JP2010264655A - 多層ポリイミドフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来にない平滑性、耐熱性及び機械特性に優れ、遮光性又は光反射性を有する多層ポリイミドフィルムを提供すること。
【解決手段】 顔料を含むポリイミド層(b)の片面又は両面に顔料を含有しないポリイミド層(a)を積層した多層ポリイミドフィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、TABやCOFなどのテープ等の電子部品の素材、液晶ディスプレー用、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用、電子ペーパー用、太陽電池用などのベース素材として用いられる、遮光性又は光反射性を有する多層ポリイミドフィルムに関するものである。
従来より、ポリイミドは耐熱性、寸法安定性、力学特性、電気的性質、耐環境特性、難燃性などの各種物性に優れ、しかも柔軟性を有しているため、半導体集積回路を実装する際に用いられる、フレキシブルプリント基板やテープ・オートメイティド・ボンディング用基板として広く用いられている。
特許文献1には、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類とが重縮合してなるポリイミド(A)が30〜98質量部と、体質顔料(B)が2〜70質量部とを主成分とするポリイミドフィルムが開示されている。
特許文献2には、ジアミンと芳香族テトラカルボン酸とを反応させて得られるポリアミド酸に白色顔料を混合した液を支持体に流延・乾燥して、ポリイミド前駆体フィルムを得、該ポリイミド前駆体フィルムをイミド化させて得られる白色ポリイミドフィルムであって、ジアミンがトランスジアミノシクロヘキサン、メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、ジアミノジフェニルスルフォンから選ばれる少なくとも一種を主成分とすることを特徴とする白色ポリイミドフィルムが開示されている。
特開2007−077231号公報 特開2008−169237号公報
本発明は、従来にない平滑性、耐熱性及び機械特性に優れ、遮光性又は光反射性を有する多層ポリイミドフィルムを提供することを目的とする。
本発明の第一は、顔料を含むポリイミド層(b)の片面又は両面に顔料を含有しないポリイミド層(a)を積層した多層ポリイミドフィルムに関する。
本発明の第二は、本発明の第一の多層ポリイミドフィルムのポリイミド層(a)に金属層を直接若しくは接着剤層を介して積層した金属積層ポリイミドフィルムに関する。
本発明の第一の多層ポリイミドフィルムの好ましい態様を以下に示し、これら態様は任意に複数組合せることが出来る。
1)多層ポリイミドフィルムは、遮光性若しくは光反射性を有すること。
2)顔料は、非電導性並びに遮光性若しくは光反射性を有する顔料であること。
3)顔料は、カーボンブラック、鉄黒及び二酸化チタンから選ばれる顔料を含む非電導性並びに遮光性若しくは光反射性を有する顔料であること。
4)多層ポリイミドフィルムは、顔料を含有するポリイミド層(b)が得られるポリイミド前駆体溶液(b)の自己支持性フィルムに、顔料を含有しないポリイミド層(a)が得られるポリイミド前駆体溶液(b)を塗工して製造すること。
5)多層ポリイミドフィルムは、顔料を含有するポリイミド層(b)が得られるポリイミド前駆体溶液(b)と、顔料を含有しないポリイミド層(a)が得られるポリイミド前駆体溶液(a)とを共押出により流延して製造されたポリイミド層(b)とポリイミド層(a)とが多層一体化されていること。
6)ポリイミド層(b)は、酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を70〜100モル%含む酸成分と、ジアミン成分としてp−フェニレンジアミンを70〜100モル%含む芳香族ジアミン成分とから得られること。
7)ポリイミド層(a)は、酸成分としてピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれる成分を70〜100モル%含む酸成分と、ジアミン成分としてp−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル類、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン類、ビス(アミノフェノキシフェニル)アルキル類から選ばれる成分を70〜100モル%含むジアミン成分から得られること。
8)多層ポリイミドフィルムは、光透過率が10%以下であること。
本発明により、従来にない平滑性、耐熱性及び機械特性に優れ、非電導性並びに遮光性若しくは光反射性を有する多層ポリイミドフィルムを得ることができる。
