JP2010270514A5 - - Google Patents

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コンクリート表面補修構造
本発明は、損傷が発生したコンクリート構造物に対する恒久的なコンクリートの剥落防止対策工がなされる迄に適用される簡易かつ応急的なコンクリート表面の補修構造に関するものである。
既設の鉄筋コンクリート製の構造物(以下「コンクリート構造物」という。)は、その建設環境に応じて海水や、大気や、凍結防止剤などの様々な塩分を含む媒質に曝されている。このような塩分がコンクリート表面から深部(内部)へ浸透すると、コンクリート構造物の鉄筋を腐食させてしまい、表層部分にあるコンクリート(かぶりコンクリート)の浮きや剥離などの損傷がコンクリート構造物に発生してしまう。また、同様な損傷は、コンクリート構造物の中性化によっても発生する。このため、このような浮き又は剥離等の損傷が発生したコンクリート構造物に対しては、かかる損傷部分を含めた欠陥部を修復するための恒久的な補修工法が必要となる。
例えば、恒久的な剥落防止対策工法には、塩分等を含んで劣化したコンクリート部が除去され、その除去部分に対して断面修復工が実施された上で、その断面修復箇所の表面にプライマーを塗布し乾燥させてプライマー層が形成され、そのプライマー層の上に接着剤が塗布されて下塗接着層が形成された後、直ちに未硬化の下塗接着層の上に繊維シートが積層貼付され、その後、直ちに接着剤が塗布されて上塗接着層が形成され、その下塗接着層及び上塗接着層の硬化後にフッ素樹脂塗料など塗装剤が塗布されて仕上げ層が形成されるものがある。
特開2001−355343
前田工繊株式会社メンテナンス営業部、「マンスリーマエダ 2006年7月号」、[online]、2006年7月、前田工繊株式会社、p.2、[平成21年4月1日検索]、インターネット(URL:http://www.maedakosen.jp/monthly/pdf/mdk0607.pdf)
しかしながら、上記した恒久的な剥落防止対策工法では、コンクリート構造物の劣化コンクリート部を除去して断面修復工を行う必要があることから、その施工コストが嵩むことに加え、工期が比較的長期間となり、更に、その断面修復箇所の表面にプライマー層、下塗接着層、繊維シート、上塗接着層及び、仕上げ層を順次形成する必要があることから、更に、その施工作業が繁雑になり易いという問題点があった。
しかも、上記した恒久的な剥落防止対策工法は、コンクリートの剥落防止する繊維シートを敷設するにあたって断面修復工を事前に行うため、その分、工事規模が大きくなることもあってか、工事計画の策定にも長期間を要している。このため、コンクリート構造物に損傷箇所が発見されても、即座に工事計画を策定して損傷箇所を発見後短期間で補修することができないため、そのような損傷箇所を数年程度放置する恐れもあり、ひいては、損傷箇所の拡大や剥落したコンクリート片の地上への落下を招いてしまうという問題点があった。
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、断面修復工法による剥落防止対策工を用いずとも所定の補修耐用期間中において、コンクリート構造物のコンクリート表面から剥落したコンクリート片が地上へ落下することを防止でき、低コストかつ短期で施工が可能である簡易的かつ応急的なコンクリート表面の補修構造を提供することを目的としている。
この目的を達成するために請求項1のコンクリート表面補修構造は、コンクリート表面における重度の損傷の発生箇所である重損傷部及びコンクリート表面における補修耐用期間内に重損傷部化の予測される重損傷予測範囲に対する簡易的かつ応急的な補修を行うための補修構造であって、コンクリート表面における重損傷部及び重損傷予測範囲の双方を含んだ補修範囲に敷設され、多数の網目を有した可撓性のある網状体に形成され、補修範囲に敷設された状態でコンクリート表面を透視可能である防護シートと、その防護シートの一部分を重損傷部及び重損傷予測範囲よりも外側にあるコンクリート表面に接着する接着剤で形成され、その防護シートの一部分をコンクリート表面に固定する接着固定部材と、その接着固定部材から重損傷部側に離間した位置に設けられ、前記防護シートの一部分を重損傷部の周囲にあるコンクリート表面に接着する接着剤とこの接着剤によりコンクリート表面に接着される前記防護シートの一部分とが一体化した複合体で形成され、その複合体により重損傷部の周囲を局所的に補強する局部補強部材とを備えている。
請求項2のコンクリート表面補修構造は、請求項1のコンクリート表面補修構造において、前記防護シートに代えて、コンクリート表面における重損傷部及び重損傷予測範囲の双方を含んだ補修範囲に敷設され、多数の孔が穿設された可撓性を有するシート状に形成される防護シートを備えている。
請求項3のコンクリート表面補修構造は、請求項1又は2のコンクリート表面補修構造において、前記局部補強部材は、コンクリート表面の重損傷部から損傷が拡大することが予測される損傷進展方向の延長線上に交差して設けられるものである。
請求項4のコンクリート表面補修構造は、請求項1から3のいずれかのコンクリート表面補修構造において、前記局所補強部材は、コンクリート表面の重損傷部の全周に帯状に周設されるものである。
請求項5のコンクリート表面補修構造は、請求項1から4のいずれかのコンクリート表面補修構造において、前記接着固定部材は、前記防護シートの周縁部に帯状に形成されるものである。
請求項6のコンクリート表面補修構造は、請求項1から5のいずれかのコンクリート表面補修構造において、前記接着固定部材に代えて、前記防護シートの一部分を重損傷部及び重損傷予測範囲よりも外側にあるコンクリート表面に固定するため、そのコンクリート表面との間に防護シートを挟み込む押止板と、その押止板をコンクリート表面に固定する固定具とを有している固定保持手段を備えており、前記局部補強部材は、その固定保持手段から重損傷部側に離間した位置に設けられているものである。
本発明のコンクリート表面補修構造によれば、コンクリートの剥離や浮きなど重度の損傷がコンクリート表面に発生した場合、そのコンクリート表面における重度の損傷の発生箇所である重損傷部と、そのコンクリート表面における補修耐用期間内に重損傷部となることが予測される範囲である重損傷予測範囲とに対して、簡易的かつ応急的な補修が行われる。
