JP3947463B2 - 連続強化繊維シート逐次緊張接着による構造物の補強方法 - Google Patents
連続強化繊維シート逐次緊張接着による構造物の補強方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般には、強化繊維シート緊張接着工法による土木建築構造物であるコンクリート構造物或いは鋼構造物(本願明細書では、コンクリート構造物、鋼構造物などを含めて単に「構造物」という。)の補強方法に関し、特に、樹脂未含浸の連続強化繊維シートを長手方向に引っ張り、強化繊維シートに緊張力を導入した状態で逐次強化繊維シートを構造物の被補強表面に接着する構造物の補強方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
構造物の補強方法として、近年、既存或いは新設の構造物の表面に連続強化繊維シートを貼り付けたり、巻き付けたりする接着工法が開発されている。
【0003】
しかしながら、上記接着工法は、単純な接着のみであり、FRP(繊維強化プラスチック)補強材の剥離による構造物の早期破壊により、終局耐力の補強効果の向上に限界がある一方、例えばコンクリート構造物のひび割れの抑制効果にも限界がある。その上、FRP補強材の高い性能が有効に活用されていない場合が多い。又、既存構造物のひび割れ損傷などの回復や死荷重に対する補強はできない。
【0004】
このような問題を改善するべく、強化繊維シートを用いた緊張接着工法が提案されている。例えば特許文献1には、強化繊維として少なくとも炭素繊維を含む炭素繊維シート、クロス及び樹脂を含浸したプリプレグ等からなる繊維材に対して、治具を介して緊張装置により緊張力を導入し、次いで、接着剤により繊維材をコンクリート部材の表面に接着し、その後、治具及び緊張装置を除去する緊張接着工法が開示されている。
【0005】
本発明者らは、上述のような緊張接着工法の更なる改良を行い、特許文献2に記載される構造物の補強方法、つまり、構造物に対する各強化繊維シートの長手方向接着長さが、構造物表面最内層から最外層へと行くに従ってより短くなるように、積層された各強化繊維シートの両端位置に且つ各強化繊維シートの間に、積層された各強化繊維シート同士の接着を防止する剥離シートを配置する構成とし、複数枚の樹脂含浸又は樹脂未含浸の強化繊維シート積層体を一括して長手方向に引っ張り、強化繊維シートに緊張力を導入した状態で構造物の被補強表面に接着する構造物の補強方法を提案した。
【0006】
この補強方法は、複数枚の強化繊維シート積層体を一括緊張して構造物に接着し、しかも、接着された複数枚の強化繊維シートの端部をずらすことにより端部応力集中を著しく低減することができ、緊張接着工法に基づくコンクリート構造物の補強を極めて作業性良く実施することができる。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−182061号公報
【特許文献2】
特願2001−163265
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記補強方法を、例えば高架高速道路の桁等の土木建築構造物の補強に適用した場合には、特に、道路の横断方向に全幅的に補強することが要求される場合には、道路幅全体に亘って強化繊維シート積層体を適用し、一括して長手方向に引っ張り、強化繊維シートに緊張力を導入した状態で構造物の被補強表面に接着することが必要とされる。
【0009】
従って、作業のための足場は、道路幅全体に亘って設置することが余儀なくされ、作業が終わるまで高架下の交通を長期間にわたり、例えば、1週間程度全面的に遮断することとなり、好ましいことではない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、強化繊維シート積層体を一括して長手方向に引っ張り、強化繊維シートに緊張力を導入した状態で、一部領域を先ず樹脂含浸硬化を行い、その後、逐次に残余部での樹脂含浸硬化を行うか、或いは、緊張力導入、樹脂含浸、接着硬化、緊張力解放工程を繰り返し行うことにより、緊張接着工法に基づく構造物の補強を、極めて作業性良く実施することのできるコンクリート構造物或いは鋼構造物のような構造物の補強方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的は本発明に係る構造物の補強方法にて達成される。要約すれば、本発明は、樹脂未含浸の連続強化繊維シートを長手方向に引っ張り、強化繊維シートに緊張力を導入した状態で構造物の被補強表面に接着する構造物の補強方法において、
(a)構造物の被補強表面に適合するように強化繊維シートを複数枚長手方向に整列して積層する工程、
(b)前記積層された各強化繊維シートを一括して長手方向に引っ張り、強化繊維シートに緊張力を導入する工程、
(c)前記緊張した状態の前記強化繊維シートの一部領域に樹脂を含浸し、この樹脂含浸された一部領域を構造物の被補強表面に押圧して接着し、硬化する工程、
(d)次いで、未含浸の残余の前記強化繊維シートの少なくとも一部領域に樹脂を含浸し、この樹脂含浸された一部領域を構造物の被補強表面に押圧して接着し、硬化する工程、
(e)前記強化繊維シートの補強に供する有効長領域の全領域に対し、樹脂を含浸し、前記強化繊維シートを構造物表面に接着し、樹脂が硬化するまで前記工程(d)を繰り返す工程、
(f)その後、前記強化繊維シートに導入した緊張力を開放する工程、
を有することを特徴とする構造物の補強方法である。
【0012】
本発明の一実施態様によると、前記工程(c)における前記一部領域は、前記強化繊維シートの中央部領域であり、前記工程(d)の前記未含浸の残余の前記強化繊維シートの少なくとも一部領域は、前記構造物表面に接着された中央部領域の両端部に隣接する領域である。ここで、本発明の他の実施態様によると、前記工程(c)にて構造物表面に接着された中央部領域の前記強化繊維シートの両端部にアンカー部材を取り付けることができる。また、本発明の他の実施態様によると、前記工程(d)にて構造物表面に接着された前記強化繊維シートの有効長領域外方両端部にアンカー部材を取り付けることができる。
【0013】
本発明の他の実施態様によると、前記工程(c)における前記一部領域は、前記強化繊維シートの一方側の端部領域であり、次いで、前記工程(d)における一部領域は、前記端部領域に隣接する領域であり、同様にして前記工程(e)を実施する。ここで、前記工程(c)にて構造物表面に接着された端部領域の前記強化繊維シートの両端部にアンカー部材を取り付け、次いでこの端部領域に隣接して構造物表面に接着された領域の、少なくとも前記アンカー部材が取り付けられていない側の前記強化繊維シートの端部にアンカー部材を取り付けることができる。
【0014】
本発明の他の態様によると、樹脂未含浸の連続強化繊維シートを長手方向に引っ張り、強化繊維シートに緊張力を導入した状態で構造物の被補強表面に接着する構造物の補強方法において、
(a)構造物の被補強表面を複数の作業区間領域に分割し、全作業区間領域に適合するように強化繊維シートを複数枚長手方向に整列して積層する工程、
(b)前記構造物の被補強表面の一端部領域である第1作業区間領域に対応して、前記積層された各強化繊維シートの一部を一括して長手方向に引っ張り、強化繊維シートに緊張力を導入する工程、
(c)前記緊張した状態の前記強化繊維シートに樹脂を含浸し、この樹脂含浸された領域を前記第1作業区間領域の前記構造物の被補強表面に押圧して接着し、硬化する工程、
(d)樹脂が硬化した後、前記強化繊維シートに導入した緊張力を開放する工程、
(e)次いで、残りの作業区間領域に対して、前記工程(b)、(c)、(d)と同様の緊張力導入、樹脂含浸、接着硬化、緊張力解放工程を繰り返し、前記構造物の被補強表面の全領域に前記強化繊維シートを接着する工程、