本発明の多層ポリイミドフィルムにおいて、ポリイミド層(b)及びポリイミド層(a)の厚みは使用する目的に応じて適宜選択すればよいが、実用上、ポリイミド層(b)の厚みは、好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは5〜80μm、より好ましくは5〜50μm、特に好ましくは7〜50μmの厚さである。
ポリイミド層(a)の総厚みは、好ましくは0.2〜10μm、より好ましくは0.3〜7μm、さらに好ましくは0.5〜5μm、特に好ましくは0.7〜4μmの厚さであることが好ましい。ポリイミド層(a)の厚みを上記の範囲にすることにより、フィルムの機械物性低下防止のために好ましい。
さらにポリイミド層(a)の片面の厚みは、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.2〜3μm、さらに好ましくは0.5〜2μm、特に好ましくは0.3〜1.5μmの厚さであることが好ましく、ポリイミド層(a)の厚みを上記の範囲にすることにより、フィルムの機械物性低下防止のために好ましい。
特にポリイミド層(a)の厚みの多層ポリイミドフィルムの厚み(ポリイミド層(b)及びポリイミド層(a)の厚みの総和)に対する比率[(ポリイミド層(a)の厚み)/(多層ポリイミドフィルムの厚み)]が、好ましくは0.25以下、さらに好ましくは0.20以下、特に好ましくは0.18以下にすることにより、フィルムの機械物性低下防止のために好ましく、ポリイミド層(a)の総厚みは、好ましくは0.2〜10μm、より好ましくは0.3〜7μm、さらに好ましくは0.5〜5μm、特に好ましくは0.7〜4μmの厚さであることが好ましい。
ポリイミド層(b)は、遮光性若しくは光反射性、好ましくは非電導性並びに遮光性若しくは光反射性を有する顔料を含有するポリイミドであり、酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を70〜100モル%含む酸成分と、ジアミン成分としてp−フェニレンジアミンを70〜100モル%含む芳香族ジアミン成分とから得られる耐熱性に優れるポリイミドを挙げることができる。
ポリイミド層(a)は、顔料を含有しないポリイミドである。
ポリイミド層(a)は、ポリイミドを構成する酸成分とジアミン成分とを選択することにより、耐熱性に優れる特性、金属箔と熱圧着する特性、接着剤との密着性に優れる特性、スパッタ法などの蒸着する金属との密着性に優れる特性、気体や液体の透過に優れる特性、気体や液体の非透過に優れる特性などの種々の特性を選択することができる。
ポリイミド層(a)のポリイミドの一例として、
酸成分としてピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれる成分を70〜100モル%含む酸成分と、ジアミン成分としてジアミノベンゼン類などのベンゼン核1個のジアミン、ジアミノジフェニルエーテル類、ジアミノジフェニルアルキル類などのベンゼン核2個のジアミン、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン類などのベンゼン核3個のジアミン、ビス(アミノフェノキシフェニル)エーテル類、ビス(アミノフェノキシフェニル)アルキル類などのベンゼン核4個のジアミンなどから選ばれる成分を70〜100モル%含むジアミン成分とから得られるポリイミドであり、酸成分又はジアミン成分は1種以上、好ましくは2種以上、さらに好ましくは3種以上含むことができる。
ポリイミド層(a)のポリイミドの一例として、
酸成分としてピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれる成分を70〜100モル%含む酸成分と、ジアミン成分としてビス(アミノフェノキシ)ベンゼン類などのベンゼン核3個のジアミン、ビス(アミノフェノキシフェニル)エーテル類、ビス(アミノフェノキシフェニル)アルキル類などのベンゼン核4個のジアミンを70〜100モル%含むジアミン成分とから得られるポリイミドは、ガス透過性に優れ、耐熱性に優れ、金属箔との熱圧着性に優れる。
ポリイミド層(a)のポリイミドの一例として、
酸成分としてピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれる成分を70〜100モル%含む酸成分と、ジアミン成分としてジアミノベンゼン類などのベンゼン核1個のジアミンとジアミノジフェニルエーテル類などのベンゼン核2個のジアミンを70〜100モル%含むジアミン成分とから得られるポリイミドは、特に引張り強度などの機械的特性に優れ、耐熱性に優れる。
ポリイミド層(b)とポリイミド層(a)とは、同じ酸成分と芳香族ジアミン成分との組合せでもよいし、異なる組合せでもよい。
ポリイミド層(b)は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びp−フェニレンジアミン以外に、
