以下、本発明をサイドエアバッグ装置に具体化した一実施形態について、図1〜図16を参照して説明する。なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を前方として説明する。
図1〜図3の少なくとも1つに示すように、車両においてボディサイド部11の車内側の近傍には車両用シート12が配置されている。ここで、ボディサイド部11とは、車両の側部に配置された部材を指す。例えば、前席に対応するボディサイド部11は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。また、後席に対応するボディサイド部11は、サイドドア(リアドア)の後部、リヤピラー(Cピラー)、タイヤハウスの前部、リアクォータ等である。
車両用シート12は、シートクッション(座部)13と、そのシートクッション13の後側から起立し、かつ傾き調整機構(図示略)を有するシートバック(背もたれ部)14とを備えて構成されている。シートバック14の車外側の側部には収納部15が設けられており、サイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールAMがこの収納部15に収納されている。収納部15の位置は、車両用シート12に着座した乗員Pの斜め後方近傍となる。エアバッグモジュールAMは、ガス供給源としてのインフレータアセンブリ20(図5参照)と、そのインフレータアセンブリ20から供給される膨張用ガスGによって膨張するエアバッグ30とを主要な構成部材として備えている。
次に、これらの構成部材の各々について説明する。ここで、本実施形態では、エアバッグモジュールAM及びその構成部材について「上下方向」、「前後方向」というときは、車両用シート12のシートバック14を基準としている。シートバック14の起立する方向を「上下方向」とし、シートバック14の厚み方向を「前後方向」としている。通常、シートバック14は後方へ多少傾斜した状態で使用されることから、「上下方向」は厳密には鉛直方向ではなく、多少傾斜している。同様に、「前後方向」は厳密には水平方向ではなく、多少傾斜している。
<インフレータアセンブリ20>
図4は、エアバッグ30が膨張用ガスGを充填させることなく平面状に展開させられた状態(「平面展開状態」)のエアバッグモジュールAMを、乗員Pとともに模式的に示している。また、図5は、図4のエアバッグ30内に配置されたインフレータアセンブリ20を示している。さらに、図6は、図5のインフレータアセンブリ20を斜め後ろ上方から見た状態を示している。これらの図4〜図6の少なくとも1つに示すように、インフレータアセンブリ20は、インフレータ21と、そのインフレータ21を外側から覆うリテーナ22とを備えて構成されている。インフレータ21は略上下方向に細長い略円柱状をなしており、その内部には、外部からの作動信号に応じて反応して膨張用ガスGを生ずるガス発生剤(図示略)が収容されている。
インフレータ21の上部には、同インフレータ21への作動信号の印加配線となるハーネス(図示略)が接続されている。また、インフレータ21の下端部側には、略円柱状をなし、かつ他の箇所よりも小径のガス噴出部23が設けられている。このガス噴出部23の外周面には、上記ガス発生剤が発生した膨張用ガスGをインフレータ21の軸線Lに直交する方向(径方向)へ噴出する複数のガス噴出孔24が設けられている。
なお、インフレータ21としては、上記ガス発生剤を用いたタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスGを噴出させるタイプが用いられてもよい。
一方、リテーナ22は、ディフューザとして機能するとともに、上記インフレータ21をエアバッグ30と一緒にシートバック14内のシートフレーム16(図6参照)に固定する機能を有する部材である。リテーナ22の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって、略上下方向に細長い略円筒状に形成されている。リテーナ22の少なくとも下端側は開放端22Aとなっており(図5参照)、ガス噴出部23から噴出される膨張用ガスGの少なくとも一部の略下方への通過を許容する。なお、図5では、上記開放端22Aを図示するためにリテーナ22の下端部の一部が破断されて図示されている。
リテーナ22において開放端22Aよりも上側、かつインフレータ21のガス噴出部23の近傍には窓部25が設けられている。この窓部25は、ガス噴出部23から噴出される膨張用ガスGの少なくとも一部の略前方への通過を許容する。
リテーナ22には、これを上記シートフレーム16に取付けるための係止部材として、複数本(本実施形態では2本)のボルト26が固定されている。表現を変えると、ボルト26が、リテーナ22を介してインフレータ21に間接的に固定されている。これらのボルト26は、インフレータ21の軸線Lに直交する方向へ向けて延びている。
なお、インフレータアセンブリ20は、インフレータ21とリテーナ22とが一体になったものであってもよい。
<エアバッグ30>
図1〜図3の少なくとも1つに示すように、エアバッグ30は、車両の走行中等に側突等により衝撃が外側方(図2では下方、図3では左方)からボディサイド部11に加わったときに、上記インフレータ21からの膨張用ガスG(図5及び図6参照)により膨張展開する。そして、エアバッグ30は、その一部を収納部15内に残した状態で同収納部15から車両の略前方へ向けて飛び出し、車両用シート12及びボディサイド部11間の隙間G1で膨張展開することにより乗員Pを拘束して上記衝撃から保護するためのものである。
図4及び図7の少なくとも一方に示すように、エアバッグ30は、1枚の布帛からなるパネル布(基布とも呼ばれる)31を用いて形成されている。パネル布31としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸やポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。
図7及び図8の少なくとも一方に示すように、パネル布31は、その中央部分に設定された折り線32に沿って二つ折りされることによって車幅方向に重ね合わされている。この二つ折りされたエアバッグ30は、上記折り線32が自身の後縁部30Rに位置するように配置される。ここで、パネル布31の上記の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置するものを布帛部33といい、車外側に位置するものを布帛部34というものとする。パネル布31においては、両布帛部33,34の外形形状が、折り線32を対称軸として互いに線対称の関係にある。各布帛部33,34の形状・大きさは、エアバッグ30が車両用シート12及びボディサイド部11間で膨張展開したときに、車両用シート12に着座している乗員Pの外側方近傍で、腰部PPから胸部PT及び肩部PSに対応する広い領域を占有し得るように設定されている。なお、エアバッグ30は、2枚のパネル布を用いて形成されてもよい。
