以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
(1).コンバインの全体構造
まず、図1及び図2を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。コンバインは、走行部としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む6条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4にて刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀装置5から取り出された穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。走行機体1の後部に旋回可能な排出オーガ8が設けられている。穀粒タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で、穀粒タンク7の前側方には、運転キャビン10が設けられている。
運転キャビン10内には、操縦ハンドル11と、運転座席12と、主変速レバー42と、副変速レバー43と、脱穀クラッチ78(図5参照)及び刈取クラッチを入り切りする作業クラッチレバー44とを配置している。作業クラッチレバー44の後方の壁面には、後述するチャフシーブ239での穀粒の選別性能を調節操作するための前向き突出状の選別調節レバー45が複数段階に上下傾動可能に設けられている。なお、運転キャビン10には、オペレータが搭乗するステップと、操縦ハンドル11を設けたハンドルコラムと、前記各レバー42,43,44等を設けたレバーコラムとが配置されている。走行機体1のうち運転座席12の下方側には、動力源としてのエンジン14が配置されている。
図1、図2及び図4に示されるように、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン14の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持することになる。
刈取装置3の刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム221の下方には、圃場に植立した未刈り穀稈(穀稈)の株元を切断するバリカン式の刈刃装置222が設けられている。刈取フレーム221の前方には、圃場に植立した未刈り穀稈を引起す6条分の穀稈引起装置223が配置されている。穀稈引起装置223とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置222にて刈り取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224が配置されている。なお、穀稈引起装置223の下部前方には、圃場に植立した未刈り穀稈を分草する6条分の分草体225が突設されている。エンジン14にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3によって圃場に植立した未刈り穀稈を連続的に刈り取ることになる。
(2).脱穀装置の構造
次に、図1〜図4を参照しながら、脱穀装置5の構造を説明する。図1〜図4に示されるように、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴226と、扱胴226の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤227及び唐箕ファン228と、扱胴226の後部から取り出される脱穀排出物を再処理する処理胴229と、揺動選別盤227の後部の排塵を排出する排塵ファン230とが備えられている。なお、扱胴226の回転軸芯線は、フィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置224にて搬送された穀稈の株元側は、フィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室内に搬入されて扱胴226にて脱穀されることになる。
揺動選別盤227の下方側には、揺動選別盤227にて選別された穀粒(一番物)を取り出すための一番コンベヤ231と、枝梗付き穀粒等の二番物を取り出すための二番コンベヤ232とが設けられている。本実施形態の両コンベヤ231,232は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ231、二番コンベヤ232の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。
揺動選別盤227は、脱穀装置5を形成した脱穀機筐135に、揺動駆動軸136と、前側ガイドレール137及び後側ガイドレール138とを介して、前方斜め下側乃至後方斜め上側に移動可能に配置されている。エンジン14からの動力によって揺動駆動軸136を介して揺動選別盤227が作動し、揺動選別盤227が前方斜め下側乃至後方斜め上側に往復移動することになる。その結果、扱胴226の下方に張設された受網237から漏下した脱粒物が、フィードパン238及びチャフシーブ239によって揺動選別(比重選別)されるように構成している(図3及び図4参照)。揺動選別盤227のグレンシーブ240から落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン228からの選別風によって除去され、一番コンベヤ231に落下することになる。
一番コンベヤ231のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁(右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀コンベヤ233が連通接続されている。一番コンベヤ231から取り出された穀粒は、揚穀コンベヤ233を介して穀粒タンク7に搬入され、穀粒タンク7に収集されることになる。なお、穀粒タンク7の後面の傾斜に沿わせて、揚穀コンベヤ233の上端側が後方に傾斜する後傾姿勢で、穀粒タンク7の後方に揚穀コンベヤ233が立設されている。
