JP2010526824A - シリコーン類似の特性を有するワセリン - Google Patents
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Abstract
シリコーン類似の特性を有する新規なワセリンが開示される。また、新規なワセリンを含有するシリコーンを含まない組成物が開示される。
Description
本願は、2007年5月11に出願された米国仮特許出願No.60/917,378の利益を主張する。本発明は、シリコーン流体の感覚特性を有する新規なワセリンに関する。本発明は、シリコーン流体に伴われる不利な点を避ける一方、シリコーン含有組成物の利点を有するシリコーンのない組成物に関する。
ゼリー状石油として知られているワセリンは、油性で、ろう状で、長鎖で、非極性の炭化水素の均質な混合物である。ワセリンは、その溶融材料が室温に冷却されると、その混合物が半透明で非晶質またはゼリー状の材料に固まるというような特性の炭化水素の混合物である。ワセリンは、においや味がなく、白色ワセリンと黄色ワセリンがあり、互いに、コンシステンシーやせん断強さが異なっている。
米国薬局方(U.S.P.)では、白色ワセリンと白色石油をゼリー状で互換可能な物質を示す用語として使用し、それらの物質は石油から得られる半固体状の炭化水素の純粋な混合物であり、完全に脱色されているか又はほとんど脱色されていると記載している。ワセリンは、米国薬局方の公式方法によって測定すると、38℃から60℃(100.4゜Fから140゜F)の範囲の融点と、100dmm以上300dmm以下のコンシステンシーを有すると記載されている。国定の薬方書によると、脱色の少ないグレードは黄色と記載されているが、黄色ワセリンも、においや味がないか、殆どない。
ワセリンは、100年以上にわたって、身体ケア製品や製薬分野や工業用途において有益なものとして使用されてきた。特に、化粧品、食品、身体ケア製品および製薬分野において使用されているワセリンは、食品医薬品局および米国薬局方の必要条件を満たしている。ワセリンは、例えば、ローション、クリーム、軟膏およびハンドクリーナーに潤滑性および湿潤性などの特性を付加する。その結果、化粧品、身体ケア製品および製薬分野における調剤業者は、しばしばワセリンを調剤のベースとして選択する。
食品加工業者は、ベーキングおよびキャンディの製造から包装にいたる用途においてワセリンを使用している。ろうそくのびんにおいて、ワセリンを加えると、ろうの結晶性に影響を与えて、より滑らかにするとともに楽しい外観を付与する。金属のつや出しおよびバフ仕上げにおいて、ワセリンは湿気および腐食から保護する役割を果たす。
ワセリンの多くの利点の中で、話題の用途において使用されている、その利点は、保湿効果、水分バリヤー性、水分はじき力、耐水洗浄性、生理学的不活性および化学的不活性ならびに化学的安定性である。ワセリンの水和性は他のモイスチャライザーと比較するときの標準となる。
話題の組成物におけるワセリンの主な欠点は、脂っこさがあること、化粧用としての優雅さに欠けること、皮膚の大きな面積に薄くて一様なフィルムを形成することができないことである。シリコーン流体は、これらの欠点を有しない。実際、シリコーン流体の利点は、後感覚が良好で、化粧用としての優雅さがあること、薄くて一様なフィルムを形成するために広げやすいことである。
それゆえ、ワセリンは広い範囲の特性を有する各種のグレードのものが幅広く使用されているけれども、そのワセリンの特性を改良することが必要な技術分野も存在する。現在のワセリンは、シリコーン流体の物理的特性および感覚特性を欠いているということも含めて、上記したような欠点を有している。それゆえ、現在のワセリンは、身体ケア製品、化粧品および製薬組成物においてシリコーン流体の代わりに用いることはできない。シリコーン流体は、各種規制のための精密な検査の対象になるという点で高価なものであるから、シリコーン流体の代用ができることは有用である。本発明は、シリコーン流体の代用品として、経済的で効能のある有用なワセリンに関する。
本発明はシリコーン流体の代用品として使用することができる新規なワセリンに関する。従って、本発明は、皮膚の温度で溶解し、溶融熱が低く、一様な感覚で、C10からC90の炭化水素の範囲で、約300から約450の平均分子量で、約100゜Fから約125゜Fの融点で、約250から300dmm(dmmはデシミリメータまたは0.lミリメータである)のコンシステンシー(コーンペネトレーション)および25℃において約100000から約200000センチポアズの粘性率を有するワセリンを提供することにある。それゆえ、本発明のワセリンは米国薬局方の必要条件を満たしている。
