JP3910976B2 - コンクリート部材およびコンクリート部材の補強方法 - Google Patents

コンクリート部材およびコンクリート部材の補強方法 Download PDF

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Description

本発明は、繊維補強セメント系混合材料からなるコンクリート部材および該コンクリート部材の補強方法に係り、特に、セメント系マトリックスの自己収縮や乾燥収縮時のひび割れの発生を抑制でき、曲げ耐力の向上を図ることのできるコンクリート部材およびコンクリート部材の補強方法に関するものである。
コンクリート構造物を構成する梁や床版、柱などの施工材料であるセメント系混合材料は、構造物に要求される耐震性や耐久性、施工性などの要求レベルの上昇に適応すべく、その材料特性が飛躍的に発展してきている。中でも繊維補強セメント系混合材料は、水/セメント比が小さいことや200N/mm以上の高い圧縮強度を有した超高強度であること、繊維による補強によって鉄筋を使用することなく引張強度を向上させることができるなど、その優れた材料特性ゆえに使用頻度も多くなってきているのが現状である。かかる繊維補強セメント系混合材料を使用したコンクリート部材は薄肉断面とすることができ、例えば橋梁などの桁や床版などに使用されることにより、死荷重の軽減やコンクリート部材による占有域の狭小化を実現することができる。さらには異形鉄筋などによるせん断補強鉄筋を必要としないため、上記するような薄肉断面とできることに加えて配筋手間を不要とすることで工期の短縮化を実現でき、セメント系混合材料の回り込み不良による品質の劣化などの問題を解消することができる。さらには、かかる繊維補強セメント系混合材料を使用した場合にプレストレスを導入することにより、該材料の有する高い圧縮強度特性を有効に発揮させることが可能となり、したがって高い曲げ耐力やせん断耐力を備えたコンクリート部材を経済的に得ることが可能となる。
ところで、上記する繊維補強セメント系混合材料からなるコンクリート部材には、通常、鉄筋などの引張補強材は埋設されず、断面力として圧縮力が特に卓越する圧縮部材として使用されるのが一般的であった。この圧縮力が卓越するコンクリート部材としてはトンネルの支保工などが一例として挙げられる。繊維補強セメント系混合材料からなるコンクリート部材が上記する圧縮部材として使用される理由は、一つにはその高い圧縮強度特性を有効に利用しようとする積極的理由によるものである。他の一つの理由としては、その内部に含有される金属繊維などの配向性を異形鉄筋などが阻害することを防止すべく、コンクリート内部に配筋しない構成とすることにより、圧縮強度特性に見合うだけの曲げ強度特性を備えていないという消極的理由によるものである。なお、発明者は、繊維補強セメント系混合材料から製造されたコンクリート部材のうち、トンネル支保工として代表的なセグメントに関する発明を特許文献1に開示している。
上記する繊維補強セメント系混合材料からなるコンクリート部材であっても、その内部に配筋することにより、圧縮強度特性のみならず引張強度特性をも改善しようとする試みがなされている。繊維補強セメント系混合材料を使用した梁や床版の曲げ耐力を向上させる手段として、従来の鉄筋コンクリート部材と同様に異形鉄筋を引張主鉄筋として配設する手段が考えられる。異形鉄筋を使用することにより、該異形鉄筋とセメント系マトリックス間には十分な付着強度が期待できるため、異形鉄筋に十分な引張応力を発揮させることが可能となる。
また、引張補強材としてPC鋼棒やPC鋼より線などの緊張材を使用し、予め緊張力が導入された状態で繊維補強セメント系混合材料内に埋設し、該繊維補強セメント系混合材料の硬化を待って緊張力を解放してプレストレスを導入するプレテンション方式や、繊維補強セメント系混合材料の硬化後に緊張材によりプレストレスを導入するポストテンション方式などを採用することもできる。緊張材によりプレストレスを導入することでコンクリート部材に予め圧縮力を作用させることができ、高い曲げ耐力やせん断耐力を有するコンクリート部材を製造することが可能となる。
特開2003−293698号公報
