JP2010261246A - 床版ユニット、床版の接合構造及び床版の構築方法 - Google Patents

床版ユニット、床版の接合構造及び床版の構築方法 Download PDF

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Abstract

【課題】軽量化が図れる簡素な構造であるとともに、容易に接合作業をおこなうことが可能な床版ユニットを提供する。
【解決手段】床版10を形成するために接合方向に並べられる床版ユニット1である。
そして、床版の床面1aを形成する床部11と、その床部の接合方向の縁部から垂下されるリブ部12,12とを備えている。また、リブ部には、床面から下方に向けた連結溝13が形成されており、その連結溝は、リブ部の接合方向の接合面12aに連通される狭隘部13aと、その狭隘部の床部側の端部に形成される拡幅部13bとを有している。
【選択図】図1

Description

本発明は、橋梁や人工地盤等の床版を構築する際に利用される床版ユニット、及びその床版ユニット同士を接合させて構築される床版の接合構造、及び床版ユニットを使った床版の構築方法に関するものである。
従来、桟橋や橋梁の床版を構築するに際して、工場で予めプレキャストコンクリート部材を製作し、現地に搬送されたプレキャストコンクリート部材をクレーンで吊り上げて並べ、隣接されたプレキャストコンクリート部材同士を接合させることで一体の床版を構築する方法が知られている(特許文献1乃至5参照)。
これらの特許文献1乃至4に開示された発明は、いずれも本願の発明者によって開発されたもので、軽量化、施工性の向上を目指した改良が現在においても続けられている。
特開2007−32212号公報 特開2003−213623号公報 特開2006−348656号公報 特開2006−336283号公報 特開平8−246415号公報
ここで、大幅な軽量化を目指すのであれば鋼材の使用が有効であるが、橋梁の鋼床版は、輪荷重の過積載荷重や繰り返し荷重によって、溶接部に疲労亀裂が発生する場合があることが、近年、問題になってきている。他方、コンクリート部材は、耐久性に優れているが軽量化が難しいという課題があった。
また、プレキャストコンクリート部材同士を接合させる箇所に形成される接合構造は、構造的に弱部となり易いうえに、特許文献5に開示されているように、緊張材を床版の下側から緊張する場合は、足場や支保工を下から組み立てる必要があり、工期や工費を増大させる原因になる。
そこで、本発明は、簡素な構造であるとともに、容易に接合作業をおこなうことが可能な床版ユニット、床版の接合構造及び床版の構築方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の床版ユニットは、床版を形成するために接合方向に並べられる床版ユニットであって、前記床版の床面から下方に向けた連結溝が形成されており、その連結溝は、前記床版の前記接合方向の接合面に連通される狭隘部と、その狭隘部の内部側の端部に形成される拡幅部とを有していることを特徴とする。
ここで、前記床版は、床部と、その床部の前記接合方向の縁部から垂下されるリブ部とを備えている構成とすることができる。また、床部と、その床部の前記接合方向の縁部の前記連結溝が形成される位置に対応して下方に向けて突出される凸部とを備えた構成であってもよい。
また、前記連結溝は、前記接合方向に直交する方向に間隔を置いて複数、形成されるのが好ましい。さらに、前記接合面には、凹部が形成されるのが好ましい。
また、前記床版を載置させる前記接合方向に延伸される主桁の上面には、穴開き鋼板が上方に向けて突出されており、前記床部には前記穴開き鋼板を収容する貫通孔が形成された構成とすることができる。
また、本発明の床版の接合構造は、上記の床版ユニット同士を接合させた床版の接合構造であって、対向させる前記床版ユニットの前記接合面間には充填材が充填され、前記対向する連結溝間には連結材が架け渡され、前記連結材の両端に形成される定着部は前記拡幅部に収容されることを特徴とする。さらに、前記連結材によって前記床版ユニット間にプレストレスが導入されるのが好ましい。
また、本発明の床版の構築方法は、上記の床版ユニットを複数接合しておこなう床版の構築方法であって、設置済みの一方の前記床版ユニットに対して、対向する前記接合面間に隙間が形成されるように他方の前記床版ユニットを設置する工程と、前記隙間に充填材を充填する工程と、前記連結溝間に連結材を架け渡す工程とを備えたことを特徴とする。
ここで、前記連結材を架け渡すに際して、両端に定着部が形成された鋼製の連結材を加熱し、前記連結材が熱膨脹した状態で前記連結溝に挿入することができる。