また、本発明は、以下の物理的特性(a)、(b)および(c)の中の少なくとも1つの特性を有するワセリンを提供することにある。
(a)約45℃以下のフロー開始
(b)約50℃以下の0.1Pa(G’=0.1Pa)のストレージモジュラスおよび
(c)約45℃以下の0.1Pa・s(|η*|= 0.1Pa・s)の複合粘性率
好ましい実施形態において、ワセリンは、物理的特性(a)、(b)および(c)の中の少なくとも2つの特性を有している。より好ましい実施形態において、ワセリンは、物理的特性(a)、(b)および(c)を有している。
(a)約45℃以下のフロー開始
(b)約50℃以下の0.1Pa(G’=0.1Pa)のストレージモジュラスおよび
(c)約45℃以下の0.1Pa・s(|η*|= 0.1Pa・s)の複合粘性率
好ましい実施形態において、ワセリンは、物理的特性(a)、(b)および(c)の中の少なくとも2つの特性を有している。より好ましい実施形態において、ワセリンは、物理的特性(a)、(b)および(c)を有している。
また、本発明は、シリコーン流体の感覚特性を有するが、シリコーン化合物を含まないワセリンを提供することにある。
さらに、本発明は、本発明のワセリンを含有する組成物を提供することにある。好ましい実施形態において、その組成物はシリコーン流体を含まないが、シリコーン流体含有組成物の利点を有している。
本発明の上記および他の新規な面は、以下の限定されない好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになる。
本発明のワセリンは、実際の様々な用途においてシリコーン流体の代用品として適している特性を有する新規な組成物に関する。特に、本発明のワセリンは、代表的にシリコーン流体に伴われる以下の特性を有している。
皮膚に対する効果:軟らかい絹のような感覚を与えること、優れた伸び特性を有すること、油の残渣または突起物がないこと、粘着付与性がないこと、脂のべたべたした感じがないこと、化粧品の成分との適合性、および一次的な軟化性
頭髪に対する効果:抜け毛に潤いがあること、一次的な輝き、および突起物がないこと これらの特性は、本発明のワセリンが、全体として、または部分的に、化粧品、身体ケア製品および製薬組成物において、シリコーン流体の代用品となることができる、優れたものであることを示している。
頭髪に対する効果:抜け毛に潤いがあること、一次的な輝き、および突起物がないこと これらの特性は、本発明のワセリンが、全体として、または部分的に、化粧品、身体ケア製品および製薬組成物において、シリコーン流体の代用品となることができる、優れたものであることを示している。
本発明のワセリンは、公知のワセリンの利点と、取扱いが容易な白色鉱物油の触感を合わせ持つシリコーン類似の特性を有している。従って、本発明のワセリンを、化粧品、身体ケア製品および製薬組成物において、シリコーン流体および鉱物油の完全な代用品として、または部分的な代用品として使用することができる。
本発明のワセリンは、軟らかく、白色半透明で、クッション性に優れ、高光沢製品で、ビロードのような滑らかな手触りで、後感覚が粉末状である。本発明のワセリンの有利な点としては、鉱物油およびシリコーン油を含まない調製に適したものであること、皮膚の温度で溶解すること、優れた伸び特性を有すること、取扱いが容易なこと、油の残渣がないこと、脂のべたべたした感じがないこと、粘着性が低いこと、短いプレータイム、平均のプレータイムまたは長いプレータイムを有することである。プレータイムとは、化合物または組成物を皮膚に付着させた後、その化合物または組成物が蒸発および/又は吸収されるまで皮膚に残留している時間の長さをいう。
本発明のワセリンは、クッション性、軟化性、潤滑性および非敏感性を備えている一方、低い融点と、軟らかい絹のような感覚のソフトなコンシステンシーとを有している。軟らかさと低融点の組合せが本発明のワセリンの特徴であり、皮膚の温度で溶解するが、一方、優れた伸び特性と低粘着性を備えている。そのような有益な特性を市販のワセリンは備えていない。
特に、化粧品、身体ケア製品および製薬組成物においてシリコーン流体の代用品として使用することができるワセリンを発見することができた。そのワセリンは、連邦法施行規則第21巻172.880およびワセリンに対する米国薬局方モノグラフの両方に規定されているワセリンに対する純正条件に合致し、シリコーン類似の特性を有している。
本発明のワセリンは、