パネル布31の中央部近傍には、両布帛部33,34の強度を補う(膨張用ガスGの熱等に対する強度を高める)ための補強布35が、上記折り線32を含め両布帛部33,34に跨った状態で配置されている。補強布35は1枚の布帛を用いて形成されており、上記パネル布31の車内側の布帛部33上に位置する布帛部36と、同パネル布31の車外側の布帛部34上に位置する布帛部37とを備えている。なお、補強布35は、2枚の布帛を用いて形成されてもよい。
補強布35の車内側の布帛部36は、内結合部38によりパネル布31の車内側の布帛部33に結合されている。同様に、補強布35の車外側の布帛部37は、内結合部39によりパネル布31の車外側の布帛部34に結合されている。エアバッグ30及び補強布35が展開された状態では、両内結合部38,39は、全体として略U字状をなしている。車内側の内結合部38の下端部は、略前後方向に延びる直線状をなしていて、特許請求の範囲における第1流出側結合部41を構成している。また、車外側の内結合部39の下端部は、略前後方向に延びる直線状をなしていて、特許請求の範囲における第2流出側結合部42を構成している。第1流出側結合部41及び第2流出側結合部42がそれぞれ延びる方向は、後述する連通路50における膨張用ガスGの流通方向(図7及び図8の上下方向)に略直交する方向である。車内側の内結合部38は、両布帛部33,36を縫糸で縫合することによって形成され、車外側の内結合部39は、両布帛部34,37を縫糸で縫合することによって形成されている。
この縫製に関し、図4,図7,図8,図9,図12〜図16、さらには別例を示す図17、図19、図21及び図22では、2つの線種で縫製部分を表現している。一方の線種は、一定長さの太線を断続的に並べて表現した線(破線の一種)であり、これは、縫合の対象となる布の外側(布間ではない)における縫糸の状態を示している。他方の線種は、点を一定間隔おきに並べて表現した線(破線の一種)であり、これは、縫合の対象となる布の内側(布間)における縫糸の状態を示している。すなわち、縫製が後者の態様で表現されている図は、縫製部分を通る断面に沿った断面構造を示している。
なお、内結合部38,39は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。この点は、後述する各種結合部、具体的には、周縁結合部43、区画結合部44、内結合部38,39、流出側結合部41,42、壁部結合部63、一側縁結合部67及び補助結合部69についても同様であり、さらには難撓部65についても同様である。
図4及び図7の少なくとも一方に示すように、車内側の布帛部33,36と車外側の布帛部34,37とは、主として、それらの周縁部(後縁部を除く)に設けられた周縁結合部43により一体に結合されている。車内側の布帛部33,36と車外側の布帛部34,37との間であって、周縁結合部43によって囲まれた空間は、膨張用ガスGによって膨張する箇所である。
パネル布31の両布帛部33,34と、補強布35の両布帛部36,37とは、上記周縁結合部43の一部である区画結合部44によって一体に結合されている。この区画結合部44によって、エアバッグ30が、比較的容量の小さい下側の膨張部と、その膨張部の上側に位置し、かつ同膨張部よりも容量の大きな上側の膨張部とに区画されている。区画結合部44は、互いに上下方向に離間した状態で布帛部33,34,36,37の前端から後方へ向けて延びる一対の延出部45と、両延出部45の後端を接続する接続部46とを備えている。接続部46は、後方へ向けて突出する突出部47を有している。さらに、車内側の布帛部33,36と車外側の布帛部34,37とは、上述した周縁結合部43の後部の一部(符号43Aにて示される箇所)によっても一体に結合されている。
上記区画結合部44よりも下側の膨張部は、乗員Pの主として腰部PPの外側方近傍において、比較的高い内圧で膨張展開して同腰部PPを拘束及び保護する「下膨張部EL」を構成している。また、区画結合部44よりも上側の膨張部は、乗員Pの主として胸部PT(より正確には腹部PBから肩部PSにかけての部位)の外側方近傍において、上記下膨張部ELよりも低い内圧で膨張展開して、胸部PT等を保護する「上膨張部EU」を構成している。下膨張部ELは特許請求の範囲における「ガス流入膨張部」に該当し、上膨張部EUは「ガス流出膨張部」に該当する。
上記接続部46は、エアバッグ30の後縁部30Rから前方へ若干離れた箇所に位置している。エアバッグ30内において、より正確には、車内側の布帛部33,36の後部と、車外側の布帛部34,37の後部とによって挟まれ、かつ後縁部30Rと接続部46との間の空間は、下膨張部ELと上膨張部EUとを連通させて、膨張用ガスGの流路となる連通路50を構成している。これらの車内側の布帛部33,36の後部のうち連通路50の車内側の壁部を構成する部分を第1連通壁部51という。また、車外側の布帛部34,37のうち連通路50の車外側の壁部を構成する部分を第2連通壁部52というものとする(図8、図11参照)。これらの第1連通壁部51及び第2連通壁部52は、エアバッグ30の非膨張時には互いに扁平な状態で重なり合う。
図9に示すように、連通路50において、エアバッグ30の後縁部30Rと接続部46との間隔は、突出部47の先端47Tにおいて最も狭くなっている。
上記区画結合部44を含む周縁結合部43は、車内側の布帛部33,36と車外側の布帛部34,37とを縫糸で縫合することによって形成されている。
車内側の布帛部33,36と車外側の布帛部34,37とにおいて区画結合部44(上下両延出部45及び接続部46)によって囲まれた部分は、膨張用ガスGによる膨張が起こらない非膨張部48となっている。
<エアバッグ30等に対するインフレータアセンブリ20の取付け態様>
上記インフレータアセンブリ20は、図4に示すように、前側ほど低くなるように傾斜させられた姿勢で、エアバッグ30内における上記連通路50の近傍に配設されている。ここでは、インフレータアセンブリ20は、その下端部が接続部46の後方近傍に位置するように配置されている。この配置により、インフレータアセンブリ20の大部分が、同接続部46よりも上方側に位置している。
リテーナ22に固定された上記両ボルト26は、車内側の布帛部33,36の後端部に挿通されている(図5及び図6参照)。また、エアバッグ30は、上記周縁結合部43A(図4参照)の近傍で、同エアバッグ30の外側に装着された環状の締結具(図示略)によって、インフレータアセンブリ20の上端部に気密状態で締結されている。
さらに、本実施形態では、図9〜図11の少なくとも1つに示すように、下膨張部ELから上膨張部EUへの膨張用ガスGの流入を規制する逆止弁60が、上記連通路50に設けられている。次に、この逆止弁60について説明する。
<逆止弁60>
逆止弁60は、1枚の布帛58を用いて形成されている。布帛58は、上記パネル布31の折り線32を含め、同パネル布31及び補強布35の布帛部33,34,36,37に跨った状態で配置されている。布帛58は、自身の中央部分に設定された折り線59をパネル布31の折り線32に合致させた状態で、同パネル布31及び補強布35とともに折り線32,59に沿って二つ折りされることによって車幅方向に扁平な状態で重ね合わされている。ここで、布帛58の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置するものを第1弁体部61といい、車外側に位置するものを第2弁体部62というものとする。