セメント系混合材料、中でも繊維補強セメント系混合材料を使用してコンクリート部材を製作するに際して、異形鉄筋をその内部に配設した構造とすることにより、該異形鉄筋とセメント系マトリックス間において十分な付着強度が期待できるため、ひび割れを分散させてひび割れ幅を小さく制御することができ、異形鉄筋は引張補強材としての役割を果たすことができる。したがって、繊維補強セメント系混合材料からなるコンクリート部材の引張強度特性を向上させることが可能となる。しかし、超高強度の繊維補強セメント系混合材料はセメント量が多いことに加えて骨材粒子が小さいため、セメント系マトリックスが凝結する際に自己収縮が大きくなるという欠点を備えている。したがって、付着強度の増大を図って異形鉄筋が配設されている場合には、該異形鉄筋がセメント系混合材料の自己収縮を拘束することによってセメント系マトリックスに引張応力が残留することとなり、セメント系混合材料の硬化時にひび割れが誘発され易いという問題がある。
そこで、付着強度の大きな異形鉄筋を配設する代わりに、円形断面の丸鋼あるいはより線断面のPC鋼より線などからなる引張補強材を使用することが考えられる。しかし、かかる引張補強材を使用した場合には、セメント系混合材料の自己収縮の拘束効果を緩和できる一方で、今度は引張補強材とセメント系混合材料との付着強度が小さくなり、引張補強材に十分な引張応力が作用する前に付着切れが生じてしまい、引張補強材とセメント系マトリックスとの間ですべりが誘発されることでコンクリート部材の曲げ耐力の向上を図ることができないといった問題が生じ得る。
引張補強材としてPC鋼線やPC鋼より線などの緊張材を使用し、プレテンション方式にて緊張力を導入することで高い曲げ耐力を有するコンクリート部材を製造することが可能となる。しかし、この場合にはコンクリート部材の端部付近で十分な付着力を取ることができず、したがって引張補強材とセメント系マトリックスとの間ですべりが誘発され易いことから、コンクリート部材端部付近のセメント系マトリックスには十分なプレストレスが導入され難いといった問題が生じ得る。一般の設計段階においては、コンクリート部材端部から引張補強材直径の60倍程度の距離までは、上記するプレストレスの導入不良を勘案してプレストレスの導入分布を三角形分布とするなどの設計手法が講じられている。さらに、引張補強材にプレテンションを導入し、セメント系混合材料の硬化後に該プレストレスを解放した際に、コンクリート部材端部付近において緊張材およびセメント系マトリックス間で割裂破壊が生じてひび割れが誘発される可能性もある。
繊維補強セメント系混合材料を使用してコンクリート部材を製造するに際して、上記プレテンション方式に代わってポストテンション方式を採用する場合には、プレテンション方式の際に問題となった上記するような引張補強材とセメント系マトリックス間でのすべりの誘発やコンクリート部材端部におけるプレストレスの低減といった問題は生じ難くなる。しかし、該ポストテンション方式ではコンクリート部材端部での定着金具が高価であること、プレストレス導入後のシース管内へのグラウト作業に手間がかかること、定着金具などの防錆処理を要することなどによってプレテンション方式に比べてコスト増となってしまうといった問題が生じ得る。
以上のように、セメント系混合材料、中でも繊維補強セメント系混合材料を使用してコンクリート部材を製造するに際して、従来のように異形鉄筋を配設する方法や緊張材を配設してプレテンション方式またはポストテンション方式を採用するなどの方法はそれぞれに固有の問題を抱えており、繊維補強セメント系混合材料からなるコンクリート部材の引張強度特性ないし曲げ強度特性の向上のための措置としてはいずれも効果的でないのが現状である。
