本発明は、転写材上にトナー画像を形成し、当該トナー画像が形成された側の転写材全面にクリアトナーと呼ばれる無色透明のトナーを供給してクリアトナー層を形成する画像形成方法に関するものである。
本発明に係る画像形成方法では、転写材上にトナー画像を形成した後、トナー画像を形成した側の転写材全面にクリアトナーを供給してクリアトナー層を形成する。次に、当該転写材を加熱してクリアトナーを溶融させた後、当該転写材を冷却してクリアトナー層を硬化させる。この様な工程を経て、トナー画像を形成した側の転写材上にクリアトナー層を設けたプリント物を作製することができる。
本発明では、トナー画像を形成するトナーの60℃における貯蔵弾性率G′tとクリアトナー層を形成するクリアトナーの60℃における貯蔵弾性率G′cの比率(G′c/G′t)と、前記トナーの130℃における粘性率ηtと前記クリアトナーの130℃における粘性率ηcの比率(ηc/ηt)が、それぞれ0.7以上1.3以下の範囲にあるものである。本発明者は、前述した粘弾特性を有するトナーとクリアトナーを用いることにより、トナー画像とクリアトナー層との間に強固な接着性が発現されることを見出したのである。そして、この様な粘段特性を有するトナーとクリアトナーにより、トナー画像上に形成されたクリアトナー層が剥離することがなく、均一な光沢度を有するプリント物を作製することができることを見出したのである。
本発明者は、トナー画像上のクリアトナー層が剥離し易くなるのは、クリアトナー層を加熱、冷却している間にトナー画像とクリアトナー層との間で作用する接着力が低下するために起こるものと考えた。そして、トナー画像とクリアトナー層間での接着力が低減するのは、特に、冷却時におけるトナー画像とクリアトナー層の収縮に差が生じて両者の接触面積が減少し、両者間で作用する分子間結合力が低減する結果、接着力が低下するものと考えた。本発明者は、冷却による硬化が完了する温度下でトナー画像とクリアトナー層が同じ様な粘弾性挙動を示すものであればトナー画像とクリアトナー層との間に収縮差が生じなくなるものと考え、検討の末、上記貯蔵弾性率の関係を見出したのである。
また、本発明者はトナー画像とクリアトナー層との間に強固な接着力を発現させるためには、両者間の接触面積をできるだけ大きなものに確保できる様にすることが必要であると考えた。さらに、両者間に作用する分子間結合力や分子間引力を向上させることも必要であると考えていた。そこで、本発明者は溶融時にクリアトナー層を構成する樹脂がトナー画像上に十分拡張できる様にぬれ特性を向上させ、かつ、トナー画像を構成するものとの間で親和性を発現できる様にしようと考えた。本発明者は、加熱により十分な溶融が実現された温度下でトナー画像とクリアトナー層が同じ様な粘弾性挙動を示すものであればクリアトナー層はトナー画像上でよくぬれて拡張し、かつ、良好な親和性も発現すると考え、検討の末、上記粘性の関係を見出した。
この様に、本発明はクリアトナー層が加熱により十分溶融したときにおける画像を構成するトナーとクリアトナーの粘性関係を規定することにより、トナー画像とクリアトナー層が接触面積を最大限確保できることを見出した発明といえる。また、クリアトナー層が冷却により硬化したときにおける画像を構成するトナーとクリアトナーの貯蔵弾性率の関係を規定することにより、トナー画像とクリアトナー層との間で収縮による接触面積の減少が抑えられることを見出した発明ともいえる。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明でいう「クリアトナー」とは、光吸収や光散乱の作用により着色を示す着色剤(たとえば、着色顔料、着色染料、黒色カーボン粒子、黒色磁性粉等)を含有しないトナー粒子のことである。また、本発明でいうクリアトナーは、通常、無色透明であるが、クリアトナーを構成する結着樹脂やワックス、外添剤の種類や添加量によっては透明度が若干低くなっているものもあるが、実質的には無色透明である。
また、本発明でいう「画像」とは、たとえば文字画像やイメージ画像の様に、ユーザに情報を提供する媒体としての形態をなすものをいう。すなわち、転写材上でトナーやインク等が存在する領域のみを指すのではなく、白地と呼ばれるトナーやインク等が存在していない領域も含めたもので、ユーザに情報を提供できる形態になっているものである。また、本発明でいう「画像」は、クリアトナー層を有するものもクリアトナー層を有さないものの両方とも含むものである。さらに、本発明は、クリアトナー層を形成する前の画像を作製する方法を特に限定するものではなく、電子写真方式、印刷方式、インクジェット方式、銀塩写真方式等、公知の画像形成方法により作製されたものが対象になる。
なお、本発明でいう「トナー画像」とは、「画像」よりクリアトナーを用いて形成された領域を除いたものをいい、前述した「クリアトナー層を有さない画像」が「トナー画像」に該当するものである。
本発明に係る画像形成方法に使用されるトナーとクリアトナーの粘弾性を規定する粘性率ηと貯蔵弾性率G′についてそれぞれ説明する。
最初に、本発明で使用されるトナーとクリアトナーの粘性率ηについて説明する。本発明に係る画像形成方法では、トナー画像を形成するトナーの130℃における粘性率ηtとクリアトナー層を形成するクリアトナーの130℃における粘性率ηcの比率(ηc/ηt)が0.7以上1.3以下となるトナーとクリアトナーが使用される。
本発明では、画像形成に使用するトナーとクリアトナーの130℃における粘性率ηの比率を上記範囲とすることにより、トナー画像とクリアトナー層との間で強固な接着性を発現することのできる環境が形成されるものと考えられる。すなわち、粘性率ηの比率が上記範囲内にあることにより、クリアトナー層を構成するクリアトナーがトナー画像上でスムーズに拡がることができる様に溶融するためと考えられる。そして、トナー画像上を十分にぬらす様にクリアトナーが溶融することにより、トナー画像とクリアトナー層の接触面積が十分広く得られる様になるものと考えられる。その結果、トナー画像とクリアトナー層の間に広い接触面積が確保されることにより、両者間に強固な接着性を発現することができる環境が得られるものと考えられる。
また、画像形成用のトナーとクリアトナーが、加熱により同じ様な溶融挙動を発現するもの同士で溶融状態に差が発生しにくく、溶融状態の差に起因して両者間で接触面積が減少することが起こりにくいことも考えられる。つまり、両者は同じ様な溶融挙動を示すので、溶融状態の下では両者間で広い接触面積を確保し易い状態になっているものと考えられる。さらに、画像形成用のトナーとクリアトナーとがお互いに親和性を発現し易い組み合わせになっているケースが多いことも考えられ、高い親和性により強固な接触面積を広く確保し易い性質を有していることも考えられる。
したがって、画像形成用のトナーとクリアトナーの粘性率の比率が上記範囲から外れる場合は、以下の様な状態になるものと考えられ、本発明の効果を発現することができなくなるものと考えられる。先ず、クリアトナーの粘性率ηcが画像形成用のトナーの粘性率ηtよりも大幅に大きくなる場合は、トナー画像との間に十分な接触面積を確保することはできるが、溶融したクリアトナーをトナー画像上に留めておくことができなくなってしまう。また、クリアトナー層とトナー画像の親和性が高くなり過ぎてクリアトナー層がトナー画像に浸透し易くなる。これらの影響でトナー画像上に形成されるクリアトナー層の厚みがうすくなり、下地トナーが表面に露出して高い光沢度のプリント物を作製することが困難になるものと考えられる。
一方、クリアトナーの粘性率ηcが画像形成用のトナーの粘性率ηtよりも大幅に小さな場合は、溶融したクリアトナーがトナー画像上に拡がりにくい状態になるので、クリアトナー層とトナー画像の間に形成される接触面積が小さなものになる。両者の接触面積が小さくなると、前述した様に、クリアトナー層とトナー画像間の接着性が脆弱になり、画像形成後はクリアトナー層が剥離して光沢面を均一に維持することができなくなり、高い光沢度を有するプリント物を作製することが困難になるものと考えられる。
粘性率ηについて、さらに説明する。本発明でいう粘性率ηは、一般に、動粘度(kinematic viscosity)、あるいは動粘性係数とも呼ばれるもので、溶融状態にあるクリアトナーの絶対粘度をその密度で除して得られる値である。ここで、物体の粘性率について簡単に説明する。
「粘性率η」は、一般に液体や溶融状態の樹脂等の様な流動性を示す物質の粘りの度合を示すもので、粘度(viscosity)あるいは粘性係数とも呼ばれるものである。そして、液体や溶融状態にある樹脂の粘度は以下に示すニュートンの式により定義される。すなわち、面積A、厚さhの空間に液体や溶融状態の樹脂を配置させ、これを相対速度Uで運動させると力Fが生ずる。
これをニュートンの式で表すと以下の様になる。すなわち、
F=μAU/h
となる。式中のμは、絶対粘度と呼ばれ、一般に、単位はPa・s(パスカル・秒)で表されるものである。
また、粘度は毛管粘度計等、細い管の中を自重で通過する速度(時間)で比較することが可能であることから、絶対粘度をその液体の密度で割った動粘度を指標として用いることが可能である。粘性率をη、液体の密度をρとすると、粘性率ηは、
η=μ/ρ
で表される。粘性率ηの単位は、一般にm2/sで表され、特に、10−4m2/sを1ストークス(1St)と呼ぶ。
本発明で使用されるトナー及びクリアトナーの粘性率ηの測定には、動粘度測定装置が用いられ、具体例としては、後述する貯蔵弾性率の測定で詳述するソリキッドメータ「MR−500型((株)レオロジ社製)」等がある。
後述する動粘度測定装置等を用いることにより、本発明に係る画像形成方法に使用されるトナーとクリアトナーの粘性率ηを測定、算出することができる。そして、本発明で使用するクリアトナーは、130℃における粘性率ηcが1×102以上1×103以下となるものが好ましい。130℃の温度下で上記範囲となる粘性率を有するトナーは、従来のトナーに比べて低い加熱温度で十分な溶融が行えるものであり、クリアトナーの加熱、溶融に必要な熱量を低減させることができる。したがって、従来よりも低い加熱温度により、クリアトナー層の溶融、流動が行えてトナー画像との間に広い接触面を確保することが可能になるものと考えられる。
この様に、クリアトナー層とトナー画像の間に広い接触面が確保することができるので、両者間に強固な接着力が得られる様になり、クリアトナー層がトナー画像上から剥離しなくなるものと考えられる。その結果、光沢度の高い均一な光沢面をクリアトナーにより確実に形成、維持することができる様になる。また、プリント作製に要するエネルギー消費量を低減させることになるので、環境にやさしいプリント作製が行える様になる。さらに、クリアトナー層を溶融させた状態でプリント物を保持、搬送する部材に与える熱的負荷も軽減することができるので、たとえば、後述する図1に示す装置を構成する部材の寿命を延ばすことも可能になり、画像形成装置のメンテナンス性向上にも寄与することになる。
