JP2010275338A - クロロプレンゴム組成物、及びそれを用いた接着剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 接着物性と層分離安定性に優れた溶剤型接着剤を作成可能なクロロプレンゴム組成物及びこれを用いた接着剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
クロロプレンゴム100質量部に対して、特定のスルホン酸化合物を0.005〜10質量部含有するクロロプレンゴム組成物である。スルホン酸化合物は、クロロプレンを重合させる前や重合途中で重合液中に添加したり、クロロプレンを重合して得られたポリクロロプレンラテックス中に添加してもよい。スルホン酸化合物は、濃度5〜60%の水溶液として添加することが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、クロロプレンゴム組成物、及びそれを用いた接着剤に関するものである。
クロロプレンゴムは、耐熱性、耐候性、耐オゾン性、耐薬品性、難燃性等に優れることから様々な用途に用いられている。溶剤型接着剤もその代表例の一つであり、被着体適応性の広さや接着特性のバランスの良さから種々の用途で使用されている。
近年、溶剤型接着剤に使用される溶剤は非芳香族溶剤への転換が望まれている。しかしながら、この転換に伴って、溶剤型接着剤を貯蔵している際に有機溶剤に溶解する成分と不溶な成分に分離するいわゆる層分離が発生しやすくなってしまった。
溶剤型接着剤の層分離を改良する手段としては、クロロプレンを重合させる際に特定のエチレン性不飽和スルホン酸やその塩を特定の範囲で共重合させる技術が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
特開2007−177198
本発明は、接着物性と層分離安定性に優れた溶剤型接着剤を作成可能なクロロプレンゴム組成物及びこれを用いた接着剤を提供することを課題とする。
クロロプレンを重合させる際に、その重合前、重合途中、重合終了後の何れかの段階で、特定のスルホン酸化合物を添加して得られたクロロプレンゴム組成物により、上述課題を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、クロロプレンゴム100質量部に対して、一般式(化1)〜(化3)式で表されるスルホン酸化合物のうち少なくとも1種類を0.005〜10質量部含有するクロロプレンゴム組成物である。
Figure 2010275338
(ここでXはアルキル基、Yはナトリウム、カリウムを表す。)
Figure 2010275338
(ここでXは水素、水酸基、アミノ基、Yはナトリウム、カリウムを表す。)
Figure 2010275338
(ここでYはナトリウム、カリウムを表す。)
接着物性と層分離安定性に優れた溶剤型接着剤を作成可能なクロロプレンゴム組成物及びこれを用いた接着剤が得られる。
クロロプレンゴムは、クロロプレン単独、またはクロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体を乳化/分散剤の存在下で乳化重合して得られる乳濁液(ラテックス)を、凍結凝固後乾燥して得られる合成ゴムである。クロロプレンとは、2−クロロ−1,3−ブタジエンである。クロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸又はそのエステル類、メタクリル酸又はそのエステル類、硫黄等が例示される。また、これらの単量体を必要に応じて2種類以上併用することもできる。
これらの中でも、重合中のラテックスの安定性や得られたクロロプレンゴムの安定性を向上する場合は、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン等の炭化水素系、若しくはハロゲン化炭化水素系の単量体を用いることが好ましい。
乳化/分散剤は、特に限定されるものではなく、通常のクロロプレンの乳化重合に使用されているアニオン型、ノニオン型、カチオン型など各種のものが使用できる。アニオン型の乳化剤としては、カルボン酸型、硫酸エステル型等があり、例えば、ロジン酸塩、炭素数が8〜20個のアルキルスルホネート、アルキルアリールサルフェート、ナフタリンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
ロジン酸塩としては、ウッドロジン酸、ガムロジン酸、トール油ロジン酸、またはこれらを不均化した不均化ロジン酸などの塩類が使用可能である。乳化安定性や取り扱いやすさを考慮するとナトリウム塩またはカリウム塩の使用が好ましい。ロジン酸塩の添加量は、用いる全単量体100質量部に対し、ロジン酸として0.5〜10質量部が好ましく、2〜6質量部がより好ましい。ロジン酸塩の添加量をこの範囲に設定することによって、乳化重合を安定して行うことができ、かつ、その制御が容易になる。また、得られたクロロプレンゴム組成物を溶剤型接着剤とした場合に、その耐水強度が低下することがない。
