

１３．送出デバイスを、切開口を通して管口から慎重に取り外す。

１４．全ての方向に関する指示を反対側に読み換えて、患者左側についてステップ６〜１３を実施する。

１５．中心グラフトの正しい向きを決定する。中心グラフト上の緩いアイレットを設置する。中心グラフトの対応する緩いアイレットを通って管口から外へ出ている固定用腕部のうち、一方の幹部を滑らせる。中心グラフトの対応する緩いアイレットを通って管口から外へ出ているもう一方の固定用腕部の幹部を滑らせる。

１６．アクセサリー・ツールを、一方の固定用腕部の幹部の近端部上に載せる。

１７．アクセサリー・ツールを上記固定用腕部上で固定部位に向かってわずかな距離だけ平行移動させる。この操作によって、中心グラフトは骨盤腔に押し込まれる。アクセサリー・ツールを固定用腕部から取り外す。

１８．ステップ１６〜１７をもう一方の固定用腕部について繰り返す。

１９．ステップ１６〜１８を中心グラフトが所望の位置に到達するまで繰り返す。中心グラフトを緩めるには、中心グラフトを掴んで管口に向かって引く。

２０．中心グラフトの調節が済んだら、ロック用アイレット保持具を設置する。保持具の端部を並べて、一方の固定用腕部の幹部の近端部に嵌合させる。固定用腕部上にロック用アイレットを１つ載せるし、ロック用アイレット保持具を嵌合から解放する。

２１．ステップ２０を繰り返して、他方の固定用腕部上にロック用アイレットを１つ載せる。

２２．アクセサリー・ツールを一方の固定用腕部の幹部の近端部上に再度載せる。次に、固定用腕部上のアクセサリー・ツールを、ロック用アイレットが中心グラフト上の緩いアイレットに到達するまで、固定部位に向かって平行移動させる。触診して、ロック用アイレットが中心グラフトの表面上にあることを確かめる。もし中心グラフトの表面上になければ、アクセサリー・ツールで再度調節する。注意：記載された方法の少なくとも一つの実施形態において、（ロック用アイレットが単方向調節用グロメットである場合には）ロック用アイレットは、一旦その歯が近位の固定用腕部であるメッシュ部の一部に接触すると、戻すことはできない。

２３．もう一方の固定用腕部についてステップ２２を繰り返す。

２４．メッシュ部をロック用アイレットに近位の側で少なくとも１ｃｍ切り落とす。切り落とした幹部の遠端部にメッシュが含まれていることを確認する。もし含まれていなければ、残っている幹部をインビボでメッシュ部から切り取る。

２５．必要であれば、続けて後側の異常を修復する。メッシュを縫合している間はいかなる張力を加えることも避ける。直腸膣筋膜をメッシュの上方で閉じ、膣切開を閉じる。

これらのステップを組み込んだ方法の実施形態は、膀胱瘤、直腸瘤、腸瘤、膣断端脱、および／または直腸、膣、または膀胱の問題に関連する任意の骨盤機能障害を治療することができる。

固定部品の実施形態は、各メッシュ腕部の自由端部上にオーバーモールド成形可能である。固定部品は、送出デバイスの針を受け止める穴を有していてもよい。外科手技中に、上記固定部品または針は組織を拡張することができる。そして固定部品は、後側骨盤領域の例えば以下に列挙するような任意の場所に取り付けられる。すなわち、仙骨座骨棘の靱帯、尾骨筋、腸骨尾骨筋、腱弓（白線）、坐骨棘の筋膜、恥骨直腸筋、梨状筋、閉塞筋管の筋膜、または肛門挙筋上の任意の場所などである。これ以外の固定部位も本発明の精神と権利の範囲内であって、上記一覧は限定的なものととらえられるべきではない。

送出デバイス（挿入ツール）の実施形態は一般に、シャフト（例えば堅い針状シャフト）、取っ手、および遠位の先端部を備えている。該遠位の先端部は、固定部品に嵌合するシャフトの端部に位置している。針は、目標とする固定部位まで中心グラフトの固定部品を搬送することができ、固定部品を組織に載置することができる。針は、固定部品をどこに固定したいかによって様々な形状をとることができる。例えば、三次元で湾曲した螺旋状形状の針は、上記白線の近くで使用可能である。二次元で湾曲した鎌形状の針は、仙骨座骨棘の靱帯域の近くで使用可能である。一実施形態では、針は、針および固定部品を組織に押し込むスライド部を有する。このスライド部は、針と、その針より小さな直径断面を有する補助針との組み合わせであってもよい。補助針は、針の凹部の中に設置してもよい。あるいは、針の長軸の隣に設置して、一般に針の長軸に平行に進んでもよい。引込位置と延伸位置との間で補助針を移動させるために、駆動部が針上に設置され、延伸位置が固定部品を載置するのに使用されてもよい。