なお、本発明でトナー画像を形成するトナーの130℃における粘性率ηtは、130℃におけるクリアトナーの粘性率ηcとの比率(ηc/ηt)が0.7以上1.3以下となるものであれば、特に限定されるものではない。
次に、本発明で使用されるトナーとクリアトナーの貯蔵弾性率G′について説明する。本発明に係る画像形成方法では、トナー画像を形成するトナーの60℃における貯蔵弾性率G′tとクリアトナーの60℃における貯蔵弾性率G′cの比率(G′c/G′t)が0.7以上1.3以下となるトナーとクリアトナーが使用される。
本発明では、画像形成に使用するトナーとクリアトナーの60℃における貯蔵弾性率G′の比率を上記範囲にすることで、プリント物を冷却して硬化させた後のトナー画像とクリアトナー層の界面を安定化させるものと考えられる。すなわち、トナーとクリアトナーの貯蔵弾性率を同レベルにすることにより、画像面とクリアトナー層の硬化状態が揃うので、プリント物が外力を受けたときに両者界面にひずみが発生しにくい環境が形成されるものと考えられる。たとえば、後述する図1の光沢付与装置は、クリアトナー層の面をベルト部材に密着させた状態で冷却し硬化させるものであるが、プリント物をベルト部材から剥離する際、クリアトナー層等にストレスが加わることになる。本発明によれば、ストレスを受けたとき、クリアトナー層とトナー画像の双方とも同じ様に変形挙動を示して両者間に変形に対するばらつきを発生させないので、両者界面にひずみが発生しない。その結果、トナー画像とクリアトナー層の界面にはひずみに起因するストレスが発生せず、界面破壊に起因するクリアトナー層の剥離が回避されるものと考えられる。また、加熱により形成されたトナー画像とクリアトナー層の接触面積が硬化後も維持され、トナー画像とクリアトナー層の間に強固な接着力を発現することができるので、プリント物の耐久性を向上させることも考えられる。
したがって、クリアトナーの貯蔵弾性率G′cがトナーの貯蔵弾性率G′tよりも大幅に大きなものになると、プリント物に外力が加わったとき、トナー画像の変形がクリアトナー層の変形よりも大きくなり、両者の変形に対するバランスが維持できなくなる。その結果、クリアトナー層がトナー画像の変形に追随しきれなくなって両者の界面にひずみが生じ、界面破壊によるクリアトナー層の剥離が起こるものと考えられる。
一方、クリアトナーの貯蔵弾性率G′cがトナーの貯蔵弾性率G′tよりも大幅に小さなものになると、プリント物に外力が加わったとき、クリアトナー層の変形がトナー画像の変形よりも大きくなって、両者の変形に対するバランスが崩れてしまう。その結果、トナー画像がクリアトナー層の変形に追随しきれなくなって界面にひずみが生じ、界面破壊によるクリアトナー層の剥離が起きるものと考えられる。
貯蔵弾性率G′について、さらに説明する。本発明でいう貯蔵弾性率G′は、以下に述べる様に、クリアトナーあるいはトナーの動的粘弾性に関する概念に基づくものである。動的粘弾性は、正弦振動の様に時間とともに変化する歪みあるいは応力を試料に与えて、それに対する応力や歪みを測定することにより試料の粘弾性を評価するものである。この様に、正弦振動を介して得られる粘弾性のことを動的粘弾性といい、正弦振動により得られる弾性率は、通常、複素数の形で表されるものである。
ここで弾性率Gは、試料に加えられる応力σと応力σの作用で生ずるひずみγとの比であり、動的粘弾性における弾性率を複素弾性率G*と呼んでいる。すなわち、動的粘弾性における複素弾性率G*は、応力をσ*、ひずみをγ*とすると、
G*=σ*/γ*
で表される。
そして、複素弾性率G*の実数部を貯蔵弾性率、虚数部を損失弾性率という。以下、本発明で使用されるトナーあるいはクリアトナーを特定する因子となる貯蔵弾性率の概念を説明する。
試料に振幅γ0、角振動数ωの正弦的歪みγを試料に与えた場合、正弦的歪みγは次の様に表される。
γ=γ0cosωt
このとき、試料には、同じ角振動数の応力が生ずる。応力σは歪みγより位相がδだけ進むので、以下の様に表される。
σ=σ0cos(ωt+δ)
ここで、オイラーの公式 eiωt=cosωt+isinωtを用いて、これらの式を複素数で表示すると、正弦的歪みγ*は、γ*=γ0exp(iωt)、これにより生じた応力σ*は、σ*=σ0exp(i(ωt+δ))と表される。
前述した複素弾性率G*=σ*/γ*に上記式を入れると、
G*=(σ0/γ0)expδ
=(σ0/γ0)(cosδ+isinδ)
ここで、複素弾性率G*を実数部と虚数部で表すと、すなわち、G*=G′+iG″とすると、
G′=(σ0/γ0)cosδ
G″=(σ0/γ0)sinδ
となる。これは、一周期の間に粘弾性体に貯えられる弾性エネルギーがG′に比例し、粘弾性体が熱として失うエネルギーがG″に比例することを意味するもので、このことから、実数部分であるG′を貯蔵弾性率、虚数部分であるG″を損失弾性率と呼んでいる。
本発明で使用されるトナーあるいはクリアトナーの貯蔵弾性率は、たとえば、以下に示す手順で測定することにより算出される。
(1)トナーあるいはクリアトナー0.5gを圧縮成型器により直径1cmのペレットにする。
(2)ペレットをギャップ6mmに設定した直径1cmのパラレルプレートに装填する。(3)測定部温度を120℃、パラレルプレートギャップを3mmに設定する。
(4)測定部温度を液体窒素で−20℃に設定した後、周波数10Hzの正弦波振動を加えながら、測定部を毎分5℃の昇温速度で200℃まで昇温し、90℃における複素粘弾性率を測定する。歪み角は0.05〜5degの範囲で変化させた。
(5)上記手順をまとめると、本発明に使用可能なトナーあるいはクリアトナーの貯蔵弾性率G′t、G′cは以下の条件の下で測定することにより得られる。すなわち、
測定装置:MR−500ソリキッドメータ((株)レオロジ社製)
周波数 :10Hz
プレート径 :1.0cm(パラレルプレート)
ギャップ :3.0mm
ひずみ角 :0.05〜5(deg)
測定温度範囲:−20℃〜200℃
たとえば、上述の手順により、本発明に係る画像形成方法に使用可能なトナーあるいはクリアトナーの貯蔵弾性率を測定することが可能である。本発明で使用可能なクリアトナーの60℃における貯蔵弾性率G′cの値は、特に限定されるものではないが、たとえば、60℃における貯蔵弾性率G′cが1×107以上1×109以下のクリアトナーは後述する実施例にも記載の様に、安定したクリアトナー層形成が行える上で好ましい。たとえば、図1に示す光沢付与装置を用いてクリアトナー層を形成する際、平面性のベルト部材表面にクリアトナー層を保持させた状態で冷却、硬化を行うもので、ベルト部材に搬送中にプリント物が外力を受けても、プリント物はストレスを適度に吸収にして安定して形成することができる。
また、本発明に係る画像形成方法に使用可能なトナーの60℃における貯蔵弾性率G′tは、60℃におけるクリアトナーの貯蔵弾性率G′cとの比率(G′c/G′t)が0.7以上1.3以下になるものであれば、特に限定されるものではない。たとえば、クリアトナーの60℃における貯蔵弾性率G′cが前述した1×107以上1×109以下の場合、トナー画像を形成するトナーの60℃における貯蔵弾性率G′tがクリアトナーと同じ1×107以上1×109以下となるものを用いることが好ましい。
本発明に係る画像形成方法によれば、トナーとクリアトナーについて130℃における粘性率ηの比率と60℃における貯蔵弾性率G′の比率をそれぞれ前述した範囲にすることで、クリアトナー層を剥離させずに高い光沢度を有するプリント物を作製することができる。ここで、本発明でいう「光沢度」とは、所定条件の下でクリアトナー層を形成した転写材表面に光を照射したときに得られる転写材表面の反射の程度を定量したもので、たとえば、以下の手順で定量することができる。すなわち、転写材全面をクリアトナーで被覆して形成したクリアトナー層の面を、「JIS Z8741 1983方法2」により、入射角(測定角度ともいう)20°にて光沢度測定装置(グロスメータ)「GMX−203(村上色彩技術研究所社製)」により測定した値を光沢度とする。
図7に、光沢度測定装置(グロスメータ)の概念図を示す。光沢度測定装置では、光源70から光学系71を介して試料(クリアトナー層を形成した転写材)Pに光が照射される。この試料Pからの反射光を光学系73を介して受光器74で受光させる。図中のS1とS2はスリットである。また、α1は光画像の開き角、β1は垂直面内の開き角、α2は受光器の開き角、β2は垂直面内の開き角を表す。図に示す指定された入射角θに対して試料(クリアトナー層を形成した転写材)P面からの鏡面反射光束をφ、標準面からの反射光束をφsとして光沢度Hは下記式で表される。
光沢度H=(φ/φs)×(使用した標準面の光沢度)
ここで、使用した標準面の光沢度は100.0である。したがって、光沢度は100以下の数値で表されることになるもので、反射光束が多いほど光沢度Hの値は100に近い値になる。本発明に係る画像形成方法によれば、後述する実施例で確認される様に、画像形成時及び画像形成後にクリアトナー層の剥離が起きないので、作成されたプリント物は高い光沢度を有するものが得られる。
また、上記グロスメータを用いる光沢度測定方法の他に、「写像性」に基づいて光沢度を評価する方法もある。ここで、「写像性」とは光沢度の評価方法の1つで、光の加減によりクリアトナー層表面に像が映し出されたときに、映し出された像がどの程度鮮明、かつ、歪みなく映し出されているかを、定量的に評価するものである。具体的には、TM式写像性測定装置と呼ばれる測定装置により写像性C値と呼ばれる百分率で規定する数値により評価を行うもので、写像性C値が大きくなるほど優れた光沢度を有するものである。図8にTM式写像性測定装置による写像性C値測定の原理を示す。また、「写像性」の具体的な測定手順や測定条件については、後述する実施例で説明する。
前述した様に、本発明に係る画像形成方法に使用されるトナーとクリアトナーは、130℃における粘性率ηの比率(ηc/ηt)と60℃における貯蔵弾性率G′の比率(G′c/G′t)がそれぞれ0.7以上1.3以下のものである。そして、130℃における両者の粘性率ηの比率と、60℃における貯蔵弾性率G′の比率がそれぞれ前述の範囲になることにより、クリアトナー層を剥離させることなく画像形成が行え、高い光沢度を有するプリント物を安定して作製することができる。
本発明に係る画像形成方法に使用されるトナーとクリアトナーは、130℃における粘性率ηの比率(ηc/ηt)と60℃における貯蔵弾性率G′の比率(G′c/G′t)がそれぞれ0.7以上1.3以下のものである。本発明では、トナー画像を形成するトナーとクリアトナー層を形成するクリアトナーが、前述の特性を有するものであれば、トナーとクリアトナーの構成は特に限定されるものではないが、両トナーに対して130℃付近の温度環境下でスムーズに溶融し、かつ、60℃付近の温度環境下で硬化特性にばらつきを生じさせないことが求められる。本発明者は、トナー及びクリアトナーを構成する結着樹脂中に分子結合の強い領域を局所的に存在させることにより、前述した性能を有する結着樹脂が得られるものと考えた。すなわち、分子結合の強い領域を局所的に存在させることにより、加熱時には分子結合力の影響で樹脂の溶融が邪魔されることなく130℃付近でスムーズに行え、冷却時には分子結合力を直ちに発現する拠点になり60℃付近の温度で適度な強度を付与させることができるものと考えた。
