JP2010210829A - 高耐久性ワイヤグリッド偏光板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板上に一定の間隔で一定の方向に延在する金属ワイヤ層が形成された偏光板を、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系アルミネートカップリング剤、およびフッ素系チタネートカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤の溶液に浸漬したのち、乾燥して、金属ワイヤ層上に上記カップリング剤に由来するフッ素化合物の皮膜層を形成させたのち、得られる層をフッ素系溶媒でリンスし、その後60℃〜150℃で加熱することを特徴としている。
【選択図】なし
Description
例えば、金属などで構成された導電体線が特定のピッチで格子状に配列してなるワイヤグリッドは、そのピッチが入射光に比べてかなり小さいピッチ(例えば、2分の1以下)であれば、導電体線に対して平行に振動する電場ベクトル成分の光をほとんど反射し、導電体線に対して垂直な電場ベクトル成分の光をほとんど透過させるため、単一偏光を作り出す偏光板として使用できる。ワイヤグリッド偏光板は、透過しない光を反射し再利用することができるので、光の有効利用の観点からも望ましいものである。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、金属ワイヤ層表面に防水性、耐湿熱性に優れた皮膜層を有し、かつ、皮膜層の形成前後で形状変化と偏光透過率性能の変化が少ないワイヤグリッド偏光板とその製造方法を提供することを目的としている。
すなわち本発明は、
基板上に一定の間隔で一定の方向に延在する金属ワイヤ層と、前記金属ワイヤ層を被覆する皮膜層と、を含むワイヤグリッド偏光板であって、前記皮膜層が、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系アルミネートカップリング剤、及びフッ素系チタネートカップリング剤、からなる群から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤からなることを特徴としている。
前記カップリング剤が、下記式(I)で表されるフッ素化合物であるが好ましい。
CnF2n+1−Z−Y−X−(OC3F6)a−(OC2F4)b−(OCF2)c−O−X−Y−Z−M(OH)α(OR)β(P)γ(Q)m−α−β−γ (I)
(式中、a、b及びcはそれぞれ独立して、0または1以上の整数を表し、a、b及びcの和は少なくとも1であり、a、b及びcが付けられた括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。
Xは、式:−(O)d−(CF2)e−(CH2)f−(ここで、d、e及びfはそれぞれ独立して、0または1以上の整数を表し、e及びfの和は少なくとも1であり、d、e及びfが付けられた括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であるが、Oは連続しない。)で示される基を表す。
Zは、式:−(CH2)g−(ここで、gは、0または1以上の整数を表す。)で示され
る基を表す。
Mはケイ素原子、チタン原子またはアルミニウム原子を表す。
Pは加水分解可能な極性基を表す。
Qは水素または炭化水素基を表す。
Rは炭化水素基を表す。
mはMの価数−1の整数を表す。
αは1以上m以下の整数を表し、
β、γは0または1以上m以下の整数を表し、
α+β+γは1以上m以下の整数を表す。
nは1以上の整数である。
−OC3F6−は、−OCF2CF2CF2−または−OCF(CF3)CF2−を、−OC2F4−は、−OCF2CF2−又は−OCF(CF3)−を表す。)
前記金属ワイヤ層のピッチ幅が150nm以下であることが好ましい。
前記金属ワイヤの主成分がアルミニウムであることが好ましい。
前記皮膜層の厚みが500オングストローム以下であることが好ましい。
前記基板が樹脂基板であることが好ましい。
基板上に一定の間隔で一定の方向に延在する金属ワイヤ層が形成された偏光板を、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系アルミネートカップリング剤、およびフッ素系チタネートカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤の溶液に浸漬したのち、乾燥して、金属ワイヤ層上に上記カップリング剤に由来するフッ素化合物の皮膜層を形成させたのち、得られる層をフッ素系溶媒でリンスし、その後60℃〜150℃で加熱することを特徴としている。