このように構成された本発明の床版ユニットは、床面から下方に向けた連結溝が形成されており、その連結溝は狭隘部と拡幅部とを有している。
このように床面に開口された連結溝を使うことで、床面上からの作業によって接合をおこなうことができるので、施工性に優れている。さらに、定着部が形成された連結材を使っておこなわれる床版の接合構造は、拡幅部と狭隘部との境界の段差に連結材の定着部を係合させることで、容易に床版ユニット同士の連結をおこなうことができる。
また、接合面が形成される部分がリブ部となって床部の側縁から垂下された構成であれば、剛性が高くなって接合構造が弱部にならないうえに、床部を薄くして軽量化を図ることができる。
さらに、リブ部の長手方向の床版の剛性が増大すると、その方向に直交する接合方向の曲げモーメントが長手方向に再配分され、接合方向の曲げモーメントを減少させることができる。
また、連結溝が形成される位置に対応して凸部を設けるのであれば、軽量の床版ユニットを経済的に製作することができる。
また、連結溝を接合方向に直交する方向に間隔をおいて複数、形成することで、連結溝に配置される連結材による連結力を分散させることができる。さらに、接合面に凹部を設けておくことで、その凹部に充填される充填材によって機械的なせん断キーを形成することができ、接合構造におけるせん断ずれ変形を抑制することができる。
また、床版を接合方向に延伸される主桁上に設ける場合は、主桁の上面から穴開き鋼板を突出させ、その穴開き鋼板を床版の貫通孔に挿入し、周囲に充填材を充填することによって、床版と主桁とを強固に一体化させることができる。
また、連結材によって床版ユニット間にプレストレスが導入されれば、接合構造の強度が増大してひび割れの発生を抑えることができる。さらに、プレストレスを導入する方法が、連結材の温度収縮を利用するものであれば、容易にプレストレスを導入することができる。
本発明の実施の形態の床版の接合構造の構成を説明する斜視図である。 主桁上に床版ユニットが載置された構成を説明する斜視図である。 床版ユニットの構成を説明するために上面側から見た斜視図である。 床版ユニットの構成を説明するために裏面側から見た斜視図である。 床版ユニット間に連結材が架け渡される接合構造を説明する平面図である。 床版ユニット間に連結材が架け渡される接合構造を説明する断面図である。 床版と主桁とを接合させる穴開き鋼板の周辺の構造を説明する横断面図である。 床版と主桁とを接合させる穴開き鋼板の周辺の構造を説明する縦断面図である。 実施例1の床版ユニットの構成を説明する斜視図である。 実施例2の床版ユニットの構成を説明する斜視図である。 実施例3の床版ユニットの構成を説明する斜視図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、橋梁、桟橋、人工地盤等の床版10を、複数の床版ユニット1,1を接合して構築する際の接合構造を説明する部分拡大斜視図である。本実施の形態で説明する床版10は、図2に示すように複数並列された主桁2,・・・間に床版ユニット1を架け渡し、さらに、別の床版ユニット1を、主桁2の軸方向に順次、並べていくことによって構築される橋梁の床版10である。
すなわち、この主桁2の軸方向が床版ユニット1の接合方向であるとともに橋軸方向となる。また、主桁2の軸直交方向となる床版ユニット1の長手方向が橋軸直交方向となる。
まず、図3,4を参照しながら床版ユニット1の構成を説明する。この床版ユニット1は、床版10の床面1aを形成する床部11と、その床部11の接合方向の両縁部から垂下されるリブ部12,12とを備えている。
この床部11は、図3に示すように床面1aが面一になるように矩形板状に形成されるとともに、図4に示すように裏面には接合方向(橋軸方向)に延設される複数の突条部16,・・・が形成されている。
この突条部16は、主桁2の上面2aに対峙させる部分で、主桁2と対向する位置に合わせて延設される。なお、ここでは突条部16,16とリブ部12,12とに囲まれた四角形の範囲が略均一の板厚に成形される床部11を例にして説明するが、これに限定されるものではなく、橋軸直交方向に突条部が延設される形状や格子状に突条部が形成される形状の床部であってもよい。
また、突条部16には、図3,4に示すように、主桁2の穴開き鋼板21(図2参照)の位置に合わせて箱状の貫通孔14,・・・が形成される。すなわち、主桁2の上面2aには、図2に示すように、床版10との接合強度を高めるための穴開き鋼板21が上方に向けて突出されており、貫通孔14には、床版ユニット1を主桁2上に載置した際に穴開き鋼板21を収容させる。
