JP2004344851A - 膜ろ過モジュール - Google Patents

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Abstract

【課題】中空糸膜表面を効率よく洗浄でき、かつ洗浄で膜表面から剥離した濁質等の固形成分を効率よく容器内から排出できるモジュール構造を提供する。
【解決手段】モジュール容器の中央に中空糸と平行になる芯管を有し、その芯管に仕切り板を設けて、その仕切り板と容器によって構成されるろ過室に中空糸束を配置する。芯管側面の仕切り板の付いていない部分にろ過室に向けていくつかの穴を設け、その穴より洗浄用の水または圧縮空気をろ過室に供給することで、均等に膜を洗浄することができる。また、それぞれのろ過室の洗浄水または空気を各ろ過室に対応して、封止端の接着部の中空糸束外周と容器の間に設けたスリットより流出させることで効率よく固形分を含んだ洗浄水を排出できるモジュール構造を見出した。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は河川水、湖沼水、地下水、かん水、海水などの懸濁物質を含む水を処理して、これらに含まれる微粒子や微生物等を除去する中空糸膜ろ過モジュールに関するものであり、さらに詳しくは、膜面および中空糸束に付着した懸濁物質等の固形成分の逆洗による洗浄ならびに固形分の排出性の良い膜モジュールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
河川水や湖沼水、地下水、かん水、海水などの懸濁物質を含む水を直接または前処理後に、中空糸膜モジュールを用いてろ過する場合、水中に含まれる膜不透過性の物質が徐々に中空糸膜表面および膜細孔表面に付着、蓄積して、膜の透水速度を下げる現象が見られる。通常の運転では、膜透水性能が所定の性能以下に低下した時点、すなわち、定圧運転の場合では濾過流量が所定値以下に低下した時点、定流量運転の場合は膜間圧力差が所定値以上に上昇した時点、または、一定の運転時間が経過した時点で、膜の洗浄が行うことにより、膜透水性能を回復させる操作が行われる。
【0003】
膜の洗浄に関しては様々な方式があるが、たとえば、膜の透過側より逆に水を流して行う逆圧洗浄、いわゆる逆洗に加えて、芯管より外周方向に原水を供給する逆流洗浄、芯管から空気を押し出す空洗が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。ただし、この場合のモジュール構造は、芯管部に中空糸を巻回した、いわゆる糸巻きカートリッジ型のエレメントが用いられており、中空糸を平行に配置したモジュールでは糸が結束されていないために、逆流洗浄や空気洗浄時に糸がダメージをうけるといった問題があった。また、逆洗と同時に芯管からの空気洗浄を行う方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)が、これも糸巻きカートリッジ型エレメントを使ったものであり、特許文献1と同様の問題がある。一方、通常の逆洗のみでは、中空糸表面に流れる水量が少なく、膜から剥がれた固形成分を容器内から完全に流し出す能力が低いため、残留した固形分が次のろ過操作時にすぐ膜面に付着してしまう問題があった。このため、上記のような膜の外側を水と圧縮空気で押し出す方法も取られるが、糸のダメージを抑えるために逆線の流速を抑えること、さらに水と圧縮空気が一方向から供給されるため、供給口から遠い側の膜表面では洗浄水流速が遅くなり、汚れが効率よく除去できないという問題があった。このことはモジュールの大きさが大きくなるほど顕著であり、洗浄水または空気の供給口から遠い位置にある膜は、その距離が長くなることで逆洗水の流量が不足し、膜面の付着物除去が不十分になるとともに、上流から排出された固形分が蓄積するという問題がある。
【0004】
