JP2017165909A - ポリイミド、樹脂フィルム及び金属張積層板 - Google Patents
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Abstract
Description
(i)前記酸無水物成分の100モル部に対して、
2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)を40〜80モル部の範囲内で含有し、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を20〜60モル部の範囲内で含有すること;
(ii)前記ジアミン成分の100モル部に対して、
下記の一般式(1)及び(2)で表される芳香族ジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族ジアミン(ジアミンI)を60〜90モル部の範囲内で含有し、
下記の一般式(3)〜(5)で表される芳香族ジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族ジアミン(ジアミンII)を10〜40モル部の範囲内で含有すること;
(iii)前記NTCDA及びジアミンIの合計(A)と、前記BPDA及びジアミンIIの合計(B)との比(A/B)が1.6〜4.0の範囲内にあること;
を満たすことを特徴とする。
前記樹脂絶縁層が、単層又は複数層のポリイミド層を有し、
前記ポリイミド層の少なくとも1層が、上記ポリイミドからなり、線熱膨張係数が5×10−6〜20×10−6(1/K)の範囲内にあるポリイミド層であることを特徴とする。
本実施の形態のポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸無水物成分を含む酸無水物成分と、芳香族ジアミンを含むジアミン成分と、を反応させて得られるポリイミドである。ポリイミドは、一般に、酸無水物とジアミンとを反応させて製造されるので、酸無水物とジアミンを説明することにより、ポリイミドの具体例が理解される。以下、好ましいポリイミドを酸無水物とジアミンにより説明する。
本実施の形態のポリイミドは、原料の酸無水物成分として、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を使用する。NTCDAは、ナフタレン骨格を有するため、他の一般的な酸無水物成分に比べて、ポリイミド中の分子の配向性の制御が可能であり、線熱膨張係数(CTE)の抑制とガラス転移温度(Tg)の向上効果がある。特に、本実施の形態で用いるNTCDAは、ナフタレン骨格の2,3,6,7位にカルボン酸由来の縮合構造を有することから、ナフタレン骨格の長手方向にポリマー鎖を伸長させることが可能であり、例えば1,4,5,8位に縮合構造を有するものに比べ、ポリイミド中の分子の配向性を制御する効果が高く、また2,3,6,7位に縮合構造を有するものは、5員環により酸無水物構造を形成するため、6員環により酸無水物構造を形成する1,4,5,8位に縮合構造を有するものと比較し、ジアミンとの反応性が高く、室温でのアミド酸形成が容易である。さらに、NTCDAは、一般的な酸無水物と比較し分子量が大きいため、イミド基濃度低下の効果が大きく、誘電特性の改善にも寄与する。このため、誘電特性の改善と低CTE化との両立が可能となる。このような観点から、NTCDAは、原料の全酸無水物成分の100モル部に対し、40〜80モル部の範囲内、好ましくは50〜80モル部の範囲内がよい。原料の全酸無水物成分の100モル部に対し、NTCDAの仕込み量が40モル部未満であると、分子の配向性が低下し、低CTE化が困難となるため、低誘電化との両立が困難となり、一方、NTCDAの仕込み量が80モル部を超えると、フィルムとしての脆弱化や、高弾性率化による回路基板用の絶縁層としての適用が困難になる。また、BPDAは、ポリイミドの前駆体のポリアミド酸としてのゲル膜の自己支持性を付与できるが、イミド化後のフィルムとしてのCTEを増大させる。このような観点から、BPDAは、原料の全酸無水物成分の100モル部に対し、20〜60モル部の範囲内、好ましくは20〜50モル部の範囲内がよい。
本実施の形態のポリイミドは、原料のジアミン成分として、上記の一般式(1)及び(2)で表される芳香族ジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族ジアミン(ジアミンI)並びに上記の一般式(3)〜(5)で表される芳香族ジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族ジアミン(ジアミンII)を使用する。ジアミンIは、ポリイミド中の分子の配向性を制御することでCTEの増加を抑制することができ、またTgを向上させることができる。このような観点から、ジアミンIは、原料の全ジアミン成分の100モル部に対し、60〜90モル部の範囲内、好ましくは70〜90モル部の範囲内がよい。ジアミンIIは、屈曲性の部位を有するので、ポリイミドに柔軟性を付与することができる。ここで、ジアミンIIにおけるベンゼン環が3個又は4個である場合は、CTEの増加を抑制するために、ベンゼン環に結合するアミノ基はパラ位とする必要がある。このような観点から、ジアミンIIは、原料の全ジアミン成分の100モル部に対し、10〜40モル部の範囲内、好ましくは10〜30モル部の範囲内がよい。原料の全ジアミン成分の100モル部に対し、ジアミンIIの仕込み量が10モル部未満であると、フィルムとした場合の伸度が低下し、折り曲げ耐性等の低下が生じる。一方、ジアミンIIの仕込み量が40モル部を超えると、分子の配向性が低下し、低CTE化が困難となる。
