JP5949237B2 - クロロプレンラテックス及びその製造方法 - Google Patents

クロロプレンラテックス及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、クロロプレンラテックス及びその製造方法に関するものであり、より詳しくは、接着物性が良好であり、特に、高温雰囲気下での接着強度(耐熱接着強度)が良好であるクロロプレンラテックス及びその製造方法に関するものである。なお、本発明における高温雰囲気下とは、80℃を指す。
接着剤には、初期接着強度、耐熱接着強度、耐水接着強度等の接着強度が要求される。特に、工場等のラインでは高温に加熱して被着体を柔らかくして曲面に貼り合わせることも多く、貼り合せの直後に剥がれないよう高温における初期耐熱強度が要求される。クロロプレンゴム等をベースとした溶剤系接着剤は、その良好な作業性や接着物性から各種用途に用いられてきた。しかし、使用される有機溶剤は地球環境や作業者の健康に悪影響を与え、時には作業場の火災等を引き起こす危険性を有している。そのため、脱溶剤の要求が高まっている。
脱溶剤化の手法の一つとして、ラテックス系接着剤による代替が考えられている。
クロロプレンラテックスとしては各種のものが知られている(例えば、特許文献1〜特許文献4)。
しかし、特許文献1,2に示されるように、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子を用いた場合、その保護コロイド性から優れたラテックスの安定性を示す一方で、期待される接着物性が得られず、特に耐水接着強度が低くなる。一方、特許文献3,4に示されるように、ロジン酸の金属塩からなる乳化剤を用いた場合、耐水接着強度の問題はないが、耐熱接着強度は不十分であった。
特開平6−287360号公報 特開平11−335491号公報 特公昭51−39262号公報 特開昭51−136733号公報
本発明はこの問題点に鑑みてなされたものであり、従来のクロロプレンラテックスよりも良好な耐熱接着強度を示すクロロプレンラテックス及びその製造方法を提供するものである。
本発明者らは、このような背景の下、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ラテックスに含まれるクロロプレン重合体またはクロロプレン共重合体として、120℃にて変位1度、周波数100CPMの振動を15分間与えた後に120℃にて変位1度、周波数10CPMにて測定される弾性トルクが6.5dNm以上10dNm以下であるものを45%以上含み、他にアニオン系乳化剤を含有することを特徴とするクロロプレンラテックスを用いることで、良好な耐熱接着強度を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、120℃にて変位1度、周波数100CPMの振動を15分間与えた後に120℃にて変位1度、周波数10CPMにて測定される弾性トルクが6.5〜10dNmであるクロロプレン重合体またはクロロプレン共重合体を45重量%以上含有し、他にアニオン系乳化剤を含有することを特徴とするクロロプレンラテックス、及びその製造方法である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のクロロプレンラテックスは、120℃にて変位1度、周波数100CPMの振動を15分間与えた後に120℃にて変位1度、周波数10CPMにて測定される弾性トルクが6.5〜10dNmであるクロロプレン重合体またはクロロプレン共重合体を45重量%以上含有するものである。弾性トルクが6.5dNm未満または10dNmを超えると耐熱接着強度が劣る。当該クロロプレン重合体またはクロロプレン共重合体が45重量%未満でも、耐熱接着強度が劣る。
本発明のクロロプレンラテックスとは、2−クロロ−1,3−ブタジエンであるクロロプレン単量体を重合して得られたラテックス、または、クロロプレン単量体とこれと共重合可能な単量体とを共重合して得られたラテックスである。クロロプレン単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、シトラコン酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸等があげられるが、これらを、例えば、クロロプレン単量体100重量部に対し、20重量部以下で用いる。