一方、封止端部に原水供給口とエアレーション用の空気の供給口を設けたモジュール構造が提案されている。(例えば、特許文献3参照)。この場合、封止端部に設けられた原水供給口は逆先時の排水には用いらないため、モジュール底部に蓄積した固形物が抜けにくいという欠点がある。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−79390号公報(2頁〜4頁)
【特許文献2】
特開2002−239350号公報(2頁〜3頁)
【特許文献3】
特開平9−220446号公報(2頁〜4頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決することを目的とするものであって、中空糸膜表面を効率よく洗浄でき、かつ洗浄で膜表面から剥離した濁質等の固形成分を効率よく容器内から排出できるモジュール構造を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を克服すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、モジュール容器の中央に中空糸と平行になる芯管を有し、その芯管に仕切り板を設けて、その仕切り板と容器によって構成されるろ過室に中空糸束を配置する。芯管側面の仕切り板付いていない部分にろ過室に向けていくつかの穴を設け、その穴より洗浄用の水または圧縮空気をろ過室に供給することで、均等に膜を洗浄することができる。また、それぞれろ過室の洗浄水または空気を各ろ過室に対応して、封止端の接着部の中空糸束外周と容器の間に設けたスリットより流出させることで効率よく固形分を含んだ洗浄水を排出できるモジュール構造を見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の構成を含むものである。
(1) 中空糸を複数本束ね、容器内に挿入し、その両端を接着剤により封止し、この接着剤の片側の一部を切削して中空糸端部を開口させ、中空糸外側に処理原水を供給して中空糸内部にろ過し、開口端より処理水を取り出す外圧式全量ろ過型の膜ろ過モジュールであって、該容器の中央部に容器両端もしくは片端の封止部を貫通して、中空糸と平行に配置された芯管を有し、かつ芯管に取り付けられた仕切り板により中空糸束が少なくとも2つ以上に分割されたことを特徴とする膜ろ過モジュール。
(2) モジュール封止端側の接着部の中空糸束外側に排出用の少なくとも一つのスリットを設けたことを特徴とする(1)記載の中空糸膜ろ過モジュール。
(3) 芯管と仕切板と容器内壁によって構成されるろ過室区画において、中空糸の体積とろ過室の体積比である充填率が30vol%以上、60vol%以下である(1)または(2)記載の膜ろ過モジュール。
(4) モジュール封止端側に設けられたスリットが、仕切板で区切られる各々の領域に少なくとも一つ以上有り、容器の円周に沿った分割同心円形状で、その開口部面積が容器断面積に対して10〜30%である(1)乃至(3)いずれか記載の膜ろ過モジュール。
(5) 該中空糸膜内径の内径が200〜600μm、外径が300〜1000μmである(1)乃至(4)いずれか記載の膜ろ過モジュール。
(6) 該中空糸膜の透水性能が50〜1000L/m/hr/100kPaである(1)乃至(5)いずれか記載の膜ろ過モジュール。
(7) 該中空糸膜がモジュール内で平行に配置されている(1)乃至(6)いずれか記載の膜ろ過モジュール。
(8) 該中空糸がポリエーテルスルホンまたはセルローストリアセテートである(1)乃至(7)いずれか記載の膜ろ過モジュール。
(9) 該膜ろ過モジュールの中空糸膜有効長Lと容器内径Dの比率(L/D)が2〜20である(1)乃至(8)いずれか記載の膜ろ過モジュール。
(10) 該ろ過モジュールの100kPaにおける純水のろ過速度が0.5〜30m/hrである(1)乃至(9)いずれか記載の膜ろ過モジュール。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。図1は本発明の一例で、芯管を有する円筒容器において仕切り板により4つに区切られたろ過室を有する全ろ過型膜モジュールの簡単な構成図である。
【0011】
