(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を前方として説明する。
図1及び図2の少なくとも一方に示すように、車両においてボディサイド部11の車内側(図2の上側)の近傍には車両用シート12が配置されている。ここで、ボディサイド部11とは、車両の側部に配置された部材を指す。例えば、前席に対応するボディサイド部11は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。また、後席に対応するボディサイド部11は、サイドドア(リアドア)の後部、Cピラー、タイヤハウスの前部、リアクォータ等である。
車両用シート12は、シートクッション(座部)13と、そのシートクッション13の後側から起立し、かつ傾き調整機構(図示略)を有するシートバック(背もたれ部)14とを備えて構成されている。シートバック14の車外側の側部には収納部15が設けられており、サイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールAMがこの収納部15に収納されている。収納部15の位置は、車両用シート12に着座した乗員Pの車外側近傍となる。エアバッグモジュールAMは、図3に示すように、エアバッグ20及びインフレータアセンブリ40を主要な構成部材として備えている。
次に、これらの構成部材の各々について説明する。ここで、第1実施形態では、エアバッグモジュールAM及びその構成部材について「上下方向」、「前後方向」というときは、車両用シート12のシートバック14を基準としている。シートバック14の起立する方向を「上下方向」とし、この方向に対し車両の略前後方向に直交する方向を「前後方向」としている。通常、シートバック14は傾斜した状態で使用されることから、「上下方向」は厳密には鉛直方向ではなく、多少傾斜している。同様に、「前後方向」は厳密には水平方向ではなく、多少傾斜している。
<インフレータアセンブリ40>
図4及び図5の少なくとも一方に示すように、インフレータアセンブリ40は、ガス発生源としてのインフレータ41と、そのインフレータ41を包み込むリテーナ42とを備えて構成されている。インフレータ41は、略上下方向に細長い略円柱状をなしており、その内部には、外部からの作動信号に応じて反応して膨張用ガスGを生ずるガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ41の下端部には、生成した膨張用ガスGを径方向外方へ噴出する複数のガス噴出孔43が設けられている。
なお、インフレータ41としては、上記ガス発生剤を用いたタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスGを噴出させるタイプが用いられてもよい。
一方、リテーナ42は、ディフューザとして機能するとともに、上記インフレータ41をエアバッグ20と一緒にシートバック14内のシートフレーム16(図5の二点鎖線参照)に固定する機能を有する部材である。リテーナ42の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって上下方向に細長い略筒状に形成されている。リテーナ42の下端部の前側には、インフレータ41の一部のガス噴出孔43をリテーナ42から露出させる窓部44が設けられており、ガス噴出孔43からの膨張用ガスGが、この窓部44を通じ車両の概ね前方へ向けて導出される。リテーナ42には、これを上記シートフレーム16に取付けるための係止部材として、複数本(第1実施形態では2本)のボルト45が固定されている。表現を変えると、両ボルト45が、リテーナ42を介してインフレータ41に間接的に固定されている。これらのボルト45は、インフレータ41の軸線に直交する方向へ向けて延びている。
なお、インフレータアセンブリ40は、インフレータ41とリテーナ42とが一体になったものであってもよい。
<エアバッグ20>
図2及び図5の少なくとも一方に示すように、エアバッグ20は、衝撃が車両の外側方からボディサイド部11に加わったときに、上記インフレータ41からの膨張用ガスGにより膨張展開する。そして、エアバッグ20は、その一部を収納部15内に残した状態で同収納部15から略前方へ向けて飛び出し、車両用シート12及びボディサイド部11間の隙間G1(図2参照)で膨張展開することにより乗員Pを拘束して上記衝撃から保護するためのものである。
図3は、エアバッグ20が膨張用ガスGを充填させることなく展開させられた状態のエアバッグモジュールAMを模式的に示している。また、図6は、エアバッグ20の製作途中の状態を示している。
これらの図3及び図6の少なくとも一方に示すように、エアバッグ20は、単一の布帛を、その中央部分で二つ折りして車幅方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分を袋状となるように結合させることにより形成されている。ここでは、エアバッグ20の上記の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置するものを車内側布帛部21といい、車外側に位置するものを車外側布帛部22というものとする。