両弁体部61,62の補強布35及びエアバッグ30との結合のために、上述した内結合部38,39の一部と、区画結合部44の一部とが利用されている。第1弁体部61の補強布35及びエアバッグ30との結合のために利用される内結合部38の上記一部は、同内結合部38の下端部であって、上述したように、連通路50における膨張用ガスGの流通方向に略直交する方向(前後方向)へ延びる第1流出側結合部41である。同様に、第2弁体部62の補強布35及びエアバッグ30との結合のために利用される内結合部39の上記一部は、同内結合部39の下端部であって、連通路50における膨張用ガスGの流通方向に略直交する方向(前後方向)へ延びる第2流出側結合部42である。
第1弁体部61の上膨張部EU側の端部である上端部は、車内側の第1流出側結合部41によって、第1連通壁部51に結合されている。同様に、第2弁体部62の上膨張部EU側の端部である上端部は、車外側の第2流出側結合部42によって、第2連通壁部52に結合されている。この場合、車内側の上記第1流出側結合部41は、逆止弁60の第1弁体部61と補強布35の布帛部36とを、パネル布31の布帛部33に縫合(共縫い)することによって形成されていることとなる。また、車外側の上記第2流出側結合部42は、逆止弁60の第2弁体部62と補強布35の布帛部37とを、パネル布31の布帛部34に縫合(共縫い)することによって形成されていることとなる。逆止弁60においては、車内側の第1弁体部61の上端部と車外側の第2弁体部62の上端部とは相互に結合されていない。
また、両弁体部61,62の補強布35及びエアバッグ30との一体結合のために利用される区画結合部44の上記一部は、主として接続部46である。この接続部46は、一側縁結合部67及び壁部結合部63も兼ねている。一側縁結合部67は、両弁体部61,62の各々について、流出側結合部41,42の延出方向の一側部(前側部)を、少なくとも対応する連通壁部51,52に結合するものである。また、壁部結合部63は、一側縁結合部67上又はその近傍において、少なくとも両連通壁部51,52を相互に結合するものである。これらの一側縁結合部67及び壁部結合部63のいずれとしても機能させるために、接続部46は、両弁体部61,62を、エアバッグ30及び補強布35の両連通壁部51,52に対し一体に結合している。この場合、区画結合部44は、エアバッグ30、補強布35及び逆止弁60を縫合(共縫い)することによって形成されていることとなる。
両弁体部61,62の各々について、両流出側結合部41,42に対し、下膨張部EL側の近傍となる箇所は、柔らかく膨張用ガスGの圧力によって流出側膨張部(上膨張部EU)側へ容易に撓むことのできる可撓部64とされている。この箇所は、両流出側結合部41,42と、そこから下方へ長さL1離れた箇所との間の領域(図9において一点鎖線で囲まれた領域)である。
両弁体部61,62について、両流出側結合部41,42の延出方向の他側部である後側部は、連通路50における膨張用ガスGの流通方向に沿って延びる他側縁結合部68によって相互に結合されている。1枚の布帛58を、折り線59に沿って二つ折りすることによって車内側の第1弁体部61及び車外側の第2弁体部62を形成した本実施形態では、その折り返し部分(折り線59及びその近傍部分)が、上記他側縁結合部68に該当する。
さらに、両弁体部61,62について、両流出側結合部41,42の延出方向の他側部(後側部)、より正確には、布帛58の折り線59から前方へ若干離れた箇所には難撓部65が設けられている。難撓部65は、同他側部(後側部)において、可撓部64の流入側膨張部(下膨張部EL)近傍となる箇所を起点として、さらに流入側膨張部(下膨張部EL)へ延びている。ここで、流入側膨張部(下膨張部EL)近傍となる箇所とは、上記可撓部64を挟んで両流出側結合部41,42から下方へ一定距離(長さL1)隔てた箇所である。難撓部65は、両弁体部61,62を縫糸によって1列又は複数列(ここでは2列)に縫合することによって形成されており、上記可撓部64よりも、また、逆止弁60における他の結合部(両流出側結合部41,42、一側縁結合部67及び壁部結合部63)よりも硬く(剛性が高く)、撓みにくくなっている。
この難撓部65は補助結合部69を兼ねている。補助結合部69は、上記両弁体部61,62の一側縁結合部67及び他側縁結合部68間であって、同他側縁結合部68の前側近傍において、第1弁体部61及び第2弁体部62を相互に結合するものである。また、補助結合部69は、可撓部64のガス流入膨張部(下膨張部EL)近傍となる箇所を起点として、すなわち、上記可撓部64を挟んで流出側結合部41,42からガス流入膨張部(下膨張部EL)側へ離れた箇所を起点として、さらにガス流入膨張部(下膨張部EL)側へ延びるものである。
上述したように、連通路50において、エアバッグ30の後縁部30Rと接続部46との間隔は、突出部47の先端47Tにおいて最も狭くなっている。このことから、一側縁結合部67(壁部結合部63)と難撓部65(補助結合部69)との間隔(膨張用ガスGの流路面積DS)は、突出部47の先端47Tにおいて最小となっている。
上記難撓部65は、両連通壁部51,52の上端部や両弁体部61,62の上端部が車幅方向についての両側方へ開く(相手から離れる方向へ動く)のを規制する。この規制の程度は、難撓部65(補助結合部69)の上端部65Uが両流出側結合部41,42に近づくほど(長さL1が短くなるほど)又は難撓部65が突出部47の先端47Tに近づくほど強くなる。そのため、難撓部65(補助結合部69)の上端部65Uは、両連通壁部51,52及び両弁体部61,62の各上端部の開放動作を大きく妨げることのない位置(高さ)に設定されている。
ここで、上記の構成を有する逆止弁60では、図12に示すように、難撓部65(補助結合部69)が布帛58の折り線59(他側縁結合部68)から前方へ離れた箇所に設けられている。このことから、可撓部64において、折り線59(他側縁結合部68)と壁部結合部63(一側縁結合部67)との間隔D1は、難撓部65(補助結合部69)と壁部結合部63(一側縁結合部67)との間隔D2よりも大きくなっている。このことは、両弁体部61,62間を膨張用ガスGが流れることで逆止弁60が膨張する際、難撓部65(補助結合部69)と壁部結合部63(一側縁結合部67)との間の領域が、他側縁結合部68と壁部結合部63(一側縁結合部67)との間の領域である可撓部64よりも小さな内径で円筒状に膨張することを意味する。
また、図9に示すように難撓部65(補助結合部69)の長さをL2とする。壁部結合部63(一側縁結合部67)において難撓部65(補助結合部69)との間の間隔が最も狭くなる箇所B(突出部47の先端47T)と、両流出側結合部41,42における難撓部65(補助結合部69)側の端部Cとの間隔をD3とする。本実施形態では、L2>D3の関係が満たされるように、長さL2及び間隔D3が設定されている。