フッ素系シランカップリング剤、フッ素系アルミネートカップリング剤、およびフッ素系チタネートカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤の溶液に浸漬したのち、気温10から60℃、湿度20から98%RHの条件下で乾燥させることが好ましい。
本発明は、基板上に一定の間隔で一定の方向に延在する金属ワイヤ層と、前記金属ワイヤ層を被覆する皮膜層と、を含むワイヤグリッド偏光板であって、前記皮膜層が、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系アルミネートカップリング剤、及びフッ素系チタネートカップリング剤からなる群から選択されるカップリング剤の水酸基と、前記金属ワイヤ層表面に存在する水酸基とが脱水縮合することからなることを特徴としている。
基板は、目的とする波長領域において実質的に透明であればよい。例えば、ガラスなどの無機材料や樹脂材料を基板に用いることが出来るが、ロールプロセスが可能になる、ワイヤグリッド偏光板にフレキシブル性を持たすことができる、等のメリットがある為、基板は樹脂基板であることが好ましい。基板に用いることができる樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂や、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系などの紫外線(UV)硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられる。また、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂と、ガラスなどの無機基板、上記熱可塑性樹脂、トリアセテート樹脂とを組み合わせたり、単独で用いて基板を構成させることも出来る。
金属ワイヤ層に好適に用いることができる金属としては、アルミニウム、銀、銅、白金、金またはこれらの各金属を主成分とする合金などが挙げられる。中でもアルミニウムもしくは銀は可視域での吸収損失が小さく、特に好ましい。
金属ワイヤ層の延在方向に垂直な面内における基板の断面形状に制限はないが、透過偏光性能の観点から断面形状は格子状凹凸形状であることが好ましい。格子状凹凸形状としては、例えば、台形、矩形、方形、プリズム状や、半円状などの正弦波状などが挙げられる。ここで、正弦波状とは凹部と凸部の繰り返しからなる曲線部をもつことを意味する。なお、曲線部は湾曲した曲線であればよく、例えば、凸部にくびれがある形状も正弦波状に含める。透過率の観点から基板断面形状は矩形もしくは正弦波状であることが好ましい。
一般にワイヤグリッド偏光板は、金属ワイヤのピッチ幅が小さくなるほど幅広い帯域で偏光特性を示すことが出来るが、近赤外〜赤外領域のみの偏光特性を考慮する場合は、ピッチは300nm程度以下であればよく、400nm近傍以下の短波長領域の偏光特性を重視しない場合は、ピッチは約150nm以下でよい。可視光領域全体に渡って十分な偏光特性を得る場合には、ピッチはおおよそ120nm以下であることが好ましく、より好ましくは80nm〜120nm程度である。
金属ワイヤ層の製造方法においては特に制限は無い。電子線リソグラフィ法或いは干渉露光法によるマスクパターンニングとドライエッチングを用いて作製する方法や斜め蒸着法による作製などが挙げられるが、生産性の観点から斜め蒸着法が好ましい。また、光学特性の観点から、不要な金属はエッチングにより除去することが好ましい。エッチング方法は、基板や誘電体層に悪影響を及ぼさず、金属部分が選択的に除去できる方法であれば特に限定は無いが、生産性の観点からアルカリ性の水溶液に浸漬させる方法が好ましい。
金属ワイヤ層の表面にフッ素化合物の皮膜層を形成することが、防水性、耐湿熱性、防傷性、耐圧性等の観点から好ましい。また、皮膜層の厚みは薄ければ薄いほどワイヤグリッド偏光板の光学特性に影響を与えなくなるため好ましく、皮膜層の形成前後での透過率差を1%以下に抑えるためにも、皮膜層の厚みは500オングストローム以下が好ましく、より好ましくは200オングストローム以下である。さらに100オングストローム以下であれば、光学特性にほぼ影響を与えなくなるため、特に好ましい。
