JP2010248496A - ポリエステル系熱収縮性チューブ - Google Patents

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Abstract

【課題】実用上の耐熱性に特に優れ、電気特性、耐薬品性、耐電解液性など熱収縮性チューブに要求される特性を満たすポリエステル系熱収縮性チューブの提供。
【解決手段】酸成分の主成分がテレフタル酸であり、ジオール成分の主成分がエチレングリコールである結晶性ポリエステル(a)と、酸成分の主成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコール以外の共重合成分を含有する非晶性ポリエステル(b)とを主成分として含む樹脂組成物(A)で構成され、JIS−K7121に準じて示差熱走査型熱量計(DSC)で測定される再昇温過程における融解エンタルピーΔHmの値が15J/g以上35J/g以下とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステル系熱収縮性チューブに関し、さらに詳細には、実用上の耐熱性に特に優れ、電子部品、特にはアルミ電解コンデンサなどのコンデンサの被覆用として好適なポリエステル系熱収縮性チューブに関する。
従来、コンデンサや電池等の電子部品を被覆するための電気絶縁材料は、主としてポリ塩化ビニル樹脂からなる熱収縮性チューブが使用されてきた。しかし、近年の小型、薄肉化の流れの中で、電子基板への実装が高密度化され自己発熱や周囲からの熱ストレスなどにより使用環境が従来に比べ、非常に厳しくなってきており、電子基板に使用されるアルミ電解コンデンサにも高い耐熱性が必要とされるようになってきた。ポリ塩化ビニル樹脂製チューブでは安価であるが耐熱性が不十分であり、また、燃焼時に塩化水素ガスの発生に伴う環境問題の懸念があるため、ポリ塩化ビニル樹脂製の熱収縮性チューブの代替として、ポリエチレンテレフタレート樹脂製の熱収縮性チューブが使用されるようになってきている。
コンデンサなどの電子部品絶縁用材料に使用される熱収縮チューブに求められる特性は、被覆仕上がり性、耐熱性、耐薬品性、耐電解液性などの特性が求められている。例えば特許文献1では、コンデンサを被覆、水洗後の乾熱処理においても、コンデンサの溝部に完全に密着する熱収縮チューブとして、ジオール成分としてネオペンチルグリコールを9〜15モル%含有するポリエチレンテレフタレートからなる熱収縮チューブが提案されている。また特許文献2では、リフロー炉での耐熱性を向上させるべく、105℃×30分間熱処理を行った後の結晶化度が16%以下でありDSC測定により求められた芳香族ポリエステル樹脂の融点ピーク温度が220℃以上であることを特徴とする熱収縮チューブが提案されている。
しかしながら、コンデンサなどの電子部品絶縁用材料に使用される熱収縮チューブにおいて、コンデンサ製造工程や基板実装時の耐熱性は未だ十分なものではなかった。例えば、熱収縮チューブが被覆されたコンデンサに電解液や汚れなどが付着し洗浄後、熱処理を行った場合や、基板実装を行う際にハンダ付け面をフラックス洗浄後、ハンダリフロー炉を通して実装加工を場合等にチューブの一部が膨張したり、皺が生じたりするなどの問題点があった。
特開平09−148177号公報 特開2002-264210号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の課題は実用上の耐熱性に特に優れ、電気特性、耐薬品性、耐電解液性など熱収縮性チューブに要求される特性を満たすポリエステル系熱収縮性チューブを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、ポリエステル系樹脂に関し鋭意検討した結果、実用上の耐熱性に特に優れるポリエステル系熱収縮性チューブを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の課題は、酸成分の主成分がテレフタル酸であり、ジオール成分の主成分がエチレングリコールである結晶性ポリエステル(a)と、酸成分の主成分がテレフタル酸であり、ジオール成分中にエチレングリコール以外の共重合成分を含有する非晶性ポリエステル(b)とを主成分とする樹脂組成物(A)で構成され、JIS−K7121に準じて示差熱走査型熱量計(DSC)で測定される再昇温過程における融解エンタルピーΔHmの値が15J/g以上35J/g以下であるポリエステル系熱収縮性チューブ(以下「本発明のチューブ」ともいう。)により達成される。