約C20からC45に炭素数が分布している、約5%から約20%の飽和直鎖炭化水素と、 約C30からC90に炭素数が分布している、0%から約20%の飽和微結晶性炭化水素と、
約C10からC50に炭素数が分布している、約60%から約85%の飽和分岐およびシクロパラフィン炭化水素とを含有している。
約C20からC45に炭素数が分布している、約5%から約20%の飽和直鎖炭化水素と、 約C30からC90に炭素数が分布している、0%から約20%の飽和微結晶性炭化水素と、
約C10からC50に炭素数が分布している、約60%から約85%の飽和分岐およびシクロパラフィン炭化水素とを含有している。
本発明のワセリンは、
約100゜Fから約125゜Fの融点(ASTM D127)と、
約240から約300dmmのコーンペネトレーション(ASTM D937)と、
25℃において約100000から約200000センチポアズの粘性率(粘度計による)とを有している。
約100゜Fから約125゜Fの融点(ASTM D127)と、
約240から約300dmmのコーンペネトレーション(ASTM D937)と、
25℃において約100000から約200000センチポアズの粘性率(粘度計による)とを有している。
好ましい実施形態において、本発明のワセリンは、約105゜Fから約120゜Fの融点および/又は約270から約300dmmのコーンペネトレーションを有している。
また、本発明のワセリンの他の好ましい実施形態は、210゜Fにおいて約3.5から約10.0センチストークスの動粘性率(ASTM D445)と、
Saybolt色(ASTM D156)>+22と、
約300から約450の平均分子量と、
約200から約1400の分子量範囲とを含む特性の中の1つ以上の特性を有している。
Saybolt色(ASTM D156)>+22と、
約300から約450の平均分子量と、
約200から約1400の分子量範囲とを含む特性の中の1つ以上の特性を有している。
また、本発明のワセリンは、以下の表1の特性を証明した。
シリコーン類似の特性を有する本発明のワセリンは、軟化性および/又は湿潤性が必要とされるか又は好ましいとされる化粧品、身体ケア製品および製薬用途において有用である。例えば、ハンドローション/ボディローション、スカルププロテクター、マッサージクリーム、ヘアーコンディショナー、ボディウォッシュ、サンケアプロダクツおよびサンスクリーンプロダクツのような用途である。
本発明の3つの実施例のワセリンは、表2に要約される特性を有している。表2において、本発明のワセリンは、現在の市販されている3つの米国薬局方に記載されたワセリンと比較される。
表2は、登録商標がPenrecoで、商品名がOintment Base 4であるワセリンが本発明のワセリンに類似した物理的特性を有していることを示している。しかし、下記に示すように、本発明のワセリンと登録商標がPenrecoで、商品名がOintment Base 4であるワセリンとの間には、実質的な物理的特性の差違がある。
特に、実施例1、2、3のワセリンが、市販の米国薬局方に記載されたワセリンおよび市販のシリコーン流体と比較された。まず、すべての組成物は、そのままの状態、すなわち、希釈したり、調製したりせず、ASTM E1490に規定された方法を使用して評価された。その評価は8人から10人の訓練を受けた審査員団によって実行された。
その結果は、表3および表4に要約されている。表3は、9つの感覚特性について、本発明のワセリンと、シリコーン流体および市販の米国薬局方に記載されたワセリンとを比較している。本発明のワセリンの感覚特性は、化粧品、身体ケア製品および製薬調剤に使用されるシリコーン流体の粘性と同等であることが分かる。表3は、また、現在の市販のワセリンは、シリコーン流体および本発明のワセリンの両方と実質的に異なる感覚特性を有していることを示している。
シリコーン流体の感覚特性が消費者に好まれているため、シリコーン流体は身体ケア製品および化粧品組成物に含まれている。特に重要な感覚特性は、後感覚である。表3は、本発明のワセリンがシリコーン流体に匹敵する後感覚を有していることを示している。対照的に、現在の市販のワセリンは、不快な後感覚とか、べとべとした後感覚を有している。これは、消費者に好まれないか又は受け入れられない。この悪い後感覚が、現在の市販のワセリンを身体ケア製品、化粧品および製薬調剤においてシリコーン流体の代用品とすることができない大きな理由である。この問題は本発明のワセリンによって解消される。本発明のワセリンは、シリコーン流体および鉱物油の調剤において、完全な代用品として、または部分的な代用品として使用することができる。