特に金属ワイヤ層との密着性を強固にする為に、皮膜層は前記カップリング剤の水酸基と金属ワイヤ表面の水酸基とが脱水縮合することによって形成されることが好ましい。さらに、より膜厚を均一に、かつ、薄くすることが出来るとの観点から、フッ素化合物はパーフルオロポリエーテル構造を有するフッ素系シランカップリング剤、フッ素系アルミネートカップリング剤、またはフッ素系チタネートカップリング剤であることが好ましい。
CnF2n+1−Z−Y−X−(OC3F6)a−(OC2F4)b−(OCF2)c−O−X−Y−Z−M(OH)α(OR)β(P)γ(Q)m−α−β−γ (I)
(式中、a、b及びcはそれぞれ独立して、0または1以上の整数を表し、a、b及びcの和は少なくとも1であり、a、b及びcが付けられた括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。
Xは、式:−(O)d−(CF2)e−(CH2)f−(ここで、d、e及びfはそれぞれ独立して、0または1以上の整数を表し、e及びfの和は少なくとも1であり、d、e及びfが付けられた括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であるが、Oは連続しない。)で示される基を表す。
Yは二価の極性基または単結合を表す。
Zは、式:−(CH2)g−(ここで、gは、0または1以上の整数を表す。)で示され
る基を表す。
Mはケイ素原子、チタン原子またはアルミニウム原子を表す。
Pは加水分解可能な極性基を表す。
Qは水素または炭化水素基を表す。
Rは炭化水素基を表す。
mはMの価数−1の整数を表す。
αは1以上m以下の整数を表し、
β、γは0または1以上m以下の整数を表し、
α+β+γは1以上m以下の整数を表す。
nは1以上の整数である。
−OC3F6−は、−OCF2CF2CF2−または−OCF(CF3)CF2−を、−OC2F4−は、−OCF2CF2−又は−OCF(CF3)−を表す。)
ケイ素原子、チタン原子、アルミニウム原子の中でも、Mにケイ素原子を用いた構造が特にアルミニウムを主成分とする金属に被覆した際の透過率低下を抑え、且つ、密着性にも優れるため好ましい。
皮膜層はワイヤグリッド偏光板を上記フッ素系カップリング剤溶液に浸漬したのち、溶液から取り出し、溶媒乾燥後、過剰にワイヤグリッド偏光板上に堆積したフッ素系カップリング剤を除去する目的で、フッ素系溶媒に浸漬することで、ワイヤグリッド偏光板上に500オングストローム以下のフッ素系カップリング剤の皮膜が形成される。さらに、金属表面にある水酸基とフッ素系カップリング剤の水酸基との脱水縮合を促進させるため、乾燥を行うことが好ましい。乾燥は10から60℃、20から98%RH、10秒から1200秒の間で行うことが好ましく、均一な膜厚を確保するとの観点から、15から40℃、30から90%RH、乾燥時間は30秒から600秒の間で行うことがより好ましい。上記のようにフッ素系カップリング剤の皮膜が形成されたワイヤグリッド偏光板をさらに高温下に置くことで、アルミニウム表面の水酸基とフッ素系カップリング剤の水酸基との脱水縮合がより促進され、アルミニウムとフッ素系カップリング剤の結合がより強固なものとなる。以下、この工程を焼付けと呼ぶ。具体的には60℃以上150℃以下、より好ましくは80℃以上120℃以下で1分以上60分以下、より好ましくは5分以上30分以下の条件で焼付けると好適な皮膜層が得られる。皮膜層の形成に用いるフッ素系カップリング剤が、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系アルミネートカップリング剤、またはフッ素系チタネートカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤であれば全て上記工程と同様の工程で好適な皮膜層の形成が可能である。
本発明において基板を構成する材料と金属ワイヤ層との密着性向上の為に、両者の間に両者と密着性の高い誘電体材料を好適に用いることができる。基板と金属ワイヤ層の密着性が高いと、耐久性試験中の金属ワイヤ層の剥離を防ぎ、偏光度の低下を抑えることが出来る。好適に用いることが出来る誘電体としては、例えば、珪素(Si)の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はその複合物(誘電体単体に他の元素、単体又は化合物が混じった誘電体)や、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バリウム(Ba)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、銅(Cu)などの金属の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はそれらの複合物を用いることができる。誘電体材料は、透過偏光性能を得ようとする波長領域において実質的に透明であることが好ましい。誘電体材料の積層方法には特に限定は無く、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法を好適に用いることができる。