本発明のチューブは、非晶性ポリエステル(b)の含有量が、前記樹脂組成物(A)100質量%に対して1質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
本発明のチューブは、樹脂組成物(A)が、酸成分の主成分がテレフタル酸であり、ジオール成分の主成分が1,4−ブタンジオールである結晶性ポリエステル(c)をさらに含有することが好ましい。
本発明のチューブは、非晶性ポリエステル(b)が、ジオール成分として脂環構造を有するジオール成分を含有することが好ましい。
本発明のチューブは、前記脂環構造を有するジオール成分が1,4−シクロヘキサンジメタノールであることが好ましい。
本発明によれば、実用上の耐熱性に特に優れ、電気特性、耐薬品性、耐電解液性など熱収縮性チューブに要求される特性を満たすポリエステル系熱収縮性チューブを提供することができる。したがって、本発明であれば、アルミ電解コンデンサなどのコンデンサをはじめとする電子部品の被覆材料として有用である。
以下、本発明のチューブについて詳細に説明する。
本発明のチューブは、酸成分の主成分がテレフタル酸であり、ジオール成分の主成分がエチレングリコールである結晶性ポリエステル(a)と、酸成分の主成分がテレフタル酸であり、ジオール成分中にエチレングリコール以外の共重合成分を含有する非晶性ポリエステル(b)とを主成分とする樹脂組成物(A)で構成され、JIS−K7121に準じて示差熱走査型熱量計(DSC)で測定される再昇温過程における融解エンタルピーΔHmの値が15J/g以上35J/g以下であることを特徴とする。
なお、本明細書において「主成分」とは、全質量の50質量%以上、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上をいう。
1.樹脂組成物(A)
本発明のチューブで用いられる樹脂組成物(A)は、酸成分の主成分がテレフタル酸であり、ジオール成分の主成分がエチレングリコールである結晶性ポリエステル(a)と、酸成分の主成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコール以外の共重合成分を含有する非晶性ポリエステル(b)とを主成分として含む。
<結晶性ポリエステル(a)>
本発明において、結晶性ポリエステルとは、JIS−K7121に準じて、DSCを用いて−50℃から300℃まで加熱速度10℃/分で昇温し、300℃で1分間保持した後、−50℃まで冷却速度10℃/分で降温を行い、−50℃で1分間保持した後、再度300℃まで加熱速度10℃/分で昇温した際、2度目の昇温時に明確な融解ピークが現れるポリエステル系樹脂を指す。結晶性ポリエステル(a)の共重合成分のうち、酸成分はテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分はエチレングリコールを主成分とする。主成分であるテレフタル酸とエチレングリコールは、酸成分またはジオール成分中にそれぞれ51mol%以上、好ましくは70mol%以上、さらに好ましくは80mol%以上の割合で含まれる。また、結晶性ポリエステル(a)は、酸成分またはジオール成分中に49mol%以下、好ましくは30mol%以下、さらに好ましくは20mol%以下の範囲であればその他の共重合成分を含んでいても構わない。
上記共重合可能なその他の酸成分の例としては、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2,5−ジクロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、4,4−スチルベンジカルボン酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビス安息香酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4−ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−Naスルホイソフタル酸、エチレン−ビス−p−安息香酸等から誘導される芳香族ジカルボン酸成分や、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等から誘導される脂肪族ジカルボン酸成分が挙げられる。なかでもイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸をはじめとする芳香族ジカルボン酸成分が好ましい。
