JP4870537B2 - 構造物の補強方法及び定着具 - Google Patents
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(1)強化繊維シート補強材を複数枚積層して接着した場合、同一位置で各層を接着することとなるが、設計上必要な定着長を確保できない場合は、強化繊維シート補強材にかかる引張力を固定具、例えば、アンカーの剪断耐力或いは鋼板の圧着による付着力との和で負担することになる。そのために、アンカーが多数必要となる。また、鋼板の面積が大きくなる。
(2)アンカーが同一定着位置で多数になる場合は、既設コンクリートの鉄筋の配置状況により、アンカー孔の削孔が容易に行えない可能性がある。
(3)高架橋などのコンクリート構造物では、仮設の足場での作業が主であるため、定着体としての鋼板の面積が大きくなった場合は、鋼板が非常に重く施工上困難となる場合が生じる。
(4)強化繊維シート補強材の使用枚数が増え、定着体を大きくする必要が生じた場合には、定着体固着のためのアンカー孔を深くし、又、大きくして、その固着力を増大させることが必要となり、そのために、コンクリート構造物を破壊する虞が生じてくる。
固定具により構造物に固定することのできる軸線方向に延在した棒状の定着体と、
所定の幅と長さを備えたシート状とされる強化繊維シートにて作製され、一端部領域が前記定着体の周面に巻き付けられて前記定着体の周面に樹脂にて接着固定され、残りの領域は前記定着体の周面に接着固定されることなく前記定着体から延在している定着用強化繊維シート補強材と、
を有する定着具において、
前記定着用強化繊維シート補強材は、
(1)強化繊維を一方向に配列した強化繊維層の片面、或いは、両面を、メッシュ状の支持体シートにより支持した構成の少なくとも1枚の一方向配列強化繊維シートか、又は、
(2)一方向に配列された強化繊維に対して直交して、横糸を一定の間隔にて打ち込んで構成した少なくとも1枚の一方向配列強化繊維シートか、又は、
(3)強化繊維で形成したシート状織物である少なくとも1枚の強化繊維シートにて構成され、
前記定着体は、前記定着体の軸線方向に所定の間隔にて、前記固定具のための複数のアンカー孔が穿設され、前記アンカー孔の周囲の前記定着用強化繊維シート補強材は、前記アンカー孔を避けて両側に寄せられ、前記アンカー孔を穿設することにより切断されることがない、
ことを特徴とする定着具が提供される。
構造物の貼着面に細長形状の強化繊維シート補強材を樹脂で接着することにより構造物を補強する補強方法において、
(a)構造物の貼着面の両端領域に位置して、上記構成の定着具である第1の定着具を配置し、少なくとも、前記第1の定着具から延在した第1の定着用強化繊維シート補強材を前記貼着面に樹脂にて接着し、且つ、前記第1の定着具の定着体を固定具にて構造物に固定し、
(b)前記両第1の定着具の間の前記構造物の貼着面に第1の補強用強化繊維シート補強材を樹脂にて接着し、前記第1の補強用強化繊維シート補強材の両端継手領域が、前記両第1の定着具の前記第1の定着用強化繊維シート補強材と接合するようにした、
ことを特徴とする構造物の補強方法が提供される。
(c)更に、前記両第1の定着具の間の領域において、前記(b)工程にて接着された前記第1の補強用強化繊維シート補強材に重なるようにして上記構成の定着具である第2の定着具を配置し、少なくとも、前記第2の定着具から延在した第2の定着用強化繊維シート補強材を前記第1の補強用強化繊維シート補強材に積層して樹脂にて接着し、且つ、前記第2の定着具の定着体を固定具にて構造物に固定し、
(d)前記両第2の定着具の間の領域において、前記第1の補強用強化繊維シート補強材に積層して、第2の補強用強化繊維シート補強材を樹脂にて接着し、前記第2の補強用強化繊維シート補強材の両端継手領域が、前記両第2の定着具の前記第2の定着用強化繊維シート補強材と接合するようにし、
(e)必要に応じて、前記(c)、(d)工程を繰り返す。
構造物の貼着面に細長形状の強化繊維シート補強材を樹脂で接着することにより構造物を補強する補強方法において、
(a)構造物の貼着面に第1の補強用強化繊維シート補強材を樹脂にて接着し、
