JP2010222536A - セルロース及び高分子セルロース複合体の製造方法 - Google Patents

セルロース及び高分子セルロース複合体の製造方法 Download PDF

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Abstract


【課題】 高透明性、非着色性、低線膨張係数化、高弾性率を実現する高分子セルロース複合体を得ることができる、セルロースの製造方法を提供する
【解決手段】 原料セルロースを、水中で有機酸と接触する工程と、セルロースを解繊する工程を有することを特徴とすることによりセルロースを製造する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、セルロース及び高分子セルロース複合体の製造方法に関するものであり、特に有機酸で処理することで、高分子との複合体にした際の、高透明性、非着色性を実現する技術に関する。
近年、バクテリアセルロースをはじめとするセルロースの微細繊維を用いた複合材料がさかんに研究されている。セルロースはその伸びきり鎖結晶が故に、低線膨張係数と高弾性率と高強度とを発現することが知られている。また、微細化することにより太さが数nmから200nmの範囲にある微小かつ高結晶性のセルロースナノファイバーが得られ、その繊維の隙間を高分子材料で埋めることで高い透明性と低線膨張率を有する複合体が得られることが報告されており注目されている。
特許文献1においては、バクテリアセルロースや木質を原料に含水状態から乾燥してシートとし、その後セルロースを酢酸/無水酢酸でアセチル化し、高分子とのセルロース複合材料を得ている。しかし、木質原料においては、当該特許文献の実施例6にあるように化学修飾率が7.2mol%と低い場合、複合化の後処理で加熱した際に、着色してしまうという問題点があることが、本発明者らの検討により判明している。さらに、セルロースが、酢酸/無水酢酸で切断されるため、複合材料とした際に機械的強度が弱いことが判明した。又、本発明者らの検討によれば、化学修飾していない木質においては、複合化の後処理で過熱した際の着色はさらに大きいことがわかっている。
非特許文献1においては木質を精製して得られるパルプそのものの着色物質として、リグニンのα位と糖の6位がエーテル結合したリグニン−炭化水素複合体が知られており、これは酸に対しては比較的弱いことから、酸による脱リグニン法が提案されている。しかしながらこの処理方法の例としては、希硫酸水溶液中で微量の硝酸Naを添加し、pH1.0−1.8で沸騰浴中で処理するといった、強酸、高温を要するものであった。更に、近年パルプの着色物質として知られているヘキセンウロン酸の除去については、例えばpH3.5−4.95で、約110℃で加水分解弱酸処理をすることが効果的であり、やはり高温を要するものであった。更には95℃、pH3で2hr処理しても、ヘキセンウロン酸は、5割しかとれない報告もある。一般にpHが低い程、温度が高いほど、処理時間が長いほどリグニン量を示すカッパー価の低下幅が大きいとされている。
一方、特許文献2には、このような硫酸処理工程においてpHが2未満では、脱リグニン、漂白の効果よりも多糖類の分解の効果の方が顕著となり、パルプの強度低下と収率低下が大きくなるので適さないとの記載もある。
更に、セルロースの精製方法において、例えば特許文献43のように硫酸等の酸処理の工程を入れることにより熱退色性を改良する方法が知られている。しかしながら本発明者らの検討によれば、硫酸で酸処理を行った場合、後のナノファイバー化の工程で解繊されにくくなり、得られたセルロースと高分子を複合化した際に、ヘイズが低下するという問題点があった。さらに、弾性率のような機械的物性も低下することが判明し、特にナノファイバーセルロースの製造において、硫酸のような無機酸で処理することは問題があった。
特開2007−51266号公報 特開2000−110089号公報 特開2005−105426
「パルプの洗浄、精選、漂白」紙パルプ技術協会
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、高透明性、非着色性、低線膨張係数化を実現する高分子セルロース複合体を得ることができる、セルロースの製造方法を提供するものである。
本発明者らが検討したところ、原料セルロースを有機酸で処理する工程と、セルロースを解繊する工程を組み合わせることで、得られたセルロースを高分子との複合化した際に、高透明性、非着色性、低線膨張係数化を達成することができることを見出した。すなわち本発明は、 原料セルロースを、水中で有機酸と接触する工程と、セルロースを解繊する工程を有することを特徴とするセルロースの製造方法に存する。
本発明によれば、原料セルロースを水中で有機酸と接触する工程と、セルロースを解繊する工程を組み合わせることにより、得られるセルロースを高分子と複合化する際、もしくはその後の、加熱処理における着色が小さく、非着色性、高透明、低線膨張係数な複合材料が得られるといった効果が奏される。さらには、本発明の製造方法で得られるナノファイバーセルロースを用いて高分子と複合化した際、非着色性、高透明性な複合材料が得られる。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
[原料セルロース]
本発明における原料セルロースとは、一般的な精製を経た粗セルロースである。例えば、ベンゼン及びエタノールまたは、炭酸ナトリウムで脱脂した後、ワイズ法で脱リグニン処理を行い、更にアルカリ中で脱ヘミセルロース処理を行ったものが挙げられる。もしくは一般的な製紙用パルプで用いられる化学パルプ化法を適用することもできる。
<種類>
原料セルロースの由来としては、針葉樹や広葉樹等の木質、コットンリンターやコットンリント等のコットン、さとうきびや砂糖大根等の絞りかす、亜麻、ラミー、ジュート、ケナフ等の靭皮繊維、サイザル、パイナップル等の葉脈繊維、アバカ、バナナ等の葉柄繊維、ココナツヤシ等の果実繊維、竹等の茎幹繊維、バクテリアが産生するバクテリアセルロース、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等が挙げられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高いので低線膨張率、高弾性率になり好ましい。バクテリアセルロースは微細な繊維径のものが得やすい点で好ましい。また、コットンも微細な繊維径なものが得やすい点で好ましく、さらに原料が得やすい点で好ましい。さらには針葉樹や広葉樹等の木質も微細な繊維径のものが得られ、かつ地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続型資源あることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、経済的な点から優位である。このようなセルロース原料を一般的な精製を経て本発明の原料セルロースとする。
<繊維径>
本発明の原料セルロースの繊維径は特に制限されるものではなく、数平均繊維径としては数μmから数mmである。一般的な精製を経たものは数mm程度であり、原料セルロースを解繊したものは数nmである。例えばチップ等の数cm大のものを精製したものである場合、リファイナーやビーター当の離解機で機械的処理を行い、数mm程度にすることが好ましい。
<原料セルロースの製造方法>
本発明の原料セルロースは上記由来のセルロース含有物を通常の方法で精製して得られる。例えば、ベンゼン−エタノールで脱脂した後、ワイズ法で脱リグニン処理を行い、アルカリで脱ヘミセルロース処理をすることにより得られる。または一般的な化学パルプの製造方法、例えばクラフトパルプ、サリファイドパルプ、アルカリパルプの製造方法によって得られる。一般的に、セルロース含有物を蒸解釜で加熱処理して脱リグニン等の処理を行い、更に漂白処理等を行うものである。
[有機酸と接触する工程]
本発明は原料セルロースを有機酸と接触することにより、得られるセルロースもしくは高分子セルロース複合体の加熱による着色を抑制することを特徴とする。以下、有機酸と接触する工程について説明する。
<有機酸の種類>
有機酸とは、有機化合物の酸の総称である。有機酸は主にカルボン酸、スルホン酸である。カルボン酸としては、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等の脂肪族カルボン酸、オレイン酸、リノール酸等の脂肪族不飽和カルボン酸、蓚酸、マロン酸、琥珀酸等の脂肪族ジカルボン酸、安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸、ピルビン酸等のオキソカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のカルボン酸が挙げられる。スルホン酸としては、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、脂肪族不飽和スルホン酸、脂肪族ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸等が挙げられる。
従来より、セルロースを漂白する方法として、硫酸等の無機酸による処理が知られているが、本発明者らの検討によれば、無機酸で処理した場合、着色の抑制効果はある程度得られるが、その後、ナノファイバー化するために解繊処理を行う際、解繊されにくくなるという欠点があることがわかっており、処理は有機酸で行うことが好ましい。
有機酸の中でも特に酸解離定数pKaが5.0以下であるものが好ましい。好ましくは4.8以下であるものが好ましい。pKaが高すぎると酸としての働きが弱くなり、得られるセルロースまたはその高分子セルロース複合体の加熱時の着色が抑制されず好ましくない。また、pKaは0.1以上、好ましくは1.0以上であることが好ましい。pKaが小さすぎると、酸の働きが強すぎ、得られるセルロースまたはその高分子セルロース複合体の加熱時の着色は抑制されるかもしれないが、セルロース自身も攻撃され、収率が落ちたり線膨張係数が高くなったり、弾性率が低くなったりするため好ましくない。
酸解離定数pKaが5.0以下である有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オレイン酸、リノール酸、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、安息香酸、フタル酸、ピルビン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸が挙げられる。
後述のように、水中で有機酸と接触する工程を行うため、有機酸は水溶性であることが好ましい。例えば、20℃における100gの水への溶解度は0.1g以上であることが好ましく1g以上であることが更に好ましく、5g以上であることが特に好ましい。水への溶解度が0.1gより小さい場合、酸としての働きが弱くなり、得られるセルロースまたはその高分子セルロース複合体の加熱時の着色が抑制されず好ましくない。
上記有機酸の中でも特に脂肪族の有機酸が好ましい。脂肪族の有機酸は酸解離定数と溶解度が上記の範囲に適合しやすく、酸としての働きが効果的であり好ましい。脂肪族であれば、モノ体であってもジ体であってもそれ以上であっても構わない。さらにそれら脂肪族の有機酸はカルボン酸であることが好ましい。本発明者らの検討によれば、詳細はわからないが、スルホン酸のような強酸より、カルボン酸のような弱酸の方が得られるセルロースまたはその高分子セルロース複合体の加熱時の着色が抑制され効果的である。更に脂肪族カルボン酸の中でも脂肪鎖の炭素数が0から6であることが好ましく、0から4であることが更に好ましい。特にその中でも、酢酸や蓚酸が好ましい。