また、上記共重合可能なその他のジオール成分の例としては、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、トランス−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、スピログリコール、p−キシレンジオール、ビスフェノールA 、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)等から誘導されるジオール成分が挙げられる。なかでもジエチレングリコール、1,3−プロパンジオールなどが好ましい。
これらの結晶性ポリエステル(a)は、1種のみを単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。
結晶性ポリエステル(a)の市販品としては、例えば、「ノバペックス」シリーズ(三菱化学社製)、「ユニペット」(日本ユニペット社製)などが挙げられる。
<非晶性ポリエステル(b)>
本発明において、非晶性ポリエステルとは、JIS−K7121に準じて、DSCを用いて−50℃から300℃まで加熱速度10℃/分で昇温し、300℃で1分間保持した後、−50℃まで冷却速度10℃/分で降温を行い、−50℃で1分間保持した後、再度300℃まで加熱速度10℃/分で昇温した際、2度目の昇温時に明確な融解ピークが現れないポリエステル系樹脂を指す。非晶性ポリエステル(b)の酸成分はテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分はエチレングリコールを主成分とし、エチレングリコール以外の共重合成分を1mol%以上、好ましくは15mol%以上、さらに好ましくは25mol%以上であり、49mol%以下、好ましくは45mol%以下の範囲で含有する。
共重合可能なその他の酸成分およびジオール成分は、上記結晶性ポリエステル(a)で示した成分と同様であるが、ジオール成分は、ジエチレングリコール、トランス−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、スピログリコール、及びポリテトラメチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。特に、トランス−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、スピログリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の脂環構造を有するジオール成分が好適に用いられ、経済性、工業的な入手し易さおよび結晶性ポリエステル(a)との混合性などから、特に1,4−シクロヘキサンジメタノールやスピログリコールが好ましい。
ここで、脂環構造を有するジオール成分の含有率は、非晶性ポリエステル(b)の全ジオール成分中に1mol%以上、好ましくは15mol%以上、さらに好ましくは25mol%以上であり、上限は49mol%以下、好ましくは45mol%以下の範囲であることが望ましい。脂環構造を有するジオール成分の含有率が上記範囲であれば、JIS−K7121に準じて、DSCを用いて−50℃から300℃まで加熱速度10℃/分で昇温し、300℃で1分間保持した後、−50℃まで冷却速度10℃/分で降温を行い、−50℃で1分間保持した後、再度300℃まで加熱速度10℃/分で昇温した際、2度目の昇温時に明確な融解ピークが現れない樹脂とすることができる。
また、本発明のチューブにおいて、非晶性ポリエステル(b)のガラス転移温度(Tg)は80℃以上120℃以下であることが好ましく、用いる結晶性ポリエステル(a)よりもTgが高いものがさらに好ましい。非晶性ポリエステル(b)のガラス転移温度(Tg)が上記範囲の温度にあると、高Tgに由来する耐熱性と非晶性ポリエステル(b)の含有量で樹脂組成物(A)の融解エンタルピーΔHm値を制御しやすいため、後述する(1)フラックス膨れ試験、(2)洗浄膨れ試験、および(3)高温放置試験を同時に満足できるため好ましい。
非晶性ポリエステル(b)の市販品としては、例えば、「Eastar Copolyester 6763」、「Eastar Copolyester GN001」(イーストマンケミカル社製)、「TRITAN」(イーストマンケミカル社製)、「SKYGREEN PETG S2008」(SKケミカル社製)、「ALTESTER」(三菱ガス化学社製)などが挙げられる。