円筒状の容器1の中心に芯管2を有し、芯管2についた仕切り板により少なくとも2つ以上に分割されたろ過室に中空糸束3を収納する。容器1の2つの接着端部4のうち、一方は容器と中空糸束3との間に接着剤4を注入し、接着剤硬化後に端部の外側にある中空糸束と接着端部4を切削して中空糸を開口させた開口端8とする。もう一方は中空糸束3の端部を接着剤4で封止した封止端部9とする。この封止端部9には中空糸束3と容器1との間にある接着剤4の部分に、仕切板で区切られたろ過室ごとに少なくとも1つのスリット10を設ける。このようにしてできた中空糸束を配置させた芯管付き容器1の両端にキャップ5およびゴムパッキンを取り付け、クランプバンド7で固定することにより、中空糸膜ろ過モジュールを構成する。
【0012】
本発明は、モジュールの構造に関するものであり、モジュールを構成する部材、接着剤の材質および中空糸膜の素材等に関しては、特に限定されるものではない。たとえば、河川水や湖沼水、地下水、海水等の懸濁物質を含む原水から除濁して、水道用や工業用の浄水として使用する用途や、海水淡水化の逆浸透膜システムの前処理として用いられる場合には、精密ろ過膜や限外濾過膜の中空糸が広く用いられており、膜の形状も内径が200〜2,000mmに至る広範囲のものがあるが、これらの膜は本発明の膜モジュールの中空糸膜として用いることができる。洗浄性を高める意味で好ましくは中空糸内径が200〜600μm、外径が300〜1000μmである。糸径が細すぎるものは糸が弱くなるため逆洗等の工程で糸切れし易くなり、洗浄の条件、頻度が制限されることになる。また、中空糸膜が太すぎる場合は、容積当たりの膜面積が小さくなるため、膜面積当たりのろ過水量が多くなり、膜面へのよごれの蓄積量が増えるとともに、糸の剛性が上がって、逆洗時の糸揺れが起きず、膜表面に付着した懸濁物質等の剥離性が下がる。
【0013】
懸濁物質を含む水を処理する場合、中空糸膜の透水性能が高い方が、低圧でのろ過操作ができ、供給ポンプの所用動力等の面で有利であるが、膜透水性を上げることは、一般的に膜細孔径をアップさせることとなり、より大きな物質が膜細孔内に入り込むことになる。また、透水性能アップはモジュール当たりの処理能力を上げるため、単位面積当たりのろ過量が増えることで、膜表面へのよごれの蓄積が増加し、逆洗での洗浄性が悪くなる。このため、膜の透水性能としては50〜1000L/m/hr/100kPaの間にあることが望ましい。より好ましくは100〜800L/m/hr/100kPaである。一方、膜構造に関しては、膜外表面、内表面に緻密層を有し、膜の中央部にマクロボイドや指状(フィンガーライク)構造を持つ非対称膜や全体がスポンジ状の均一構造からなる均質膜等があるが、懸濁物質を含む水の処理には、膜内部に懸濁物質が入りにくい構造が望ましい。従って、外圧型の膜ろ過用中空糸では、懸濁物質が膜内部に入り込まない膜外表面に緻密層を有することが望ましいが、逆ろ過等の操作で、膜内部に入り込んだ懸濁物質が、外に向かって出やすくなる、内表面から外表面に向かって細孔径が大きくなるような傾斜構造を持つようなものであってもよい。
【0014】
中空糸膜の強度に関して、ろ過時や逆洗時などに発生する糸切れリークを防止するために中空糸単糸当たり60g以上の破断強度があることが望ましい。本発明のモジュール構造では、糸に向かって垂直な流れをできる限り小さくする工夫がなされており、極端に大きな力が掛からないようにされているが、逆洗の効果を上げるためには、中空糸を揺らし、表面の付着物を押し流す流量が必要である。このため、糸の接着部のつけ根、特に縦置きの場合は上部のつけ根に力が集中し、糸傷や糸切れを発生させてしまうため、中空糸としては単糸当たり60g以上の破断強度が好ましい。より好ましくは100g以上である。
【0015】