ワイヤグリッド偏光板の透過性能を損なわない為に、金属ワイヤ層表面への皮膜層形成前と後での視感度補正透過率の差は1.0%以下であることが好ましい。さらに人間の視認による光学特性の識別が実質的に不可能であることから透過率差は0.5%以下が好ましく、より好ましくは0.25%以下である。
ワイヤグリッド偏光板の偏光性能を損なわない為に、金属ワイヤ層表面への皮膜層形成前と後での視感度補正偏光度の差は0.5%以下であることが好ましい。また、人間の視認による光学特性の識別が実質的に不可能であることから0.2%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがさらに好ましい。
視感度補正透過率Tと視感度補正偏光度Pは各波長における透過率と偏光度に国際照明委員会により定められた標準比視感度によって重み付けすることによって得られる。具体的には以下の式(II)、(III)で表される。
T’ (λ)=[(Imax+Imin)/2]×100 %
P’(λ)=[(Imax−Imin)/(Imax+Imin)]×100 %
(Imaxは各波長λでの直線偏光に対する平行ニコル、Iminは各波長での直行ニコル状態での透過光強度)
また、Φ(λ)は各波長λにおける標準比視感度を表し、λ1は380nm、λ2は780nmとする
以下本発明を実施例に基づいて説明する。
(紫外線硬化樹脂を用いた格子状凹凸形状転写フィルムの作製)
格子状凹凸形状転写フィルムの作製には、Ni製金型(以下金型A)を用いた。金型Aはピッチ幅130nmの格子状凹凸形状を有し、格子の延在する方向に垂直な断面における凹凸形状が略正弦波状であった。厚み80μmのトリアセチルセルロース樹脂(以下、TACと略す)フィルム(富士写真フィルム製TD80UL−H)にアクリル系紫外線硬化樹脂(屈折率1.52)を約3μm塗布し、塗布面を下にし、金型AとTACフィルム間に空気が入らないように乗せた。TACフィルム側から中心波長365nmの紫外線ランプを用いて紫外線を1000mJ/cm2照射し、金型Aの格子状凹凸形状を転写した。TACフィルムを金型から剥離し、縦300mm、横200mmの格子状凹凸形状を転写したフィルムを作製した。(以下これを転写フィルムAという。)
・スパッタリング法を用いた誘電体層の形成
次に転写フィルムAの格子状凹凸形状転写表面に、スパッタリング法により誘電体層として二酸化珪素を成膜した。スパッタリング装置条件は、Arガス圧力0.2Pa、スパッタリングパワー770W/cm2、被覆速度0.1nm/sとし、転写フィルム上の誘電体厚みが平膜換算で3nmとなるように成膜した。
次に誘電体層を成膜した転写フィルムAの格子状凹凸形状転写表面に、真空蒸着によりアルミニウム(Al)を成膜した。Alの蒸着条件は、常温下、真空度2.0×10−3Pa、蒸着速度40nm/sとした。Alの厚みを測定するため表面が平滑なガラス基板を転写フィルムと同時に装置に挿入し、平滑ガラス基板上のAl厚みをAl平均厚みとした。格子の長手方向と垂直に交わる平面内において基材面の法線と蒸着源のなす角度を蒸着角θと定義し、今回全ての転写フィルムで蒸着角θを20°、Al平均厚み120nmとして蒸着させた。
ここでいう平均厚みとは、平滑ガラス基板上にガラス面に垂直方向から物質を蒸着させたと仮定した時の蒸着物の厚みのことを指し、蒸着量の目安として使用している。
次に不要Alの除去と金属ワイヤ層表面水酸基の活性化を目的として、Alを蒸着した転写フィルムAを0.1重量%水酸化ナトリウム水溶液に室温下で所定時間浸漬させた。その後すぐに水洗いし、フィルムを乾燥させた。転写フィルムのアルカリ水溶液浸漬時間は、処理後の転写フィルムの波長550nmの光に対する偏光度が99.9%以上で光線透過率が40%以上となる時間とした。このアルカリ水溶液浸漬処理後の転写フィルムAを被覆前偏光フィルムAとし、視感度補正透過率と視感度補正偏光度を表1に示す。