(b)前記第1の補強用強化繊維シート補強材の両端領域に位置して、上記構成の定着具である第1の定着具を配置し、少なくとも前記第1の定着具から延在した第1の定着用強化繊維シート補強材を前記第1の補強用強化繊維シート補強材の両端継手領域に積層して樹脂にて接着し、且つ、前記第1の定着具の定着体を固定具にて構造物に固定する、
ことを特徴とする構造物の補強方法が提供される。
(c)更に、前記両第1の定着具の間の領域において、前記第1の補強用強化繊維シート補強材に積層して、第2の補強用強化繊維シート補強材を樹脂にて接着し、
(d)前記両第1の定着具の間の領域において、前記(a)工程にて接着された前記第1の補強用強化繊維シート補強材に重なるようにして上記構成の定着具である第2の定着具を配置し、前記第2の定着具から延在した第2の定着用強化繊維シート補強材を前記第2の補強用強化繊維シート補強材の両端継手領域に積層して樹脂にて接着し、且つ、前記第2の定着具の定着体を固定具にて構造物に固定し、
(e)必要に応じて、前記(c)、(d)工程を繰り返す。
本発明の構造物の補強方法は、梁又は桁部材、更には、壁、柱部材、床版などのスラブ部材など、建築或いは土木構造物などであるコンクリート構造物或いは鋼構造物の補強、特に曲げ補強に際して広く適用し得るが、本実施例では、コンクリート梁の曲げ補強に適用した場合について説明する。
図10に、強化繊維シート1の一実施例を示す。
図2(a)、(b)を参照して、本発明の補強方法にて使用する定着具20について説明する。
図5に、本検討に使用した試験装置200の概略構成を示す。
試験1とは異なる炭素繊維シート1を使用し、定着体21の直径(D)としては、下記表2に示すように、40mm、60mmのものを使用した以外は、試験1と同じ試験装置200を使用し、同様の試験片を作製し、同様の方法にて、試験を行った。
次に、図1及び図2を参照して、本発明の補強方法の一実施例について説明する。本実施例ではコンクリート梁100を曲げ補強するものとする。
(a)構造物100の貼着面101の両端領域に位置して、上記構成の定着具20を配置し、少なくとも、定着具20から延在した定着用強化繊維シート補強材32を貼着面101に樹脂にて接着し、且つ、定着具20の定着体21を固定具25にて構造物100に固定し、
(b)両定着具20、20の間の構造物100の貼着面101に、両端継手領域40が、両定着具20、20の定着用強化繊維シート補強材32と接合するようにして、補強用強化繊維シート補強材10を樹脂にて接着する、
構成とされる。
(c)更に、上記第1層の補強層を構成する両第1の定着具20A、20Aの間の領域において、既に接着された第1の補強用強化繊維シート補強材10Aに重なるようにして上記構成の定着具である第2の定着具20B、20Bを配置し、少なくとも、第2の定着具20Bから延在した第2の定着用強化繊維シート補強材32Bを第1の補強用強化繊維シート補強材10Aに積層して樹脂にて接着し、且つ、第2の定着具20Bの定着体21Bを固定具24にて構造物100に固定し、
(d)両第2の定着具20B、20Bの間の領域において、第1の補強用強化繊維シート補強材10Aに積層して、両端継手領域40が、両第2の定着具20B、20Bの第2の定着用強化繊維シート補強材32Bと接合するようにして、第2の補強用強化繊維シート補強材10Bを樹脂にて接着し、
(e)必要に応じて、前記(c)、(d)工程を繰り返す、
ことが可能である。
上記実施例1では、先ず、定着具20を構造物100の貼着面101に接着して固定し、その後、補強用強化繊維シート補強材10を、その両端部が、両定着具20、20の定着用強化繊維シート補強材32と積層し、継手部40を形成するようにして、樹脂にて接着し、固定する、構成とした。
(a)構造物100の貼着面101に補強用強化繊維シート補強材10を樹脂にて接着し、
(b)補強用強化繊維シート補強材10の両端領域に位置して、上記構成の定着具20を配置し、少なくとも、定着具20から延在した定着用強化繊維シート補強材32を補強用強化繊維シート補強材10の両端継手領域40に積層して樹脂にて接着し、且つ、定着具20の定着体21を固定具25にて構造物100に固定する、