樹脂組成物(A)に含まれる非晶性ポリエステル(b)の含有量は、樹脂組成物(A)100質量%に対し、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、40質量%以下、好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下とすることができる。非晶性ポリエステル(b)の含有量が上記範囲内であれば耐薬品性などの結晶性ポリエステルの特徴を損なうことなく、樹脂組成物(A)に実用上の優れた耐熱性を付与することができる。
<結晶性ポリエステル(c)>
本発明のチューブは、樹脂組成物(A)中に、酸成分の主成分がテレフタル酸であり、ジオール成分の主成分が1,4−ブタンジオールである結晶性ポリエステル(c)をさらに含むことができる。樹脂組成物(A)中に結晶性ポリエステル(c)を含有させることにより、樹脂組成物(A)のガラス転移温度Tgや結晶化速度を調整することができる。このような効果を得るためには、結晶性ポリエステル(c)の含有率を樹脂組成物(A)100質量%に対して20質量%以下、好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下とすることが望ましい。
結晶性ポリエステル(c)の市販品としては、例えば、「ノバデュラン」(三菱化学エンジニアリングプラスチックス社製)、「ジュラネックス」(ウィンテックポリマー社製)などが挙げられる。
また本発明のチューブは、本発明の効果を阻害しない限り、樹脂組成物(A)以外の他の樹脂(例えば、ポリエステル系、オレフィン系共重合体、ポリスチレン系等の熱可塑性エラストマーをはじめとする樹脂)を含むこともできる。さらに、樹脂組成物(A)には、用途に応じて他の成分も適宜添加することができる。例えば、チューブに易滑性を向上させるための有機滑剤、無機滑剤、無機充填剤、あるいは耐衝撃性向上剤、充填剤、紫外線吸収剤、表面処理剤、光安定剤、顔料、帯電防止剤、抗菌剤、架橋剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、加工助剤、発泡剤等の助剤を配合することができる。
2.融解エンタルピーΔHm
本発明のチューブは、JIS−K7121に準じて、DSCで測定される再昇温過程における融解エンタルピーΔHmの値が15J/g以上、好ましくは18J/g以上、さらに好ましくは20J/g以上であり、35J/g以下である。本発明のチューブは、融解エンタルピーΔHmの値が上記範囲にあることにより耐熱性を発現でき、これによりコンデンサや電池の被覆材として好適に利用できる。融解エンタルピーΔHmの値が35J/gを超えると、コンデンサ等の実装工程等の高温下に曝された場合、一度コンデンサ等の被覆物に密着したチューブが結晶の成長により弛緩してしまうなどの問題点が生じやすくなる。また15J/g未満であると、耐熱性や耐薬品性など結晶性樹脂の特徴が損なわれる場合がある。
本発明のチューブの融解エンタルピーΔHmの値を上記の範囲内とする手段としては、樹脂組成物(A)中の結晶性ポリエステル(a)の共重合組成、非晶性ポリエステル(b)、およびその他の樹脂の組み合わせ、配合比率や極限粘度を調整する方法が挙げられる。本発明においては、樹脂組成物(A)中の結晶性ポリエステル(a)の共重合組成を調整する方法または、樹脂組成物(A)の配合比率を調整する方法が好適に用いられる。例えば、融解エンタルピーΔHmを増加させたい場合には、結晶性ポリエステル(a)の含有量を増量し、非晶性ポリエステル(b)の含有量を減量し、必要に応じて、結晶性ポリエステル(c)を含有させる手法や樹脂組成物(A)中の結晶性ポリエステル(a)の共重合組成において酸成分およびジオール成分に用いるモノマーの種類を少なくする等の手段が挙げられる。また、融解エンタルピーΔHmを減少させたい場合には、結晶性ポリエステル(a)の含有量を減量し、非晶性ポリエステル(b)の含有量を増量する手法や樹脂組成物(A)中の結晶性ポリエステル(a)の共重合組成において酸成分およびジオール成分に用いるモノマーの種類を多くする等の手段が挙げられる。例えば、結晶性ポリエステル(a)であるホモPET(テレフタル酸100モル%、エチレングリコール100モル%)の場合、上記融解エンタルピーΔHmの値は、通常、45J/g以上60J/g以下の範囲にあり、共重合組成の酸成分およびジオール成分に用いるモノマーの種類、数を調整することで融解エンタルピーΔHmの値を低減することができる。
但し、用いる結晶性ポリエステル(a)の共重合組成を調整する方法のみでΔHmを制御しようとすると、融解温度Tmも低下し、樹脂組成物(A)全体としての耐熱性が低下してしまうため、非晶性ポリエステル(b)の含有量も併用して調整することがより好ましい。
