JP2010255195A - 鋼構造物の補修方法 - Google Patents

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Yasuo Ichikawa
靖生 市川
Takeshi Yamada
岳史 山田
Yasuhiro Okamoto
安弘 岡本
Takaya Kitajima
貴哉 北島
Toshihiko Takase
敏彦 高瀬
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Abstract

【課題】鋼構造物の貫通亀裂の補修方法において、前記構造物の鋼材の両面からの施工であっても、背面は簡単な施工でほぼ前面のみの施工によって補修部の強度を発現し得る補修方法を提供し、工期の短縮を図る。
【解決手段】鋼構造物2の貫通亀裂5の補修方法であって、前記貫通亀裂5の開口部の背面11bをシート状物24によって塞ぎ、前記開口部の前面11aから貫通亀裂5の亀裂内部空間に接着性樹脂25を充填した後、前記開口部を含む鋼構造物前面11aに繊維強化樹脂シート26を貼着する
【選択図】図3

Description

本発明は、橋梁や天井クレーンの走行桁等、供用中の鋼構造物に発生した貫通亀裂を補修する方法に関する。
橋梁や天井クレーンの走行桁等は共用の構造物であるため、これらの鋼構造物に亀裂が発生したとしても通行や使用を停止して補修することはなかなか許容されず、現場対応による即応可能な補修方法が求められる。
従来、この様な鋼構造物の補修には、溶接補修や当て板を用いたボルトもしくは溶接による接合等が用いられてきた。当て板を用いる補修方法は煩雑かつ施工性の悪い補修方法であって、工期の長期化が避けられない上、鋼構造物の死荷重を増加させることにもなる。また、溶接を使用すると母材に熱を投入することとなるため、材料の脆化や熱収縮による歪が生じたりする結果、劣化が避けられない。
そこで先ず、この様な鋼構造物の従来例に係る補強方法について以下に説明する。従来例に係る橋梁の補強方法として、炭素繊維強化樹脂板を接着剤によって複数重ね合わせたものを、橋梁の鋼材部材下面に接着剤によって接合した鋼製部材を有する橋梁の補強方法が提案されている(特許文献1参照)。この補強方法によれば、接着剤による貼付のため施工期間が短縮され、炭素繊維強化樹脂板は比重が小さく補強後の死荷重増加を懸念する必要がない。
上記従来例に係る補強方法を鋼構造物の補修方法に適用することは可能であるが、補強(補修)必要箇所を含む周囲全面の塗装を除去し、炭素繊維強化樹脂板からなる補強(補修)用板をクランプで一定時間保持することで、接着剤を有効に機能させることとしている。このため、実施例として轟橋では3時間、長泥橋では24時間と例示されている様に施工期間は長期化する。
次に、従来例に係る鋼構造物の補修方法について、以下添付図8,9を参照しながら説明する。図8は、従来例に係る鋼構造物の補修方法を実施するための最良の形態の施工の斜視図であり、(A)〜(F)の順に工程が示されている。図9は、図8の補修状態の断面図であり、(A)〜(F)が図8の(A)〜(F)に対応している。
鋼構造物41の表面に生じた補修必要箇所42が発見された(工程A)場合、先ず、この補修必要箇所42の不陸調整と、補修必要箇所42の周囲の塗装43の除去とを施工する。不陸調整の際には、補修必要箇所42に樹脂パテ等を充填して凹みを修復する(工程B)。塗装43の除去では、補修必要箇所42の周囲を囲む様に帯状の除去ライン44を形成し、この部分では鋼材45の表面が露出される。
次いで、除去ライン44にプライマ46を塗布(工程C)した後、補修必要箇所42及び除去ライン44に炭素繊維シート47が被せられる(工程D)。このシート47はプライマ46によって部分的に鋼材45に接着されるため、位置ずれを起こすことがない。その後、炭素繊維シート47の上から常温硬化性の接着剤48を塗布(工程E)し、更に前記炭素繊維シート47の外側に補助シート49を被せて鋼構造物41に巻付ける(工程F)。この後、必要に応じて補助シート49が塗装される(特許文献2参照)
