JP2010279878A - 中空糸膜モジュールの製造方法 - Google Patents

中空糸膜モジュールの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、膜モジュールの大型化に当たっても上述のような問題がなく、中空糸膜を集水管に固定する際、容易に開口できる中空糸膜モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、中空糸膜の端部が集水管に固定された中空糸膜モジュールの製造方法であって、(1)前記中空糸膜の端部を前記集水管内に挿入し、低硬度ポリウレタン樹脂で前記中空糸膜端部を保持する工程と、(2)前記低硬度ポリウレタン樹脂の上に該低硬度ポリウレタン樹脂よりも硬化後の硬度が高い高硬度ポリウレタン樹脂を充填し硬化させる工程と、(3)前記低硬度ポリウレタン樹脂及び前記高硬度ポリウレタン樹脂との界面付近において前記中空糸膜と共に切断し、前記中空糸膜を開口する工程と、を有する中空糸膜モジュールの製造方法である。
【選択図】図2

Description

本発明は、懸濁物質を濾過するための中空糸膜モジュールの製造方法に関する。
精密ろ過膜及び限外ろ過膜などの多孔質膜は、工業廃水等の汚濁物質処理、医薬品用水等の無菌化などの目的で、幅広い分野において使用されている。
これらの分野で用いられる中空糸膜モジュールには、従来の精密濾過の分野に用いられてきた円形状や同心円状に中空糸膜を集束して配置した円筒形タイプのものの他に、近年、膜処理槽での高集積化のために集水管の形状がほぼ矩形である中空糸膜モジュールが用いられるようになってきた。
集水管の形状がほぼ矩形である中空糸膜モジュールで吸引濾過する場合には、中空糸膜が疎な状態で濾過対象水の中に浮遊することになり、断続的又は連続的に膜面洗浄を行ないつつ濾過を行うことが出来る。従来の円筒タイプのハウジングを有する中空糸膜モジュールは、中空糸膜表面に有機物等が堆積して中空糸膜同士が固着一体化し、有効膜面積が減少して濾過流量の低下を起こす場合がある。集水管の形状がほぼ矩形である中空糸膜モジュ−ルにおいてはこのような問題点が少なく、また、膜機能の回復処理も非常に容易である。
中空糸膜モジュールの構造に用いられるポッティング樹脂としては、例えば、エポキシ系、ポリウレタン系又はアクリル系の3種類が挙げられる。これらのポッティング樹脂は構造体を形成することに力点が置かれており、接着対象とする部材間に非常に強い結合を形成できる。この結合は接合面が破壊する前に部材自体の破壊が生ずるほど強いことがある。
一方で、中空糸膜モジュールの製造においては、中空糸膜端部を開口する必要がある。そのため、中空糸膜モジュールの製造においては、高い接着力よりも易開口性が重視される。そこで、構造体としての接着力と易開口性を両立するための様々な手法が開示されている。
たとえば特許文献1又は2においては、まず、凹み部を設けた軟質樹脂製の中空中子を集水管内に配し、その凹み部に中空糸膜端部を設置・ポッティング樹脂により固定する。その後、中空中子ごとカッターにより端部を開端する方法が開示されている。
特許文献3においては、水溶性の樹脂を充填・固化後、中空糸膜固定用のポッティング樹脂により固定し、その後、水などにより水溶性樹脂を洗うことで端面を開口する方法が開示されている。
特許第3330231号明細書 特許第3563658号明細書 特表2003−532521号公報
特許文献1又は2に開示される方法では十分な耐久性を得るために硬度の高いポッティング樹脂が使用されるが、切り刃でポッティング樹脂を切断する際、硬度が高いため切除されるポッティング樹脂が切り刃を挿入していく過程で切り刃から離れるように十分反り返ることができず、特に大型モジュールにおいて長い矩形内にカッターを挿入する際に大きな力を必要とする場合があり、切断機械及びカッターに大きな負荷がかかる場合があった。また、切断し易くするために樹脂を加熱処理すると、樹脂の可撓性が増大し、切断時に樹脂のたわみが生じてしまい、切断面が荒れる場合があった。