なお、共重合成分である酸成分およびジオール成分の種類と含有量は、周知の方法、例えば、核磁気共鳴(NMR)測定装置、その他の機器分析装置で定性定量分析することができる。
上記融解エンタルピーΔHmは、パーキンエルマー社製DSC−7を用いて、製膜された熱収縮性チューブから切り出した試料10mgをJIS−K7121に準じて、加熱速度を10℃/分で−50℃から300℃まで昇温し、300℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−50℃まで降温し、−50℃で1分間保持した後、再度加熱速度10℃/分で300℃まで昇温した時のサーモグラムから求めることができる。
3.本発明のチューブの製造方法
本発明のチューブの製造方法は、通常のチューブラ法により製膜することができ、上記記載のポリエステル原料を溶融後チューブ状に環状ダイで円筒状に押出して成形加工することにより達成される。本発明のチューブは、未延伸チューブをその径方向に1.2倍以上、好ましくは1.3倍以上、より好ましくは1.4倍以上から3.0倍以下、好ましくは2.5倍以下、より好ましくは2.0倍以下の範囲、かつ、その長さ方向に1.0倍以上、好ましくは1.02倍以上から2.0倍以下、好ましくは1.5倍以下、より好ましくは1.3倍以下の範囲の倍率で延伸させて得られたものが好ましい。ここで、チューブの径方向の延伸倍率が1.2倍以上であれば被覆するのに足りる収縮量が得られ、また3.0倍以下であれば、厚み振れが大きくなる傾向を抑えることができるとともに、配向結晶化による収縮率の低下を抑えることができる。一方、チューブの長さ方向の延伸倍率が2.0倍以下であれば、長さ方向の収縮量が大きくなりすぎて、電子部品等を被覆加工したときに被覆位置がずれる現象や、カット長さを長くする必要もないためコストアップを抑えることができる。
上記のようにして得られるチューブの厚さは特に限定されないが、一般にコンデンサに使用されるチューブの厚みは、コンデンサの定格電圧に応じて、おおよそ0.05mmから1.0mmまでの範囲、代表的には0.07mmから0.2mmまでの範囲のものが使用されている。また、チューブを折り畳んだ状態の幅(以下「折径」という)が4mmから300mmの範囲のものが汎用コンデンサや電池の被覆、汎用の電池のパッケージング全般に対応できる点で好ましい。
4.本発明のチューブの特性
本発明のチューブは、上記樹脂組成物からなり、特定の熱収縮を有するものが特にコンデンサや電池の被覆材としての性能が優れているものであり、
(1)100℃の温水中に10秒間浸漬したときの長さ方向の収縮率が2%以上、好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上であり、20%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは12%以下の範囲である。また、径方向の収縮率は、15%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上であり、60%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは45%以下である。
さらに好ましくは(1)と同様に次の特性を満足するものが好ましい。
(2)80℃の温水中に10秒間浸漬したときの長さ方向の収縮率が2%以上、好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上であり、15%以下、好ましくは12%以下、さらに好ましくは10%以下の範囲である。また、径方向の収縮率は、10%以上、好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上であり、60%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは45%以下である。
上記(1)の熱収縮特性、好ましくは(1)及び(2)の熱収縮特性を満足しないチューブは、被覆外観が悪くなり、被覆対象物に被覆する場合に多くの熱量を必要とし、エネルギーコストが割高になる傾向がある。(1)、(2)の特性を満たせば、既存の被覆機を用い、PVCチューブとほぼ同じ条件で被覆することが可能となる。
また、本発明のチューブは、所定の範囲の融解エンタルピーΔHm値を有するため、コンデンサ製造工程や基板実装時の工程終了後の熱収縮性チューブの膨張が生じず、実使用上の耐熱性を有し、コンデンサや電池の被覆材としての性能が優れている。