具体的には、以下の様な構成の結着樹脂を考えたのである。すなわち、
(1)イタコン酸やマレイン酸の様な多価カルボン酸モノマーに代表される2価以上の酸性基を有するラジカル重合性モノマーを含むラジカル重合性モノマーを重合させて形成した樹脂成分をビニル系の結着樹脂中に含有させたもの
(2)多価カルボン酸と多価アルコールを重縮合させて形成したポリエステル樹脂成分をビニル系の結着樹脂中に含有させたもの
(3)下記一般式(1)で表される多官能ラジカル重合性モノマーを架橋剤としてビニル系の結着樹脂中に含有させたもの
〔式中、R1及びR2は炭素原子数1〜12の置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基を表す。R3及びR4は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の置換基を有してもよいアルキル基、炭素数4〜10の置換基を有してもよい環状炭化水素基、置換基を有してもよいアリール基を表し、p及びqは0〜4の整数を表す。R5及びR6は水素原子または炭素数1〜12の置換基を有してもよいアルキル基を表す。Xは炭素数1〜10のアルキレン基または単なる結合手を表す。Yは炭素数1〜4のアルキレン基または−CO−基を表す。nは1〜20の整数を表す。〕
これらの結着樹脂を有するトナー及びクリアトナーを用いる画像形成方法により、本発明の効果がより確実に奏される。
上記樹脂成分を結着樹脂に含有させることにより、酸性基等による水素結合の作用で結着樹脂中に局所的に疑似凝集構造が形成され、疑似凝集構造の作用により結着樹脂中の内部凝集力が適度に向上するものと考えられる。また、トナーとクリアトナーが前述した粘性率と貯蔵弾性率の関係を付与する観点から、トナーの結着樹脂とクリアトナーの結着樹脂を類似のものにすることで上記関係を付与することができる。その結果、トナー画像とクリアトナー層との間にも同様の疑似凝集構造を形成することができる様になると考えられる。これらの作用により、加熱時には130℃付近の温度でクリアトナー層をスムーズに溶融させるとともに、かつ、冷却時には60℃付近の温度でトナー画像とクリアトナー層との間に適度な強度を付与するものと考えられる。
本発明に係る画像形成方法に使用されるトナー及びクリアトナーを構成する結着樹脂についてさらに説明する。
本発明に係る画像形成方法に使用されるトナー、あるいは、クリアトナーを構成する結着樹脂は、前述した樹脂成分を形成する重合性単量体を併用して樹脂を形成することが可能な公知の重合性単量体を用いて形成することができる。たとえば、単独あるいは複数種類組み合わせた公知のビニル系単量体と前述した樹脂成分を形成する重合性単量体とを組み合わせて作製することができる。
以下に、ビニル系の重合性単量体の具体例を示す。
(1)スチレンあるいはスチレン誘導体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等
(2)メタクリル酸エステル誘導体
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等
(3)アクリル酸エステル誘導体
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等
(4)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレン等
(5)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等
(6)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等
(7)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等
(8)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等
(9)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体等。
また、本発明で使用されるトナー、あるいは、クリアトナーを構成する樹脂を形成するビニル系重合性単量体には、以下に示すカルボキシル基やスルホン酸基、リン酸基等のイオン性解離基を有するものを使用することが好ましい。
先ず、カルボキシル基を有するものとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等がある。また、スルホン酸基を有するものとしては、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸等があり、リン酸基を有するものとしてはアシドホスホオキシエチルメタクリレート等がある。
また、以下に示す多官能性ビニル類は、架橋構造の樹脂を作製する上で好ましいものである。以下に多官能性ビニル類の具体例を示す。
エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等。
また、本発明に係る画像形成方法に使用されるトナー、あるいは、クリアトナーは、以下に示す公知のワックスを含有させることも可能である。
(1)ポリオレフィン系ワックス
ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等
(2)長鎖炭化水素系ワックス
パラフィンワックス、サゾールワックス等
(3)ジアルキルケトン系ワックス
ジステアリルケトン等
(4)エステル系ワックス
カルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等
(5)アミド系ワックス
エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等
ワックスの融点は、通常40〜125℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点を上記範囲内にすることにより、トナーとクリアトナーの耐熱保管性を確保するとともに、低温でトナー画像とクリアトナー層を溶融させる場合でもトナー画像形成と光沢面を安定して形成することができる。なお、トナー中あるいはクリアトナー中のワックス含有量は、1質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。
また、本発明に係る画像形成方法でトナー画像を形成するトナーは、公知の着色剤を含有してなるものであり、使用可能な着色剤の具体例を以下に示す。
黒色の着色剤としては、たとえば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、さらにマグネタイト、フェライト等の磁性粉も使用することができる。
マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同6、同7、同15、同16、同48:1、同53:1、同57:1、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同149、同150、同163、同166、同170、同177、同178、同184、同202、同206、同207、同209、同222、同238、同269等がある。
また、オレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー12、同14、同15、同17、同74、同83、同93、同94、同138、同155、同162、同180、同185等がある。
さらに、グリーンもしくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同60、同62、同66、C.I.ピグメントグリーン7等がある。
また、染料としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー2、同6、同14、同15、同16、同19、同21、同33、同44、同56、同61、同77、同79、同80、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等がある。
これらの着色剤は必要に応じて単独もしくは2つ以上を選択併用することも可能である。また、着色剤の添加量はトナー全体に対して1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲で、これらの混合物も用いることができる。数平均1次粒子径は種類により多様であるが、概ね10〜200nm程度が好ましい。
着色剤の添加方法としては、樹脂微粒子を凝集剤の添加にて凝集させる段階で添加し重合体を着色する。なお、着色剤は表面をカップリング剤等で処理して使用することも可能である。
次に、本発明に係る画像形成方法に使用されるトナー、あるいは、クリアトナーは、後述する製造工程で外部添加剤(=外添剤)として数平均一次粒径が4〜800nmの無機微粒子や有機微粒子等の粒子を添加して、トナー作製されることが可能である。
外添剤の添加により、トナー、あるいは、クリアトナーの流動性や帯電性が改良され、また、クリーニング性の向上等が実現される。外添剤の種類は特に限定されるものではなく、たとえば、以下に挙げる無機微粒子や有機微粒子、及び、滑剤が挙げられる。
無機微粒子としては、従来公知のものを使用することが可能で、たとえば、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム微粒子等が好ましいものとして挙げられる。また、必要に応じてこれらの無機微粒子を疎水化処理したものも使用可能である。
シリカ微粒子の具体例としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
チタニア微粒子としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
アルミナ微粒子としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
また、有機微粒子としては数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を使用することができる。
また、クリーニング性や転写性をさらに向上させるために滑剤を使用することも可能であり、たとえば、以下の様な高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。すなわち、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩が挙げられる。