また、特許文献3に開示される方法では、カッター等の問題はないが、水溶性の樹脂を洗浄する必要があり、十分に溶解させて洗浄するには時間を要し、またその残留物(未溶解物)がポンプ等を詰まらせる場合があった。
そこで、本発明は、膜モジュールの大型化に当たっても上述のような問題がなく、中空糸膜を集水管に固定する際、容易に開口できる中空糸膜モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
そこで、本発明は、
中空糸膜の端部が集水管に固定された中空糸膜モジュールの製造方法であって、
(1)前記中空糸膜の端部を前記集水管内に挿入し、低硬度ポリウレタン樹脂で前記中空糸膜端部を保持する工程と、
(2)前記低硬度ポリウレタン樹脂の上に該低硬度ポリウレタン樹脂よりも硬化後の硬度が高い高硬度ポリウレタン樹脂を充填し硬化させる工程と、
(3)前記低硬度ポリウレタン樹脂及び前記高硬度ポリウレタン樹脂との界面付近において前記中空糸膜と共に切断し、前記中空糸膜を開口する工程と、
を有する中空糸膜モジュールの製造方法である。
本発明により、中空糸膜の集水管への固定において、容易に中空糸膜を開口することができる。また、本発明においては溶解を伴う洗浄工程も必要ない。
本発明の中空糸膜モジュールの製造方法を説明するための図である((a);短手方向断面図、(b);長手方向断面図)。 本発明の中空糸膜モジュールの製造方法を説明するための図である((a);短手方向断面図、(b);長手方向断面図)。 本発明の中空糸膜モジュールの製造方法を説明するための図である((a);短手方向断面図、(b);長手方向断面図)。 本発明の中空糸膜モジュールの製造方法を説明するための図である((a);短手方向断面図、(b);長手方向断面図)。 本発明の中空糸膜モジュールの製造方法において、中空部を有する樹脂製容器又は発砲樹脂性容器を用いた実施形態について説明するための図である((a);短手方向断面図、(b);長手方向断面図)。 本発明の中空糸膜モジュールの製造方法において、中空部を有する樹脂製容器又は発砲樹脂性容器を用いた実施形態について説明するための図である((a);短手方向断面図、(b);長手方向断面図)。 本発明の中空糸膜モジュールの製造方法において、中空部を有する樹脂製容器又は発砲樹脂性容器を用いた実施形態について説明するための図である((a);短手方向断面図、(b);長手方向断面図)。 本発明の中空糸膜モジュールの製造方法において、中空部を有する樹脂製容器又は発砲樹脂性容器を用いた実施形態について説明するための図である((a);短手方向断面図、(b);長手方向断面図)。 各測定法における硬度対比図である。
まず、本発明について図1〜3を参照して説明する。図1〜3は本発明の中空糸膜モジュールの製造方法を説明するための図であり、(a)は短手方向の断面図、(b)は長手方向の断面図である。
本発明において、まず、図1に示すように、中空糸膜1の端部を前記集水管2内に挿入し、低硬度ポリウレタン樹脂3で前記中空糸膜端部を保持する。この工程において、中空糸膜1は低硬度ポリウレタン樹脂により集水管2に仮固定される。
次に、図2に示すように、低硬度ポリウレタン樹脂3の上に高硬度ポリウレタン樹脂4を充填し硬化させる。なお、高硬度ポリウレタン樹脂4の上に他の樹脂(例えば低硬度ポリウレタン樹脂4)を積層して3層構造としてもよい。
次に、図3に示すように、低硬度ポリウレタン樹脂3及び高硬度ポリウレタン樹脂との界面付近において中空糸膜1と共に切断し(図2参照)、中空糸膜を開口する。
この際、低硬度ポリウレタン樹脂と高硬度ポリウレタン樹脂の間で切断することが好ましい(図3)。また、低硬度ポリウレタン樹脂3と高硬度ポリウレタン樹脂4との界面付近において低硬度ポリウレタン樹脂側を切断することが好ましい(図4参照)。低硬度ポリウレタン樹脂3における切断箇所は、特に限定されないが、例えば界面から10mm以内の位置とすることができる。さらに、高硬度ポリウレタン樹脂側で切断することもできる(不図示)。高硬度ポリウレタン樹脂側で切断する場合、高硬度ポリウレタン樹脂の硬度や厚さにもよるが、界面から例えば5mm以内の位置とすることができる。本発明では、下層に低硬度ポリウレタン樹脂を配置していることにより、中空糸膜を切断するために切り刃を挿入するときに樹脂の反り返りが起こり易くなり、大きな負荷がかかることなく切断することができる。