表4は、後感覚に寄与する各種特性に対する本発明のワセリンと、シリコーン流体および市販のワセリンとをさらに比較するものである。この試験において、そのままの状態の組成物は、ASTM E 1490に規定された方法を使用して訓練を受けた審査員団によって評価された。表4は、3つの市販のワセリンは、不快でべとべとした後感覚を残し、軽さや吸収の速さ、滑らかさ、軟らかさおよびクッション性に関して好ましい後感覚を示さない。対照的に、本発明のワセリンとシリコーン流体は、それぞれ、好ましい後感覚を示し、不快な後感覚とか、べとべとした後感覚のような好ましくない後感覚は示さなかった。
予期されるように、シリコーン流体も本発明のワセリンも、好ましい後感覚のすべてを示すことはなかった。これは、各種のシリコーン流体は異なる用途において異なる後感覚を示すように設計されるからである。シリコーン流体は、しばしば好ましい後感覚の種類を広げるように組合わせて使用される。本発明の実施例1ないし3のワセリンは、対応するシリコーン流体の好ましい後感覚に等しいか、又は本質的に等しい好ましい後感覚を示す。従って、本発明のワセリンは、全体として、または部分的に、対応するシリコーン流体の代用品となることができる。本発明のワセリンは鉱物油の代用品として使用できることも分かった。現在のワセリンは、好ましい後感覚を得るために、本発明のワセリンおよび/又はシリコーン流体に加えるために、本発明のワセリンおよび/又はシリコーン流体と混合することができる。
表4から、実施例3のワセリンが、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサンおよび50cs、100csのジメチコーン(dimethicone)流体に相当しており、それらの優れた代用品となりうることが分かる。実施例1のワセリンは、200csおよび350csのジメチコーン流体に相当しており、それらの優れた代用品となりうる。実施例2のワセリンは、350csおよび500csのジメチコーン流体に相当しており、それらの優れた代用品となりうる。上記したように、本発明のワセリン混合物は、現在のシリコーン流体またはシリコーン流体の混合物に相当する好ましい特性を備えている。
市販のワセリンと異なる感覚特性を示すことに加えて、本発明のワセリンは、本発明のワセリンを市販のワセリンと区別する物理的特性、特に、レオロジー的な特性を示す。これらの物理的特性における差違が、本発明のワセリンによって証明される、改良される感覚の利点および予期せぬ感覚の利点に対して少なくとも部分的に貢献することは理論化できるが、必ずしもその必要はない。
物理的特性における差違の1つはフロー開始(flow onset)である。ワセリンのレオロジーは、温度が上昇するとその粘度が減少するというものである。用語フロー開始とは、ワセリンの粘性率が25Pa・s(パスカル秒)であるときの温度であるとして定義される。この試験において、一定の圧力(パスカル)がワセリンのフロー開始温度を測定するために、プログラム化された温度サイクルとともにワセリンのサンプルに付加された。その試験で使用された計器は、TA AR2000ex レオメーターであった。感覚特性に関して、フロー開始はワセリンが皮膚上で溶解する速さに関係する指標である。
表5は、本発明のワセリンと現在の市販のワセリンにおけるフロー開始温度(℃)を示す。表5は、市販のワセリンが本発明のワセリンよりも実質的に高いフロー開始温度、すなわち、約45℃から約55℃のフロー開始温度を有することを示している。表5のデータは、現在の市販のワセリンは完全に皮膚上で溶解することはないし、部分的にも皮膚上で溶解することはないので、シリコーン流体の代用品としての作用を果たすには不適切であることを示している。
本発明のワセリンは、約45℃以下のフロー開始温度、代表的には、約30℃から約45℃未満の温度、または約42℃未満のフロー開始温度を有している。本発明のワセリンの好ましいフロー開始温度は、約30℃から約40℃である。
本発明のワセリンと現在の市販のワセリンの間のフロー開始温度における差違を証明するために、図1から図3は、粘性率(Pa・s)対温度(℃)の関係を示すものである。図1は、現在の市販のワセリンのものを示し、図2は本発明のワセリンのものを示す。
本発明のワセリンのフロー開始温度は、現在の市販のワセリンより実質的に低いことが分かる。図3は、同じような融点(発明品は108.0゜F、市販品は124.5゜F)とコーンペネトレーション(発明品は298dmmであり、市販品は270dmmである)を有する本発明の実施例1のワセリンと市販のワセリン(Penreco(R)Ointment BaseTMNo.4 )の間におけるフロー開始温度の差を示す粘性率(Pa・s)と温度(℃)の関係を示す図である。(R)は登録商標を意味する。