本発明のコンクリート部材およびコンクリート部材の補強方法は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、繊維補強セメント系混合材料の自己収縮や乾燥収縮に対する拘束効果を小さくでき、したがってひび割れの発生を抑制できるコンクリート部材およびコンクリート部材の補強方法を提供することを目的としている。また、コンクリート部材の引張強度特性を向上させることができるコンクリート部材およびコンクリート部材の補強方法を提供することを目的としている。さらに、プレテンション方式を採用した場合においても、コンクリート部材端部における導入プレストレスが有効に圧縮応力として作用することができ、したがってプレストレス導入応力を部材端部付近まで設計上有効に考慮することのできるコンクリート部材の補強方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成すべく、本発明によるコンクリート部材は、鉄筋などの引張補強材をその内部に埋設する、コンクリート製の梁または床版などを構成するコンクリート部材において、前記コンクリート部材は繊維補強セメント系混合材料からなり、前記引張補強材の両端は定着板にそれぞれ摩擦圧接されており、該定着板のうち前記コンクリート部材端側の一側面にはそれぞれ弾性材が備えてあり、前記定着板および前記弾性材が前記コンクリート部材内に埋設されており、前記弾性材が定着板のコンクリート部材端側に設けられることにより、セメント系マトリックスの自己収縮時の収縮移動を該弾性材が変形吸収するようになっていることを特徴とする。
ここで、繊維補強セメント系混合材料とは、金属又は合成樹脂の繊維をセメント系混合材料に混入することによって、引張強度、曲げ強度、靭性などの性能を改善したセメント系混合材料のことをいう。本発明に使用する繊維補強セメント系混合材料は、流動性が高く、凝結時間が遅いものを使用するのが好ましい。繊維補強セメント系混合材料としては、例えば、(1)セメント、(2)最大粒度径が5mm以下で、好ましくは2mm以下の骨材粒子、(3)粒子径が1μm以下で、好ましくは0.5μm以下のポゾラン系反応粒子、(4)少なくとも1種の分散剤を含有する組成物、を水と混合することにより得られるセメント系マトリックスに、直径が0.05〜0.3mmで、長さが8〜16mmの繊維(金属繊維あるいはビニロン繊維などの化学繊維)を容積で1〜4%程度混入して得られる、繊維で補強された超高強度のセメント系混合材料を使用することができる。
従来の鉄筋コンクリート製またはプレストレストコンクリート製の梁や床版では部材の引張強度または曲げ強度を高めるために、少なくとも部材の長手方向に鉄筋を配設したり、緊張材を配設したりしている。本発明のコンクリート部材は、繊維補強セメント系混合材料からなり、棒状の鉄筋や緊張材からなる引張補強材の両端近傍(両端を含む)に例えば鋼製の定着板を接続させた状態で該コンクリート部材内部に引張補強材および定着板を埋め込んで製造されるものである。ここで、引張補強材と定着板との接続は溶着または圧着などの適宜の接続方法を選定できるほか、該定着板に貫通穴を穿設しておき、かかる貫通穴に引張補強材を貫通させた状態で溶着または圧着接合させることもできる。また、定着板のうち、コンクリート部材端側の一側面には、例えば合成ゴムや発砲ウレタンのようなゴム製やスチレンや発砲スチロールなどの軟質な樹脂製の弾性材を接着した構成としておく。
引張補強材としてPC鋼棒やPC鋼より線などの緊張材を使用する場合には、該緊張材に予め緊張力を導入した状態であってもよく、緊張力を導入していない状態であってもよい。また、コンクリート部材は、直接現場にて施工される現場打ちのコンクリート部材であってもよいが、好ましくは、工場や現場の製作ヤードなどにて予め製作されたプレキャスト製品であるのがよい。
定着板の一側面に弾性材を備えた構成とすることにより、セメント系マトリックスの自己収縮時に該定着板が該収縮を過度に拘束することを緩和することができる。すなわち、コンクリート部材が自己収縮する際に、セメント系マトリックスは部材中心に向かって収縮移動することで部材全体が収縮することとなる。単に定着板のみをコンクリート部材内に埋設した状態では引張補強材から突設している定着板が上記セメント系マトリックスの収縮移動を該定着板表面で拘束してしまうこととなり、したがって自己収縮に伴うひび割れの可能性が極めて高くなってしまう。本発明のように定着板の一側面(コンクリート部材端側)に弾性材を備えることにより、セメント系マトリックスの収縮移動を該弾性材の変形吸収作用によって吸収することができ、したがって上記自己収縮を過度に拘束することがなくなるため、セメント系マトリックスの自己収縮時のひび割れ発生の可能性を極めて低くすることができる。