また、本発明においては、低硬度ポリウレタン樹脂は容易に切断でき、切断後も容易に集水管内から除去できるため、大型の中空糸膜モジュールを製造する際でも、容易に中空糸膜を開口することができる。また、高硬度ポリウレタン樹脂により中空糸膜を充分な強度で固定することができる。
また、低硬度ポリウレタン樹脂が残存した場合でも、低硬度ポリウレタン樹脂と高硬度ポリウレタン樹脂は同じウレタン系の材料で構成されるため、切断後に残存した低硬度ポリウレタン樹脂と高硬度ポリウレタン樹脂とは強固に接着し、使用中も剥がれることはない。
また、本発明においては、溶解を伴う洗浄工程を必要としない。また、切断時に加熱処理などを行って樹脂を柔らかくする必要がなく常温で切断を行うことができるため、本発明は寸法安定性を高い製造方法である。
したがって、本発明により、中空糸膜を集水管に容易に固定及び開口でき、耐久性のある中空糸膜モジュールを容易に製造可能である。
また、図3に示すように、本発明においては、低硬度ポリウレタン樹脂3と高硬度ポリウレタン樹脂4との間で切断することが特に好ましい。
図5〜8は、中空部を有する樹脂製容器5を用いた本発明の中空糸膜モジュールの製造方法の一例を説明するための概略断面図である。この形態により低硬度ポリウレタン樹脂の使用量を抑えることができる。
まず、図5に示すように、樹脂製容器5を集水管2内に挿入し、中空糸膜1の端部を集水管2内に樹脂性容器5に到達するまで挿入し配置する。
次に、図6に示すように、低硬度ポリウレタン樹脂3を流し込み、中空糸膜を仮固定する。なお、低硬度ポリウレタン樹脂を充填した後に、樹脂が硬化する前に中空糸膜1を挿入してもかまわない。
次に、図7に示すように、低硬度ポリウレタン樹脂3の上に高硬度ポリウレタン樹脂4を充填し硬化させる。
次に、図8に示すように、例えば低硬度ポリウレタン樹脂3側で中空糸膜1を切断し、中空糸膜を開口する。この際、低硬度ポリウレタン樹脂3と高硬度ポリウレタン樹脂4との界面になるべく近い位置で切断することが好ましい。そして、低硬度ポリウレタン樹脂3及び樹脂製容器5を集水管内から除去する。
以下、各構成要素について詳しく説明する。
(高硬度ポリウレタン樹脂)
本発明において、高硬度ポリウレタン樹脂は、硬化後の硬度がショアD硬度で70以上であることが好ましい。
一般に、ポリウレタン樹脂の接着強度は硬度への依存性が高い傾向にある。たとえばハンツマン・ジャパン(株)製のウレタン接着剤を例に挙げると、ABS樹脂に対して商品名システム22B(ショアA硬度:40)では2.5MPaであるのに対し、商品名システム96SB(ショアD硬度:55)では7.2MPaである。被接着物をアルミニウムに変えても商品名システム22B(ショアA硬度:40)では1.4MPaであるのに対し、商品名システム96SB(ショアD硬度:55)では8.7MPaである。なお、一般に、タイプAデュロメータ硬さの測定範囲は10〜90であり、90を超えるときはタイプDデュロメータで測定する。タイプDデュロメータ硬さが20未満の時は、タイプAデュロメータで測定する(JISK6253)。なお、図9に、各測定法における硬度対比図を示す。
本発明では、充分な耐久性及び耐圧性をさらに向上させるべく、ショアD硬度で70以上であることが好ましい。
このような高硬度ポリウレタン樹脂としては、ハンツマン・ジャパン(株)製 システム98SB(商品名、ショアD硬度:75)、システム101(商品名、ショアD硬度:80)等が挙げられる。
高硬度ポリウレタン樹脂の厚みは、特に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で適宜設定できるが、例えば10mm〜40mmとするのが好ましく、30mmとするのがより好ましい。
(低硬度ポリウレタン樹脂)
本発明において、アスカーC硬度で20以下であることが好ましい。このようにすることで、製造工程において中空糸膜を充分に仮固定でき、容易に切断でき、かつ集水管から除去し易い。より好ましくはアスカーC硬度で10以下である。