また、本発明による有機酸と接触する工程は水中で行うことを特徴とする。これは、セルロース含有物から原料セルロースを得る精製工程が水中で行われるため、これを他の溶媒に置換することは効率的ではないし、その後の廃棄等を考えると環境に負荷が掛かる。また、水以外の溶媒に置換することで原料セルロースが凝集していまい、解繊されにくくなる場合があり好ましくない。従って、有機酸処理は水中で行われる。この場合凝集を起こさないような若干の水溶性有機溶媒を含むことは構わない。水中で有機酸処理を行うため、有機酸は水溶性であることが好ましい。例えば、20℃における100gの水への溶解度は0.1g以上であることが好ましく1g以上であることが更に好ましく、5g以上であることが特に好ましい。水への溶解度が0.1gより小さい場合、酸としての働きが弱くなり、得られるセルロースまたはその高分子セルロース複合体の加熱時の着色が抑制されず好ましくない。
上記有機酸の中でも特に脂肪族の有機酸が好ましい。脂肪族の有機酸は酸解離定数と溶解度が上記の範囲に適合しやすく、酸としての働きが効果的であり好ましい。脂肪族であれば、モノ体であってもジ体であってもそれ以上であっても構わない。さらにそれら脂肪族の有機酸はカルボン酸であることが好ましい。本発明者らの検討によれば、詳細はわからないが、スルホン酸のような強酸より、カルボン酸のような弱酸の方が得られるセルロースまたはその高分子セルロース複合体の加熱時の着色が抑制され効果的である。更に脂肪族カルボン酸の中でも脂肪鎖の炭素数が0から6であることが好ましく、0から4であることが更に好ましい。特にその中でも、酢酸や蓚酸が好ましい。
<有機酸と接触する条件>
有機酸と接触する工程における有機酸の添加量に関しては、特に制限はないが、原料セルロースに対して0.1重量倍以上が好ましく、1重量倍以上が更に好ましく、2重量倍以上が特に好ましい。また1000重量倍以下が好ましく、500重量倍以下が更に好ましく、300重量倍以下が特に好ましい。少なすぎると酸としての働きが弱くなり、得られるセルロースまたはその高分子セルロース複合体の加熱時の着色が抑制されず好ましくない。また、多すぎると大量の有機酸が必要であり、生産性の点で好ましくない。
有機酸は水中で原料セルロースと接触するが、水と有機酸の総量に対する有機酸含有量としては、0.1重量%以上であることが好ましく、80重量%以下であることが好ましい。少なすぎると、酸としての働きが弱くなり、得られるセルロースまたはその高分子セルロース複合体の加熱時の着色が抑制されず好ましくない。また多すぎると、酸の働きが強すぎ、得られるセルロースまたはその高分子セルロース複合体の加熱時の着色は抑制されるかもしれないが、セルロース自身も攻撃され、収率が落ちたり線膨張係数が高くなったり、弾性率が低くなったりするため好ましくない。
水中で有機酸と接触する工程のpHは5以下であることが好ましく、4以下であることが更に好ましい。また、1以上であることが好ましい。高すぎると酸処理の効果が弱くなり得られるセルロースまたはその高分子セルロース複合体の加熱時の着色が抑制されず好
ましくない。また、小さすぎると酸の働きが強すぎ、得られるセルロースまたはその高分子セルロース複合体の加熱時の着色は抑制されるかもしれないが、セルロース自身も攻撃され、収率が落ちたり線膨張係数が高くなったり、弾性率が低くなったりするため好ましくない。
また、原料セルロースを、水中で有機酸と接触する工程における原料セルロースの濃度については、特に限定は無く、上記の原料セルロースと有機酸の量比、有機酸と水の量比の範囲に入っていることが好ましい。0.01重量%以上がより好ましく、0.1重量%が更に好ましい。また、1000重量%以下がより好ましく、500重量%以下が更に好ましい。低すぎると、生産性の点で好ましくない。また、大きすぎると、原料セルロースと酸の接触が悪くなるため酸処理の効率が落ち、好ましくない。
また、酸処理する温度は特に制限はないが、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることが更に好ましい。また、100℃以下であることが好ましく、75℃以下であることが更に好ましく、50℃以下であることが特に好ましい。低すぎると、水及び有機酸の取り扱いがしにくくなるため好ましくない。同様に高すぎると水の取り扱いが煩雑になるため好ましくない。本発明者らの検討によれば、有機酸を用いた酸洗浄を行うことで、比較的マイルドな温度条件で処理ができることを見出した。
原料セルロースを、有機酸と接触する時間も特に制限はないが、一般的に1分以上が好ましく、10分以上が好ましい。また、12時間以下が好ましく、5時間以下が更に好ましい。短かすぎると酸処理の効果が弱くなり、得られるセルロースまたはその高分子セルロース複合体の加熱時の着色が抑制されず好ましくない。また、長すぎると、得られるセルロースまたはその高分子セルロース複合体の加熱時の着色を抑制する効果が特にそれ以下と変わらないが、セルロース自身も攻撃され、収率が落ちたり線膨張係数が高くなったり、弾性率が低くなったりするため好ましくない。また、生産性の点でも好ましくない。本発明者らの検討によれば、有機酸を用いた酸洗浄を行うことで、比較的短い時間でも効果的な処理ができることを見出した。
有機酸と接触する工程については、一般的な脱脂、脱リグニン、脱ヘミセルロース等の精製工程後、もしくは蒸解の後や漂白工程の後であれば特に制限はない。例えば、脱ヘミセルロースや、蒸解や漂白工程の後に行ってもよいし、精製工程後、原料セルロースを解繊した後に行ってもよいし、解繊後に抄紙等でシート状にした後に行ってもよい。
脱ヘミセルロースや、蒸解や漂白工程の後に行う場合、それぞれの処理の後、水洗浄を行ってから酸処理しても構わないし、処理液を除去してからそのまま行っても構わない。処理液及び洗浄水をある程度除去した原料セルロースに上記条件に入るような酸処理液を添加し、原料セルロースによく接触するように攪拌する。この状態で例えば上記温度、時間で酸処理を行った後、処理液を除去する。その後、中性になるまで水洗浄を行うことが好ましい。
精製工程後、原料セルロースを解繊しナノファイバー化した後に酸処理を行う場合は、原料ナノファイバーセルロースの分散液に有機酸または有機酸水溶液を添加し、均一に接触するように攪拌し、上記温度、時間で処理を行った後、濾過等で処理液を除去する。その後、水や有機溶媒で洗浄を行うことが好ましい。また、その後乾燥してシート状にしても構わない。
解繊後に抄紙等でシート状にした後に酸処理を行う場合には、原料ナノファイバーセルロースのシートを有機酸水溶液に浸漬し、上記温度、時間で処理を行う。その際、攪拌はしてもしなくても構わない。シートに負荷がかかるような攪拌は好ましくない。処理を行った後は、シートを取り出し、再度乾燥するが、その前に水や有機溶媒で洗浄を行うことが好ましい。
詳細なことは判明していないが、本発明における有機酸と接触する工程を行うことで、加熱時の着色成分がセルロースから洗い落とされるため、得られるセルロースまたはその高分子セルロース複合体の加熱時の着色が抑制されると考えられる。
本発明の製造方法により得られるセルロースは着色が抑制されたものであるが、その効果は加熱処理を行った際の着色度合いで測定することができる。
例えば、190℃で4時間加熱した際の、着色を示す指標である、イエローインデックス値(以下、YIと称す)は、50以下であることが好ましい。
また、本発明者らの検討によれば、加熱による着色の抑制と、セルロースの示差熱熱重量同時測定装置(以下、TG−DTAと称す)における熱分解温度には相関があり、熱分解温度は300℃以上であることが好ましく、310℃以上であることが好ましい。
[解繊工程]
本発明において、ナノファイバーセルロースを得るために解繊工程を行うが、その方法について説明する。解繊工程は、精製後の原料セルロースに行う場合もあるし、原料セルロースを有機酸で接触した後に行う場合もある。
解繊工程の具体的な方法としては、特に制限はないが、例えば、直径1mm程度のセラミック製ビーズをセルロース濃度0.1〜10重量%、例えば1重量%程度のセルロース分散液に入れ、ペイントシェーカーやビーズミル等を用いて振動を与え、セルロースを解繊する方法などが挙げられる。
また、ブレンダータイプの分散機や高速回転するスリットの間に、このようなセルロース分散液を通して剪断力を働かせて解繊する方法(高速回転ホモジナイザー)や、高圧から急に減圧することによって、セルロース繊維間に剪断力を発生させて解繊する方法(高圧ホモジナイザー法)、マスコマイザーXのような対向衝突型の分散機(増幸産業)等を用いる方法などが挙げられる。 特に、高速回転ホモジナイザーや高圧ホモジナイザー処理は、解繊の効率が向上する。
これらの処理で解繊する場合は、セルロース含有物としての固形分濃度が0.2重量%以上10重量%以下、特に0.3重量%以上6重量%以下で行う。この解繊工程に供するセルロース含有物分散液中の固形分濃度が低過ぎると処理するセルロース量に対して液量が多くなり過ぎ効率が悪く、固形分濃度が高過ぎると流動性が悪くなるため、解繊処理に供するセルロース含有物分散液は適宜水を添加するなどして濃度調整する。
高速回転ホモジナイザーの場合、回転数が高い方が剪断が掛かり解繊効率が高い。回転数としては例えば10000rpm以上が好ましく、15000rpm以上が更に好ましく、20000rpm以上が特に好ましい。また、時間は1分以上が好ましく、5分以上が更に好ましく、10分以上が特に好ましい。剪断により発熱が生じる場合は液温が50℃を越えない程度に冷却することが好ましい。また、分散液に均一に剪断がかかるように攪拌または循環することが好ましい。高速回転で解繊する方法や、高圧ホモジナイザー法で液を100MPa以上の高圧雰囲気下から噴出させる。
高圧ホモジナイザーを用いる場合、セルロース含有物分散液を増圧機で30MPa以上、好ましくは100MPa以上、より好ましくは150MPa以上、更に好ましくは220MPa以上に加圧し、細孔直径50μm以上のノズルから噴出させ、圧力差が30MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは90MPa以上となるように減圧する。この圧力差で生じるへき開現象により、セルロース繊維を解繊する。ここで、高圧条件の圧力が低い場合や、高圧から減圧条件への圧力差が小さい場合には、解繊効率が下がり、所望の繊維径とするための繰り返し噴出回数が多く必要となるため好ましくない。また、セルロース含有物分散液を噴出させる細孔の細孔直径が大き過ぎる場合にも、十分な解繊効果が得られず、この場合には、噴出処理を繰り返し行っても、所望の繊維径のセルロース繊維が得られないおそれもある。
セルロース含有物分散液の噴出は、必要に応じて複数回繰り返すことにより、微細化度を上げて所望の繊維径のセルロース繊維を得ることができる。この繰り返し回数(パス数)は、通常1回以上、好ましくは3回以上で、通常20回以下、好ましくは15回以下である。パス数が多い程、微細化の程度を上げることができるが、過度にパス数が多いとコスト高となるため好ましくない。
高圧ホモジナイザーとしては特に限定はないが、具体的装置としては、ガウリン社製やスギノマシン社製の「スターバーストシステム」を用いることができる。
噴出時の高圧条件は高い程、圧力差により大きなへき開現象でより一層の微細化を図ることができるが、装置仕様の上限として、通常245MPa以下である。