この補修構造によれば、その補修範囲がコンクリート表面における重損傷部と重損傷予測範囲との双方を含んだ範囲に設定され、この補修範囲に対して防護シートが敷設される。つまり、防護シートは、既に重度の損傷が発生している重損傷部に被せられるとともに、この補修構造による補修の耐用期間内に重損傷部となることが予測される重損傷予測範囲に対しても被せられる。
そして、この防護シートは、接着固定部材によって補修範囲となるコンクリート表面に部分的に接着固定されるので、補修構造による施工後に補修範囲からコンクリート片が剥落することがあれば、その剥落したコンクリート片を受け止めて、このコンクリート片が地上へ落下することを防止できる。
しかも、接着固定部材は、防護シートの一部分をコンクリート表面に接着剤で接着するものであるが、この接着剤の塗布量や塗布面積等を調整することにより接着強度を変更でき、この接着固定部材による防護シートの保持力を自在に調整できる。よって、補修範囲内に大量のコンクリート片の剥落が予測される箇所が存在する場合でも、そのコンクリート片の重量に耐え得る十分な保持力を、接着剤の塗布量や塗布面積等を調整することで容易に確保することができる。
また、コンクリート表面の重損傷部の周囲は、局部補強部材によって局部的に補強されるので、例えば、コンクリート表面のひび割れ等が重損傷部から外側に向けて拡大進展するようなことがあったとしても、このような拡大進展が局部補強部材により阻止されるため、ひび割れが局部補強部材を越えて更に外側へ拡大進展することが防止される。
さらに、局部補強部材は、防護シートの一部分とそれをコンクリート表面に接着する接着剤とが一体化した複合体で形成されるので、接着剤のみを用いて補強する場合に比べて、より強固な補強を施すことができる。
しかも、接着固定部材及び局部補強部材にはいずれも接着剤が用いられるが、かかる接着剤は、防護シートの一部分をコンクリート表面に接着するものであり、防護シート全体をコンクリート表面の補修範囲全体に接着するものではなく、結果、防護シート全体を補修範囲全体に接着する場合に比べて、接着剤の使用量が最小限に抑制される。
なお、防護シートの素材として、ハサミなどの裁断工具を用いて裁断可能なものを用いれば、施工現場となるコンクリート構造物のコンクリート表面の重損傷部の形状や大きさに合わせて、防護シートの形状や寸法を裁断により調整することもできる。
請求項1のコンクリート表面補修構造によれば、特に、防護シートは、多数の網目を有する網状体で形成されており、コンクリート表面の補修範囲に敷設された状態で、そのコンクリート表面を当該防護シート越しに透視可能であるので、コンクリート表面に接着剤を塗布してその上から防護シートを敷設する際に、防護シート越しに接着固定部材の配設箇所と局部補強部材の配設箇所とを正確に把握でき、かつ、接着剤の塗布量の過不足も防護シート越しに判断することができる。
したがって、防護シートの敷設後に、接着固定部材の配設箇所や局部補強部材の配設箇所において接着剤の塗布不足がみられる場合には、その接着剤の不足箇所に対して、防護シート越しに網目を通じて接着剤を増し塗りすることもできる。しかも、防護シートの敷設後も防護シート越しにコンクリート表面を透視可能であることから、補修後においても補修範囲の損傷の進行状況を経過観察することができる。
また、防護シートは、多数の網目を有する網状体であるので、その多数の網目を通じて接着剤を通過させて、接着剤の塗布層内に防護シートの網糸(網線)が包み込まれた状態で埋入される。このため、防護シートは、単純に接着剤と面的に接着されるのではなく、接着剤により抱持されるのと同様の格好でコンクリート表面に接着される。
よって、接着固定部材においては、防護シートの一部分を接着剤でコンクリート表面に接着固定するだけでも、剥落したコンクリート片の重量を受け支えるだけの十分な保持力(支持力)が発揮される。また、局部補強部材においては、接着剤の塗布層の中に防護シートの網糸が文字通り網目状に埋設された複合体が形成されるので、この複合体によって重損傷部からの損傷の拡大に伴って膨張圧(内部応力)に対して十分な耐荷力が発揮される。
請求項2のコンクリート表面補修構造によれば、特に、防護シートは、多数の孔が穿設された可撓性を有するシート状に形成されており、多数の孔の開口サイズが比較的大きなものであれば、コンクリート表面の補修範囲に敷設された状態で、コンクリート表面に接着剤を塗布してその上から防護シートを敷設する際に、防護シート越しに接着固定部材の配設箇所と局部補強部材の配設箇所とを正確に把握でき、かつ、接着剤の塗布量の過不足も防護シート越しに判断することができる。
したがって、防護シートの敷設後に、接着固定部材の配設箇所や局部補強部材の配設箇所において接着剤の塗布不足がみられる場合には、その接着剤の不足箇所に対して、防護シート越しに網目を通じて接着剤を増し塗りすることもできる。しかも、防護シートが敷設後も防護シート越しにコンクリート表面を透視可能なものであれば、補修後においても補修範囲の損傷の進行状況を経過観察することができる。
また、防護シートが多数の孔の穿設された可撓性シート状に形成されるので、未硬化の接着剤は、防護シートの多数の孔を通じて、防護シートの内部へ浸透して硬化することができる。このため、防護シートは、単純に接着剤と面的に接着されるのではなく、それに含浸した接着剤と一体となってコンクリート表面に接着される。
よって、接着固定部材においては、防護シートの一部分を接着剤でコンクリート表面に接着固定するだけでも、剥落したコンクリート片の重量を受け支えるだけの十分な保持力(支持力)が発揮される。また、局部補強部材においては、接着剤の塗布層と防護シートとが一体化した複合体が形成されるので、この複合体によって重損傷部からの損傷の拡大に伴って膨張圧に対して十分な耐荷力が発揮される。
請求項3のコンクリート表面補修構造によれば、特に、コンクリート表面における重損傷部から損傷の拡大が予測される損傷進展方向の延長線上に、局部補強部材がその損傷進展方向と交差して設けられるので、例えば、補修耐用期間中において、重損傷部から進展してくる損傷が局部補強部材を越えて更に拡大進展することを阻止できる。しかも、局部補強部材は、損傷拡大が予測される損傷進展方向の延長線上に設けられるので、損傷拡大が予測されない箇所についての局部補強部材の施工を省略することもできる。
請求項4のコンクリート表面補修構造によれば、特に、局部補強部材は、コンクリート表面の重損傷部の全周に余すことなく帯状に周設されるので、コンクリート表面の損傷が重損傷部からどの方向へ拡大したとしても、この局部補強部材を越えて更に損傷が拡大することを抑制できる。