上記布帛としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸やポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。車内側布帛部21及び車外側布帛部22の形状・大きさは、エアバッグ20が車両用シート12及びボディサイド部11間で膨張展開したときに、車両用シート12に着座している乗員Pの車外側近傍で、腰部Ppから胸部Ptに対応する領域を占有し得るように設定されている(図3参照)。
車内側布帛部21及び車外側布帛部22の上記結合は、それらの周縁部に設けられた周縁結合部23においてなされている。第1実施形態では、周縁結合部23は、車内側布帛部21及び車外側布帛部22の周縁部の大部分を縫糸で縫合することにより形成されている。この周縁結合部23は、基本的には太い破線で図示されている。後述する下部結合部30,31、上部結合部32、結合部37についても同様である。
第1実施形態では、さらに、膨張用ガスGの熱及び圧力からエアバッグ20や、後述する結合部37等を保護する目的で補強布24が用いられている。より詳しくは、エアバッグ20の二つ折りに先立ち、布帛の上に1枚の補強布24が拡げられた状態で縫合されている。補強布24の縫い付けられた布帛が中央部分で二つ折りされることで、補強布24もまた中央部分で二つ折りされている。そして、上記のように二つ折りされた補強布24を間に介在させた状態で車内側布帛部21及び車外側布帛部22の周縁部が補強布24とともに縫合(共縫い)されることで、上記周縁結合部23が形成されている。
なお、エアバッグ20は、互いに独立した一対の布帛を車幅方向に重ね合わせ、車内側に位置する布帛を車内側布帛部21とし、車外側に位置する布帛を車外側布帛部22とし、両布帛部21,22を袋状となるように結合させることにより形成されたものであってもよい。また、周縁結合部23は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。
車内側布帛部21の後端部と、補強布24において同部に対応する箇所とには、上下一対のボルト挿通孔25があけられている(図6参照)。そして、エアバッグ20の後端部内には、インフレータアセンブリ40が上下方向に延びる姿勢で収納されている。リテーナ42のボルト45は、車内側布帛部21及び補強布24の対応するボルト挿通孔25に挿通されている。
車内側布帛部21及び車外側布帛部22間であって周縁結合部23によって囲まれた空間の大部分、すなわち、エアバッグ20の内部空間のうちインフレータアセンブリ40が占める空間を除く箇所は、インフレータ41からの膨張用ガスGによって膨張される膨張予定部26となる(図3参照)。
膨張予定部26内の中央部よりも若干下方となる箇所にはテザー27が設けられている。テザー27は、図3、図6〜図8の少なくとも1つに示すように、車内側及び車外側の一対の構成片28,29を備えている。各構成片28,29は、上述したエアバッグ20と同様、布帛によって、上下方向に対するよりも前後方向に細長い長方形状に形成されている。車内側の構成片28は、その下縁部に沿って前後方向へ延びるように設けられた下部結合部30によって車内側布帛部21に結合されている。また、車外側の構成片29は、その下縁部に沿って前後方向へ延びるように設けられた下部結合部31によって車外側布帛部22に結合されている。さらに、両構成片28,29は、それらの上縁部に沿って前後方向に延びるように設けられた上部結合部32によって相互に結合されている。第1実施形態では、下部結合部30,31についても上部結合部32についても、縫糸を用いた縫着によって形成されている。このようにして、両構成片28,29を有するテザー27は、車内側布帛部21及び車外側布帛部22間に架け渡されている。このテザー27は、エアバッグ20の非膨張時には上方へ屈曲させられた状態となる。なお、下部結合部30,31及び上部結合部32は、上記縫糸を用いた縫着とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。
エアバッグ20内の上記膨張予定部26は、テザー27を境として、それよりも下側のチャンバと、上側のチャンバとに区画されている。前者のチャンバは、乗員Pの主として腰部Ppとボディサイド部11との間において、比較的高い内圧で膨張展開して同腰部Ppを拘束及び保護する「下部チャンバ33」となっている。また、後者のチャンバは、乗員Pの腰部Ppよりも上側の部位、より詳しくは胸部Pt及び腹部Pbとボディサイド部11との間において、上記下部チャンバ33よりも低い内圧で膨張展開して同胸部Pt及び腹部Pbを拘束及び保護する「上部チャンバ34」となっている。また、上記テザー27は、エアバッグ20の車幅方向の膨張厚みを規制する。
エアバッグ20内であってテザー27の前側及び後ろ側には、下部チャンバ33及び上部チャンバ34間を連通させる前後一対の連通路35,36が設けられている(図3参照)。これらの連通路35,36により、下部チャンバ33及び上部チャンバ34間での膨張用ガスGの流通が可能となっている。