構成とされる。
(c)更に、両第1の定着具20Aの間の領域において、第1の補強用強化繊維シート補強材10Aに積層して、第2の補強用強化繊維シート補強材10Bを樹脂にて接着し、
(d)両第1の定着具20A、20Aの間の領域において、前記(a)工程にて接着された第1の補強用強化繊維シート補強材10Aに重なるようにして上記構成の第2の定着具20Bを配置し、第2の定着具20Bから延在した第2の定着用強化繊維シート補強材32Bを第2の補強用強化繊維シート補強材10Bの両端継手領域40に積層して樹脂にて接着し、且つ、第2の定着具20Bの定着体21Bを固定具25にて構造物100に固定し、
(e)必要に応じて、前記(c)、(d)工程を繰り返す、
ことが可能である。
上記実施例1、2では、樹脂が未だ含浸されていない強化繊維シート1、即ち、補強用強化繊維シート補強材10を使用し、コンクリート構造物表面に貼着するに際して、樹脂を強化繊維シート補強材10に含浸させ、コンクリート構造物表面101に接着するものとしたが、既に樹脂が含浸されたプリプレグの形態とされる強化繊維シート補強材10を使用することもできる。
2 強化繊維
3 支持体
4 強化繊維層
5 バラケ止め繊維
10 補強用強化繊維シート補強材
20 定着具
21 定着体
24 定着体貫通孔
25 アンカー(固定具)
30 定着用強化繊維シート補強材
31 定着用強化繊維シート補強材の巻付け部
32 定着用強化繊維シート補強材の自由端部
100 構造物
101 構造物貼着面
102 構造物側面
Claims (14)
- 固定具により構造物に固定することのできる軸線方向に延在した棒状の定着体と、
所定の幅と長さを備えたシート状とされる強化繊維シートにて作製され、一端部領域が前記定着体の周面に巻き付けられて前記定着体の周面に樹脂にて接着固定され、残りの領域は前記定着体の周面に接着固定されることなく前記定着体から延在している定着用強化繊維シート補強材と、
を有する定着具において、
前記定着用強化繊維シート補強材は、
(1)強化繊維を一方向に配列した強化繊維層の片面、或いは、両面を、メッシュ状の支持体シートにより支持した構成の少なくとも1枚の一方向配列強化繊維シートか、又は、
(2)一方向に配列された強化繊維に対して直交して、横糸を一定の間隔にて打ち込んで構成した少なくとも1枚の一方向配列強化繊維シートか、又は、
(3)強化繊維で形成したシート状織物である少なくとも1枚の強化繊維シートにて構成され、
前記定着体は、前記定着体の軸線方向に所定の間隔にて、前記固定具のための複数のアンカー孔が穿設され、前記アンカー孔の周囲の前記定着用強化繊維シート補強材は、前記アンカー孔を避けて両側に寄せられ、前記アンカー孔を穿設することにより切断されることがない、
ことを特徴とする定着具。 - 前記定着体は、軸線方向の長さが前記定着用強化繊維シート補強材の幅と同じか、或いは幾分大きくされ、横断面形状が、円形、楕円形、長円形、或いは、隅角部が円弧状とされた多角形とされる柱状体又は円筒体であることを特徴とする請求項1の定着具。
- 前記定着用強化繊維シート補強材において、前記定着体の周面に接着固定されることなく前記定着体から延在している領域は、樹脂が含浸されていないか、又は、樹脂が含浸された半硬化状態のプリプレグシートであるか、又は、樹脂が含浸され硬化されていることを特徴とする請求項1又は2の定着具。
- 前記強化繊維は、PAN系或いはピッチ系炭素繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の定着具。
- 前記樹脂は、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の定着具。
- 構造物の貼着面に細長形状の強化繊維シート補強材を樹脂で接着することにより構造物を補強する補強方法において、
(a)構造物の貼着面の両端領域に位置して、請求項1〜5のいずれかの項に記載の定着具である第1の定着具を配置し、少なくとも、前記第1の定着具から延在した第1の定着用強化繊維シート補強材を前記貼着面に樹脂にて接着し、且つ、前記第1の定着具の定着体を固定具にて構造物に固定し、