上記従来例に係る鋼構造物の補修方法によれば、補修必要箇所42の凹みの不陸調整には樹脂パテ等を充填している。鋼構造物41に発生する補修必要箇所42は、凹みではなく貫通した亀裂の場合もあるが、貫通亀裂の場合には、亀裂部分に樹脂パテ等を充填させるためには、片面からのみの施工では充填自体が困難もしくは不十分になる。このため、鋼材45の表裏両面から施工する必要があり、施工期間が長期化する可能性が高い。
特開2003−193425号公報 特開2005−76230号公報
従って、本発明の目的は、鋼構造物の貫通亀裂の補修方法において、前記貫通亀裂の開口部両面からの施工であっても開口部背面側は簡単な施工で済み、ほぼ開口部前面側のみの施工によって補修部の強度を発現し得る補修方法を提供し、工期の短縮を図ることにある。
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る鋼構造物の補修方法が採用した手段は、鋼構造物の貫通亀裂の補修方法であって、前記貫通亀裂の開口部背面をシート状物によって塞ぎ、前記開口部前面から貫通亀裂の亀裂内部空間に接着性樹脂を充填した後、前記開口部前面を含む鋼構造物表面に繊維強化樹脂シートを貼着することを特徴とするものである。
本発明の請求項2に係る鋼構造物の補修方法が採用した手段は、請求項1に記載の鋼構造物の補修方法において、貼着する前記繊維強化樹脂シートの枚数を、次式(1)で求められる整数nとすることを特徴とするものである。
n ≧(d×Es)/Ecf (1)
ここで、
d:貫通亀裂部の鋼板厚さ
Es :鋼材のヤング率
Ecf:繊維強化樹脂シートのヤング率
本発明の請求項3に係る鋼構造物の補修方法が採用した手段は、請求項1または2に記載の鋼構造物の補修方法において、前記貫通亀裂の開口部背面を前記シート状物によって塞ぐ前に、前記貫通亀裂の両先端部にストップホールを設けることを特徴とするものである。
本発明の請求項4に係る鋼構造物の補修方法が採用した手段は、請求項1乃至3の何れか一つの項に記載の鋼構造物の補修方法において、前記繊維強化樹脂シートを構成する補強繊維が、ガラス繊維、炭素繊維またはアラミド繊維からなることを特徴とするものである。
本発明の請求項5に係る鋼構造物の補修方法が採用した手段は、請求項4に記載の鋼構造物の補修方法において、前記補強繊維の形態が、フィラメントやストランドを複数本引き揃えて形成されたシート状物、織物または編物からなることを特徴とするものである。
本発明の請求項6に係る鋼構造物の補修方法が採用した手段は、請求項1乃至5の何れか一つの項に記載の鋼構造物の補修方法において、前記繊維強化樹脂シートを構成する樹脂が、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂またはフェノール樹脂からなることを特徴とするものである。
本発明の請求項7に係る鋼構造物の補修方法が採用した手段は、請求項1乃至6の何れか一つの項に記載の鋼構造物の補修方法において、前記接着性樹脂が常温硬化型樹脂からなることを特徴とするものである。
本発明の請求項7に係る鋼構造物の補修方法が採用した手段は、請求項1乃至7の何れか一つの項に記載の鋼構造物の補修方法において、前記シート状物が、前記接着性樹脂に対し不浸透性を有する合成樹脂系シートからなることを特徴とするものである。
本発明の請求項1に係る鋼構造物の補修方法によれば、前記貫通亀裂の開口部背面をシート状物によって塞ぎ、前記開口部前面から貫通亀裂の亀裂内部空間に接着性樹脂を充填した後、前記開口部前面を含む鋼構造物表面に繊維強化樹脂シートを貼着するので、前記貫通亀裂の開口部両面からの施工であっても開口部背面側は簡単な施工で済み、ほぼ開口部前面側のみの施工によって、補修部の耐荷力を元の鋼材以上に発現し得る補修方法を提供し得ると共に、工期の短縮を図ることができる。
また、本発明の請求項2に係る鋼構造物の補修方法によれば、貼着する前記繊維強化樹脂シートの枚数を前式(1)で求められる整数nとするので、補修後の鋼材の耐荷力を、前記貫通亀裂の発生していない元の鋼材の耐荷力と同等以上に回復させることができる。
更に、本発明の請求項3に係る鋼構造物の補修方法によれば、前記貫通亀裂の開口部背面を前記シート状物によって塞ぐ前に、前記貫通亀裂の両先端部にストップホールを設けるので、補修後に過酷な荷重が繰り返し負荷されたとしても、前記貫通亀裂の進展を防止可能である。