さらに、エアバッグ20の非膨張時に上方へ屈曲させられた状態の上記テザー27の近傍には、車内側布帛部21及び車外側布帛部22を相互に接近させた状態で環状に結合する結合部37が設けられている。結合部37は、「膨張状態のエアバッグ20の前後方向についての中央部よりも後方である」という条件を満たす箇所に設けられている。第1実施形態では、この条件を満たす箇所として結合部37が、乗員Pの腹部Pbの車外側近傍となる箇所に設けられている。結合部37の上半部37Uは、車内側布帛部21、車外側布帛部22及び補強布24を相互に結合しているが、下半部37Lは、屈曲させられた状態のテザー27(両構成片28,29)の一部を、二つ折りされた補強布24間に介在させた状態で、車内側布帛部21、補強布24及び車外側布帛部22に結合している(図7参照)。第1実施形態では、この結合が縫合によってなされているが、他の手段、例えば接着剤を用いた接着によってなされてもよい。
ところで、エアバッグ20及びインフレータアセンブリ40を主要な構成部材として有する上記エアバッグモジュールAMは、展開状態のエアバッグ20(図3参照)が折り畳まれることにより、コンパクトな収納用形態にされている(図5の二点鎖線参照)。これは、エアバッグモジュールAMをシートバック14における限られた大きさの収納部15に確実に収納するためである。
上記収納用形態にされたエアバッグモジュールAMは、リテーナ42のボルト45がシートフレーム16に挿通され、ナット17によって締め付けられることにより、同シートフレーム16に固定されている。この状態では、インフレータ41のガス噴出孔43が下部チャンバ33に臨んでいる。
サイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールAMのほかに図1に示す衝撃センサ51及び制御装置52を備えている。衝撃センサ51は加速度センサ等からなり、車両のボディサイド部11(図2参照)等に取付けられている。衝撃センサ51は、ボディサイド部11に外側方から加えられる衝撃を検出する。制御装置52は、衝撃センサ51からの検出信号に基づきインフレータ41の作動を制御する。
上記のようにして、第1実施形態のサイドエアバッグ装置が構成されている。このサイドエアバッグ装置では、車両のボディサイド部11に所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ51によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置52からインフレータ41に対し、これを作動させるための作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータ41では、図4及び図5に示すように、ガス発生剤が高温高圧の膨張用ガスGを発生し、これを複数のガス噴出孔43から噴出する。この膨張用ガスGの多くは下部チャンバ33へ流入する。この流入した膨張用ガスGにより下部チャンバ33が、乗員Pについて耐衝撃性の高い部位である腰部Ppとボディサイド部11との間で、比較的高い内圧で膨張展開する。下部チャンバ33がある程度膨張した後に、膨張用ガスGはテザー27の前後の連通路35,36を通って上部チャンバ34に流入する。この流入した膨張用ガスGによって上部チャンバ34が下部チャンバ33よりも低い内圧で、耐衝撃性の低い部位である胸部Pt及び腹部Pbの車外側近傍で膨張展開する。このように、エアバッグ20が乗員Pの各部の耐衝撃性に応じた内圧で同乗員Pに接触させられ、乗員Pの各部が衝撃から有効に保護される。
さらに、エアバッグ20の膨張に伴い、基本的には、エアバッグ20の車内側布帛部21及び車外側布帛部22の間隔が拡がり、テザー27がそれらの車内側布帛部21及び車外側布帛部22によって車幅方向両側へ引っ張られる。ただし、この際、結合部37が、車内側布帛部21及び車外側布帛部22を相互に接近させた状態に保持し、それらの間隔が拡がるのを規制する(図7参照)。この間隔の規制は結合部37の近傍にも及ぶ。そのため、結合部37の近傍では、図8(A)に示すように車内側布帛部21及び車外側布帛部22による張力がテザー27に加わりにくく、緩む部分(緩み部38)が生ずる。
ここで、エアバッグ20が膨張を完了した直後(膨張完了初期)には、下部チャンバ33の内圧が上部チャンバ34の内圧よりも高く、図8(B)において実線で示すように緩み部38が上側へ押される。
そして、乗員Pの胸部Pt及び腹部Pbがエアバッグ20の上部チャンバ34によって拘束される際(胸部Pt及び腹部Pbが上部チャンバ34に進入する際)に、上部チャンバ34の容積が減少するにつれて内圧が上昇すると、上記緩み部38に対し、図8(B)の矢印Aで示すように上昇した内圧が加わる。これに伴い緩み部38が、同図8(B)において二点鎖線で示すように、下部チャンバ33に向かって押されて変形・移動すると、その分、上部チャンバ34の容積が増大し、内圧の上昇を抑制又は遅延する効果が生まれる。その結果、耐衝撃性の低い部位である胸部Pt及び腹部Pbが、上部チャンバ34によってソフトに拘束される。一方、上記緩み部38の変形・移動に伴い下部チャンバ33の容積が減少して内圧が上昇し、耐衝撃性の高い部位である腰部Ppに対するエアバッグ20の拘束力が高められる、又は持続される効果が生まれる。