一方、リブ部12は、床部11と略直交するように帯状に垂下されており、突条部16と交差する位置、すなわち主桁2に載せる位置には、台形状の切欠部12bが形成されている。
また、リブ部12の外側の側面は、隣接させる別の床版ユニット1との接合面12aとなる。この接合面12aには、図3,4に示すように、リブ部12の長手方向に間隔を置いて複数の凹部15,・・・が形成される。
さらに、リブ部12には、凹部15,・・・と同じくリブ部12の長手方向に間隔を置いて複数の連結溝13,・・・が形成される。この連結溝13は、図1に示すように、接合面12aに連通される細溝状の狭隘部13aと、その狭隘部13aの床部11側の端部に形成される拡幅部13bとを有している。
この狭隘部13aは、床面1a側と接合面12a側の2面に向けて開口されるとともに、拡幅部13bと連通されている。また、拡幅部13bは、狭隘部13aよりも溝幅が拡幅された四角柱状の空洞で、床面1a側と狭隘部13a側の2面に向けて開口されている。このため、連結材3を床面1aの上方から連結溝13の底に向けて挿入することが可能になる。
このような床版ユニット1の床部11とリブ部12,12とは、コンクリート等のセメント系混合材料によって一体に成形することができる。そして、本実施の形態の床版ユニット1は、その中でも特に超高強度の繊維補強セメント系混合材料を使用して製作する。
この繊維補強セメント系混合材料は、セメントと、骨材粒子と、ポゾラン系反応粒子と、分散剤とを含有する組成物を水と混合することにより得られるセメント系マトリックスに、繊維を混入して製造する。
ここで、前記骨材粒子には、最大粒度径が3.0mm以下、好ましくは2.5mm以下の硅砂等の骨材粉体を使用する。また、ポゾラン系反応粒子には、粒子径が15μm以下のものを使用する。例えば、粒子径が0.01〜0.5μmの活性度の高いポゾラン系反応粒子としてシリカヒューム等を使用し、粒子径が0.1〜15μmの活性度の低いポゾラン系反応粒子としてフライアッシュや高炉スラグ等を使用する。これらの活性度の異なるポゾラン系反応粒子は、混合したり、単独で使用したりすることができる。また、前記分散剤は、流動性を高めるために高性能減水剤など少なくとも1種類使用する。
また、繊維には、例えば直径が0.1〜0.3mm程度で、長さが10〜30mm程度の形状の引張り降伏応力度が2600〜2800N/mm2の鋼繊維を使用する。さらに、この鋼繊維は、製造される繊維補強セメント系混合材料の全容積の1〜4%程度の量を混入させる。
このような配合で製造される前記繊維補強セメント系混合材料によって形成された部材は、圧縮強度が150〜200N/mm2、曲げ引張強度が25〜45N/mm2、割裂引張強度が10〜25N/mm2、透水係数が4.0×10-17cm/sec、塩分拡散係数が0.0019cm2/年、弾性係数が50〜55GPaの特性を有する。
そして、このような繊維補強セメント系混合材料を使用して、床版ユニット1を工場などで製作する。ここで、前記繊維補強セメント系混合材料で床版ユニット1を構築する場合は、通常、鉄筋を配置する必要がない。
また、この床版ユニット1には、プレストレスを導入することができる。例えば、図示していないがリブ部12にPC鋼線などのPC鋼材を配設して、リブ部12の長手方向にプレストレスを導入する。
ここで、プレストレスを導入する方法には、プレテンション方式とポストテンション方式があり、いずれの方法を適用することもできるが、プレテンション方式の方が経済的に床版ユニット1を製作することができる。
このプレテンション方式でプレストレスを導入させる場合は、PC鋼線を緊張して張力をかけた状態でその周囲に繊維補強セメント系混合材料を打設し、所定の強度が発現した後にPC鋼線の緊張を解除すると、PC鋼線の周囲に付着した繊維補強セメント系混合材料を介してリブ部12及び床部11にプレストレスが導入される。
また、このように成形される床版ユニット1のリブ部12の接合面12aの下縁及び両側縁には、型枠パッキング4Aが貼り付けられる。この型枠パッキング4Aは、独立気泡の発泡樹脂又は発泡ゴムなどによって成形されている。
さらに、この型枠パッキング4Aと同質材料の型枠パッキング4Bが、図1に示すように、狭隘部13aの接合面12a側の開口を囲むように正面視略U字形に貼り付けられている。
また、床版ユニット1を載置させる主桁2は、本実施の形態では、図1に示すように底版が広い断面I型にコンクリートによって形成されている。この主桁2は、鉄筋コンクリート又はプレストレストコンクリートによって製作することもできるが、上記した繊維補強セメント系混合材料を使って製作すれば、断面の小さな軽量の主桁2を製作することができる。