を有することを特徴とする構造物の補強方法が提供される。本発明の一実施態様によると、前記構造物の被補強表面に接着された前記強化繊維シートの、少なくとも両端部にアンカー部材を取り付ける。
【0015】
上記各本発明の一実施態様によると、構造物表面に接着された前記複数層をなす強化繊維シートの補強領域外方両端部が構造物表面最内層から最外層へと向かって段状となるようにされる。ここで、本発明の他の実施態様によると、前記アンカー部材は、前記段状とされる前記各強化繊維シートの各端部に取り付けることができる。
【0016】
上記各本発明の一実施態様によると、前記強化繊維シートは、連続した強化繊維を均一に引き揃え、互いに密に一方向に配列した強化繊維シートである。ここで、前強化繊維は、PAN系或いはピッチ系炭素繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用される。また、他の実施態様によると、前記強化繊維シートは、その片面、或いは、両面を、メッシュ状の支持体シートにより支持されているか、又は、前記強化繊維シートは、一方向に配列された強化繊維に対して直交して横糸として繊維が一定の間隔にて打ち込まれている。
【0017】
上記各本発明の一実施態様によると、前記樹脂は、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂である。
【0018】
上記各本発明の一実施態様によると、前記アンカー部材は、樹脂で前記強化繊維シート及び構造物に接着されるアンカー強化繊維シートであるか、又は、ボルトにて前記強化繊維シート及び構造物に定着される定着板である。ここで、前記アンカー強化繊維シートは、強化繊維が前記強化繊維シートの長手方向に対して直交する方向に配列されている。また、前記アンカー強化繊維シートは、前記強化繊維シートと同じ構成とし得る。また、前記定着板は、金属製板或いはFRP製板とされる。
【0019】
本発明の他の実施態様によると、樹脂が含浸された前記強化繊維シートに面状発熱体を適用して加熱する。
【0020】
本発明の他の実施態様によると、前記構造物は、コンクリート構造物或いは鋼構造物である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る構造物の補強方法を図面に則して更に詳しく説明する。
【0022】
実施例1
本発明の構造物の補強方法は、梁又は桁部材、更には、壁、柱部材、床版などのスラブ部材など、建築或いは土木構造物であるコンクリート構造物或いは鋼構造物の補強に広く適用し得るが、本実施例では、コンクリート梁に適用した場合について説明する。
【0023】
図4に、本発明にて使用する連続した強化繊維シート1の一実施例を示す。強化繊維シート1は、連続した強化繊維2を均一に引き揃え、互いに密に一方向に配列した、所定の単位重量を有するものである。強化繊維シート1の長さ及び幅は、補強される構造物の寸法、形状に応じて適宜決定される。
【0024】
強化繊維2としては、PAN系或いはピッチ系炭素繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;更には、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用することができる。
【0025】
又、強化繊維シート1は、取り扱いを容易とするために、図4に示すように、強化繊維2を一方向に配列した強化繊維層2Aの片面、或いは、両面を、例えば直径2〜50μmのガラス繊維或いは有機繊維にて作製したメッシュ状の支持体シート3により支持した構成とすることもできる。
【0026】
メッシュ状支持体シート3にて強化繊維シートを保持する方法としては、例えば、メッシュ状支持体シート3を構成する縦糸6及び横糸7の表面に低融点タイプの熱可塑性樹脂を予め含浸させておき、メッシュ状支持体シート3を強化繊維層2Aの両面に積層して加熱加圧し、メッシュ状支持体シート3の縦糸6及び横糸7の部分を強化繊維層2Aに溶着する。
【0027】
別法として、図5に示すように、強化繊維シート1は、一方向に配列された強化繊維2に対して直交して、繊維2のバラケ止めとして繊維4を横糸として一定の間隔にて打ち込み、所謂、織物(クロス)のような構造のシートとすることも可能である。繊維4としては、上述と同様に、例えば直径2〜50μmのガラス繊維或は有機繊維が使用可能であるが、ガラス繊維を芯部に有し、低融点の熱融着性ポリエステルをその周囲に配したような二重構造の複合繊維は、繊維束のバラケ防止効果が大きく、好ましく用いられる。この方法での、横糸の打ち込み間隔(p)に特に制限はないが、作製されたシートの取り扱い性を考慮して、通常1〜15mm間隔の範囲で選定される。
【0028】
尚、本実施例では、強化繊維シート1は、単糸デニールが1.5デニールのモノフィラメントを、例えば、約2000本収束した繊維束、即ち、PBO繊維2を使用し、このPBO繊維を均一に引き揃え、互いに密に一方向に配列したPBO連続繊維シートであった。PBO連続繊維シートの厚さは0.128mm(繊維目付200g/m2)であった。通常、PBO連続繊維シート1の繊維目付(単位面積当たりの重量:g/m2で表す)は、100〜1600g/m2(設計シート厚さ(t)0.064〜1.02mm)とされるが、好ましくは、140〜600g/m2(設計シート厚さ(t)0.090〜0.38mm)である。
【0029】
本発明の補強方法を実施する際に強化繊維シート1に含浸されるマトリクス樹脂(即ち、接着剤)は、熱硬化性樹脂とすることができ、熱硬化性樹脂としては、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂を好適に使用し得る。又、樹脂含浸量は、30〜70重量%、好ましくは、40〜60重量%とされる。
【0030】
本発明の構造物の補強方法の一実施例について説明する。本実施例ではコンクリート梁を補強するものとする。
【0031】
本発明によると、強化繊維シート1をコンクリート梁に接着するに先立って、強化繊維シート1に緊張力が導入される。強化繊維シート1には、樹脂は未だ含浸されていない。
【0032】
本実施例によると、緊張装置(図示せず)は、ジャッキ手段を有し、強化繊維シート1の両端にそれぞれ連結され、強化繊維シート1に引張力を付与する構成とされる。
【0033】
図1〜図3を参照すると、本発明に従った緊張接着工法の一実施例を示す。本実施例では、先ず、強化繊維シート1(1a、1b、1c)が複数枚長手方向に整列して積層され、強化繊維シート積層体10とされる。各強化繊維シート1(1a、1b、1c)の長さは、所要の長さ、つまり、コンクリート梁100の被補強表面、即ち、シート貼着面101に接着されて補強に供する実際の長さ「有効長L」と、更に、引張力を導入するために緊張装置により保持させるために必要とされる「長さ」とを加えた長さとされる。
【0034】
尚、本明細書にて、強化繊維シート1、或は、複数枚の強化繊維シート1(1a、1b、1c)を積層して構成される強化繊維シート積層体10において、「内側」とは、コンクリート梁100のような構造体のシート貼着面101側を意味し、「外側」とはこのシート貼着面101より離れる方向を意味する。又、上述のように、強化繊維シート1、或は、強化繊維シート積層体10がシート貼着面101に接着され補強に供される有効長Lの領域(「有効長領域L」という。)(図2参照)の両端部から中央部に向かう方向を「内方」とし、その両端部側を「外方」と呼ぶ。
【0035】