また、本発明によるコンクリート部材における他の実施形態としては、前記定着板には前記引張補強材が貫通可能な貫通穴が穿設されており、該定着板のうち前記コンクリート部材端側の一側面にはそれぞれ引張補強材と固着可能な中空部材が備えてあり、該中空部材のうち前記コンクリート部材端側の端面にはそれぞれ弾性材が備えてあり、前記引張補強材は前記定着板の貫通穴および前記中空部材を貫通して該中空部材に接続されており、該中空部材が前記コンクリート部材内に埋設されていることを特徴とする。
引張補強材が貫通できる貫通穴を定着板に穿設しておき、該貫通穴と中空部材の穴位置を合わせた状態で両者を溶着または圧着接合する。引張補強材を上記する貫通穴および中空部材に通した状態で該中空部材に接続することで引張補強材と定着板とを一体化することができる。引張補強材として例えばPC鋼より線を使用する場合は、該PC鋼より線を中空部材へ圧着することにより引張補強材と定着板とを一体化することができる。
また、中空部材のうち、コンクリート部材端側の端面には定着板と同様に弾性材を接着または塗布した構成とする。かかる弾性材は、定着板に接着等する弾性材と同様に、定型のゴム製または軟質な樹脂製の弾性材を使用することができる。中空部材の端面にも弾性材を接着等する理由は、定着板の場合と同様にセメント系マトリックスの自己収縮を過度に拘束することを防止するためである。
本発明のように引張補強材の長手方向に所定延長を備えた中空部材と引張補強材を接続させる構成とすることにより、引張補強材の端部を直接定着板の一側面に圧着する場合に比べて、中空部材と引張補強材との接続強度を高めることができ、したがって該中空部材を介して引張補強材と定着板との接続強度を高めることができる。
また、本発明によるコンクリート部材における他の実施形態としては、前記中空部材の内空面にねじ溝が刻設されており、前記引張補強材の端部近傍には前記ねじ溝に螺合可能なねじ溝が刻設されていることを特徴とする。
本発明は引張補強材として鉄筋を使用する場合に特に好適である。この場合、中空部材としてはナットを使用することができる。
また、本発明によるコンクリート部材における好ましい実施形態としては、前記引張補強材が丸鋼であることを特徴とする。
引張補強材として鉄筋を使用する場合、それが異形鉄筋であると該鉄筋とセメント系マトリックスとの間に高い付着強度を期待することができるものの、セメント系マトリックスの自己収縮を過度に拘束してしまうことからひび割れを誘発する可能性が高くなってしまう。そこで、鉄筋を使用する場合には、好ましくは丸鋼を使用することにより上記するひび割れの可能性を低くすることが可能となる。また、丸鋼を使用することにより該丸鋼とセメント系マトリックスとの付着強度を十分確保できないという問題に対しては、丸鋼の両端近傍に定着板(および中空部材)を備えた構成としているため、該定着板での支圧抵抗を期待することができる。したがってコンクリート部材に曲げ応力が作用した場合でも丸鋼とセメント系マトリックスとの間にすべりが生じることなく、両者は一体となって曲げ抵抗力を発揮することが可能となる。
また、本発明によるコンクリート部材における好ましい実施形態としては、前記引張補強材がPC鋼棒またはPC鋼より線などの緊張材であることを特徴とする。
PC鋼棒またはPC鋼より線を使用する場合には、予め該引張補強材にプレストレスを導入しておく必要は必ずしもない。プレストレスを導入しない場合は、上記する丸鋼などを使用する場合と同じ効果、すなわちコンクリート部材に曲げ応力が作用する場合に該PC鋼棒またはPC鋼より線が引張補強材として働くことができる。
さらに、本発明によるコンクリート部材の補強方法は、前記コンクリート部材を補強するコンクリート部材の補強方法であって、予め緊張力を与えられた前記緊張材を埋設した状態で繊維補強セメント系混合材料を充填し、所定の強度発現後に前記緊張力を解放することを特徴とする。