(1)ここで、洗浄膨れ試験は、コンデンサ製造工程における熱収縮性チューブの膨張を評価する試験方法である。具体的には、300℃のニクロム線ヒーターにて3.6秒間で被覆した後、常温水に15分間、60℃温水に30分間、さらに常温水に15分間連続して浸漬し、熱風循環式オーブン中95℃雰囲気下で60分間曝した後に、被覆した熱収縮性チューブ(以下、「被覆チューブ」ともいう。)の外観を目視により評価する。洗浄膨れ試験後の熱収縮性チューブの膨張の発生原因は、2回の常温水と60℃温水中に浸漬した際に被覆チューブとコンデンサとの隙間に水が浸入し、その後、熱風循環式オーブン中95℃雰囲気下に曝された際に、その隙間に侵入した水が蒸発して体積が増加するため、被覆チューブとコンデンサの隙間の圧力が上昇し、被覆チューブの膨張が生じると推測される。
(2)フラックス膨れ試験は、基板実装時のチューブの膨張を評価する試験方法である。具体的には300℃のニクロム線ヒーターにて3.6秒間で被覆し、熱風循環式オーブンにて85℃雰囲気下60分熱処理を行った後に、コンデンサの封口部にフラックス(例えば、株式会社 弘輝 JS-E-11)を塗布し、基板とコンデンサ封口部分が密着するように基板に装着したものを、再び熱風循環式オーブン中、160℃雰囲気下に2分間さらした後の被覆チューブ外観を目視により評価する。フラックス膨れ試験後のチューブの膨張の発生原因は、コンデンサの封口部に塗布したフラックスが、被覆チューブとコンデンサの隙間に浸入し、その後の熱風循環式オーブン中160℃雰囲気下に曝された際に、被覆チューブとコンデンサの間に浸入したフラックスが蒸発し体積が増加するため、被覆チューブとコンデンサの隙間の圧力が上昇し、被覆チューブの膨張が生じると推測される。
(3)高温放置試験は、耐熱性を評価する試験方法であり、300℃のニクロム線ヒーターにて3.6秒間で被覆し、熱風循環式オーブンにて85℃雰囲気下60分のエージングをかけた後、再び熱風循環式オーブン中、150℃雰囲気下に60分さらした後の被覆チューブ外観を目視により評価する。高温放置試験後のチューブの膨張の発生原因は、従来のポリエチレンテレフタレート樹脂製の熱収縮性チューブでは、熱風循環式オーブン中150℃雰囲気下に曝された際に、結晶化が進行し結晶自体の膨張と結晶間の干渉が多く発生するためチューブの体積が増加し、被覆チューブの膨張が発生すると推測される。
上記(1)フラックス膨れ試験、(2)洗浄膨れ試験、および(3)高温放置試験のいずれかをクリアしない熱収縮性チューブは、コンデンサ製造工程や基板実装時の工程終了後のチューブの膨張が生じるため実装加工できず、実使用上の耐熱性が悪くなる。反対に、上記(1)、(2)、および(3)の試験をすべてクリアする熱収縮性チューブであれば、コンデンサ製造工程や基板実装時の工程終了後の被覆チューブ外観を損なうことなく実装加工することできる。
上記(1)、(2)、および(3)の試験をすべてクリアするため、本発明のチューブでは結晶性ポリエステル(a)の共重合組成、非晶性ポリエステル(b)、およびその他の樹脂の組み合わせ、配合比率を調整し、JIS−K7121に準じて示差熱走査型熱量計(DSC)で測定される再昇温過程における融解エンタルピーΔHmの値を15J/g以上35J/g以下、好ましくは20J/g以上35J/g以下としている。
5.本発明のチューブで被覆された部材
本発明のチューブは、アルミ電解コンデンサなどのコンデンサの被覆用として好適に用いることができるが、他の用途、例えば、電線(丸線、角線)、乾電池、リチウムイオン電池等の2次電池、鋼管又はモーターコイルエンド、トランスなどの電気機器や小型モーター、あるいは電球、蛍光灯、ファクシミリやイメージスキャナーの蛍光灯被覆用チューブとしても利用可能である。
以下に実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
なお、本明細書中に表示される熱収縮性チューブについての種々の測定値及び評価は次のようにして行った。
(1)融解温度Tm、融解エンタルピーΔHm、及び、ガラス転移温度Tg
融解温度Tmおよび融解エンタルピーΔHmは、パーキンエルマー社製DSC−7を用いて、製膜された熱収縮性チューブから切り出した試料10mgをJIS−K7121に準じて、加熱速度を10℃/分で−50℃から300℃まで昇温し、300℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−50℃まで降温し、−50℃で1分間保持した後、再度加熱速度10℃/分で300℃まで昇温した時のサーモグラムから求めた。また、ガラス転移温度TgはJIS−K7121に準じて測定した。