これら外添剤や滑剤の添加量は、トナー全体に対して、あるいは、クリアトナー全体に対して0.1〜10.0質量%が好ましい。また、外添剤や滑剤の添加方法としては、タービュラミキサ、ヘンシェルミキサ、ナウタミキサ、V型混合機などの種々の公知の混合装置を使用して添加する方法が挙げられる。
次に、本発明に係る画像形成方法に使用可能なトナー及びクリアトナーの製造方法について説明する。
本発明で使用されるトナー、あるいは、クリアトナーを構成する粒子の作製方法は、特に限定されるものではなく、公知の電子写真方式の画像形成に使用されるトナーの製造方法を適用することができる。すなわち、混練、粉砕、分級工程を経てトナーを作製するいわゆる粉砕法や、重合性単量体を重合させ、同時に、形状や大きさを制御しながら粒子形成を行ういわゆる重合法によるトナー製造方法を適用することができる。
その中でも、重合法により作製されるトナー、あるいは、クリアトナーは、均一な粒度分布や形状分布、シャープな帯電分布等の特性を得られ易いものとされる。重合法によるトナー製造方法では、たとえば、懸濁重合、乳化重合等の重合反応により樹脂粒子を形成する工程を有するものであり、その中でも重合反応を経て作製した樹脂粒子を凝集、融着させて粒子を形成する会合工程を経て作製されるものが特に好ましい。
また、会合工程を経て本発明で使用されるトナー、あるいは、クリアトナーを作製する際、低温定着性と耐熱保管性を確実に両立させる構造であるコアシェル構造を有するトナー、あるいは、クリアトナーを作製することもできる。コアシェル構造を有するトナー、あるいは、クリアトナーは、最初に、軟化点温度やガラス転移温度の低い樹脂粒子でコアを形成した後、コア表面に軟化点温度やガラス転移温度の高い樹脂粒子を凝集、融着させてシェルを形成して、コアシェル構造のトナー、あるいは、クリアトナーを作製することができる。
コアシェル構造のトナー、あるいは、クリアトナーは、低めの定着温度で溶融し、かつ、トナー画像、あるいは、クリアトナー層に適度な内部凝集力を付与する性質の樹脂を用いてコアを形成することが好ましい。この様な性質を有する樹脂を用いることにより、前述した粘弾性特性に加えて、トナー画像とクリアトナー層面との間に強固な結合力が生じる様になり、クリアトナー層をベルト部材に接触させた状態で加熱、冷却した後、ベルト部材から剥離されるクリアトナー層が破断することがなく、高耐久のクリアトナー層を形成することができる。また、溶融状態で破断したクリアトナーによるホットオフセットの問題も発生せず良好なクリアトナー層の形成が行える。
さらに、ガラス転移温度の高い樹脂を用いてシェルを形成することにより、高温高湿環境の様に熱的に不安定な環境下に長期間トナー、あるいは、クリアトナーを保管しても、トナー粒子同士、あるいは、クリアトナー粒子同士が付着することなく安定した状態で保管することができる。
以下に、本発明に係る画像形成方法に使用されるトナー及びクリアトナーの作製方法の一例として、乳化会合法によるトナー、あるいは、クリアトナーの作製方法について説明する。乳化会合法によるトナー、あるいは、クリアトナーの作製方法は、たとえば、以下の工程を経て行われる。
(1)樹脂粒子分散液の作製工程
(2)着色剤粒子分散液の作製工程
(3)樹脂粒子の凝集・融着工程
(4)熟成工程
(5)冷却工程
(6)洗浄工程
(7)乾燥工程
(8)外添剤処理工程
以下、各工程について説明する。
(1)樹脂粒子分散液の作製工程
この工程は、本発明で使用されるトナー及びクリアトナーを構成する樹脂粒子を形成するラジカル重合性モノマーを水系媒体中に投入して重合を行うことにより、100nm程度の大きさの樹脂粒子を形成する工程である。ここで、「水系媒体」という言葉が用いられているが、本発明でいう「水系媒体」とは、水50〜100質量%と水溶性有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体のことをいう。水溶性の有機溶剤には、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン等の公知のものがある。
この工程で行われる重合処理の好適な一例としては、たとえば、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、必要に応じてワックスや荷電制御剤等を含有させた重合性単量体溶液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成する。次いで、水溶性の重合開始剤を添加して当該液滴中で重合反応を進行させることにより樹脂粒子を形成する。なお、前記液滴中に油溶性重合開始剤を含有させておいてもよい。この工程では、機械的エネルギーを付与して強制的に乳化(液滴の形成)処理を行うことが必須となり、機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサ、超音波、マントンゴーリン等の強い撹拌または超音波振動エネルギーの付与手段が挙げられる。
(2)着色剤粒子分散液の作製工程
本発明で使用するトナーを作製する場合、トナー中に着色剤を含有させる必要がある。この工程は、前述した手順により、水系媒体中に着色剤を分散させて、着色剤粒子分散液を作製する工程である。特に、本発明では、数平均1次粒径が30nm〜200nmの着色剤を用いて着色剤粒子分散液を作製するものである。そして、当該着色剤粒子分散液を用いてトナーを作製することにより、トナー粒子中における着色剤の数平均粒径が数平均1次粒径の1.1倍〜2.5倍になるものである。
(3)樹脂粒子の凝集・融着工程
この工程は、前記工程で作製した樹脂粒子を水系媒体中で凝集させるとともに、加熱により樹脂粒子の凝集界面を融着させて、トナーの母体粒子、あるいは、クリアトナーの母体粒子を作製する工程である。ここで、母体粒子とは、外添処理をする前のトナーあるいはクリアトナーの母体を構成する粒子のことをいう。この工程では、前記樹脂粒子を存在させた水系媒体中に、塩化マグネシウム等に代表されるアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等の凝集剤を添加することにより、前記樹脂粒子を凝集させる。次いで、水系媒体中を前記樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱して凝集を進行させると同時に凝集させた樹脂粒子同士の融着を行う。そして、凝集を進行させて粒子の大きさが目標になったときに、食塩等の塩を添加して凝集を停止させて母体粒子を形成するものである。なお、トナーの母体粒子を作製する場合は、着色剤粒子を添加して樹脂粒子を凝集させるものである。
(4)熟成工程
この工程は、上記凝集・融着工程に引き続き、反応系を加熱処理することによりトナーの母体粒子、あるいは、クリアトナーの母体粒子の形状を所望の平均円形度になるまで熟成させるいわゆる形状制御工程とも呼ばれる工程である。
(5)冷却工程
この工程は、前述したトナー母体粒子の分散液、あるいは、クリアトナー母体粒子の分散液を冷却処理(急冷処理)する工程である。冷却処理条件としては、1〜20℃/分の冷却速度で冷却する。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
(6)洗浄工程
この工程は、上記工程で所定温度まで冷却処理した前記トナー母体粒子、あるいは、前記クリアトナー母体粒子の分散液より粒子を固液分離する工程と、固液分離されてウェットのトナーケーキと呼ばれるケーキ状集合体となったトナー母体粒子、あるいは、クリアトナー母体粒子より界面活性剤や凝集剤等の付着物を洗浄により除去する工程からなる。
洗浄処理は、濾液の電気伝導度がたとえば10μS/cm程度になるまで水洗浄する。固液分離方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用する減圧ろ過法、フィルタプレス等を使用するろ過法等があり、本発明では特に限定されるものではない。
(7)乾燥工程
この工程は、洗浄処理された前記トナー母体粒子、あるいは、前記クリアトナー母体粒子を乾燥処理し、乾燥処理を施したトナー母体粒子、あるいは、クリアトナー母体粒子を得る工程である。この工程で使用される乾燥機としては、スプレイドライヤ、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
また、乾燥処理されたトナー母体粒子、あるいは、クリアトナー母体粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは2質量%以下とされる。なお、乾燥処理されたトナー母体粒子同士、あるいは、クリアトナー母体粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサ、コーヒーミル、フードプロセッサ等の機械式の解砕装置を使用することができる。
(8)外添剤処理工程
この工程は、乾燥処理したトナー母体粒子、あるいは、クリアトナー母体粒子に外添剤や滑剤を添加する工程である。前記乾燥工程を経たトナー母体粒子、あるいは、クリアトナー母体粒子はそのままトナー粒子やクリアトナー粒子として使用できるが、外添剤を添加することにより帯電性や流動性、クリーニング性を向上させることができる。これら外添剤には、公知の無機微粒子や有機微粒子、脂肪族金属塩を使用することができ、その添加量はトナー全体に対して0.1〜10.0質量%、好ましくは0.5〜4.0質量%である。また、外添剤は種々のものを組み合わせて添加することができる。なお、外添剤を添加する際に使用する混合装置としては、たとえば、タービュラミキサ、ヘンシェルミキサ、ナウタミキサ、V型混合機、コーヒーミル等の公知の機械式の混合装置がある。
以上の工程を経ることにより、乳化会合法を用いて本発明に使用可能なトナーとクリアトナーを作製することができる。
次に、本発明に係る画像形成方法で使用されるトナー及びクリアトナーは、キャリアとトナーより構成される二成分現像剤として、また、トナーのみから構成される非磁性一成分現像剤として使用することが可能である。
キャリアは、たとえば平均粒径が10〜50μm、飽和磁化10〜80emu/gを有しトナーは粒径4〜10μmである。2成分現像剤は、これらキャリアとトナーとをトナー濃度が4質量%〜10質量%にとなる様に混合、調整したものである。2成分現像剤として使用されるトナーとクリアトナーでは、その帯電特性は、たとえば、負帯電性の場合にはキャリアにより平均電荷量を−20〜−60μC/gにすることが好ましい。
本発明に係るトナー及びクリアトナーを二成分現像剤として使用する場合、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の公知の材料からなる磁性粒子を用いることが可能で、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとして、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアやバインダ樹脂中に磁性体微粉末を分散してなるバインダ型キャリア等を使用することも可能である。