従来、精密ろ過(MF)膜や限外ろ過(UF)膜のような膜を使ってろ過を実施する場合は、クロスフローろ過が用いられてきた。クロスフローろ過では膜表面に形成されるゲル層やケーク層などの付着層を供給液の流れで剥がし取り、ろ過による蓄積と流れによる剥離が平衡になることで、ろ過性能を安定化させようとするものである。しかしながら、供給液流速とろ過液流速との比率を高めようとすると、付着層を剥離する力が弱くなるため、ある程度過剰に供給液を流す必要がある。また、非ろ過成分の濃縮された濃縮液をそのまま廃棄すると全体の回収率が低くなってしまうため、再度供給液に戻す、循環操作が行われる。このことは、供給液ポンプ流量が上がることでのポンプ消費動力のアップと、濃縮液還流系の配管が増えることから装置が複雑化し、設備コストがアップするなどの問題点がある。一方、全ろ過方式では、供給水がすべてろ過されるため、ろ過工程での回収率は100%である。しかしながら、懸濁物質を含む水の処理では、膜に膜不透過の成分が蓄積するため、経時的に膜ろ過性能が低下することとなる。このため、膜性能が低下した時点もしくは一定時間間隔で逆洗をする必要があるが、この洗浄効率を高めることで、逆洗時に消費する処理水量を下げ、濃度の高い膜ろ過排水とすることができれば、簡便な膜ろ過システムによる、高回収率で排水等の少ない効率的な膜ろ過システムを構成することができる。この効率的な逆洗システムとするために必要な膜ろ過モジュール構造が本発明の主要な目的である。
【0016】
膜素材に関しても、セルロースエステル類、ポリオレフィン類、ポリカーボネートやポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのエステル系合成高分子、ポリ塩化ビニルやポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンなどの含ハロゲン高分子など様々な膜素材の中空糸膜を使うことができる。耐バクテリア性の面から、好ましくはポリスルホン、ポリエーテルスルホンが好ましい。また耐塩素性、耐圧性の面からセルロースアセテート、セルローストリアセテートが好ましい。
【0017】
ろ過モジュール内の中空糸膜の配置としては、平行配置、交差配置いずれでもよいが、逆洗時、膜の外面に付着した固形懸濁成分を効率よく洗浄するためには、中空糸が流れによって少し揺れたり振動したりすることが好ましい。交差配置では中空糸が固定されたようになるため、逆洗時の水の通り道が固定されてしまい、水の流れが偏ることで、膜面全体の洗浄が難しくなる可能性がある。従って、中空糸間にある程度の空隙を持たせるために充填率を60vol%以下、かつ中空糸が接着部以外で固定されていない平行配置が好ましい。また、糸と糸との接触点を小さくする目的で、中空糸に巻縮(クリンプ)等がついていても良い。
【0018】
外圧型全ろ過操作の場合、モジュール容器の内径Dと中空糸有効長Lとの関係は、膜の透水性能、中空糸内外径、充填率から最適形状を求めうるが、膜モジュールの取り扱い性から、モジュール長としては1.5m以下が適当である。また逆洗時の洗浄性、モジュールを縦置きにしたときの糸自重による上部接着部での糸に掛かる力などからも1m前後がより望ましい。モジュール長に関してはモジュール直径に関しては、芯管からの洗浄水の流れを糸外周部まで効率よく流すため、容器内径として30〜500mmが望ましい。
【0019】
膜モジュールのろ過室における中空糸膜の充填率は、膜ろ過の容積効率と逆先時の洗浄性を確保する上で重要なファクターであり、ろ過室の体積に対する中空糸体積の比率すなわち充填率は30vol%〜60vol%であることが好ましく、より好ましくは40vol%〜58vol%である。充填率30vol%未満の場合は、単位モジュールあたり、単位圧力あたりのろ過流量が低くなり、モジュール容積、設置面積やポンプ動力消費の面で不利となる。一方、充填率が高すぎる場合は、逆洗時の洗浄水線速が速くなり、中空糸に掛かる力が大きくなるのに加えて、糸束の動きが小さくなり、糸充填の粗密のばらつきが固定化され、逆洗水の偏流が起こることで中空糸が密に入った部分の洗浄ができなくなり、固形成分が蓄積して膜性能の低下を引き起こす現象が見られる。このため、ろ過室での糸充填率としては30vol%〜60vol%、好ましくは40vol%〜58vol%である。
【0020】