(2)収縮率
100℃又は80℃の温水中に10秒間浸漬した前後の熱収縮性チューブの長さ及び折径を測定して、算出した。
長さ方向収縮率[%]=[(浸漬前のチューブの長さ−浸漬後のチューブの長さ)/浸漬前のチューブの長さ]×100
径方向収縮率[%]=[(浸漬前のチューブの折径−浸漬後のチューブの折径)/浸漬前のチューブの折径]×100
(3)フラックス膨れ試験
φ5mm、長さ11.0mmのアルミ電解コンデンサに折径8.6mm、肉厚0.07mm、長さ14.7mmのチューブを300℃のニクロム線ヒーターにて3.6秒間で被覆し、熱風循環式オーブンにて85℃雰囲気下60分熱処理を行った。その後、コンデンサの封口部にフラックス(株式会社 弘輝 JS-E-11)を塗布し、基板とコンデンサ封口部分が密着するように基板に装着したものを、再び熱風循環式オーブン中、160℃雰囲気下に2分間さらし、加熱後のコンデンサ被覆チューブ外観を目視により以下のように評価した。
(○)チューブに膨れ、緩みなど無く被覆外観が良好
(×)チューブに膨れ、緩みなどが顕著に発生して、外観不良のため使用できない
(4)洗浄膨れ試験
φ10mm、長さ12.5mmのアルミ電解コンデンサに折径16.8mm、肉厚0.08mm、長さ16.1mmのチューブを300℃のニクロム線ヒーターにて3.6秒間で被覆した後、常温の水に15分間、60℃温水に30分間、さらに常温の水に15分間連続して浸漬した。その後、熱風循環式オーブン中95℃雰囲気下に60分間さらし、加熱後のコンデンサ被覆チューブの外観を目視により以下のように評価した。
(○)チューブに膨れ、緩みなど無く被覆外観が良好
(×)チューブに膨れ、緩みなどが顕著に発生して、外観不良のため使用できない
(5)高温放置試験
φ10mm、長さ12.5mmのアルミ電解コンデンサに折径16.8mm、肉厚0.08mm、長さ16.1mmのチューブを300℃のニクロム線ヒーターにて3.6秒間で被覆し、熱風循環式オーブンにて85℃雰囲気下60分のエージングをかけた後、再び熱風循環式オーブン中、150℃雰囲気下に60分さらし、耐熱性を目視により以下のように評価した。
(○)チューブに膨れ、緩みなど無く被覆外観が良好
(×)チューブに膨れ、緩みなどが顕著に発生して、外観不良のため使用できない
(6)耐溶剤性試験
φ10mm、長さ12.5mmのアルミ電解コンデンサに折径16.8mm、肉厚0.08mm、長さ16.1mmのチューブを300℃のニクロム線ヒーターにて3.6秒間で被覆し、熱風循環式オーブンにて85℃雰囲気下60分熱処理を行った。各試験溶媒に所定の時間浸漬後、1時間常温乾燥したコンデンサ被覆チューブの外観を目視により以下のように評価した。
試験溶媒1: アセトン 浸漬時間: 30秒
試験溶媒2: キシレン 浸漬時間: 5分
(○)チューブに膨潤、割れなど無く外観が良好
(×)チューブに膨潤、割れなどが顕著に発生して、外観不良のため使用できない
[実施例及び比較例で使用した樹脂]
・PET1 ノバペックスBK2180(三菱化学社製;酸成分:テレフタル酸98.6モル%、イソフタル酸1.4モル%、ジオール成分:エチレングリコール97.3モル%、ジエチレングリコール2.7モル%、Tg=77.1℃、Tm=250.8℃、[η]=0.79の結晶性ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート樹脂)
・PET2 ノバペックスGS900(三菱化学社製;酸成分:テレフタル酸100モル%、ジオール成分:エチレングリコール98.1モル%、ジエチレングリコール1.9モル%、Tg=82.1℃ Tm=255.3℃、[η]=0.994の結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂)
・PET3 ALTESTER45(三菱瓦斯化学社製;酸成分:テレフタル酸100モル%、ジオール成分:エチレングリコール49.7モル%、ジエチレングリコール6.3モル%、スピログリコール44.0モル%、Tg=101.8℃、Tm=107.3℃、[η]=0.732の非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂)
・PET4 Eastar Copolyester GN001(イーストマンケミカル社製;酸成分:テレフタル酸100モル%、ジオール成分:エチレングリコール65.3モル%、ジエチレングリコール2.5モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール32.2モル%、Tg=72.7℃、[η]=0.824の非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂)