コートキャリアを構成する被覆樹脂としては、特に限定はないが、たとえば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、バインダ型キャリアを構成するバインダ樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することが可能で、たとえば、スチレン−アクリル系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂等を使用することが可能である。
キャリアは、高画質の画像が得られること、及びキャリアかぶりが抑止されることから、体積基準のメディアン径で20〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは20〜60μmとされる。キャリアの体積基準のメディアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
好ましいキャリアとしては、耐スペント性の観点から、被覆樹脂としてシリコーン系樹脂、オルガノポリシロキサンとビニル系単量体との共重合樹脂(グラフト樹脂)またはポリエステル樹脂を用いたコートキャリアが挙げられ、特に、耐久性、耐環境安定性及び耐スペント性の観点から、オルガノポリシロキサンとビニル系単量体との共重合樹脂(グラフト樹脂)に、イソシアネートを反応させて得られた樹脂で被覆したコートキャリアを好ましく挙げられる。上記のコートキャリアを形成するビニル系単量体は、イソシアネートと反応性を有する水酸基などの置換基を有する単量体である。
また、キャリアを使用せずに画像形成を行う非磁性一成分現像剤として使用する場合、画像形成時にトナーは帯電部材や現像ローラ面に摺擦、押圧して帯電が行われる。非磁性一成分現像方式による画像形成は、現像装置の構造を簡略化できるので、画像形成装置全体をコンパクト化できるメリットがある。したがって、トナーとクリアトナーを非磁性一成分現像剤として使用すると、コンパクトなカラープリンタでフルカラーのプリント作成が実現され、スペース的に制限のある作業環境でも色再現性に優れたフルカラープリントの作成が可能である。
次に、本発明に係る画像形成方法を実現する画像形成装置について説明する。本発明では、たとえば後述する図2に示す画像形成装置等で形成したトナー画像を有する転写材全面にクリアトナーを供給し、クリアトナーの供給された面をたとえばベルト部材等に密着させた状態にして当該クリアトナーを加熱する。その後で、クリアトナー層を冷却して硬化することにより、転写材全面に光沢面を形成することができる。そして、前述した特性を有するトナーとクリアトナーを用いることにより、クリアトナー層とトナー画像との間に強固な結合力が付与されて、高い光沢度を有し、かつ、耐久性に優れたプリント物を作製することができる。図1は、本発明に係るクリアトナーを用いて転写材の画像面全面に光沢面を形成する光沢付与装置の代表例を示す模式図である。
図1に示す光沢付与装置1は、少なくとも以下の構成を有するものである。すなわち、
(1)画像全面にわたりクリアトナーが供給された状態にある転写材Pを加熱し、同時に加圧する加熱加圧装置10
(2)加熱加圧装置10により溶融したクリアトナー面と接触し、クリアトナー面との間に接着面を形成して転写材Pを搬送するベルト部材11
(3)ベルト部材11に接着した状態で搬送されている転写材Pに冷却用のエアを供給する冷却ファン12と13
(4)冷却ファン12と13より供給されるエアの作用で冷却され、クリアトナー面が固着した転写材を搬送する搬送ロール14より構成されるものである。
以下、各構成について具体的に説明する。
最初に加熱加圧装置10について説明する。図1に示す加熱加圧装置10は、一定速度で駆動する一対のロール101と102との間に、クリアトナーが供給されている転写材Pを挟持して搬送し、搬送されてきた転写材を加熱加圧するものである。すなわち、転写材Pの全面に供給されたクリアトナーは、加熱加圧装置10による加熱により溶融し、かつ、溶融したクリアトナーは加圧により段差のないなだらかな表面のクリアトナー層を形成することができる。ここで、一対のロール101と102の一方または両方の中心に熱源を設けることにより、転写材全面に供給されたクリアトナーを溶融する様に加熱することができる。また、2つのロール101と102はロール間で溶融したクリアトナーを確実に加圧できる様、圧接している構造を採ることが好ましい。
図1の光沢付与装置1は、消費電力量や作業効率の観点から、たとえば、加熱加圧装置10を構成するロール101を加熱ロールとし、ロール102を加圧ロールとする構成とすることで十分な加熱と加圧が行える。ロール101と102の一方または両方の表面には、シリコーンゴム層あるいはフッ素ゴム層を配置することができ、加熱と加圧を行うニップ領域の幅をたとえば5mm〜30mmの範囲にすることが好ましい。
加熱ロール101は、たとえば、アルミニウム等の金属製の基体表面に、シリコーンゴム等からなる弾性体層を被覆してなり、所定の外径に形成されたものである。加熱ロール101の内部には、加熱源としてたとえば300〜350Wのハロゲンランプを配設しておき、当該加熱ロール101の表面温度が所定温度となる様に内部から加熱する。
加圧ロール102は、たとえば、アルミニウム等の金属製の基体表面に、シリコーンゴム等からなる弾性体層を被覆してなり、さらに、当該弾性体層表面にPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)製のチューブ等による離型層を被覆して、所定の外径に形成されたものである。加圧ロール102の内部にも、加熱源としてたとえば300〜350Wのハロゲンランプを配設することができ、当該加圧ロール102の表面温度が所定温度になる様に内部から加熱する。
加熱加圧装置10では、画像形成面全面にわたりクリアトナーが供給された転写材Pは、加熱ロール101と加圧ロール102との圧接部(ニップ部)に、クリアトナーが供された面が加熱ロール101側に配置する様に導入される。そして、加熱ロール101と加圧ロール102との圧接部を通過する間に、クリアトナーが加熱溶融すると同時に、画像面上に所定厚さのクリアトナー層として融着する。
次に、ベルト部材11について説明する。図1に示す様にベルト部材11は、加熱ロール101と、当該加熱ロール101を含む複数のロール101、103、104により回動可能に支持されている無端ベルト状の構成を有するものである。ベルト部材11は、前述した様に、加熱ロール101、剥離ロール103、従動ロール104からなる複数のロールにより回動可能に懸回張設され、図示しない駆動源により回転駆動する加熱ロール101により所定の移動速度駆動する様になっている。そして、加熱ロール101による駆動と剥離ロール103、従動ロール104によるテンションにより所定のプロセススピードによりシワなく回動駆動させることができる。
ベルト部材11は、溶融したクリアトナー面との間で接着面を形成し、溶融したクリアトナー面を介して転写材Pを搬送するものであるので、ある程度の耐熱性と機械的強度を有する公知の材質で作製することができる。具体的には、たとえば、ポリイミド、ポリエーテルポリイミド、PES(ポリエーテルサルフォン樹脂)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)等の耐熱性フィルム樹脂が挙げられる。そして、前記耐熱性フィルム樹脂の少なくともクリアトナー層当接面側にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA等のフッ素樹脂やシリコーンゴムの離型層を設けることが好ましい。
ベルト部材11の厚さは、溶融したクリアトナー面との接着面を介して転写材の搬送が行えるものであれば特に限定されるものではなく、公知の厚さのもので使用することができる。具体的には、耐熱性フィルム樹脂の厚さは20μm〜80μm、離型層の厚さは10μm〜30μmが好ましく、また、総厚は20μm〜110μmが好ましい。
次に、冷却ファン12と13について説明する。図1に示す光沢付与装置1は、前記ベルト部材11内面側の加熱ロール101と剥離ロール103との間に冷却ファン12、ベルト部材11の外面側の加圧ロール102と搬送ロール14の間に冷却ファン13を有する。ここで、ベルト部材11の外面は、溶融したクリアトナー面を介して転写材Pと接着し、接着面を形成した状態で転写材Pの担持搬送を行う面のことである。
図1の光沢付与装置1は、前述の加熱加圧装置10で溶融し、加圧により所定の厚さにしたクリアトナー層をベルト部材11の外面に接着させ、この状態で転写材Pを搬送させながら同時にクリアトナー層を冷却して固化させる。冷却ファン12、13は、クリアトナー層が形成された転写材Pをベルト部材11に担持搬送されている転写材Pを強制的に冷却する。光沢付与装置1は、冷却ファン12、13にそれぞれ連接させて冷却用のヒートシンクあるいはヒートパイプを配設させることができる。この様な冷却用のヒートシンクあるいはヒートパイプにより溶融状態にあるクリアトナー層の冷却と固化を促進させることができる。
上記冷却ファン12、13による強制冷却により、ベルト部材11に搬送中の転写材Pのクリアトナー層の固化が促進される。そして、クリアトナー層は搬送補助ロール14と剥離ロール103が配置されている端部付近に搬送される頃には十分に冷却、固化され、端部において転写材Pはベルト部材11より以下の様な手順で剥離される。
先ず、端部付近に搬送されてきた転写材Pは、クリアトナー層を介してベルト部材11に担持搬送されている状態におかれているが、この状態で搬送補助ロール14が転写材Pの裏面に接触することにより搬送を補助しながら保持する。搬送補助ロール14が転写材Pを裏面より保持している状態でベルト部材11が剥離ロール103の地点に到達すると、ベルト部材11は従動ロール104の方向(図の上方)に搬送方向を変更する。このとき、転写材Pは自身の剛性(腰)によりベルト部材11より剥離し、搬送ロール14により光沢付与装置1より排出される様になる。
以上の手順により、図1に示す光沢付与装置1は、画像が形成されている転写材全面にわたりクリアトナーを供給し、供給したクリアトナーを加熱、加圧することにより所定厚みを有する溶融状態のクリアトナー層を形成する。そして、溶融状態のクリアトナー層を形成した転写材Pをベルト部材に担持、搬送させながらクリアトナー層を冷却、固化させ、クリアトナー層が固化した後、転写材Pをベルト部材11より剥離させ、ベルト部材11より剥離された転写材Pは装置外に排出される。
なお、図1の光沢付与装置は、搬送補助ロール14と剥離ロール103により、転写材Pのベルト部材11からの剥離を実現しているが、剥離ロール103に代えて、たとえば剥離爪をベルト部材11と転写材Pの間に配置させても、転写材Pをベルト部材11より剥離することができる。
