JP5583363B2 - ワイヤグリッド偏光板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また本発明のワイヤグリッド偏光板は、樹脂基材と、前記樹脂基材上に形成された金属ワイヤと、前記金属ワイヤを被覆する皮膜層と、を具備するワイヤグリッド偏光板であって、前記皮膜層が2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、及びヒドロキシエチリデン二リン酸からなる群から選択される少なくとも1つのリン酸化合物を含み、前記金属ワイヤの主成分がアルミニウムであり、前記金属ワイヤと前記皮膜層との間の界面層のアルミニウムとリンとの比率[(P/Al)×100%]が5%以上30%以下であることを特徴とする。このとき、前記皮膜層のリンの相対元素濃度は、X線光電子分光法により0〜1100eVの間で検出されたすべての元素(P、C、O、Al、Si、N、Na)に対して0.3%以上3.5%以下であることが好ましい。
また本発明のワイヤグリッド偏光板の製造方法は、(a)金属ワイヤ表面の酸化皮膜層を酸やアルカリなどの処理液を用いて除去し、その後水洗する工程、(b)2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、及びヒドロキシエチリデン二リン酸からなる群から選択される少なくとも1つのリン酸化合物を溶媒に溶解したリン酸化合物溶液にワイヤグリッド偏光板を浸漬し、リン酸化合物溶液から取り出す工程、(c)金属ワイヤ表面に付着した余分なリン酸化合物溶液を除去するため、化合物に応じて適宜選択される溶媒に浸漬して除去する工程、を含み、前記金属ワイヤの主成分はアルミニウムであり、前記金属ワイヤと前記皮膜層との間の界面層のアルミニウムとリンとの比率[(P/Al)×100%]を5%以上30%以下とすることを特徴とする。このとき、前記皮膜層のリンの相対元素濃度を、X線光電子分光法により0〜1100eVの間で検出されたすべての元素(P、C、O、Al、Si、N、Na)に対して0.3%以上3.5%以下とすることが好ましい。
本発明では、前記(a)工程後、水が乾かないうちに前記(b)工程に移ることが好ましい。
樹脂基板は、目的とする波長領域において実質的に透明であればよく、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂を用いることもできるが、後述のリン酸化合物溶液に浸漬した際に、溶解や膨潤のしにくい樹脂基材を選択することが好ましい。このような樹脂基材としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂や、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系などの紫外線(UV)硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられる。また、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂と、ガラスなどの無機基板、上記熱可塑性樹脂、トリアセテート樹脂とを組み合わせたり、単独で用いて基板を構成させることも出来る。
金属ワイヤは、樹脂基材上に略平行に延在するよう形成されるが、例えば、格子状凹凸形状を有する樹脂基材の凸部の少なくとも一方の側面に接した構成を有する。金属ワイヤに用いる金属としては、アルミニウム、銀、銅、白金、金またはこれらの各金属を主成分とする合金を使用することができるが、可視域での吸収損失が小さいことから、アルミニウムもしくは銀が好ましい。ワイヤを構成する金属の主成分は、ワイヤ成分のうち90質量%以上であることが好ましく、ワイヤ成分の不純物は、ワイヤ内およびワイヤ表面の自由電子の動きを妨げないために、不純物成分は金属あるいは半導体であることが好ましい。
金属ワイヤ層の延在方向に垂直な面内における基板の断面形状に制限はないが、透過偏光性能の観点から断面形状は特定方向に延在する格子状凹凸形状であることが好ましい。格子状凹凸形状としては、例えば、台形、矩形、方形、プリズム状や、半円状などの正弦波状などが挙げられる。ここで、正弦波状とは凹部と凸部の繰り返しからなる曲線部をもつことを意味する。なお、曲線部は湾曲した曲線であればよく、例えば、凸部にくびれがある形状も正弦波状に含める。透過率の観点から基板断面形状は矩形もしくは正弦波状であることが好ましい。