上記両弁体部61,62の下部には、前側ほど高くなるように傾斜した傾斜部66が設けられている。この傾斜部66においては、両弁体部61,62が相互に結合されていない。また、上述したように、第1弁体部61の上端部が、第1連通壁部51(車内側の布帛部33,36)に結合され、第2弁体部62の上端部が、第2連通壁部52(車外側の布帛部34,37)に結合されているが、それらの上端部同士は結合されていない。従って、逆止弁60は、膨張用ガスGの供給時には、傾斜部66及び上端部において開放された筒状に膨張することとなる。
図10に示すように、逆止弁60の車内側の第1弁体部61が第1流出側結合部41によって車内側の布帛部33,36に結合されていることから、膨張用ガスGはそれら第1弁体部61及び布帛部33,36間を通って下膨張部ELから上膨張部EUへ向けて、又はその逆方向へ向けて流れることが不能である。同様に、逆止弁60の車外側の第2弁体部62が第2流出側結合部42によって車外側の布帛部34,37に結合されていることから、膨張用ガスGはそれら第2弁体部62及び布帛部34,37間を通って下膨張部ELから上膨張部EUへ向けて、又はその逆方向へ向けて流れることが不能である。膨張用ガスGは、逆止弁60の両弁体部61,62間を流路として通ることをもってのみ、下膨張部ELから上膨張部EUへ向けて、又はその逆方向へ向けて流れることが可能である。
なお、図9では、車内側の第1弁体部61と布帛部33との間であって、内結合部38と接続部46とによって挟まれた箇所Eが存在する。この箇所Eは、膨張用ガスGの流路となり得る。しかし、上膨張部EUの膨張する力によって、第1弁体部61が布帛部33に張り付くため、膨張用ガスGは上記箇所Eをほとんど流れない。車外側の第2弁体部62と布帛部34との間であって、内結合部39と接続部46とによって挟まれた箇所(流路)が存在するが、この箇所についても上記と同様、膨張用ガスGはほとんど流れない。
もちろん、内結合部38と接続部46とが交差するように縫製を行ってもよく、この場合には、上記のような膨張用ガスGの流路となり得る箇所Eが形成されないため、膨張用ガスGの流通の問題は起こらない。
同図9に示すように、両弁体部61,62の上端部は区画結合部44の後方近傍に位置し、上膨張部EUに臨んでいる。また、両弁体部61,62の傾斜部66は、下膨張部EL内の上部で、かつ区画結合部44の後方近傍に位置している。そして、インフレータアセンブリ20のリテーナ22が、その下端部のみにおいて逆止弁60内の上部に入り込んでいる。
ところで、エアバッグモジュールAMは、図6に示すように、上記平面展開状態のエアバッグ30(図4参照)が折り畳まれることにより、前後方向にも上下方向にも寸法が小さなコンパクトな形態(「収納用形態」)にされている。これは、エアバッグモジュールAMを、シートバック14における限られた大きさの(狭い)収納部15(図1及び図2参照)に対して収納に適したものとするためである。
上記収納用形態にされたエアバッグモジュールAMは、エアバッグ30及び補強布35に挿通されたボルト26がシートフレーム16に挿通され、このボルト26にナット17が締め付けられることにより、同シートフレーム16に固定される。
なお、リテーナ22は、上述したボルト26とは異なる部材によって車両(シートフレーム16等)に固定されてもよい。
サイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールAMのほかに図1に示す衝撃センサ71及び制御装置72を備えている。衝撃センサ71は加速度センサ等からなり、車両のボディサイド部11等に取付けられており、同ボディサイド部11に外側方から加えられる衝撃を検出する。制御装置72は、衝撃センサ71からの検出信号に基づきインフレータ21の作動を制御する。
上記のようにして、本実施形態のサイドエアバッグ装置が構成されている。次に、このサイドエアバッグ装置の代表的な動作の態様(モード)について、図12〜図16を参照して説明する。これら図12〜図16は、逆止弁60の形態が、膨張用ガスGの供給・停止状況に応じて時間とともに変化する様子を模式的に示したものであり、細部については省略・簡略化されている。例えば、図12〜図16では、区画結合部44が1本の破線で図示されている。また、一点鎖線の枠Jに示すように、両流出側結合部41,42の難撓部65(補助結合部69)側の端部近傍において、エアバッグ30の折り線32と逆止弁60の折り線59とが離れた状態で図示されているが、実際には、両折り線32,59は一致している。そのため、エアバッグ30の後端部と逆止弁60の後端部との間を膨張用ガスGが流れることはない。
このサイドエアバッグ装置では、側突等により車両に対し側方から衝撃が加わらないときには、エアバッグ30は収納用形態にされて、インフレータアセンブリ20とともに収納部15に収納され続ける。このとき、逆止弁60では、車内側の第1弁体部61と車外側の第2弁体部62とが重なり合い続ける(図12参照)。
これに対し、車両の走行中にボディサイド部11に所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ71によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置72からインフレータ21に対し、これを作動させるための作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータ21では、図5及び図6に示すように、ガス発生剤が高温高圧の膨張用ガスGを発生し、これをガス噴出部23の複数のガス噴出孔24からインフレータ21の軸線Lに直交する方向(径方向)へ噴出する。膨張用ガスGの一部は、リテーナ22の窓部25を通って上膨張部EUへ向けて流れる。この流入する膨張用ガスGにより上膨張部EUが膨張を開始する。
また、膨張用ガスGの一部は、リテーナ22の下側の開放端22Aを通って下膨張部ELへ向けて流れる。すなわち、リテーナ22の窓部25とは異なる箇所とインフレータ21との間の隙間は、一部のガス噴出孔24からの膨張用ガスGの通路となり得る。そのため、ガス噴出孔24から噴出されてリテーナ22に当たった膨張用ガスGは、その流れ方向をインフレータ21の軸線Lに沿う2方向(略上方及び略下方)へ変える。ただし、インフレータ21においてガス噴出部23よりも上側の部分は同ガス噴出部23よりも大径状をなしていて、リテーナ22との間の隙間が、ガス噴出部23とリテーナ22との間の隙間よりも小さい。そのため、流れの向きを変えられた膨張用ガスGは略上方へは流れにくく、略下方へは流れやすい。よって、上記のようにリテーナ22に当たって流れの向きを変えられた膨張用ガスGの多くは、リテーナ22の下側の開放端22Aを通り、逆止弁60内へ流れる。
インフレータ21からの膨張用ガスGが逆止弁60に供給されている期間には、第1弁体部61及び第2弁体部62には、図13に示すように円筒状になろうとする力が発生する。これは、1つには、第1弁体部61の上端部が第1連通壁部51に結合され、第2弁体部62の上端部が第2連通壁部52に結合されていることによる(図8、図10参照)。さらに、両弁体部61,62について、両流出側結合部41,42の延出方向の一側部(前側部)が少なくとも対応する連通壁部51,52に対し、一側縁結合部67(壁部結合部63)によって結合されていることによる。さらに、両弁体部61,62について、同方向の他側部(後側部)が補助結合部69(難撓部65)によって相互に結合されていることにもよる。