ここで、エアバッグ20内のテザー27よりも後側に第1実施形態のように連通路36を設けた場合(図3参照)、エアバッグ20が膨張してテザー27が緊張したときに車内側布帛部21と車外側布帛部22とが車幅方向へ大きく開いて連通路36が大きな開口面積で開口する。
一方、結合部37は、車内側布帛部21及び車外側布帛部22が車幅方向へ開くことを規制する(図7参照)。そのため、第1実施形態によるように、膨張状態のエアバッグ20の前後方向についての中央部よりも後方に結合部37が設けられることで、こうした結合部37が設けられない場合よりも、連通路36の近傍では車内側布帛部21及び車外側布帛部22が車幅方向へ開きにくくなり、同連通路36の開口面積が小さくなる。そのため、連通路36を通過する膨張用ガスGの単位時間当たりの流量が少なくなる。
また、エアバッグ20において結合部37が設けられた箇所では、車内側布帛部21及び車外側布帛部22の車幅方向両側への膨張が規制される。そのため、耐衝撃性の低い部位である腹部Pbが、膨張するエアバッグ20(上部チャンバ34)によって強く押圧される現象が起こりにくい。
さらに、テザー27の一部(上側の後部)が結合部37の一部(下半部37L)によって車内側布帛部21及び車外側布帛部22に結合されていることから、このテザー27の一部が結合部37の上記一部を補強する機能を発揮する。そのため、エアバッグ20の膨張時に膨張用ガスGの圧力及び熱が加わっても、結合部37の上記一部(下半部37L)が損傷を受けにくくなる。これに伴い、結合部37を補強するための対策が少なくてすむ。こうした対策としては、例えば、結合部37の形成に際し、車内側布帛部21及び車外側布帛部22を、それらの間に複数枚の補強布24を介在させた状態で結合することが挙げられるが、第1実施形態では、こうした補強布24の使用量が少なくてすむ。二つ折りした1枚の補強布24を用いるにとどまっている。
また、結合部37が、車内側布帛部21及び車外側布帛部22を縫合することにより形成されていることから、特に縫合部分が膨張用ガスGの熱及び圧力から大きな影響を受けやすい。この点、第1実施形態では、縫合の一部が、車内側布帛部21、車外側布帛部22及び補強布24間にテザー27の一部(上側の後部)を介在させた状態で行なわれている。そのため、テザー27を介在させずに車内側布帛部21及び車外側布帛部22が直接縫合される場合よりも、縫合部分が膨張用ガスGの熱及び圧力から影響を受けにくくなる。
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)エアバッグ20の非膨張時に上方へ屈曲させられた状態のテザー27の近傍に、車内側布帛部21及び車外側布帛部22を相互に接近させた状態で結合する結合部37を設けている(図3、図7)。そのため、エアバッグ20が膨張したときの下部チャンバ33と上部チャンバ34との内圧差についての調整代を大きくすることができる。
(2)エアバッグ20内のテザー27よりも後側に、下部チャンバ33及び上部チャンバ34間を連通させる連通路36を設けたサイドエアバッグ装置において、結合部37を、膨張状態のエアバッグ20の前後方向についての中央部よりも後方に設けている(図3)。そのため、後側の連通路36の開口面積を小さくし、下部チャンバ33及び上部チャンバ34間で生じた内圧差を持続することができる。
(3)結合部37を、エアバッグ20の膨張時に乗員Pの腹部Pbの車外側近傍となる箇所に設けている(図3)。そのため、耐衝撃性の低い部位である腹部Pbが、膨張するエアバッグ20によって強く押圧されるのを抑制することができる。
(4)結合部37の一部(下半部37L)によって、屈曲状態のテザー27の一部(上側の後部)を車内側布帛部21及び車外側布帛部22に結合している(図3)。そのため、結合部37の上記一部(下半部37L)が、膨張用ガスGの熱及び圧力によって損傷されるのを抑制することができる。これに伴い、補強布24の使用量を少なくすることができる。
(5)結合部37形成のための縫合の少なくとも一部(下半部37L)を、車内側布帛部21及び車外側布帛部22間にテザー27の一部(上側の後部)を介在させた状態で行なっている(図3)。そのため、縫合部分の上記一部(下半部37L)が膨張用ガスGの熱及び圧力から受ける影響を小さくすることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、図9〜図11を参照して説明する。
図9は、車両用シート12に着座している乗員Pの車外側近傍で、同乗員Pの胸部Ptから肩部Psにかけての領域をエアバッグ20で保護するタイプのサイドエアバッグ装置を示している。また、図10は図9のS−S線に沿った断面構造を示し、図11(A)は図9のT−T線に沿った断面構造を示している。なお、図10及び図11(A)は、エアバッグ20の膨張展開初期の状態を模式的に示している。