本実施例では、図1〜図3に示すように、コンクリート梁100のシート貼着面101に接着される最内層の第1の強化繊維シート1aと、その上に積層される中間層の第2の強化繊維シート1bと、最外層の第3の強化繊維シート1cとの、3枚の強化繊維シート1を有した強化繊維シート積層体10を使用するものとして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
次に、本発明に従った緊張接着工法について説明する。
【0037】
図1(A)に示すように、第1、第2及び第3強化繊維シート1(1a、1b、1c)からなる強化繊維シート積層体10の両端部が緊張装置のジャッキ手段(図示せず)に保持され、案内ローラ20により、少なくとも有効長領域Lがコンクリート梁100のシート貼着面101に近接した位置へと案内される。
【0038】
引き続いて、緊張装置のジャッキ手段を作動させ、強化繊維シート積層体10、即ち、第1、第2及び第3強化繊維シート1(1a、1b、1c)を一括して長手方向に引っ張り、各強化繊維シート1(1a、1b、1c)に緊張力を導入する。
【0039】
各強化繊維シート1(1a、1b、1c)への緊張力導入は、予め設定された引張量を引っ張った時点にて停止するか、或いは、ロードセルなどを適所に設置し、緊張荷重を計測しながらジャッキを駆動し、所定荷重を印加した時点でジャッキの駆動を停止することによっても可能である。
【0040】
次いで、図1(B)に示すように、案内ローラ20を移動し、強化繊維シート積層体10をコンクリート梁100の貼着面101に当接或いは近接配置する。各強化繊維シート1(1a、1b、1c)が緊張状態に維持された状態にて、強化繊維シート積層体10の一部領域、即ち、中央部の所定長さL1の領域(「中央部領域L1」という。)にのみマトリクス樹脂を含浸させる。つまり、例えば強化繊維シート積層体10のコンクリート構造体表面101とは反対側の面から、即ち、第3強化繊維シート1cの外側面にマトリクス樹脂を塗布する。勿論、強化繊維シート積層体10を貼着面101に当接或いは近接配置するに先立って強化繊維シート積層体10の中央部領域L1の内側面、即ち、第1強化繊維シート1a側にマトリクス樹脂を含浸させておくこともできる。
【0041】
これにより、強化繊維シート積層体10には、中央部領域L1において、その内部の第2強化繊維シート1b及び第1強化繊維シート1aにまで、十分にマトリクス樹脂が含浸される。
【0042】
例えば、高架高速道路の補強工事においては、コンクリート構造物100の有効長領域Lが4車線分、24mとされる場合には、中央の2車線分、即ち、12mを中央部領域L1とするのが好適である。これにより、車両の通行を遮断せざるを得ない作業足場の設置は2車線分で済み、残りの2車線は車両の通行に供することができる。
【0043】
次いで、アンカー部材12Aを、コンクリート構造体表面101に貼着された強化繊維シート積層体10の中央部領域L1の両端部に接着し、強化繊維シート積層体10を構造物100に定着する。アンカー部材12Aは、場合によっては省略することも可能である。
【0044】
アンカー部材12Aは、FRP樹脂板などからなる定着板とすることもできるが、本実施例では、樹脂を含浸させて使用するアンカー用の強化繊維シートとした。アンカー部材12A用のアンカー強化繊維シート及びマトリクス樹脂は、図4及び図5を参照して説明した上記強化繊維シート1及び強化繊維シート1に含浸させる樹脂と同様のものを使用することができる。ただ、寸法形状が異なるだけである。
【0045】
本実施例では、アンカー部材12Aの、強化繊維シート1に直交する方向の両端部は、図3に示すように、コンクリート梁100の貼着面102にまで延在する寸法とされる。
【0046】
つまり、アンカー部材12Aは、図3に示すように、その長さHが、強化繊維シート1(1a、1b、1c)の幅Wより長くされ、強化繊維シート1(1a、1b、1c)と重なり合っていない部分、即ち、(H−W)/2の部分12A’が、アンカー部材12Aを構造体100の表面に接着固定するアンカー部を形成する。アンカー部材12Aの幅W1は、通常50〜500mmとされ、適宜選択される。
【0047】
尚、含浸した強化繊維シート積層体10、即ち、各強化繊維シート1(1a、1b、1c)をコンクリート梁100の貼着面101に、更には、アンカー部材12Aを貼着面102に空隙が発生することなく接着させるために、強化繊維シート1、及びアンカー部材12Aをコンクリート梁100側へと押圧するのが好ましい。押圧手段としては任意の手段を使用し得るが、バキュームバッグとシール材を用いて含浸した強化繊維シート1の補強部分及びアンカー部材12Aを完全にラップし、ラップ内エアーをポンプにより吸引し、シートを被補強構造物に押し付け常温硬化することが好ましい。
【0048】
もし、硬化を促進させる場合は、加熱手段により加熱することもできる。加熱手段としては任意のものを使用し得るが、例えば、図6に示すような面状発熱体、即ち、平面ヒータ30をバキュームバッグと共に強化繊維シート1などに密着させて用いることもできる。
【0049】
平面ヒータ30としては、平板状の可撓性のある加熱板31を備えたシリコンラバーヒータ(オーエムヒーター株式会社製:商品名)を好適に使用することができる。このシリコンラバーヒータ30は、その加熱板31にリード線31を介して定格電圧が印加され、その表面温度が200°〜250°以下の任意の温度に制御可能である。
【0050】
又、コンクリート梁100の貼着面101、102は、強化繊維シート1及びアンカー部材12Aを接着するに先立って、予めプライマーを塗布して下地処理を行うのが好ましい。又、更に、予めマトリクス樹脂を塗布しておくこともできる。プライマーとしては、マトリクス樹脂と同系の又は同じ樹脂、例えば、通常使用されている、エポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂などとし得る。
【0051】
上記工程にて、コンクリート梁100に貼着された中央部領域L1のマトリクス樹脂が硬化し、強化繊維シート1、及び、アンカー部材12Aがそれぞれ構造物の被補強表面、即ち、貼着面101、及び、側面102に完全に接着した時点において、強化繊維シート積層体10の中央部領域L1の両側の長さL2とされる領域(「両側領域L2」という。)に樹脂を含浸して、両側領域L2の強化繊維シート1をコンクリート梁100の貼着面101に接着する。
【0052】
つまり、両側領域L2の各強化繊維シート1(1a、1b、1c)は、未だ緊張状態に維持された状態にある。この緊張状態を維持したままで、中央部領域L1の両側の両側領域L2において、強化繊維シート積層体10のコンクリート構造体表面101とは反対側の面、即ち、第3強化繊維シート1cの外側面にマトリクス樹脂を塗布する。更には、例えば強化繊維シート積層体10の緊張状態を維持しながら、案内ローラ20を幾分下方へと移動して強化繊維シート積層体10とコンクリート構造体表面101との間に空隙を設け、この空隙を利用して強化繊維シート積層体10の内側面、即ち、第1強化繊維シート1a側にマトリクス樹脂を含浸させても良い。
【0053】
これにより、強化繊維シート積層体10の両側領域L2には、その内部の第2強化繊維シート1b及び第1強化繊維シート1aにまで、十分にマトリクス樹脂が含浸される。
【0054】
好ましくは、図2及び図3に詳しく示すように、コンクリート構造体表面101に貼着された両側領域L2の外方端部にアンカー部材12Bを接着する。アンカー部材12Bは、上記アンカー部材12Aと同様に、FRP樹脂板などからなる定着板とすることもできるが、本実施例では、樹脂を含浸させて使用するアンカー用強化繊維シートとした。
【0055】
更に、アンカー部材12Bは、各強化繊維シート1(1a、1b、1c)の両端部を同時に固定することもできるが、本実施例によると、各強化繊維シート1(1a、1b、1c)の両端部をそれぞれ固定するように配置され、コンクリート構造物に接着された複数層をなす強化繊維シートの両端部が構造物表面最内層から最外層へと向かって段状となるように構成した。