スライド部は、指ツールの上にも設置されてもよい。一実施形態では、指ツールは、医師の指を受け止められるようになった形状を有するレセプタクルを備えている。針、または固定部品をうまく載置できる十分な堅さを有する直立部材は、レセプタクルに設置し、一般にこのレセプタクルから延伸してもよい。この場合、固定部品は、直立部材（例えば針）の自由端部の上に設置されても（自由端部に嵌合しても）よい。直立部材は、固定部品を組織内に固定するのに必要な任意のサイズおよび形状を有していてもよい。例えば、直立部材は一般に真っ直ぐでも、湾曲していても、フック形状に曲がっていても、または角度を付けて曲がっていてもよい。

ある実施形態では、上記システムは膣の頂端部分の支持部を備えていてもよい。中心グラフトの下側面は仙骨座骨棘の靱帯に固定されてもよい。中心グラフトの形状は、新しい固定部位に適合し、前膣分室の構造的支持を最適化するように改良されてもよい。

システムの別の一実施形態は一般に、中心グラフトと、固定腕部と、鞘を有する送出システム（挿入ツール）と、鞘を挿入ツールに嵌合させる捕捉・解放機構と、必要に応じて設けられるアクセサリー・ツールまたはグロメット管理ツールとを備えていてもよい。

中心グラフトの縁は、公知または当業者によって今後開発される任意の物質で作製できる。中心グラフトの縁は、張力のかかった状態で反りを低減できるように、湾曲していてもよい。中心グラフトの形状を調整して、センタリングおよび向きの調整を行ってもよい。中心グラフトは一般に、上側面（前側部分称されることもある）と、下側面（後側部分称されることもある）と、必要に応じて設けられるグラフト尾部とを備えている。上側面は、延伸部分を介して閉塞筋の内筋において固定されてもよい。上側面は、固定部品を各側について一つずつ備えていてもよい。下側面は、延伸部分を介して仙骨座骨棘の靱帯においてまたはその近くで固定されてもよい。一般に具体的な固定部位について記載したが、他の固定部位も可能であって、本発明の精神と権利の範囲内であると考えるべきものであることは、当業者であれば理解できよう。下側面は、好ましくはロック用アイレットを各側について一つずつ備えている。ロック用アイレットは、中心グラフトの緩いアイレットと協働し、中心グラフトを固定用腕部のメッシュ部の上に固定してもよい。ロック用アイレットは、ある角度に向けることのできる歯を特徴としてもよく、こうすることによって、固定用腕部にそった平行移動、および固定用腕部のメッシュ部に一旦嵌合すると反対方向の平行移動の防止が可能になる。グラフト尾部は、その荷重支持部分に対して悪影響を及ぼさずに切り落とすことができる。下側取り付け部材のタブの角度は、メッシュの向きと仙骨座骨棘の靱帯取り付け点との間の角度にほぼ等しくてもよい。

送出システムは一般に、下側送出デバイス（挿入ツール）および上側送出デバイス（挿入ツール）を備えている。下側送出デバイスは一般に、針、鞘、取っ手、および必要に応じて設けられる（例えば、図９のツール５１０がシャフト５２０を含んでいるように）捕捉・解放機構を備えている。針は、固定用腕部の固定部品を搬送および仙骨座骨棘の靱帯またはその他の任意の所望の固定部位に固定するために使用される。上側送出デバイスは、鞘を備えていてもよく、あるいは（図９のツール５３０のように）鞘のついていない針を備えていてもよい。

鞘は少なくとも３つの機能を実行することができる。一つ目として、鞘は（組織固定器具を有する）固定用腕部を送出中に遮蔽し、固定部品（組織固定器具）が外れて落ちるまたは固定部品が組織に引っかかってしまうという起こりうる不便を最小化することができる。二つ目として、鞘は、医師の手袋および指が固定部品にひっかかって傷つかないように保護することができる。三つ目として、鞘は、固定部品が組織に過度に挿入されないようにハードストップとしての役割をする。