また更に、本発明の請求項4に係る鋼構造物の補修方法によれば、前記繊維強化樹脂シートを構成する補強繊維が、ガラス繊維、炭素繊維またはアラミド繊維からなるので、補修後の鋼材の耐荷力を、死荷重を増加させることなく元の鋼材の耐荷力と同等以上に回復させることができる。
そして、本発明の請求項5に係る鋼構造物の補修方法によれば、前記補強繊維の形態が、フィラメントやストランドを複数本引き揃えて形成されたシート状物、織物または編物からなるので、前記補強繊維の有する高強度や高弾性率の特性を有効に発現させ得る。
本発明の請求項6に係る鋼構造物の補修方法が採用した手段は、請求項1乃至5の何れか一つの項に記載の鋼構造物の補修方法において、前記繊維強化樹脂シートを構成する樹脂が、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂またはフェノール樹脂からなるので、耐候性、耐熱性及び耐湿性を備え長期に渡る適用環境に耐え得る。
一方、本発明の請求項7に係る鋼構造物の補修方法によれば、前記接着性樹脂が常温硬化型樹脂からなるので短時間の施工期間で補修を完了できる。
また、本発明の請求項8に係る鋼構造物の補修方法によれば、前記シート状物が、前記接着性樹脂に対し不浸透性を有する合成樹脂系シートからなので、前記接着性樹脂がこのシート状物から浸透して漏れ出すことがない。
本発明の実施の形態に係る鋼構造物として、橋梁等の箱桁における貫通亀裂の一例を示す斜視図である。 本発明の実施の形態に係る鋼構造物として、天井クレーン等の走行桁における貫通亀裂の一例を示し、図(a)はその斜視図、図(b)は図(a)の矢視X−Xを示す断面図である。 本発明の実施の形態に係る鋼構造物の補修方法を説明するための補修工程図であって、図(a)は塗装除去工程、図(b)は亀裂面研磨工程、図(c)はストップホール加工工程、図(d)はシール状物貼着工程、図(e)は樹脂充填工程、図(f)は繊維強化樹脂シート貼着工程を示す断面図、図(g)は同工程を示す斜視図である。 本発明の実施例に係る鋼構造物試料を示し、図(a)はその平面図、図(b)は図(a)の正面図である。 図4に示す鋼構造物試料に対する本発明に係る補修方法の実施例を示し、図(a)はその平面図、図(b)は図(a)の正面図である。 図4に示した鋼構造物試料の貫通亀裂有無における引張荷重に対する耐荷力の解析結果を示す図である。 図5に示した鋼構造物試料の貫通亀裂に対する補修後の引張荷重に対する耐荷力の解析結果を示す図である。 従来例に係る鋼構造物の補修方法を実施するための最良の形態の施工の斜視図であり、(A)〜(F)の順に工程が示されている。 図8の補修状態の断面図であり、(A)〜(F)が図8の(A)〜(F)に対応している。
本発明の実施の形態に係る鋼構造物の補修方法を、以下添付図1〜3を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態に係る鋼構造物として、橋梁等の箱桁における貫通亀裂の一例を示す斜視図、図2は本発明の実施の形態に係る鋼構造物として、天井クレーン等の走行桁における貫通亀裂の一例を示し、図(a)はその斜視図、図(b)は図(a)の矢視X−Xを示す断面図である。また、図3は本発明の実施の形態に係る鋼構造物の補修方法を説明するための補修工程図であって、図(a)は塗装除去工程、図(b)は亀裂面研磨工程、図(c)はストップホール加工工程、図(d)はシート状物貼着工程、図(e)は樹脂充填工程、図(f)は繊維強化樹脂シート貼着工程を示す断面図、図(g)は同工程を示す斜視図である。
先ず、本発明の実施の形態に係る鋼構造物の補修方法の対象となる鋼構造物の貫通亀裂として、図1に示す橋梁等の箱桁1や図2に示す天井クレーンの走行桁等に用いられるI桁2に発生した貫通亀裂を例示して説明する。
図1に示す橋梁等の箱桁1は、両側面の長手方向に立設されたウェブ6,6と、これらウェブ6,6の上端面に直交して溶接接合された上フランジ7と、ウェブ3,3の下端面に直交して溶接接合された下フランジ8とにより箱形状に形成されている。そして、前記ウェブ3,3と上フランジ7の張出部7aとを溶接接合した三角リブ9や、箱形状に形成された桁内面において前記ウェブ3,3及び上下フランジ7,8に直交して溶接された縦リブ10等によって、この箱桁1が補強されている。