車内側布帛部21及び車外側布帛部22間であって周縁結合部23によって囲まれた空間の大部分、すなわち、エアバッグ20の内部空間のうちインフレータアセンブリ40が占める空間を除く箇所は、インフレータ41からの膨張用ガスによって膨張される膨張予定部26を構成している(図9参照)。膨張予定部26内の中央部よりも若干上方となる箇所にはテザー60が設けられている。テザー60は上述した第1実施形態におけるテザー27と類似した構成を有している。すなわち、テザー60は、車内側及び車外側の一対の構成片61,62を備えている。車内側の構成片61は、上部結合部63によって車内側布帛部21に結合され、車外側の構成片62は、上部結合部64によって車外側布帛部22に結合されている。さらに、両構成片61,62は下部結合部65によって相互に結合されている(図11(A))。このようにして、両構成片61,62を有するテザー60が、車内側布帛部21及び車外側布帛部22間に架け渡されている。このテザー60は、エアバッグ20の非膨張時には下方へ屈曲させられた状態となる。なお、上部結合部63,64及び下部結合部65は、上記縫糸を用いた縫着によって形成されてもよいし、それとは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。
上記エアバッグ20内の膨張予定部26は、上記テザー60を境として、それよりも下側のチャンバと上側のチャンバとに区画されている。前者のチャンバ(下側のチャンバ)は、乗員Pの主として胸部Ptとボディサイド部11との間において、比較的低い内圧で膨張展開して同胸部Ptを拘束及び保護する「下部チャンバ66」となっている。また、後者のチャンバ(上側のチャンバ)は、乗員Pの肩部Psとボディサイド部11との間において、上記下部チャンバ66よりも高い内圧で膨張展開して同肩部Psを拘束及び保護する「上部チャンバ67」となっている。
エアバッグ20内であってテザー60の前側及び後ろ側には、下部チャンバ66及び上部チャンバ67間を連通させる前後一対の連通路68,69が設けられている(図9参照)。これらの連通路68,69により、上部チャンバ67及び下部チャンバ66間での膨張用ガスGの流通が可能となっている。
さらに、エアバッグ20の非膨張時に下方へ屈曲させられた状態の上記テザー60の近傍には、車内側布帛部21及び車外側布帛部22を相互に接近させた状態で環状に結合する結合部70が設けられている(図9及び図10参照)。結合部70は、膨張状態のエアバッグ20の前後方向についての中央部よりも後方に設けられている。結合部70の下半部70Lは、車内側布帛部21及び車外側布帛部22を相互に結合しているが、上半部70Uは、屈曲させられた状態のテザー60(両構成片61,62)の一部を車内側布帛部21及び車外側布帛部22間に介在させた状態で、それらの車内側布帛部21及び車外側布帛部22に結合している。第2実施形態では、この結合が縫合によってなされているが、他の手段、例えば接着剤を用いた接着によってなされてもよい。
インフレータアセンブリ40は、インフレータ41のガス噴出孔43及びリテーナ42の窓部44が上側に位置するように、エアバッグ20内、より正確には下部チャンバ66の後部に配置されている。
なお、第2実施形態において第1実施形態と同様の部材、箇所等には同一の符号を付して説明を省略する。
上記のように構成された第2実施形態のサイドエアバッグ装置では、側突等により車両に対し外側方から衝撃が加わり、インフレータ41から膨張用ガスGが噴出されると、この膨張用ガスGの多くは上部チャンバ67へ流入する。この流入した膨張用ガスGにより上部チャンバ67が、乗員Pについて耐衝撃性の高い部位である肩部Psとボディサイド部11との間で、比較的高い内圧で膨張展開する。上部チャンバ67がある程度膨張した後に、膨張用ガスGはテザー60の前後の連通路68,69を通って下部チャンバ66に流入する。この流入した膨張用ガスGによって下部チャンバ66が上部チャンバ67よりも低い内圧で、耐衝撃性の低い部位である胸部Ptの車外側近傍で膨張展開する。このように、エアバッグ20が乗員Pの各部の耐衝撃性に応じた内圧で同乗員Pに接触させられ、乗員Pの各部が衝撃から有効に保護される。
さらに、エアバッグ20の膨張に伴い車内側布帛部21及び車外側布帛部22の間隔が拡がり、テザー60が車幅方向両側へ引っ張られる。ただし、この際、結合部70が、車内側布帛部21及び車外側布帛部22を相互に接近させた状態に保持し、それらの間隔が拡がるのを規制する。この間隔の規制は結合部70の近傍にも及ぶ。そのため、結合部70の近傍では、車内側布帛部21及び車外側布帛部22による張力がテザー60に加わりにくく、緩む部分(緩み部71:図11(A)参照)が生ずる。
ここで、エアバッグ20が膨張を完了した直後(膨張完了初期)には、上部チャンバ67の内圧が下部チャンバ66の内圧よりも高く、図11(B)において実線で示すように緩み部71が下部チャンバ66側へ押される。
そして、乗員Pの胸部Ptがエアバッグ20の下部チャンバ66によって拘束される際(胸部Ptが下部チャンバ66に進入する際)に、下部チャンバ66の容積が減少するにつれて内圧が上昇すると、上記緩み部71に対し、図11(B)の矢印Bで示すように、上昇した内圧が加わる。これに伴い、緩み部71が図11(B)において二点鎖線で示すように、上部チャンバ67に向かって押されて変形・移動すると、その分、下部チャンバ66の容積が増大し、内圧の上昇を抑制又は遅延する効果が生まれる。その結果、胸部Ptが下部チャンバ66によってソフトに拘束される。一方、上記緩み部71の変形・移動に伴い上部チャンバ67の容積が減少して内圧が上昇し、肩部Psに対するエアバッグ20の拘束力が高められる、又は持続される効果が生まれる。