同様に、高圧条件から減圧下への圧力差も大きいことが好ましいが、一般的には、増圧機による加圧条件から大気圧下に噴出することで、圧力差の上限は通常245MPa以下である。
また、セルロース含有物分散液を噴出させる細孔の直径は小さければ容易に高圧状態を作り出せるが、過度に小さいと噴出効率が悪くなる。この細孔直径は50μm以上800μm以下、好ましくは100μm以上500μm以下、より好ましくは150μm以上350μm以下である。
噴出時の温度(分散液温度)には特に制限はないが、通常5℃以上100℃以下である。温度が高すぎると装置、具体的には送液ポンプや高圧シール部等の劣化を早める恐れがあるため好ましくない。
なお、噴出ノズルは1本でも2本でもよく、噴出させたセルロースを噴出先に設けた壁やボール、リングにぶつけてもよい。更にノズルが2本の場合には噴出先でセルロース同士を衝突させてもよい。
なお、このような高圧ホモジナイザーによる処理のみでも、本発明の微細セルロース繊維分散液を得ることは可能であるが、その場合には、十分な微細化度とするための繰り返し回数が多くなり、処理効率が悪いことから、1〜5回程度の高圧ホモジナイザー処理後に後述の超音波処理を行って微細化することが好ましい。
本発明において、超音波処理するセルロース分散液のセルロース濃度は、0.01〜10重量%、特に0.1〜5重量%、とりわけ0.2〜2重量%であることが好ましい。超音波を照射するセルロース含有物分散液のセルロース濃度が低過ぎると非効率であり、高過ぎると粘度が高くなり解繊処理が不均一になる。従って、本発明においては、超音波処理に供されるセルロース含有物分散液のセルロース濃度が上記所定濃度となるように、必要に応じて水及び/又は有機溶媒を添加する。
なお、セルロース含有物分散液の分散媒としての有機溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール等のアルコール類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、その他水溶性の有機溶剤の1種又は2種以上を用いることができるが、好ましくは、分散媒は有機溶媒と水との混合液又は水であり、特には水であることが好ましい。
また、超音波を照射するセルロース含有物分散液中のセルロース繊維の数平均繊維径は、上述の解繊により10μm以下、特に2μm以下にしておくことが好ましい。さらに好ましくは1μm以下であることが好ましい。
セルロース含有物分散液に照射する超音波の周波数は15kHz〜1MHz、好ましくは20kHz〜500kHz、更に好ましくは20kHz〜100kHzである。照射する超音波の周波数が小さ過ぎると後述のキャビテーションが発生しにくく、大き過ぎると発生したキャビテーションが物理的な作用を発生させるまでに大きく成長することなく消滅してしまうため、微細化効果が得られない。また、超音波の出力としては、実行出力密度として1W/cm以上であり、好ましくは10W/cm以上、更に好ましくは20W/cm以上である。超音波の出力が小さ過ぎると微細化効率が低下して、十分な微細化を行うために長時間の照射が必要であり、実用的ではない。なお、超音波の実行出力密度の上限は振動子やホーン等の耐久性の点から500W/cm以下である。
なお、超音波の実効出力密度は水500mLの温度上昇から計算することができる。具体的には、容器に水500mLを投入し、この水に超音波を照射してそのときの温度上昇の程度を測定し、下記式(1)に従って計算することにより求められる。
P=(T/s)×4.18×500/A …(1)
ここで、Pは超音波の実効出力密度(W/cm)、Tは上昇温度(℃)、sは時間(秒)、Aは超音波の振動部の面積(cm)であり、ホーンタイプの場合はその端面の面積である。また、浴槽式の場合は振動子取り付け面の面積に相当する。
なお、温度の測定に際しては、投入した超音波のエネルギーにより生じた熱が外部に伝わらないように、水を入れる容器は十分に断熱する必要がある。また、室温よりも高い温度では熱が外部に伝わりやすいため、室温よりも10℃まで上がった時の温度とその時の時間を用いて上記(1)式により計算する。
超音波の照射方法には特に制限はなく、各種の方法が利用できる。例えば、超音波振動子の振動を伝えるホーンを直接上記のセルロース含有物分散液に挿入することにより、直接セルロース繊維を微細化する方法や、セルロース含有物分散液を入れた容器の床や壁の一部に超音波振動子を設置してセルロース繊維を微細化する方法や、超音波振動子を装着した容器に水等の液体を入れ、その中にセルロース含有物分散液を入れた容器を漬すことにより、水等の液体を介して間接的に超音波振動をセルロース含有物分散液に与えて微細化する方法が採用できる。中でも、ホーンを直接セルロース含有物分散液に挿入する方法は直接超音波エネルギーを伝達することできエネルギー密度を高くできるので効率がよく、好適に利用される。
セルロース含有物分散液は一定の量に対して一定時間所定の周波数の超音波を所定の実効出力密度で照射した後、全量を入れ替えるバッチ式の処理方法で微細化処理しても良く、また、ホーンの近傍や、床や壁に超音波振動子を設置した処理容器に一定量のセルロース含有物分散液を流通させて、連続的に超音波を当てる方法で処理を行っても良い。また、一つの処理容器の中に超音波振動子を複数設置しても良いし、一つの処理容器に一つの振動子を設置した処理容器を複数個連結して用いても良い。特に、連続的にセルロース含有物分散液を流して処理する場合、振動子を有する処理容器を直列に連結して、セルロース分散液を順次流通させる方法は、効率の面から好適である。その際に、複数の振動子は同一の周波数でも良いし、周波数を変化させても良い。
また、超音波は連続的に照射しても良く、所定の間隔で間欠的に照射しても良い。例えば0.1〜0.9秒間の超音波照射と0.9〜0.1秒間の休止運転とを交互に繰り返し行う方法であっても良い。
超音波処理を行うと、与えたエネルギーが熱に変換されてセルロース含有物分散液の温度が上昇する。従って、一定の処理条件で微細化処理を行うために、冷却もしくは加熱などにより、セルロース含有物分散液の温度を一定にすることが好ましい。超音波処理時の温度は1〜80℃が好ましく、より好ましくは10〜60℃、更に好ましくは15〜40
℃である。この温度が低過ぎると水を分散媒に用いた場合、凍結してしまい、処理不能となる。即ち、固体の氷ではキャビテーションの発生が困難であり、また、水と氷が混在している場合には、氷の表面でキャビテーションが発生してエネルギーを消費するため、セルロースの微細化効率が低下する。逆に、処理温度が高過ぎると超音波振動子面に微小な水蒸気等の蒸気が発生し、エネルギー効率が低下するため、好ましくない。
超音波照射の処理時間は、分散液中のセルロース繊維が所望の微細化度に微細化されるような時間であれば良く、用いた超音波の出力や周波数、超音波照射前のセルロース繊維の繊維径等により適宜設定される。
超音波処理によりセルロース繊維が微細化される原理は完全に解明されているわけではないが、以下の現象が発生していると推測される。
即ち、水などの液体中にセルロース繊維が懸濁、分散している状態で、超音波を照射すると、超音波振動子から発生した超音波がセルロース繊維に当たり、セルロース繊維と水との界面にキャビテーションが発生する。発生したキャビティは急激に収縮して消滅するが、その際に、周辺に大きな剪断力を発生させる。これによりセルロース繊維の表面から微細なセルロース繊維が剥離されることにより、微細セルロース繊維が生成する。
なお、超音波処理前のセルロース含有物分散液中のセルロース繊維の繊維径は、光学顕微鏡により確認することができる。また、超音波処理等により生成したナノサイズの微細セルロース繊維の繊維径は、分散液中の分散媒を乾燥除去した後、SEMやTEM等で観察することにより計測して求めることができる。
[シートの製造方法]
セルロースシートは前述の本発明の有機酸と接触する工程を施したセルロースを用いて製造してもよいが、解繊する工程を施したものを用いて製造したものの方が高透明性、低線膨張係数、高弾性率のものが得られる。具体的には、前述の解繊する工程を施したセルロース分散液(以下、解繊セルロース分散液)を濾過することにより、或いは適当な基材に塗布することにより製造されたシートである。
セルロースシートを、解繊セルロース分散液を濾過することによって製造する場合、濾過に供される解繊セルロース分散液の濃度は、0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上であることが好ましい。濃度が低すぎると濾過に膨大な時間がかかるため好ましくない。また、解繊セルロース分散液の濃度は1.5重量%以下、好ましくは1.2重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下であることが好ましい。濃度が高すぎると均一なシートが得られないため好ましくない。
また、濾過時の濾布としては、微細化したセルロース繊維は通過せずかつ濾過速度が遅くなりすぎないことが重要である。このような濾布としては、有機ポリマーからなる不織布、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしてはポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。
具体的には孔径0.1〜20μm、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1〜20μm、例えば1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられる。
セルロースシートはその製造方法により、様々な空隙率を有することができる。空隙率の大きなセルロースシートを得る方法としては、濾過による製膜工程において、セルロースシート中の水を最後にアルコール等の有機溶媒に置換する方法を挙げることができる。これは、濾過により水を除去し、セルロース含量が5〜99重量%になったところでアルコール等の有機溶媒を加えるものである。又は、解繊セルロース分散液を濾過装置に投入
した後、アルコール等の有機溶媒を分散液の上部に静かに投入することによっても濾過の最後にアルコール等の有機溶媒と置換することができる。
ここで用いるアルコール等の有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類の他、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、トルエン、四塩化炭素等の1種又は2種以上の有機溶媒が挙げられる。非水溶性有機溶媒を用いる場合は、水溶性有機溶媒との混合溶媒にするか水溶性有機溶媒で置換した後、非水溶性有機溶媒で置換することが好ましい。
その後、乾燥を行うが、この乾燥は、この乾燥は、送風乾燥であっても良く、減圧乾燥であっても良く、また、加圧乾燥であっても良い。また、加熱乾燥しても構わない。加熱する場合、温度は50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、また、250℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。加熱温度が低すぎると乾燥に時間がかかったり、乾燥が不十分になる可能性があり、加熱温度が高すぎるとセルロースシートが着色したり、セルロースが分解したりする可能性がある。また、加圧する場合は0.01MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましく、また、5MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましい。圧力が低すぎると乾燥が不十分になる可能性がり、圧力が高すぎるとセルロース繊維平面構造体がつぶれたりセルロースが分解する可能性がある。