ろ過操作において、キャップ5のaよりモジュールに供給された水は、封止端のスリット10を通り中空糸束3の外側に供給される。中空糸膜を透過した水は、中空糸の開口端より、透過水口bに集水されモジュール外に出ていく。ろ過操作は全ろ過で実施されるため、原水中に含まれる懸濁物質が徐々に膜面に蓄積し、定圧操作ではろ過水量が経時的に低下する。定流量操作の場合は、膜間圧力差が上昇し、供給圧をあげていくことが必要になる。定圧操作ではろ過水量が設定値以下に低下した場合、定流量操作では膜間圧力差が設定値以上に上がった場合、逆洗操作を行うことになる。ここで、原水の水質が安定しており、濁質成分の濃度が比較的低く安定している場合には、一定時間間隔で逆洗操作を行うことも可能であり、本発明の場合においてはどの方式による逆洗も可能である。
【0021】
本発明に用いられる芯管は、モジュール容器内径の1/10から1/5の外形を有し、その側面には仕切板のない部分に円形、楕円形、長方形の形状の穴をもち、芯管に供給した洗浄用水を中空糸束に流すことができるようになっている。芯管の側面の開口率(穴の開口面積/芯管側面積×100%)としては3%〜12%が望ましく、単一の穴の大きさとしては、真円に換算して、直径3〜10mmが望ましい。芯管の開孔率は、開口率が高すぎると洗浄水の流れが流入口側に集中してしまうため12%以下が望ましく、3%以下では洗浄液供給の圧損が大きくなる。このため、芯管の開口率としては3%〜12%が好ましい。
芯管に取り付けた仕切り板は、容器内を放射状に仕切り、断面が扇形のろ過室を構成する。仕切り板はモジュール容器内壁と接触しない形で設置され、両端の接着部では接着剤に包埋される。芯管から供給される洗浄水は、芯管にあけられた穴より個々のろ過室に向けて均一な流量が流れるように、個々のろ過室における芯管の穴数と位置は同じになるように設置する。仕切り板の数は少なくとも2枚以上必要であり、モジュール容器の内径により仕切り板数を調整する。仕切り板の数が多い方が洗浄時の流れが均一化され洗浄効率はよくなるが、仕切り板を増やしすぎるとろ過室の体積が減少し、膜面積が下がって単位モジュールあたりのろ過量が減少してしまう。従って、仕切り板数は2枚〜8枚程度が適当である。
【0022】
膜の逆洗時は、まず、透過水口bより中空糸内部に向けて洗浄水を供給し、膜の逆ろ過により膜表面についた濁質を剥がしとる、逆ろ過洗浄を行う。洗浄水の流量はろ過操作時の流量の0.5〜2倍で、かつこの逆ろ過圧は膜の耐圧圧力の0.8倍以下が望ましい。逆ろ過流量が少なすぎると中空糸全体に水が行き渡らず、洗浄が不均一となって洗浄効率が悪くなる。多すぎる場合は、供給圧が膜の耐圧性を越え、この結果、膜変形が起こり、構造の変化による性能の低下や、糸の弱い部分での破裂が生じ、リークを発生させる。特に接着界面では、接着部は樹脂により糸形状が固定化されているのに対して、樹脂のない部分では糸が膨らむ変形を起こし、樹脂界面で剪断力が生じさせる。高分子膜は剪断力に比較的弱く、このような状況を繰り返すと、糸の破断が起き、リークを起こす可能性がある。このため、逆ろ過時の圧力は上記範囲に設定する。このときの洗浄水には膜ろ過水を用い、必要により次亜塩素酸ソーダ等の薬剤をこの洗浄水に添加することもできる。使用できる薬剤としては次亜塩素酸ソーダや過酸化水素などの酸化剤、ホルマリンなどの還元剤、硝酸、リン酸、塩酸、硫酸、クエン酸などの酸類、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムなどのアルカリ類、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤、各種界面活性剤やこれらの混合物を用いうるが、これらに限定されるものではない。例としてポリエーテルスルホン膜で次亜塩素酸ソーダを添加する場合では、有効塩素濃度として1〜50ppm程度が望ましい。ただし、膜素材と原水の特性により、必要な濃度は最適化する必要がある。