ここで、エアバッグ20内のテザー60よりも後側に第2実施形態のように連通路69を設けた場合(図9参照)、エアバッグ20が膨張してテザー60が緊張したときに車内側布帛部21と車外側布帛部22とが車幅方向へ大きく開いて連通路69が大きな開口面積で開口する。
一方、結合部70は、車内側布帛部21及び車外側布帛部22が車幅方向へ開くことを規制する(図10参照)。そのため、第2実施形態によるように、膨張状態のエアバッグ20の前後方向についての中央部よりも後方に結合部70が設けられることで、こうした結合部70が設けられない場合よりも、連通路69の近傍では車内側布帛部21及び車外側布帛部22が車幅方向へ開きにくくなり、同連通路69の開口面積が小さくなる。そのため、連通路69を通過する膨張用ガスGの単位時間当たりの流量が少なくなる。
さらに、テザー60の一部(下側の後部)が結合部70の一部(上半部70U)によって車内側布帛部21及び車外側布帛部22に結合されていることから、このテザー60の一部が結合部70の上記一部を補強する機能を発揮する。そのため、エアバッグ20の膨張時に膨張用ガスGの圧力及び熱が加わっても、結合部70の上記一部(上半部70U)が損傷を受けにくくなる。これに伴い、結合部70を補強するための対策、例えば、結合部70の形成に際し、車内側布帛部21及び車外側布帛部22を、それらの間に補強布を介在させた状態で結合することが不要となったり、補強布の使用量が少なくなったりする。
また、第2実施形態では、結合部70の形成のための縫合の一部が、車内側布帛部21及び車外側布帛部22間にテザー60の一部(下側の後部)を介在させた状態で行なわれている。そのため、テザー60を介在させずに車内側布帛部21及び車外側布帛部22が直接縫合される場合よりも、縫合部分が膨張用ガスGの熱及び圧力から影響を受けにくくなる。
このように、第2実施形態では、同第2実施形態における上部チャンバ67が第1実施形態における下部チャンバ33と同様の機能を発揮し、同第2実施形態における下部チャンバ66が第1実施形態における上部チャンバ34と同様の機能を発揮する。
従って、第2実施形態によれば、上記第1実施形態での(1),(2),(4),(5)と同様の効果が得られる。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、図12及び図13を参照して説明する。
図12は、車両用シート12に着座している乗員Pの車外側近傍で、同乗員Pの腰部Ppから肩部Psにかけての広い領域をエアバッグ20で保護するタイプのサイドエアバッグ装置を示している。また、図13(A)は図12のU−U線に沿った断面構造を示し、図13(B)は図12のV−V線に沿った断面構造を示している。なお、図13(A)は、エアバッグ20の膨張展開初期の状態を模式的に示している。
車内側布帛部21及び車外側布帛部22間であって周縁結合部23によって囲まれた空間の大部分、すなわち、エアバッグ20の内部空間のうちインフレータアセンブリ40が占める空間を除く箇所は、インフレータ41からの膨張用ガスGによって膨張される膨張予定部26を構成している。
膨張予定部26内の中央部よりも若干下方となる箇所には、第1実施形態におけるものと同じ構成を有するテザー27が設けられている。このテザー27は、下部結合部30によって車内側布帛部21に結合された車内側の構成片28と、下部結合部31によって車外側布帛部22に結合された車外側の構成片29と、両構成片28,29を結合する上部結合部32とを備えており、車内側布帛部21及び車外側布帛部22間に架け渡されている。
また、上記膨張予定部26内の中央部よりも若干上方となる箇所には、第2実施形態におけるものと同じ構成を有するテザー60が設けられている。このテザー60は、上部結合部63によって車内側布帛部21に結合された車内側の構成片61と、上部結合部64によって車外側布帛部22に結合された車外側の構成片62と、両構成片61,62を結合する下部結合部65とを備えており、車内側布帛部21及び車外側布帛部22間に架け渡されている。
膨張予定部26は、上記2つのテザー27,60によって上下方向に3つのチャンバに区画されている。3つのチャンバのうち、両テザー27,60によって上下から挟まれたものは、乗員Pの主として胸部Pt及び腹部Pbとボディサイド部11との間において、比較的低い内圧で膨張展開して同胸部Pt及び腹部Pbを拘束及び保護する「中間部チャンバ80」となっている。3つのチャンバのうち、テザー27よりも下側に位置するものは、乗員Pの腰部Ppとボディサイド部11との間において、上記中間部チャンバ80よりも高い内圧で膨張展開して同腰部Ppを拘束及び保護する「下部チャンバ81」となっている。また、3つのチャンバのうち、テザー60よりも上側に位置するものは、乗員Pの肩部Psとボディサイド部11との間において、上記中間部チャンバ80よりも高い内圧で膨張展開して同肩部Psを拘束及び保護する「上部チャンバ82」となっている。