酸成分として、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物及び1,4−ヒドロキノンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物より選ばれる成分を少なくとも1種含む酸成分を、
芳香族ジアミン成分として、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトリジン、4,4−ジアミノジフェニルエーテル、o−トリジン、m−トリジン及び4,4’−ジアミノベンズアニリドなどのベンゼン核が1〜2個のジアミン(2個のベンゼン核間に、エチレン鎖などのC2以上のアルキル鎖を含まない)より選ばれる成分を少なくとも1種含むジアミン成分を用いることができる。
ポリイミド層(a)を構成するポリイミドのジアミン成分としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミンなどのベンゼン核1個のジアミン、
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル類、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパンなどのジアミノジフェニルアルキル類などのベンゼン核2個のジアミン、
1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンなどのビス(アミノフェノキシ)ベンゼン類などのベンゼン核3個のジアミン、
ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンなどのビス(アミノフェノキシフェニル)アルキル類、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルなどのベンゼン核4個のジアミン、などを挙げることができる。
ポリイミド層(a)は、上記の酸成分及びジアミン成分以外に、
酸成分として、1,4−ヒドロキノンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物などの公知の酸成分より選ばれる成分を少なくとも1種、さらに2種含む酸成分を、
芳香族ジアミン成分として、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトリジン、o−トリジン、m−トリジン及び4,4’−ジアミノベンズアニリドなどのベンゼン核が1〜5個のジアミン(2個のベンゼン核間に、エチレン鎖などのC2以上のアルキル鎖を含まない)より選ばれる成分を少なくとも1種、さらに2種以上含むジアミン成分を用いることができる。
ポリイミド層(b)において、顔料の種類及び配合量は、用いる用途により適宜選択すればよく、例えばポリイミド層(b)のポリイミド100質量部に対して、顔料を1〜30質量部、さらに3〜20質量部、特に3〜15質量部含まれることが好ましい。
ポリイミド層(b)に含まれる顔料は、遮光性若しくは光反射性を有する顔料、好ましくは非電導性並びに遮光性若しくは光反射性を有する顔料を用いることができる。
顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、群青、コバルトブルー、チタンイエロー、紺青、硫化亜鉛、バリウム黄、コバルト青、コバルト緑、キナクリドンレッド、ポリアゾイエロー、アンスラキノンレッド、アンスラキノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどが挙げられ、これらの顔料は二種類以上を併用して使用することができる。
顔料としては、特に二酸化チタンとカーボンブラックは非電導性並びに遮光性若しくは光反射性に優れているために好ましく用いることができる。
多層ポリイミドフィルムの製法の一例として、ポリイミド層(b)を与えるポリイミド前駆体の溶液から得られる自己支持性フィルムの片面又は両面に、ポリイミド層(a)を与えるポリイミド前駆体溶液(a)を塗工して自己支持性フィルムの片面又は両面にポリイミド前駆体溶液(a)を積層させ、得られる多層の自己支持性フィルムを加熱、乾燥してイミド化を行い、さらに最高加熱温度350℃〜600℃、好ましくは450〜590℃、より好ましくは490〜580℃、さらに好ましくは500〜580℃、特に好ましくは520〜580℃で熱処理することが好ましい。これにより、フィルム全体として充分な機械的性質(引張弾性率)および熱的性質(線膨張係数)を有する多層のポリイミドフィルムを得ることができる。
多層ポリイミドフィルムの製法の別の一例として、ポリイミド層(b)を与えるポリイミド前駆体の溶液と、ポリイミド層(a)を与えるポリイミド前駆体溶液(a)とを共押出により支持体に流延して乾燥することにより、ポリイミド層(b)を与えるポリイミド前駆体の片面又は両面にポリイミド層(a)を与えるポリイミド前駆体を直接積層している少なくとも2層の自己支持性フィルムを得て、得られる多層の自己支持性フィルムを加熱、乾燥してイミド化を行い、さらに最高加熱温度350℃〜600℃、好ましくは450〜590℃、より好ましくは490〜580℃、さらに好ましくは500〜580℃、特に好ましくは520〜580℃で熱処理することが好ましい。これにより、フィルム全体として充分な機械的性質(引張弾性率)および熱的性質(線膨張係数)を有する多層のポリイミドフィルムを得ることができる。