次に芯管に洗浄水を供給することで、芯管の仕切り板の間に設けた穴より洗浄水を流し、仕切り板に仕切られたろ過室内の中空糸束3の膜表面から剥離した濁質の固形成分を糸束中から流し出す、逆流洗浄を行う。この逆流洗浄に用いる洗浄水は原水を用いても、ろ過水を用いてもよいが、原水の濁質成分が多い場合にはろ過水を用いることが望ましい。逆流洗浄では中空糸と平行に設けた芯管の側面にある穴から、中空糸束3に対して垂直に洗浄水を流すことで、中空糸束全体に洗浄水が行き渡り、かつ中空糸束を揺らすことで、洗浄効果を高めることができる。これらの水はスリット10を通り、モジュール外へ排水する。洗浄水の流量はろ過操作時の1〜5倍の範囲で、かつ供給圧力は膜の耐外圧性の0.8倍以下が好ましい。
そして最後に、芯管にエアを圧入することで芯管に設けられた穴よりエアが吹き出し、容器内に残った洗浄水とともに気泡が押し出され、中空糸を揺らしながら濁質の固形成分を含んだ洗浄水がスリット10を通って一気にaから排出される。エアの供給圧力は逆流洗浄時の圧力以下であることが好ましい。
洗浄水とエアは容器1の中央にある芯管2から、円周方向に流れだし、濁質の固形分を含んだ水は中空糸束3の外周部から、封止端の接着部に設けたスリット10を通って排出されることで、水の流れが糸の外周部で一方方向の流れとなり、糸に垂直な流れの力を分散させ、濁質の固形分を中空糸束から排出するのに最適な構造となっている。
スリットの開口部面積は10〜30%が好ましい。この範囲であれば、原水供給時の圧損も小さく、洗浄水の排出時に適度な流れとなるため、糸に対するダメージを抑えることができる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0024】
(中空糸内径、外径の測定法)
中空糸内外径の測定は、以下のような方法で実施した。まず、1.5〜2mm程度の厚みをもつ金属板に2〜3mmφの穴を開けたものを用意し、この穴に中空糸膜を自重では抜けない程度の本数を挿入し、両側の面に沿って、カミソリで中空糸をカットして測定用サンプルを調整する。この中空糸サンプルを、たとえば、ニコン製万能投影機V−12Aで観察し、1μm単位で移動量が測定できるステージを移動させ、垂直な2軸方向で膜の外径、内径の大きさを記録する。5本〜10本の中空糸膜を測定し、平均をとって中空糸の内外径とする。
【0025】
(充填率の計算法)
充填率の計算は、容器内壁、仕切板、芯管表面および接着部で囲まれるろ過室体積(Vr)と中空糸膜外径と有効長、各ろ過室での糸本数で計算される中空糸外径基準体積(Vh)の比率であり、Vh/Vr×100(%)で求められる。
【0026】
(透水性能の測定法)
純水の透水性能の評価は、RO装置を用いて調整された、濁度0.005度以下の純水を室温で膜モジュールに供給圧約100kPaで供給し、30分間流す。30分後に水温、供給圧、ろ過流量を測定し、25℃、単位面積当たり、0.1MPaでのろ過流速(L/m/hr/100kPa)に換算する。温度補正は、純水の各温度における粘度の比で換算する。
使用時の透水性能の測定は、同様に水温、供給圧、ろ過流量から、25℃、単位面積当たり、100kPaでのろ過流速に換算する。
【0027】
(破断強度の測定法)
膜の強伸度は、テンシロン万能試験機を用い、中空糸膜1本を10cmの長さに切断したサンプルの破断点の強度(g)と伸び率(伸度)(%)を測定する。
中空糸膜10本を測定し、各強度と伸度の平均をとって膜の破断強度とする。ただし、チャック部で糸切れした場合はデータを除外し、チャック部以外で糸切れしたデータを用いる。
【0028】
(実施例1)
内径110mm、長さ1,000mmのポリ塩化ビニル製円筒容器に、外径38mmで4枚の仕切板(厚さ6mm)をもつ芯管を挿入し、4つのろ過室を持つモジュール容器を組み立てた。内径400μm、外径640μm、純水透水性能300L/m/hr/100kPa、分画分子量50万のポリエーテルスルホン製中空糸膜3,000本の糸束を4本作製して、ろ過モジュール円筒容器の4つのろ過室に各々挿入し、エポキシ樹脂を用いて端部の接着を行った。接着の際、封止端となる接着部にスリット形成用のプラスチック製の型を各ろ過室に1つずつセットして接着し、樹脂の硬化後にこのプラスチック製の型を取り除きスリット部を形成した。開口端側は樹脂硬化後に中空糸膜が開口するように一部を切削し、膜ろ過モジュールとした。芯管部は接着の際プラグを挿入し、接着樹脂が入らないように接着した。得られたろ過モジュールの中空糸膜有効長は920mmであり、各ろ過室での中空糸充填率は58vol%であった。