そして、隣接して配置される床版ユニット1,1間に架け渡される連結材3は、図1に示すように、対向する連結溝13,13間に架け渡される軸部31と、その両端に形成される定着部32,32とを有している。
この軸部31は、ボルトヘッド31aを備えた鋼製ボルトによって形成されている。また、定着部32は、一方の端部は狭隘部13aの溝幅よりも一辺が長い四角形板状の支圧板32aと軸部31の先端に装着されるナット32bとによって構成されており、他方の端部は支圧板32aとボルトヘッド31aとによって構成されている。
また、図1に示すように、対向するリブ部12,12の接合面12a,12a間には、隙間50が形成される。そして、この隙間50には、図5に示すように充填材5が充填される。
この充填材5には、セメント系材料と硅砂などを配合した無収縮モルタル、無収縮モルタルにPVA繊維、ポリプロピレン繊維若しくは高強度ポリエチレン繊維などの有機繊維、炭素繊維又は鋼繊維を混入した材料、又は上記した繊維補強セメント系混合材料などが使用できる。
また、図7,8に示すように、貫通孔14に収容された穴開き鋼板21の周囲に充填される充填材51にも、充填材5と同様の材料が使用できる。
次に、本実施の形態の床版10の構築方法について説明する。
まず、工場において、床版ユニット1を製作する。この床版ユニット1は、上記した繊維補強セメント系混合材料によって成形される。また、床版ユニット1を成形するに際しては、連結溝13,・・・と貫通孔14,・・・と凹部15,・・・が形成される箇所に型枠を設置して、同時に成形する。
また、一方のリブ部12の接合面12aの下縁及び両側縁には、型枠パッキング4Aを貼り付ける。さらに、図3,4では図示していないが、連結溝13の狭隘部13aに沿ってU字状に型枠パッキング4Bを貼り付ける。
一方、床版10を構築する橋梁の現場においては、図2に示すように、橋軸方向に長手方向を合わせた複数の主桁2,・・・を、橋軸直交方向に間隔を置いて平行に並べる。この主桁2,・・・の間隔は、床版ユニット1の切欠部12b,・・・の間隔に合わせておく。
そして、工場から搬送された床版ユニット1をクレーンで吊り上げ、橋軸直交方向に長手方向を合わせて、主桁2,・・・間に架け渡す。この際、床版ユニット1の切欠部12b,・・・を主桁2,・・・の頂部に載置する。また、床版ユニット1の貫通孔14,・・・には、主桁2の上面2aから突出された穴開き鋼板21,・・・が収容される。
さらに、このようにして主桁2,・・・に設置された床版ユニット1に隣接して、別の床版ユニット1を同様の方法によって設置する。なお、新たに設置される床版ユニット1は、図1に示すように先に設置された床版ユニット1との間に隙間50が開くように設置する。
この隙間50の幅は、型枠パッキング4Aが対向するリブ部12の接合面12aに押し潰されて、上方空間に充填される充填材5が漏出しない密着性が確保できる範囲内とする。
また、隙間50を形成するに際しては、隙間50の幅が微小であるため、クレーンによって床版ユニット1を仮置きした後に、連結溝13,13に連結材3を挿入し、ナット32bを締め付けることで仮置きされた床版ユニット1を所定の位置まで引き寄せることによって形成することができる。
そして、連結溝13,13が対向する箇所を除いた隙間50の型枠パッキング4Aと型枠パッキング4Bとの間の空間に、充填材5を充填する。この隙間50に流し込まれた充填材5は、接合面12a,12aに形成された凹部15,・・・にも充填されるので、充填材5が硬化することによって凹部15,・・・にせん断キーが形成される。なお、この充填材5は、所定の強度が発現するまで養生する。
続いて、連結材3の定着部32,32間に露出する軸部31の長さが所定の長さになるようにナット32bの位置を調整する。なお、隙間50を形成する際に連結材3を使用した場合は、連結溝13から一旦、連結材3を取り出して、ナット32bの位置の調整をおこなう。
続いて、連結材3を加熱して軸部31を熱膨張させる。なお、鋼製ボルトであれば、200℃〜400℃程度の加熱をおこなっても、熱による強度低下や脆性的な破壊が生じることはない。
そして、加熱された連結材3を、床面1aから連結溝13,13に挿入し、拡幅部13bにはエアーラチェット(図示省略)を挿入して、ナット32bを締めて緩みを除去する。この挿入された連結材3は、冷めると収縮するため、定着部32,32を介してリブ部12,12間にプレストレスが導入されることになる。
この連結材3によるプレストレスの導入方法には、様々な方法が採用できる。例えば、リブ部12の長手方向に間隔を置いて配置された連結溝13,・・・に対して、一つ置きに加熱した連結材3,・・・を挿入し、1度目のプレストレスの導入をおこなう。続いて、残りの連結溝13に加熱した連結材3,・・・を挿入し、2度目のプレストレスの導入をおこなう。