次に、図1の光沢付与装置に使用される転写材P上にトナー画像を形成する画像形成装置について説明する。トナー画像を形成する場合、少なくとも以下の工程を経ることによりトナー画像を形成することができる。すなわち、
(1)任意の波長を有する露光光を電子写真感光体上に照射することにより静電潜像を形成する静電潜像形成工程
(2)静電潜像が形成された電子写真感光体上に現像剤を供給して、電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像工程
(3)電子写真感光体上に形成されたトナー画像を用紙等の転写体上に転写する転写工程
(4)転写体上に転写されたトナー画像を定着する定着工程。
なお、上記4つの工程以外の他の工程を有するものであってもよい。たとえば、トナー画像を転写した後、静電潜像担持体表面に残留するトナーを除去するクリーニング工程を有するものが好ましい。また、転写工程では、静電潜像担持体より記録媒体上へのトナー画像の転写を中間転写体を介して行うものでもよい。
また、上記現像工程では直流バイアスに交流バイアスを重畳した現像バイアスを印加して静電潜像を現像することも可能である。
次に、トナー画像形成が行える装置の一例を説明する。図2は、二成分系現像剤によりフルカラー画像形成が行える画像形成装置の一例を示す概略図である。
図2において、21Y、21M、21C、21Bkは感光体、24Y、24M、24C、24Bkは現像装置(現像手段)、27Y、27M、27C、27Bkは1次転写手段としての1次転写ロール、29は2次転写手段としての2次転写ロール、25Y、25M、25C、25Bkはクリーニング装置、26は中間転写体体(中間転写ベルト)、40は給紙装置、50は定着装置を示す。
この画像形成装置2は、タンデム型カラー画像形成装置と呼ばれるもので、複数組の画像形成部20Y、20M、20C、20Bkと、転写部としての無端ベルト状の中間転写体26、記録部材Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送装置42及び定着装置50を有するものである。
また、画像形成装置2の上部には、画像読取部23が配置されている。原稿台上に載置された原稿は画像読取部23の原稿画像走査露光装置の光学系により画像が走査露光され、ラインイメージセンサに読み込まれる。ラインイメージセンサにより光電変換されたアナログ信号は、制御手段において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、露光部30S、30Y、30M、30C、30Bkに入力される。
本発明では、構成要素を総称する場合にはアルファベットの添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成要素を指す場合にはS(クリアトナー)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の添え字を付した参照符号で示す。
各感光体に形成される異なる色のトナー像の1つとしてイエロー色の画像を形成する画像形成部20Yは、第1の感光体としてのドラム状の感光体21Y、感光体21Yの周囲に配置された帯電手段22Y、露光手段30Y、現像手段24Y、1次転写手段としての1次転写ロール27Y、クリーニング手段25Yを有する。また、別の異なる色のトナー像の1つとしてマゼンタ色の画像を形成する画像形成部20Mは、第1の感光体としてのドラム状の感光体21M、感光体21Mの周囲に配置された帯電手段22M、露光手段30M、現像手段24M、1次転写手段としての1次転写ロール27M、クリーニング手段25Mを有する。また、別の異なる色のトナー像の1つとしてシアン色の画像を形成する画像形成部20Cは、第1の感光体としてのドラム状の感光体21C、感光体21Cの周囲に配置された帯電手段22C、露光手段30C、現像手段24C、1次転写手段としての1次転写ロール27C、クリーニング手段25Cを有する。
さらに、他の異なる色のトナー像の1つとして黒色の画像を形成する画像形成部20Bkは、第1の感光体としてのドラム状の感光体21Bk、該感光体21Bkの周囲に配置された帯電手段22Bk、露光手段30Bk、現像手段24Bk、1次転写手段としての1次転写ロール27Bk、クリーニング手段25Bkを有する。
無端ベルト状の形態を有する中間転写体26は、複数のロールにより巻回されて回動可能に支持されており、第2の像担持体として機能するものである。中間転写ベルト26は、その体積抵抗がたとえば106〜1012Ω・cmである。また、その材質は、たとえば、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)等の公知の樹脂材料より構成されるものである。また、中間転写ベルト26の厚みは50〜200μmが好ましい。
画像形成部20Y、20M、20C、20Bkより形成された各色の画像は1次転写ロール27Y、27M、27C、27Bkにより、回動する無端ベルト状の形態を有する中間転写体26上に逐次転写されてフルカラー画像が形成される。給紙カセット41内に収容された本発明でいう転写材に該当する用紙等の記録部材Pは、給紙搬送手段40により給紙され、複数の中間ロール43、44、45A、45B、レジストロール46を経て、2次転写手段としての2次転写ロール29に搬送され、記録部材P上にカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された記録部材Pは、熱ロール式の定着装置50により定着処理され、排紙ロール47に挟持されて機外の排紙トレイ90上に載置される。
一方、2次転写ロール29により記録部材Pにカラー画像を転写した後、記録部材Pを曲率分離した無端ベルト状の形状を有する中間転写体26は、クリーニング手段261により残留トナーが除去される。
画像形成処理中、1次転写ロール27Bkは常時、感光体21Bkに圧接している。他の1次転写ロール27Y、27M、27Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体21Y、21M、21Cに圧接する。
2次転写ロール29は、ここを記録部材Pが通過して2次転写が行われるときにのみ、無端ベルト状の形状を有する中間転写体26に圧接する。
この様に、感光体21Y、21M、21C、21Bk上に帯電、露光、現像を行ってトナー画像を形成し、無端ベルト状の形状を有する中間転写体26上で各色トナー画像を重ね合わせ、一括して記録部材Pに転写する。そして、定着装置50で加圧及び加熱処理することによりトナー画像を記録部材Pに固定して定着する。トナー画像を記録部材Pに転写した後の感光体21Y、21M、21C、21Bkは、クリーニング装置261により残留したトナーを除去した後、上記帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の画像形成を行う。
なお、非磁性一成分系現像剤を用いる画像形成方法は、たとえば、前述した二成分系現像剤用の現像装置24を公知の非磁性一成分系現像剤用の現像装置に交換した画像形成装置を用いることにより実現が可能である。
また、本発明に係る画像形成方法で実施可能な定着装置は、特に限定されるものではなく、公知の定着方式により対応が可能である。公知の定着方式としては、加熱ローラと加圧ローラからなるローラ定着方式、加熱ローラと加圧ベルトからなる定着方式、加熱ベルトと加圧ローラで構成される定着方式、加熱ベルトと加圧ベルトからなるベルト定着方式等が挙げられ、いずれの方式でもよい。また加熱方式としてはハロゲンランプによる方式、IH定着方式など、公知のいずれの加熱方式を採用することができる。
図2の画像形成装置2を使用する場合、トナー画像形成後、クリアトナーを供給して記録部材P上にクリアトナー層を形成する処理が必要になる。この場合、図3に示すシステムにより、トナー画像を形成した記録部材P上にクリアトナー層を形成することができる。図3に示すシステムは、図2の画像形成装置2と図1の光沢付与装置1の間に、トナー画像を形成した記録部材P上にクリアトナーを供給し現像を行うクリアトナー現像装置24Sを配置したものである。
図3では、最初に画像形成装置2でトナー画像を形成する。次にトナー画像が形成された記録部材Pをクリアトナー現像装置24Sに移す。クリアトナー現像装置24Sでは、記録部材Pのトナー画像が形成されている側全面にクリアトナーを供給して現像を行う。この様にして、記録部材P上にクリアトナー層を形成する。そして、クリアトナー現像装置24Sによりクリアトナー層を形成した記録部材Pを光沢付与装置1に移し、光沢付与装置1でクリアトナーを加熱、冷却することによりクリアトナーより構成される光沢面を形成する。
次に、本発明に係る画像形成方法が実施可能な画像形成装置の他の実施形態について図を用いて説明する。図4は、トナー画像形成とクリアトナー層形成を1台の装置で行える電子写真方式の画像形成装置の断面構成図である。
図4に示す画像形成装置2は、図2に示す画像形成装置と同様、「タンデム型カラー画像形成装置」とも呼ばれるものであり、前述したトナー画像形成部や中間転写ベルト、給紙装置、定着装置の他に、クリアトナー層形成部20Sを有するものである。すなわち、図4の画像形成装置2は前述したトナー画像形成を行う画像形成部20Y、20M、20C、20Bkに加えて、転写材全面にクリアトナーを供給するクリアトナー供給部20Sを有するものである。図4の画像形成装置2を構成するクリアトナー供給部20Sは、他の画像形成部20と同様に、像担持体であるドラム状の感光体21Sの周囲に配置された帯電極22S、露光部30S、現像装置24S及びクリーニング装置25Sを有する。
画像形成時、クリアトナー供給部20Sでは感光体21S上にクリアトナー層が形成され、画像形成部20Y、20M、20C、20Bkでは各感光体21Y、21M、21C、21Bk上にトナー画像が形成される。そして、形成されたクリアトナー層と各色トナー画像は、回転する中間転写ベルト26上に一次転写ローラ27(27S、27Y、27M、27C、27Bk)により順次転写され(一次転写)、中間転写ベルト26上にはクリアトナー層と合成されたトナー画像が形成される。中間転写ベルト26に画像を転写後、感光体21S、21Y、21M、21C、21Bkは各クリーニング装置25S、25Y、25M、25C、25Bkにより残留したトナーが除去される。
給紙装置40の用紙収納部(トレイ)41内に収容された転写材Pは、図2の画像形成装置と同様、第1給紙部42により給紙され、給紙ローラ43、44、45A、45B、レジストローラ(第2給紙部)46等を経て、2次転写ローラ29に搬送され、転写材P上にクリアトナー層とトナー画像が転写される(二次転写)。