本発明は、引張補強材として、PC鋼棒やPC鋼より線といった緊張材を使用し、プレテンション方式を採用してコンクリート部材に予め圧縮力を作用させる場合の方法に関するものである。型枠内に緊張材を配設した状態で繊維補強セメント系混合材料を型枠内に充填し、繊維補強セメント系混合材料が所定強度に達した段階で緊張ジャッキをリリースすることにより緊張力を解放する。
引張補強材としてPC鋼棒やPC鋼より線を使用し、プレテンション方式を採用することにより、繊維補強セメント系混合材料が硬化して所定強度に達した後に緊張力を解放した際には、引張補強材の端部に備えた定着板の支圧作用により、コンクリート部材の端部を含めて有効に圧縮力を該コンクリート部材に作用させることが可能となる。したがって、従来のプレテンション方式における設計段階で行われていたコンクリート部材端部のプレストレスの低減の必要性はなくなるものと考えられる。さらには、定着板を備えた構成とすることによって引張補強材の端部に局所的な引張応力も発生し難くなるため、引張補強材の端部で生じていた付着割裂に起因するひび割れの発生も考慮する必要がなくなる。また、ポストテンション方式のように定着板等をコンクリート部材端部の外側に配置する構成ではないため、該定着板等の防錆処理を要することもなく、したがってコンクリート部材の製造コストを安価なものとすることができる。
以上の説明から理解できるように、本発明のコンクリート部材によれば、繊維補強セメント系混合材料からなるセメント系マトリックスの自己収縮や乾燥収縮に対する拘束効果を小さくすることができ、したがってひび割れの発生を抑制することができる。また、本発明のコンクリート部材によれば、繊維補強セメント系混合材料からなるコンクリート部材の引張強度特性や曲げ強度特性を効果的に向上させることができる。さらに、本発明のコンクリート部材の補強方法によれば、プレテンション方式を採用した場合においても、コンクリート部材端部における導入プレストレスを有効に圧縮力として部材に作用させることができる。したがって、設計段階においてコンクリート部材端部の導入プレストレスを低減する必要もなくなるものと考えられる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明のコンクリート部材の一実施形態を示した斜視図である。図2aは、引張補強材の端部近傍に定着板と中空部材を備えた実施形態であり、図2bは、引張補強材の端部に定着板を備えた実施形態を示した斜視図である。図3は、引張補強材2の端部近傍21に定着板と中空部材を備えた実施形態を示した側面図であるが、図3aは引張補強材としてPC鋼より線を使用した場合、図3bは丸鋼を使用した場合の実施形態を示している。図4は、自己収縮時のコンクリート部材の収縮状況を説明した説明図であり、図5は、曲げモーメントがコンクリート部材に作用した際の引張補強材に作用する引張応力とそれに対する反作用力、および定着板に作用する支圧応力を説明した説明図である。以下の説明では、コンクリート部材としてI形断面桁を図示に基づいて説明するが、コンクリート部材の実施形態はかかる形状の桁に拘束されるものではなく、矩形断面(中実または中空)やU形断面、H形断面などの桁(梁)のほか、中実の床版や中空床版(ホロースラブ)など適宜のコンクリート部材を選定できることは勿論のことである。
図1は、繊維補強セメント系混合材料からなるコンクリート部材1としてプレキャスト製のI形断面桁を示したものである。使用する繊維補強セメント系混合材料は、上記するようなセメント系マトリックスに、直径が0.05〜0.3mmで、長さが8〜16mmの金属繊維を容積で1〜4%程度混入した材料を使用している。I形断面桁を構成する上フランジ部には該I形断面桁の両端部近傍まで伸びる引張補強材2が1本埋設されている。また、下フランジ部には引張補強材2が2本埋設されている。このI形断面桁は、上記する繊維補強セメント系混合材料から製作されているため、高い圧縮強度を有しており、金属繊維が混入されていることからひび割れ防止効果も高い。