そして、2度目のプレストレスの導入によって緩んだ1度目に挿入した連結材3,・・・を取り出し、ナット32bの位置を調整して、再び加熱して連結溝13に挿入してプレストレスの導入をおこなう。なお、緩んだ連結材3に対しては、拡幅部13bにエアーラチェットを挿入して、ナット32bの増し締めをおこなってもよい。
また、プレストレスの導入が終了した連結材3が配置された連結溝13には、充填材5を充填する。
さらに、床版ユニット1の貫通孔14には、図7,8に示すように充填材51を充填する。ここで、主桁2の上面2aには、床版ユニット1を載置する前に発泡ゴムなどの型枠パッキング4Cが貼り付けられており、床版ユニット1の自重によって押し潰されて密着されるため、充填材51の漏出を防止することができる。
そして、貫通孔14に充填された充填材51は、穴開き鋼板21の穴21aにも流れ込む。ここで、穴開き鋼板21には、図7,8に示すように、主桁2に埋設された部分にも穴21bが形成されており、穴開き鋼板21と主桁2は一体化されている。このため、貫通孔14の充填材51が硬化することによって、床版ユニット1の床部11と主桁2とが一体化されることになる。
次に、本実施の形態の床版ユニット1と、床版10の接合構造と、床版10の構築方法の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の床版ユニット1は、接合面12aが形成される部分がリブ部12となって床部11の側縁から垂下されている。
このように床版10の接合構造が形成される箇所に断面剛性の大きなリブ部12が設けられているため、接合構造が弱部にならない。また、一定の厚さに成形される従来の床版では、接合構造の剛性を高めるには全体の板厚を厚くしなければならないが、リブ部12を設ける本実施の形態の接合構造であれば、床部11を薄くして軽量化を図ることができる。
特に、上記した繊維補強セメント系混合材料によって製作される床版ユニット1は、従来のプレストレストコンクリート床版や鉄筋コンクリート床版の自重に比べて半分以下の自重にすることができる。
さらに、橋梁の床版10の橋軸直交方向となるリブ部12の長手方向の剛性が増大すると、橋梁を走行する車両の輪荷重によって発生する橋軸方向の曲げモーメントが橋軸直交方向に再配分され、橋軸方向の曲げモーメントが減少される。このため、床版10の接合構造を簡素化しても、橋軸方向の曲げモーメントに抵抗させることができる。
また、リブ部12には、床面1aから下方に向けた連結溝13が形成されており、その連結溝13は狭隘部13aと拡幅部13bとを有している。このため、この連結溝13に連結材3を挿入する作業や連結材3によるプレストレスの導入作業は、すべて床面1a側から容易におこなうことができる。
さらに、予め型枠パッキング4A,4B,4Cを所定の位置に貼り付けておくことで、隙間50への充填材5の充填作業や貫通孔14への充填材51の充填作業も床面1a上からおこなうことができる。
このように床面1aから作業がおこなえるのであれば、床版10の下方に足場や支保工を設ける必要がないうえに、安全性の高い場所で作業できるので、施工性に優れ、短期間で床版10を構築することができる。
また、定着部32,32が両端に形成された連結材3を連結溝13,13間に架け渡す作業は、定着部32,32を拡幅部13b,13bに沿って挿入するだけで、拡幅部13bと狭隘部13aとの境界の段差に連結材3の定着部32を係合させることができるので、容易に床版ユニット1,1同士の連結をおこなうことができる。
特に、連結材3によってリブ部12,12間にプレストレスを導入して接合構造の強度をさらに増大させる際に、加熱して熱膨張した連結材3を連結溝13,13に挿入し、連結材3が常温に戻るときの温度収縮によって圧縮力を作用させる方法であれば、容易にリブ部12,12間にプレストレスを導入することができ、接合構造のひび割れの発生を防ぐことができる。
また、連結溝13,・・・をリブ部12の長手方向に間隔をおいて複数、形成することで、連結溝13,・・・に配置される連結材3,・・・による圧縮力を、長手方向に分散させてリブ部12,12間に作用させることができる。
さらに、リブ部12の接合面12aに凹部15を設けておくことで、その凹部15に充填される充填材5によってせん断キーを形成することができ、接合構造におけるせん断ずれ変形を機械的な力の伝達によって抑制することができる。