また、チャフシーブ239の送り下流側(後方側)にストローラック243が配置されている。揺動選別盤227は、揺動選別(比重選別)によって、チャフシーブ239又はストローラック243から枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ232に落下させるように構成している。なお、チャフシーブ239の上面側の比較的軽い藁屑は、排塵ファン230に吸い込まれて、排塵ファン230の排出側から機外に排出されることになる。また、チャフシーブ239の送り下流側(後方側)からストローラック243の上面側に移動した比較的重い藁屑は、揺動選別盤227の後方側の3番口244から機外に排出されることになる。
二番コンベヤ232のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁から外向きに突出した終端部は、揚穀コンベヤ233と交差して前後方向に延びる還元コンベヤ236を介して、フィードパン238の上面側に連通接続されている。二番コンベヤ232に落下した二番物は、二番コンベヤ232から還元コンベヤ236及び二番還元処理胴242を介してフィードパン238の上面側に戻され、再選別されることになる。
一方、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁搬送機構としての排藁チェン234が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン234に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ235にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出されることになる。
(3).選別風の風路構造
次に、図3及び図4を参照しながら、唐箕ファン228からチャフシーブ239に供給する選別風の風路構造について説明する。
唐箕ファン228のファンケース140には、グレンシーブ240と一番コンベヤ231とに唐箕ファン228の選別風を供給する主選別風路141と、フィードパン238の後端側とチャフシーブ239の前端側との間からチャフシーブ239の上面側に唐箕ファン228の選別風を供給する第1プレ風路142と、揺動選別盤227の底側にあるグレンパン245とチャフシーブ239の前端側との間からチャフシーブ239の下面側に唐箕ファン228の選別風を供給する第2プレ風路143とを形成している。
上述の主選別風路141は、唐箕ファン228からの選別風が、グレンシーブ240の前方下側から、グレンシーブ240の後方上側に向けて、主風向体144を介して移動するように形成されている。また、上述の主選別風路141は、唐箕ファン228からの選別風が、一番コンベヤ231及び一番樋231aの上方で前方から後方に向けて、主風向体44を介して移動するように形成されている。即ち、グレンシーブ240から一番コンベヤ231に落下する穀粒及び塵が唐箕ファン228からの選別風にて風選されるように構成している。
上述した第1プレ風路142は、唐箕ファン228からの選別風が、チャフシーブ239の上側で前方から後方に向けて、揺動選別盤227に設けたプレ風向体145を介して移動するように形成されている。即ち、扱胴226から受網237を介してフィードパン238の上面に落下した脱粒物が、フィードパン238の後端側からチャフシーブ239の前端側に落下するときに、唐箕ファン228からの選別風にて風選されるように構成している。
上述した第2プレ風路143は、唐箕ファン228からの選別風が、グレンパン245の上側で前方から後方に向けて、プレ風向体145を介して移動するように形成されている。換言すると、チャフシーブ239の前方下側から、チャフシーブ239の後方上側に向けて、唐箕ファン228からの選別風が移動するように形成されている。即ち、チャフシーブ239からグレンパン245及びグレンシーブ240に落下する穀粒及び塵が、唐箕ファン228からの選別風にて風選されるように構成している。
なお、主選別風路141と第1プレ風路142と第2プレ風路143とから供給された唐箕ファン228からの選別風は、上述した排塵ファン230に吸い込まれたり、3番口244から脱穀機筐135の後方に移動するから、扱胴226からの脱粒物中の藁屑及び粉塵等は脱穀機筐135の後部から圃場に向けて排出されることになる。
(4).刈取装置、脱穀装置等の駆動構造
次に、図5を参照しながら、刈取装置3、脱穀装置5及びフィードチェン6等の駆動構造について説明する。図5に示されるように、エンジン14の前側及び後側にその出力軸70を突出する。エンジン14の前側の出力軸70に自在継手83を介してミッションケース71の走行入力軸84を連結されている。エンジン14の回転駆動力が、前側の出力軸70からミッションケース71に伝達されて変速されたのち、左右の車軸72を介して左右の走行クローラ2に伝達されるように構成されている。従って、左右の走行クローラ2はエンジン14の回転駆動力にて駆動されることになる。
図5に示されるように、エンジン14を冷却するためのラジエータ用の冷却ファン73と、後述する強制開放電動モータ291等を作動させるための電源を供給する発電機89とを備えている。エンジン14の後側の出力軸70に、冷却ファン73を軸支したファン駆動軸88が動力伝達可能に連結されている。ファン駆動軸88には、発電機89の入力軸が連結されている。エンジン14の回転駆動力によって、冷却ファン73及び発電機89が駆動されるように構成している。また、エンジン14の後側の出力軸70に排出オーガ駆動軸76を連結し、エンジン14からの回転駆動力によって排出オーガ駆動軸76を介して排出オーガ8が駆動され、穀粒タンク7内の穀粒がコンテナ等に排出されるように構成している。
また、扱胴226及び処理胴229にエンジン14からの回転駆動力を伝える脱穀駆動軸77を備える。エンジン14の後側の出力軸70には、テンションローラ形脱穀クラッチ78及び脱穀駆動ベルト79を介して、脱穀駆動軸77が連結されている。脱穀駆動軸77には、扱胴226を軸支した扱胴軸80と、処理胴229を軸支した処理胴軸81とが連結されている。エンジン14の略一定回転数の回転力にて、扱胴226及び処理胴229が略一定回転数で回転するように構成されている。また、扱胴軸80の回転動力は排藁チェン234に伝達される。脱穀駆動軸77には選別入力軸82が動力伝達可能に連結されている。エンジン14の略一定回転数の回転力にて、選別入力軸82を介して、揺動選別盤227、唐箕ファン228、一番コンベヤ231、二番コンベヤ232及び排塵ファン230が略一定回転数で回転するように構成されている。