ポリイミド層(b)を与えるポリイミド前駆体溶液(b)から得られる自己支持性フィルムは、芳香族ポリアミック酸溶液を基板上に流延し、加熱して得ることができる。
ポリイミド前駆体溶液を製造するための有機極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルスルホルアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジメチルスルホン、ジエチルスルホンなどのスルホン類を挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
ポリイミド前駆体(a)及びポリイミド前駆体(b)の重合反応を実施するに際して、有機極性溶媒中の全モノマーの濃度は、使用する目的や製造する目的に応じて適宜選択すればよく、例えばポリイミド前駆体溶液(b)及びポリイミド前駆体溶液(a)は、有機極性溶媒中の全モノマーの濃度が、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは6〜35質量%、特に好ましくは10〜30質量%であることが好まく、ポリイミド前駆体溶液(a)を塗工に用いる場合には、有機極性溶媒中の全モノマーの濃度が1〜15質量%、特に2〜8質量%となる割合であることが好ましい。
ポリイミド前駆体(a)及びポリイミド前駆体(b)の製造例の一例として、前記の芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分との重合反応は、例えば、それぞれを実質的に等モル或いはどちらかの成分(酸成分、或いはジアミン成分)を少し過剰にして混合し、反応温度100℃以下、好ましくは80℃以下にて約0.2〜60時間反応させることにより実施して、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)溶液を得ることができる。
ポリイミド前駆体(a)及びポリイミド前駆体(b)の重合反応を実施するに際して、溶液粘度は、使用する目的(塗工、流延など)や製造する目的に応じて適宜選択すればよく、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)溶液は、30℃で測定した回転粘度が、約0.1〜5000ポイズ、特に0.5〜2000ポイズ、さらに好ましくは1〜2000ポイズ程度のものであることが、このポリアミック酸溶液を取り扱う作業性の面から好ましい。したがって、前記の重合反応は、生成するポリアミック酸が上記のような粘度を示す程度にまで実施することが望ましい。
顔料を含むポリイミド前駆体(b)溶液は、ポリアミック酸重合前に、酸成分やジアミン成分と同様に顔料を反応器に添加して製造することができ、さらにポリアミック酸溶液の重合中に、顔料を添加して製造することができる。また予めポリアミック酸溶液を準備し、ポリアミック酸溶液に顔料を添加して得ることができる。
ポリイミド層(b)のポリイミド前駆体溶液(b)及びポリイミド層(a)のポリイミド前駆体溶液(a)の積層自己支持性フィルムを製造する際に、例えば、まずポリイミド前駆体溶液(b)とポリイミド前駆体溶液(a)とを適当な支持体(例えば、金属、セラミックプラスチック製のロール、または金属ベルト、あるいは金属薄膜テープが供給されつつあるロール、又はベルト)の表面上に2層以上のダイなど共押出にて流延して、約10〜2000μm、特に20〜1000μm程度の均一な厚さの膜状態に形成する。次いで熱風、赤外線等の熱源を利用して50〜210℃、特に60〜200℃に加熱して、溶剤を徐々に除去することにより、自己支持性になるまで前乾燥を行い、該支持体より積層自己支持性フィルムを剥離する。
ポリイミド前駆体溶液から積層自己支持性フィルムを製造する際に、ポリイミド前駆体のイミド化は熱イミド化でも、化学イミド化でもどちらでも行なうことが出来る。
ポリイミド層(b)のポリイミド前駆体溶液(b)の自己支持性フィルムを製造する際に、例えば、まずポリイミド前駆体溶液を適当な支持体(例えば、金属、セラミックプラスチック製のロール、または金属ベルト、あるいは金属薄膜テープが供給されつつあるロール、又はベルト)の表面上にダイなどを用いて流延して、約10〜2000μm、特に20〜1000μm程度の均一な厚さのポリイミド前駆体溶液を膜状態に形成する。次いで熱風、赤外線等の熱源を利用して50〜210℃、特に60〜200℃に加熱して、溶剤を徐々に除去することにより、自己支持性になるまで前乾燥を行い、該支持体より自己支持性フィルムを剥離する。