空隙率の小さなセルロースシートを得る方法としては、解繊セルロース分散液の濾過又は塗布後、乾燥を行う。乾燥に関しては上述の通りである。
原料セルロースを解繊後に有機酸処理する場合には、上記の濾過または塗布を行なう際に有機酸を加え、好ましくは均一に接触するように攪拌してから、また好ましくは1分以上おいてから、濾過または塗布を行う。洗浄が必要な場合は、セルロース含量が5〜99重量%になったところで水または有機溶媒で置換する。その後、必要に応じてアルコール等の有機溶剤で置換した後、乾燥する。
本発明のセルロースの製造方法によれば、有機酸処理をセルロースシートにした後に行うこともできる。この場合、上述のようにして得られたシートを乾燥してから有機酸処理を行ってもよいし、シートを乾燥する前に行ってもよい。このセルロースシートを前述の有機酸水溶液に含浸させ、好ましくは1分以上おいてから、水及び/または有機溶剤で洗浄した後、乾燥することでセルロースシートが得られる。
[粒子の製造方法]
本発明の製造方法で得られるセルロースは、セルロース粒子とすることができる。これらのセルロース粒子は特に熱可塑性樹脂と混練によって複合化する際に好適に用いられ、その高弾性率、低線膨張率、表面平滑性といった特性を生かして、各種の構造材、特に表面の意匠性に優れた自動車用パネルや建築物の外壁パネル等に有用である。
本発明の製造方法によって得られるセルロースを、粒子化する方法としては、本発明の製造方法によって得られるセルロースを分散液とし、例えば公知のスプレードライ装置を用いて、スプレーノズル等から噴射することにより、分散媒を除去して造粒する方法が挙げられる。この噴射方法としては、具体的には回転円盤による方法、加圧ノズルによる方法、2流体ノズルによる方法などがある。スプレードライして得られた粒子を更に他の乾燥装置を用いて乾燥させても良い。この場合の熱エネルギー源としては、赤外線やマイクロ波を用いることもできる。
また、本発明の製造方法によって得られたセルロースを凍結乾燥した後、粉砕することによってもセルロース粒子を得ることができる。この場合、具体的には、発明の製造方法
によって得られたセルロースを液体窒素などで冷却した後、グラインダーや回転刃などで粉砕する方法が挙げられる。
[高分子セルロース複合体]
本発明のセルロースの製造方法により得られたセルロースまたはセルロースシートまたはセルロース粒子は高分子と複合化することで高分子セルロース複合体が得られる。該高分子セルロース複合体は、その高透明性、低線膨張率、非着色性といった特性を生かして、各種ディスプレイ基板材料、太陽電池用基板、窓材等に有用であり、また、その高弾性率、低線膨張率、表面平滑性といった特性を生かして、各種の構造材、特に表面の意匠性に優れた自動車用パネルや建築物の外壁パネル等に有用である。
以下、セルロースを高分子と複合化する高分子セルロース複合体の製造方法について説明する。
本発明の高分子セルロース複合体は、上述の本発明の製造方法で得られたセルロースまたはセルロースシートまたはセルロース粒子と、セルロース以外の高分子とを複合化させたものであり、好ましくは、本発明のセルロースシートまたはセルロース粒子とマトリクス材料であるセルロース以外の高分子とが複合化したものである。
ここでマトリクス材料とは、セルロースシートと貼り合わせたり、空隙を埋めたり、造粒したセルロース粒子を混練する高分子材料のことをいう。
このマトリクス材料として好適なのは、加熱することにより流動性のある液体になる熱可塑性樹脂、加熱により重合する熱硬化性樹脂、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することにより重合硬化する、活性エネルギー線硬化性樹脂等から得られる少なくとも1種の樹脂である。
本発明の高分子セルロース複合体を得る方法としては、次の(a)〜(h)の方法が挙げられる。
(a) セルロースシート又は粒子にモノマーを含浸させて重合する方法
(b) セルロースシート又は粒子に熱硬化性樹脂前駆体又は光硬化性樹脂前駆体を含浸させて硬化させる方法
(c) セルロースシート又は粒子に樹脂溶液を含浸させて乾燥した後、加熱プレス等で密着させる方法
(d) セルロースシート又は粒子に熱可塑性樹脂の溶融体を含浸させ、加熱プレス等で密着させる方法
(e) 熱可塑性樹脂シートとセルロース不織布又はシートを交互に配置し、加熱プレス等で密着させる方法
(f) セルロースはシートの片面もしくは両面にモノマーや熱硬化性樹脂前駆体もしくは光硬化性樹脂前駆体を塗布して硬化させる方法
(g) セルロースシートの片面もしくは両面に樹脂溶液を塗布して、溶媒を除去することにより複合化する方法
(h) セルロース粒子と熱可塑性樹脂を溶融混練した後、シート状や目的の形状に成形する方法
中でもセルロースシートに対しては(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)の方法が好ましく、セルロース粒子に対しては(h)の方法が好ましい。
(a)モノマーを含浸させて重合する方法としては、重合可能なモノマーやオリゴマーをセルロースシート又は粒子に含浸させ、熱処理等により上記モノマーを重合させることにより高分子セルロース複合体を得る方法が挙げられる。一般的には、モノマーの重合に用いられる重合触媒を重合開始剤として用いることができる。
(b)熱硬化性樹脂前駆体又は光硬化性樹脂前駆体を含浸させて硬化させる方法としては、エポキシ樹脂モノマー等の熱硬化性樹脂前駆体、又はアクリル樹脂モノマー等の光硬
化性樹脂前駆体と硬化剤の混合物を、セルロースシート又は粒子に含浸させ、熱又は活性エネルギー線等により上記熱硬化性樹脂前躯体又は光硬化性樹脂前躯体を硬化させることにより高分子セルロース複合体を得る方法が挙げられる。
(c)樹脂溶液を含浸させて乾燥後、加熱プレス等で密着させる方法としては、樹脂が溶解する溶媒に溶解させ、その溶液をセルロースシート又は粒子に含浸させ、乾燥させることで高分子セルロース複合体を得る方法が挙げられる。この場合、乾燥後加熱プレス等で溶媒が乾燥した空隙を密着させることでより高性能な複合体を得る方法が挙げられる。
(d)熱可塑性樹脂の溶融体を含浸させ、加熱プレス等で密着させる方法としては、熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上又は融点以上で熱処理することにより溶解させ、セルロースシート又は粒子に含浸し、加熱プレス等で密着することにより高分子セルロース複合体を得る方法が挙げられる。熱処理は加圧下で行うことが望ましく、真空加熱プレス機能を有する設備の使用が有効である。
(e)熱可塑性樹脂シートとセルロースシートを交互に配置し、加熱プレス等で密着させる方法としては、セルロースシートの片面もしくは両面に熱可塑性樹脂のフィルムもしくはシート配置し、必要に応じて加熱やプレスすることにより、熱可塑性樹脂とセルロースシートを貼り合わせる方法が挙げられる。この場合、セルロースシートの表面に接着剤やプライマーなどを塗布して貼り合わせても良い。貼り合わせる際に気泡を抱き込まないように、加圧された2本のロールの間を通す方法や、真空状態でプレスする方法を用いることができる。
(f)セルロースシートの片面もしくは両面にモノマーや熱硬化性樹脂前駆体もしくは光硬化性樹脂前駆体を塗布して硬化させる方法としては、セルロースシートの片面もしくは両面に熱重合開始剤を処方した熱硬化性樹脂前駆体を塗布して加熱することにより硬化させて両者を密着させる方法や、セルロースシートの片面もしくは両面に光重合開始剤を処方した硬化性樹脂前駆体を塗布した後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化させる方法が挙げられる。セルロースシートに熱もしくは光硬化性樹脂前駆体を塗布した後、更にセルロースシートを重ねるなど、多層構造にしてから、硬化させても良い。
(g)セルロースシートの片面もしくは両面に樹脂溶液を塗布して、溶媒を除去することにより複合化する方法としては、溶媒に可溶な樹脂を溶解させた樹脂溶液を用意し、セルロースシートの片面もしくは両面に塗布し、加熱により溶媒を除去する方法が挙げられる。
このようにして製造したセルロースシートと樹脂の複合体を複数枚重ねて積層体を得ることもできる。その際に、セルロースシートを含む複合体と含まない樹脂シートを積層してもよい。複合体同士や樹脂と複合体を接着させるために、接着剤を塗布したり接着シートを介在させてもよい。また、積層体に加熱プレス処理を加えて一体化することもできる。
(h)セルロース粒子と熱可塑性樹脂を溶融混練した後、シート状や目的の形状に成形する方法としては、セルロース粒子と熱可塑性樹脂とを、ドライブレンドした後に溶融する方法、溶融混練する方法、等が好ましく挙げられる。ドライブレンドした後に溶融する方法は、両者を、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等により均一に混合し、その後、該混合物に必要に応じて用いられる酸化防止剤などの添加剤を添加し、溶融状態を経て複合体とする。具体的には、例えば、該混合物を単に溶融するか、又は、一軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダー等により溶融混練する。溶融混練する場合は、両者を、必要に応じて用いられる酸化防止剤などの添加剤等と共に溶融混合する。例えば、一軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダー等により溶融混練する。その後、Tダイから押し出してシート状に成形したり、金型に射出するなどして、目的の形状に成形する。
[マトリクス材料]
本発明において、セルロースシート又はセルロース粒子に複合化させるセルロース以外の高分子材料を以下に例示するが、本発明で用いる高分子材料は何ら以下のものに限定されるものではない。また、本発明における熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光(活性エネルギー線)硬化性樹脂は2種以上混合して用いることができる。
本発明においては、以下の高分子材料のうち、特に、非晶質でガラス転移温度(Tg)の高い合成高分子が、透明性に優れた高耐久性の高分子セルロース複合体を得る上で好ましく、このうち非晶質の程度としては、結晶化度で10%以下、特に5%以下であるものが好ましく、また、Tgは110℃以上、特に120℃以上、とりわけ130℃以上のものが好ましい。Tgが低いと例えば熱水等に触れた際に変形する恐れがあり、実用上問題が生じる。また、低吸水性の複合体を得るためには、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基などの親水性の官能基が少ない高分子材料を選定することが好ましい。なお、高分子のTgは一般的な方法で求めることができる。例えば、DSC法による測定で求められる。高分子の結晶化度は、非晶質部と結晶質部の密度から算定することができ、また、動的粘弾性測定により、弾性率と粘性率の比であるtanδから算出することもできる。
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂等が挙げられる。