鞘とともに使用するように構成された挿入ツールの取っ手は、機械的停止部を備えた捕捉解放機構を特徴とし、鞘を下側送出デバイスの取っ手に固定して保持し、骨盤の内側の深いところで展開中に固定部品が早すぎるタイミングで露出されることを防止してもよい。捕捉解放機構は、固定部品を軟組織（例えば仙骨座骨棘の靱帯、尾骨筋、肛門挙筋、閉塞筋の孔など）に挿入する前に、鞘を解放する。鞘は、捕捉解放機構（および必要に応じて設けられる取っ手の窪み）と協働して、さらに固定部品が軟組織に挿入される深さを制御する。捕捉解放機構は一般に、堅いバーおよび支柱を備えたレバーであってもよい。（挿入ツールの取っ手、シャフト、またはその他の場所に配置された他の選択肢も可能であることは理解できるであろう。）この堅いバーは、互いに反対の端部に設けられた、親指嵌合部および鞘嵌合部（例えば、機械的停止部、ピン、または“引き金とラッチ”の組み合わせ）を特徴としてもよい。静止時に、鞘嵌合部は鞘に嵌合または当接して、鞘を取っ手に固定して保持する。親指嵌合部が押し込まれると、堅いバーが支柱の上で回転し、鞘嵌合部を鞘との嵌合から解放する。

鞘を備えた下側送出針の一例は、以下のような特徴を１つ以上備えていてもよい。すなわち、引き金用ラッチのリード側の端に角度がついていて、ロック作業の間に鞘が引き金用ラッチを圧迫すると、鞘が引き金用ラッチを持ち上げることができるようにするという特徴；鞘が所望のロック位置に到達したときに、ラッチが降下して、鞘の近端部で側壁の開口部に嵌合し、鞘の前方向にまたは後方向への移動を制限するという特徴；深さ制限用停止部材（例えば取っ手の窪みの長さ）が鞘が過剰に取っ手に引っ込むのを制限し、それゆえ、鞘から露出して組織に挿入された針の先端部の長さを制限するという特徴；ラッチ止めから深さ制限用停止部材までの距離（例えば図１Ａおよび図１Ｂの約距離ｄ）が所望の深さ制限距離であるという特徴などである。

上側挿入ツールは、針（例えば堅い金属針）および好ましくは取っ手を備えていてもよく、上記上側挿入ツールは必要に応じて鞘を備えている。上記針を使用して、中心グラフトの固定部品を搬送し、閉塞筋の内筋に固定してもよい。針は湾曲してもよく、こうすることで筋肉に直接接近できる。上記針は、固定部品の面に対応する先端部に平面を有することを特徴として、固定部品の回転を防止し、筋肉ファイバに対する固定部品（例えば固定部品の枝状部または延伸部分）の向きを制御してもよい。

以下に記載するのは、上記システムの移植方法の一例である。この方法は、鞘と協働して機能する下側挿入ツールと、鞘を必要とない上側挿入ツールとを利用する。

１．中心グラフトの固定部品を上側送出デバイス（例えば、図９に示すインプラントの固定部品５１３および送出デバイス５３０）の針の先端部に載せる。

２．閉塞筋の内筋を針で狙う。

３．坐骨恥骨枝の後側面にそって針がアークを描く動きを追跡する
４．固定部品が閉塞筋の内筋に貫入するまで、アークを描きながら固定部品をさらに先へ進める。

５．反対側についてステップ１〜４を繰り返す。

６．固定用腕部の固定部品（例えば図９の５０４）を下側送出デバイス（例えば図９の５１０）の針の先端部に載せる。

７．針および嵌合している固定部品を鞘（例えば図９の鞘５２０）の近端部に挿入する。

８．遠位の針端部および嵌合しているメッシュ腕部を鞘の近端部に挿入することによって、固定部品が外れないようにしながら、針および固定用腕部を覆うように鞘を滑らせる。鞘の近端部が取っ手の上で捕捉解放機構に嵌合するまで、針にそって鞘を下向きに滑らせる。鞘が固定されていること、および針の先端部が鞘の遠端部から突き出していないことを確認する。