また、局部補強部材が帯状なので、その局部補強部材の一部となる接着剤を、塗布用ヘラを用いて手作業でも容易に塗布でき、コンクリート表面の広範な補修範囲全体に手作業で塗布することに比べて作業員の労力も大幅に軽減でき、又、作業員の労力を軽減するためにわざわざ機械設備を用いて塗布するような必要もない。
請求項5のコンクリート表面補修構造によれば、特に、接着固定部材が防護シートの周縁部に帯状に形成されるので、その接着固定部材の一部となる接着剤を、塗布用ヘラを用いて手作業でも容易に塗布でき、コンクリート表面の広範な補修範囲全体に手作業で塗布することに比べて作業員の労力も大幅に軽減でき又、作業員の労力を軽減するためにわざわざ機械設備を用いて塗布するような必要もない。
請求項6のコンクリート表面補修構造によれば、接着固定部材に関する事項を除けば、請求項1から5のものと同様に作用するとともに、それらと同様の効果を奏するものである。
本発明のコンクリート表面補修構造によれば、防護シートの一部分が接着固定部材又は固定保持手段により補修範囲となるコンクリート表面に固定されるので、かかる補修範囲に対して恒久的な剥落防止対策工を早急に施工せずとも、この補修構造の補修耐用期間内の一定期間であれば応急的ではあるが、重損傷部、重損傷予測箇所その他の補修範囲内の箇所から剥落したコンクリート片が地上へ落下することを防止できるという効果がある。
このため、コンクリート構造物に重損傷部が発見されたが、恒久的な剥落防止対策工事の計画を即座に策定できず、重損傷部の発見後に短期間で補修することができないような場合でも、そのような恒久的な剥落防止工事が施工される迄の期間において応急的かつ簡易な補修を行うことができ、そのような重損傷部が放置されて損傷が拡大すること及び剥落したコンクリート片が地上へ落下することを防止できるという効果がある。
また、この補修構造によれば、恒久的な剥落防止対策工事のように重損傷部に対する断面修復工を施す必要もないので、その分、補修工事に要する施工コストの低減も図ることができ、その施工工期も短期化できるという効果がある。しかも、防護シートと接着固定部材と局部補強部材による応急的かつ簡易的な補修であるため、恒久的な剥落防止工事に比べて綿密な工事計画を策定する必要がなく、現場のコンクリート表面の損傷具合に応じて迅速かつ臨機応変に施工できるという効果もある。
本発明の一実施例である剥落補修構造の施工状態を示した説明図であって、(a)は、剥落補修構造の施工された橋梁上部構造体の床版下面図であり、(b)は、(a)の部分的拡大図である。 図1(a)の剥落補修構造の縦断面図である。 図1(a)のものと同様の橋梁上部構造体の床版下面図であって、剥落補修構造の施工前の補修範囲を図示したものである。 第2実施例の剥落補修構造の施工された橋梁上部構造体の壁高欄の側面図である。 第2実施例の剥落補修構造の施工された橋梁上部構造体の張出部の下面図である。 第2実施例の剥落補修構造の施工された橋梁上部構造体の部分的な縦断面図であって、図4及び図5のVI−VI線における縦断面図である。 第3実施例の剥落補修構造の施工状態を示した説明図であり、(a)は、剥落補修構造の施工された橋梁上部構造体の張出部下面図であり、(b)は、同橋梁上部構造体の部分的な縦断面図であって、(a)のB−B線における縦断面図である。 第4実施例の剥落補修構造の施工状態を示した説明図であり、剥落補修構造の施工された橋梁上部構造体の床版下面図である。 他の実施例の剥落補修構造であって橋梁下部構造体の側面に施工されるものを説明した斜視図であり、(a)は、斜面下端に垂直面上端が連設された折曲面状のコンクリート面を補修範囲としたものであり、(b)は、円弧状のコンクリート面を補修範囲としたものである。
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。
剥落補修構造は、コンクリート構造物のコンクリート表面における重損傷部及び重損傷予測範囲に対し、所定の補修耐用期間中における応急的かつ簡易的な補修を行うのに適した構造であり、コンクリート表面から剥落したコンクリート片が地上に落下するのを防止するためのものである。
ここで、所定の補修耐用期間とは、剥落補修構造の耐用年数を意味しており、本実施形態では、概ね5年〜10年程度の期間を想定している。
また、この剥落補修構造による補修対象となるコンクリート構造物は、その内部に鉄筋が埋設されたコンクリート製の構造物であり、鉄筋からコンクリート表面まで所定厚さの表層コンクリート(「かぶり(コンクリート)」ともいう。)によって被覆されているものである。
以下の実施例では、本発明の剥離補修構造の実施形態に関し、コンクリート構造物である鉄筋コンクリート橋などの橋梁上部構造体の部分、特に、床版下面、床版側面、張出部下面、地覆部側面、壁高欄側面などのコンクリート表面に補修範囲がある場合について説明するものとする。
図1は、本発明の一実施例である剥落補修構造10の施工状態を示した説明図であって、図1(a)は、剥落補修構造10の施工された橋梁上部構造体50の床版下面図であり、図1(b)は、図1(a)の部分的拡大図である。なお、図1(a)中の矢印は、重損傷部から損傷の拡大が予測される損傷進展方向のうち特に顕著なものを示している。
また、図2は、図1(a)の剥落補修構造10の縦断面図であり、図3は、図1(a)のものと同様の橋梁上部構造体50の床版下面図であって、剥落補修構造10の施工前の補修範囲Raを図示したものである。
図1及び図2に示すように、剥落補修構造10は、橋梁上部構造体50の床版下面のコンクリート表面51に施工されており、主として、コンクリート表面51における重損傷部52及び重損傷予測範囲53を含んだ補修範囲Raに敷設される防護シート11と、その防護シート11をコンクリート表面51に接着し固定する接着固定部材12と、その接着固定部材12とは別個に防護シート11に設けられ重損傷部52の周囲を局部的に補強する局部補強部材13とを備えている。
なお、本来であれば、防護シート11には、その全体に繊維糸及び網目が存在するのであるところ(図4参照。)、図1(a)では、便宜上、防護シート11の一部について繊維糸及び網目を図示し、残りの部分についての繊維糸及び網目を図示を省略している。
図3に示すように、補修範囲Raとは、コンクリート表面51上に設定される剥落補修構造10による補修が必要な範囲(以下「補修必要範囲」という。)Ra1に対し、ある程度の余裕範囲Ra2を加えた範囲をいう。