乳化重合を行う際の重合温度は特に限定するものではないが、好ましくは0〜55℃である。重合温度をこの範囲に設定することによって、反応液中の水が凝固することなく、また、クロロプレンが揮発することもない。
また、重合温度を、30〜55℃、好ましくは35〜50℃の範囲に設定することによって、得られるクロロプレンゴム組成物の結晶化速度を更に遅くすることができ、接着剤皮膜の風合いの柔らかさを向上させることができる。
クロロプレンゴムの分子量は、連鎖移動剤の添加量によって調節できる。つまり、連鎖移動剤の添加量を増やすとクロロプレンゴムの分子量を小さくすることができ、添加量を減らすと分子量を大きくすることができる。用いる連鎖移動剤は特に限定されるものではなく、クロロプレンの重合に一般的に用いられる連鎖移動剤が使用可能である。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタンやt−ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類、ヨードホルム等が例示できる。
クロロプレンゴムの分子量は、特に限定するものではないが、クロロプレンゴム組成物を接着剤として用いる場合には、23℃での10%トルエン溶液粘度が、50〜30,000mPa・sとなる範囲に調整するとよい。さらに、接着剤がスプレー用である場合は、50〜500mPa・sがより好ましく、100〜300mPa・sが更に好ましい。刷毛塗り用やロールコーティング用の場合は、300〜30,000mPa・sがより好ましく、500〜5,000が更に好ましい。
単量体の最終重合率は、特に限定するものではないが、生産性と接着物性の観点から、全単量体に対し50〜90%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは55〜85%であり、更に好ましくは60〜80%である。
乳化重合を終了させるためには、定法に従い重合禁止剤を添加すればよい。重合禁止剤としては、クロロプレンゴムの製造に一般的に用いられるものであれば特に制限は無く、例えば、フェノチアジン、ジエチルヒドロキシルアミン、ハイドロキノン、t−ブチルカテコール、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ハイドロキノンメチルエーテル等が使用できる。
これらのうち、非水溶性のものを使用する場合は、クロロプレンや有機溶剤に溶解後、界面活性剤を共存させて水性乳濁液として用いればよい。
一般式(化4)〜(化6)式で表されるスルホン酸化合物は、得られるクロロプレンゴム組成物を溶剤型接着剤とした際に、その層分離安定性を向上させるために添加するものである。
これらの化合物は、クロロプレンの重合前または重合途中、あるいは重合を終了させて得られたポリクロロプレンラテックスに添加する。
Figure 2010275338
(ここでXはアルキル基、Yはナトリウム、カリウムを表す。)
Figure 2010275338
(ここでXは水素、水酸基、アミノ基、Yはナトリウム、カリウムを表す。)
Figure 2010275338
(ここでYはナトリウム、カリウムを表す。)
これらのスルホン酸化合物としては、例えば、トルエンスルホン酸アルカリ金属塩、ナフタレンスルホン酸アルカリ金属塩、7‐アミノ‐1‐ナフタレンスルホン酸アルカリ金属塩、4‐ヒドロキシ‐1‐ナフタレンスルホン酸アルカリ金属塩、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレートスルホン酸アルカリ金属塩などがある。
スルホン酸化合物の添加量は、特に限定するものではないが、好ましくは0.05〜10質量部であり、より好ましくは0.1〜5質量部、更に好ましくは0.2〜2質量部である。スルホン酸化合物の添加量をこの範囲にすることによって、乳化液の安定性が低下することなく、本発明の目的を十分に達成できる。
重合終了後のポリクロロプレンラテックスに添加する場合には、水溶液濃度は、5〜60%、より好ましくは10〜50%に調整して添加するとよい。
クロロプレンゴム組成物を用いて溶剤型接着剤を調製する場合は、一般的なクロロプレンゴム接着剤と同様に調製すればよい。特に限定するものではないが、クロロプレンゴム組成物をオープンロールなどの混練機を用いて素練りし、金属酸化物等の薬品の混合を行ういわゆる「混練法」、混練機を用いることなく、クロロプレンゴム組成物と配合薬品を直接有機溶剤に溶解するいわゆる「直溶法」の何れの方法でもよい。