ただし、両弁体部61,62が円筒状になろうとする際、可撓部64と、それよりも下側の部分とでは内径(周長)が異なる。前述したように、逆止弁60では、補助結合部69(難撓部65)が布帛58の他側縁結合部68(折り線59)から前方へ離れた箇所に設けられている。このことから、可撓部64において、他側縁結合部68(折り線59)と一側縁結合部67(壁部結合部63)との間隔D1が、難撓部65と一側縁結合部67(壁部結合部63)との間隔D2よりも大きくなっている(図12参照)。そのため、両弁体部61,62における可撓部64よりも下側部分は、可撓部64よりも小さな内径(周長)で円筒状に膨張しようとする。
しかし、上述したように、両弁体部61,62の各々について、両流出側結合部41,42の延出方向の一側部(前側部)が、少なくとも対応する連通壁部51,52に結合されているのに対し、同方向の他側部(後側部)は、補助結合部69(難撓部65)によって互いに結合されるにとどまり、連通壁部51,52に結合されていない。両弁体部61,62の上記一側部(前側部)が連通壁部51,52に対し動けないのに対し、上記他側部(後側部)は、連通壁部51,52に対し動き得る。また、両弁体部61,62において、難撓部65は硬く撓みにくいが、可撓部64は柔らかく撓みやすい。
そのため、上記のように、両弁体部61,62における可撓部64が大きな内径(周長)で円筒状に膨張し、可撓部64よりも下側部分が小さな内径(周長)で円筒状に膨張しようとすると、可撓部64が上膨張部EU側へ引き寄せられて撓む。これに伴い、両弁体部61,62における可撓部64よりも下側部分は、難撓部65(補助結合部69)の上端部65Uの近傍部分(図14において一点鎖線の枠Fで囲まれた箇所)を支点として、図13において矢印Aで示すように、両流出側結合部41,42側(上側)かつ壁部結合部63側(一側縁結合部67側:前側)へ引き寄せられる。この引き寄せにより、難撓部65は、下側ほど前方に位置するような傾斜状態となる。また、前記引き寄せに伴い、壁部結合部63(一側縁結合部67)及び難撓部65(補助結合部69)間の撓みやすい部分に皺が入りやすくなる。
上記のように円筒状に膨張した逆止弁60を通過した膨張用ガスGは下膨張部ELへ流入する。この膨張用ガスGにより下膨張部ELが膨張を開始する。このように、膨張用ガスGにより、上膨張部EU及び下膨張部ELがそれぞれ膨張することで、エアバッグ30が折り畳まれた順とは逆の順に折り状態を解消する。
エアバッグ30は、自身の後部をシートバック14の収納部15に残した状態で、ボディサイド部11と車両用シート12との間において、前方へ向けて折り状態を解消しながら展開する。エアバッグ30の膨張展開に際し、図3及び図4の少なくとも一方に示すように、上膨張部EUは、ボディサイド部11と、車両用シート12に着座している乗員Pの胸部PT等との間で膨張展開する。また、下膨張部ELは同ボディサイド部11と同乗員Pの腰部PPとの間で膨張展開する。そして、乗員Pの側部の各部がエアバッグ30の対応する膨張部EU,ELによって拘束され、側突による衝撃から乗員Pが保護される。
この際、上膨張部EUの内圧は、インフレータ21からの供給される膨張用ガスGの流量差、容積差等により、下膨張部ELの内圧よりも遅れて上昇する。エアバッグ30の膨張初期には、上膨張部EUの内圧が下膨張部ELの内圧よりも低くなる。その結果、乗員Pの側部のうち耐衝撃性の高い腰部PPが内圧の高い下膨張部ELによって拘束及び保護される。また、耐衝撃性の低い胸部PT等が、内圧の低い上膨張部EUによってソフトに拘束及び保護される。エアバッグ30の膨張展開によって乗員Pに作用する衝撃が、胸部PTにおいて腰部PP等よりも小さくなる。
そして、インフレータ21からの膨張用ガスGの噴出が停止すると、図14に示すように、内圧の高い下膨張部EL内の膨張用ガスGが、逆止弁60を通って、内圧の低い上膨張部EU側へ流れようとし、逆止弁60が次のように作動する。内径(周長)の相違から上膨張部EU側へ引き寄せられて撓んだ可撓部64が、上記膨張用ガスGの噴出停止と略同時に、上膨張部EU側へ流れようとする下膨張部EL内の膨張用ガスGの高い圧力を一気に受けて、同上膨張部EU側へ押圧される。この押圧により、両弁体部61,62における可撓部64が、図14において矢印Hで示すようにさらに押上げられ、それに伴い、可撓部64よりも下側部分が、両流出側結合部41,42側(上側)かつ壁部結合部63側(一側縁結合部67側:前側)へさらに引き寄せられる。
この際、難撓部65(補助結合部69)もまた引き寄せられ、両流出側結合部41,42に接近する。難撓部65(補助結合部69)は、両流出側結合部41,42に接近した上端部65Uの近傍(枠Fで囲まれる部分)を支点とし、自身の形状を保ちながら、両流出側結合部41,42側(上側)かつ壁部結合部63側(一側縁結合部67側:前側)へ倒れ込む。このときには、両弁体部61,62における可撓部64よりも下側部分のうち、難撓部65(補助結合部69)よりも前側となる部分もまた、上記可撓部64と同様に、上膨張部EU側へ向かう下膨張部EL内の膨張用ガスGの高い圧力を受ける。この圧力を受けた部分が、図15において矢印Iで示すように、両弁体部61,62間に押し込まれるように斜め前上方へ折り曲げられる。これに伴い、両弁体部61,62間の空間、すなわち膨張用ガスGの流路が小さくなる。
ここで、本実施形態では、難撓部65(補助結合部69)の長さL2が上記のように間隔D3よりも長く(L2>D3)設定されていることから、同難撓部65は上記のように斜め前上方へ倒れ込む途中で、図16に示すように、接続部46の突出部47に当接する。この突出部47は、難撓部65がそれ以上両流出側結合部41,42側(上側)かつ壁部結合部63側(一側縁結合部67側:前側)へ倒れ込むのを規制する。そして、この状態になると、逆止弁60が実質的に閉弁した状態となり、下膨張部EL内の膨張用ガスGが、両弁体部61,62間を通って上膨張部EU側へ流れる(逆流する)ことが規制される。
従って、乗員Pの腰部PPを保護するのに適切な内圧にまで高められた下膨張部ELの内圧が、膨張用ガスGの上膨張部EUへの逆流により低下することがない。
その後も、逆止弁60は、膨張用ガスGが上膨張部EUから下膨張部ELへ流れることは許容するが、下膨張部EL内の膨張用ガスGが上膨張部EUへ流れる(逆流する)ことを規制する。そのため、例えばエアバッグ装置が乗員Pの腰部PPを拘束することで下膨張部ELの内圧が上昇したとしても、上記逆止弁60により、下膨張部EL内の膨張用ガスGが上膨張部EUへ流れることが規制される。上膨張部EUの内圧が、乗員Pの腰部PP拘束に伴う下膨張部ELの圧力変動の影響を受けて上昇することがない。
特に、本実施形態では、上膨張部EU及び下膨張部EL間では、膨張用ガスGは逆止弁60を通って流れるのみであり、逆止弁60を経由せずに上膨張部EU及び下膨張部EL間で膨張用ガスGが流通することはない。従って、膨張用ガスGの上記流通が原因で逆止弁60の上記機能が損なわれることがない。