【0056】
斯かる端部構造について、図2及び図3を参照して更に詳しく説明する。
【0057】
本実施例によると、強化繊維シート積層体10の有効長領域Lの端部領域には、各強化繊維シート1(1a、1b、1c)の間に剥離シート11(11a、11b)が配置される。即ち、本実施例では、第1強化繊維シート1aと第2強化繊維シート1bとの間、第2強化繊維シート1bと第3強化繊維シート1cとの間に、それぞれ第1剥離シート11a及び第2剥離シート11bが配置される。
【0058】
本実施例によれば、図示されるようにコンクリート梁100のシート貼着面101に近い最内層から最外層へと行くに従って、剥離シート11の内方への延在長さが長くされる。即ち、第2剥離シート11bは第1剥離シート11aより内方への突出量が長くされる。
【0059】
従って、本実施例によれば、有効長領域Lの端部領域にて、第1強化繊維シート1aと第2強化繊維シート1b、第2強化繊維シート1bと第3強化繊維シート1cが互いに接着されることが防止され、それによって、最内層から最外層へと行くに従って、強化繊維シート1の有効長が短くされた積層構造が実現され、端部応力集中が低減された補強構造が提供される。
【0060】
又、本実施例では、第1強化繊維シート1aと第1剥離シート11aとの間、第2強化繊維シート1bと第2剥離シート11bとの間、及び、第3強化繊維シート1cの外側に、各強化繊維シート1の長手方向に対して直交する方向に強化繊維が配列されたアンカー強化繊維シートとされる第1、第2及び第3アンカー部材12B(12a、12b、12c)をそれぞれ積層配置した。
【0061】
各アンカー部材12B(12a、12b、12c)は、図3に示すように、その長さHが、強化繊維シート1(1a、1b、1c)の幅Wより長くされ、強化繊維シート1(1a、1b、1c)と重なり合っていない部分、即ち、(H−W)/2の部分12a’、12b’、12c’が、各アンカー部材12B(12a、12b、12c)を構造体100の表面に接着固定するアンカー部を形成する。アンカー部の寸法形状は、各アンカー部材12B(12a、12b、12c)にて同じとすることもでき、異なるものとすることも可能である。また、アンカー部材12Bは、アンカー部材12Aと同じ寸法形状とすることができるが、異なるものとしても良い。
【0062】
又、各アンカー部材12B(12a、12b、12c)は、通常、互いに重なり合わないように配置する。
【0063】
つまり、第1アンカー部材12aは、その外方(左側)端が第1強化繊維シート1aの有効長左側端部に整列して、第1強化繊維シート1aと第1剥離シート11aとの間に配置される。第2アンカー部材12bは、第1剥離シート11aより更に内方へと延びた第2剥離シート11bと第2強化繊維シート1bとの間に配置され、第2アンカー部材12bの内方(右側)端が、第2剥離シート11bの内方(右側)端部に整列して位置決めされる。更に、第3アンカー部材12cは、第2剥離シート11bの有効長左側端部とは反対側の内方端部、即ち、図2及び図3にて右側端部より更に内方に位置して、しかも、第3アンカー部材12cの外方(左側)端が第2剥離シート11bの内方(右側)端部に整列して配置される。
【0064】
換言すれば、第1、第2及び第3アンカー部材12B(12a、12b、12c)は、互いに隣接してはいるが、重なり合わないようにして配置される。又、アンカー部材12B(12a、12b、12c)は、外側に位置するに従って強化繊維シート積層体10の内方、即ち、中央部に位置するように配置される。
【0065】
第1、第2及び第3アンカー部材12B(12a、12b、12c)は、上述した強化繊維シート1(1a、1b、1c)と同じ構成とすることができる。
【0066】
上記端部構造にて、強化繊維シート積層体10に樹脂を含浸すると共に、更に、第1、第2及び第3アンカー部材12B(12a、12b、12c)にもマトリクス樹脂を含浸させる。これにより、第1、第2及び第3アンカー部材12B(12a、12b、12c)は、それぞれ、積層された対応の強化繊維シート1に接着されるとともに、図1(C)及び図3に示すように、強化繊維シート1より直交する横方向に突出したアンカー部12a’、12b’、12c’をコンクリート梁100の、本実施例では、側面部102に接着する。
【0067】
尚、両側領域L2の樹脂含浸した強化繊維シート積層体10、即ち、各強化繊維シート1(1a、1b、1c)をコンクリート梁100の貼着面101に、更には、第1、第2及び第3アンカー部材12B(12a、12b、12c)を貼着面102に空隙が発生することなく接着させるために、強化繊維シート1、並びに第1、第2及び第3アンカー部材12B(12a、12b、12c)をコンクリート梁100側へと押圧するのが好ましい。押圧手段としては任意の手段を使用し得るが、バキュームバッグとシール材を用いて含浸した強化繊維シート1の補強部分を完全にラップし、ラップ内エアーをポンプにより吸引し、シートを被補強構造物に押し付け常温硬化することが好ましい。
【0068】
勿論、上述したように、もし、硬化を促進させたい場合は、加熱手段により加熱することもできる。加熱手段としては任意のものを使用し得るが、例えば、上述した図6に示すような面状発熱体、即ち、平面ヒータ30をバキュームバッグと共に強化繊維シート1などに密着させて用いることもできる。
【0069】
又、両側領域L2のコンクリート梁100の貼着面101、102は、強化繊維シート1及びアンカー部材12Bを接着するに先立って、予めプライマーを塗布して下地処理を行うのが好ましい。又、更に、予めマトリクス樹脂を塗布しておくこともできる。プライマーとしては、マトリクス樹脂と同系の又は同じ樹脂、例えば、通常使用されている、エポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂などとし得る。
【0070】
マトリクス樹脂が硬化し、樹脂含浸された強化繊維シート1、及び、第1、第2、第3アンカー部材12B(12a、12b、12c)がそれぞれ構造物の被補強表面、即ち、貼着面101、及び、側面102に完全に貼着した時点において、ジャッキを駆動して所定の速度で、例えば1分間当たり100〜500N/mm2に相当する定荷重速度にて緊張力を解放する。
【0071】
次いで、今や、樹脂が硬化し繊維強化プラスチック(FRP部材)とされる強化繊維シート積層体10を、特に、第1強化繊維シート1aを、図1(D)及び図2に示すように、有効長領域Lの両端部(位置A)にて切断し、第1強化繊維シート1aのコンクリート梁貼着面101に接着固定された有効長領域を残し、それ以外の両端外方領域を除去する。
【0072】
第1剥離シート11aは、第1アンカー部材12a及び第1強化繊維シート1aの端部と、第2強化繊維シート1bの端部とが接着されることを防止しており、第2剥離シート11bは、第2アンカー部材12b及び第2強化繊維シート1bの端部と、第3強化繊維シート1cとが接着されることを防止している。
【0073】
第1及び第2剥離シート11a、11bは、繊維強化プラスチック(FRP部材)とされコンクリート梁貼着面101に接着固定されている強化繊維シート積層体10の両端外方領域から除去することができる。又、第1強化繊維シート1aに接着されていない第2強化繊維シート1bの両端部、及び第2強化繊維シート1bに接着されていない第3強化繊維シート1cの両端部は、それぞれ、図2の位置B、Cにて切断し、除去する。
【0074】
これによって、コンクリート梁100は、図3に一点鎖線にて示すような、コンクリート梁貼着面101に接着された複数層をなす強化繊維シート1の両端部がコンクリート構造物表面最内層から最外層へと向かって段状となるようにした態様で補強がなされる。