(b)前記両第1の定着具の間の前記構造物の貼着面に第1の補強用強化繊維シート補強材を樹脂にて接着し、前記第1の補強用強化繊維シート補強材の両端継手領域が、前記両第1の定着具の前記第1の定着用強化繊維シート補強材と接合するようにした、
ことを特徴とする構造物の補強方法。 - (c)更に、前記両第1の定着具の間の領域において、前記(b)工程にて接着された前記第1の補強用強化繊維シート補強材に重なるようにして請求項1〜5のいずれかの項に記載の定着具である第2の定着具を配置し、少なくとも、前記第2の定着具から延在した第2の定着用強化繊維シート補強材を前記第1の補強用強化繊維シート補強材に積層して樹脂にて接着し、且つ、前記第2の定着具の定着体を固定具にて構造物に固定し、
(d)前記両第2の定着具の間の領域において、前記第1の補強用強化繊維シート補強材に積層して、第2の補強用強化繊維シート補強材を樹脂にて接着し、前記第2の補強用強化繊維シート補強材の両端継手領域が、前記両第2の定着具の前記第2の定着用強化繊維シート補強材と接合するようにし、
(e)必要に応じて、前記(c)、(d)工程を繰り返す、
ことを特徴とする請求項6の構造物の補強方法。 - 構造物の貼着面に細長形状の強化繊維シート補強材を樹脂で接着することにより構造物を補強する補強方法において、
(a)構造物の貼着面に第1の補強用強化繊維シート補強材を樹脂にて接着し、
(b)前記第1の補強用強化繊維シート補強材の両端領域に位置して、請求項1〜5のいずれかの項に記載の定着具である第1の定着具を配置し、少なくとも前記第1の定着具から延在した第1の定着用強化繊維シート補強材を前記第1の補強用強化繊維シート補強材の両端継手領域に積層して樹脂にて接着し、且つ、前記第1の定着具の定着体を固定具にて構造物に固定する、
ことを特徴とする構造物の補強方法。 - (c)更に、前記両第1の定着具の間の領域において、前記第1の補強用強化繊維シート補強材に積層して、第2の補強用強化繊維シート補強材を樹脂にて接着し、
(d)前記両第1の定着具の間の領域において、前記(a)工程にて接着された前記第1の補強用強化繊維シート補強材に重なるようにして請求項1〜5のいずれかの項に記載の定着具である第2の定着具を配置し、前記第2の定着具から延在した第2の定着用強化繊維シート補強材を前記第2の補強用強化繊維シート補強材の両端継手領域に積層して樹脂にて接着し、且つ、前記第2の定着具の定着体を固定具にて構造物に固定し、
(e)必要に応じて、前記(c)、(d)工程を繰り返す、
ことを特徴とする請求項8の構造物の補強方法。 - 前記補強用強化繊維シート補強材は、強化繊維を一方向に配列した少なくとも1枚の一方向配列強化繊維シートか、又は、強化繊維で形成したシート状織物である少なくとも1枚の強化繊維シートにて構成されることを特徴とする請求項6〜9のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
- 前記強化繊維は、PAN系或いはピッチ系炭素繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用されることを特徴とする請求項10の構造物の補強方法。
- 前記樹脂は、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂であることを特徴とする請求項6〜11のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
- 前記補強用強化繊維シート補強材は、前記構造物に貼着する前においては、樹脂未含浸シートであるか、又は、樹脂が含浸された半硬化状態のプリプレグシートであることを特徴とする請求項6〜12のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
- 前記構造物は、コンクリート構造物或いは鋼構造物であることを特徴とする請求項6〜13のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
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