この様に形成された箱桁1において、本発明の実施の形態に係る鋼構造物の補修方法の対象となる貫通亀裂として、ウェブ6の三角リブ9下方に発生した貫通亀裂3や、上フランジ7のウェブ6との溶接部近傍に発生した貫通亀裂4が例示される。この箱桁1の三角リブ9下方に発生した前記貫通亀裂3は、橋梁に負荷される繰返し荷重による経年的な疲労等に起因して発生し、一方、上フランジ7のウェブ6との溶接部近傍に発生した前記貫通亀裂4は、溶接時の熱歪が橋梁に負荷される繰返し荷重によって顕在化した結果発生したものと推定される。
一方、図2に示す天井クレーンの走行桁等に用いられるI桁2は、長手方向に立設されたウェブ11と、このウェブ11の上端面に直交して溶接接合された上フランジ12と、ウェブ11の下端面に直交して溶接接合された下フランジ13とによりI形状に形成されている。この様に形成されたI桁2において、本発明の実施の形態に係る鋼構造物の補修方法の対象となる貫通亀裂として、ウェブ11の高さ方向中央部近傍に発生した貫通亀裂5が例示される。このI桁2のウェブ11に発生した前記貫通亀裂5は、走行桁として負荷される繰返し荷重による経年的な疲労等に起因して発生したものと推定される。
次に、本発明の実施の形態に係る鋼構造物の補修方法を、上記天井クレーンの走行桁等に用いられるI桁2を代表例に、以下添付図3を参照しながら説明する。先ず、貫通亀裂5の開口部前面5a側のウェブ面11aにおいて、前記貫通亀裂5近傍の塗装を、ワイヤブラシやサンダー等の除去手段21で除去する(工程a)。ここで、前記貫通亀裂5の開口部前面5aとしては、貫通亀裂5の開口部両面5a,5bにおいて、後述するシート状物貼着工程(工程d)以外の作業がやり易い方の開口部面を選択する。
そして、後述する接着性樹脂をこの貫通亀裂5の亀裂面に良好に接着させるため、バフ研磨、グラインダーまたはサンダー等の研磨手段22の刃物部を、前記開口部前面5aから貫通亀裂5の亀裂内部空間に差し込んで、貫通亀裂5の亀裂面に発生した錆や油脂分等を研磨除去する(工程b)。次いで、前記貫通亀裂5の両先端部夫々に、ハンドドリル等を用いてストップホール23,23を加工する(工程c)。
これらのストップホール23,23は、貫通亀裂5の両端部に発生する応力集中を緩和して前記亀裂の進展を防止するためのものであり、補修後も厳しい荷重負荷によって応力集中が発生し易いと考えられる場合は設けておくのが好ましい。そのため、前記貫通亀裂5の両先端部は、前記ストップホール23,23に吸収され、ウェブ11等の鋼板内に残ることがない様に加工することが肝要である。
その後、貫通亀裂5の開口部背面5b側のウェブ面11bにおいて、前記開口部背面5bを接着剤の塗布されたシールテープ(シート状物)24で塞ぐ(工程d)。そして、開口部前面5aから、貫通亀裂5の亀裂内部空間に接着性樹脂25を充填すると同時に、前記開口部前面5a側の貫通亀裂5周囲のウェブ面11aにも接着性樹脂25を塗布する(工程e)。次いで、前記貫通亀裂5の開口部前面5aを含むこの開口部前面5a側のウェブ面11aに繊維強化樹脂シート26を貼着し、硬化するまで養生する(工程f,g)。
ここで、前記鋼構造物2に貼着する前記繊維強化樹脂シート26の枚数は、次式(1)で求められる整数nとするのが好ましい。前記繊維強化樹脂シート26の枚数を、次式(1)で求められる整数n以上とすることによって、貫通亀裂5を生じた元の鋼板と同一以上の耐荷力を回復し得るからである。
n ≧(d×Es)/Ecf (1)
ここで、
d:貫通亀裂部の鋼板厚さ
Es :鋼材のヤング率
Ecf:繊維強化樹脂シートのヤング率
また、前記繊維強化樹脂シート26を構成する補強繊維は、ガラス繊維、炭素繊維またはアラミド繊維からなるのが、比重の小さい割には補強効果が大きく死荷重を増加させない点から好ましい。
前記補強繊維の形態については、フィラメントやストランドを複数本引き揃えて形成されたシート状物、織物または編物からなるものが、補強繊維の強度を発現させる点から好ましい。