クリアトナー層とトナー画像が転写された転写材Pは、定着装置50において、転写材Pは挟持され、加熱、加圧の作用でトナー画像とクリアトナー層を溶融、硬化させる。この様にして、転写材P上にトナー画像が形成され、かつ、転写材P全面にクリアトナー層が形成された画像を転写材P上に固定させる。転写材Pは、搬送ローラ対に挟持されて搬送され、排紙搬送路に設けられた排紙ローラ47から排出され、装置外の排紙トレイ90上に載置される。
一方、二次転写ローラ29により転写材P上にクリアトナー層とフルカラートナー画像を転写した後、さらに、転写材Pを曲率分離した中間転写ベルト26は、中間転写ベルト用のクリーニング装置261により残留したトナーが除去される。
なお、転写材Pの両面にクリアトナー層を有するフルカラー画像を形成する場合は、転写材Pの第1面に形成したクリアトナー層とフルカラー画像を溶融、固化処理した後、転写材Pを分岐板49により排紙搬送路から分岐させ、両面搬送路48に導入して表裏反転してから再び給紙ローラ45Bから搬送される。転写材Pはクリアトナー供給部20S、各色の画像形成部20Y、20M、20C、20Bkにより第2面上にもクリアトナー層と各色よりなるフルカラートナー画像を形成し、定着装置1により加熱加圧処理されて排紙ローラ47により装置外に排出される。この様にして、転写材P両面にクリアトナー層により光沢付与されたフルカラートナー画像を形成することができる。
以上の様に、図4に示す画像形成装置により転写材P全面に光沢面を有する画像を形成することができる。なお、本発明では、図5と図6に示す様に、図4の画像形成装置2に光沢付与装置1を配置して画像形成装置と光沢付与装置を一体化することができる。ここで、図5と図6は図2に示す画像形成装置2に光沢付与装置1を取り付けた装置の一例を示す模式図である。図5は、図4の画像形成装置2の排紙部90の個所に光沢付与装置1を配置したもので、図4の画像形成装置2に内蔵された定着装置50で定着処理したプリント物Pを光沢付与装置1で、転写材全面に形成したクリアトナー層を再度加熱し、冷却するものである。図4の構成により、クリアトナー層は写像性を有する平滑で強固な光沢面をより確実に形成することができる。また、トナー画像の定着強度も向上するので、特に屋外掲示用のポスター等の作製に好ましいものである。
また、図6は、図2に示す画像形成装置2の定着装置50の個所に光沢付与装置1を配置させたもので、二次転写ローラ29により転写材P上に転写されたクリアトナー層とフルカラートナー画像とを光沢付与装置1により同時に定着することができる。図6の装置によれば、光沢付与装置1が画像形成装置2に内蔵される形態をとることができるので、装置のコンパクト化を実現する上で好ましい。
本発明に係る画像形成方法により、光沢度の高い画像を形成することが可能な転写材としては、トナー画像を形成することが可能であるとともに、クリアトナー層の保持が可能なものであれば特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。具体的には、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙、あるいは、コート紙等の塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、下記文中に「部」と記載されている個所があるが「質量部」を表すものである。
1.「クリアトナー1〜3」の作製
(1)「クリアトナー1」の作製
(a)「樹脂粒子1」の作製
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器にアニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:SDS)7.08質量部をイオン交換水2760質量部に溶解させて界面活性剤水溶液を調製した。前記界面活性剤水溶液を窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、温度を80℃に昇温させた。
一方、下記化合物
スチレン 135質量部
n−ブチルアクリレート 70質量部
イタコン酸 45質量部
を混合し、80℃に加温して溶解させることにより、単量体混合溶液を作製した。
次に、循環経路を有する機械式分散装置を用いながら、上記80℃に加温した界面活性剤水溶液と単量体混合溶液を混合、分散させ、均一な分散粒子径を有する乳化粒子分散液を作製した。次に、過硫酸カリウム(KPS)0.84質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、80℃にて3時間加熱、撹拌することにより重合反応を行った後、40℃まで冷却して「樹脂粒子分散液1」を作製した。
(b)「樹脂粒子2」の作製
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器にアニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:SDS)7.08質量部をイオン交換水2760質量部に溶解させて界面活性剤水溶液を調製した。前記界面活性剤水溶液を窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、温度を80℃に昇温させた。
一方、下記化合物
スチレン 140質量部
n−ブチルアクリレート 40質量部
メタクリル酸 20質量部
パラフィンワックス「HNP−57」(日本精蝋社製) 65質量部
を混合し、80℃に加温して溶解させることにより、単量体混合溶液を作製した。
次に、循環経路を有する機械式分散装置を用いながら、上記80℃に加温した界面活性剤水溶液と単量体混合溶液を混合、分散させ、均一な分散粒子径を有する乳化粒子分散液を作製した。
次いで、過硫酸カリウム(KPS)0.84質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、80℃にて3時間加熱、撹拌することにより重合反応を行った後、40℃まで冷却して「樹脂粒子分散液」を作製した。
さらに、過硫酸カリウム(KPS)8質量部と2−クロロエタノール10質量部をイオン交換水240質量部に溶解させた溶液を前記「樹脂粒子分散液」中に添加した。15分後、80℃で下記化合物からなる混合液を前記「樹脂粒子分散液」に120分かけて滴下した。すなわち、
スチレン 340質量部
n−ブチルアクリレート 110質量部
メタクリル酸 50質量部
滴下終了後60分間加熱、撹拌することにより重合反応を行った後、40℃まで冷却して「樹脂粒子分散液2」を作製した。
(c)「クリアトナー母体粒子1」の作製
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
「樹脂粒子1」 120質量部(固形分換算)
「樹脂粒子2」 880質量部(固形分換算)
イオン交換水 1600質量部
を投入、撹拌した。反応容器内の温度を30℃に調整後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを10に調整した。
次いで、塩化マグネシウム・6水和物35質量部をイオン交換水35質量部に溶解した水溶液を撹拌の下で30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置後に昇温を開始し、この系を60分間かけて90℃まで昇温させ、90℃に保持させたまま上記粒子の凝集、融着を継続した。この状態で「マルチサイザー3(ベックマンコールター社製)」を用いて凝集、融着により得られた粒子の粒径測定を行い、粒子の体積基準メディアン径が5.5μmになったときに、塩化ナトリウム150質量部をイオン交換水600質量部に溶解させた水溶液を添加して粒子の凝集を停止させた。
凝集停止後、熟成処理として液温を98℃にして加熱撹拌を行いながら「FPIA2100(シスメックス社製)」を用いて凝集粒子の平均円形度が0.965になるまで、「樹脂粒子1」を凝集粒子表面側へ、「樹脂粒子2」を凝集粒子内部に配向させる様に融着を進行させて「クリアトナー母体粒子1」を形成させた。
その後、液温を30℃まで冷却し、塩酸を使用して液中をpH2に調整して撹拌を停止した。
上記工程を経て作製した「クリアトナー母体粒子分散液1」をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40(松本機械(株)製)」で固液分離し、「クリアトナー母体粒子1」のウェットケーキを形成した。
このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機でろ液の電気伝導度が5μS/cmになるまで45℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤ(セイシン企業(株)製)」に移し、水分量が0.5質量%になるまで乾燥処理を行うことにより「クリアトナー母体粒子1」を作製した。
(d)外添処理
作製した「クリアトナー母体粒子1」に下記外添剤を添加して、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)にて外添処理を行うことにより「クリアトナー1」を作製した。
ヘキサメチルシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm)
1.0質量部
n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径20nm)
0.3質量部
なお、ヘンシェルミキサによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。
作製した「クリアトナー1」の130℃における粘性率ηは5.4×102、60℃における貯蔵弾性率G′は1.2×108であった。
(2)「クリアトナー2」の作製
前記「クリアトナー1」の作製において、「樹脂粒子1」と「樹脂粒子2」を凝集する際に、2つの樹脂粒子の比率を
「樹脂粒子1」 170質量部(固形分換算)
「樹脂粒子2」 830質量部(固形分換算)
に変更した他は「クリアトナー1」の作製と同じ手順で「クリアトナー2」を作製した。作製した「クリアトナー2」の130℃における粘性率ηcは1.0×103、60℃における貯蔵弾性率G′cは1.0×109であった。
(3)「クリアトナー3」の作製
前記「クリアトナー1」の作製において、「樹脂粒子1」と「樹脂粒子2」を凝集する際に、2つの樹脂粒子の比率を
「樹脂粒子1」 70質量部(固形分換算)
「樹脂粒子2」 930質量部(固形分換算)
に変更した他は「クリアトナー1」の作製と同じ手順で「クリアトナー2」を作製した。作製した「クリアトナー2」の130℃における粘性率ηcは1.0×102、60℃における貯蔵弾性率G′cは1.0×107であった。
以上の手順で作製した「クリアトナー1〜3」の130℃における粘性率ηcと貯蔵弾性率G′cの値を表1に示す。
2.「トナー1〜9」の作製
(1)「トナー1」の作製
(a)「シアン着色剤粒子分散液」の調製