溶剤型接着剤を調製する際には、粘着付与樹脂を添加することが好ましい。この際に用いる粘着付与樹脂としては、特に限定するものではなく、溶剤型接着剤に一般的に使用される何れの粘着付与樹脂も使用可能である。具体的には、アルキルフェノール樹脂、ロジン樹脂、ロジンエステル、重合ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、ポリテルペン樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5留分系石油樹脂、C9留分系石油樹脂、C5/C9留分系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂などが例示される。
接着物性の観点からは、特にアルキルフェノール樹脂の使用が好ましい。
粘着付与樹脂の配合量は、特に限定するものではないが、クロロプレンゴム100質量部に対し、10〜100質量部が好ましく、20〜80質量部がより好ましい。更に好ましくは、30〜70質量部である。
また、溶剤型接着剤には、クロロプレンゴムが経年劣化する際に発生する塩酸を捕捉する目的や、アルキルフェノール樹脂とキレート化反応を起こさせる目的で金属酸化物を配合することも好ましい。
金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム等が例示されるが、これらに限定するものではない。一般的には酸化マグネシウムと酸化亜鉛を併用することが多い。
金属酸化物の配合量も、特に限定されるものではないが、クロロプレンゴム100質量部に対して0.5〜15質量部が好ましく、2〜10質量部がより好ましい。
クロロプレンゴム接着剤には、上述した以外にも、要求性能に合わせて、充填剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、塩素化ゴム、塩素化ポリエチレン、着色剤、硬化剤等を任意に添加することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明の効果を詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。なお、以下の説明においてとくに断りのない限り、部、及び%は質量基準で表す。
表1中で添加した化合物は次のスルホン酸化合物である。
A:トルエンスルホン酸ナトリウム
B:ナフタレンスルホン酸ナトリウム
C:7−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム
D:4−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム
E:ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレートスルホン酸ナトリウム(商品名アントックスMS‐60:日本乳化剤製)
[実施例1]
[クロロプレンゴム組成物の製造]
内容積5リットルの反応機を用いて、窒素雰囲気下、純水120部に不均化ロジン酸(ハリマ化成社製)4部、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドの縮合物のナトリウム塩(商品名デモールN:花王製)0.5部、水酸化カリウム0.4部、水酸化ナトリウム0.4部、トルエンスルホン酸ナトリウム1.0部を溶解した。この溶液中にクロロプレン100部、ドデシルメルカプタン0.1部を加え乳化した後、過硫酸カリウムを開始剤として用い、窒素雰囲気下で40℃で乳化重合を行った。クロロプレンの重合率が70%に達したところでフェノチアジン乳濁液を加え重合を停止させた。次いで、減圧下で加熱し、未反応のクロロプレンを回収した。得られたポリクロロプレンラテックスを希酢酸によりpH7に調整後、定法の凍結凝固法によりシートとし、これを乾燥させてクロロプレンゴム組成物を得た。
[接着剤の調整]
アルキルフェノール樹脂(タマノル526:荒川化学社製)50部と酸化マグネシウム(キョウワマグ#150:協和化学社製)3部をシクロヘキサン100部に加え、一晩室温でキレート化反応させた。その後、クロロプレンゴム100部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(ノクラック200:大内新興化学社製)1部、酸化マグネシウム3部、酸化亜鉛1部、シクロヘキサン180部、n−ヘキサン75部、アセトン120部、酢酸イソプロピル55部を加え、混合攪拌した。クロロプレンゴムが完全に溶解するまで混合攪拌し、接着剤とした。
[接着剤の粘度測定]
接着剤を作成後、ブルックフィールド型粘度計を用いて25℃における粘度を測定した。
[接着剤の耐層分離性試験]
接着剤をガラス製容器に入れ、遮光下、60℃の恒温水槽中に貯蔵した。4週間にわたり接着剤の外観観察を実施した。4週間後に接着剤が層分離していなかったものを○、層分離していたものを×で示した。
[接着試験]