【0075】
更に、本実施例では、段状とされる強化繊維シート積層体10の端部に相当する位置に、強化繊維シート1の長手方向に対して直交する方向に強化繊維が配列されたアンカー部材12Bが積層配置され、コンクリート梁100の側面貼着面102に接着固定する構造とされるので、強化繊維シート1の両端部の剥離防止が強化される。
【0076】
アンカー部材12B(12a、12b、12c)は、場合によっては省略することも可能である。
【0077】
実施例2
上記実施例1では、コンクリート梁100に貼着された中央部領域L1のマトリクス樹脂が硬化し、強化繊維シート1が構造物表面に接着した時点において、強化繊維シート積層体10の中央部領域L1の両側の長さL2とされる領域、即ち、両側領域L2が全て樹脂を含浸して、両側領域L2の強化繊維シート1をコンクリート梁100の貼着面101に接着するものとして説明したが、本実施例では、図1(C)に示すように、樹脂未含浸強化繊維シート積層体10の両側領域L2の一部領域L2aにのみ樹脂を含浸して、先ず、この部分を構造物表面に接着することができる。
【0078】
その後、上記接着領域L2aに隣接した樹脂未含浸強化繊維シート積層体10の一部領域L2bに樹脂を含浸して、この部分を構造物表面に接着することができる。
【0079】
本実施例では、両側領域L2は、領域L2a、L2bの2区分とされたが、これに限定されるものではなく、中央部領域L1の残余部の長さによって、更に多くの領域に区分して、中央部領域L1より外方へと逐次に接着することができる。
【0080】
本実施例のその他の構成及び作業手順等は、実施例1と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0081】
本実施例においても、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0082】
実施例3
実施例1、2では、アンカー部材12A、12Bとして強化繊維シートを使用するものとしたが、図7及び図8に示すように、強化繊維シートであるアンカー部材12A、12Bの代わりに、定着板13A、13B(13a、13b、13c)を使用しても良い。
【0083】
つまり、アンカー部材13Bに関して説明すると、本実施例では、定着板13B(13a、13b、13c)は、強化繊維シート1が、コンクリート梁100の貼着面101に緊張、接着された後、緊張力が解放される直前までの間において、段状とされる強化繊維シート積層体10の端部に相当する位置に積層配置し、そして、コンクリート梁100の側面貼着面101にアンカーボルト15にて固定する。定着板13B(13a、13b、13c)の、強化繊維シート1より突出したアンカー部13a’、13b’、13c’にはボルト穴14が形成される。
【0084】
定着板13(13a、13b、13c)は、例えば、鋼板などの金属製とすることもできるが、FRP(繊維強化プラスチック)製とすることもできる。このとき、強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、など任意の繊維を使用し得る。
【0085】
樹脂が硬化し強化繊維シート積層体10が繊維強化プラスチック(FRP部材)となった時点において、強化繊維積層体10は、図7に示すように、第1強化繊維シート1aの有効長領域Lの両端部(位置A)にて切断し、それ以外の両端外方領域を除去する。
【0086】
第1及び第2剥離シート11a、11b、更には、これら第1及び第2剥離シート11a、11bと積層されている第2及び第3強化繊維シート1b、1cの端部は、定着板13B(13a、13b、13c)とアンカーボルト15にて固定されているので、除去する必要はない。
【0087】
上記定着板13Aは、強化繊維シートであるアンカー部材12Aの代わりに、中央部領域L1の端部に同様の構成にて使用することができる。
【0088】
本実施例の定着板13A、13Bを使用した構造物の補強方法においてもその他の点では実施例1、2の場合と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0089】
本実施例においても、実施例1、2と同様の作用効果を得ることができる。
【0090】
実施例4
次に、図9を参照して、本発明に従った緊張接着工法の他の実施例について説明する。
【0091】
本実施例の緊張接着工法は、例えば100mといった長い橋のコンクリート梁100に本発明を適用する場合に好適に採用し得るものである。
【0092】
図9(A)に示すように、先に説明した実施例1と同様に、第1、第2及び第3強化繊維シート1(1a、1b、1c)からなる強化繊維シート積層体10の両端部が緊張装置のジャッキ手段(図示せず)に保持され、案内ローラ20により、少なくともその有効長Lの領域、即ち、有効長領域Lがコンクリート梁100のシート貼着面101に近接した位置へと案内される。
【0093】
引き続いて、緊張装置のジャッキ手段を作動させ、強化繊維シート積層体10、即ち、第1、第2及び第3強化繊維シート1(1a、1b、1c)を一括して長手方向に引っ張り、各強化繊維シート1(1a、1b、1c)に緊張力を導入する。
【0094】
次いで、図9(B)に示すように、案内ローラ20を移動し、強化繊維シート積層体10をコンクリート梁100の貼着面101に当接或いは近接配置する。
【0095】
以上の諸工程は、実施例1と同様である。
【0096】
本実施例によると、図9(B)に示すように、各強化繊維シート1(1a、1b、1c)が緊張状態に維持された状態にて、強化繊維シート積層体10の一部領域、即ち、有効長領域Lの一方側端部の所定長さL1の領域(「端部領域L1」という。)にのみマトリクス樹脂を含浸させる。
【0097】
つまり、例えば強化繊維シート積層体10のコンクリート構造体表面101とは反対側の面から、即ち、第3強化繊維シート1cの外側面にマトリクス樹脂を塗布する。勿論、強化繊維シート積層体10を貼着面101に当接或いは近接配置するに先立って強化繊維シート積層体10の端部領域L1の内側面、即ち、第1強化繊維シート1a側にマトリクス樹脂を含浸させておくこともできる。
【0098】
これにより、強化繊維シート積層体10には、端部領域L1において、その内部の第2強化繊維シート1b及び第1強化繊維シート1aにまで、十分にマトリクス樹脂が含浸される。
【0099】
例えば、100m長さの橋などの場合、上記端部領域L1の長さは、これに限定されるものではないが、通常、作業性の点から20〜30m程度とされるであろう。
【0100】
勿論、場合によっては省略することも可能であるが、次いで、コンクリート構造体表面101に貼着された強化繊維シート積層体10の端部領域L1の両端部に、即ち、外方端部にアンカー部材16Bを、また、内方端部にアンカー部材16Aを接着し、強化繊維シート積層体10を構造物100に定着することができる。
【0101】
アンカー部材16A、16Bは、実施例1、3で説明したアンカー部材12A、12B(強化繊維シート)、或いは、アンカー部材13A、13B(定着板)と同様の構成とすることができる。
【0102】
つまり、アンカー部材16Aは、アンカー部材12A、13Aと同様に各強化繊維シート1(1a、1b、1c)の内方端部を同時に一括して固定する。一方、アンカー部材16Bは、各強化繊維シート1(1a、1b、1c)の外方端部を同時に固定することもできるが、実施例1、3で説明したように、アンカー部材12B、13Bと同様に、各強化繊維シート1(1a、1b、1c)の外方端部をそれぞれ固定するように配置して、コンクリート構造物に接着された複数層をなす強化繊維シートの外方端部が構造物表面最内層から最外層へと向かって段状となるように構成するのが好ましい。