図5に示す如く、ミッションケース71内に、1対の走行油圧ポンプ及び走行油圧モータを有する直進用HST機構96と、1対の旋回油圧ポンプ及び旋回油圧モータを有する旋回用HST機構97とを設けている。直進用HST機構96の走行油圧ポンプと、旋回用HST機構97の旋回油圧ポンプとは、ミッションケース71の走行入力軸84に連結させてそれぞれ駆動するように構成している。ミッションケース71にPTO軸98を配置する。PTO軸98は直進用HST機構96の走行油圧モータにて駆動される。ミッションケース71からこの左外側にPTO軸98の一端側を突設させている。
図5に示す如く、エンジン14の左側方で且つ脱穀装置5の前側方に、カウンタギヤケース99を設けている。カウンタギヤケース99には、上述した脱穀駆動軸77と、脱穀駆動軸77に連結する選別入力軸82と、PTO軸98に連結する車速同調軸100と、選別入力軸82又は車速同調軸100に連結する刈取伝動軸101と、刈取り入力軸17に連結する刈取駆動軸102と、フィードチェン6を駆動するフィードチェン駆動軸103とを配置している。
図5に示す如く、カウンタギヤケース99内の車速同調軸100上に、車速同調軸100の車速同調回転力を伝える一方向クラッチ105を設ける。車速同調軸100に、刈取変速機構108と一方向クラッチ105とを介して、刈取伝動軸101を連結する。刈取変速機構108は、低速側変速ギヤ106と高速側変速ギヤ107とを有する。低速及び中立(零回転)及び高速の各刈取変速を行う刈取変速操作手段(図示省略)によって低速側変速ギヤ106又は高速側変速ギヤ107を刈取伝動軸101に択一的に係合させ、車速同調軸100から刈取変速機構108を介して刈取伝動軸101に刈取変速出力を伝えるように構成している。刈取伝動軸101にトルクリミッタ104を介して刈取駆動軸102を連結する。刈取伝動軸101に伝達された出力は、トルクリミッタ104及び刈取駆動軸102から刈取り入力軸17を介して刈取装置3に伝達される。すなわち、刈取装置3(穀稈引起装置223及び穀稈搬送装置224)の穀稈搬送速度を車速と同調させて変更可能に構成している。
図5に示す如く、選別入力軸82に一定回転機構111を介して刈取伝動軸101を連結する。一定回転機構111は、低速側一定回転ギヤ109と高速側一定回転ギヤ110とを有する。刈取作業の維持に必要な一定回転数の回転出力は、低速側一定回転ギヤ109を介して選別入力軸82から刈取伝動軸101に伝達される。従って、走行機体1の移動速度に関係なく、低速側一定回転ギヤ109からの一定回転数で刈取り入力軸17を作動させて刈取作業を維持でき、圃場の枕地での方向転換作業性等を向上できる。
また、車速同調軸100及び高速側変速ギヤ107からの車速同調出力の最高速よりも早い一定回転数の回転出力が高速側一定回転ギヤ110を介して選別入力軸82から刈取伝動軸101に伝達される。従って、車速同調出力の最高速よりも早い高速側一定回転ギヤ110からの一定回転数で刈取り入力軸17を作動でき、倒伏穀稈の刈取り作業性等を向上できる。なお、トルクリミッタ104にて設定したトルク以下の回転力で刈取り入力軸17が作動して、刈刃装置222等が損傷するのを防止している。
カウンタギヤケース99には、選別入力軸82にフィードチェン駆動軸103を連結する遊星ギヤ形変速構造のフィードチェン同調機構112が設けられている。選別入力軸82の回転出力が、フィードチェン同調機構112によって刈取伝動軸101の回転数に比例して変速されて、フィードチェン駆動軸103に伝達されることになる。すなわち、フィードチェン同調機構112を介してフィードチェン6を作動することによって、穀稈の搬送に必要な最低回転数(低速側一定回転ギヤ109からの一定回転数)を確保しながら、フィードチェン6の穀稈搬送速度を車速と同調させて変更可能に構成している。
(5).穀粒の選別性能を調節するための構造
次に、図4及び図6〜図11を参照しながら、揺動選別盤227のチャフシーブ239及び唐箕ファン228による穀粒の選別性能を調節するための構造について説明する。
チャフシーブ239は、後述する第1横桟261aの傾斜角度を排藁チェン234の排藁搬送量に対応して自動的に変更可能に構成された前部チャフシーブ261と、後述する第2横桟262aの傾斜角度を手動操作にて複数段階に変更可能に構成された後部チャフシーブ262とを備えている。前部チャフシーブ261はグレンパン245及びグレンシーブ240の上方(一番コンベヤ231の上方)に位置している。後部チャフシーブ262は二番コンベヤ232の上方に位置している。
前部チャフシーブ261は、側面視で前方斜め下向き(後方斜め上向き)に傾斜した左右長手の第1横桟261aの複数個と、揺動選別盤227の左右側板に前後移動可能に支持されたチャフ調節杆261bとを備えている。各第1横桟61aの上端側は揺動選別盤227の左右側板に回動可能に連結されている一方、下端側はチャフ調節杆261bに回動可能に連結されている。このため、各第1横桟261aの傾斜角度は、チャフ調節杆261bの前後移動によって一斉に変更される。その結果、各第1横桟261a間の漏下間隔(前部チャフシーブ261の開度)が広がったり狭まったりすることになる。
チャフ調節杆261bは、脱穀機筐135における左側面板の外面側に配置された開閉機構264(図6参照)の作用にて前後移動するように構成されている。開閉機構264は、操作ワイヤ265を介して運転キャビン10に配置された選別調節レバー45に連動連結されている。選別調節レバー45を上向きに傾動操作するほど、操作ワイヤ265を介しての開閉機構264の回動作用によりチャフ調節杆261bが後方向に移動して、各第1横桟261a間の漏下間隔(前部チャフシーブ261の開度)を広げるように構成されている。ここで、選別調節レバー45は、下から上に向けて複数段階の傾動操作が可能になっている。選別調節レバー45を一番下に傾動操作した状態で前部チャフシーブ261の開度が最も小さく(狭く)、一番上に傾動操作した状態で前部チャフシーブ261の開度が最も大きく(広く)なる。
後部チャフシーブ262は、基本的に前部チャフシーブ261と同じ構成であり、側面視で前方斜め下向き(後方斜め上向き)に傾斜した左右長手の第2横桟262aの複数個と、揺動選別盤227の左右側板に前後移動可能に支持されたチャフ変更杆262bとを備えている。各第2横桟262aの上端側は揺動選別盤227の左右側板に回動可能に連結されている一方、下端側はチャフ変更杆262bに回動可能に連結されている。
チャフ変更杆262bには、これを手動にて前後移動操作するためのチャフ調節レバー267が連結されている。チャフ調節レバー267の手動操作にてチャフ変更杆262bを前後に移動させることにより、各第2横桟62aの傾斜角度を一斉に変更して、各第2横桟262a間の漏下間隔(後部チャフシーブ262の開度)を広狭変化させるように構成されている。