本発明のクロロプレンラテックスは、アニオン系乳化剤を含有するものである。ここに、アニオン系乳化剤としては、例えば、ロジン酸のアルカリ金属塩、脂肪酸のアルカリ金属塩、アルケニルコハク酸のアルカリ金属塩、ポリカルボン酸のアルカリ金属塩の高分子化合物などのカルボン酸塩を含む乳化剤、アルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩などのスルホン酸を含む乳化剤、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩などの硫酸エステル塩を含む乳化剤等があげられる。これらのうち、より良好な安定性と接着物性を得るため、ロジン酸のアルカリ金属塩が好ましい。
本発明のクロロプレンラテックスは、クロロプレン単量体100重量部またはクロロプレン単量体とこれと共重合可能な単量体と、所定の量の連鎖移動剤とアニオン系乳化剤を乳化重合することにより製造することができる。例えば、クロロプレン単量体100重量部またはクロロプレン単量体とこれと共重合可能な単量体の合計100重量部に対し、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン0.015〜0.045重量部を用い、さらにアニオン系乳化剤を用いて重合転化率80〜95%まで乳化重合する等があげられる。
乳化重合は、上記の単量体、及び乳化剤を、重合開始剤、連鎖移動剤等と共に乳化し、所定温度にて行い、所定の転化率で重合停止剤を添加すれば良い。必要に応じてクロロプレンと共重合可能な他の単量体を更に1種類以上含んでも良く、また、重合中に各単量体を追加しても良い。
重合開始剤としては、公知のフリーラジカル性物質、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、過酸化水素、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド等の無機又は有機過酸化物等を用いることができる。また、これらは単独又は還元性物質、例えば、チオ硫酸塩、チオ亜硫酸塩、ハイドロサルファイト、有機アミン等との併用レドックス系で用いても良い。
連鎖移動剤としては、例えば、アルキルメルカプタン、ハロゲン炭化水素、アルキルキサントゲンジスルフィド、硫黄等の分子量調節剤等があげられるが、これらのうち、臭気及び作業性の面からn−ドデシルメルカプタンが好ましい。通常これらは重合する単量体と共に混合し反応を行うが、反応中に単独で追加しても良い。使用量は特に限定するものではないが、乳化剤にロジン酸のアルカリ金属塩を用いる場合は通常これらを単量体100重量部に対して0.015〜0.045重量部使用し、重合転化率80〜95%まで重合を実施することで、120℃にて変位1度、周波数100CPMの振動を15分間与えた後に120℃にて変位1度、周波数10CPMにて測定される弾性トルクが6.5〜10dNmであるクロロプレン重合体を得ることができる。
アニオン系乳化剤としては、前に記載したものと同じである。
重合温度は特に限定するものではないが、好ましくは10〜30℃の範囲である。
重合終了時期は特に限定するものでないが、生産性、及び良好な接着物性を得るため、単量体の転化率が80〜95%が好ましく、85〜90%がより好ましい。
重合停止剤としては、通常用いられる停止剤であれば特に限定するものでなく、例えば、フェノチアジン、2,6−t−ブチル−4−メチルフェノール、ヒドロキシルアミン等が使用できる。
また、ラテックスの安定性を更に良好にするため、重合中、及び重合終了後に上記の乳化剤のうち1種類以上を添加しても良い。
また、本発明のクロロプレンラテックスは、クロロプレンラテックス単独でも良いが、複数のクロロプレンラテックスを混合し、120℃にて変位1度、周波数100CPMの振動を15分間与えた後に120℃にて変位1度、周波数10CPMにて測定される弾性トルクが6.5〜10dNmとなるように調整を実施しても良い。
本発明のクロロプレンラテックスは、単独でも接着剤として使用可能であるが、粘着付与樹脂や架橋剤等を添加したクロロプレンラテックス組成物とすることで接着物性が向上する。
粘着付与樹脂としては特に限定するものではなく、例えば、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、石油系炭化水素等があげられ、例えば、重合ロジン、ロジン変性樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル、アルキルフェノール樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール、水添ロジン、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、石油樹脂、クマロン樹脂等が使用される。