スチレン系樹脂としては、スチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン等の重合体及び共重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド等の重合体及び共重合体が挙げられる。ここで「(メタ)アクリル」とは、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
芳香族ポリカーボネート系樹脂とは、3価以上の多価フェノール類を共重合成分として含有できる1種以上のビスフェノール類と、ビスアルキルカーボネート、ビスアリールカーボネート、ホスゲン等の炭酸エステル類との反応により製造される共重合体であり、必要に応じて芳香族ポリエステルカーボネート類とするために共重合成分としてテレフタル酸やイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸又はその誘導体(例えば芳香族ジカルボン酸ジエステルや芳香族ジカルボン酸塩化物)を使用してもよいものである。
前記ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ(略号はアルドリッチ社試薬カタログを参照)等が例示され、中でもビスフェノールAとビスフェノールZ(中心炭素がシクロヘキサン環に参加しているもの)が好ましく、ビスフェノールAが特に好ましい。共重合可能な3価フェノール類としては、1,1,1−(4−ヒドロキシフェニル)エタンやフロログルシノールなどが例示できる。
脂肪族ポリカーボネート系樹脂としては、脂肪族ジオール成分及び/又は脂環式ジオール成分とビスアルキルカーボネート、ホスゲン等の炭酸エステル類との反応により製造さ
れる共重合体である。脂環式ジオールとしてはシクロヘキサンジメタノールやイソソルバイト等が挙げられる。
芳香族ポリエステル系樹脂としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のジオール類とテレフタル酸等の芳香族カルボン酸との共重合体が挙げられる。また、ポリアリレートのように、ビスフェノールA等のジオール類とテレフタル酸やイソフタル酸等の芳香族カルボン酸との共重合体も挙げられる。
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、上記ジオールとコハク酸、吉草酸等の脂肪族ジカルボン酸との共重合体やグリコール酸や乳酸等のヒドロキシジカルボン酸の共重合体等が挙げられる。
脂肪族ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、例えば炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと炭素数2〜18程度の他のα−オレフィン等との二元或いは三元の共重合体等が挙げられ、これらのオレフィン系重合体は2種以上が併用されていてもよい。
環状オレフィン系樹脂とは、ノルボルネンやシクロヘキサジエン等、ポリマー鎖中に環状オレフィン骨格を含む重合体もしくはこれらを含む共重合体である。
ポリアミド系樹脂としては、6,6−ナイロン、6−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、4,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン等の脂肪族アミド系樹脂や、フェニレンジアミン等の芳香族ジアミンと塩化テレフタロイルや塩化イソフタロイル等の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体からなる芳香族ポリアミド等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体も挙げられる。
ポリイミド系樹脂としては、無水ポリメリット酸や4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の共重合体であるピロメリット酸型イミド、無水塩化トリメリット酸やp−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミンやジイソシアネート化合物からなる共重合体であるトリメリット酸型ポリイミド、ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン等からなるビフェニル型ポリイミド、ベンゾフェノンテトラカルボン酸や4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等からなるベンゾフェノン型ポリイミド、ビスマレイミドや4,4’−ジアミノジフェニルメタン等からなるビスマレイミド型ポリイミド等が挙げられる。
ポリアセタール系樹脂としては、オキシメチレン構造を単位構造にもつホモポリマーと、オキシエチレン単位を含む共重合体が挙げられる。
ポリスルホン系樹脂としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンやビスフェノールA等の共重合体が挙げられる。
非晶性フッ素系樹脂としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ペルフルオロアルキルビニルエーテル等の単独重合体又は共重合体が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
<硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂、光(活性エネルギー線)硬化性樹脂とは、硬化する前の前駆体もしくは硬化してなる樹脂硬化物のことを意味する。ここで前駆体は、常温では液状、半固体状又は固形状等であって常温下又は加熱下で流動性を示す物質を意味する。これらは硬化剤、触媒、熱又は光の作用によって重合反応や架橋反応を起こして分子量を増大させながら網
目状の三次元構造を形成してなる不溶不融の樹脂となり得る。また、樹脂硬化物とは、上記熱硬化性樹脂前駆体又は光(活性エネルギー線)硬化性樹脂前駆体が硬化してなる樹脂を意味する。
<<熱硬化性樹脂>>
本発明における熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の前駆体が挙げられる。
上記エポキシ樹脂前駆体としては、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記エポキシ樹脂前駆体中のエポキシ基の数としては、1分子あたり1個以上7個以下であることが好ましく、1分子あたり2個以上であることがより好ましい。ここで、前駆体1分子あたりのエポキシ基の数は、エポキシ樹脂前駆体中のエポキシ基の総数をエポキシ樹脂中の分子の総数で除算することにより求められる。上記エポキシ樹脂前駆体としては特に限定されず、例えば、以下に示したエポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独でも2種以上併用されてもよい。これらエポキシ樹脂は硬化剤を用いて熱硬化性樹脂前躯体を硬化することにより得られる。
例えば、芳香族エポキシ樹脂及びこれらの水添化物や臭素化物等の前駆体、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂及びこれらの水添化物、グリシジルアミン型エポキシ樹脂及びこれらの水添化物、グリシジル(メタ)アクリレートとラジカル重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。上記エポキシ樹脂前駆体の硬化反応に用いられる硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミド及びその誘導体等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
アクリル樹脂前駆体としては、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物、分子内に2個又は3個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、スチレン系化合物、アクリル酸誘導体、分子内に4〜8個の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
特に、脂環骨格を有するモノ(メタ)アクリレートは、耐熱性が高くなるので、好適に利用することができる。脂環骨格モノ(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えば(ヒドロキシ−アクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシ−メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシ−アクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシ−メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシメチル−アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシメチル−アクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシエチル−アクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(ヒドロキシエチル−アクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(ヒドロキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン等が挙げられる。また、これらの混合物等を挙げることが出来る。
分子中に2個又は3個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール以上のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート、2,2−ビス[4−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)シクロヘキシル]プロパン、1,4−ビス[(メタ)アクリロイルオキシメチル]シクロヘキサン等が挙げられる。
スチレン系化合物としては、スチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
エステル以外の(メタ)アクリル酸誘導体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
これらの中でも、含脂環骨格ビス(メタ)アクリレート化合物が好適に用いられる。
例えばビス(アクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシ−メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシ−メタクリロイルオキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(アクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、(アクリロイルオキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)トリシクロ[5.2.1.