なお、本発明においては、低硬度ポリウレタン樹脂の硬度がアスカーC硬度で20以下であり、かつ高硬度ポリウレタン樹脂の硬度がショアD硬度で70以上であることが好ましい。高硬度ポリウレタン樹脂と低硬度ポリウレタン樹脂の硬度差が大きい方が、切断部における層の分離性が高くなるためである。
下層に低硬度ポリウレタン樹脂を配置していることにより、中空糸膜を切断するために切り刃を挿入するときに樹脂の反り返りが起こり易くなり、大きな負荷がかかることなく切断することができる。また、低硬度ポリウレタン樹脂側で切断する際は容易に切断でき、かつ切断後も容易に集水管内から除去できる。また、低硬度ポリウレタン樹脂と高硬度ポリウレタン樹脂は同じウレタン系の材料で構成されるため、切断後に残存した低硬度ポリウレタン樹脂と高硬度ポリウレタン樹脂とは強固に接着し、使用中も剥がれることはない。
ここで、低硬度ポリウレタン樹脂においてはその硬度を測定する場合、ゴムの硬さを測定するのと同様に一般的にショアAという規格が用いられる。JISK7312のデュロメータ硬さ試験において、ショアAで硬さが10未満のものについてはアスカーCを使用することが多い。低硬度ポリウレタン樹脂としてはその硬度範囲は、アスカーC硬度で20以下であることが好ましい。
低硬度ポリウレタン樹脂としては、例えば、DevconSU(商品名、ITWインダストリー(株)製、アスカーC硬度;8)、パンデックスGCA−11/GCB−41(商品名、DIC(株)製、:アスカーC硬度;0)、ウレタン樹脂0−100(商品名、エクシールコーポレーション(株)製、アスカーC硬度;0)等が挙げられる。
低硬度ポリウレタン樹脂の厚みは、特に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で適宜設定できるが、例えば10mm〜30mmとするのが好ましく、15mmとするのがより好ましい。
(ポリウレタン樹脂の硬度の調整)
所定の硬度を有するポリウレタン樹脂は例えば以下のように製造することができる。
ポリウレタン樹脂はポリオールにポリイソシアネートを反応させて製造する。
ポリオールとポリイソシアネートのOH/NCOのモル比は例えば1〜1.5とすることができる。
また、ポリオールの分子量が低いほど得られるポリウレタン樹脂の硬度は高くなり、一方分子量が高いほど得られるポリウレタン樹脂の硬度は低くなる。
ポリオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、1,6−ヘキサンジオール等の低分子量のポリオール類、さらにそれらジオール類にアルキレンオキシド類を付加させたポリオキシアルキレンポリオール、メチルアミン、n−ブチルアミン、アニリン等の低分子量のアミン類にアルキレンオキシド類を付加させたポリオキシアルキレンポリオール、さらにはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のポリオールとアジピン酸、フタル酸等の二塩基酸との縮合反応により得られるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、アクリルポリオール、エチレン−酢酸ビニル共重合体の加水分解物等があげられる。これらは単独で用いても良く、2種類以上併用しても良い。また、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の低分子量のポリオール類、さらにそれらにアルキレンオキシド類を付加させたポリオキシアルキレンポリオール等があげられる。これらは単独で用いても良く、2種類以上併用してもよい。
ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製トリレンジイソシアネート(粗製TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(クルードMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)等があげられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いても良く、2種類以上併用しても良い。