ところで、下膨張部ELの内圧が、壁部結合部63に当たって止まっている難撓部65に対し、同壁部結合部63を乗り越えさせるほど高くなった場合には、両弁体部61,62の可撓部64よりも下側部分が難撓部65に追従して壁部結合部63を乗り越えて裏返えろう(反転しよう)とする。この現象が起こった場合には、両弁体部61,62間の閉塞状態の流路が開放され、内圧の高い下膨張部EL内の膨張用ガスGが逆止弁60を通って、内圧の低い上膨張部EU側へ逆流するおそれがある。しかし、本実施形態では、上膨張部EU内の両流出側結合部41,42の近傍に位置しているインフレータアセンブリ20の下端部が、難撓部65及び両弁体部61,62が、閉弁状態のときの位置から必要以上に上膨張部EU側へ動くのを規制する。その結果、上記難撓部65及び両弁体部61,62が壁部結合部63を乗り越えたり、裏返ったり(反転したり)することが起こりにくい。
以上が、サイドエアバッグ装置の代表的な動作の態様(モード)であるが、これとは異なる動作の態様(別モード)もあり得る。この態様(別モード)では、逆止弁60は途中までは上記代表的なモードと同様に作動する。途中までとは、可撓部64がガス流出膨張部側(上膨張部EU側:上側)へ引き寄せられ、難撓部65(補助結合部69)が両流出側結合部41,42側(上側)かつ壁部結合部63側(一側縁結合部67側:前側)へ引き寄せられるまでである。
この引き寄せの後に、両弁体部61,62の可撓部64よりもガス流入膨張部(下膨張部EL)側の部分が、ガス流出膨張部(上膨張部EU)側へ向かうガス流入膨張部(下膨張部EL)内の膨張用ガスGの高い圧力を受けて相互に接近させられる。この圧力を受けた部分が、難撓部65(補助結合部69)に近い側から合わさりながら、ガス流出膨張部(上膨張部EU)側へ向けて潰れていき、両弁体部61,62間の膨張用ガスGの流路を閉塞する。
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)逆止弁60を構成する両弁体部61,62の各々について、上膨張部EU(ガス流出膨張部)側の端部である各上端部を、流出側結合部41,42によって、対応する連通壁部51,52に結合する。両弁体部61,62の各々について、両流出側結合部41,42に対しガス流入膨張部(下膨張部EL)側の近傍となる箇所に、ガス流出膨張部(上膨張部EU)側へ撓み得る可撓部64を設ける。両弁体部61,62の各々について、流出側結合部41,42の延出方向の一側部(前側部)を、少なくとも対応する連通壁部51,52に対し、一側縁結合部67によって結合する。この一側縁結合部67に、少なくとも両連通壁部51,52を相互に結合する壁部結合部63を兼ねさせる。両弁体部61,62について、流出側結合部41,42の延出方向の他側部(後側部)を、ガス流通方向に沿って延びる他側縁結合部68によって相互に結合する。一側縁結合部67及び他側縁結合部68間であって、同他側縁結合部68の近傍には、両弁体部61,62を相互に結合するとともに、可撓部64のガス流入膨張部(下膨張部EL)側近傍となる箇所を起点として、さらにガス流入膨張部(下膨張部EL)へ延びる補助結合部69を設ける。この補助結合部69に、ガス流通方向に沿って延び、かつ可撓部64よりも撓みにくい難撓部65を兼ねさせている。
そのため、逆止弁60に膨張用ガスGが供給されているときには、同膨張用ガスGの圧力によって、両弁体部61,62を上下両端の開放された円筒状にして、上膨張部EUから下膨張部ELへ膨張用ガスGが流れるようにすることができる。また、上記膨張用ガスGの供給が停止されたときには、膨張部EL,EU間での内圧差により難撓部65(補助結合部69)の上端部65Uの近傍部分を支点として、両弁体部61,62における難撓部65(補助結合部69)を、両流出側結合部41,42側(上側)かつ壁部結合部63側(一側縁結合部67側:前側)へ倒れさせる。難撓部65(補助結合部69)を両弁体部61,62間に入り込ませることにより、両弁体部61,62間の流路を小さくすることができる。逆止弁60を閉弁させて、下膨張部ELから上膨張部EUへ膨張用ガスGが逆流するのを規制することができる。
このように、本実施形態によれば、逆止弁60を確実に開弁及び閉弁させることができる。また、膨張用ガスGの圧力によって逆止弁60を開閉させるため、逆止弁60を駆動する手段を別途設ける必要がなく、同逆止弁60を簡便な構成で提供することができる。
(2)難撓部65の長さL2を、壁部結合部63の箇所B(突出部47の先端47T)と、両流出側結合部41,42における難撓部65(補助結合部69)側の端部Cとの間隔D3よりも長く設定している(図9)。このため、難撓部65と、両流出側結合部41,42よりも下膨張部EL(ガス流入膨張部)側の部分とが壁部結合部63(一側縁結合部67)を乗り越えて反転するのを抑制して、両弁体部61,62間の流路を確実に閉塞した状態に保持することができる。
(3)エアバッグ30内に膨張用ガスGを供給するインフレータアセンブリ20(ガス供給源)を、その下端部が、上膨張部EU(ガス流出膨張部)内の両流出側結合部41,42の近傍に位置するように配置している。そのため、下膨張部ELの内圧が過剰に高くなっても、難撓部65及び両弁体部61,62が壁部結合部63を乗り越えたり、裏返ったり(反転したり)するのを抑制し、閉弁状態となった逆止弁60をその状態に確実に保持することができる。
(4)両弁体部61,62を縫糸で縫合することにより難撓部65を形成している。そのため、両弁体部61,62自体は布帛によって形成されていて撓みやすいが、両弁体部61,62を縫糸で縫合するといった簡単な構成でありながら、可撓部64よりも撓みにくい難撓部65を容易に、かつ確実に形成することができる。
(5)エアバッグ30を、車両側方からの衝撃に応じて供給される膨張用ガスGにより、ボディサイド部11と、車両用シート12に着座した乗員Pとの間で同車両の前方へ向けて膨張展開するサイドエアバッグ装置に用いている。また、乗員Pの腰部PPの側方近傍で膨張する下膨張部ELをガス流入膨張部とし、乗員Pの胸部PTの側方近傍で膨張する上膨張部EUをガス流出膨張部としている。そのため、たとえ、膨張状態のエアバッグ30が乗員Pの腰部PPを拘束することで下膨張部ELの内圧が上昇したとしても、逆止弁60により、下膨張部EL内の膨張用ガスGが上膨張部EUへ逆流することを規制することができる。上膨張部EUの内圧が、乗員Pの腰部PP拘束に伴う下膨張部ELの圧力変動の影響を受けて上昇するのを抑制することができる。その結果、耐衝撃性の高い腰部PPを下膨張部ELによって確実に拘束しつつ、耐衝撃性の低い胸部PT等を上膨張部EUによって衝撃からよりソフトに保護することができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<インフレータアセンブリ20に関する事項>
・リテーナ22として、その上端部が閉塞され、下端部のみが開放されたものや、上下両端部がともに開放されたものを用いてもよい。
・リテーナ22を用いることなくインフレータ21をシートバック14に直接取付けるようにしてもよい。
・リテーナ22を、布帛によって筒状に形成されたインナチューブに変更してもよい。ただし、この変更は、インナチューブが、インフレータ21からの膨張用ガスGの熱及び圧力によって大きな損傷を受けないことを前提として行なう。