2,6]デカン、ビス(アクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、ビス(メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン、(アクリロイルオキシエチル−メタクリロイルオキシエチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン等、及びこれらの混合物等を挙げることが出来る。
これらのうち、ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン及び(アクリロイルオキシメチル−メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンから選ばれるものが好ましい。これらのビス(メタ)アクリレートは、いくつか併用することもできる。
分子内に4〜8個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとしては、ポリオールの(メタ)アクリル酸エステル等が利用できる。具体的には、ペンタエリスリテールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリテールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールセプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
次にエポキシ(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ基を有する化合物、ビスフェノールA型プロピレンオキサイド付加型の末端グリシジルエーテル、フルオレンエポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸との反応物を挙げることができる。
分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレートとしては、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2〜10個(好ましくは2〜5個)有するウレタンオリゴマー等が挙げられる。例えば、ジオール類及びジイソシアネー類を反応させて得られるウレタンプレポリマーと、ヒドロキシ基含有の(メタ)アクリレートを反応させて製造される(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマーがある。
分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレートの数平均分子量は1,000〜100,000が好ましく、更に好ましくは2,000〜10,000である。中でもメチレンジシクロヘキシルジイソシアネートとポリテトラメチレンエーテルグリコールを有するウレタンアクリレートは透明性、低複屈折性、柔軟性等の点により優れており、好適に利用することができる。
オキセタン樹脂前駆体としては、少なくとも1個のオキセタン環を有する化合物が挙げられる。上記オキセタン樹脂前駆体中のオキセタン環の数は、1分子あたり1個以上、4個以下が好ましい。分子中に1個のオキセタンを有する化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル{[−3−(トリエトキシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンなどが挙げられる。分子中に2個のオキセタンを有する化合物としては、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、4,4′−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル等が挙げられる。3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、分枝状のポリアルキレンオキシ基やポリシロキシ基と3−アルキル−3−メチルオキセタンの反応物などが挙げられる。
上記オキセタン樹脂前駆体の硬化反応に用いられる硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミド及びその誘導体等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。特に光硬化剤はエネルギーの有効活用の面から好適に利用される。ここで光硬化剤とは活性エネルギー線の照射によりカチオン重合を開始させる化合物であり、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
フェノール樹脂前駆体としては、フェノール、クレゾール等のフェノール類とホルムアルデヒド等を反応させノボラック等を合成し、これをヘキサメチレンテトラミン等で硬化させたもの等が挙げられる。
ユリア樹脂前駆体としては、尿素等とホルムアルデヒド等の重合反応物が挙げられる。
メラミン樹脂前駆体としては、メラミン等とホルムアルデヒド等の重合反応物が挙げられる。
不飽和ポリエステル樹脂としては、不飽和多塩基酸等と多価アルコール等より得られる不飽和ポリエステルを、これと重合する単量体に溶解し硬化した樹脂等が挙げられる。
珪素樹脂前駆体としては、オルガノポリシロキサン類を主骨格とするものが挙げられる。
ポリウレタン樹脂前駆体としては、グリコール等のジオール類と、ジイソシアネートからなる重合反応物等が挙げられる。
ジアリルフタレート樹脂前駆体としては、ジアリルフタレートモノマー類とジアリルフタレートプレポリマー類からなる反応物が挙げられる。
これら熱硬化性樹脂の硬化剤、硬化触媒としては特に限定はないが、例えば、硬化剤としては多官能アミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール樹脂等が挙げられ、硬化触媒としてはイミダゾール等が挙げられる。これらは単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
<<光硬化性樹脂>>
本発明における光硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、上述の熱硬化性樹脂の説明において例示したエポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂等の前駆体が挙げられる。
これら光硬化性樹脂の硬化剤としては特に限定はないが、例えばジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
今まで述べた熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂は、適宜、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、充填剤、シランカップリング剤等と配合した硬化性組成物として用いられる。
反応を均一に進行させる目的等で硬化性組成物は連鎖移動剤を含んでも良い。例えば、分子内に2個以上のチオール基を有する多官能メルカプタン化合物を用いることができ、これにより硬化物に適度な靱性を付与する事が出来る。メルカプタン化合物としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシエトキシ)エチル]トリイソシアヌレートなどの1種又は2種以上を用いるのが好ましい。
メルカプタン化合物を入れる場合は、ラジカル重合な可能化合物の合計に対して、通常30重量%以下の割合で含有させる。
着色防止目的で硬化性組成物は紫外線吸収剤を含んでも良い。例えば、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤から選ばれるものであり、その紫外線吸収剤は1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。紫外線吸収剤を入れる場合は、ラジカル重合な可能化合物の合計100重量部に対して、通常0.01〜1重量部の割合で含有させる。
また、セルロース繊維以外の充填剤を含んでも良い。充填剤としては、例えば、無機粒子や有機高分子などが挙げられる。具体的には、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子などの無機粒子、ゼオネックス(日本ゼオン社)やアートン(JSR社)などの透明シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネートやPMMAなどの汎用熱可塑性ポリマーなどが挙げられる。中でも、ナノサイズのシリカ粒子を用いると透明性を維持することができ好適である。また、紫外線硬化性モノマーと構造の似たポリマーを用いると高濃度までポリマーを溶解させることが可能であり、好適である。
また、シランカップリング剤を添加しても良い。シランカップリング剤としては、例えば、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン、γ−((メタ)アクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、γ−(アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等は分子中に(メタ)アクリル基を有しており、他のモノマーと共重合することができるので好ましい。シランカップリング剤は、ラジカル重合な可能化合物の合計に対して通常0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%となるように含有させる。この配合量が少な過ぎると、これを含有させる効果が十分に得られず、また、多過ぎると、硬化物の透明性などの光学特性が損なわれる恐れがある。
本発明の高分子セルロース複合体を形成するための硬化性組成物は、公知の方法で重合硬化させることができる。
例えば、熱硬化、又は放射線硬化等が挙げられる。好ましくは放射線硬化である。放射線としては、赤外線、可視光線、紫外線、電子線等が挙げられるが、好ましくは光である。更に好ましくは波長が200nm〜450nm程度の光であり、更に好ましくは波長が300〜400nmの紫外線である。
具体的には、予め硬化性組成物に加熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤を添加しておき、加熱して重合させる方法(以下「熱重合」という場合がある)、予め硬化性組成物に紫外線等の放射線によりラジカルを発生する光重合開始剤を添加しておき、放射線を照射して重合させる方法(以下「光重合」という場合がある)等、及び熱重合開始剤と光重合開始自在を併用して予め添加しておき、熱と光の組み合わせにより重合させる方法が挙げられ、本発明においては光重合がより好ましい。
光重合開始剤としては、通常、光ラジカル発生剤が用いられる。光ラジカル発生剤としては、この用途に用い得ることが知られている公知の化合物を用いることができる。例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホシフィンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが好ましい。これらの光重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤の成分量は、硬化性組成物中のラジカル重合な可能化合物の合計を100重量部としたとき、0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、更に好ましくは0.05重量部以上である。その上限は、通常1重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、更に好ましくは0.1重量部以下である。光重合開始剤の添加量が多すぎると、重合が急激に進行し、得られる硬化物の複屈折を大きくするだけでなく色相も悪化する。例えば、開始剤の量を5重量部とした場合、開始剤の吸収により、紫外線の照射と反対側に光が到達できずに未硬化の部分が生ずる。また、黄色く着色し色相の劣化が著しい。一方、少なすぎると紫外線照射を行っても重合が十分に進行しないおそれがある。