視感度補正透過率と視感度補正偏光度の測定には日本分光社製偏光フィルム評価装置V7000を用い、23℃65%RHの条件で行った。(以下視感度補正透過率、視感度補正偏光度は全て上記条件にて測定を行った。)
被覆前偏光フィルムAを株式会社ハーベス社製のフッ素系シランカップリング剤溶液(HD−1101Z)に1分間浸漬した。その後、溶液より取り出し、溶媒乾燥、およびアルミニウム表面とフッ素系シランカップリング剤の脱水縮合のため23℃、60%RHの雰囲気下で10分間風乾した。次いで偏光フィルム上に過剰に付着したフッ素系シランカップリング剤を洗浄除去する目的で、株式会社ハーベス社製のフッ素溶媒(HD−ZV)に浸漬し、その後エアブローによりフッ素溶媒を乾燥・除去した。さらにこのワイヤグリッド偏光フィルムを80℃のオーブンに15分間入れ、脱水縮合を実質的に完結させ、アルミニウム細線が実質的にフッ素系シランカップリング剤の単分子膜で被覆されたワイヤグリッド偏光フィルムを得た。この単分子膜被覆後の偏光フィルムAを被覆後偏光フィルムAとし、これを実施例1とした。この時皮膜層の厚みは約10から50オングストロームであり、大部分は20から30オングストロームのほぼ均一な膜厚であった。また、
前記皮膜層をIR、NMR、TOFマススペクトロメトリーで分析した結果、以下の化学式(IV)で表される化合物を含むことがわかった。
CF3−(OC3F6)a−OCF2−CF2−Si(OH)α(OR)β (IV)
ただし、
aは10以上の整数を表す。
Rは炭化水素基を表す。
αは1以上3以下の整数を表し、
βは0または1以上2以下の整数を表し、
α+β=3である。
・酸化ケイ素(SiOx)による皮膜層の形成
被覆前偏光フィルムAと同様の方法で製造した被覆前偏光フィルムBに対しスパッタリング法を用いて酸化ケイ素を被覆した。スパッタリングは、反応ガスにアルゴンを使用し、ガス流量10sccm、スパッタ時真空度0.5Pa、スパッタリングパワー770Wの条件で、酸化ケイ素厚みが平膜換算で30nmとなるまで行った。この酸化ケイ素被覆後の偏光フィルムを被覆後偏光フィルムBとし、比較例1とした。
被覆前偏光フィルムAと同様の方法で製造した被覆前偏光フィルムCを用意し、80℃のオーブンに15分間入れる工程を除く以外は実施例1と同様の方法でフッ素系シランカップリング剤による皮膜層を有する偏光フィルムを作製した。この偏光フィルムを被覆後偏光フィルムCとし、比較例2とした。
実施例1および比較例1の皮膜層形成前後の可視光領域(380nm〜780nm)の透過率および偏光度を日本分光社製偏光フィルム評価装置V7000にて測定した。皮膜層形成前後の各偏光フィルムの視感度補正透過率および視感度補正偏光度の値を表1に示した。
実施例1と比較例1のワイヤグリッド偏光フィルムを80℃の純水に10分間浸漬し、浸漬前後の光学特性を測定した。表1にその結果も併せて示す。また、比較例2に関しても同様に80℃の純水に10分間浸漬したところ、水によりアルミニウムが酸化され透明になってしまい、完全に偏光性能を失ってしまった。
実施例1、比較例1のワイヤグリッド偏光フィルムを85℃85%RHの恒温恒湿試験機(楠本化成株式会社製 FX406C)に投入し1000時間経過後の透過率、偏光度を評価した。表1にその結果を併せて記載した。
被覆前偏光フィルムAを縦100mm、横100mmで切り出し、実施例1の方法による皮膜層形成後のカール度合いを測定した。カール度合いは、皮膜層形成後、20℃、55%相対湿度の環境下で平滑で水平な台の上に24時間静置した後の頂点と底面の高さの差をもって評価した。実施例1の方法は長時間の高温水中処理を行わない為、TACなど吸水性の高い樹脂基材のワイヤグリッド偏光フィルムであっても、高さの差は1mm以下であり、皮膜形成前後で極めて形状変化が少なかった。
Claims (11)
- 基板上に一定の間隔で一定の方向に延在する金属ワイヤ層と、前記金属ワイヤ層を被覆する皮膜層と、を含むワイヤグリッド偏光板であって、前記皮膜層が、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系アルミネートカップリング剤、及びフッ素系チタネートカップリング剤、からなる群から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤からなることを特徴とするワイヤグリッド偏光板。
- 前記フッ素系シランカップリング剤、フッ素系アルミネートカップリング剤、及びフッ素系チタネートカップリング剤がパーフルオロポリエーテル構造を有することを特徴とする請求項1に記載のワイヤグリッド偏光板。