この補修必要範囲Ra1は、コンクリート表面51における重損傷部52と重損傷予測範囲53とを含めた範囲であり、過去に発生した剥落や浮き等に関する資料及びデータに基づき、剥落や浮き等の発生経過、並びに、補修対象となる橋梁上部構造体50の表層コンクリート50aの厚さなどの現地状況を総合的に勘案して推定される。
重損傷部52は、例えば、橋梁上部構造体50のコンクリート表面51に生じた重度の損傷箇所であって、特に、表層コンクリート50aが鉄筋50bから分離(剥離)した状態にある損傷箇所をいう。例えば、重損傷部52には、鉄筋腐食などの原因により表層コンクリート50aが鉄筋50bから分離した状態となった表層コンクリート50aの剥落、浮き、ひび割れが生じた箇所が含まれる。
なお、重損傷部52には、表層コンクリート50aがコンクリート表面51から自然に剥落した箇所ばかりでなく、表層コンクリート50aが既に鉄筋50bから完全剥離した状態にあったコンクリート表面51を打撃することによりコンクリート片を剥落させたような箇所も含まれる。
このような重損傷部52における損傷は、塩害等に起因する鉄筋腐食によるものであり、かかる鉄筋腐食は、表層コンクリート50aの厚みが小さい程、また、塩分が供給され易い環境下である程、急速に進行するものである。また、表層コンクリート50aの剥落や浮きが既に発生している重損傷部52の隣接部は、近い将来において、同じく剥落等が発生して重損傷部52となることが考えられる。
重損傷予測範囲53は、剥落補修構造10の施工時点においては重損傷部52とはなっていないが、補修耐用期間内に重損傷部52へと変化することが予測されるコンクリート表面51の範囲であり、重損傷部52の隣接部を含めて補修耐用期間において何らかの応急処置が必要となる範囲をいう。なお、重損傷予測範囲53は、添付図面中の2点鎖線で囲まれた範囲内である(以下同じ。)。
図1及び図2に示すように、防護シート11は、重損傷部52及び重損傷予測範囲53を含んだ補修範囲Raとなるコンクリート表面51に敷設されて、その補修範囲Ra内にあるコンクリート表面51から剥落したコンクリート片を受け止めて地上へ落下することを防止するためのものである。このため、防護シート11は、少なくとも重損傷部52及び重損傷予測範囲53を含めた補修範囲Raに覆設(敷設)可能な面積を有している。
防護シート11は、コンクリート表面51から剥落する厚み50mm〜100mm程度のコンクリート片の重量を安全に支持可能な耐荷強度(耐荷力)があり、施工後から補修耐用期間の経過時まで耐候性を有し、特に、剥落補修構造10の施工箇所が屋外であることから補修耐用期間の経過時まで紫外線劣化に対する耐荷強度の低下が小さいものである。例えば、防護シート11には、施工時の引張強度が40kN/m以上のものが用いられる。
防護シート11には、例えば、ポリエステル、アクリル、ナイロン、アラミド、ビニロンその他の合成樹脂製の維繊又は炭素繊維でシート状に形成された可撓性を有する連続繊維シートが用いられる。連続繊維シートは、上記した合成樹脂繊維又は炭素繊維を束ねた糸(以下「繊維糸」という。)11aで可撓性を有する網状体に編成されたものであり、例えば、綟子網、ラッセル網、無結節網、蛙又網若しくは本目網その他のネット状の網目を有する網状体、又は、織網その他のメッシュ状の網目を有する網状体である。
なお、以下の説明では、防護シート11として網状体の連続繊維シートを用いて説明するが、かかる防護シート11の形態は必ずしも網状体に限定されるものではなく、例えば、多数の孔を有する可撓性シート状のものであって、多数の孔を通じて未硬化の接着剤が含浸又は浸透可能なものであっても良い。
防護シート11に使用される連続繊維シートは、その繊維糸11aが被覆材により被覆されることで、かかる繊維糸11aの各繊維が相互に固着されて一体化されたものであり、この被覆によって、防護シート11の敷設時に繊維糸11aがばらけてしまい取り扱い難くなることが防止され、繊維糸11aの個々の繊維がコンクリート表面51で擦れて切断されて耐摩耗性や耐荷強度が低下することが防止されている。そして、被覆材には、塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂などの各種の樹脂製のコーティング材料が用いられる。
特に、防護シート11に使用される連続繊維シートとしては、5年間の大気曝露による引張強度の低下が30%程度であることが耐候性試験により確認されており、かつ、接着剤による接着性にも優れていることから、ポリエステル製の繊維糸11aを塩化ビニルの被覆材で被覆した網状体のものが適している。
また、防護シート11は、コンクリート表面51から剥落したコンクリート片の抜落ちを防止可能であり、かつ、コンクリート表面51の補修範囲Raに敷設された状態でも、その防護シート11越しにコンクリート表面51の劣化進行を目視可能な透視性を有するものである。このため、防護シート11に使用される連続繊維シートとしては、網目サイズが縦横10mm×10mm程度の網状体のものが適している(図1(b)参照。)。
このように防護シート11は、多数の網目11bを有する網状体であるが故に、この防護シート11とコンクリート表面51との間に雨水等が浸入した場合にでも、かかる雨水等を各網目11bを通じて滴下させて排出させることもできる。
接着固定部材12は、防護シート11をコンクリート表面51に固定して保持するためのものである。この接着固定部材12は、重損傷部52及び重損傷予測範囲53よりも外側(図1(a)の紙面外縁側、図2の左右両側)にあるコンクリート表面51に対して、防護シート11の一部分を接着する接着剤で形成されている。
具体的には、接着固定部材12は、防護シート11の周縁部のうち一対の対向する縁辺に沿って一定の塗布幅(例えば、50mm程度の幅)で帯状に連続形成されている。なお、接着固定部材12を、防護シート11の周縁部の全周に一定の塗布幅で帯状に連続形成するようにしても良い(図4及び図5参照。)。
この接着固定部材12は、防護シート11の周縁部に塗布される接着剤と、この接着剤によりコンクリート表面51に対して接着される防護シート11の周縁部とが一体化した複合体となっている。そして、接着固定部材12は、図2に示すように、接着剤の塗布層(以下「接着層」という。)12aの厚みが防護シート11の厚み以上となっており、かかる接着層12a内に防護シート11の埋設された状態となっている。具体的には、接着固定部材12の接着剤は、その塗布量が約2.5kg/m2とされている。