一方、脱穀機筐135における左側面板の前部側(唐箕ファン228の箇所)には、空気取入口269が形成されている。空気取入口269の上部側には、その開口面積を増減するためのファンシャッタ270が開閉動可能に設けられている。ファンシャッタ270に設けられたシャッタレバー271は、操作ワイヤ265と別のシャッタワイヤ379を介して、排藁の株元を排藁チェン234と共に挟持するチェンガイド374に関連付けられている。
チェンガイド374は、排藁搬送量の多寡に応じて排藁チェン234との対峙間隔を変更可能に構成されている。チェンガイド374から下向きに突出する検出リンク375に検出板376を当接させている。検出板376は、シャッタ用検出アーム377と共にアーム軸378回りに一体回動するように排藁チェン234の下方に配置されている。シャッタ用検出アーム377が、シャッタワイヤ379を介してシャッタレバー271に連動連結されている。
排藁チェン234とチェンガイド374とで挟持される排藁の搬送量に応じたチェンガイド374の上下動に連動して、シャッタ用検出アーム377がアーム軸278回りに回動してシャッタワイヤ379を押し引き移動させることにより、シャッタレバー軸280回りにシャッタレバー271が回動して、ファンシャッタ270を開閉回動させる。その結果、空気取入口269の開度が広狭変化して、唐箕ファン228からの選別風量が増減することになる。
図7及び図11(a)(b)に示すように、シャッタ用検出アーム377の回動支点であるアーム軸378には、チャフ用検出アーム381も回動可能に軸支されている。チャフ用検出アーム381は、チャフワイヤ373を介して、脱穀機筐135における左側面板の外面側に配置された開閉機構264に連動連結されている。他方、シャッタ用検出アーム377のうち検出板376の突出方向と反対側の側部には、チャフ用検出アーム381を押圧当接するための突出片382が設けられている(図11(a)(b)参照)。
排藁チェン234とチェンガイド374とで挟持される排藁の搬送量に応じたチェンガイド374の下降動に連動して、シャッタ用検出アーム377がアーム軸378回りに回動すると、シャッタ用検出アーム377の突出片382がチャフ用検出アーム381に当接して、共に図6及び図9の時計方向に回動する。このため、シャッタワイヤ379と同様にチャフワイヤ373が引き移動することによって、開閉機構264が回動してチャフ調節杆261bを後ろ移動させ、各第1横桟261a間の漏下間隔(前部チャフシーブ261の開度)を広げる機械的な開度補正が実行される。この場合、排藁搬送量の増加にてチェンガイド374が排藁チェン234から離れるほど、各第1横桟261a間の漏下間隔(前部チャフシーブ261の開度)が広がることになる。チェンガイド374が上昇動すると、後述する戻りばね287,288等の弾性復原力にて、シャッタワイヤ379と共にチェンワイヤ373が戻り動して、開閉機構264を回動させてチャフ調節杆261bを前移動させ、各第1横桟261a間の漏下間隔(前部チャフシーブ261の開度)を狭めることになる。
図8〜図10に詳細に示すように、開閉機構264は、横向きのチャフレバー軸284回りに回動してチャフ調節杆261bを前後移動させる(前部チャフシーブ261の開度を調節する)チャフレバー285と、チャフレバー軸284回りに回動可能に構成された切換レバー286とを備えている。チャフレバー285及び切換レバー286は、チャフレバー軸284を介して、脱穀機筐135における左側面板の外面側に固定されたベース台283に取り付けられている。チャフレバー285と切換レバー286との間には第1戻りばね287が装架されている。また、切換レバー286とベース台283の間には第2戻りばね288が装架されている。開閉機構264のチャフレバー285が、チャフワイヤ273を介して排藁チェン234側のチャフ用検出アーム281に連結されている。また、切換レバー286が、操作ワイヤ265を介して運転キャビン10内の選別調節レバー45に連結されている。
この場合、排藁搬送量に応じたチャフワイヤ373の押し引き移動にて、チャフレバー285がチャフレバー軸284回りに回動することにより、チャフ調節杆261bが前後移動して、前部チャフシーブ261の開度を開閉調節するように構成されている。また、運転キャビン10内にある選別調節レバー45の上下傾動操作量に応じた操作ワイヤ265の押し引き移動にて、切換レバー286がチャフレバー軸284回りに回動することにより、第1戻りばね287を介してチャフレバー285も共に回動して、チャフ調節杆261bが前後移動し、前部チャフシーブ261の開度を開閉調節するように構成されている。なお、チャフレバー軸284には、チャフレバーの回動位置ひいては前部チャフシーブの開度を検出するポテンショメータ式のチャフ位置センサ289が設けられている。
図6〜図11に示すように、開閉機構264には、連係手段390を介してアクチュエータとしての強制開放電動モータ391が関連付けられている。すなわち、排藁チェン234の近傍に位置する排藁フレーム250に固定されたブラケット板392に、正逆回転可能な強制開放電動モータ391が取り付けられている。また、ブラケット板392には、回動部材としてのセクタギヤ394が横向きの回動軸395にて回動可能に枢着されている。
セクタギヤ394は、強制開放電動モータ391のモータ出力軸に設けられた出力ギヤ393に噛み合わせている。これら両ギヤ393,394の噛み合いによって、強制開放電動モータ391からの回転駆動力が連係手段390を介して開閉機構264に伝達され、開閉機構264を開き方向に強制回動させたり当該強制回動を解除したりするように構成されている。セクタギヤ394は、強制開放電動モータ391による出力ギヤ393の正逆回転駆動にて、図7〜図9に示す待機位置から、図10に示す強制開放位置までの範囲において、回動軸395回りに回動するように構成されている。
連係手段390は、前述したセクタギヤ394と、セクタギヤ394の外周側に形成されたカム部396に当接可能な回動検出部材としての一対のリミットスイッチ400,401と、セクタギヤ394及び開閉機構264を連動して回動させる連係リンク杆機構402とを有している。セクタギヤ394には、略半周分の外周部に、出力ギヤ393と噛み合う複数の歯が形成されている。そして、略1/4周分の外周部が円弧状のカム部396に形成されている。残り略1/4周分の外周部からは、突出アーム397が半径外向きに突出している。セクタギヤ394におけるカム部396の両端には、半径外向きに膨出する膨出部分398,399が形成されている。