このような変更は、例えば、インフレータ21として、比較的低い温度の膨張用ガスGを噴出するタイプを用いた場合に可能である。該当するタイプのインフレータは、膨張用ガスを充填させてなるハイブリッドタイプのインフレータである。このタイプのインフレータは、発熱を伴う化学反応によりガス発生剤から膨張用ガスを発生させるパイロタイプのインフレータよりも低い温度の膨張用ガスGを噴出するからである。
また、パイロタイプのインフレータを用いた場合であっても、耐熱性を向上させるためのコーティング層を有するコート布を用いてインナチューブを形成することで、前記の変更が可能である。
<エアバッグ30に関する事項>
・本発明は、エアバッグが、3つ以上の膨張部を有するエアバッグ装置にも適用可能である。この場合、隣り合う2つの膨張部間の連通路に逆止弁を設ける。エアバッグが3つ以上の膨張部を有する場合には、エアバッグは、隣り合う膨張部の組合せを複数有する。これに伴いエアバッグには連通路も複数存在する。こうしたエアバッグにおいては、逆止弁は複数の連通路のうちの少なくとも1つに設けられればよい。もちろん、逆止弁は全ての連通路に設けられてもよい。
・エアバッグ30が複数の膨張部を有する場合、どの膨張部をガス流入膨張部とし、ガス流出膨張部とするかは、乗員Pの側部の耐衝撃性等に応じて決定することが望ましい。
<逆止弁60に関する事項>
・難撓部65の硬さ(剛性)を変えたり、長さL2を変えたりすることで、同難撓部65に壁部結合部63(突出部47)を乗り越えさせて両弁体部61,62を反転させる際の下膨張部ELの内圧を調整することができる。
難撓部65の硬さ(剛性)を変える手段としては、同難撓部65を縫合によって形成した場合には、縫糸の種類、太さ等を変えたり、本数を増減したりすることが挙げられる。例えば、縫糸が太くなるに従い、また、本数が多くなるに従い難撓部65が硬くなり(剛性が高くなり)、両弁体部61,62を反転させる際の下膨張部ELの内圧が高くなる。また、難撓部65を接着によって形成した場合には、接着剤の種類を変えたり、塗布量(厚み)を変えたりすることが、難撓部65の硬さ(剛性)を変える手段として挙げられる。例えば、塗布量が多くなるに従い難撓部65が硬くなり(剛性が高くなり)、両弁体部61,62を反転させる際の下膨張部ELの内圧が高くなる。
・図17及び図18に示すように、一側縁結合部67と壁部結合部63とをエアバッグ30の異なる箇所に設けてもよい。要は、一側縁結合部67は、両弁体部61,62の各々について、流出側結合部41,42の延出方向の一側部(前側部)を、少なくとも対応する連通壁部51,52に結合するものであればよい。ちなみに、図18は、車内側の一側縁結合部67が第1弁体部61を第1連通壁部51にのみ結合し、車外側の一側縁結合部67が第2弁体部62を第2連通壁部52にのみ結合した例を示している。
また、壁部結合部63は、一側縁結合部67の近傍に設けられて、少なくとも両連通壁部51,52を相互に結合するものであればよい。ちなみに、図18は、壁部結合部63が、両連通壁部51,52のみを相互に結合した例を示している。
このように、一側縁結合部67と壁部結合部63とが異なる箇所に設けられた場合であっても、上記実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
・図19及び図20に示すように、難撓部65と補助結合部69とを両弁体部61,62の異なる箇所に設けてもよい。要は、補助結合部69は、一側縁結合部67及び他側縁結合部68間であって、同他側縁結合部68の近傍において、両弁体部61,62を相互に結合するとともに、可撓部64のガス流入膨張部(下膨張部EL)側近傍となる箇所を起点として、さらにガス流入膨張部(下膨張部EL)側へ延びるものであればよい。また、難撓部65は、逆止弁60の補助結合部69上又はその近傍に設けられて、ガス流通方向に沿って延び、かつ可撓部64よりも撓みにくいものであればよい。このように、難撓部65と補助結合部69とが異なる箇所に設けられた場合であっても、上記実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
・図19及び図20に示すように、逆止弁60は、互いに独立した一対の布帛を車幅方向に重ね合わせ、車内側に位置する布帛を第1弁体部61とし、車外側に位置する布帛を第2弁体部62とし、両弁体部61,62を筒状となるように結合したものであってもよい。この場合、両弁体部61,62について、流出側結合部41,42の延出方向の他側部(後側部)を他側縁結合部68によって相互に結合する。この点において、この変更例は、1枚の布帛58を二つ折りし、折り返し部分(折り線59及びその近傍部分)を他側縁結合部68とした前記実施形態と異なる。
・「逆止弁60の補助結合部69上又はその近傍で、ガス流通方向に沿って延び、かつ可撓部64よりも撓みにくいこと」を条件に、難撓部65を、縫糸とは異なるものに変更してもよい。例えば、図19及び図20に示すように、合成樹脂や金属によって長尺板状に形成したものを難撓部65としてもよい。
・前記実施形態では、逆止弁60における難撓部65(補助結合部69)を、他側縁結合部68(折り線59)に対し平行となるように設けたが、図21に示すように、同他側縁結合部68(折り線59)に対し交差する方向に延びるように設けてもよい。このようにすることで、両弁体部61,62間の流路面積DSを調整し、もって膨張用ガスGの流量を調整することが可能となる。
例えば、交差の度合いが大きくなる(他側縁結合部68(折り線59)に対する傾斜角度が大きくなる)に従い、一側縁結合部67(壁部結合部63)との間隔が狭まり、流路面積DSが小さくなって下膨張部ELに流入する膨張用ガスGの流量が少なくなる。
・エアバッグの内部をテザーによって複数の膨張部に区画したエアバッグ装置では、このテザーに逆止弁を設けてもよい。この逆止弁付きテザーをサイドエアバッグ装置に適用した一例を図22及び図23に示す。
テザー80は、車内側及び車外側の一対の構成片81,82を備えている。車内側の構成片81の一方(図23の左方)の側縁部は、車内側の側縁結合部83によって、エアバッグ30における車内側の布帛部33に結合されている。また、車外側の構成片82の一方(図23の右方)の側縁部は、車外側の側縁結合部83によって、エアバッグ30における車外側の布帛部34に結合されている。さらに、各構成片81,82の他方の側縁部は、側縁結合部84によって相互に結合されている。このようにして、両構成片81,82を有するテザー80は、エアバッグ30における車内側の布帛部33と車外側の布帛部34との間に架け渡されている。このテザー80は、エアバッグ30の非膨張時には上方へ屈曲させられた状態となる。なお、各側縁結合部83、84は、ここでは縫糸を用いた縫合によって形成されているが、これに代えて接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。この点は、後述する各種結合部、例えば、流出側結合部93,94、一側縁結合部96、壁部結合部97、補助結合部103についても同様であるほか、難撓部102についても同様である。