また、熱重合開始剤を同時に含んでも良い。例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等が挙げられる。具体的にはベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)ジクミルパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等を用いることができる。光照射時に熱重合が開始されると、重合を制御することが難しくなるので、これらの熱重合開始剤は好ましくは1分半減期温度が120℃以上であることがよい。これらの重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
硬化に際して照射する放射線の量は、光重合開始剤がラジカルを発生させる範囲であれば任意であるが、極端に少ない場合は重合が不完全となるため硬化物の耐熱性、機械特性が十分に発現されず、逆に極端に過剰な場合は硬化物の黄変等の光による劣化を生じるので、モノマーの組成及び光重合開始剤の種類、量に合わせて、波長300〜450nmの紫外線を、好ましくは0.1J/cm以上200J/cm以下の範囲で照射する。更に好ましくは1J/cm以上20J/cmの範囲で照射する。放射線を複数回に分割して照射すると、より好ましい。すなわち1回目に全照射量の1/20〜1/3程度を照射し、2回目以降に必要残量を照射すると、複屈折のより小さな硬化物が得られる。使用するランプの具体例としては、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプ、紫外線LEDランプ等を挙げることができる。
重合をすみやかに完了させる目的で、光重合と熱重合を同時に行ってもよい。この場合には、放射線照射と同時に硬化性組成物を30℃以上300℃以下の範囲で加熱して硬化を行う。この場合、硬化性組成物には、重合を完結するために熱重合開始剤を添加してもよいが、大量に添加すると硬化物の複屈折の増大と色相の悪化をもたらすので、熱重合開始剤は、モノマー量の合計に対して通常0.1重量%以上2重量%以下、より好ましくは0.3重量%以上1重量%以下となるように用いる。
{積層構造体}
本発明の製造方法で得られる高分子セルロース複合体は、本発明の製造方法で得られるセルロースシートの層と、前述したセルロース以外の高分子よりなる平面構造体層との積層構造体であっても良く、また、本発明の製造方法で得られるセルロースシートの層と、本発明の製造方法で得られる高分子セルロース複合体の層との積層構造であっても良く、その積層数や積層構成には特に制限はない。
{無機膜}
本発明の製造方法で得られる高分子セルロース複合体は、その用途に応じて、高分子セルロース複合体層に更に無機膜が積層されたものであっても良く、上述の積層構造体に更に無機膜が積層されたものであっても良い。
ここで用いられる無機膜は、高分子セルロース複合体の用途に応じて適宜決定され、例えば、白金、銀、アルミニウム、金、銅等の金属、シリコン、ITO、SiO、SiN、SiOxNy、ZnO等、TFT等が挙げられ、その組み合わせや膜厚は任意に設計することができる。
{高分子セルロース複合体の特性ないし物性}
以下に本発明の製造方法で得られる高分子セルロース複合体の好適な特性ないし物性について説明する。
<セルロース含有量>
本発明の高分子セルロース複合体中のセルロースの含有量は通常1重量%以上99重量%以下であり、セルロース以外の高分子の含有量が1重量%以上99重量%以下である。低線膨張性を発現するには、セルロースの含有量が1重量%以上、セルロース以外の高分子の含有量が99重量%以下であること必要である。透明性を発現するにはセルロースの含有量が99重量%以下、セルロース以外の高分子の含有量が1重量%以上であることが必要である。好ましい範囲はセルロースが5重量%以上90重量%以下であり、セルロース以外の高分子が10重量%以上95重量%以下であり、さらに好ましい範囲はセルロースが10重量%以上80重量%以下であり、セルロース以外の高分子が20重量%以上90重量%以下である。特に、セルロースの含有量が30重量%以上70重量%以下で、セルロース以外の高分子の含有量が30重量%以上70重量%以下であることが好ましい。
高分子セルロース複合体中のセルロース及びセルロース以外の高分子の含有量は、例えば、複合化前のセルロースの重量と複合化後のセルロースの重量より求めることができる。また、高分子が可溶な溶媒に複合体を浸漬して高分子のみを取り除き、残ったセルロースの重量から求めることもできる。その他、樹脂の比重から求める方法や、NMR、IRを用いて樹脂やセルロースの官能基を定量して求めることもできる。
<厚み>
本発明の製造方法により得られる高分子セルロース複合体の厚みは、好ましくは10μm以上10cm以下であり、このような厚みとすることにより、構造材としての強度を保つことができる。高分子セルロース複合体の厚さはより好ましくは50μm以上1cm以下であり、さらに好ましくは80μm以上250μm以下である。
なお、本発明の製造方法により得られる高分子セルロース複合体は、例えば、このような厚さの膜状(フィルム状)又は板状であるが、平膜又は平板に限らず、曲面を有する膜状又は板状とすることもできる。また、その他の異形形状であっても良い。また、厚さは必ずしも均一である必要はなく、部分的に異なっていても良い。
<着色>
本発明の製造方法により得られる高分子セルロース複合体は、着色が小さい。
セルロースは、特に木質由来の原料を用いることで黄色味がつく場合がある。これは、セルロース自身の着色の場合と、精製度合いによって残ったセルロース以外の物質が着色する場合がある。一般的に、セルロースのみの段階では着色しないが、高分子と複合化する際の加熱によって着色することがある。本発明の製造方法により得られるセルロース及び高分子セルロース複合体は、加熱の工程が入っても着色が小さい。本発明の製造方法により得られる高分子セルロース複合体の着色を示すYIは20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。YIは例えば、スガ試験機製カラーコンピューターを用いて測定することができる。
<ヘーズ>
本発明の製造方法により得られる高分子セルロース複合体は、透明性の高い、すなわちヘーズの小さい高分子セルロース複合体とすることができる。各種透明材料として用いる
場合、この高分子セルロース複合体のヘーズ値は、好ましくは20以下、より好ましくは10以下であり、特にこの値は1以下であることが好ましい。
<全光線透過率>
本発明の製造方法により得られる高分子セルロース複合体は、透明性の高い、すなわちヘーズの小さい高分子セルロース複合体とすることができる。各種透明材料として用いる場合、この高分子セルロース複合体は、JIS規格K7105に準拠してその厚み方向に測定された全光線透過率が60%以上、更には70%以上、特に80%以上、とりわけ90%以上であることが好ましい。この全光線透過率が60%未満であると半透明又は不透明となり、透明性が要求される用途への使用が困難となる場合がある。全光線透過率は例えば、厚み10〜100μmの複合体について、スガ試験機製ヘーズメータを用いて測定することができ、C光の値を用いる。
<線膨張係数>
本発明の製造方法により得られる高分子セルロース複合体は、線膨張係数(1Kあたりの伸び率)の低いセルロースを用いることにより線膨張係数の低い高分子セルロース複合体とすることができる。この複合体の線膨張係数は1〜50ppm/Kであることが好ましく、1〜30ppm/Kであることがより好ましく、1〜20ppm/Kであることが特に好ましい。
即ち、例えば、基板用途においては、無機の薄膜トランジスタの線膨張係数が15ppm/K程度であるため、高分子セルロース複合体の線膨張係数が50ppm/Kを超えると無機膜との積層複合化の際に、二層の線膨張率差が大きくなり、クラック等が発生する。従って、複合体の線膨張係数は、特に1〜20ppm/Kであることが好ましい。
なお、線膨張係数は、後述の実施例の項に記載される方法により測定される。
<吸水率>
本発明の製造方法により得られる高分子セルロース複合体は、JIS規格K7209(D法)に準拠して測定した吸水率が3%以下となる吸水率の低い複合体であることが好ましい。この吸水率は2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。吸水率が3%を超えると、加工プロセス上で脱水した複合体が空気中に放置された際、空気中の水分を吸収して伸び、寸法変形を起こすため、好ましくない。
<引張強度>
本発明の製造方法により得られる高分子セルロース複合体の引張強度は、好ましくは40MPa以上であり、より好ましくは100MPa以上である。引張強度が40MPaより低いと、十分な強度が得られず、構造材料等、力の加わる用途への使用に影響を与えることがある。
<引張弾性率>
本発明の製造方法により得られる高分子セルロース複合体の引張弾性率は、好ましくは0.2〜100GPaであり、より好ましくは1〜50GPaである。引張弾性率が0.2GPaより低いと、十分な強度が得られず、構造材料等、力の加わる用途への使用に影響を与えることがある。
[用途]
本発明の製造方法により得られる高分子セルロース複合体は、透明性が高く、高強度、低吸水性、高透明性、低着色およびヘーズが小さく光学特性に優れるため、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイや基板やパネルとして好適である。
また、シリコン系太陽電池、色素増感太陽電池などの太陽電池用基板に好適である。基板としては、バリア膜、ITO、TFT等と積層してもよい。また、自動車用の窓材、鉄道車両用の窓材、住宅用の窓材、オフィスや工場などの窓材などに好適に使われる。窓材としては、必要に応じてフッ素皮膜、ハードコート膜等の膜や耐衝撃性、耐光性の素材を積層してもよい。
また、低線膨張係数、高弾性、高強度等の特性を生かして透明材料用途以外の構造体としても用いることができる。特に、内装材、外板、バンパー等の自動車材料やパソコンの筐体、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他、工業用資材等として好適に用いられる。
以下、製造例、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
尚、本発明の製造方法により得られるセルロースのYI及び熱分解温度、高分子セルロース複合体のセルロース含量、YI、ヘーズ、線膨張係数及び弾性率の測定方法は以下の通りである。
〔セルロースの熱分解温度〕
セルロースシートを温度23℃、湿度50%に48時間以上調湿し、これをTG−DTA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて窒素下、室温から600℃まで10℃/分で昇温していったときのTGから求めた接線の交点を熱分解温度とした。
〔高分子セルロース複合体中のセルロース含量〕
複合化に用いたセルロースシートの重量と、複合体の重量からセルロース含量(重量%)を求めた。
〔セルロース及び高分子セルロース複合体のYI値〕
スガ試験機製カラーコンピュータを用いてYI値を測定した。
〔高分子セルロース複合体のヘーズ〕
スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光によるヘーズ値を測定した。
〔高分子セルロース複合体の線膨張係数〕
高分子セルロース複合体をレーザーカッターにより、3mm幅×40mm長にカットした。