【0103】
尚、含浸した強化繊維シート積層体10、更には、強化繊維シートとされるアンカー部材16A、16Bなどは、実施例1で説明したように、バキュームバッグとシール材を用いて被補強構造物に押し付け常温硬化することが好ましい。もし、硬化を促進させる場合は、例えば、図6に示すような面状発熱体、即ち、平面ヒータ30をバキュームバッグと共に強化繊維シートなどに密着させて用いることができる。
【0104】
又、コンクリート梁100の貼着面101などは、実施例1で説明したように、強化繊維シート1などを接着するに先立って、予めプライマーを塗布して下地処理を行うのが好ましい。又、更に、予めマトリクス樹脂を塗布しておくこともできる。
【0105】
上記工程にて、コンクリート梁100に貼着された端部領域L1のマトリクス樹脂が硬化し、強化繊維シート積層体10などが貼着面101などに完全に接着した時点において、強化繊維シート積層体10の端部領域L1に隣接した長さL2とされる一部領域L2に樹脂を含浸して、この一部領域L2の強化繊維シート1をコンクリート梁100の貼着面101に接着する。一部領域L2の長さは、これに限定されるものではないが、通常、作業性の点から20〜30m程度とされるであろう。
【0106】
つまり、隣接した一部領域L2の各強化繊維シート1(1a、1b、1c)は、未だ緊張状態に維持された状態にある。この緊張状態を維持したままで、端部領域L1に隣接した一部領域L2において、強化繊維シート積層体10のコンクリート構造体表面101とは反対側の面、即ち、第3強化繊維シート1cの外側面にマトリクス樹脂を塗布する。更には、例えば強化繊維シート積層体10の緊張状態を維持しながら、案内ローラ20を幾分下方へと移動して強化繊維シート積層体10とコンクリート構造体表面101との間に空隙を設け、この空隙を利用して強化繊維シート積層体10の内側面、即ち、第1強化繊維シート1a側にマトリクス樹脂を含浸させても良い。
【0107】
これにより、強化繊維シート積層体10の一部領域L2には、その内部の第2強化繊維シート1b及び第1強化繊維シート1aにまで、十分にマトリクス樹脂が含浸される。
【0108】
好ましくは、この一部領域L2の、少なくとも、貼着面101に接着されている前記端部領域L1とは反対側の端部に、上述と同様の構成とされるアンカー部材16Aを接着する。勿論、必要に応じて、前記端部領域L1側の端部にもアンカー部材16Aを接着しても良い。
【0109】
次に、コンクリート貼着面101に接着し、固化された一部領域L2に隣接する、未だ未含浸の強化繊維シート積層体10の一部領域L3も、一部領域L2の場合と同様にして、コンクリート貼着面101に接着する。
【0110】
好ましくは、この一部領域L3の、少なくとも、貼着面101に接着されている前記一部領域L2とは反対側の端部に、上述と同様の構成とされるアンカー部材16Aを接着する。勿論、必要に応じて、前記一部領域L2側の端部にもアンカー部材16Aを接着しても良い。
【0111】
次いで、コンクリート貼着面101に接着し、固化された一部領域L3に隣接する、未だ未含浸の強化繊維シート積層体10の一部領域、本実施例では、上記端部領域L1とは反対側の端部領域L4を、今までの接着工程と同様にして、コンクリート貼着面101に接着する。
【0112】
この端部領域L4においては、必要に応じて、前記一部領域L3側の端部にアンカー部材16Aを接着しても良い。また、端部領域L4の外方端部にアンカー部材16Bを定着することができる。このアンカー部材16Bは、各強化繊維シート1(1a、1b、1c)の端部を同時に固定することもできるが、実施例1、3で説明したように、各強化繊維シート1(1a、1b、1c)の外方端部をそれぞれ固定するように配置され、コンクリート構造物に接着された複数層をなす強化繊維シートの外方端部が構造物表面最内層から最外層へと向かって段状となるように構成するのが好ましい。
【0113】
本実施例によると、上述にて理解されるように、各強化繊維シート1(1a、1b、1c)の有効長領域Lの両端部には、アンカー部材16Bをそれぞれ配置して固定する構成とすることにより、コンクリート構造物に接着された複数層をなす強化繊維シートの両端部が構造物表面最内層から最外層へと向かって段状に構成される。
【0114】
従って、本実施例によれば、有効長領域Lの両端部にて、第1強化繊維シート1aと第2強化繊維シート1b、第2強化繊維シート1bと第3強化繊維シート1cが互いに接着されることが防止され、それによって、最内層から最外層へと行くに従って、強化繊維シート1の有効長が短くされた積層構造が実現され、端部応力集中が低減された補強構造が提供される。
【0115】
斯かる端部構造については、図2及び図3、並びに、図7及び図8を参照して実施例1、3にて上述した通りであり、更なる説明は省略する。
【0116】
マトリクス樹脂が硬化し、樹脂含浸された強化繊維シート1などが構造物の被補強表面、即ち、貼着面101などに完全に貼着した時点において、ジャッキを駆動して所定の速度で、例えば1分間当たり100〜500N/mm2に相当する定荷重速度にて緊張力を解放する。
【0117】
本実施例の、上述しなかったその他の構成及び作業手順等は、実施例1、3と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0118】
本実施例においても、実施例1、3と同様の作用効果を得ることができる。
【0119】
実施例5
次に、図10及び図11を参照して、本発明に従った緊張接着工法の他の実施例について説明する。
【0120】
本実施例の緊張接着工法は、例えば50m以上の、しかも、キャンバーのある長い橋のコンクリート梁100に本発明を適用する場合に好適に採用し得るものである。
【0121】
図10に示すようなキャンバーのある長い橋のコンクリート梁100においては、上記各実施例の場合のように、強化繊維シートを一括して長手方向に引っ張り、強化繊維シートに緊張力を導入し、順次、緊張した状態の強化繊維シートの一部領域に樹脂を含浸し、この樹脂含浸された一部領域を構造物の被補強表面101に押圧して接着し、硬化する、といった緊張接着工法は採用し得ない。
【0122】
そこで、本実施例では、図10に示すように、有効長領域Lを、複数の作業区間、本実施例では、第1、第2、第3作業区間L1、L2、L3に分割し、各区間毎に、強化繊維シート、即ち、強化繊維シート積層体10に対する緊張、樹脂含浸、被補強面への接着を行う。各作業区間L1、L2、L3の長さは、これに限定されるものではないが、通常、作業性の点から20〜30m程度とされるであろう。図11を参照して更に説明する。
【0123】
図11(A)に示すように、本実施例によると、先に説明した実施例1の場合と異なり、第1、第2及び第3強化繊維シート1(1a、1b、1c)からなる強化繊維シート積層体10は、第1作業区間L1に相当する領域が案内ローラ20により案内され、緊張装置のジャッキ手段を作動させ、強化繊維シート積層体10、即ち、第1、第2及び第3強化繊維シート1(1a、1b、1c)を一括して長手方向に引っ張り、第1作業区間L1に相当する領域の各強化繊維シート1(1a、1b、1c)に緊張力を導入し、各強化繊維シート積層体10に樹脂を含浸して、被補強面に接着する。第1作業区間L1の強化繊維シート積層体10の両端部は、被補強表面101にアンカー部材21、22により定着される。
【0124】
つまり、本実施例では、強化繊維シート積層体10は、第1、第2、第3作業区間L1、L2、L3に貼付するに充分な長さの連続した長尺ものが準備され、先ず、この長尺の強化繊維シート積層体10の第1作業区間L1に相当する領域の一端部が、アンカー部材21にて被補強表面に定着される。勿論、アンカー部材21による端部定着は、先の実施例1などで図2、図3などを参照して説明したように、第1作業区間L1の緊張接着作業時に、構造物表面最内層から最外層へと向かって段状となるように行うことも可能である。