物理的特性における付加的な差違は、振動解析を実行することに基づいて見出された。この試験において、一定の周波数における一定の振動トルクがある温度サイクルで試験片に付加された。測定された特性は、ストレージモジュラス、G*(Pa)および複合粘性率(|η*|(Pa・s)であった。感覚特性という用語において、ストレージモジュラスは、ワセリンのクッション性またはワセリンの移動を開始するために必要とされるエネルギーに関連している。複合粘性率は、ワセリンのドラグまたはワセリンのレジストフローの程度に関連している。
ストレージモジュラス(G’)は、剪断応力を剪断歪みで除したものに、相角度の余弦を乗じたものである。すなわち、
G’=(σ0/γ0)cosδであり、σ0は剪断応力(Pa)であり、γ0は剪断歪みであり、δは剪断応力と剪断歪みの間の相角度である。
G’=(σ0/γ0)cosδであり、σ0は剪断応力(Pa)であり、γ0は剪断歪みであり、δは剪断応力と剪断歪みの間の相角度である。
複合粘性率(|η*|)は、G*を周波数で除したものである。即ち、|η*|= G*/ωであり、ωは周波数(ラジアン/秒)である。
G*=(G’2+G”2)0.5(ストレージモジュラスとロスモジュラスの関数)
G’=(σ0/γ0)cosδであり、σ0は剪断応力(Pa)であり、γ0は剪断歪みであり、δは剪断応力と剪断歪みの間の相角度である。
G’=(σ0/γ0)cosδであり、σ0は剪断応力(Pa)であり、γ0は剪断歪みであり、δは剪断応力と剪断歪みの間の相角度である。
G”=(σ0/γ0)sinδであり、σ0は剪断応力(Pa)であり、γ0は剪断歪みであり、δは剪断応力と剪断歪みの間の相角度である。
ロスモジュラス(G”)は、剪断応力を剪断歪みで除したものに、相角度の正弦を乗じたものである。
ストレージモジュラスと複合粘性率の2つの特性は、本発明のワセリンと従来のワセリンとを区別する。ストレージモジュラスの解析によれば、現在の市販のワセリンにおける0.1Paでのストレージモジュラス、すなわち、 G’=0.1Paは、約55℃から約65℃超である。表6は、本発明のワセリンと現在の市販のワセリンに対するストレージモジュラスを要約している。そのデータは、本発明のワセリンは移動するのに低いエネルギーでよいこと、すなわち、容易に広がることを示している。それゆえ、本発明のワセリンは、従来のワセリンの不利な点を解消し、皮膚の大きな表面積にわたり、広がりやすいという作用効果がある。
それゆえ、本発明のワセリンは、約50℃以下、代表的には約35℃から約50℃、または、約35℃から約48℃のストレージモジュラス(G’=0.1Pa)を有している。好ましくは、本発明のワセリンは、約37℃から約48℃のストレージモジュラス(G’=0.1Pa)を有している。
本発明のワセリンと現在の市販のワセリンとの間におけるストレージモジュラスの差を証明するために、図4から図6は、G’(Pa)対温度(℃)の関係を示している。図4は、現在の市販のワセリンのものを示す。図5は、本発明のワセリンのものを示す。
0.1Paにおける本発明のワセリンのストレージモジュラスは現在の市販のワセリンのものより実質的に小さいことが分かる。図6は、同じような融点とコンシステンシーを有する本発明の実施例1のワセリンと市販のワセリン(Penreco(R)Ointment BaseTM4)との間におけるストレージモジュラスの差を示すG’(Pa)対温度(℃)の関係を示している。(R)は登録商標を意味する。
複合粘性率の解析によれば、現在の市販のワセリンにおける複合粘性率、すなわち、|η*|(0.1Pa・s)は約49.2℃から約65℃超である。対照的に、本発明のワセリンは、約45℃以下の|η*|(0.1Pa・s)を有している。表7は、本発明のワセリンと現在の市販のワセリンの複合粘性率を要約したものである。表7のデータは、本発明のワセリンを現在の市販のワセリンと比較したとき、本発明のワセリンは不快な感じがないことを示している。
それゆえ、本発明のワセリンは、約45℃以下、および代表的には約35℃から約45℃の複合粘性率|η*|(0.1Pa・s)を有している。好ましくは、ワセリンは、約35.5℃から約43℃の複合粘性率|η*|(0.1Pa・s)を有している。
本発明のワセリンと現在の市販のワセリンとの間における複合粘性率の差を証明するために、図7から図9は、|η*|(Pa・s)対温度(℃)の関係を示す。図7は、現在の市販のワセリンのものを示す。図8は、本発明のワセリンのものを示す。