９．仙骨座骨棘の靱帯の位置を触診で特定する
１０．人差し指を靱帯の上に保持したまま、鞘の先端部を指にそって、かつ横方向に、仙骨座骨棘の靱帯に向かって導く。

１１．鞘の先端部を、仙骨座骨棘の靱帯に接触するように載置する。捕捉解放機構を解放し、鞘が取っ手に向かって窪みへ滑り込むことができるようにし、固定部品のカバーをはずす（つまり、カバー無し配置にする）。引き金を押したまま、固定部品を靱帯に押し込む。鞘は針が靱帯に深く入り過ぎないようにする。

１２．針が固定部品との嵌合から解放されるまで、針を穏やかに手前に引くことによって、針および鞘を移植領域から取り外す。針組み立て部材を切開口を通して管口から慎重に取り外す。鞘が針と一緒に引込まれなければ、鞘を切開口を通して管口から穏やかに取り外す。

１３．反対側についてステップ６〜１３を繰り返す。

１４．単方向調節アイレットをグラフトの上に配置する。管口から外へ出ている、対応する固定用腕部の幹部で各アイレットを滑らせる。（これらのステップは、単方向調節アイレットを備えたインプラント部品を利用する。本明細書の他の箇所で記述したように、必要に応じて、双方向調節アイレットがインプラント部品の上に載置され、単方向調節アイレットとともに保持されてもよい。）
１５．一方の固定用腕部の幹部の近端部の上にアクセサリー・ツールを載せる。

１６．アクセサリー・ツールを上記固定用腕部上で固定部位に向かってわずかな距離だけ平行移動させる。この操作によって、中心グラフトは骨盤腔に押し込まれる。アクセサリー・ツールを固定用腕部から取り外す。

１７．ステップ１５〜１６を一方の固定用腕部について繰り返す。

１８．ステップ１５〜１７を中心グラフトが所望の位置に到達するまで繰り返す。

１９．メッシュ部をロック用アイレットに近位の側で少なくとも１ｃｍ切り落とす。切り落とした幹部の遠端部にメッシュが含まれていることを確認する。もし含まれてないければ、残っている幹部をインビボでメッシュ部から切り取る。

ここで開示した各種実施形態は、神経筋の活性化と組み合わせて、骨盤脱、骨盤脱や癌手術語またはその他の再生手術に関連した任意の痛み／不快感を治療する。

Claims (20)