また、主桁2の上面2aから穴開き鋼板21が突出されている場合は、その穴開き鋼板21を床部11の貫通孔14に挿入し、周囲に充填材51を充填することによって、床版ユニット1と主桁2,・・・とを強固に一体化させることができる。
以下、前記した実施の形態とは別の形態の実施例1について、図9を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
この実施例1の床版ユニット1Aは、前記実施の形態で説明した床版ユニット1とは異なり、リブ部12を有していない。すなわち、実施例1の床版ユニット1Aは、床部11から床部11の接合方向の縁部の接合面11aに至るまで、突条部16A以外は板状に形成されている。
この突条部16Aは、前記実施の形態の突条部16と同様に、主桁2の上面2aに対峙させる部分で、主桁2と対向する位置に合わせて延設される。そして、この突条部16A,16A間には、橋軸直交方向に間隔を置いて複数の連結溝13,・・・が形成される。
この連結溝13は、図9に示すように、接合面11aに連通される細溝状の狭隘部13aと、その狭隘部13aの床部11側の端部に形成される拡幅部13bとを有している。
この狭隘部13aは、床面1a側と接合面11a側の2面に向けて開口されるとともに、拡幅部13bと連通されている。また、拡幅部13bは、狭隘部13aよりも溝幅が拡幅された四角柱状の空洞で、床面1a側と狭隘部13a側の2面に向けて開口されている。このため、連結材3を床面1aの上方から連結溝13の底に向けて挿入することが可能になる。
このように構成された実施例1の床版ユニット1Aであれば、床面1aに開口された連結溝13を使うことで、床面1a上からの作業によって接合をおこなうことができるので、施工性に優れている。
さらに、定着部32,32が形成された連結材3を使っておこなわれる床版10の接合構造は、拡幅部13bと狭隘部13aとの境界の段差に連結材3の定着部32を係合させることで、容易に床版ユニット1A,1A同士の連結をおこなうことができる。
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
以下、前記した実施の形態及び実施例1とは別の形態の実施例2について、図10を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
この実施例2の床版ユニット1Bは、前記実施例1の床版ユニット1Aと同様にリブ部が形成されていないが、連結溝13の狭隘部13aが開口される箇所に凸部17が形成される。
すなわち、実施例2の床版ユニット1Bの突条部16B,16B間には、橋軸直交方向に間隔を置いて複数の連結溝13,・・・が形成される。そして、床部11の接合方向の縁部の連結溝13,・・・が形成される位置には、狭隘部13aの溝幅よりも幅が広い凸部17が形成される。
このように連結溝13,・・・を設ける箇所の床部11の縁部にのみ凸部17,・・・を設けるのであれば、経済的であるうえに、床部11を薄くして床版ユニット1Bの軽量化を図ることができる。
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
以下、前記した実施の形態及び実施例1,2とは別の形態の実施例3について、図11を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1,2で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
この実施例3の床版ユニット1Cは、前記実施の形態の床版ユニット1のような接合面12aの全長にわたるリブ部12は設けられていないが、突条部16C,16C間の連結溝13,・・・が形成される箇所に、凸部としての連続した凸壁部18が形成される。
この凸壁部18は、床部11の接合方向の縁部であって、主桁2,2に載置される突条部16,16間の中央付近から垂下される。この凸壁部18は、橋軸直交方向に延設されているため、橋軸方向の曲げモーメントが大きくなる主桁2,2間の床部11の縁部の剛性を効率的に向上させることができる。
また、複数の連結溝13,・・・に対して連続した凸壁部18を形成するのであれば、個々に設ける場合に比べて、型枠の設置手間などを省略することができ、施工性に優れている。
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施の形態及び実施例では、橋梁の床版10について説明したが、これに限定されるものではなく、桟橋の床版や人工地盤の床版にも本発明を適用することができる。
また、前記実施の形態及び実施例では、コンクリート製の断面I型の主桁2について説明したが、これに限定されるものではなく、材料は鋼材や合成部材でもよく、断面はU字形や箱型などでもよい。