エアバッグ20の非膨張時に上方へ屈曲させられた状態の下側のテザー27の近傍には、車内側布帛部21及び車外側布帛部22を相互に接近させた状態で環状に結合する結合部37が設けられている。また、エアバッグ20の非膨張時に下方へ屈曲させられた状態の上側のテザー60の近傍には、車内側布帛部21及び車外側布帛部22を相互に接近させた状態で環状に結合する結合部70が設けられている。結合部37,70はいずれも、膨張状態のエアバッグ20の前後方向についての中央部よりも後方に設けられている。
さらに、エアバッグ20内の後部には、インフレータアセンブリ40を覆うインナチューブ83が配設されている(図12参照)。インナチューブ83は、エアバッグ20と同様、強度が高く、かつ可撓性を有する布帛によって、上下方向に細長い管状に形成されている。インナチューブ83は、図示しないが、上記インフレータアセンブリ40とともにシートフレーム16に固定されている。インナチューブ83の上端部及び下端部にはそれぞれ開口84,85が設けられている。インナチューブ83は、インフレータ41から噴出された膨張用ガスGの一部を、上側の開口84から略上方へ向けて導出するとともに、同膨張用ガスGの一部を、下側の開口85から略下方へ向けて導出する。このように、インナチューブ83は、膨張用ガスGを上下2方向に整流する機能を有する。
なお、第3実施形態において第1及び第2実施形態と同様の部材、箇所等には同一の符号を付して説明を省略する。
上記のように構成された第3実施形態のサイドエアバッグ装置では、側突等により車両に対し外側方から衝撃が加わり、インフレータ41から膨張用ガスGが噴出されると、この膨張用ガスGは、インナチューブ83の上下両開口84,85から導出される。上側の開口84から出た膨張用ガスGの多くは上部チャンバ82へ流入し、下側の開口85から出た膨張用ガスGの多くは下部チャンバ81へ流入する。
上記膨張用ガスGの流入により下部チャンバ81が、乗員Pについて耐衝撃性の高い部位である腰部Ppとボディサイド部11との間で、比較的高い内圧で膨張展開する。また、上記膨張用ガスGの流入により上部チャンバ82が、乗員Pについて耐衝撃性の高い部位である肩部Psとボディサイド部11との間で、比較的高い内圧で膨張展開する。
下部チャンバ81及び上部チャンバ82のそれぞれがある程度膨張した後に、膨張用ガスGはテザー27,60の前後の連通路35,36,68,69を通って中間部チャンバ80に流入する。この流入した膨張用ガスGによって中間部チャンバ80が下部チャンバ81及び上部チャンバ82よりも低い内圧で、耐衝撃性の低い部位である胸部Pt及び腹部Pbとボディサイド部11との間で膨張展開する。このように、エアバッグ20が乗員Pの各部の耐衝撃性に応じた内圧で同乗員Pに接触させられ、乗員Pの各部が衝撃から有効に保護される。
さらに、エアバッグ20の上記膨張に伴い、車内側布帛部21及び車外側布帛部22の間隔が拡がり、各テザー27,60が車幅方向両側へ引っ張られる。ただし、この際、結合部37,70が、車内側布帛部21及び車外側布帛部22を相互に接近させた状態に保持し、それらの間隔が拡がるのを規制する。この間隔の規制は結合部37,70の近傍にも及ぶ。そのため、結合部37,70の近傍では、車内側布帛部21及び車外側布帛部22による張力がテザー27,60に加わりにくく、緩む部分(緩み部38,71:(図13(B)参照))が生ずる。
ここで、エアバッグ20が膨張を完了した直後(膨張完了初期)には、上部チャンバ82及び下部チャンバ81の各内圧が中間部チャンバ80の内圧よりも高く、図13において実線で示すように、緩み部38,71が中間部チャンバ80側へ押されている。
そして、乗員Pの胸部Pt及び腹部Pbがエアバッグ20の中間部チャンバ80によって拘束される際(胸部Pt及び腹部Pbが中間部チャンバ80に進入する際)に、中間部チャンバ80の容積が減少するにつれて内圧が上昇すると、上記両緩み部38,71に対し、図13(B)の矢印A,Bで示すように、上昇した内圧が加わる。これに伴い、図13(B)において二点鎖線で示すように、緩み部38が下部チャンバ81に向かって押されて変形・移動し、緩み部71が上部チャンバ82に向かって押されて変形・移動すると、その分、中間部チャンバ80の容積が増大し、内圧の上昇を抑制又は遅延する効果が生まれる。その結果、胸部Pt及び腹部Pbが中間部チャンバ80によってソフトに拘束される。この効果は、第1実施形態及び第2実施形態のそれぞれよりも大きい。中間部チャンバ80の容積の増大量が、緩み部38の変形のみによる第1実施形態や、緩み部71の変形のみによる第2実施形態よりも多くなるからである。一方、上記緩み部38,71の変形・移動に伴い下部チャンバ81及び上部チャンバ82の各容積が減少して内圧が上昇し、腰部Pp及び肩部Psの各々に対するエアバッグ20の拘束力が高められる、又は持続される効果が生まれる。
このように、第3実施形態では、同第3実施形態における下部チャンバ81が第1実施形態における下部チャンバ33と同様の機能を発揮し、同第3実施形態における上部チャンバ82が第2実施形態における上部チャンバ67と同様の機能を発揮する。また、同第3実施形態における中間部チャンバ80が、第1実施形態における上部チャンバ34、及び第2実施形態における下部チャンバ66と同様の機能を発揮する。