一対のリミットスイッチ300,301は、セクタギヤ394のカム部396に対峙するようにブラケット板392に取り付けられている。両リミットスイッチ400,401のうち逆回動リミットスイッチ400は強制開放電動モータ391寄りに配置されており、正回動リミットスイッチ401は突出アーム397寄りに配置されている。
セクタギヤ394が待機位置に回動した状態では、逆回動リミットスイッチ400の感知体400aが、両膨出部分398,399のうち強制開放電動モータ391寄りの逆回動膨出部分398に当接して入り作動するように構成されている。また、セクタギヤ394が強制開放位置に回動した状態では、正回動リミットスイッチ401の感知体401aが、両膨出部分398,399のうちもう一つの正回動膨出部分399に当接して入り作動するように構成されている。
連係リンク杆機構402は、アーム軸378と平行状に延びるリンク軸420に回動可能に軸支されたL字状のリンクアーム421と、セクタギヤ394の突出アーム397とリンクアーム421の一方とをつなぐ中継杆422と、リンクアーム421の他方とチャフ用検出アーム381とをつなぐ連係杆423とを備えている。セクタギヤ394における突出アーム397の先端側に、中継杆422の一端側がピンにて回動可能に枢着されている。中継杆422の他端側はリンクアーム421の一方にピンにて回動可能に枢着されている。リンクアーム421の他方には、連係杆423の一端側がピンにて回動可能に枢着されている。連係杆423の他端側には、その長手方向に延びるガイド溝穴424が形成されている。連係杆423のガイド溝穴424には、チャフ用検出アーム381に固着された枢支ピン425が抜け不能に挿入されている。つまり、連係杆423の他端側とチャフ用検出アーム381とはガイド溝穴424に挿入された枢支ピン425にて連結されている。
この場合、セクタギヤ394が待機位置に回動した状態で、排藁搬送量の変化に連動したチャフワイヤ373の押し引き移動にて、チャフ用検出アーム381がシャッタ用検出アーム379と共にアーム軸378回りに回動しても、枢支ピン425がガイド溝穴424の長手方向両端側の縁部に当接しない(引っ掛からない)ように、ガイド溝穴424及び枢支ピン425の位置関係、並びに、ガイド溝穴424の長径寸法が設定されている。従って、セクタギヤ394が待機位置に回動した状態では、連係手段390(連係杆423)が、チャフ用検出アーム381ひいては開閉機構264の回動動作を妨げる(干渉する)ことはない。
また、図7に示すように、セクタギヤ394が待機位置に回動し且つ前部チャフシーブ261の開度が最も狭い状態で、枢支ピン425がガイド溝穴424のうち連係杆423の中央寄りに位置する端縁部にできるだけ近づくように、ガイド溝穴424の長径寸法が設定されている。
図8及び図9に示すように、セクタギヤ394が待機位置に回動した状態では、連係杆423はチャフ用検出アーム381ひいては開閉機構264の回動動作に一切寄与せず、チャフワイヤ373を用いての前部チャフシーブ261の機械的な開度補正がスムーズ且つ確実に実行されることになる。
一方、図10に示すように、セクタギヤ394が強制開放位置まで回動すると、セクタギヤ394の突出アーム397が中継杆422を上向きに引き上げて、リンクアーム421を介して連係杆423をチェンガイド374側に押し出し、ガイド溝穴424のうち連係杆423の中央寄りに位置する端縁部がチャフ用検出アーム381側の枢支ピン425をチェンガイド374側に押しやる。そうすると、チャフ用検出アーム381が図10の時計方向に回動して、チャフワイヤ373のみが開閉機構264を引っ張る方向に移動する。その結果、開閉機構264が回動してチャフ調節杆261bを後方向に移動させ、前部チャフシーブ261の開度を強制的に広げる強制開放が実行される。この場合、チャフ用検出アーム381は、シャッタ用検出アーム377の突出片382から離れる方向に回動するため、シャッタ用検出アーム327はチャフ用検出アーム381の回動動作に一切寄与せず、排藁搬送量に応じた位置に保持されることになる。
(6).強制開放制御の第1実施形態
次に、図12を参照しながら、チャフシーブ239の強制開放制御の第1実施形態について説明する。コンバインの走行機体1は、演算装置であるCPU311、制御プログラムを記憶したROM312、各種データを記憶したRAM313、制御時間をカウントするタイマー314、及び方向スイッチ315等を有するチャフコントローラ310を備えている。第1実施形態のチャフコントローラ310は、コンバイン全体を統括するメインコントローラ(図示省略)から別個独立したものであり、前部チャフシーブ261の強制開放制御にのみ利用されるものである。第1実施形態のチャフコントローラ310は、発電機89の駆動にて充電可能なバッテリ308から電力供給を受けるように構成されている。
図12に示すように、チャフコントローラ310の入力側には、作業クラッチレバー44の操作による脱穀クラッチ78の入り切り状態を感知する脱穀スイッチ316と、排藁チェン234の排藁の有無を検出する排藁検出手段としての排藁スイッチ317と、連係手段390の構成要素である逆回動リミットスイッチ400及び正回動リミットスイッチ401とが接続されている。チャフコントローラ310の出力側には、強制開放電動モータ391が接続されている。
排藁スイッチ317は、排藁チェン234とチェンガイド374とで挟持される排藁に接触して後方に逃げ回動可能に構成された下向き凸状の感知体317aを有するリミットスイッチであり、感知体317aが排藁に接触して逃げ回動しているか否かによって、排藁チェン234が排藁を搬送しているか否かを感知するように構成されている。この場合の排藁スイッチ317は、感知体317aが排藁に接触して逃げ回動すると入り作動する設定になっており、排藁チェン234の搬送上流側に配置されている(図3及び図6参照)。チャフコントローラ310に内蔵された方向スイッチ315は、排藁スイッチ317の入り作動に連動して入り状態になり、正回動リミットスイッチ401の入り作動に連動して切り状態になるように構成されている。