エアバッグ30内は、テザー80を境として、それよりも下側の膨張部と、上側の膨張部とに区画されている。ここでは、説明の便宜上、前者を、比較的低い内圧で膨張して、耐衝撃性の低い胸部PT等を保護するガス流出膨張部85とし、後者を前者よりも高い内圧で膨張して、胸部PTよりも耐衝撃性の高い肩部PS等を保護するガス流入膨張部86とする。テザー80は、上記のようにエアバッグ30を2つの膨張部85,86に区画するほか、同エアバッグ30の車幅方向の膨張厚みを規制する機能も有する。
側縁結合部84の長さ方向(図22では左右方向)についての一部には、ガス流出膨張部85及びガス流入膨張部86間を連通させる連通路87が設けられている。ここでは、側縁結合部84の一部が分断されており、両構成片81,82間において、側縁結合部84の分断された箇所、すなわち側縁結合部84によって結合されていない箇所が、連通路87となっている。そして、車内側の構成片81の一部が連通路87の第1連通壁部88を構成し、車外側の構成片82の一部が連通路87の第2連通壁部89を構成している。これらの第1連通壁部88及び第2連通壁部89は、両膨張部85,86の非膨張時には、互いに扁平な状態で重なり合う。
逆止弁90は、前記実施形態と同様に、1枚の布帛100を、折り線101に沿って二つ折りすることによってそれぞれ形成された車内側の第1弁体部91及び車外側の第2弁体部92を備えて構成されている。両弁体部91,92は、両膨張部85,86の非膨張時に互いに扁平な状態で重なり合う。
第1弁体部91のガス流出膨張部85側の端部(図22、図23の下端部)は、連通路87における膨張用ガスGの流通方向(上下方向)に略直交する方向へ延びる第1流出側結合部93により第1連通壁部88に結合されている。第2弁体部92のガス流出膨張部85側の端部は、第1流出側結合部93と略同じ方向へ延びる第2流出側結合部94により第2連通壁部89に結合されている。逆止弁90においては、両弁体部91,92は、ガス流出膨張部85側の端部において相互に結合されていない。
両弁体部91,92の各々について、両流出側結合部93,94の延出方向の一側部である前側部は、一側縁結合部96により少なくとも対応する連通壁部88,89に対し結合されている。本実施形態では、両弁体部91,92の前側部は、一側縁結合部96によって相互に結合されている。さらに、両弁体部91,92の前側部の下端部は、両連通壁部88,89に対しても結合されている。すなわち、両弁体部91,92の前側の下端部では、両弁体部91,92及び両連通壁部88,89が一体に結合されている。一側縁結合部96の下端部は、両弁体部91,92の前側部及び両連通壁部88,89を、一緒に縫合(共縫い)することによって形成されている。一側縁結合部96は、両弁体部91,92のガス流入膨張部86側の端部(上端部)からガス流出膨張部85側へ向けて延びている。一側縁結合部96のガス流出膨張部85側の端部(下端部)は、側縁結合部84及び両流出側結合部93,94と交差している。また、上記一側縁結合部96の下部は壁部結合部97も兼ねている。壁部結合部97は、一側縁結合部96上又はその近傍に設けられて、少なくとも両連通壁部88,89を相互に結合するものである。
両弁体部91,92の各々について、両流出側結合部93,94に対しガス流入膨張部86側の近傍となる箇所(図22において一点鎖線で囲まれた箇所)は、柔らかく膨張用ガスGの圧力によってガス流出膨張部85側(図22の下側)へ容易に撓むことのできる可撓部98とされている。
両弁体部91,92について、両流出側結合部93,94の延出方向の他側部である後側部は、ガス流通方向に沿って延びる他側縁結合部99によって相互に結合されている。前述したように、この変更例では、1枚の布帛100を、折り線101に沿って二つ折りすることによって車内側の第1弁体部91及び車外側の第2弁体部92を形成していることから、その折り返し部分(折り線101及びその近傍部分)が、上記他側縁結合部99に相当する。
さらに、両弁体部91,92について、両流出側結合部93,94の延出方向の他側部(後側部)、より正確には、布帛100の折り線101から前方へ若干離れた箇所には難撓部102が設けられている。難撓部102は、同他側部(後側部)において、可撓部98のガス流入膨張部86側近傍となる箇所を起点として、さらにガス流入膨張部86側へ延びている。ここで、ガス流出膨張部85側近傍となる箇所とは、上記可撓部98を挟んで両流出側結合部93,94から上方へ一定距離隔てた箇所である。難撓部102は、両弁体部91,92を縫糸によって1列又は複数列(ここでは2列)に縫合することによって形成されており、上記可撓部98よりも、また、逆止弁90における他の結合部(両流出側結合部93,94、一側縁結合部96及び壁部結合部97)よりも硬く(剛性が高く)、撓みにくくなっている。
この難撓部102は補助結合部103を兼ねている。補助結合部103は、上記両弁体部91,92の一側縁結合部96及び他側縁結合部99間であって、同他側縁結合部99の前側近傍において、両弁体部91,92を相互に結合するものである。また、補助結合部103は、可撓部98に対しガス流入膨張部86側の近傍となる箇所を起点として、すなわち、可撓部98を挟んで流出側結合部93,94からガス流入膨張部86側へ離れた箇所を起点として、同ガス流入膨張部86側へ延びるものである。
このように、前記実施形態の逆止弁60に対応する逆止弁90は、適用箇所が異なるものの同逆止弁60と同様の構成を有している。そのため、この場合にも、前記実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
・両弁体部61,62を、下膨張部EL側(ガス流入膨張部側:下側)に傾斜部66を有しない形状に変更してもよい。
・両流出側結合部41,42,93,94は、連通路50,87における膨張用ガスGの流通方向に交差する方向へ延びるものであればよく、前記実施形態等とは異なり、必ずしも同流通方向に略直交する方向へ延びるものでなくてもよい。
・ガス流出膨張部(上膨張部EU)85の内圧がガス流入膨張部(下膨張部EL)86の内圧よりも低くなるように、両膨張部EU,EL間で、又は85,86間で内圧差を設けると、逆止弁60,90が作動しやすくなる。内圧差を発生させる手段としては、例えば、ガス流出膨張部(上膨張部EU)85にベントホールを設けることが挙げられる。そのほかに、ガス流出膨張部(上膨張部EU)85及びガス流入膨張部(下膨張部EL)86の両方にベントホールを設けることも上記手段として挙げられる。ただし、この場合には、ベントホールの大きさを異ならせる等して、ガス流出膨張部(上膨張部EU)85よりもガス流入膨張部(下膨張部EL)86から、膨張用ガスGを排出されにくくする工夫が必要となる。
<エアバッグモジュールAMの収容箇所に関する事項>
・エアバッグ装置を、上記実施形態のようにサイドエアバッグ装置に具体化した場合には、収納部15をシートバック14に代え、ボディサイド部11において、車両用シート12に着座した乗員Pの車外側近傍となる箇所に設けてもよい。
<その他に関する事項>
・本発明は、サイドエアバッグ装置とは異なるタイプのエアバッグ装置にも適用可能である。