このように形成された膜モジュール容器にキャップを取り付けて膜ろ過モジュールを構成した。このモジュールの純水ろ過速度は100kPaで4.5m/hrであった。
【0029】
このように構成された膜ろ過モジュールを使い、濁度2〜10度の湖沼水を圧力70kPaで供給し、1時間に1回、逆ろ過洗浄10秒、逆流洗浄10秒、空気洗浄30秒で洗浄を実施し、8時間に1回逆ろ過水に濃度5ppmになるよう次亜塩素酸ナトリウムを添加する間欠塩素洗浄を実施した。この運転を3ヶ月間連続的に実施し、ろ過流量、ろ過水濁度を測定した。初期ろ過速度は2m/hrであり、3ヶ月後のろ過速度は1.8m/hrと安定したろ過性能をし、3ヶ月でのろ過性能保持率は90%であった。ろ過水濁度は初期が0.001度、3ヶ月後が0.001度と変化がなく、リークの発生も見られなかった。
【0030】
(比較例1)
実施例1と同じ円筒容器に仕切り板のない芯管を用いて、同じ膜の同じ糸本数で膜モジュールを構成した。このモジュールの純水ろ過速度は100kPaで4.6m/hrであった。
このモジュールを実施例1と同じ原水を用いてろ過通水テストを行い、実施例1と同様のパターンで洗浄を行った。このモジュールの初期ろ過速度は2m/hrであり、3ヶ月後のろ過速度は1.2m/hrとろ過速度の低下を認めた。この3ヶ月でのろ過性能保持率は60%であった。一方、ろ過水の濁度は、3ヶ月後も0.001度と初期値との差はみられず、リークはなかった。
【0031】
(比較例2)
内径92mm、長さ1000mmのポリ塩化ビニル製円筒容器に、実施例1と同一の中空糸膜を同一本数用いて、同一膜面積で中空糸充填率が同じ、芯管と仕切板のない従来タイプのモジュールを構成した。また、封止端の接着部にはスリットを形成せず、容器のサイドポートから原水の供給と洗浄排水をできるようにした。このモジュールの純水ろ過速度は100kPaで4.2m/hrであった。
このモジュールを用いて、実施例1と同じ原水を使い、同一の洗浄パターンでろ過通水テストを実施したところ、1ヶ月で糸切れリークが発生し、テストを中断した。糸切れ部分は、モジュールの排出ポート付近であり、洗浄水排水時に水の流れ出、中空糸膜が切断されたものと推定された。
【0032】
(比較例3)
実施例1と同じ容器で芯管を使わず、仕切板のみを4枚有するモジュール構造を構成し、実施例1と同じ中空糸膜で3200本の糸束を4本つかった膜モジュールを作製した。このモジュールでは芯管を使って行う逆流洗浄と空気洗浄を、サイドポート使って実施し、仕切板にはこの洗浄水と空気が流れるよう、穴を開けたものを用いた。また、封止端側の接着部には各ろ過室に対応した実施例1と同様のスリットを作製した。このモジュールの中空糸充填率は62vol%であり、純水ろ過速度は100kPaで4.9m/hrであった。
このモジュールを実施例1と同じ原水を用いてろ過通水テストを行い、実施例1と同様のパターンで洗浄を行った。このモジュールの初期ろ過速度は2.2m/hrであり、3ヶ月後のろ過速度は1.4m/hrとろ過速度の低下を認めた。3ヶ月でのろ過速度保持率は64%であった。ろ過水の濁度は、3ヶ月後も0.000度と初期値との差はみられず、リークはなかった。
【0033】
(実施例2)
内径92mm、長さ2,000mmのポリ塩化ビニル製円筒容器に、外径38mmで4枚の仕切板(厚さ6mm)をもつ芯管を使って、4つのろ過室を持つモジュール容器を組み立てた。実施例1と同一の中空糸膜を用いて、1900本の糸束を4本作製し、実施例1と同様の膜モジュールを構成した。この膜モジュールの純水ろ過速度は100kPaで3.1m/hrであった。