次に、図13のフローチャート及び図14のタイムチャートを参照しながら、前部チャフシーブ261の強制開放制御の一例について説明する。第1実施形態のチャフコントローラ310は、刈取脱穀作業を実行する際に、逆回動リミットスイッチ400が入りの状態でセクタギヤ394を待機位置に待機させ、排藁スイッチ317が切り作動したときは、正回動リミットスイッチ401が入りの状態になるまでセクタギヤ394を正回動させて、開閉機構264を介して前部チャフシーブ261を強制開放させ、更に、所定時間Tn経過後に、逆回動リミットスイッチ400が入りの状態になるまでセクタギヤ394を逆回動させて強制開放を解除するという強制開放制御を実行するものである。
この場合、図13及び図14に示すように、脱穀スイッチ316が入り作動すると(S1:YES)、強制開放電動モータ391の駆動にて、逆回動リミットスイッチ400が入り作動する待機位置まで、セクタギヤ394を図8及び図9の反時計方向に逆回動させ、セクタギヤ394を待機位置に待機させる(S2、時間T1〜時間T4直前まで)。
次いで、脱穀装置5から排藁チェン234に排藁が送られて排藁スイッチ317が入り作動すると(S3:YES)、これに合わせて方向スイッチ315が入り作動する(S4、時間T3)。それから、例えば畦際での方向転換時や刈取脱穀作業の終了時といった刈り終わり時のように、排藁チェン234の排藁がなくなって排藁スイッチ317が切り作動すると(S5:YES)、チャフコントローラ310内のタイマー314が強制開放時間Tnの計測を開始すると共に、強制開放電動モータ391の駆動にて、正回動リミットスイッチ401が入り作動する強制開放位置まで、セクタギヤ394を図10の時計方向に正回動させる(S6、時間T4〜時間T6直前まで)。
その結果、排藁搬送量の減少に伴って、チャフワイヤ373を介しての前部チャフシーブ261の開度補正が閉じ方向(狭まる方向)に作用するにも拘らず、強制開放電動モータ391、連係手段390及び開閉機構264の作用にて、前部チャフシーブ261が強制開放することになる。このとき、シャッタ用検出アーム327はチャフ用検出アーム381の回動動作に一切寄与せず、排藁搬送量に応じた位置に保持されるため、排藁搬送量の減少に伴って、シャッタワイヤ379を介してのファンシャッタ270の開度補正が閉じ方向(狭まる方向)に作用し、唐箕ファン228からの選別風量を減少させる。
次いで、タイマー314による強制開放時間Tnの計測が終了すると(S7:YES)、強制開放電動モータ391の駆動にて、再び逆回動リミットスイッチ400が入り作動する待機位置まで、セクタギヤ394を図8及び図9の反時計方向に逆回動させて強制開放を解除し、セクタギヤ394を待機位置に待機させる(S8、時間T6以降)。この場合、連係杆425がチャフ用検出アーム381ひいては開閉機構264の回動動作に一切寄与しなくなるので、チャフワイヤ373による前部チャフシーブ261の機械的な開度補正が実行可能な状態に戻る(復帰する)ことになる。
上記の記載並びに図6〜図12に示すように、第1実施形態のコンバインは、脱穀後の穀粒を揺動選別する揺動選別盤227のチャフシーブ261(239)を開閉させる開閉機構264と、連係手段390を介して開閉機構264に関連付けられたアクチュエータ391と、脱穀後の排藁を搬送する排藁搬送機構234の排藁の有無を検出する排藁検出手段317と、アクチュエータ391の駆動を制御する制御手段310とを備えている。連係手段390は、アクチュエータ391の駆動にて正逆回動する回動部材394と、回動部材394の外周側に形成されたカム部396に当接可能な一対の回動検出部材400,401とを有している。そして、制御手段310は、一方の回動検出部材400が入りの状態で回動部材394を待機させ、排藁検出手段317が排藁なしを検出したときは、他方の回動検出部材401が入りの状態になるまで回動部材394を正回動させて、開閉機構264を介してチャフシーブ261(239)を強制開放させ、更に、所定時間Tn経過後に、一方の回動検出部材400が入りの状態になるまで回動部材394を逆回動させて強制開放を解除するように制御するものである。
このように構成すると、畦際での方向転換時や刈取脱穀作業の終了時といった刈り終わり時に、チャフシーブ261(239)の開度を電気的制御にて強制的に広げることができる。このため、穀粒を機外に排出してしまう3番ロスを確実に低減でき、コンバインの選別性能を向上できる。しかも、このような3番ロス低減のための構造(電気的制御の構成)を、アクチュエータ391、回動部材394、一対の回動検出部材400,401、排藁検出手段317及び制御手段310という組合せで達成できるから、処理能力の高い制御手段が要らず、複雑な制御システムも不要である。つまり、3番ロス低減のための構造を極めて簡素化でき、製造コストを抑制する一助になるという効果を奏する。
また、第1実施形態の構成によると、このように構成すると、畦際での方向転換時や刈取脱穀作業の終了時といった刈り終わり時に、前部チャフシーブ261の開度を電気的制御にて強制的に広げるのに併せて、唐箕ファン228からの選別風量が減少するので、脱穀物(穀粒や藁屑)は機外に排出し難く、二番物取出し用の二番コンベヤ232に落下し易くなる。換言すると、刈り終わり時における前部チャフシーブ261上の脱穀物を積極的に二番コンベヤ232に戻せることになる。従って、3番ロスの低減効果をより向上でき、コンバインの更なる選別性能向上に寄与するのである。
(7).強制開放制御の第2実施形態
次に、図15〜図18を参照しながら、チャフシーブ239の強制開放制御の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態以降の実施形態において、構成及び作用が第1実施形態と変わらないものには、第1実施形態と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。図15〜図18に示すように、第2実施形態の開閉機構264は、操作ワイヤ265と別のチャフワイヤ273を介して、排藁の株元を排藁チェン234と共に挟持するチェンガイド274に関連付けられている。チェンガイド274は、排藁搬送量の多寡に応じて排藁チェン234との対峙間隔を変更可能に構成されている。チェンガイド274から下向きに突出する検出リンク275に検出板276を当接させている。検出板276は、検出アーム277と共にアーム軸278回りに一体回動するように排藁チェン234の下方に配置されている。検出アーム277がチャフワイヤ273を介して開閉機構264に連動連結されている。