1. 骨盤用インプラントの移植に有用な外科的挿入ツールであって、ツールは、
   取っ手と、
   上記取っ手に取り付けられた近位のシャフト端部と、遠位のシャフト端部とを有するシャフトと、
   上記シャフトに嵌合する鞘であって、該鞘が遠位のシャフト端部を覆っている状態とするカバー付き配置、および、該鞘がシャフトの一部を覆っているが、遠位のシャフト端部は覆っていない状態とするカバー無し配置の、少なくとも２つの配置を可能にする鞘とを備え、
   カバー付き配置では、上記鞘が遠位のシャフト端部および近位のシャフト端部を覆っており、カバー無し配置では、上記鞘が近位のシャフト端部は覆っているが、遠位のシャフト端部は覆っていないツール。
2. 請求項１に記載のツールであって、上記鞘が中空の重合体製の管であるツール。
3. 請求項１または２に記載のツールであって、
   上記鞘が中空の重合体製の管であり、
   上記鞘が遠位のシャフト端部で滑ることによって、鞘をカバー付き配置にセットすることができ、
   上記鞘が、カバー付き配置にある際には機械的停止部に嵌合し、
   上記機械的停止部は取り外し可能であり、鞘をカバー無し配置にセットすることができる、ツール。
4. 請求項３に記載のツールであって、上記機械的停止部が、上記取っ手の上に配置された駆動部によって鞘に嵌合またはその嵌合から解放されるように移動可能な可動延伸部を備えるツール。
5. 請求項３または４に記載のツールであって、
   上記中空管からなる鞘が近位の管端部および遠位の管端部を有し、
   上記取っ手が、取っ手とシャフトの近端部との連結部において窪みを有し、その窪みは中空管からなる鞘の近端部を受け止めることができ、
   近位の管端部が上記窪みに向かう方向に移動することによって、上記中空管からなる鞘がカバー付き配置からカバー無し配置に移動するツール。
6. 請求項４に記載のツールであって、
   上記中空管からなる鞘が、上記近位の管端部において側壁に開口部を有し、
   カバー付き配置では、上記延伸部が開口部内に配置されて、中空管からなる鞘がシャフトにそって近位の方向および遠位の方向に移動することを抑制し、
   上記延伸部が開口部から取り外し可能であり、取り外すと上記中空管をカバー無し配置にセットできるようになるツール。
7. 請求項１〜６のいずれか一項に記載のツールであって、カバー無し配置では、上記シャフトの遠端部の０．５ｃｍ〜１．５ｃｍの長さが覆われていないツール。
8. インプラントの延伸部分と組み合わせる請求項１〜７のいずれか一項に記載のツールであって、
   上記延伸部分が遠端部において組織固定器具を有し、
   組織固定器具が上記シャフトの遠端部に嵌合可能なツール。
9. 請求項８に記載の組み合わせであって、上記延伸部分が延伸部材であり、上記組み合わせがさらに支持部材を備える組み合わせ。
10. 請求項８または９に記載の組み合わせであって、
    上記組織固定器具がシャフトの遠端部に嵌合する際に、上記鞘はシャフトをぴたりと覆い、
    鞘は上記カバー付き配置とカバー無し配置との間を移動可能であり、
    鞘がカバー付き配置にある際には鞘が自己固定用先端部を覆っており、鞘がカバー無し配置にある際には鞘が自己固定用先端部を覆っていない組み合わせ。
11. 請求項８〜１０のいずれか一項に記載の組み合わせであって、上記インプラントが、
    組織支持部と、
    上記組織支持部から伸びる２つの上側延伸部分からなる１組、および組織支持部から伸びる２つの下側延伸部分からなる１組とを有し、
    組織支持部が膣の組織を支持するように載置される際に、各上側延伸部分は対向する閉塞筋の孔の組織に連結可能であり、各下側延伸部分は仙骨座骨棘の靱帯に連結可能である組み合わせ。
12. 請求項８〜１１のいずれか一項に記載の組み合わせであって、１つ以上のグロメット管理ツールおよび調節ツールを有する組み合わせ。
13. 請求項８〜１２のいずれか一項に記載の組み合わせであって、
    請求項１〜７のいずれか一項に記載のツールは、組織固定器具に嵌合し、仙骨座骨棘の靱帯において上記組織固定器具を経膣的に載置するようになっており、
    上記組み合わせが、閉塞筋の孔において組織固定器具を経膣的に載置するようになっている第２の挿入ツールをさらに有している組み合わせ。
14. インプラントを患者に移植する方法であって、
    請求項１〜７のいずれか一項に記載のツールの組み合わせと、遠位のシャフト端部に組織固定器具を備える延伸部分を有するインプラントとを準備し、
    上記組織固定器具を上記遠位のシャフト端部に嵌合させ、
    遠位のシャフト端部および嵌合している組織固定器具が覆われるカバー付き配置に鞘がある状態で、鞘をシャフトおよび嵌合している組織固定器具を覆うように載置し、
    カバー付き配置において上記鞘がシャフトを覆うように載置された状態で、シャフトおよび嵌合している組織固定器具を患者に挿入し、
    組織固定器具からカバーがはずされるカバー無し配置に鞘を移動させ、
    組織固定器具を組織に留めることを備えた方法。
15. 請求項１４に記載の方法であって、上記組織固定器具を、仙骨座骨棘の靱帯および尾骨筋から選択された軟組織に挿入することを備えた方法。
16. 請求項１５に記載の方法であって、上記インプラントが、
    組織支持部と、
    上記組織支持部から伸びる２つの上側延伸部分からなる１組、および組織支持部から伸びる２つの下側延伸部分からなる１組とを有し、
    上記方法が、
    膣の組織を支持するように組織支持部を載置し、
    各上側延伸部分を、対向する閉塞筋の孔の組織に固定し、
    各下側延伸部分を、仙骨座骨棘の靱帯の軟組織または尾骨筋の軟組織に固定することを備えた方法。
17. 請求項９に記載の組み合わせであって、上記延伸部材がメッシュ部と非メッシュ部とを有する組み合わせ。
18. 請求項１７に記載の組み合わせであって、上記延伸部材が上記メッシュ部の端部に組織固定器具を有する組み合わせ。
19. 請求項１７に記載の組み合わせであって、上記支持部材が、延伸部材に調節可能に嵌合するための調節用嵌合部を有する組み合わせ。
20. 請求項１９に記載の組み合わせであって、上記支持部材が、別の２つの組織固定器具をさらに有する組み合わせ。

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