0.1Pa・sにおける本発明のワセリンの複合粘性率は現在の市販のワセリンのものより実質的に小さいことが分かる。図9は、同じような融点とコンシステンシーを有する本発明の実施例1のワセリンと市販のワセリン(Penreco(R)Ointment BaseTMNo4)との間における複合粘性率の差を示す|η*|(Pa・s)対温度(℃)の関係を示している。(R)は登録商標を意味する。
上記したように、市販のワセリンに比べて、本発明のワセリンが低いフロー開始温度および/又は低いストレージモジュラスおよび/又は低い複合粘性率を有することが、本発明のワセリンによって示される感覚特性を少なくとも部分的に改良することに関して貢献することは理論化できる。予期せぬことに、本発明のワセリンが化粧品、身体ケア製品および製薬調剤において、全体として、または部分的に、シリコーン流体の代用品となることができる程度まで、感覚特性が改善される。本発明のワセリンは、その調剤においてしばしば使用される鉱物油の代用品となることができる。従来のワセリンは、シリコーン流体または鉱物油の代用品となることができず、シリコーン流体または鉱物油の有する好ましい特性を示さない。
従って、本発明のワセリンは、以下の(a)、(b)および(c)の特性の中の1つ以上を有している。
(a)約45℃以下のフロー開始;
(b)約50℃以下のストレージモジュラス(G’=0.1Pa)および
(c)約45℃以下の複合粘性率(|η*|= 0.1Pa・s)
本発明のワセリンは、好ましくは(a)、(b)および(c)の特性の中の少なくとも2つを有している。本発明のワセリンは、さらに好ましくは(a)、(b)および(c)の特性を有している。
(a)約45℃以下のフロー開始;
(b)約50℃以下のストレージモジュラス(G’=0.1Pa)および
(c)約45℃以下の複合粘性率(|η*|= 0.1Pa・s)
本発明のワセリンは、好ましくは(a)、(b)および(c)の特性の中の少なくとも2つを有している。本発明のワセリンは、さらに好ましくは(a)、(b)および(c)の特性を有している。
上記試験によって、本発明のワセリンはシリコーン流体の有利な点を備えるとともに、現在の市販のワセリンとは異なることを実証している。しかし、身体ケア物質に組み込むことによって本発明のワセリンが有利な点を示すことは重要である。シリコーン流体はそのままの状態では使用されず、シリコーン流体の有利な点を得るために調剤において添加されることはよく知られている。
そこで、以下の組成AからLまでが準備された。その組成については、本発明の実施例1ないし3のワセリンは組成AからCまで、シリコーン流体は組成DからIまで、現在の市販のワセリンは組成JからLまでである。各組成は、シーケンス1の成分を混合し、シーケンス2の成分を混合し、次いで、シーケンス2の混合物をシーケンス1の混合物に撹拌しながら添加し、シーケンス3の成分をシーケンス1と2の混合物に撹拌しながら添加することによって調製された。20重量%の本発明のワセリンを含有する組成物、20重量%のシリコーン流体を含有する組成物および20重量%の現在の市販のワセリンを含有する組成物の各組成は、表8に記載されている。
表8は各成分の含有比率(重量%)を示し、各組成の仕様を表9に示す。
表10は、後感覚に貢献する様々な特性について組成AからLを比較したものである。この試験において、組成AからLはASTM E1490の手順を使用して訓練された審査員団によって試験された。表10は、現在の市販のワセリン(組成JからL)は不快な感覚とか、べとべとした感覚を有し、シリコーン流体(組成DからI)の有する好ましい後感覚を備えていないことを示している。対照的に、本発明のワセリン(組成AからC)はシリコーン流体の有する好ましい後感覚を備えている。
表8は、表4に要約された調査結果を確認するものである。特に、実施例3のワセリンは、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、50csジメチコーンおよび100csジメチコーンの優れた代用品となり得るものである。実施例1のワセリンは、200csジメチコーンの優れた代用品となり得るものである。実施例2のワセリンは、350csジメチコーンおよび500csジメチコーンの優れた代用品となり得るものである。
表11は、組成AからLおよび付加的な組成Mを比較したものであり、本発明のワセリンの混合物が、市販されていないシリコーン流体の後感覚を備えていることを示している。