排藁チェン234とチェンガイド274とで挟持される排藁の搬送量に応じたチェンガイド274の上下動に連動して、検出アーム277がアーム軸278回りに回動してチャフワイヤ273を押し引き移動させる。その結果、開閉機構264が回動してチャフ調節杆261bを前後移動させ、各第1横桟261a間の漏下間隔(前部チャフシーブ261の開度)を広狭変化させる機械的な開度補正が実行される。この場合、排藁搬送量の増加にてチェンガイド274が排藁チェン234から離れるほど、各第1横桟261a間の漏下間隔(前部チャフシーブ261の開度)が広がることになる。チャフワイヤ273、チェンガイド274、検出リンク275、検出板276、検出アーム277、及びアーム軸278の組合せが排藁連動手段を構成している。
他方、脱穀機筐135における左側面板の前部側(唐箕ファン228の箇所)には、空気取入口269が形成されている。空気取入口269の上部側には、その開口面積を増減するためのファンシャッタ270が開閉動可能に設けられている。ファンシャッタ270に設けられたシャッタレバー271は、シャッタワイヤ279を介して排藁チェン234側の検出アーム277に連動連結されている。排藁搬送量に応じたチェンガイド274の上下動に伴い、検出アーム277がアーム軸278回りに回動してシャッタワイヤ279を押し引き移動させることにより、シャッタレバー軸280回りにシャッタレバー271が回動して、ファンシャッタ270を開閉回動させる。その結果、空気取入口269の開度が広狭変化して、唐箕ファン228からの選別風量が増減することになる。
図15〜図18に示すように、開閉機構264には、連係手段290を介してアクチュエータとしての強制開放電動モータ291が関連付けられている。すなわち、脱穀機筐135の左側面板のうちベース台283の前方に固定されたブラケット板292に、正逆回転可能な強制開放電動モータ291が取り付けられている。ブラケット板292のうち強制開放電動モータ291の後方には、回動部材としてのセクタギヤ294が横向きの回動軸295にて回動可能に枢着されている。
セクタギヤ294は、強制開放電動モータ291のモータ出力軸に設けられた出力ギヤ293に噛み合わせている。これら両ギヤ293,294の噛み合いによって、強制開放電動モータ291からの回転駆動力が連係手段290を介して開閉機構264に伝達され、開閉機構264を開き方向に強制回動させたり当該強制回動を解除したりするように構成されている。セクタギヤ294は、強制開放電動モータ291による出力ギヤ293の正逆回転駆動にて、図16及び図17に示す待機位置から、図18に示す強制開放位置までの範囲において、回動軸295回りに回動するように構成されている。
連係手段290は、前述したセクタギヤ294と、セクタギヤ294の外周側に形成されたカム部296に当接可能な回動検出部材としての一対のリミットスイッチ300,301と、セクタギヤ294及び開閉機構264を連動して回動させる連係杆302とを有している。セクタギヤ294には、略半周分の外周部に、出力ギヤ293と噛み合う複数の歯が形成されている。そして、略1/4周分の外周部が円弧状のカム部296に形成されている。残り略1/4周分の外周部からは、突出アーム297が半径外向きに突出している。セクタギヤ294におけるカム部296の両端には、半径外向きに膨出する膨出部分298,299が形成されている。
一対のリミットスイッチ300,301は、セクタギヤ294のカム部296に対峙するようにブラケット板292に取り付けられている。両リミットスイッチ300,301のうち逆回動リミットスイッチ300は突出アーム297寄りに配置されており、正回動リミットスイッチ301は強制開放電動モータ291寄りに配置されている。
セクタギヤ294が待機位置に回動した状態では、逆回動リミットスイッチ300の感知体300aが、両膨出部分298,299のうち突出アーム297寄りの逆回動膨出部分298に当接して入り作動するように構成されている。また、セクタギヤ294が強制開放位置に回動した状態では、正回動リミットスイッチ301の感知体301aが、両膨出部分298,299のうちもう一つの正回動膨出部分299に当接して入り作動するように構成されている。
セクタギヤ294から半径外向きに突出する突出アーム297の先端側には、連係杆302の一端部(前端部)が横向きの枢着ピン303にて回動可能に枢着されている。連係杆302の他端部(後端部)には、その長手方向に延びるガイド溝穴304が形成されている。連係杆302のガイド溝穴304には、チャフレバー285に固着された枢支ピン305が抜け不能に挿入されている。つまり、連係杆302の他端部とチャフレバー285とはガイド溝穴304に挿入された枢支ピン305にて連結されている。また、枢支ピン305には、チャフワイヤ273の一端側も回動可能に枢支されている。
この場合、セクタギヤ294が待機位置に回動した状態で、排藁搬送量の変化に連動したチャフワイヤ273の押し引き移動にて、チャフレバー285がチャフレバー軸284回りに回動しても、枢支ピン305がガイド溝穴304の長手方向両端側の縁部に当接しない(引っ掛からない)ように、ガイド溝穴304及び枢支ピン305の位置関係、並びに、ガイド溝穴304の長径寸法が設定されている。
従って、セクタギヤ294が待機位置に回動した状態では、連係手段290(連係杆302)が開閉機構264(チャフレバー285)の回動動作を妨げる(干渉する)ことはない。更に、セクタギヤ294の突出アーム297に、連係杆302の一端側を枢着ピン303にて自由回動可能に吊り下げ支持し、他端側のガイド溝穴304にチャフレバー285の枢支ピン305を遊嵌するので、揺動選別盤227の揺動運動は連係杆302にて吸収されることになる。かかる構成によって、セクタギヤ294や強制開放電動モータ291の取り付け状態に支障を来すおそれを回避している。
また、図16に示すように、セクタギヤ294が待機位置に回動し且つ前部チャフシーブ261の開度が最も狭い状態で、枢支ピン305がガイド溝穴304のうち連係杆302の中央付近に位置する端縁部にできるだけ近づくように、ガイド溝穴304の長径寸法が設定されている。
図16及び図17に示すように、セクタギヤ294が待機位置に回動した状態では、連係杆302は開閉機構264の回動動作に一切寄与せず、チャフワイヤ273を用いての前部チャフシーブ261の機械的な開度補正がスムーズ且つ確実に実行されることになる。一方、図9に示すように、セクタギヤ294が強制開放位置まで回動すると、セクタギヤ294の突出アーム297が連係杆302を下向きに押しやり、ガイド溝穴304のうち連係杆302の中央付近に位置する端縁部がチャフレバー285側の枢支ピン305を押し下げる。そうすると、チャフレバー285が図9の反時計方向に回動して、チャフ調節杆261bが後方向に移動する。その結果、前部チャフシーブ261の開度を強制的に広げる強制開放が実行されることになる。