さらに、前記実施の形態では、連結材3を加熱して温度収縮によってプレストレスを導入する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、ナット32bを締め付けることでプレストレスを導入する方法であってもよい。
また、前記実施の形態では、鋼製ボルトによって形成される連結材3について説明したが、これに限定されるものではなく、PC鋼棒の両端に支圧板を固着させた連結材又はPC鋼線を使用した連結材などであってもよい。
さらに、前記実施の形態では、接合面12a,12a間に隙間50を形成して充填材5を充填する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、接合面12a(11a)にエポキシ系の接着剤などを塗布して接合面12a,12a(11a,11a)同士を接合することによって床版10の接合構造を構築することができる。
また、前記実施の形態及び実施例では床版ユニット1,1A,1B,1Cの主桁2の上面2aに当接させる箇所に突条部16,16A,16B,16Cを設けたが、これに限定されるものではなく、主桁2の上面2aに当接させる箇所は平坦や凹状に形成されていてもよい。
1,1A,1B,1C 床版ユニット
1a 床面
10 床版
11 床部
11a 接合面
12 リブ部
12a 接合面
12b 切欠部
13 連結溝
13a 狭隘部
13b 拡幅部
14 貫通孔
15 凹部
17 凸部
18 凸壁部(凸部)
2 主桁
21 穴開き鋼板
2a 上面
3 連結材
32 定着部
5 充填材
50 隙間

Claims (10)

  1. 床版を形成するために接合方向に並べられる床版ユニットであって、
    前記床版の床面から下方に向けた連結溝が形成されており、その連結溝は、前記床版の前記接合方向の接合面に連通される狭隘部と、その狭隘部の内部側の端部に形成される拡幅部とを有していることを特徴とする床版ユニット。
  2. 前記床版は、床部と、その床部の前記接合方向の縁部から垂下されるリブ部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の床版ユニット。
  3. 前記床版は、床部と、その床部の前記接合方向の縁部の前記連結溝が形成される位置に対応して下方に向けて突出される凸部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の床版ユニット。
  4. 前記連結溝は、前記接合方向に直交する方向に間隔を置いて複数、形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の床版ユニット。
  5. 前記接合面には、凹部が形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の床版ユニット。
  6. 前記床版を載置させる前記接合方向に延伸される主桁の上面には、穴開き鋼板が上方に向けて突出されており、前記床版には前記穴開き鋼板を収容する貫通孔が形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の床版ユニット。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の床版ユニット同士を接合させた床版の接合構造であって、
    対向させる前記床版ユニットの前記接合面間には充填材が充填され、前記対向する連結溝間には連結材が架け渡され、前記連結材の両端に形成される定着部は前記拡幅部に収容されることを特徴とする床版の接合構造。
  8. 前記連結材によって前記床版ユニット間にプレストレスが導入されることを特徴とする請求項7に記載の床版の接合構造。
  9. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の床版ユニットを複数接合しておこなう床版の構築方法であって、
    設置済みの一方の前記床版ユニットに対して、対向する前記接合面間に隙間が形成されるように他方の前記床版ユニットを設置する工程と、
    前記隙間に充填材を充填する工程と、
    前記連結溝間に連結材を架け渡す工程とを備えたことを特徴とする床版の構築方法。
  10. 前記連結材を架け渡すに際して、両端に定着部が形成された鋼製の連結材を加熱し、前記連結材が熱膨脹した状態で前記連結溝に挿入することを特徴とする請求項9に記載の床版の構築方法。
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