それゆえ、本発明のワセリンは、市販のワセリンの代用品となり、シリコーン流体を含有する同等の組成物として、同一の、又は本質的に同一の感覚性を示す、シリコーンを含まない化粧品、身体ケア製品および薬剤組成物を提供しうる。例えば、実施例3のワセリンを含有する組成物は、市販のワセリンの代用品として、対応するDow Corning(R)345流体またはジメチコーン(50cs)を同じ量だけ含有する組成物と同一の感覚特性を示し、ジメチコーン(100cs)を同じ量だけ含有する組成物と本質的に同一の感覚特性を示す。(R)は登録商標を示す。
実施例1のワセリンを含有する組成物は、市販のワセリンの代用品として、対応するジメチコーン(200cs)を同じ量だけ含有する組成物と同一の感覚特性を示し、ジメチコーン(350cs)またはジメチコーン(500cs) を同じ量だけ含有する組成物と本質的に同一の感覚特性を示す。
実施例2のワセリンを含有する組成物は、対応するジメチコーン(350cs)またはジメチコーン(500cs) を同じ量だけ含有する組成物と同一の感覚特性を示し、ジメチコーン(200cs)を同じ量だけ含有する組成物と本質的に同一の感覚特性を示す。
用語“同一の感覚特性”は、本発明のワセリンを含有する組成物が、表10に記載されたように、ワセリンに相当するシリコーン流体を含有する組成物として、ASTM Method E1490の手順を使用して訓練された審査員団によって、表10に記載された感覚特性と同一のものを備えていると判定されたことを意味する。 用語“本質的に同一の感覚特性”は、本発明のワセリンを含有する組成物が、表10に記載されたように、ワセリンに相当するシリコーン流体を含有する組成物として、ASTM Method E1490の手順を使用して訓練された審査員団によって、表10に記載された感覚特性の少なくとも1つを備えていると判定されたことを意味する。
本発明のワセリンは、優れた肌保護効果とシリコーンの感覚を備えている。それゆえ、本発明のワセリンは、シリコーン流体の代用品として、身体ケア製品、化粧品および製薬組成物の様々な分野において調合することができる。本発明のワセリンは、全体として、または部分的に、鉱物油の代用品となることができる。本発明のワセリンは、米国薬局方および食品医薬品局の規定を満たし、例えば、荒れ止めクリーム、コンディショナー、モイスチャライザーおよび化粧用クリームとして使用することができる。本発明のワセリンは、例えば、ハンドクリーム、ボディクリーム、ローション、液体石鹸、リップクリーム、ヘアーコンディショナー、頭髪保護剤、ボディウォッシュ、マッサージクリーム、日焼け止めクリーム、日焼けクリーム、ひげそり関連製品、キューティクルモイスチャライザーおよびポマードに調合することができる。
本発明のワセリンは、化粧品、身体ケア製品および薬剤組成物において典型的に見出される、様々な有機化合物およびシリコーン流体に対する優れた溶解性を備えている。例えば、実施例1、2および3のワセリンは、カプリリック/カプリック トリグリセリド、イソプロピル パルミテート、ひまわり種子油、大豆油、ジメチコーン(20cs)およびシクロペンタシロキサンに30重量%溶解し(すなわち、55℃での透明な溶液)、ジメチコーン(350cs)に30重量%混ぜることができる。
本発明のワセリンは、肌に接触すると液化し、現在の市販のワセリンと比べて、シルキーで、より滑らかな後感覚で、ドラグが少なく、べとべと感が少なく、広がりやすく、取扱いが容易で、吸収が速い。
以下の表12から表15は本発明のワセリンを含有する組成物の実施例である。
製造工程:
1.中間的な速度のプロペラ混合機を使用してシーケンス1の成分を混合して80℃に加熱する。
1.中間的な速度のプロペラ混合機を使用してシーケンス1の成分を混合して80℃に加熱する。
2.シーケンス2の成分を混合して80℃に加熱する。すべてのワックスが溶解するまで混合する。
3.シーケンス2の成分をシーケンス1の成分にゆっくりと添加し、15分間混合する。冷却を開始する。
4.30℃でシーケンス3の成分とシーケンス4の成分を添加して十分に混合する。
5.シーケンス5の成分によってpHを3.5から3.7に調整する。
仕様書:
pH:3.56
粘性率:LV T-D@0.3rpm 371,200 cps
仕様書:
pH:3.56
粘性率:LV T-D@0.3rpm 371,200 cps
製造工程:
1.高速のプロペラ混合機を使用してシーケンス1の成分を混合して40℃に加熱する。均質になるまで混合する。
1.高速のプロペラ混合機を使用してシーケンス1の成分を混合して40℃に加熱する。均質になるまで混合する。
2.シーケンス2の成分を混合して80℃に加熱する。固体微粒子がなくなるまで混合して40℃に冷却する。
3.シーケンス2の成分をシーケンス1の成分に非常にゆっくりと添加し、高速のプロペラ混合機で混合する。