接着強度試験は、被着体として帆布を用い、JIS K 6854−3:1999に規定された方法に準じて行った。得られた接着剤を、帆布に約300g/mの塗布量となるように3回に分けて刷毛にて塗布し、最終塗布から30分放置した後、帆布の接着剤塗布面同士を張り合わせて圧着した。張り合わせたサンプルを23℃で7日間養生した後、200×25mmのサイズに裁断し、23℃雰囲気下で200mm/分の速度でT型剥離試験を行った。
[実施例2〜10]
実施例1におけるスルホン酸化合物の種類と添加タイミングを、表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様に試験を実施し、実施例2〜10とした。なお、表2及び表3に記載したDCBdとは、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンである。
[実施例11〜20]
実施例1において反応に用いた単量体を、クロロプレン97質量部と1,3−ジクロロブタジエンに変更し、添加したスルホン酸化合物の種類と添加タイミングを表2に示す通りに変更した以外は実施例1と同様に試験を実施し、実施例11〜20とした。
[比較例1]
実施例1においてスルホン酸化合物を未添加に変更した以外は実施例1と同様に試験を実施し、比較例1とした。
[比較例2]
実施例1において反応に用いた単量体を、クロロプレン97質量部と1,3−ジクロロブタジエンに変更し、スルホン酸化合物を添加しなかった以外は実施例1と同様に試験を実施し、比較例2とした。
本発明によって得られるクロロプレンゴム組成物は、木工・建材、製靴、自動車用途等、種々の分野で使用される接着剤の原料として好適に用いることができる。
Figure 2010275338
Figure 2010275338
Figure 2010275338

Claims (9)

  1. クロロプレンゴム100質量部に対して、下記一般式(化1)〜(化3)式で表されるスルホン酸化合物のうち少なくとも1種類を0.005〜10質量部含有させたクロロプレンゴム組成物。
    Figure 2010275338
    (ここでXはアルキル基、Yはナトリウム、カリウムを表す。)
    Figure 2010275338
    (ここでXは水素、水酸基、アミノ基、Yはナトリウム、カリウムを表す。)
    Figure 2010275338
    (ここでYはナトリウム、カリウムを表す。)
  2. クロロプレン100質量部に対して、スルホン酸化合物を0.05〜10質量部を添加して重合して得られる請求項1記載のクロロプレンゴム組成物。
  3. クロロプレンの重合率が10%に達した時点から重合終了までの間に、重合当初に存在したクロロプレン100質量部に対してスルホン酸化合物を0.05〜10質量部添加して重合して得られる請求項1記載のクロロプレンゴム組成物。
  4. クロロプレンの重合終了後に、得られたクロロプレンゴム100質量部に対してスルホン酸化合物を0.05〜10質量部添加して得られる請求項1記載のクロロプレンゴム組成物。
  5. スルホン酸化合物を、濃度5〜60%の水溶液として添加することを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載のクロロプレンゴム組成物。
  6. スルホン酸化合物の少なくとも一種が、一般式(化1)で表され、かつXが炭素数1〜3のアルキル基であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のクロロプレンゴム組成物。
  7. スルホン酸化合物が、トルエンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、7‐アミノ‐1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、4‐ヒドロキシ‐1‐ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレートスルホン酸ナトリウムから選ばれた少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のクロロプレンゴム組成物。
  8. スルホン酸化合物が、トルエンスルホン酸カリウム、ナフタレンスルホン酸カリウム、7‐アミノ‐1‐ナフタレンスルホン酸カリウム、4‐ヒドロキシ‐1‐ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレートスルホン酸カリウムから選ばれた少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のクロロプレンゴム組成物。
  9. 請求項1〜8の何れか一項に記載のクロロプレンゴム組成物を主成分とする溶剤型接着剤。
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