引張補強材2の端部の構造を図2に基づいて詳述する。図2aは図1の実施形態のうち引張補強材2の端部近傍を拡大した図である。中央に引張補強材2の貫通穴32が穿設された定着板3のうち、コンクリート部材端11側となる一側面31には定型の弾性材4が接着されている。かかる弾性材4は、例えばゴム製や軟質な樹脂製材料から製作できる。また、該一側面31には中空部材5がその管穴と貫通穴32が位置合わせされた状態で接続されている。なお、定着板3と中空部材5はともに例えば鋼製材料から製作することができ、工場にて一体成形することもできる。中空部材5のうち、コンクリート部材端11側となる端面51には定型の弾性材6が接着されている。引張補強材2は貫通穴32および中空部材5を貫通した状態で、該中空部材5と溶着ないし圧着されて接続される。
図2bは、引張補強材2と定着板3との接続構造の他の実施形態を示したものであるが、この場合は貫通穴が穿設されていない定着板3に引張補強材2の端部が直接接続(摩擦圧接により接合)されている。図2a、bの実施形態においては、使用する引張補強材2として丸鋼などの鉄筋やPC鋼棒ないしPC鋼より線などの緊張材を使用することができる。なお、緊張材を使用する場合には、該緊張材にプレストレスを導入するか否かは適宜選定できる。
図3aは、引張補強材2としてPC鋼より線2aを使用した場合の実施形態の側面図であるが、PC鋼より線2aはその端部近傍21にて定着板3および中空部材5と接続した構成となっている。一方、図3bは引張補強材2として丸鋼あるいはPC鋼棒2bを使用した場合の実施形態を示しており、中空部材としてその内空面にねじ溝が刻設あるナット5aを使用することができる。該ナット5aの一端面は定着板3の一側面31と溶着等されており、他の端面51にはその表面に弾性材6が接着されている。使用する引張補強材2bの端部(端部近傍21)にも同様にねじ溝2b1が刻設してあり、ナット5aをねじ溝2b1に螺合させることでナット5aおよび定着板3と引張補強材2bとを一体化させる。
図1に戻り、上記するような定着板3(および中空部材5)をその端部近傍に備えた引張補強材2を所定位置に所定本数埋設された状態でコンクリート部材1が製造される。
次に、引張補強材2としてPC鋼棒やPC鋼より線などの緊張材を使用し、プレテンション方式にて緊張力を導入することによりコンクリート部材1を補強する補強方法について概説する。緊張材にプレストレス力を導入する方法は公知の緊張器具にて行うことができ、緊張力が導入された緊張材を図示しない形枠内にセットした後に繊維補強セメント系混合材料を例えば一方向へ向かって流し込むことにより、セメント系混合材料の充填を完了させる。養生期間を経て、繊維補強セメント系混合材料が所定強度に達した後に緊張ジャッキをゆるめて緊張力の解放を行う。
図4は、フレッシュな繊維補強セメント系混合材料が充填された後に、除々に自己収縮していく状況を模式的に示したものである。繊維補強セメント系混合材料などの高強度コンクリートを用いたコンクリート部材1(鉄筋コンクリート部材またはプレストレストコンクリート部材)においては、自己収縮と水和熱膨張/収縮による連成ひずみに起因する拘束応力が発生し、早期にひび割れる危険性がある。図示するように、繊維補強セメント系混合材料は部材中央に向かって(図中の矢印XおよびY方向)自己収縮することとなる。本発明では、引張補強材2として拘束効果の低い丸鋼やPC鋼棒、PC鋼より線などの緊張材を使用することでかかる自己収縮に起因するひび割れを効果的に防止可能としている。さらに、定着板3の一側面31には弾性材4を、中空部材5の端面51にも弾性材6をそれぞれ接着した構成としており、かかる引張補強材2からの突起物が繊維補強セメント系混合材料の自己収縮を過度に拘束するのを緩和することとしている。
図5は、コンクリート部材1に曲げモーメントMが作用した場合に引張補強材2および定着板3に作用する応力を模式的に示したものである。なお、図示するコンクリート部材1は図1に示すI形断面桁の下フランジおよびウエブの途中までを示した図である。図示する方向の曲げモーメントM(正の曲げモーメント)が下フランジに作用した場合、引張補強材2には図中X方向の引張応力が作用し、その反作用として引張補強材2の中央へ向かう(矢印Y方向)復元力が作用することとなる。かかる復元力によって定着板3もコンクリート部材1の中央へ向かう方向へ引張力を受けることとなり、定着板3はその引張力に対するコンクリートからの支圧応力を受けることとなる(矢印Z方向)。引張補強材2としてセメントとの付着強度の小さな丸鋼やPC鋼棒、PC鋼より線などの緊張材を使用する場合であっても、かかる定着板3の上記するような支圧抵抗作用によって繊維補強セメント系混合材料と引張補強材2との間に生じ得るすべりを防止することができ、したがって曲げモーメントに対して両者は一体となって抵抗することができる。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