更に、前記繊維強化樹脂シートを構成する樹脂は、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂またはフェノール樹脂からなるので、耐候性、耐熱性及び耐湿性を備え長期に渡る適用環境に耐え得る。
一方、前記接着性樹脂25は、工期の短縮が可能なため常温硬化型樹脂であるのが好ましい。ここで、常温硬化型樹脂とは、温度−10〜40℃程度の環境下において12時間程度放置することによって硬化する接着性樹脂を言い、例えば、エポキシ系樹脂、メチルメタアクリレート(MMA)系樹脂或いはシアノアクリレート系樹脂等を揚げることができる。
また、前記シールテープ(シート状物)24は、接着性樹脂25に対し不浸透性を有する合成樹脂系シートであるのが、この接着性樹脂25が貫通亀裂5からの流出を防止できる点から好ましい。不浸透性を有する合成樹脂系シートとしては、例えばテフロン(登録商標)からなるシートを挙げることができる。この様なシールテープ24は、接着剤が塗布されているものが好ましいが、塗布されていない場合には、前記接着性樹脂25をシールテープ24の貼着面に塗布した後、前記貫通亀裂5の開口部の背面に貼着して塞げば良い。
以上、本発明の実施の形態に係る鋼構造物2の補修方法によれば、前記貫通亀裂5の開口部背面5bをシート状物24によって塞ぎ、前記開口部前面5aから貫通亀裂5の亀裂内部空間に接着性樹脂25を充填した後、前記開口部前面5a側のウェブ面11aに繊維強化樹脂シート26を貼着するので、前記構造物2のウェブ11両面からの施工であっても、前記開口部背面5b側は簡単に施工でき、ほぼ開口部前面5a側のみの施工によって補修が可能となる上、更に補修部の強度を十分発現し得る補修方法を提供し、工期の短縮も図り得る。
次に、本発明に係る鋼構造物の補修方法に関し、貫通亀裂を開孔した鋼構造物試料を用いた補修の実施例につき、以下添付図4〜7を参照しながら説明する。図4は本発明の実施例に係る鋼構造物試料を示し、図(a)はその平面図、図(b)は図(a)の正面図、図5は図4に示す鋼構造物試料に対する本発明に係る補修方法の実施例を示し、図(a)はその平面図、図(b)は図(a)の正面図である。また、図6は図4に示した鋼構造物試料の貫通亀裂有無における引張荷重に対する耐荷力の試験結果を示す図、図7は図5に示した鋼構造物試料の貫通亀裂に対する補修後の引張荷重に対する耐荷力の試験結果を示す図である。
本発明の実施例に係る鋼構造物試料31は、図4に示す如く、厚さ12mm、幅70mmの鋼板32に、同一厚さで幅35mmの補強リブ33を隅肉溶接34したものを2個作製した。そして、この内1個の鋼構造物試料31において、補強リブ33の一端側の隅肉溶接34近傍に、長さ30mmで開口部前面35aの開口幅4mm、開口部背面35bの開口幅1mmの貫通亀裂35を開孔した。
そして、この貫通亀裂35を有する鋼構造物試料31に対して、本発明に係る鋼構造物の補修方法に従って、先ず、貫通亀裂35の開口部前面35a側の鋼板面32aにおいて、塗装はされていないが貫通亀裂35近傍の油脂分をワイヤブラシで除去した後、小型研磨機の刃物部を貫通亀裂35の開口部前面35aから内部亀裂空間に差し込んで、貫通亀裂35の亀裂面に発生した錆や油脂分等を研磨除去した。尚、前記貫通亀裂35の両先端部に施すストップホールについては、加工を省略した。
次いで、貫通亀裂35の開口部背面35b側の鋼板面32bにおいて、前記亀裂35の開口部背面35bをシールテープ36で塞いだ後、開口部前面35aから貫通亀裂35の亀裂内部空間に常温硬化型エポキシ樹脂37を充填すると同時に、前記開口部前面35a側の鋼板面32aにも前記樹脂37を塗布する。
そして、前記貫通亀裂35の開口部前面35aを含むこの開口部前面35a側の鋼板面32aに、鋼板32と同一幅に切取った厚さ0.145mmの炭素繊維強化樹脂シート38を、各層に前記常温硬化型エポキシ樹脂37を塗布しつつ12層積層して貼着し、12時間養生して硬化させ補修を完了した。尚、炭素繊維強化樹脂シート38の層数は、前式(1)から予め算出しておいた。
この様にして作製された本発明の実施例に係る鋼構造物試料31の引張荷重に対する耐荷力の試験結果によれば、図4に示す如く貫通亀裂35がある場合は、貫通亀裂35がない場合に比べて、鋼板32の引張荷重に対する耐荷力が40%以上大幅に低下する。一方、貫通亀裂35がある鋼構造物試料31を上記実施例の通り補修した場合は、鋼板32の引張荷重に対する耐荷力は、貫通亀裂35がない鋼板32以上に回復している。