(低硬度ポリウレタン樹脂と高硬度ポリウレタン樹脂との接合)
たとえ低硬度ポリウレタン樹脂が残存したとしても、高硬度ポリウレタン樹脂と低硬度ポリウレタン樹脂とは、充分に接着されているため、中空糸膜モジュールの使用中でも低硬度ポリウレタン樹脂が剥離することはない。低硬度ポリウレタン樹脂及び高硬度ポリウレタン樹脂の界面では、互いに構成成分として含有するジイソシアネートとジオールモノマーが化学反応すると考えられるため、互いに充分に接着している。
一方、低硬度ポリウレタン樹脂は集水管などのモジュール部材(たとえばABS等)に対しては接着性が低く剥離除去が容易である。また、切断後に低硬度ポリウレタン樹脂が高硬度ポリウレタン樹脂に接着して残っても、その接着力は充分な強度であるため濾過中においても脱落しない。
特に、切断過程におけるポリウレタン樹脂の切断性を高める上では、高硬度ポリウレタン樹脂と低硬度ポリウレタン樹脂の硬度差が大きい方が、切断部における層の分離性が高くなる。つまり、切り取られる側の樹脂が、刃が入っていくことにより刃から離れるように反り返り、分離し易くなるので好ましい。
本発明では、モジュールとしての耐圧性と易加工性を両立させるため、低硬度ポリウレタン樹脂と高硬度ポリウレタン樹脂からなる2層の構成とすることが好ましい。しかし、所定の目的が達成できる範囲で3層以上としてもよく、上述のように、例えば高硬度ポリウレタン樹脂の上に低硬度ポリウレタン樹脂を形成することができる。それにより、中空糸膜のポッティング端面における付加を低減することができ、中空糸膜のポッティング端面における折れ、ねじれを抑制することができる。
本発明に用いるポリウレタン樹脂には、必要に応じて発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤又は顔料等の添加剤を所要量配合することができる。
(中空糸膜端部の開口方法)
中空糸膜端部の開口は、集水管に中空糸膜を低硬度ポリウレタン樹脂及び高硬度ポリウレタン樹脂にて固定した後、集水管の側面に設けた穴から、カッター等の刃を挿入し、樹脂を中空糸膜ごと切断することにより行うことができる。
また、中空部を有する樹脂製容器を用いる場合は、その樹脂製容器ごと切断することもできる。中空部を有する樹脂製容器の端面からカッター刃を挿入し、内部の凹部において中空糸膜ごと切断することができる。また、中空部を有する樹脂製容器のように、発泡樹脂製容器も用いることができる。
カッター刃は、ポッティング樹脂が充填されている内部の長に渡って挿入可能なものを用いることができ、特に限定されるものではない。
カッター刃の形状としては、円筒状のカッター柄に取り付けられていて、中空糸膜の端面の切断片は、カッター柄の円筒の内側を通って排出されるものなどが挙げられる。
このようにして得られたものの集水管2の端に、図3に示すような、キャップ6を接合することにより、漏れのない中空糸膜モジュールを得ることができる。
ここで、キャップ6は、集水管2と同じ材質であることが望ましい。例えば同じ材質の樹脂である場合は、一般的に樹脂配管に行われているように、溶剤接着で容易に接合することが可能である。また、集水管2とキャップ6がそれぞれ雄ネジと雌ネジを形成するようにして、ねじ込みによる接合も可能である。キャップは、吸引濾過の為に、配管が接合できる構造になっていることが望ましい。
本発明のように低硬度ウレタン樹脂と高硬度ウレタン樹脂の組み合わせを用いることにより寸法安定性を維持しながら、中空糸膜端部の易開口性と耐圧性の両立が可能となり、本発明による中空糸膜モジュールを容易に量産することができる。
(中空糸膜モジュール)
中空糸膜モジュールは集水管2に中空糸膜1がポッティングされている形状を呈する。その形状として、集水管2が中空糸膜の両端或いは一方のみに設けられていてもよい。さらに集水管2の形状としては、矩形や円筒形などが挙げられる。散気方法によりその洗浄性を低下させない範囲で適切な形状を選択すればよい。