【0125】
本実施例によると、上記アンカー部材21による端部定着の後、次いで、強化繊維シート積層体10は、定着された端部とは反対側の自由端側が案内ローラ20により案内され、第1作業区間L1に相当する領域が緊張装置のジャッキ手段により一括して長手方向に緊張され、緊張力が導入される。
【0126】
第1作業区間L1に相当する領域の各強化繊維シート1(1a、1b、1c)は、緊張状態にて、先に説明した各実施例と同様に、樹脂が含浸され、被補強表面101に押圧して接着し、硬化される。
【0127】
その後、第1作業区間L1のアンカー部材21が定着された側とは反対側に、アンカー部材22が定着される。
【0128】
尚、本実施例では、第2作業区間L2の緊張作業のために、アンカー部材22に隣接して仮止めアンカー部材31を設けた。
【0129】
樹脂が硬化し、樹脂含浸された強化繊維シート積層体10が構造物の被補強表面、即ち、貼着面101に完全に接着硬化した時点において、ジャッキを駆動して緊張力を解放する。
【0130】
次いで、図9(B)に示すように、案内ローラ20を移動し、強化繊維シート積層体10を、第2作業区間L2に相当する領域に案内し、先に説明した第1作業区間L1におけると同様の緊張接着作業を行う。
【0131】
つまり、強化繊維シート積層体10は、仮アンカー部材31に隣接する自由端側が案内ローラ20により案内され、第2作業区間L2に相当する領域が緊張装置のジャッキ手段により一括して長手方向に緊張され、緊張力が導入される。次いで、緊張状態下に、第2作業区間L2に相当する領域の各強化繊維シート1(1a、1b、1c)に樹脂が含浸され、被補強表面101に押圧して接着し、硬化される。
【0132】
その後、第2作業区間L2の仮アンカー部材31が定着された側とは反対側に、アンカー部材23が定着される。また、本実施例では、第3作業区間L3の緊張作業のために、アンカー部材23に隣接して仮止めアンカー部材32を設けた。
【0133】
マトリクス樹脂が硬化し、樹脂含浸された強化繊維シート積層体10などが構造物の被補強表面、即ち、貼着面101に完全に貼着した時点において、ジャッキを駆動して緊張力を解放する。
【0134】
次に、図9(C)に示すように、案内ローラ20を移動し、強化繊維シート積層体10を、第3作業区間L3に相当する領域に案内し、先に説明した第1、第2作業区間L1、L2におけると同様の緊張接着作業を行う。
【0135】
つまり、強化繊維シート積層体10は、仮アンカー部材25に隣接する自由端側が案内ローラ20により案内され、第3作業区間L3に相当する領域が緊張装置のジャッキ手段により一括して長手方向に緊張され、緊張力が導入される。次いで、緊張状態下に、第3作業区間L3に相当する領域の各強化繊維シート1(1a、1b、1c)に樹脂が含浸され、被補強表面101に押圧して接着し、硬化される。
【0136】
その後、第3作業区間L3の仮アンカー部材23が定着された側とは反対側に、アンカー部材24が定着される。
【0137】
マトリクス樹脂が硬化し、樹脂含浸された強化繊維シート積層体10などが構造物の被補強表面、即ち、貼着面101に完全に貼着した時点において、ジャッキを駆動して緊張力を解放する。
【0138】
上記緊張接着作業の終了に伴い、緊張装置が取り外され、強化繊維シート積層体10の端部も不要部分が切除される。又、上記仮アンカー部材31、32は、緊張接着作業終了時に撤去されるが、場合によっては、各作業区間の緊張接着作業終了後に実施することができる。
【0139】
上述のような本実施例の緊張接着工法は、各作業区間、例えば、上述の第1、第2、第3作業区間L1、L2、L3の緊張力を同じとすることによって、第1、第2、第3作業区間L1、L2、L3の緊張接着作業終了後、中間定着点、即ち、アンカー部材22、23の位置で緊張力によるコンクリート界面の剪断力が生じないという利点がある。従って、各作業区間の緊張力を同じとした場合には、中間定着用のアンカー部材22、23も又、緊張接着作業終了後において撤去することができる。
【0140】
また、上記アンカー部材21〜24及び仮アンカー部材31、32は、実施例1、3で説明したアンカー部材12A(強化繊維シート)、或いは、アンカー部材13A(定着板)と同様の構成とすることができる。
【0141】
上記実施例では、アンカー部材21、24は、各強化繊維シート1(1a、1b、1c)を同時に一括して固定するものとして説明したが、上述したように、アンカー部材21、更には、アンカー部材24も又、実施例1、3で説明したように、アンカー部材12B、13Bと同様に、各強化繊維シート1(1a、1b、1c)の外方端部をそれぞれ固定するように配置して、コンクリート構造物に接着された複数層をなす強化繊維シートの外方端部が構造物表面最内層から最外層へと向かって段状となるように構成することも可能である。斯かる端部構造については、図2及び図3、並びに、図7及び図8を参照して実施例1、3にて上述した通りであり、更なる説明は省略する。
【0142】
本実施例の、上述しなかったその他の構成及び作業手順等は、実施例1、3、4と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0143】
本実施例においても、実施例1、3、4と同様の作用効果を得ることができる。
【0144】
上記各実施例1〜5では、コンクリート構造物の補強に関して説明したが、本発明は、鋼構造物の補強に際しても同様に適用することができ、同様の作用効果を達成し得る。
【0145】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、樹脂未含浸の連続強化繊維シートを長手方向に引っ張り、強化繊維シートに緊張力を導入した状態で構造物の被補強表面に接着する構造物の補強方法において、
(A)積層された各強化繊維シートを一括して長手方向に引っ張り、強化繊維シートに緊張力を導入し、緊張した状態の強化繊維シートの一部領域に樹脂を含浸し、この樹脂含浸された一部領域を構造物の被補強表面に押圧して接着し、硬化し、その後、未含浸の残余の強化繊維シートの少なくとも一部領域に樹脂を含浸し、この樹脂含浸された一部領域を構造物の被補強表面に押圧して接着し、硬化する作業を繰り返すことによって、強化繊維シートの補強に供する有効長領域の全領域に対し、樹脂を含浸し、強化繊維シートを構造物表面に接着し、樹脂を硬化させ、その後、強化繊維シートに導入した緊張力を開放する構成とするか、又は、
(B)構造物の被補強表面を複数の作業区間領域に分割し、構造物の被補強表面の一端部領域である第1作業区間領域に対応して、積層された各強化繊維シートの一部を一括して長手方向に引っ張り、強化繊維シートに緊張力を導入し、緊張した状態の強化繊維シートに樹脂を含浸し、この樹脂含浸された領域を第1作業区間領域の構造物の被補強表面に押圧して接着し、硬化し、樹脂が硬化した後、強化繊維シートに導入した緊張力を開放し、次いで、残りの作業区間領域に対して、緊張、含浸、接着硬化、緊張力解放作業を繰り返し、構造物の被補強表面の全領域に強化繊維シートを接着する構成とされるので、緊張接着工法に基づく構造物の補強を、極めて作業性良く実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従った構造物の補強方法の一実施例の工程を説明するための模式図である。
【図2】本発明に従った構造物の補強方法の一実施例を説明するための正面図である。
【図3】本発明に従った構造物の補強方法の一実施例を説明するための斜視図である。