ポリイミド層(b)の自己支持性フィルムの片面又は両面にポリイミド前駆体溶液(a)を塗工し、必要なら乾燥して積層自己支持フィルムを得ることができる。
ポリイミド前駆体溶液(b)の自己支持性フィルムを製造する際に、ポリイミド前駆体のイミド化は熱イミド化でも、化学イミド化でもどちらでも行なうことが出来る。
ポリイミド層(b)の自己支持性フィルムにポリイミド前駆体溶液(a)を塗工する場合、支持体より剥離させた自己支持性フィルム上にポリイミド前駆体溶液(a)を塗工してもよく、支持体より剥離する前の支持体上の自己支持性フィルムにポリイミド前駆体溶液(a)を塗工してもよい。
自己支持性フィルムは、ポリイミド(a)を与えるポリイミド前駆体溶液(a)を自己支持性フィルムの表面にほぼ均質に、さらには均質に塗工できる表面(片面或いは両面)を有することが好ましい。
自己支持性フィルムの片面又は両面にポリイミド(a)を与えるポリイミド前駆体溶液(a)を均一に塗工することが好ましい。
自己支持性フィルムの片面又は両面にポリイミド(a)を与えるポリイミド前駆体溶液(a)を塗工する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、グラビアコート法、スピンコート法、シルクスクリーン法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などの公知の塗工方法を挙げることができる。
自己支持性フィルムは、その加熱減量が20〜40質量%の範囲にあることが好ましく、イミド化率が8〜40%の範囲にあることが、自己支持性フィルムの力学的性質が十分でない場合、自己支持性フィルムの上面にポリイミド前駆体溶液(a)をきれいに塗工しにくくなる場合、ポリイミド層(a)とポリイミド層(b)との接着強度が弱くなる場合、イミド化後に得られるポリイミドフィルムに、発泡、亀裂、クレーズ、クラック、ひびワレなどの発生が観察される場合などがあるために、好ましい。
なお、上記の自己支持性フィルムの加熱減量とは、測定対象のフィルムを420℃で20分間乾燥し、乾燥前の重量W1と乾燥後の重量W2とから次式によって求めた値である。
加熱減量(質量%)={(W1−W2)/W1}×100
また、上記の自己支持性フィルムのイミド化率は、IR(ATR)で測定し、フィルムとフルキュア品との振動帯ピーク面積の比を利用して、イミド化率を算出することができる。振動帯ピークとしては、イミドカルボニル基の対称伸縮振動帯やベンゼン環骨格伸縮振動帯などを利用する。またイミド化率測定に関し、特開平9−316199号公報に記載のカールフィッシャー水分計を用いる手法もある。
なお、前記の自己支持性フィルムには、必要であれば、内部または表面層に微細な無機あるいは有機の添加剤を配合することができる。
無機の添加剤としては、粒子状あるいは偏平状などの無機フィラーを挙げることができ、微粒子状の二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素(シリカ)粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム(アルミナ)粉末、酸化亜鉛粉末などの無機酸化物粉末、微粒子状の窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末などの無機窒化物粉末、炭化ケイ素粉末などの無機炭化物粉末、および微粒子状の炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末などの無機の粉末を挙げることができる。これらの無機の微粒子は二種以上を組合せて使用してもよい。これらの無機微粒子を均一に分散させるために、それ自体公知の手段を適用することができる。
有機の添加剤としては、ポリイミド粒子、熱硬化性樹脂の粒子などを挙げることができる。
添加剤の使用量および形状(大きさ、アスペクト比)については、使用目的に応じて選択することが好ましい。
積層自己支持フィルムは、ピンテンター、クリップ、金属などで固定して、加熱イミド化する。この加熱処理は、最終加熱温度が350〜600℃であればよく、加熱温度条件は適宜選択することができる。加熱処理は、熱風炉、赤外線加熱炉などの公知の種々の装置を使用して行うことができ、1段、2段以上の多段の加熱温度で加熱処理してもよい。
ポリイミド前駆体溶液(a)及び/又はポリイミド前駆体溶液(b)は、ゲル化を制限する目的で、リン系安定剤、例えば亜リン酸トリフェニル、リン酸トリフェニル等をポリアミック酸重合時に固形分(ポリマー)濃度に対して0.01〜1%の範囲で添加することができる。