集水管及びキャップは、中空糸膜モジュール全体を支持し、中空糸膜内側に吸引濾過され流体を集める部材として機能する。集水管は、その側面に中空糸膜端部を挿入するための細長いほぼ矩形の開口部を有することが好ましい。その材質は、機械的強度及び耐久性を有するものであれば良く、例えばポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ABS樹脂、変性PPE樹脂、PPS樹脂、耐腐蝕性金属等が例示されるが、ポッティング樹脂との接着性が良いものが好ましい。
(中空糸膜)
本発明に用いる中空糸膜の分画レベルは、精密ろ過膜(MF)、限外濾過膜(UF)、又はナノろ過膜(NF)等のいずれのレベルであってもよい。また、濾過膜として使用可能のものであれば、孔径、空孔率、膜厚、外径等には特に制限はないが、濾過の対象となるものによって適宜選択することができる。更に、有機物やウイルスの除去を目的とする場合には分画分子量数万から数十万の限外濾過膜を用いる場合もある。
本発明の中空糸膜は、例えばセルロース系・ポリオレフィン系・ポリビニールアルコール系・ポリスルフォン系・ポリアクリロニトリル系・フッ素系樹脂など、分離膜の形状に成形可能なものであれば各種材料から形成することが使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ四フッ化エチレン、又はポリスルホン等が挙げられる。
特に中空糸膜の表面特性として、耐薬品性の強い樹脂を用いることが好適であり、特に好ましくはフッ素系樹脂である。フッ素系樹脂の中でも、膜への賦形性と耐薬品性などからフッ化ビニリデリン樹脂を用いることがより好ましい。ここでフッ化ビニリデリン樹脂としては、フッ化ビニリデリンのホモポリマーの他、フッ化ビニリデリンとフッ化ビニリデリンと共重合可能な単量体との共重合体が挙げられる。上記共重合可能な単量体としては、例えばフッ化ビニル、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどがある。
本発明の中空糸膜は、複数の細孔を有する。細孔は、中空糸膜の表面及び裏面を貫通する連続孔であることが好ましい。細孔の孔径は、目的によって任意に選択できるが、例えば0.01〜5μmであり、好ましくは0.1〜1μmである。
また、本発明の中空糸膜は、一方の表面の孔径が小さく、他方の表面の孔径が大きい、非対称構造であることが好ましい。非対称構造の場合、一方の表面の孔径が、他方の表面孔径の1倍より大きく100倍以下、好ましくは2倍〜10倍であることが適当である。
中空糸膜の外径は、例えば、0.1〜10mm、好ましくは0.5〜5mmであることが適当である。本発明の中空糸膜は、純水に対する透液性能を示す純水透過係数が、10〜250m3/m2/時/MPa、好ましくは、20〜150m3/m2/hr/MPaであることが適当である。なお、純水透過係数は、以下の式より求めることができる。
純水透過係数=[純水透過量(m3)]/[多孔質膜の表面積(m2)]/[透過時間(時)]/[純水の圧力(MPa)]
(中空糸膜の製造方法)
中空糸膜は編織物とすることができる。中空糸膜編織物は、中空糸膜を例えば緯糸として編地としたものを数枚積層したものであれば、集水管2の側面のほぼ矩形の開口部に収納するのに好適である。編地の製造方法は、例えば特開昭62−57965号公報、特開平1−266258号公報に開示されている。
(モジュールへのポッティング樹脂充填方法)
樹脂の充填方法としては、例えば、振動を利用した方法や、重力のみによる方法も可能である。振動法による中空糸膜の樹脂固定方法(ポッティング方法)の詳細は、例えば特開平3−114515号公報に開示されている。本発明に用いるウレタン樹脂の粘度は、2000mPa・s以下の粘度であることが好ましい。
以下実施例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
PET(ポリエステル)繊維を組紐状に加工し、その表面にPVDF多孔質部を形成した多孔質中空糸膜(三菱レイヨン(株)製、内径1000μm、外径2800μm)を3本合糸し緯糸とし、幅1000mmで編み長さ2000mmで編地5枚を編成し、中空糸膜編地積層体を得た。