以上説明した通り、本発明に係る鋼構造物の補修方法によれば、前記貫通亀裂の開口部背面をシート状物によって塞ぎ、前記開口部前面から貫通亀裂の亀裂内部空間に接着性樹脂を充填した後、前記開口部前面を含む鋼構造物表面に繊維強化樹脂シートを貼着するので、前記貫通亀裂の開口部両面からの施工であっても開口部背面側は簡単な施工で済み、ほぼ開口部前面側のみの施工によって、補修部の耐荷力を元の鋼材以上に発現し得る補修方法を提供し得ると共に、工期の短縮を図ることができるのである。
1:箱桁, 2:I桁,
3,4,5:貫通亀裂, 5a:開口部前面, 5b:開口部背面,
6:ウェブ,
7:上フランジ, 7a:張出部, 8:下フランジ,
9:三角リブ, 10:縦リブ,
11:ウェブ, 11a:開口部前面側のウェブ面,
11b:開口部背面側のウェブ面,
12:上フランジ, 13:下フランジ,
21:除去手段, 22:研磨手段, 23:ストップホール,
24:シールテープ(シート状物), 25:接着性樹脂,
26:繊維強化樹脂シート,
31:鋼構造物試料,
32:鋼板, 32a:開口部前面側の鋼板面,
32b:開口部背面側の鋼板面,
33:補強リブ, 34:隅肉溶接,
35:貫通亀裂, 35a:開口部前面, 35b:開口部背面,
36:シールテープ, 37:常温硬化型エポキシ樹脂,
38:炭素繊維強化樹脂シート

Claims (8)

  1. 鋼構造物の貫通亀裂の補修方法であって、前記貫通亀裂の開口部背面をシート状物によって塞ぎ、前記貫通亀裂の開口部前面から貫通亀裂の亀裂内部空間に接着性樹脂を充填した後、前記開口部前面を含む鋼構造物表面に繊維強化樹脂シートを貼着することを特徴とする鋼構造物の補修方法。
  2. 貼着する前記繊維強化樹脂シートの枚数を、次式(1)で求められる整数nとすることを特徴とする請求項1に記載の鋼構造物の補修方法。
    n ≧(d×Es)/Ecf (1)
    ここで、
    d:貫通亀裂部の鋼板厚さ
    Es :鋼材のヤング率
    Ecf:繊維強化樹脂シートのヤング率
  3. 前記貫通亀裂の開口部背面を前記シート状物によって塞ぐ前に、前記貫通亀裂の両先端部にストップホールを設けることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼構造物の補修方法。
  4. 前記繊維強化樹脂シートを構成する補強繊維が、ガラス繊維、炭素繊維またはアラミド繊維からなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つの項に記載の鋼構造物の補修方法。
  5. 前記補強繊維の形態が、フィラメントやストランドを引き揃えて形成されたシート状物、織物または編物からなることを特徴とする請求項4に記載の鋼構造物の補修方法。
  6. 前記繊維強化樹脂シートを構成する樹脂が、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂またはフェノール樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つの項に記載の鋼構造物の補修方法。
  7. 前記接着性樹脂が、常温硬化型樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一つの項に記載の鋼構造物の補修方法。
  8. 前記シート状物が、前記接着性樹脂に対し不浸透性を有する合成樹脂系シートからなることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一つの項に記載の鋼構造物の補修方法。


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* Cited by examiner, † Cited by third party
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