本発明のコンクリート部材の一実施形態を示した斜視図。 (a)は引張補強材の端部近傍に定着板と中空部材を備えた実施形態を示した斜視図であり、(b)は引張補強材の端部に定着板を備えた実施形態を示した斜視図。 引張補強材の端部近傍に定着板と中空部材を備えた実施形態を示した側面図であり、(a)は引張補強材として丸鋼を使用した実施形態を示した図であり、(b)は引張補強材としてPC鋼より線を使用した実施形態を示した図。 自己収縮時のコンクリート部材の収縮状況を説明した説明図。 曲げモーメントがコンクリート部材に作用した際の引張補強材に作用する引張応力とそれに対する反作用力、および定着板に作用する支圧応力を説明した説明図。
符号の説明
1…コンクリート部材、2…引張補強材、2a…PC鋼より線、2b…丸鋼あるいはPC鋼棒、3…定着板、4…弾性材、5…中空部材、6…弾性材、11…コンクリート部材端、21…端部近傍、31…一側面、32…貫通穴、51…端面

Claims (6)

  1. 鉄筋などの引張補強材をその内部に埋設する、コンクリート製の梁または床版などを構成するコンクリート部材において、
    前記コンクリート部材は繊維補強セメント系混合材料からなり、前記引張補強材の両端は定着板にそれぞれ摩擦圧接されており、該定着板のうち前記コンクリート部材端側の一側面にはそれぞれ弾性材が備えてあり、前記定着板および前記弾性材が前記コンクリート部材内に埋設されており、
    前記弾性材が定着板のコンクリート部材端側に設けられることにより、セメント系マトリックスの自己収縮時の収縮移動を該弾性材が変形吸収するようになっていることを特徴とするコンクリート部材。
  2. 鉄筋などの引張補強材をその内部に埋設する、コンクリート製の梁または床版などを構成するコンクリート部材において、
    前記コンクリート部材は繊維補強セメント系混合材料からなり、前記引張補強材の両端近傍にはそれぞれ定着板が備えてあり、該定着板のうち前記コンクリート部材端側の一側面にはそれぞれ弾性材が備えてあり、
    前記定着板には前記引張補強材が貫通可能な貫通穴が穿設されており、該定着板のうち前記コンクリート部材端側の一側面にはそれぞれ引張補強材と固着可能な中空部材が備えてあり、該中空部材のうち前記コンクリート部材端側の端面にはそれぞれ弾性材が備えてあり、
    前記定着板と前記中空部材と前記弾性材はともにコンクリート部材内に埋設されており、
    前記弾性材が定着板および中空部材のそれぞれのコンクリート部材端側に設けられることにより、セメント系マトリックスの自己収縮時の収縮移動を該弾性材が変形吸収するようになっていることを特徴とするコンクリート部材。
  3. 前記中空部材の内空面にはねじ溝が刻設されており、前記引張補強材の端部近傍には前記ねじ溝に螺合可能なねじ溝が刻設されていることを特徴とする、請求項2に記載のコンクリート部材。
  4. 前記引張補強材が丸鋼であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のコンクリート部材。
  5. 前記引張補強材がPC鋼棒またはPC鋼より線などの緊張材であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のコンクリート部材。
  6. 請求項5に記載のコンクリート部材を補強するコンクリート部材の補強方法であって、
    予め緊張力を与えられた前記緊張材を埋設した状態で繊維補強セメント系混合材料を充填し、所定の強度発現後に前記緊張力を解放する、コンクリート部材の補強方法。
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