これをSII製TMA6100を用いて引張モードでチャック間20mm、荷重10g、窒素雰囲気下、室温から180℃まで5℃/min.で昇温し、次いで180℃から25℃まで5℃/min.で降温し、更に25℃から180℃まで5℃/min.で昇温した際の2度目の昇温時の60℃から100℃の測定値から線膨張係数を求めた。
〔高分子セルロース複合体中の引張弾性率〕
高分子セルロース複合体をレーザーカッターにより、10mm幅×40mm長にカットした。これを、SII社製DMS6100を用いて引張モードでDMA(動的粘弾性)測定を行い、周波数10Hz、23℃における貯蔵弾性率E’(単位;GPa)を測定した。
<製造例1>
木粉((株)宮下木材、米松100)を炭酸ナトリウム2重量%水溶液で80℃にて6時間脱脂した。これを脱塩水で洗浄した後、亜塩素酸ナトリウムを用いて酢酸酸性下、80℃にて5.5時間脱リグニンした。脱塩水洗浄した後にさらに水酸化カリウム5重量%水溶液に16時間浸漬して脱ヘミセルロースした。脱塩水洗浄した。以下、製造例1で得られたものを原料セルロースとする。
<実施例1>
製造例1で得られた粗原料セルロースを固形分として5g量り取り、33重量%酢酸水溶液600g中で全体が動く程度に攪拌しながら40℃3hr処理した。処理液のpHは、1.4であった。その後、濾過、水洗を中性になるまで行った。
<実施例2>
実施例1で得られたセルロースを、0.5重量%の水懸濁液とし、増幸産業株式会社の石臼式摩砕機スーパーマスコロイダーMKCA6−2を用い、GC6−80の石臼を用いて、ギャップ間を80μmにして回転数1500rpmにて、原料投入口から、投入した。摩砕機を通った処理済みセルロース分散液を再び原料投入口に投入し、合計2回摩砕機を通した。その後、超高圧ホモジナイザー(スギノマシン製アルティマイザー)に245MPaで10回通した。
このセルロース分散液を0.13重量%濃度に水で希釈し、孔径1μmのPTFEを用いた90mm径の濾過器に150g投入し、固形分が約5重量%になったところで2−プロパノールを投入して置換した。その後、120℃、0.14MPaで5分間プレス乾燥して白色のセルロースシートを得た。
このセルロースシートを、190℃の真空オーブン中で4時間加熱した後のYIは10であった。また、熱分解温度は319℃であった。
このセルロースシートを、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン96重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)6重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部、ベンゾフェノン0.05重量部を混合した溶液に含浸させ、減圧下一晩おいた。これを2枚のガラス板にはさみ、無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」)を用いて、放射照度400mW/cmの下を、ライン速度7m/minで照射した。このときの放射照射量は0.12J/cmであった。この操作をガラス面を反転して2回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は25℃であった。
次いで、放射照度1900mW/cmの下をライン速度2m/minで照射した。このときの放射照射量は2.7J/cmであった。この操作をガラス面を反転して8回行った。紫外線照射後のガラス面の温度は44℃であった。放射照射量は21.8J/cmであった。紫外線照射終了後、ガラス板よりはずし、190℃の真空オーブン中で4時間加熱して複合材料を得た。なお、紫外線の放射照度は、オーク製作所製紫外線照度計「UV−M02」で、アタッチメント「UV−35」を用いて、320〜390nmの紫外線の照度を23℃で測定した。
この高分子セルロース複合体の物性を表1に示す。
<比較例1>
製造例1で得られたセルロースを用いたこと以外は実施例2と同様にして、セルロースシートを得た。
このセルロースシートを、190℃の真空オーブン中で4時間加熱した後のYIは97であった。また、熱分解温度は296℃であった。
このセルロースシートを実施例2と同様にして複合化して高分子セルロース複合体を得た。その物性を表1に示す。
<比較例2>
先に挙げた特許文献4(特開2005−105426号公報)の実施例1に基づき硫酸処理を行った。すなわち、製造例1で得られた原料セルロースを固形分として5g量り取
り、硫酸を添加してpHを3.1に調整した。これを100rpmで攪拌しながら90℃で150分処理した。その後、濾過、水洗を中性になるまで行った。これを実施例2と同様にして、セルロースシートを得た。
このセルロースシートを、190℃の真空オーブン中で4時間加熱した後のYIは33であった。また、熱分解温度は322℃であった。
このセルロースシートを実施例2と同様にして複合化して高分子セルロース複合体を得た。その物性を表1に示す。
Figure 2010222536
<実施例3>
実施例2で得られたセルロース分散液を、更にSMT社製超音波ホモジナイザーUH−600S(周波数20kHz、実効出力密度22W/cm)を用いて超音波処理を行った。
36mmφのストレート型チップ(チタン合金製)を用い、アウトプットボリウム8でチューニングを行い、最適なチューニング位置で30分間超音波処理を行った。セルロー
ス分散液は処理容器の外側から5℃の冷水で冷却し、また、マグネティックスターラーにて撹拌しながら処理を行った。
この超音波処理分散液を、18000rpm(38900G)にて10分遠心分離を行ったところ、上澄みに含まれるセルロース残存率(以下、収率と記載する)は84%であった。
この上澄みのセルロース分散液を用いて、実施例2と同様にして、セルロースシートを得、実施例2と同様にして複合化して高分子セルロース複合体を得た。その物性を表2に示す。
Figure 2010222536
<実施例4>
製造例1で得られた原料セルロースを0.5重量%の水懸濁液とし、増幸産業株式会社の石臼式摩砕機スーパーマスコロイダーMKCA6−2を用い、GC6−80の石臼を用いて、ギャップ間を80μmにして回転数1500rpmにて、原料投入口から、投入した。摩砕機を通った処理済みセルロース分散液を再び原料投入口に投入し、合計2回摩砕機を通した。その後、超高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製アルティマイザー)に245MPaで10回通した。
このセルロース分散液を0.13重量%濃度に水で希釈した後、攪拌しながら酢酸を滴下し、pHを4に調整した。そのまま1時間攪拌した後、孔径1μmのPTFEを用いた90mm径の濾過器に150g投入し、固形分が約5重量%になったところで2−プロパノールを投入して置換した。その後、120℃、0.14MPaで5分間プレス乾燥してセルロースシートを得た。
このセルロースシートを、190℃の真空オーブン中で4時間加熱した後のYIは38であった。
このセルロースシートを実施例2と同様にして複合化して高分子セルロース複合体を得た。その物性を表3に示す。
<実施例5>
実施例4において、有機酸に蓚酸を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてセルロースシートを得た。有機酸処理工程のpHは4であった。
このセルロースシートを、190℃の真空オーブン中で4時間加熱した後のYIは48であった。
このセルロースシートを実施例2と同様にして複合化して高分子セルロース複合体を得た。その物性を表3に示す。
<比較例3>
実施例4において、有機酸の変わりに塩酸を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてセルロースシートを得た。
このセルロースシートを、190℃の真空オーブン中で4時間加熱した後のYIは72であった。
このセルロースシートを実施例2と同様にして複合化して高分子セルロース複合体を得
た。その物性を表3に示す。
Figure 2010222536
<実施例6>
比較例1と同様にして、セルロースシートを得た。このセルロースシートを33重量%酢酸水溶液に浸漬し、40℃3hr処理した。処理液のpHは、1.4であった。その後、水で洗浄し、更に2−プロパノールで置換した後、120℃、0.14MPaで5分間プレス乾燥して白色のセルロースシートを得た。
このセルロースシートを、190℃の真空オーブン中で4時間加熱した後のYIは43であった。また、熱分解温度は319℃であった。
このセルロースシートを実施例2と同様にして複合化して高分子セルロース複合体を得た。その物性を表4に示す。
Figure 2010222536
また、実施例2、3及び比較例1〜2からわかるように、原料セルロースを有機酸処理し、解繊しナノファイバー化し、高分子セルロース複合体としたものは、非着色性、高透明性、低線膨脹係数を示した。その際、有機酸ではなく、無機酸で処理した場合は、非着色性は実現されるが、ナノファイバー化されにくく、その為透明性が低かった。
更に、実施例4,5及び比較例3からわかるように、原料セルロースを解繊したセルロース分散液に、有機酸を添加した後、濾過して得られたセルロースシートも非着色性を実現した。この際も無機酸より有機酸を用いた方が、非着色性、高透明性を両立した。
実施例6に示すように、原料セルロース分散液を濾過しセルロースシートにした後に、有機酸処理することによっても非着色性が実現された。
本発明の製造方法により得られる高分子セルロース複合体は、透明性が高く、高強度、低吸水性、高透明性、低着色およびヘーズが小さく光学特性に優れるため、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイや基板やパネルとして好適である。また、シリコン系太陽電池、色素増感太陽電池などの太陽電池用基板に好適である。基板としては、バリア膜、ITO、TFT等と積層してもよい。また、自動車用の窓材、鉄道車両用の窓材、住宅用の窓材、オフィスや工場などの窓材などに好適に使われる。窓材としては、必要に応じてフッ素皮膜、ハードコート膜等の膜や耐衝撃性、耐光性の素材を積層してもよい。
また、低線膨張係数、高弾性、高強度等の特性を生かして透明材料用途以外の構造体としても用いることができる。特に、内装材、外板、バンパー等の自動車材料やパソコンの筐体、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他、工業用資材等として好適に用いられる。

Claims (7)

  1. 原料セルロースを、水中で有機酸と接触する工程と、セルロースを解繊する工程を有することを特徴とするセルロースの製造方法。
  2. 有機酸の酸解離定数pKaが5.0以下であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースの製造方法。
  3. 原料セルロースを、水中で有機酸と接触する工程のpHが5以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースの製造方法。
  4. 原料セルロースを、水中で有機酸と接触する工程の後に、セルロースを解繊する工程を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースの製造方法。
  5. 原料セルロースを、解繊する工程の後に、水中で有機酸と接触する工程を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースの製造方法。
  6. 原料セルロースを、解繊する工程を行った後、得られた解繊セルロースをシートに成形し、その後水中で有機酸と接触する工程を行うことを特徴とする請求項5に記載のセルロースの製造方法。
  7. 請求項1〜6で得られたセルロースを高分子と複合化する高分子セルロース複合体の製造方法。
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