またポリイミド前駆体溶液(a)及び/又はポリイミド前駆体溶液(b)は、イミド化促進の目的で、ドープ液中に塩基性有機化合物を添加することができる。例えば、イミダゾール、2−イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、置換ピリジンなどをポリアミック酸(ポリイミド前駆体)100質量部に対して、0.0005〜0.1質量部、特に0.001〜0.02質量部の割合で使用することができる。これらは、比較的低温でポリイミドフィルムを形成するためにイミド化が不十分となることを避けるために使用することができる。
また、接着強度の安定化の目的で、熱圧着性ポリイミド原料ドープに有機アルミニウム化合物、無機アルミニウム化合物または有機錫化合物を添加してもよい。例えば水酸化アルミニウム、アルミニウムトリアセチルアセトナートなどをポリアミック酸に対してアルミニウム金属として1ppm以上、特に1〜1000ppmの割合で添加することができる。
多層ポリイミドフィルム全体として、引張弾性率(MD)が6GPa以上、好ましくは12GPa以下であり、線膨張係数(50〜200℃)が10×10−6〜30×10−6cm/cm/℃であることが、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、TABテープ等の電子部品の素材として好適に用いることができるために好ましい。
本発明の多層ポリイミドフィルムは、そのまま、或いは必要であればポリイミド層(a)又はポリイミド層(b)を、コロナ放電処理、低温プラズマ放電処理あるいは常圧プラズマ放電処理、化学エッチングなどによる表面処理をして用いることができる。
本発明の多層ポリイミドフィルムは、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、TABやCOFなどのテープ等の電子部品の素材として用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。但し、本発明は実施例により制限されるものでない。
(評価方法)
・光透過率(%)の測定:日立ハイテクノロジーズ製U−2800形分光光度計を用い、波長550nmでの透過率を測定した。
・表面粗さの測定: 株式会社菱化システム製三次元非接触表面形状計測システム(MM3200−M100型)を用い、10倍の倍率で測定した。
(参考例1)
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と当モル量のp−フェニレンジアミンとをN,N−ジメチルアセトアミド中で、30℃、3時間重合して、18質量%濃度のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液に、ポリアミック酸100重量部に対して10重量部のカーボンブラックおよび0.1質量部のモノステアリルリン酸エステルトリエタノールアミン塩、次いでポリアミック酸1モルに対して0.05モルの1,2−ジメチルイミダゾール、さらにポリアミック酸100質量部に対して0.5質量部のシリカフィラー(平均粒径:0.08μm、日産化学社製ST−ZL)を添加して均一に混合して、ポリイミド(b)の前駆体溶液組成物(B−1)を得た。
(参考例2)
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と当モル量のp−フェニレンジアミンとをN,N−ジメチルアセトアミド中で、30℃、3時間重合して、18質量%濃度のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液に、さらにポリアミック酸100質量部に対して0.5質量部のシリカフィラー(平均粒径:0.08μm、日産化学社製ST−ZL)を添加した後、均一に混合して、ポリイミド(a)の前駆体溶液組成物(A−1)を得た。
(参考例3)
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と当モル量のp−フェニレンジアミンとをN,N−ジメチルアセトアミド中で、30℃、3時間重合して、5.0質量%濃度のポリイミド(a)の前駆体溶液組成物(A−2)を得た。
カーボンブラックは非電導性のカーボンブラックを使用した。
(実施例1)
三層ダイスを用い、中央の層に参考例1で得られた前駆体溶液組成物(B−1)を、加熱乾燥後のフィルム厚みが10μmとなるように、また両表面層に参考例2で得た前駆体溶液組成物(A−2)を加熱乾燥後の厚みが各2μmとなるようにステンレス基板(支持体)上に連続的に流延し、140℃の熱風で乾燥を行い、支持体から剥離して自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムを、加熱炉で200℃から575℃に徐々に昇温して溶媒を除去し、イミド化を行って、ポリイミドフィルム(X−1)を得た。
このポリイミドフィルムX-1の支持体に接触していた面の表面粗さおよび光透過率を測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