一般にワイヤグリッド偏光板は、金属ワイヤのピッチ幅が小さくなるほど幅広い帯域で偏光特性を示すことが出来るが、近赤外〜赤外領域のみの偏光特性を考慮する場合は、ピッチは300nm程度以下であればよく、400nm近傍以下の可視域短波長領域の偏光特性を重視しない場合は、ピッチは約150nm以下でよい。可視光領域全体に渡って十分な偏光特性を得る場合には、ピッチはおおよそ120nm以下であることが好ましく、より好ましくは80nm〜120nm程度である。
金属ワイヤの製造方法においては特に制限は無い。電子線リソグラフィ法或いは干渉露光法によるマスクパターンニングとドライエッチングを用いて作製する方法や、真空下での斜め蒸着法(真空蒸着法)による作製などが挙げられるが、格子状凹凸形状を有する樹脂基材の凸部の側面に効率的に形成するという観点から斜め真空蒸着法が好ましい。また、光学特性の観点から、不要な金属はエッチングにより除去することが好ましい。エッチング方法は、基板や誘電体層に悪影響を及ぼさず、金属部分が選択的に除去できる方法であれば特に限定は無いが、生産性の観点から酸・アルカリ性の水溶液に浸漬させる方法が好ましい。特に水酸化ナトリウム水溶液は基板や誘電体層への影響が少なく、かつ、アルミニウムの選択的除去に適しており、好ましい。
金属ワイヤ上にリン酸化合物の皮膜層が形成される。皮膜層中のリンの相対元素濃度は0〜1100eVの間で検出されたすべての元素(P、C、O、Al、Si、N、Na)に占めるリンの相対元素濃度により算出するが、皮膜層のリンの相対元素濃度が、0.3%以上3.5%以下であれば、高い耐久性を示すため好ましく、1.0%以上3.0%以下であればさらに高い耐久性を示すため好ましい。皮膜層の中の金属ワイヤの表面付近(金属ワイヤと皮膜層の間)には、リン原子と、酸素原子と、炭素原子と、水素原子と、を含む界面層が存在しており、この界面層を有することで、ワイヤグリッド偏光板は、特に高い耐久性を有する。この界面層のAlとリンの比率(P/Al×100%)は、1%以上、より好ましくは5%以上30%以下であることが好ましい。なお、このAlとリンの比率はXPSもしくはSIMSなどにより測定が可能である。中でもこの界面層は、Al−O−Pの結合基を有することが、ワイヤグリッド偏光板の耐久性の面から好ましい。
皮膜層の形成方法に限定は無いが、簡易な工程で形成する方法としては、次の(a)〜(d)の工程を順に用いることで皮膜層を形成することができる。次の(a)〜(d)の工程は、(a)〜(c)の工程までで完了させることもできるが、(d)の工程を経ることが、耐久性の面から好ましい。
(a)活性化工程
ワイヤグリッド偏光板をリン酸化合物溶液に浸漬する前に、金属ワイヤ表面の酸化皮膜層を酸やアルカリなどの処理液を用いて除去し、その後水洗する。ここで、活性化後の金属表面に酸化皮膜が再形成されるのを抑えるために、活性化後はワイヤグリッド偏光板表面の処理液または水が乾かないうちに次の工程である、皮膜層形成工程に移ることが好ましい。具体的には、水洗からリン酸化合物溶液への浸漬までの時間は、180秒以内、より好ましくは60秒分以内である。60秒以内であれば、いかなる時間(たとえば5秒、10秒、30秒など)でも金属ワイヤ上にリン酸化合物の皮膜が形成され、保護効果は発揮される。この活性化の工程は上記金属ワイヤのエッチング工程に引き続きまたは並行して行うことが工程数削減の観点から好ましい。
リン酸化合物を溶媒に溶解したリン酸化合物溶液にワイヤグリッド偏光板を浸漬し、リン酸化合物溶液から取り出すにあたり、用いるリン酸化合物溶液は環境負荷やコストの面から水溶性のものが好ましく、同様の理由から溶媒も水であることが好ましい。処理液の温度はアルミニウムを侵食しないこと、および樹脂基材への水の浸透を避ける観点から、60℃以下であることが好ましい。また、アルミニウム表面とリン酸化合物の化学結合の反応促進を促進するためには処理液の温度は15℃以上、より好ましくは20℃以上であることが好ましい。20℃以上であれば、10秒といった短時間でも耐腐食性に優れた皮膜層を形成することができる。また、リン酸化合物の濃度は、皮膜層を形成するために0.01体積%以上、より好ましくは0.1体積%以上であることが好ましい。また、処理液のpHは、任意の酸、アルカリにより調整することができる。
金属ワイヤ表面に付着した余分なリン酸化合物溶液を除去するため、化合物に応じて適宜選択される溶媒に浸漬して除去するが、皮膜層形成後は水などによるリンスで、余剰なリン酸化合物やpH調整に用いた酸、アルカリを洗い流すことができる。この際のリンス液のpHは10以下であることが好ましい。また、水洗時間は1秒〜10秒の間であることが好ましい。pHが10を超えるとアルミニウム表面に形成された皮膜が部分的に剥がれてしまう。