図19に示すように、第2実施形態のチャフコントローラ310の入力側には、作業クラッチレバー44の操作による脱穀クラッチ78の入り切り状態を感知する脱穀スイッチ316と、排藁チェン234の排藁の有無を検出する排藁検出手段としての排藁スイッチ317と、連係手段290の構成要素である逆回動リミットスイッチ300及び正回動リミットスイッチ301とが接続されている。チャフコントローラ310の出力側には、強制開放電動モータ291が接続されている。
以上のように構成した場合も、畦際での方向転換時や刈取脱穀作業の終了時といった刈り終わり時に、チャフシーブ261(239)の開度を電気的制御にて強制的に広げることができる。このため、第1実施形態と同様に、穀粒を機外に排出してしまう3番ロスを確実に低減でき、コンバインの選別性能を向上できる。しかも、このような3番ロス低減のための構造(電気的制御の構成)を、アクチュエータ291、回動部材294、一対の回動検出部材300,301、排藁検出手段317及び制御手段310という組合せで達成できるから、処理能力の高い制御手段が要らず、複雑な制御システムも不要である。つまり、3番ロス低減のための構造を極めて簡素化でき、製造コストを抑制する一助になるという効果を奏する。
(8).強制開放制御の第3実施形態
次に、図20及び図21を参照しながら、チャフシーブ239の強制開放制御の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、ファンシャッタ270のシャッタレバー271に、第2実施形態と同じ構成のシャッタ用連係手段290′を介して強制閉止電動モータ291′を関連させている点において、第2実施形態と相違している。その他の構成は、基本的に第2実施形態と同様である。
図20に示すように、シャッタ用セクタギヤ294′においては、シャッタ用正回動リミットスイッチ301′が入り作動する二点鎖線の状態が待機位置になり、シャッタ用逆回動リミットスイッチ300′が入り作動する実線の状態が強制閉止位置となるように設定されている。シャッタ用連係杆302′のガイド溝穴304′に、シャッタレバー271に固着されたシャッタ用枢支ピン305′が抜け不能に挿入されている。もちろん、シャッタ用枢支ピン305′には、シャッタワイヤ279の一端側も回動可能に枢支されている。
シャッタ用セクタギヤ294′が待機位置に回動した状態では、シャッタ用連係杆302′はシャッタレバー271の回動動作に一切寄与せず、シャッタワイヤ279を用いてのファンシャッタ270の機械的な開度補正がスムーズ且つ確実に実行される。一方、シャッタ用セクタギヤ294′が強制閉止位置まで回動すると、セクタギヤ294の突出アーム297′がシャッタ用連係杆302を引き上げ、ガイド溝穴304′のうち連係杆302の後縁部がシャッタレバー271側の枢支ピン305′を引き上げる。そうすると、シャッタレバー271が図20の時計方向に回動して、ファンシャッタ270の開度を強制的に狭め、唐箕ファン228からの選別風量を減少させることになる。
図21に示すように、第3実施形態のチャフコントローラ310′も基本的に第2実施形態と同様の構成である。但し、チャフコントローラ310′の入力側には、シャッタ用逆回動リミットスイッチ300′及びシャッタ用正回動リミットスイッチ301′が追加で接続されている。チャフコントローラ310′の出力側には、強制閉止電動モータ291′が追加で接続されている。
第3実施形態のチャフコントローラ310′は、強制開放電動モータ291の駆動にて、正回動リミットスイッチ301が入り作動する強制開放位置までセクタギヤ294を正回動させ、前部チャフシーブ261を強制開放するのに併せて、強制閉止電動モータ291′の駆動にて、シャッタ用逆回動リミットスイッチ300′が入り作動する強制閉止位置までシャッタ用セクタギヤ294を図20の反時計方向に逆回動させて、ファンシャッタ270を強制閉止するように構成されている。
このように構成すると、畦際での方向転換時や刈取脱穀作業の終了時といった刈り終わり時に、チャフシーブ261(239)の開度を電気的制御にて強制的に広げるのに併せて、唐箕ファン228からの選別風量が減少するので、脱穀物(穀粒や藁屑)は機外に排出し難く、二番物取出し用の二番コンベヤ232に落下し易くなる。換言すると、刈り終わり時における前部チャフシーブ261上の脱穀物を積極的に二番コンベヤ232に戻せることになる。従って、3番ロスの低減効果をより向上でき、コンバインの更なる選別性能向上に寄与するのである。
(9).強制開放制御の第4実施形態
次に、図22及び図23を参照しながら、チャフシーブ239の強制開放制御の第4実施形態について説明する。第4実施形態では、前部チャフシーブ261に対する連係手段290及び強制開放電動モータ291をなくして、(前部)開閉機構264を、各ワイヤ265,273と機械的に連動連結させるだけの構成にする一方、後部チャフシーブ262のチャフ変更杆262bを、第2実施形態と同じ構成の後部開閉機構264″の作用にて前後移動するように構成し、後部開閉機構264″のチャフレバー285″に、第2実施形態と同じ構成の後部用連係手段290″を介して後部用強制開放電動モータ291″を関連させている点において、第2実施形態と相違している。その他の構成は、基本的に第2実施形態と同様である。
図22に示すように、第4実施形態のチャフコントローラ310″も基本的に第2実施形態と同様の構成である。但し、チャフコントローラ310″の入力側には、後部用逆回動リミットスイッチ300″及び後部用正回動リミットスイッチ301″が、第1実施形態の各リミットスイッチ300,301と置き換えて接続されている。チャフコントローラ310″の出力側には、後部用強制開放電動モータ291″が第2実施形態の電動モータ291と置き換えて接続されている。
このように構成すると、畦際での方向転換時や刈取脱穀作業の終了時といった刈り終わり時に、前部チャフシーブ261の開度は排藁搬送量の減少にて狭まるものの、後部チャフシーブ262の開度は電気的制御にて強制的に広がることになる。従って、刈り終わり時に3番ロスを低減できるものでありながら、前部チャフシーブ261の下方にある一番コンベヤ231に、藁屑や枝梗付き穀粒といった二番物が混入するおそれも抑制でき、より一層の選別性能向上を図れるという効果を奏するのである。