【図4】本発明にて使用することのできる強化繊維シートの一実施例を示す斜視図である。
【図5】本発明にて使用することのできる強化繊維シートの他の実施例を示す斜視図である。
【図6】加熱手段の一実施例を示す斜視図である。
【図7】本発明に従った構造物の補強方法の他の実施例を説明するための正面図である。
【図8】本発明に従った構造物の補強方法の他の実施例を説明するための斜視図である。
【図9】本発明に従った構造物の補強方法の他の実施例の工程を説明するための模式図である。
【図10】本発明に従った構造物の補強方法の他の実施例を説明するための正面図である。
【図11】本発明に従った構造物の補強方法の他の実施例の工程を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1(1a、1b、1c) 強化繊維シート
2 強化繊維
2A 強化繊維層
3 支持体
4 バラケ止め繊維
10 強化繊維シート積層体
11(11a、11b) 剥離シート
12A、12B(12a、12b、12c) アンカー部材(アンカー強化繊維シート)
13A、13B(13a、13b、13c) アンカー部材(定着板)
15 アンカーボルト
16A、16B アンカー部材
20 案内ロール
21〜24 アンカー部材
30 加熱手段(面状発熱体)
31、32 仮アンカー部材
100 構造物
101、102 構造物貼着面
Claims (21)
- 樹脂未含浸の連続強化繊維シートを長手方向に引っ張り、強化繊維シートに緊張力を導入した状態で構造物の被補強表面に接着する構造物の補強方法において、
(a)構造物の被補強表面に適合するように強化繊維シートを複数枚長手方向に整列して積層する工程、
(b)前記積層された各強化繊維シートを一括して長手方向に引っ張り、強化繊維シートに緊張力を導入する工程、
(c)前記緊張した状態の前記強化繊維シートの一部領域に樹脂を含浸し、この樹脂含浸された一部領域を構造物の被補強表面に押圧して接着し、硬化する工程、
(d)次いで、未含浸の残余の前記強化繊維シートの少なくとも一部領域に樹脂を含浸し、この樹脂含浸された一部領域を構造物の被補強表面に押圧して接着し、硬化する工程、
(e)前記強化繊維シートの補強に供する有効長領域の全領域に対し、樹脂を含浸し、前記強化繊維シートを構造物表面に接着し、樹脂が硬化するまで前記工程(d)を繰り返す工程、
(f)その後、前記強化繊維シートに導入した緊張力を開放する工程、
を有することを特徴とする構造物の補強方法。 - 前記工程(c)における前記一部領域は、前記強化繊維シートの中央部領域であり、前記工程(d)の前記未含浸の残余の前記強化繊維シートの少なくとも一部領域は、前記構造物表面に接着された中央部領域の両端部に隣接する領域であることを特徴とする請求項1の構造物の補強方法。
- 前記工程(c)にて構造物表面に接着された中央部領域の前記強化繊維シートの両端部にアンカー部材を取り付けることを特徴とする請求項2の構造物の補強方法。
- 前記工程(d)にて構造物表面に接着された前記強化繊維シートの有効長領域外方両端部にアンカー部材を取り付けることを特徴とする請求項1、2又は3の構造物の補強方法。
- 前記工程(c)における前記一部領域は、前記強化繊維シートの一方側の端部領域であり、次いで、前記工程(d)における一部領域は、前記端部領域に隣接する領域であり、同様にして前記工程(e)を実施することを特徴とする請求項1の構造物の補強方法。
- 前記工程(c)にて構造物表面に接着された端部領域の前記強化繊維シートの両端部にアンカー部材を取り付け、次いでこの端部領域に隣接して構造物表面に接着された領域の、少なくとも前記アンカー部材が取り付けられていない側の前記強化繊維シートの端部にアンカー部材を取り付けることを特徴とする請求項5の構造物の補強方法。
- 樹脂未含浸の連続強化繊維シートを長手方向に引っ張り、強化繊維シートに緊張力を導入した状態で構造物の被補強表面に接着する構造物の補強方法において、
(a)構造物の被補強表面を複数の作業区間領域に分割し、全作業区間領域に適合するように強化繊維シートを複数枚長手方向に整列して積層する工程、
(b)前記構造物の被補強表面の一端部領域である第1作業区間領域に対応して、前記積層された各強化繊維シートの一部を一括して長手方向に引っ張り、強化繊維シートに緊張力を導入する工程、
(c)前記緊張した状態の前記強化繊維シートに樹脂を含浸し、この樹脂含浸された領域を前記第1作業区間領域の前記構造物の被補強表面に押圧して接着し、硬化する工程、
(d)樹脂が硬化した後、前記強化繊維シートに導入した緊張力を開放する工程、
(e)次いで、残りの各作業区間領域に対して、前記工程(b)、(c)、(d)と同様の緊張力導入、樹脂含浸、接着硬化、緊張力解放工程を繰り返し、前記構造物の被補強表面の全領域に前記強化繊維シートを接着する工程、
を有することを特徴とする構造物の補強方法。 - 前記構造物の被補強表面に接着された前記強化繊維シートの、少なくとも両端部にアンカー部材を取り付けることを特徴とする請求項7の構造物の補強方法。
- 構造物表面に接着された前記複数層をなす強化繊維シートの補強領域外方両端部が構造物表面最内層から最外層へと向かって段状となるようにしたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
- 前記アンカー部材は、前記段状とされる前記各強化繊維シートの各端部に取り付けることを特徴とする請求項9の構造物の補強方法。
- 前記強化繊維シートは、連続した強化繊維を均一に引き揃え、互いに密に一方向に配列した強化繊維シートであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
- 前強化繊維は、PAN系或いはピッチ系炭素繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用されることを特徴とする請求項11の構造物の補強方法。
- 前記強化繊維シートは、その片面、或いは、両面を、メッシュ状の支持体シートにより支持されていることを特徴とする請求項11又は12の構造物の補強方法。
- 前記強化繊維シートは、一方向に配列された強化繊維に対して直交して横糸として繊維が一定の間隔にて打ち込まれていることを特徴とする請求項11又は12の構造物の補強方法。
- 前記樹脂は、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
- 前記アンカー部材は、樹脂で前記強化繊維シート及び構造物に接着されるアンカー強化繊維シートであるか、又は、ボルトにて前記強化繊維シート及び構造物に定着される定着板である請求項3〜10のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
- 前記アンカー強化繊維シートは、強化繊維が前記強化繊維シートの長手方向に対して直交する方向に配列されていることを特徴とする請求項16の構造物の補強方法。
- 前記アンカー強化繊維シートは、前記強化繊維シートと同じ構成とされることを特徴とする請求項17の構造物の補強方法。
- 前記定着板は、金属製板或いはFRP製板とされることを特徴とする請求項16の構造物の補強方法。
- 樹脂が含浸された前記強化繊維シートに面状発熱体を適用して加熱することを特徴とする請求項1〜19のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
- 前記構造物は、コンクリート構造物或いは鋼構造物であることを特徴とする請求項1〜20のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
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