架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、ポリアジリジン化合物、ポリオキサゾリン化合物等、クロロプレンラテックスに均一に混合できる多官能性化合物であれば何ら制限はなく使用できる。
本発明のクロロプレンラテックスを主成分とする接着剤の粘度は、各種増粘剤、例えば、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール、疎水化セルロース、会合型ノニオン界面活性剤等の水溶性ポリマー、及びカルボキシル基含有ポリマーから構成されるアルカリ可溶型の増粘剤、ヘクトライト等のシリケート化合物等の配合により所望の粘度に調整できる。
本発明のクロロプレンラテックス組成物には、その他必要に応じて、例えば、増粘剤、老化防止剤、防腐剤、凍結防止剤、造膜助剤、可塑剤、クレー、pH調節剤等の添加剤を含有したものでも良い。
本発明のクロロプレンラテックスは、従来のクロロプレンラテックスでは発現できなかった良好な耐熱接着強度を示す接着剤を提供することができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
ラテックスに含まれるクロロプレン重合体またはクロロプレン共重合体の粘弾性、接着剤組成物の耐熱接着強度は以下の方法・条件で測定した。
<粘弾性測定(弾性トルクの測定)>
ラテックスをドライアイス/メタノール冷媒にて凍結後真空乾燥してクロロプレン重合体またはクロロプレン共重合体を取り出し、粘弾性測定装置(ALPHA TECHNOLOGIES製 RUBBER PROCESS ANALYZER RPA2000)により粘弾性測定(弾性トルクの測定)を行った。弾性トルクの測定は、クロロプレン重合体またはクロロプレン共重合体に、120℃にて変位1度、周波数100CPMの振動を15分間与えた後に120℃にて変位1度、周波数10CPMにて実施した。
<耐熱接着強度:高温剥離強度>
9号帆布2枚(約150mm×60mm)それぞれの片面に刷毛で接着剤組成物を250g/m塗布した後に80℃で5分乾燥し、ハンドローラーを用いて圧着した。150mm×25mmのサイズに切り出したものを測定用の試験片とした。高温剥離強度の測定は試験片を貼り合わせ直後に80℃の雰囲気下にて5分間状態調整を実施した後に、テンシロン型引っ張り試験機を用いて80℃の雰囲気下にて100mm/minの剥離速度で180°方向の引っ張りにて行った。
<耐熱接着強度:高温接着保持強度>
高温接着保持強度の測定は、高温剥離強度と同様に試験片を作製し、80℃の雰囲気下にて5分間状態調整を実施し、500gの錘をぶら下げ、30分後に剥離した長さ(mm)を測定した。
実施例1
表1で示した割合のクロロプレン単量体、n−ドデシルメルカプタン、ロジン酸カリウム(商品名:ロンヂスK−25、荒川化学工業(株))、ナフタレンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物(商品名:デモールN、花王(株))、ハイドロサルファイトナトリウム、及び純水を攪拌機付き10Lオートクレーブ中15℃で重合を行った。重合は窒素雰囲気下で0.35重量%の過硫酸カリウム水溶液を連続的に滴下して行い、重合転化率が90%となった時点で重合停止剤として2,6−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール0.05重量部を添加し重合を停止した。その後、減圧下で未反応単量体の除去及び濃縮によりラテックスの固形分を50%に調整し、ラテックスAを得た。
Figure 0005949237
ラテックスA中のクロロプレン重合体の粘弾性測定の結果、弾性トルクは9.5dNmであった。
また、ラテックス100重量部に対し、表2に示す樹脂エマルジョン、金属酸化物、増粘剤を配合して接着剤組成物を作製し、耐熱接着強度を測定した。結果を表3に示す。表3の結果より、耐熱接着強度は良好な値であった。
Figure 0005949237
Figure 0005949237
実施例2
使用する単量体をクロロプレン単量体および2,3−ジクロロブタジエン単量体に変更し、n−ドデシルメルカプタン量を変更した以外は、実施例1と同様にしてラテックスBおよび接着剤組成物を得て、弾性トルクおよび耐熱接着強度の測定を行った。結果を表3に示す。表3の結果より、耐熱接着強度は良好な値であった。
実施例3
使用するn−ドデシルメルカプタン量を表1で示した量に変更した以外は実施例1と同様にしてラテックスCおよび接着剤組成物を得て、弾性トルクおよび耐熱接着強度の測定を行った。結果を表3に示す。表3の結果より、耐熱接着強度は良好な値であった。