従って、第3実施形態によれば、第1実施形態及び第2実施形態を組み合わせた効果が得られる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・上述した(4)の効果、すなわち、結合部37,70の一部が膨張用ガスGの熱及び圧力によって損傷するのを抑制する効果は、テザー27,60について、結合部37,70によって車内側布帛部21及び車外側布帛部22に結合される箇所が大きくなるに従い大きなものとなる。そのため、上記(4)の効果をより大きくする観点からは、テザー27,60について、結合部37,70によって車内側布帛部21及び車外側布帛部22に結合される箇所を大きくすることが望ましい。
因みに、環状の結合部37,70の全部によってテザー27,60が車内側布帛部21及び車外側布帛部22に結合される場合に、上記効果が最も大きなものとなる。
・結合部37,70は、エアバッグ20の非膨張時に、屈曲状態のテザー27,60から離れた箇所において、車内側布帛部21及び車外側布帛部22を相互に接近させた状態で結合するものであってもよい。このように、結合部37,70がテザー27,60から離れた箇所に設けられている場合であっても、テザー27,60における結合部37,70の近傍では、車内側布帛部21及び車外側布帛部22による張力が加わりにくく、緩み部38,71が生ずる。そのため、この場合にも上述した(1)の効果が得られる。
・結合部37は、エアバッグ20の非膨張時に下方へ屈曲させられた状態のテザー27の近傍に設けられて、車内側布帛部21及び車外側布帛部22を相互に接近させた状態で結合するものであってもよい。同様に、結合部70は、エアバッグ20の非膨張時に上方へ屈曲させられた状態のテザー60の近傍に設けられて、車内側布帛部21及び車外側布帛部22を相互に接近させた状態で結合するものであってもよい。要は、結合部37,70は、エアバッグ20の非膨張時に上方又は下方へ屈曲させられた状態のテザー27,60の近傍に設けられるものであればよい。
・前記各実施形態では、インフレータ41として、長尺状をなし、かつ軸方向についての一方の端部にのみガス噴出孔43を有するものを用いたが、これに代え、軸方向について異なる2箇所に、単位時間当たりのガス噴出量の異なる2つのガス噴出孔を有するものを用いてもよい。このように、ガス噴出孔間でガス噴出量を異ならせる構成としては、例えば、インフレータ41内に設けた2つの収容室に、(i)同一種類のガス発生剤を収容するものと、(ii)単位時間当たりのガス発生量の異なる2種類のガス発生剤を収容するものとがある。前者(i)の場合、ガス発生剤の収容量を収容室間で異ならせる。
そして、ガス噴出量の多い側のガス噴出孔が内圧の高い側のチャンバに位置し、かつガス噴出量の少ない側のガス噴出孔が内圧の低い側のチャンバに位置するように、インフレータ41をエアバッグ20内に配置する。
この場合、下部チャンバ33及び上部チャンバ34に対し、対応するガス噴出孔43から膨張用ガスGがそれぞれ噴出される。単位時間当たりのガス噴出量の相違から一方のチャンバが他方のチャンバよりも早く膨張する。従って、膨張用ガスGの噴出態様が若干異なるものの、上記各実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
・第1及び第3実施形態において、テザー27の前後における連通路35,36の一方を省略してもよい。また、第2及び第3実施形態において、テザー60の前後における連通路68,69の一方を省略してもよい。
・第1実施形態において、連通路35,36を省略し、膨張予定部26をテザー27等によって、互いに独立した状態の下部チャンバ33及び上部チャンバ34に区画するようにしてもよい。ただし、この場合には、下部チャンバ33の内圧が上部チャンバ34の内圧よりも高くなるように、各チャンバ33,34に膨張用ガスGを供給する。
また、第2実施形態において、連通路68,69を省略し、膨張予定部26をテザー60等によって、互いに独立した状態の下部チャンバ66及び上部チャンバ67に区画するようにしてもよい。ただし、この場合には、上部チャンバ67の内圧が下部チャンバ66の内圧よりも高くなるように、各チャンバ66,67に膨張用ガスGを供給する。
また、第3実施形態において、連通路35,36,68,69を省略し、膨張予定部26をテザー27,60等によって互いに独立した状態の下部チャンバ81、中間部チャンバ80及び上部チャンバ82に区画するようにしてもよい。ただし、この場合には、下部チャンバ81及び上部チャンバ82の各内圧が中間部チャンバ80の内圧よりも高くなるように、各チャンバ80〜82に膨張用ガスGを供給する。
・膨張予定部26を2つのテザー27,60によって3つのチャンバ(上部チャンバ82、中間部チャンバ80、下部チャンバ81)に区画した第3実施形態において、結合部37,70の一方を省略してもよい。
・本発明は、ボルト45とは異なる部材を係止部材として用いてリテーナ42を車両(シートフレーム16)に固定するようにしたサイドエアバッグ装置にも適用可能である。
11…ボディサイド部、12…車両用シート、20…エアバッグ、21…車内側布帛部、22…車外側布帛部、27,60…テザー、33,66,81…下部チャンバ、34,67,82…上部チャンバ、35,36,68,69…連通路、37,70…結合部、41…インフレータ、G…膨張用ガス、P…乗員、Pb…腹部、Pp…腰部、Ps…肩部、Pt…胸部。