n−ドデシル硫酸ナトリウム10質量部をイオン交換水160質量部に投入して撹拌溶解することにより界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液に、
C.I.ピグメントブルー15:3 25質量部
を徐々に添加し、次いで、「クレアミックスWモーションCLM−0.8(エムテクニック社製)」を用いて分散処理を行い、「シアン着色剤粒子分散液」を調製した。
(b)「トナー1」の作製
以下に示す様に、前記「クリアトナー1」の作製で用いた「樹脂粒子1」と「樹脂粒子2」に上記「シアン着色剤粒子分散液」を用いて「トナー1」を作製した。すなわち、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
「樹脂粒子1」 120質量部(固形分換算)
「樹脂粒子2」 360質量部(固形分換算)
イオン交換水 1600質量部
「シアン着色剤粒子分散液」 6質量部(固形分換算)
を投入、撹拌した。以下、「クリアトナー1」の作製と同じ手順で処理を行うことにより「トナー1」を作製した。作製した「トナー1」の130℃における粘性率ηtは5.8×102、60℃における貯蔵弾性率G′は1.4×108であった。
(2)「トナー2」の作製
前記「トナー1」の作製で使用した「樹脂粒子1」を作製する際に重合性単量体の添加量を以下の様に変更した他は同じ手順で「トナー2」を作製した。すなわち、
スチレン 125質量部
n−ブチルアクリレート 70質量部
イタコン酸 55質量部
作製した「トナー2」の130℃における粘性率ηtは7.7×102、60℃における貯蔵弾性率G′は1.7×108であった。
(3)「トナー3」の作製
前記「トナー1」の作製で使用した「樹脂粒子1」を作製する際に重合性単量体の添加量を以下の様に変更した他は同じ手順で「トナー3」を作製した。すなわち、
スチレン 145質量部
n−ブチルアクリレート 70質量部
イタコン酸 35質量部
作製した「トナー2」の130℃における粘性率ηtは4.1×102、60℃における貯蔵弾性率G′は9.1×107であった。
(4)「トナー4」の作製
前記「トナー1」の作製で使用した「樹脂粒子1」を作製する際に重合性単量体の添加量を以下の様に変更した他は同じ手順で「トナー4」を作製した。すなわち、
スチレン 115質量部
n−ブチルアクリレート 70質量部
イタコン酸 65質量部
作製した「トナー2」の130℃における粘性率ηtは9.0×102、60℃における貯蔵弾性率G′は2.0×108であった。
(5)「トナー5」の作製
前記「トナー1」の作製で使用した「樹脂粒子1」を作製する際に重合性単量体の添加量を以下の様に変更した他は同じ手順で「トナー5」を作製した。すなわち、
スチレン 145質量部
n−ブチルアクリレート 70質量部
イタコン酸 35質量部
作製した「トナー2」の130℃における粘性率ηtは3.8×102、60℃における貯蔵弾性率G′は8.5×107であった。
(6)「トナー6」の作製
前記「クリアトナー2」の作製で使用した「樹脂粒子1」を作製する際に、重合性単量体の添加量を「トナー2」のときと同じにした他は同じ手順で「トナー6」を作製した。
作製した「トナー6」の130℃における粘性率ηtは1.3×103、60℃における貯蔵弾性率G′は1.4×109であった。
(7)「トナー7」の作製
前記「クリアトナー2」の作製で使用した「樹脂粒子1」を作製する際に、重合性単量体の添加量を「トナー3」のときと同じにした他は同じ手順で「トナー7」を作製した。
作製した「トナー7」の130℃における粘性率ηtは8.1×102、60℃における貯蔵弾性率G′は7.4×108であった。
(8)「トナー8」の作製
前記「クリアトナー3」の作製で使用した「樹脂粒子1」を作製する際に、重合性単量体の添加量を「トナー2」のときと同じにした他は同じ手順で「トナー8」を作製した。
作製した「トナー8」の130℃における粘性率ηtは1.4×102、60℃における貯蔵弾性率G′は1.2×107であった。
(9)「トナー9」の作製
前記「クリアトナー3」の作製で使用した「樹脂粒子1」を作製する際に、重合性単量体の添加量を「トナー3」のときと同じにした他は同じ手順で「トナー9」を作製した。
作製した「トナー9」の130℃における粘性率ηtは7.8×101、60℃における貯蔵弾性率G′は8.3×106であった。
以上の手順で作製した「トナー1〜9」の130℃における粘性率ηtと60℃における貯蔵弾性率G′tの値を表1に示す。
3.評価実験
(1)「クリアトナー現像剤1〜3」及び「現像剤1〜9」の調製
前記「クリアトナー1〜3」、「トナー1〜9」に対して、メチルメタクリレート樹脂を被覆してなる体積平均粒径40μmのフェライトキャリアを、トナー濃度が6質量%になる様に混合した。上記手順により2成分現像剤の形態をとる「クリアトナー現像剤1〜3」及び「現像剤1〜9」を調製した。
(2)評価条件
前記「クリアトナー現像剤1〜3」と前記「現像剤1〜9」とを後述する表3に示す様に組み合わせてプリント作製を行い、形成されたプリント物の写像性を評価した。ここで、「クリアトナー現像剤1〜3」は図1に示す構成の光沢付与装置1に搭載し、「現像剤1〜9」は図2に示す画像形成装置の構成を有する市販のデジタルプリンタ「bizhubC353(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)」に搭載した。また、プリント物を出力する転写材として、市販の「OKトップコート+(坪量157g/m2、紙厚131μm)(王子製紙(株)製)」を使用した。
評価は、「クリアトナー」と「トナー」を表3に示す様に組み合わせ、各々について3万枚の連続プリントを行い、プリント開始時、2万枚目、3万枚目に作製されたプリント物のクリアトナー層表面における光沢度を写像性により評価した。また、クリアトナー層の剥離に起因するとみられる画像汚染の発生状況の評価も行った。
ここで、本発明の構成を満たす組み合わせのものを「実施例1〜7」、本発明の構成から外れる組み合わせのものを「比較例1〜3」とした。「実施例1〜7」、「比較例1〜3」で使用した「クリアトナー」と「トナー」の内容とクリアトナー及びトナーの130℃における粘性率ηc、ηtと比率ηc/ηt、及び、貯蔵弾性率G′c、G′tと比率G′c/G′tを表3に示す。
また、図1の光沢付与装置1は、下記仕様に設定した。すなわち、
(a)クリアトナーの現像量:4g/m2
(b)ベルト部材材質:ポリイミドフィルム(厚さ50μm)上にPFA層(厚さ10μm)を配置したもの
(c)ベルト部材表面粗さ(初期表面粗さ):Ra 0.4μm
(d)加熱、加圧ロールの仕様
・加熱ロール:外径100mm、厚さ10mmのアルミニウム製基体
・加圧ロール:外径80mm、厚さ10mmのアルミニウム製基体上に厚さ3mmのシリコーンゴム層を配置したもの
・加熱ロール及び加圧ロールの内部にハロゲンランプを各々配置したものでロール表面温度は加熱ロールは155℃、加圧ロールは115℃に設定(サーミスタにより温度制御)
・加熱ロールと加圧ロールのニップ幅:11mm
(e)剥離ロール位置での転写材温度:50±5℃になるように設定
(f)加熱、加圧ロールニップ部より剥離ロール位置までの距離:620mm
(g)転写材搬送速度:220mm/秒
(h)転写材搬送方向:A3サイズの上記転写材を縦方向に搬送させる
(i)評価環境:常温常湿環境(温度20℃、相対湿度50%RH)
(3)評価項目
連続プリントにより作製したプリント物のクリアトナー層表面における光沢度を写像性により評価するとともに、クリアトナー層の剥離に起因するとみられる画像汚染の発生状況を画質と光沢付与装置の汚染状況から評価した。
〈写像性の評価〉
以下の手順で、「写像性」の評価を行った。「写像性」とは、前述した様に、光沢度の評価方法の1つで、光の加減によりクリアトナー層表面に像が映し出されたときに、映し出された像がどの程度鮮明、かつ、歪みなく映し出されているかを、定量的に評価するものである。具体的には、TM式写像性測定装置と呼ばれる測定装置により写像性C値と呼ばれる百分率で規定する数値により評価を行うもので、写像性C値が大きくなるほど優れた光沢度を有するものである。TM式写像性測定装置は、図8に示す原理に基づいて写像性C値を測定するものである。
本評価では、前記画像形成装置により転写材上に形成された画像上に、図1に示す光沢付与装置により形成されたクリアトナー層表面に映し出される幅2mmの光学くし画像について、写像性C値を算出して評価を行った。具体的には、市販のTM式写像性測定装置「ICM−1T(スガ試験機(株)製)」を使用し、測定角度45°、幅が2mmの光学くしで45度写像性C値を測定、算出し、下記基準により評価を行った。上記TM式写像性測定装置による測定は、測定孔20mm、電源容量が単相100V、2Aで行い、当該測定装置管理用の基準板である黒板ガラス「OPTIC STANDARDS(反射測定45°/60°)(スガ試験機(株)製)」により校正した。
45度写像性C値は40以上のものを合格とし、特に、70以上のものは優れているもの、60以上70未満は良好なものと評価した。
〈画像汚染の評価〉
2万枚目と3万枚目のプリント物を出力後、白紙(A4)を出力し、倍率5倍のルーペを用いて当該白紙上に存在する粒状汚染の発生個数を数えて評価した。評価は下記基準に基づいて行い、前記汚染が20個未満である◎〜△の範囲にあるものを合格とした。
◎:全くなし
○:1個〜3個
△:4個〜19個
×:20個以上
以上の結果を表4に示す。
表4に示す様に、本発明の構成を満たす様にクリアトナーとトナーとを組み合わせてなる「実施例1〜7」は、いずれも3万枚の連続プリント実施の間、形成されるプリント物の写像性に変動がなく、光沢度の高いプリント物を安定して作製できるものであった。一方、本発明の構成から外れる構成となるクリアトナーとトナーを組み合わせた「比較例1〜3」は、連続プリント実施の間に形成されるプリント物の写像性が変動し、光沢度の高いプリント物を安定して作製できないことが確認された。
さらに、本発明者は上記「トナー1」の作製で使用したシアン着色剤粒子分散液中のC.I.ピグメントブルー15:3に変えて、C.I.ピグメントイエロー74を用いてイエロー着色剤粒子分散液を作製し、これを用いてイエロートナーを作製した。また、C.I.ピグメントレッド122を用いてマゼンタ着色剤粒子分散液を作製し、これを用いてマゼンタトナーを作製した。さらに、カーボンブラック「モーガルL(キャボット社製)」を用いて黒色着色剤粒子分散液を作製し、これを用いて黒色トナーを作製した。
これらイエロートナー、マゼンタトナー、黒色トナー、「実施例1〜7」で使用したシアントナーとクリアトナーとをそれぞれ組み合わせてプリント作製を行うことにより、均一な光沢度を有するフルカラー写真画像からなるプリント物を作製した。当該プリント物を6ヶ月間屋外に掲示して耐久性を評価したところ、クリアトナー層が剥離せず、トナー画像とクリアトナー層との間に強固な接着性を有するプリント物が得られることを確認できた。