局部補強部材13は、重損傷部52の周囲を局部的に補強するためのものである。この局部補強部材13は、上記した接着固定部材12よりも重損傷部52側(図1(a)及び図2の中央側)に離間した位置に、接着固定部材12とは別個に設けられている。この局部補強部材13は、重損傷部52の周囲にあるコンクリート表面51に設けられており、具体的には、重損傷部52の全周を余すことなく包囲するように一定の塗布幅(例えば、50mm程度の幅)で帯状に連続的に周設されている。
また、局部補強部材13は、コンクリート表面51の重損傷部52から損傷が拡大することが予測される損傷進展方向(図1(a)中の矢印)と交差するように設けられている。このため、重損傷部52から剥落が損傷進展方向へ拡大する場合に、その損傷の進展が局部補強部材13によって食い止められ、この局部補強部材13の外側に損傷が拡大することが抑制される。
しかも、仮に損傷が重損傷部52から局部補強部材13の内側にあるコンクリート面51へ拡大進展してコンクリート片が剥離したり剥落するような場合、このようなコンクリート片は、防護シート11における局部補強部材13の内側に敷設される部分によって受け止められることとなるが、そのとき防護シート11は、重損傷部52の周囲に隣接した局部補強部材13(接着層13a)によりコンクリート面51に接着されて耐荷強度が補強されるので、単に、重損傷部52から離れた箇所で接着固定部材12により接着固定する場合に比べて、剥落したコンクリート片をより強固に受け支えることができる。
また、局部補強部材13は、その内周縁と重損傷部52の外周縁との間に所定の間隔Lが設けられており、この間隔Lは表層コンクリート50aの厚さ(かぶり)以上の長さとされている。重損傷部52の外周縁から間隔L以内の箇所は、既に表層コンクリート50aと鉄筋50bとが分離している危険性が高く、そのような箇所に局部補強部材13を設けても重損傷部52の拡大進展を十分に抑制できない恐れがあるからである。
この局部補強部材13は、防護シート11の一部分と、この防護シート11の一部分を重損傷部52の周囲にあるコンクリート表面51に対して接着する接着剤とが一体化した複合体で形成されており、その複合体によって重損傷部52の周囲を局所的に補強している。この局部補強部材13に使用される接着剤は、上記した接着固定部材12のものと同種のものが用いられている。
そして、局部補強部材13は、図2に示すように、接着層13aが防護シート11の表面(コンクリート表面51との反対向面)まで覆う厚さに形成されており、この接着層13a内に防護シート11が埋設された状態となっている。具体的には、局部補強部材13の接着剤は、その塗布量が約2.5kg/m2とされている。
これらの接着固定部材12及び局部補強部材13は、防護シート11が多数の網目11bを有する網状体であることから、その多数の網目11bを通じて接着剤が防護シート11を通過して、接着層12a,13a内に防護シート11の繊維糸11a(網糸又は網線ともいう。)を包み込んだ状態で埋入させて構成されるのである(図2参照。)。
よって、接着固定部材12によれば、防護シート11が単純に接着剤と面的に接着されるのではなく、防護シート11を接着剤の硬化物たる接着層12a,13aにより抱持したが如き形態をもって強固に保持することができる。また、局部補強部材13は、接着剤の粘着強度によりコンクリート表面51を局部的に補強するのではなく、防護シート11が接着剤の硬化物である接着層12a,13a内部に包摂された複合体となって強固にコンクリート表面51を補強できるのである。
ここで、これら接着固定部材12及び局部補強部材13に用いられる接着剤には、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤その他の不陸修正材兼用型の含浸性接着剤が用いられる。そして、この接着剤については、補修耐用期間中に1.5N/mm2以上の接着強度(付着強度)を維持可能なものが適している。
例えば、本願出願人による試験の結果、エポキシ樹脂系及びアクリル樹脂系の接着剤であれば、塗布量が約2.4kg/m2で、塗布幅が50mm程度で塗布されることによって、約2.5〜3.3N/mm2程度の接着強度が得られることが確認されており、接着固定部材12及び局部補強部材13に使用される接着剤として適しているといえる。
また、この接着剤には、これの塗布箇所の視認性を高めるためにコンクリート表面51や防護シート11とは異なる色の顔料が混合される。この顔料により、コンクリート表面51上に塗布された接着剤の視認性が高められるので、剥落補修構造10の施工時に当該接着剤の塗布箇所を見失うことがなく、防護シート11の敷設後も防護シート11越しに当該接着層12a,13aの存在位置を容易に確認することができる。
また、この接着剤は、コンクリート表面51と防護シート11とを接着可能な性質を有し、その接着強度が防護シート11の破断強度を超えるものであり、補修範囲Raとなる橋梁上部構造体50の側壁面や下面への塗布後にそこから垂れ落ちないような高粘性を有しており、更に、施工後から補修耐用期間の経過時まで持続する耐候性を有しているものである。
しかも、この接着剤は、コンクリートへの含浸性を有するので、例えば、表層コンクリート50aに潜在する亀裂を接着することもでき、接着固定部材12および局部補強部材13の一部である接着剤が表層コンクリート50a内部に含浸して硬化することで、これらの接着固定部材12および局部補強部材13と橋梁上部構造体50との接着強度がより一層高められる。
次に、上記のように構成された剥落補修構造10の施工(製造)方法について説明する。まず、橋梁上部構造体50のコンクリート表面51に重損傷部52が発見されると、図3に示すように、その重損傷部52を含めた補修必要範囲Ra1が推定されて、この補修必要範囲Ra1に余裕範囲Ra2を加えた範囲が補修範囲Raとして、コンクリート表面51上に設定される。そして、補修範囲Ra内にあるコンクリート表面51に対して下地処理が施される。
この下地処理では、まず、補修範囲Ra内に存在する重損傷部52のうち剥落や浮きが目視又は打音検査により確認された箇所に対し、ハンマーなどの打撃具により叩き落とすことが可能な範囲で、表層コンクリート50aが叩き落とされて強制的に除去される。また、表層コンクリート50aが既に部分的に自然剥落している重損傷部52についても、そこに辛うじて残存しているような表層コンクリート50aが叩き落とされて強制的に除去される。