リン酸化合物の皮膜が形成されたワイヤグリッド偏光板を高温の水中に浸漬することで、金属表面とリン酸化合物の結合をより強固なものとすることができる。具体的には60℃以上、より好ましくは80℃以上で1分以上60分以下、より好ましくは0.5分以上10分以下の条件で固定化すると好適な皮膜層が得られる。
樹脂基板を構成する材料と金属ワイヤとの密着性向上の為に、両者の間に両者と密着性の高い誘電体材料を好適に用いることができる。例えば、珪素(Si)の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はその複合物(誘電体単体に他の元素、単体又は化合物が混じった誘電体)や、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バリウム(Ba)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、銅(Cu)などの金属の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はそれらの複合物を用いることができる。誘電体材料は、透過偏光性能を得ようとする波長領域において実質的に透明であることが好ましい。誘電体材料の積層方法には特に限定は無く、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法を好適に用いることができる。
ワイヤグリッド偏光板の透過性能を損なわない為には、金属ワイヤ表面への皮膜層形成後の透過率の低下は1.0%以下であることが好ましい。人間の視認による光学特性の識別が実質的に不可能であることから透過率の低下は0.5%以下であるとこがより好ましい。
偏光度と光線透過率の測定には偏光フィルム評価装置(日本分光社製、V7000)を用い、23℃、65%RHの条件で行った。また、偏光度、光線透過率は下記式より算出した。Imaxは直線偏光に対する平行ニコル、Iminは直行ニコル状態での透過光強度である。尚、光線透過率T(θ)は、入射光角度θの光線透過率を示す。
偏光度(%)=[(Imax−Imin)/(Imax+Imin)]×100%
光線透過率(T(θ))(%)=[(Imax+Imin)/2]×100%
リン酸化合物と金属表面との結合状態を解析するために、XPSによる表面解析を実施した。解析装置としては、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のESCALAB250を用いた。
皮膜層が形成されていない金属ワイヤの組成分析を誘導結合プラズマ分光法によりおこなった。具体的には、ワイヤグリッド偏光板のアルミニウム細線を0.1wt%の水酸化ナトリウム水溶液で完全に溶解し、測定に用いた。また、水酸化ナトリウム水溶液中のみでも組成分析を実施し、アルミニウム溶解前のバックグラウンドとして使用した。
(ワイヤグリッド偏光板の作成)
・紫外線硬化樹脂を用いた格子状凹凸形状転写フィルムの作製
格子状凹凸形状転写フィルムの作製には、金属スタンパとしてNi製金型(以下金型A)を用いた。金型Aはピッチ幅130nmの格子状凹凸形状を有し、格子の延在する方向に垂直な断面における凹凸形状が略正弦波状であった。厚み100μmのCOPフィルム(JSR社製 ARTON−G)にアクリル系紫外線硬化樹脂(屈折率1.52)を約3μm塗布し、塗布面を下にし、金型AとCOPフィルム間に空気が入らないように乗せた。COPフィルム側から中心波長365nmの紫外線ランプを用いて紫外線を1000mJ/cm2照射し、金型Aの格子状凹凸形状を転写した。COPフィルムを金型から剥離し、縦300mm、横200mmの格子状凹凸形状を転写したフィルムを作製した。(以下、これを転写フィルムAという)。
次に転写フィルムAの格子状凹凸形状転写表面に、スパッタリング法により誘電体層として窒化珪素を成膜した。スパッタリング装置条件は、Arガス圧力0.2Pa、スパッタリングパワー770W/cm2、被覆速度0.1nm/sとし、転写フィルム上の誘電体厚みが平膜換算で3nmとなるように成膜した。