単層ダイスを用い、加熱乾燥後のフィルム厚みが10μmとなるように、参考例1で得られた前駆体溶液組成物(B−1)をステンレス基板(支持体)上に連続的に流延し、140℃の熱風で乾燥を行い、支持体から剥離して自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムの両面に、加熱乾燥後の厚みが1μmになるように参考例3で得た前駆体溶液(A−2)を塗布した後、加熱炉で200℃から575℃に徐々に昇温して溶媒を除去し、イミド化を行って、ポリイミドフィルム(X−2)を得た。
このポリイミドフィルムX-2の支持体に接触していた面の表面粗さおよび光透過率を測定した。
(実施例3)
前駆体溶液(A−2)自己支持性フィルムのステンレスベルトに接触していた面のみに塗工した以外は実施例2と同様の操作を行いポリイミドフィルム(X−3)を得た。
(比較例1)
単層ダイスを用い、加熱乾燥後のフィルム厚みが10μmとなるように、参考例1で得られた前駆体溶液組成物(B−1)をステンレス基板(支持体)上に連続的に流延し、140℃の熱風で乾燥を行い、支持体から剥離して自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムを加熱炉で200℃から575℃に徐々に昇温して溶媒を除去し、イミド化を行って、ポリイミドフィルム(Y−1)を得た。
このポリイミドフィルムY-1の支持体に接触していた面の表面粗さおよび光透過率を測定した。
(比較例2)
ポリイミド前駆体溶液として参考例2で得られた前駆体溶液組成物(A−1)を使用した以外は、比較例1と同様の操作を行い、ポリイミドフィルム(Y−2)を得た。
Figure 2010264655
実施例1〜3と、比較例1及び2とを比較すると、実施例1〜3では、表面平滑性が優れ、光透過率の小さなフィルムを得ることができる。

Claims (10)

  1. 顔料を含むポリイミド層(b)の片面又は両面に顔料を含有しないポリイミド層(a)を積層した多層ポリイミドフィルム。
  2. 多層ポリイミドフィルムは、遮光性若しくは光反射性を有することを特徴とする請求項1に記載の多層ポリイミドフィルム。
  3. 顔料は、非電導性並びに遮光性若しくは光反射性を有する顔料であることを特徴とする請求項1に記載の多層ポリイミドフィルム。
  4. 顔料は、カーボンブラック、鉄黒及び二酸化チタンから選ばれる顔料を含む非電導性並びに遮光性若しくは光反射性を有する顔料であることを特徴とする請求項1に記載の多層ポリイミドフィルム。
  5. 多層ポリイミドフィルムは、顔料を含有するポリイミド層(b)が得られるポリイミド前駆体溶液(b)の自己支持性フィルムに、顔料を含有しないポリイミド層(a)が得られるポリイミド前駆体溶液(b)を塗工して製造することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルム。
  6. 多層ポリイミドフィルムは、顔料を含有するポリイミド層(b)が得られるポリイミド前駆体溶液(b)と、顔料を含有しないポリイミド層(a)が得られるポリイミド前駆体溶液(a)とを共押出により流延して製造されたポリイミド層(b)とポリイミド層(a)とが多層一体化されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルム。
  7. ポリイミド層(b)は、酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を70〜100モル%含む酸成分と、ジアミン成分としてp−フェニレンジアミンを70〜100モル%含む芳香族ジアミン成分とから得られることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルム。
  8. ポリイミド層(a)は、酸成分としてピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれる成分を70〜100モル%含む酸成分と、ジアミン成分としてp−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル類、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン類、ビス(アミノフェノキシフェニル)アルキル類から選ばれる成分を70〜100モル%含むジアミン成分とから得られることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルム。
  9. 多層ポリイミドフィルムは、光透過率が10%以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルム。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルムのポリイミド層(a)に金属層を直接若しくは接着剤層を介して積層した金属積層ポリイミドフィルム。
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