そして、表層コンクリート50aが自然剥落し又は強制除去された重損傷部52の凹陥面52aに対し、ダイヤモンドディスクサンダー等の工具を用いてケレンが行われることによって、コンクリート及び鉄筋50bの脆弱部、並び、レイタンス層が除去され、更に、重損傷部52の凹陥面52aに付着したケレン粉がエアーガンや送風機により吹き飛ばされて除去される。
そして、このようにして処理された重損傷部52の凹陥面52aには、そのコンクリート部分の表面に対して含浸性接着剤が塗布されて表面被覆層14が形成されるとともに、その鉄筋50bの露出部分の表面に対して防錆剤が塗布される。すると、接着剤が重損傷部52のコンクリート部分へ含浸することで、例えば、重損傷部52に顕在又は潜在するひび割れ等やコンクリートの分離箇所が接着される。
さすれば、かかる損傷の拡大が抑制される上、重損傷部52にコンクリートの新たな剥落、浮き又はひび割れが発生することも抑制されるからである。なお、鉄筋50bの露出部分にも、防錆剤を塗布した上から含浸性接着剤を塗布して表面被覆層14を形成するようにしても良い。
なお、表面被覆層14は、必ずしも重損傷部52に設ける必要はなく、例えば、重損傷部52の損傷状態を判断した結果不要であれば設けずとも良い。また、表面被覆層14に用いられる含浸性接着剤は、上記した接着層12a,13aに使用される接着剤とは異なるものである。
また、重損傷部52のうち剥落や浮きが確認されなかったもの、例えば、ひび割れ箇所などについては、そのひび割れを含めたコンクリート表面51に対して含浸性接着剤が塗布されて表面被覆層14が形成されることによってひび割れの拡大進展が抑制される。以上の下地処理の後、防護シート11の敷設処理が行われる。
防護シート11の敷設処理では、接着固定部材12の配設箇所および局部補強部材13の配設箇所となるコンクリート表面51に対し、塗布用ヘラを用いて接着剤が所定量塗布された後、図1及び図2に示すように、防護シート11が、その接着層12a,13aの上から補修範囲Ra全体を覆うように敷設される。防護シート11の敷設後、かかる防護シート11をコンクリート表面51に対して押さえ付け、防護シート11における接着層12a,13aと重なった部分を、その接着層12a,13aの内部へと埋入させる。
この防護シート11の埋入後は、その防護シート11が接着層12a,13a内に完全に埋設されるように、防護シート11の網目11bから出てきた接着剤を均して、接着層12a,13aの厚みを均一にするとともに、接着剤の塗布量が不足している箇所には、防護シート11の上から更に接着剤が追加して塗布される。
ここで、防護シート11の敷設処理の作業条件は、コンクリート表面51の水分率が8%以下、外気温が5℃以上、かつ、湿度が85%以下であることが好ましく、更に、接着剤の硬化中に降雨等がないことが好ましい。このため、接着剤を硬化させるための養生期間中に降雨時の雨水や強風が予測される場合は、補修範囲Ra全体をビニールシート等により被覆して養生させる必要がある。
次に、図4から図9を参照して、上記実施例の変形例について説明する。
図4から図6は、第2実施例の剥落補修構造20の施工状態を示した説明図であり、図4は、剥落補修構造20の施工された橋梁上部構造体50の壁高欄の側面図であり、図5は、同橋梁上部構造体50の張出部の下面図であり、図6は、同橋梁上部構造体50の部分的な縦断面図であって図4及び図5のVI−VI線における縦断面図である。
なお、図5では、図1の場合と同じ趣旨から、防護シート11の繊維糸及び網目を一部のみ図示し残る部分を省略しており、図5中の矢印は、重損傷部から損傷の拡大が予測される損傷進展方向のうち特に顕著なものを示している。
図4から図6に示すように、第2実施例の剥落補修構造20は、上記した第1実施例の剥落補修構造10に対し、補修範囲Raを変更し、防護シート11の一部に添加物55を避けるための切欠部21を追加し、接着固定部材12および局部補強部材13の配設形態を変更したものである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
図4に示すように、第2実施例の剥落補修構造20は、橋梁上部構造体50の壁高欄側面51aからコーナー部51bを経て張出部下面51cまでに跨ったコンクリート表面51を補修範囲Raとするものであり、その補修範囲Raの一部となる壁高欄側面51aの上部には、道路橋(コンクリート構造物)に付設される落下物防止柵用の支柱等が添加物55として複数付設されている。
このため、剥落補修構造20の防護シート11には、その防護シート11の一部に各添加物55を除けるための凹字状の切欠部21が複数凹設されている。この各切欠部21は、防護シート11の一部をハサミなどの裁断工具を用いて裁断切除することで形成されており、コンクリート構造物の添加物55の大きさや位置に合わせて、現場において容易かつ迅速に加工される。
図4から図6に示すように、この剥落補修構造20により補修される重損傷部52は、橋梁上部構造体50の張出部下面51cにおけるコーナー部51b近傍に発生しており、かかる重損傷部52を起点とした損傷の拡大は、特に、橋梁上部構造体50の延設方向(図4及び図5の左右方向、図6紙面に対する垂直方向)へ進展する可能性が高いものと推測される。また、重損傷予測範囲53についても橋梁上部構造体50の延設方向に存在することが予測される。よって、補修範囲Raは、橋梁上部構造体50の延設方向に横長の範囲に設定される。
防護シート11は、この横長の補修範囲Ra全体に敷設可能な横方向(図4及び図5の左右方向)に長い横長矩形状に形成されており、その長手方向が橋梁上部構造体50の延設方向(図4及び図5の左右方向、図6の紙面に対する垂直方向)に向けられている。
接着固定部材12は、防護シート11の周縁部の全周に連続した帯状に周設される主固定部121と、防護シート11の縦方向一端から他端まで帯状に連続形成され防護シート11の横方向両側の縁辺と略平行に防護シート11の横方向に所定のピッチ間隔で複数形成される副固定部122とを備えている。とはいえ、接着固定部材12は、防護シート11の一部分のみをコンクリート表面51に接着するものであることには変わりがない。
この接着固定部材12は、防護シート11をコンクリート表面51に接着固定するための耐荷強度から言えば、主固定部121による接着固定のみで十分ではあるが、かかる主固定部121に加えて複数の副固定部122を介して防護シート11をコンクリート表面51に接着固定することで、例えば、主固定部121による接着箇所にコンクリート劣化や接着欠陥が生じた場合でも、副固定部122を介して防護シート11をコンクリート表面51に支持できるようになっている。