実施例4
n−ドデシルメルカプタン量と重合温度を表1で示した値に変更した以外は実施例1と同様にしてラテックスDおよび接着剤組成物を得て、弾性トルクおよび耐熱接着強度の測定を行った。結果を表3に示す。表3の結果より、耐熱接着強度は良好な値であった。
実施例5
使用するn−ドデシルメルカプタン量を表1で示した量に変更し、停止する重合転化率を83%とした以外は実施例4と同様にしてラテックスEおよび接着剤組成物を得て、弾性トルクおよび耐熱接着強度の測定を行った。結果を表3に示す。表3の結果より、耐熱接着強度は良好な値であった。
実施例6
使用するn−ドデシルメルカプタン量を表1で示した量に変更し、停止する重合転化率を94%とした以外は実施例4と同様にしてラテックスFおよび接着剤組成物を得て、弾性トルクおよび耐熱接着強度の測定を行った。結果を表3に示す。表3の結果より、耐熱接着強度は良好な値であった。
実施例7
n−ドデシルメルカプタン量を表1で示した値に変更した以外は実施例4と同様にして、ラテックスGおよびHを得て、それらを6:4の比率でブレンドしたラテックスおよび接着剤組成物を得て、弾性トルクおよび耐熱接着強度の測定を行った。結果を表3に示す。表3の結果より、耐熱接着強度は良好な値であった。
比較例1
ラテックスG単独および接着剤組成物について、弾性トルクおよび耐熱接着強度の測定を行った。結果を表4に示す。弾性トルクは10.4dNmであり、高温接着保持強度は良好であったが、高温剥離強度が低かった。
Figure 0005949237
比較例2
ラテックスH単独および接着剤組成物について、弾性トルクおよび耐熱接着強度の測定を行った。結果を表4に示す。耐熱接着強度の高温接着保持強度、高温剥離強度共に低かった。
比較例3
n−ドデシルメルカプタン量を表1で示した値に変更した以外は実施例4と同様にしてラテックスaおよび接着剤組成物を得て、弾性トルクおよび耐熱接着強度の測定を行った。結果を表4に示す。弾性トルクは6.3dNmであり、耐熱接着強度の高温接着保持強度、高温剥離強度共に不十分であった。
比較例4
n−ドデシルメルカプタン量を表1で示した値に変更した以外は実施例4と同様にしてラテックスbおよび接着剤組成物を得て、弾性トルクおよび耐熱接着強度の測定を行った。結果を表4に示す。弾性トルクは6.4dNmであり、耐熱接着強度の高温接着保持強度、高温剥離強度共に不十分であった。
比較例5
n−ドデシルメルカプタン量を表1で示した値に変更し、ラテックスの固形分を43%に変更した以外は実施例4と同様にしてラテックスcおよび接着剤組成物を得て、弾性トルクおよび耐熱接着強度の測定を行った。結果を表4に示す。弾性トルクは8.3dNmであったが、耐熱接着強度の高温接着保持強度、高温剥離強度共に低かった。
本発明のクロロプレンラテックスは、接着剤の用途に使用され、ゴム製品分野で広範に使用される。

Claims (4)

  1. 120℃にて変位1度、周波数100CPMの振動を15分間与えた後に120℃にて変位1度、周波数10CPMにて測定される弾性トルクが6.5〜10dNmであり、クロロプレン単量体100重量部またはクロロプレン単量体とこれと共重合可能な単量体との合計100重量部に対し、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン0.015〜0.045重量部を含み、重合転化率が80〜90%であるクロロプレン重合体またはクロロプレン共重合体を45重量%以上含有し、他にアニオン系乳化剤を含有することを特徴とするクロロプレンラテックス。
  2. アニオン系乳化剤が、ロジン酸のアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1に記載のクロロプレンラテックス。
  3. クロロプレン単量体100重量部またはクロロプレン単量体とこれと共重合可能な単量体との合計100重量部に対し、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン0.015〜0.045重量部を用い、さらにアニオン系乳化剤を用いて重合転化率80〜95%まで乳化重合することを特徴とする請求項1〜請求項2のいずれかの項に記載のクロロプレンラテックスの製造方法。
  4. 請求項1〜請求項2のいずれかの項に記載のクロロプレンラテックスを含有することを特徴とする接着剤組成物。
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