- 前記フッ素系シランカップリング剤、フッ素系アルミネートカップリング剤、及びフッ素系チタネートカップリング剤が、下記式(I)で表されるフッ素化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤグリッド偏光板。
CnF2n+1−Z−Y−X−(OC3F6)a−(OC2F4)b−(OCF2)c−O−X−Y−Z−M(OH)α(OR)β(P)γ(Q)m−α−β−γ (I)
(式中、a、b及びcはそれぞれ独立して、0または1以上の整数を表し、a、b及びcの和は少なくとも1であり、a、b及びcが付けられた括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。
Xは、式:−(O)d−(CF2)e−(CH2)f−(ここで、d、e及びfはそれぞれ独立して、0または1以上の整数を表し、e及びfの和は少なくとも1であり、d、e及びfが付けられた括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であるが、Oは連続しない。)で示される基を表す。
Yは二価の極性基または単結合を表す。
Zは、式:−(CH2)g−(ここで、gは、0または1以上の整数を表す。)で示され
る基を表す。
Mはケイ素原子、チタン原子またはアルミニウム原子を表す。
Pは加水分解可能な極性基を表す。
Qは水素または炭化水素基を表す。
Rは炭化水素基を表す。
mはMの価数−1の整数を表す。
αは1以上m以下の整数を表し、
β、γは0または1以上m以下の整数を表し、
α+β+γは1以上m以下の整数を表す。
nは1以上の整数である。
−OC3F6−は、−OCF2CF2CF2−または−OCF(CF3)CF2−を、−OC2F4−は、−OCF2CF2−又は−OCF(CF3)−を表す。) - 前記皮膜層が、前記カップリング剤の水酸基と、前記金属ワイヤ層表面に存在する水酸基とが脱水縮合した化合物からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光板。
- 前記金属ワイヤ層のピッチ幅が150nm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光板。
- 前記金属ワイヤの主成分がアルミニウムであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光板。
- 前記皮膜層の厚みが500オングストローム以下であることを特徴とする請求項1から6いずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光板。
- 前記基板が樹脂基板であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のワイヤグリッド偏光板。
- 基板上に一定の間隔で一定の方向に延在する金属ワイヤ層が形成された偏光板を、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系アルミネートカップリング剤、およびフッ素系チタネートカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤の溶液に浸漬したのち、乾燥して、金属ワイヤ層上に上記カップリング剤に由来するフッ素化合物の皮膜層を形成させたのち、得られる層をフッ素系溶媒でリンスし、その後60℃〜150℃で加熱することを特徴とするワイヤグリッド偏光板の製造方法。
- 前記金属ワイヤ層を酸、またはアルカリ性水溶液中に浸漬したのち、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系アルミネートカップリング剤、およびフッ素系チタネートカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤の溶液に浸漬させることを特徴とする請求項9に記載のワイヤグリッド偏光板の製造方法。
- フッ素系シランカップリング剤、フッ素系アルミネートカップリング剤、およびフッ素系チタネートカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤の溶液に浸漬したのち、温度10から60℃、湿度20から98%RHの条件下で乾燥させることを特徴とする請求項9または10に記載のワイヤグリッド偏光板の製造方法。
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