図5に示すように、橋梁上部構造体50の重損傷部52は、その張出部下面51cのコンクリート表面51に発生しており、この重損傷部52の周囲に局部補強部材13が形成されている。この局部補強部材13は、第1実施例の局部補強部材13が重損傷部52の全周に周設されたのに対し、張出部下面51cにおける重損傷部52の周囲のうちコーナー部51b側には設けられておらず、このコーナー部51b側を開放したコ字状の平面形態をもって重損傷部52を囲うようにコンクリート表面51に形成されている。
これは、上記した張出部下面51cのコーナー部51b近傍に生じた重損傷部52から損傷が拡大する場合、特に、損傷がコーナー部51b側へ拡大進展する可能性は、損傷が橋梁上部構造体50の延設方向(図4及び図5の左右方向、図6紙面に対する垂直方向)へ拡大進展する可能性に比べて極めて低いことから、張出部下面51cのコーナー部51b側における局部補強部材13を省略したものである。
また、防護シート11は可撓性を有するので、図6に示すように、張出部下面51cのコーナー部51b近傍に重損傷部52が存在するような場合でも、そのコーナー部51bの形状に適合するように屈曲させることができ、かかるコーナー部51bに跨るように壁高欄側面51aと張出部下面51cとに沿って敷設させることができる。
図7は、第3実施例の剥落補修構造30の施工状態を示した説明図であり、図7(a)は、剥落補修構造30の施工された橋梁上部構造体50の張出部下面図であり、図7(b)は、同橋梁上部構造体50の部分的な縦断面図であって図7(a)のB−B線における縦断面図である。なお、図7(a)では、図1の場合と同じ趣旨から、防護シート11の繊維糸及び網目を一部のみ図示し残る部分を省略している。
図7に示すように、第3実施例の剥落補修構造30は、上記した第2実施例の剥落補修構造20に対し、橋梁上部構造体50の張出部下面51cの形状を変更し、それに併せて接着固定部材12の配設形態を変更したものである。以下、第1及び第2実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
第3実施例の剥落補修構造30によれば、その補修範囲Raの一部に橋梁上部構造体50の張出部下面51cに存在する凹凸部51c1が含まれている。このような凹凸部51c1は、接着固定部材12に用いられる接着剤の塗布が困難であり、その凹凸部51c1のコンクリート表面に沿って防護シート11を敷設することも困難であることから、接着固定部材12によって防護シート11をコンクリート表面に接着固定し辛いことが想定される。
そこで、第3実施例の剥落補修構造30では、防護シート11の可撓性を活用して、図7(b)に示すように、かかる凹凸部51c1を迂回するように防護シート11を屈曲させて張出部下面51cに防護シート11を敷設させ、かつ、かかる凹凸部51c1を避けて張出部下面51cのコンクリート表面に接着剤が塗布されることで、防護シート11を接着固定する接着固定部材12が形成されている。
このように接着固定部材12は、防護シート11の耐荷強度を確保するに十分な接着強度を発揮できれば、途中で途切れるように不連続的に帯状に形成しても良く、必ずしも連続的な帯状に形成する必要はない。かかる場合、接着剤の接着強度は、接着剤の塗布量(塗布厚)がほぼ均一であれば接着剤の塗布面積(接着面積)に比例するため、接着剤の塗布幅を増やせば不足する接着強度を補うことができる。
例えば、第4実施例の剥落補修構造40のように接着固定部材12を不連続的に設けるようにしても良い。
図8は、第4実施例の剥落補修構造40の施工状態を示した説明図であり、剥落補修構造40の施工された橋梁上部構造体50の床版下面図である。なお、図8では、図1の場合と同じ趣旨から、防護シート11の繊維糸及び網目を一部のみ図示し残る部分を省略しており、図8中の矢印は、重損傷部から損傷の拡大が予測される損傷進展方向のうち特に顕著なものを示している。
図8に示すように、第4実施例の剥落補修構造40は、上記した第1実施例の剥落補修構造10に対し、接着固定部材12の配設形態を変更したものである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
第4実施例の剥落補修構造40によれば、接着固定部材12は、防護シート11の周縁部のうち一対の対向する縁辺に沿って、一定の塗布幅を有する帯状に形成され、所定間隔おきに断続的に形成されている。この接着固定部材12は、その塗布幅が第1実施例のものに比べて大きくされるので、第1実施例のものに比べて接着面積が減少することが防止され、防護シート11の耐荷強度を維持するのに十分な接着強度が確保されている。
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施例では、防護シート11の網目11bの形状として正方形状のものを用いて説明したが、防護シートの網目形状は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、亀甲形、菱形その他の形状であっても良い。
また、上記実施例では、防護シート11に網状体のものを用いたが、かかる防護シートの形態は必ずしも網状体に限定されるものではなく、多数の孔が穿設されて可撓性を有するシート状体であっても良い。かかる多数の孔を有する防護シートによれば、その多数の孔を通じて、上記したように接着剤を通過させて防護シートを接着剤層の内部に埋設させることもでき、水分の透過性も確保できる。そのうえ、各孔のサイズが大きければ透視性も確保でき、仮に各孔のサイズが小さくても防護シート自体に透明材料を用いて透視性を付与することもできる。
また、上記実施例では、防護シート11として網目サイズが縦横10mm×10mm程度の網状体のものを例示したが、防護シートの網目サイズは必ずしもこれに限定されるものではなく、剥落したコンクリート片の地上への落下を防止できるものであれば、これより大きく又は小さくても良い。なお、網目サイズを小さくすることで防護シートの透視性が低下する場合は、防護シート自体を透明素材で形成するようにしても良い。
また、上記実施例では、防護シート11に使用される連続繊維シートとして、繊維糸を被覆材で被覆して繊維糸の各繊維が相互に固着された網状体のものを用いて説明したが、防護シートに使用される繊維網状体の連続繊維シートは、必ずしも繊維糸が被覆材により被覆されたものに限定されるものではなく、かかる被覆材による被覆(コーティング)が施されていないものであっても良い。