このモジュールを実施例1と同じ原水を用いてろ過通水テストを行い、実施例1と同様のパターンで洗浄を行った。このモジュールの初期ろ過速度は1.6m/hrであり、3ヶ月後のろ過速度は1.4m/hrと軽度のろ過速度の低下を認めた。3ヶ月でのろ過速度保持率は88%であった。ろ過水の濁度は、3ヶ月後には0.010度と中空糸膜の一部に軽微なリークを認めた。
【0034】
【表1】
Figure 2004344851
【0035】
【発明の効果】
ここまで述べてきたように、膜モジュール内に仕切板をつけた芯管を取り付けることにより、膜表面に蓄積した懸濁物質等の固体成分を3種類の定期的な洗浄操作で効率よく排除することがでる。さらに封止端側にスリットを設けることで、ろ過時の原水供給や逆洗水の排水に伴う流れの向きを整流化することができ、糸にかかる力を抑えることで、糸リークの発生もなく長期にわたって安定した膜ろ過性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の中空糸膜モジュールの一例で、容器1に芯管2とそれに取り付けられた4つの仕切板2を持ち、封止端側の接着部にスリット10を有するものの構成図を示す。
【図2】本発明の膜モジュールの一例であり、モジュール断面の簡単な構成図である。
【図3】本発明の膜モジュールの一例であり、封止側接着部断面の簡単な構成図である。
【図4】従来技術の膜モジュールの一例であり、両端開口で、サイドポートを有する膜モジュールの簡単な構成図である。
【図5】従来技術の膜モジュールの一例であり、モジュール断面の簡単な構成図である。
【符号の説明】
1:膜モジュール容器
2:芯管
3:中空糸膜
4:接着樹脂
5:膜モジュールキャップ
6:パッキン
7:クランプバンド
8:モジュール開口端面
9:モジュール封止端面
10:スリット
11:仕切板
a:原水供給口
b:透過水出口
c:洗浄水供給口

Claims (10)

  1. 中空糸を複数本束ね、容器内に挿入し、その両端を接着剤により封止し、この接着剤の片側の一部を切削して中空糸端部を開口させ、中空糸外側に処理原水を供給して中空糸内部にろ過し、開口端より処理水を取り出す外圧式全量ろ過型の膜ろ過モジュールであって、該容器の中央部に容器両端もしくは片端の封止部を貫通して、中空糸と平行に配置された芯管を有し、かつ芯管に取り付けられた仕切り板により中空糸束が少なくとも2つ以上に分割されたことを特徴とする膜ろ過モジュール。
  2. モジュール封止端側の接着部の中空糸束外側に排出用の少なくとも一つのスリットを設けたことを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜ろ過モジュール。
  3. 芯管と仕切板と容器内壁によって構成されるろ過室区画において、中空糸の体積とろ過室の体積比である充填率が30vol%以上、60vol%以下である請求項1または2記載の膜ろ過モジュール。
  4. モジュール封止端側に設けられたスリットが、仕切板で区切られる各々の領域に少なくとも一つ以上有り、容器の円周に沿った分割同心円形状で、その開口部面積が容器断面積に対して10〜30%である請求項1乃至3いずれか記載の膜ろ過モジュール。
  5. 該中空糸膜内径の内径が200〜600μm、外径が300〜1000μmである請求項1乃至4いずれか記載の膜ろ過モジュール。
  6. 該中空糸膜の透水性能が50〜1000L/m/hr/100kPaである請求項1乃至5いずれか記載の膜ろ過モジュール。
  7. 該中空糸膜がモジュール内で平行に配置されている請求項1乃至6いずれか記載の膜ろ過モジュール。
  8. 該中空糸がポリエーテルスルホンまたはセルローストリアセテートである請求項1乃至7いずれか記載の膜ろ過モジュール。
  9. 該膜ろ過モジュールの中空糸膜有効長Lと容器内径Dの比率(L/D)が2〜20である請求項1乃至8いずれか記載の膜ろ過モジュール。
  10. 該ろ過モジュールの100kPaにおける純水のろ過速度が0.5〜30m/hrである請求項1乃至9いずれか記載の膜ろ過モジュール。
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