集水管として、内寸30mm×30mm×1200mmのABS製角形パイプの側面に幅18mm×長さ1000mmのほぼ矩形状の開口部を設けて、この集水管の両側から発泡樹脂製容器を挿入し、PTFE製の加工用キャップでシールした。
次に、先に準備した中空糸膜積層体を集水管の開口部に、割中子に当たるまで挿入し、開口部から中空糸膜編地積層体の根本付近に低硬度ポリウレタン樹脂DevconSU(商品名、ITWインダストリー(株)製、アスカーC硬度;8)を注入し固化させた。
その後、低硬度ポリウレタン樹脂の上部にポッティング用に高硬度ポリウレタン樹脂であるアラルダイトウレタン98SB(商品名、ハンツマン・ジャパン(株)製、ショアD硬度;75)を充填し硬化させ、低硬度ポリウレタン樹脂の厚みを15mm、高硬度ポリウレタン樹脂の厚みを30mmとした。
次に、集水管の端部からカッターを挿入して、低硬度ポリウレタン樹脂と高硬度ポリウレタン樹脂の間でポリウレタン樹脂に包埋された中空糸膜端部を切断して開口し、集水管の両端に配管口付きの塩ビキャップを溶剤接着した。
以上のようにして、中空糸膜の開口部を集水管内に持つ、図4のような中空糸膜モジュールを得た。この中空糸膜モジュールの有効膜面積は25m2であった。さらに、エタノールを用いた膜リーク検査においてリークは見られなかった。
(実施例2)
低硬度ポリウレタン樹脂として、パンデックスGCA−11/GCB−41(商品名、DIC(株)製、アスカーC硬度;0)を用いたこと以外は、実施例1と同様とした。集水管端部からカッターを挿入して低硬度ポリウレタン樹脂に包埋された中空糸膜端部を切断して、集水管の両端に配管口付きの塩ビキャップを溶剤接着した。以上のようにして、中空糸膜の開口部を集水管内に持つ、図4のような中空糸膜モジュールを得た。この中空糸膜モジュールの有効膜面積は25m2であった。さらに、エタノールを用いた膜リーク検査においてリークは見られなかった。
(比較例1)
高硬度ポリウレタン樹脂の代わりに低硬度ポリウレタン樹脂を用い、低硬度ポリウレタン樹脂のみを用いた以外は、実施例1と同様とした。エタノールを用いた膜リーク検査においてリークが見られた。
(比較例2)
低硬度ポリウレタン樹脂の代わりに高硬度ポリウレタン樹脂を用い、高硬度ポリウレタン樹脂のみを用いた以外は、実施例1と同様とした。エタノールを用いた膜リーク検査においてリークが見られた。
1 中空糸膜
2 集水管
3 低硬度ポリウレタン樹脂
3’ 低硬度ポリウレタン樹脂と中空糸膜
4 高硬度ポリウレタン樹脂
4’ 高硬度ポリウレタン樹脂と中空糸膜
5 中空部を有する樹脂製容器
6 キャップ

Claims (4)

  1. 中空糸膜の端部が集水管に固定された中空糸膜モジュールの製造方法であって、
    (1)前記中空糸膜の端部を前記集水管内に挿入し、低硬度ポリウレタン樹脂で前記中空糸膜端部を保持する工程と、
    (2)前記低硬度ポリウレタン樹脂の上に該低硬度ポリウレタン樹脂よりも硬化後の硬度が高い高硬度ポリウレタン樹脂を充填し硬化させる工程と、
    (3)前記低硬度ポリウレタン樹脂及び前記高硬度ポリウレタン樹脂との界面付近において前記中空糸膜と共に切断し、前記中空糸膜を開口する工程と、
    を有する中空糸膜モジュールの製造方法。
  2. 前記低硬度ポリウレタン樹脂の硬度がアスカーC硬度で20以下であり、かつ前記高硬度ポリウレタン樹脂の硬度がショアD硬度で70以上である請求項1に記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
  3. 前記工程(3)において、前記低硬度ポリウレタン樹脂側で切断する請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
  4. 前記工程(3)において、前記低硬度ポリウレタン樹脂と前記高硬度ポリウレタン樹脂との間を切断する請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
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