例えば、防護シートがコンクリート構造物(50)のコーナー部(51b)に跨って敷設される場合に当該コーナー部(51b)に防護シートが擦れてその繊維糸の繊維が切断してしまうような危険性もなく、繊維糸における個々の繊維の耐摩耗性や耐荷性に問題がなく、繊維がばらける等して極めて取り扱いものでなければ、防護シートに使用される連続繊維シートは、特に、繊維糸が被覆材により被覆されたものでなくても良い。
なお、防護シートに使用される連続繊維シートの繊維糸が被覆材による被覆未処理の場合には、防護シートの繊維糸の各繊維間に接着剤が含浸されるので、かかる含浸によって防護シートと接着剤との結合力がより強固なものとなる。
また、上記実施例では、剥落補修構造100の補修範囲Raが、コンクリート構造物である橋梁上部構造体50の部分、特に、床版下面、地覆下面、地覆側面、壁高欄側面などのコンクリート表面51であったが、かかる補修範囲Raは必ずしもこれらに限定されるものではなく、鉄筋コンクリート橋の橋梁下部構造体(橋脚、橋台を含む。)60その他のコンクリート構造物のコンクリート面であっても良い(図9参照。)。
なお、図9は、橋梁下部構造体60の側面に施工される剥落補修構造100を説明した斜視図であって、図9(a)は、斜面61a下端に垂直面61b上端が連設された折曲面状のコンクリート面61を補修範囲Raとしたものであり、図9(b)は、円弧状のコンクリート面61を補修範囲Raとしたものである。
また、上記第1実施例では、重損傷部52の全周を取り囲むように局部補強部材13がロ字形状(正方形状)に形成され、上記第2実施例では、重損傷部52の周囲一部を囲うように局部補強部材13がコ字形状に形成されたが、かかる局部補強部材13の平面形状は必ずしもこれに限定されるものではない。
例えば、重損傷部52からの損傷の拡大進展が予測される損傷進展方向の延長線に交差するように設けられるものであれば、例えば、直線状、曲線状、折れ線状、波線状その他の線状のもの、又は、重損傷部52の全周を囲う円形、楕円形、雲形、多角形その他の形状のものであっても良い。
また、上記実施例では、コンクリート面51に対する防護シート11の固定保持手段として、防護シート11を接着層12aによりコンクリート面51に接着する接着固定部材12を用いたが、かかる防護シートの固定保持手段は、必ずしも接着剤によるものに限定されるものではなく、例えば、防護シートの上に長方形状かつ平板状の押止板を敷設して、この押止板とコンクリート面との間に防護シートが挟装された状態で、この押止板をアンカーボルト等のコンクリート用固定具を用いて固定するようにしても良い。
つまり、上記実施例における接着固定部材12に代えて、その接着固定部材12の配設箇所に対応するサイズの押止板を用意して、その押止板を接着固定部材12の配設箇所であった部分に敷設することで、この押止板とコンクリート面51との間に防護シート11を挟み込み、この状態にて押止板をコンクリート用固定具によりコンクリート面51に固定するようにしても良い。
10,20,30,40,100 剥落補修構造(コンクリート表面補修構造)
11 防護シート
11b 網目
12 接着固定部材
13 局部補強部材
51 コンクリート表面
52 重損傷部
53 重損傷予測範囲
Ra 補修範囲

Claims (6)

  1. コンクリート表面における重度の損傷の発生箇所である重損傷部及びコンクリート表面における補修耐用期間内に重損傷部化の予測される重損傷予測範囲に対する簡易的かつ応急的な補修を行うためのコンクリート表面補修構造であって、
    コンクリート表面における重損傷部及び重損傷予測範囲の双方を含んだ補修範囲に敷設され、多数の網目を有した可撓性のある網状体に形成され、補修範囲に敷設された状態でコンクリート表面を透視可能である防護シートと、
    その防護シートの一部分を重損傷部及び重損傷予測範囲よりも外側にあるコンクリート表面に接着する接着剤で形成され、その防護シートの一部分をコンクリート表面に固定する接着固定部材と、
    その接着固定部材から重損傷部側に離間した位置に設けられ、前記防護シートの一部分を重損傷部の周囲にあるコンクリート表面に接着する接着剤とこの接着剤によりコンクリート表面に接着される前記防護シートの一部分とが一体化した複合体で形成され、その複合体により重損傷部の周囲を局所的に補強する局部補強部材とを備えていることを特徴とするコンクリート表面補修構造。
  2. 請求項1記載のコンクリート表面補修構造において、
    前記防護シートに代えて、コンクリート表面における重損傷部及び重損傷予測範囲の双方を含んだ補修範囲に敷設され、多数の孔が穿設された可撓性を有するシート状に形成される防護シートを備えていることを特徴とするコンクリート表面補修構造。
  3. 前記局部補強部材は、コンクリート表面の重損傷部から損傷が拡大することが予測される損傷進展方向の延長線上に交差して設けられるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート表面補修構造。
  4. 前記局所補強部材は、コンクリート表面の重損傷部の全周に帯状に周設されるものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のコンクリート表面補修構造。
  5. 前記接着固定部材は、前記防護シートの周縁部に帯状に形成されるものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のコンクリート表面補修構造。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載のコンクリート表面補修構造において、
    前記接着固定部材に代えて、前記防護シートの一部分を重損傷部及び重損傷予測範囲よりも外側にあるコンクリート表面に固定するため、そのコンクリート表面との間に防護シートを挟み込む押止板と、その押止板をコンクリート表面に固定する固定具とを有している固定保持手段を備えており、
    前記局部補強部材は、その固定保持手段から重損傷部側に離間した位置に設けられているものであることを特徴とするコンクリート表面補修構造。
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