本実施の形態の樹脂フィルムは、本実施の形態のポリイミドから形成されるポリイミド層を含む絶縁樹脂のフィルムであれば特に限定されるものではなく、絶縁樹脂からなるフィルム(シート)であってもよく、銅箔、ガラス板、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの樹脂シート等の基材に積層された状態の絶縁樹脂のフィルムであってもよい。また、本実施の形態の樹脂フィルムの厚みは、好ましくは3〜100μmの範囲内、より好ましくは3〜75μmの範囲にある。
本実施の形態の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の少なくとも片側の面に積層された金属層と、を有する。金属張積層板の好ましい具体例としては、例えば銅張積層板(CCL)などを挙げることができる。
本実施の形態の金属張積層板において、絶縁樹脂層は、単層又は複数層のポリイミド層を有する。この場合、金属張積層板に優れた高周波特性を付与するためには、ポリイミド層の少なくとも1層(好ましくはベースフィルム層)が、本実施の形態のポリイミドを用いて形成されていればよい。また、絶縁樹脂層と金属層との接着性を高めるため、絶縁樹脂層における金属層に接する層は、熱可塑性ポリイミド層であることが好ましい。例えば、絶縁樹脂層を2層とする場合において、非熱可塑性ポリイミド層をP1、熱可塑性ポリイミド層をP2、金属層をM1とすると、P1/P2/M1の順に積層することが好ましい。ここで、P1が本実施の形態のポリイミドを用いて形成されたベースフィルム層となる。なお、P2は、本実施の形態のポリイミド以外のポリイミドによって構成されていてもよい。
本実施の形態の金属張積層板における金属層の材質としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。なお、後述する本実施の形態の回路基板における配線層の材質も金属層と同様である。
本実施の形態の回路基板は、絶縁樹脂層と、絶縁樹脂層上に形成された配線層と、を有する。本実施の形態の回路基板において、絶縁樹脂層は、単層又は複数層のポリイミド層を有することができる。この場合、回路基板に優れた高周波特性を付与するためには、ポリイミド層の少なくとも1層(好ましくはベースフィルム層)が、本実施の形態のポリイミドを用いて形成されていればよい。また、絶縁樹脂層と配線層との接着性を高めるため、絶縁樹脂層における配線層に接する層が、本実施の形態のポリイミドを用いて形成された熱可塑性ポリイミド層であることが好ましい。例えば、絶縁樹脂層を2層とする場合において、非熱可塑性ポリイミド層をP1、熱可塑性ポリイミド層をP2、配線層をM2とすると、P1/P2/M2の順に積層することが好ましい。ここで、P1が本実施の形態のポリイミドを用いて形成されたベースフィルム層となる。なお、P2は、本実施の形態のポリイミド以外のポリイミドによって構成されていてもよい。
ガラス転移温度は、5mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:ユー・ビー・エム社製、商品名;E4000F)を用いて、30℃から400℃まで昇温速度4℃/分、周波数11Hzで測定を行い、主分散に基づくtanδの極大値温度より求めた。
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から265℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(線熱膨張係数)を求めた。
空洞共振器摂動法誘電率評価装置(Agilent社製、商品名;ベクトルネットワークアナライザE8363B)を用い、所定の周波数における樹脂シート(硬化後の樹脂シート)の厚み方向の誘電率を測定した。
サンプルは、厚み約25μmの樹脂シートを3枚積層したものを2つ準備し、円形銅箔/樹脂シート3枚/導体平板/樹脂シート3枚/円形銅箔の積層構成となるように、円形銅箔と導体平板の間に樹脂シート3枚をそれぞれ挟み、測定を実施した。なお、測定に使用した樹脂シートは、温度;24〜26℃、湿度;45〜55%の条件下で、24時間放置したものである。
製膜性は、銅箔上にポリアミド酸を塗工し、熱処理後に、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチングしたフィルムの自己支持性を評価した。
「○」:銅箔エッチングしたフィルムについて、容易に亀裂等を生じないこと。
「×」:銅箔エッチングしたフィルムについて、容易に亀裂等を生じ自己支持性がないこと。
m‐TB:2,2’‐ジメチル‐4,4’‐ジアミノビフェニル
m‐EOB:2,2'-ジエトキシ-4,4'-ジアミノビフェニル
4,4'-DAPE:4,4'-ジアミノジフェニルエーテル
TPE−R:1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
p−PDA:p‐フェニレンジアミン
BAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
BAPB:4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル
NTCDA:2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’ ‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸無水物
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、11.467gのm−TB(0.0540モル)、1.755gのTPE−R(0.0060モル)及び170.0gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、10.436gのBPDA(0.0355モル)及び6.342gのNTCDA(0.0237モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液A−aを得た。ポリアミド酸溶液A−aの溶液粘度は38,100cpsであった。
表1から表3に示す原料組成とした他は、合成例A−1と同様にしてポリアミド酸溶液A−b〜A−sを調製した。なお、表1から表3中の「A/B」は、NTCDA及びジアミンIの合計(A)と、BPDA及びジアミンIIの合計(B)との比(A/B)を意味する。
厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;2.1μm)に、合成例A−1で調製したポリアミド酸溶液A−aを硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を30分以内で行い、イミド化を完結した。得られた金属張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、樹脂フィルムA−1を得た。なお、樹脂フィルムA−1を構成するポリイミドは、非熱可塑性であった。
樹脂フィルムA−1の線熱膨張係数、ガラス転移温度、厚み方向の誘電率を求め、製膜性を確認した。各測定結果を表4に示す。
表4に示すポリアミド酸溶液を使用した他は、実施例A−1と同様にして、実施例A−2〜A−10、比較例A−11〜A−18の樹脂フィルムA−2〜A−18を得た。得られた樹脂フィルムA−2〜A−18の線熱膨張係数、ガラス転移温度、厚み方向の誘電率を求め、製膜性を確認した。各測定結果を表4〜表6に示す。
厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;1.39μm)に、ポリアミド酸溶液A−sを硬化後の厚みが約2〜3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次に、その上にポリアミド酸溶液A−cを硬化後の厚みが、約21μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液A−sを硬化後の厚みが約2〜3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。このようにして、3層のポリアミド酸層を形成した後、120℃から360℃まで段階的な熱処理を30分以内で行い、イミド化を完結して、金属張積層板を得た。得られた金属張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、樹脂フィルムB−1を得た。得られたフィルムのCTEは24.1ppm/Kであり、厚み方向の誘電率は14GHz時に2.93であった。
Claims (5)
- 芳香族テトラカルボン酸無水物を含む酸無水物成分と、芳香族ジアミンを含むジアミン成分と、を反応させて得られるポリイミドであって、
下記(i)〜(iii)の条件;
(i)前記酸無水物成分の100モル部に対して、
2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)を40〜80モル部の範囲内で含有し、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を20〜60モル部の範囲内で含有すること;
(ii)前記ジアミン成分の100モル部に対して、
下記の一般式(1)及び(2)で表される芳香族ジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族ジアミン(ジアミンI)を60〜90モル部の範囲内で含有し、
下記の一般式(3)〜(5)で表される芳香族ジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族ジアミン(ジアミンII)を10〜40モル部の範囲内で含有すること;
(iii)前記NTCDA及びジアミンIの合計(A)と、前記BPDA及びジアミンIIの合計(B)との比(A/B)が1.6〜4.0の範囲内にあること;
を満たすことを特徴とするポリイミド。
- 請求項1又は2に記載のポリイミドからなることを特徴とする樹脂フィルム。
- 線熱膨張係数が、5×10−6〜20×10−6(1/K)の範囲内にあることを特徴とする請求項3に記載の樹脂フィルム。
- 絶縁樹脂層と金属層とを備えた金属張積層板であって、
前記樹脂絶縁層が、単層又は複数層のポリイミド層を有し、
前記ポリイミド層の少なくとも1層が、請求項1又は2に記載のポリイミドからなり、線熱膨張係数が5×10−6〜20×10−6(1/K)の範囲内にあるポリイミド層であることを特徴とする金属張積層板。
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