4.1分間、均質化する。
仕様書:
粘性率:LV T-E@0.6rpm 581,000 cps-703,000 cps
仕様書:
粘性率:LV T-E@0.6rpm 581,000 cps-703,000 cps
製造工程:
1.適当な速度のプロペラ混合機を使用してシーケンス1の成分を混合する。78℃から80℃に加熱する。
1.適当な速度のプロペラ混合機を使用してシーケンス1の成分を混合する。78℃から80℃に加熱する。
2.シーケンス2の成分をシーケンス1の成分に添加して均一になるまで混合する。
3.シーケンス3の成分をプロペラ混合機を使用して混合し、80℃に加熱する。透明になるまで混合する。
4.シーケンス3の成分をシーケンス1および2の成分にゆっくりと添加し、15分間混合する。
5.25℃に冷却する。
仕様書:
pH:4.98−5.02
粘性率:LV T♯4@12rpm 30,200 cps
仕様書:
pH:4.98−5.02
粘性率:LV T♯4@12rpm 30,200 cps
製造工程:
1.中間的な速度のプロペラ混合機を使用してシーケンス1の成分を混合して85℃から87℃に加熱する。
1.中間的な速度のプロペラ混合機を使用してシーケンス1の成分を混合して85℃から87℃に加熱する。
2.シーケンス2の成分を混合して85℃から87℃に加熱する。中速/低速のプロペラ混合機を使用して透明になるまで混合する。
3.シーケンス2の成分をシーケンス1の成分にゆっくりと添加し、滑らかになるまで混合する。
仕様書:
pH:6.60
粘性率:LV T-E @0.3rpm 1,357,000 cps
仕様書:
pH:6.60
粘性率:LV T-E @0.3rpm 1,357,000 cps
Claims (26)
- (a)約100゜Fから約125゜Fの融点(ASTM D127)と、
(b)約250から約300dmmのコーンペネトレーション(ASTM D937)と、
(c)25℃において約100000から約200000センチポアズの粘性率と、 (d)(1)約45℃以下のフロー開始温度、(2)約50℃以下の0.1Paにおけるストレージモジュラス、および(3)約45℃以下の0.1Pa・sにおける複合粘性率の中の少なくとも1つの特性と
を有するワセリン。 - 約C20からC45に炭素数が分布している、約5%から約20%の飽和直鎖炭化水素と、 約C30からC90に炭素数が分布している、0%から約20%の飽和微結晶性炭化水素と、
約C10からC50に炭素数が分布している、約60%から約85%の飽和分岐およびシクロパラフィン炭化水素と
を含有している請求項1記載のワセリン。 - (1)、(2)および(3)の中の少なくとも2つの特性を有する請求項1記載のワセリン。
- (1)、(2)および(3)の特性を有する請求項1記載のワセリン。
- 約90゜Fから約98゜Fの凝固点(ASTM D938)と約300から約450の平均分子量(ASTM D2502)を有する請求項1記載のワセリン。
- 約105゜Fから約120゜Fの融点を有する請求項1記載のワセリン。
- 約270から約300dmmのコーンペネトレーションを有する請求項1記載のワセリン。
- 約125000から約175000センチポアズの粘性率を有する請求項1記載のワセリン。
- 約30℃から約45℃のフロー開始温度を有する請求項1記載のワセリン。
- 約35℃から約50℃のストレージモジュラスを有する請求項1記載のワセリン。
- 約35℃から約45℃の複合粘性率を有する請求項1記載のワセリン。
- 約40℃のフロー開始温度、約48℃のストレージモジュラスおよび約36.5℃の複合粘性率の中の1つ以上の特性を有する請求項12記載のワセリン。
- 約37℃のフロー開始温度、約39.5℃のストレージモジュラスおよび約42℃の複合粘性率の中の1つ以上の特性を有する請求項15記載のワセリン。
- 約32℃のフロー開始温度、約39℃のストレージモジュラスおよび約36℃の複合粘性率の中の1つ以上の特性を有する請求項18記載のワセリン。
- 成分中にシリコーンを含まない、請求項1記載のワセリンとキャリアを含有する組成物。
- キャリアが水を含有する請求項21記載の組成物。
- 皮膚または頭髪に組成物を付着させた後、皮膚または頭髪は、請求項1記載のワセリンと同じ重量であって、請求項1記載のワセリンの代用品として対応するシリコーン流体を含有する同等の組成物で処理された皮膚または頭髪と本質的に同一の感覚特性を示す請求項21記載の組成物。
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