・PET5 ユニペットIG154K(日本ユニペット社製;酸成分:テレフタル酸94.7モル%、イソフタル酸5.3モル%、ジオール成分:エチレングリコール95.2モル%、ジエチレングリコール4.8モル%、Tg=72.8℃、Tm=232.0℃、[η]=0.72の結晶性ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート樹脂)
・PBT ノバデュラン5505(三菱化学エンジニアリングプラスチックス社製;酸成分:テレフタル酸100.0モル%、ジオール成分:1,4−ブタンジオール92.0質量%、ポリテトラメチレングリコール8.0質量%、Tg=57.0℃、Tm=219.0℃、[η]=0.897の結晶性ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂)
・無機滑剤1 平均粒径4.0μmのシリカ
・加水分解防止剤1 スタバクゾール100(ラインケミー社製;高分子量ポリカルボジイミド化合物)
[実施例1〜5及び比較例1〜4]
表1に記載した配合で調整した樹脂組成物をシリンダー温度280℃に設定した押出機で溶解させ丸ダイを通して押出し、水に浸漬、冷却固化して延伸前の原チューブを得る。この原チューブを引き続き90℃の温水で加熱し、長さ方向に1.05〜1.1倍、径方向に1.7〜1.8倍に延伸後、冷却して折径8.6mm、厚み70μm、または折径16.8mm、厚み80μmのポリエステル系熱収縮性チューブを得た。チューブラ成型加工し、得られたチューブについて特性を評価した結果を表1に示した。
Figure 2010248496
表1より本発明のチューブ(実施例1〜5)は、高温下においてもチューブに膨れ、緩みなどなく、被覆外観が良好であり、また、フラックス膨れ試験、洗浄膨れ試験ともに良好であり、耐溶剤性試験においてもチューブに膨潤、割れなど無く外観が良好であった。これに対し、示差熱走査型熱量計(DSC)で測定される再昇温過程における融解エンタルピーΔHmの値が本発明の規定範囲外であるチューブ(比較例1〜4)は、フラックス膨れ試験、洗浄膨れ試験、高温放置試験および耐溶剤性試験の内、いずれか1つ以上の特性が劣ることが確認できる。これより、本発明のチューブは、実用上の耐熱性に特に優れ、電気特性、耐薬品性、耐電解液性など熱収縮性チューブに要求される特性を満たすポリエステル系熱収縮性チューブであることが分かる。

Claims (8)

  1. 酸成分の主成分がテレフタル酸であり、ジオール成分の主成分がエチレングリコールである結晶性ポリエステル(a)と、酸成分の主成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコール以外の共重合成分を含有する非晶性ポリエステル(b)とを主成分として含む樹脂組成物(A)で構成され、JIS−K7121に準じて示差熱走査型熱量計(DSC)で測定される再昇温過程における融解エンタルピーΔHmの値が15J/g以上35J/g以下であることを特徴とするポリエステル系熱収縮性チューブ。
  2. 非晶性ポリエステル(b)の含有量が、前記樹脂組成物(A)100質量%に対して1質%部以上40質量%以下である請求項1に記載のポリエステル系熱収縮性チューブ。
  3. 樹脂組成物(A)が、酸成分の主成分がテレフタル酸であり、ジオール成分の主成分が1,4−ブタンジオールである結晶性ポリエステル(c)をさらに含有する請求項1または2に記載のポリエステル系熱収縮性チューブ。
  4. 非晶性ポリエステル(b)が、ジオール成分として脂環構造を有するジオール成分を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル系熱収縮性チューブ。
  5. 前記脂環構造を有するジオール成分が1,4−シクロヘキサンジメタノールである請求項4に記載のポリエステル系熱収縮性チューブ。
  6. 前記脂環構造を有するジオール成分がスピログリコールである請求項4に記載のポリエステル系熱収縮性チューブ。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル系熱収縮性チューブで被覆された部材。
  8. 電子機器又は電気機器の用途で用いられる請求項7に記載の部材。
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