次に誘電体層を成膜した転写フィルムAの格子状凹凸形状転写表面に、真空蒸着によりアルミニウム(Al)を成膜した。Alの蒸着条件は、常温下、真空度2.0×10−3Pa、蒸着速度4nm/sとした。Alは純度99.99%以上のものを用いた。Alの厚みを測定するため表面が平滑なガラス基板を転写フィルムと同時に装置に挿入し、平滑ガラス基板上のAl厚みをAl平均厚みとした。格子の長手方向と垂直に交わる平面内において基材面の法線と蒸着源のなす角度を蒸着角θと定義し、今回全ての転写フィルムで蒸着角θを20°、Al平均厚み120nmとして蒸着させた。ここでいう平均厚みとは、平滑ガラス基板上にガラス面に垂直方向から物質を蒸着させたと仮定した時の蒸着物の厚みのことを指し、蒸着量の目安として使用している。
次に不要Alの除去と、リン酸化合物との親和性を高める表面の活性化を目的として、Alを蒸着した転写フィルムAをアルカリ水溶液に浸漬し、Alのエッチングをした。Alのエッチングとしては、Al蒸着した各転写フィルムを室温下で、0.1質量%水酸化ナトリウム水溶液に60秒間浸漬し、その後すぐに水洗した。ここで得られたフィルムを、以後、未処理ワイヤグリッド偏光フィルムと呼ぶ。
水洗後、ワイヤグリッド偏光板表面のアルミニウムが水で濡れた状態を維持し、10秒後に濃度0.2vol%、液温20℃の、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(PBTC)の水溶液に1分間浸漬し、ついで5秒間水洗後、エアブローにより乾燥した。このPBTC水溶液のpHは2.2であった。ここで得られたフィルムを以後、固定化前高耐久ワイヤグリッド偏光フィルムと呼ぶ。
・皮膜層の固定化
実施例1で得られた固定化前高耐久ワイヤグリッド偏光フィルムを乾燥後、アルミニウム表面にPBTCを固定化させるため、このワイヤグリッド偏光フィルムを90℃の純水に1分間入れた。(ここで得られたフィルムを固定化後高耐久ワイヤグリッド偏光フィルムAとよぶ。)リン酸化合物皮膜の厚みを観察する目的で、FE−SEMの観察を実施した。その結果、皮膜層の厚みは1nm〜5nmであり、大部分は2nm〜3nmのほぼ均一な膜であった。
樹脂基材をトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フイルム社製TD80−UL)とした以外は、実施例1、実施例2と同様の手順でアルミニウム表面にPBTCが被覆された固定化後高耐久変更ワイヤグリッド偏光フィルムBを作成した。
未処理ワイヤグリッド偏光フィルムを比較例1とした。
エッチングの後の水洗工程のあと、ワイヤグリッド偏光フィルム表面の水分をエアブローにて吹き飛ばした。その後、22℃、45%RHの室温に10分間放置したのち、リン酸化合物皮膜層の形成と固定化を行ったサンプルを比較例2とする。
・酸化ケイ素(SiOx)による皮膜層の形成
未処理ワイヤグリッド偏光フィルムと同様の方法で製造したワイヤグリッド偏光フィルムに対しスパッタリング法を用いて酸化ケイ素を被覆した。スパッタリングは、放電ガスにアルゴンを使用し、ガス流量10sccm、スパッタ時真空度0.5Pa、スパッタリングパワー770Wの条件で、酸化ケイ素厚みが平膜換算で30nmとなるまで行った。この酸化ケイ素被覆後のワイヤグリッド偏光フィルムを比較例3とした。
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例3で作成したワイヤグリッド偏光フィルムの透過率と偏光度を測定した。その結果を表1に示す。実施例1〜実施例3および比較例1、比較例2の光学特性は実質的に同じとみなせ、皮膜層形成の工程や固定化の工程を行っても、ワイヤグリッド偏光フィルムの光学特性がほとんど低下しないことが解った。一方、比較例3においては、実施例1〜実施例3および比較例1、比較例2に比較して皮膜形成時に透過率および偏光度が低下した。これは保護膜の厚みが30nmと厚いためであると考えられる。
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例3のワイヤグリッド偏光フィルムを80℃の純水に10分間浸漬し、透過率と偏光度を測定した。その結果を表1に示す。また、熱水浸漬試験前と試験後の変化率も合わせて示した。比較例1、比較例2は透明化してしまい、評価できなかった。
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例3のワイヤグリッド偏光フィルムを85℃、85%RHの恒温恒湿試験機(楠本化成社製 FX406C)に投入し1000時間経過後の透過率と偏光度を測定し、表1に示した。
実施例1〜実施例3および比較例1、比較例2のワイヤグリッド偏光フィルムの皮膜層と、PBTC水溶液を真空乾燥し固体状態としたものの化学結合状態をX線光電子分光法(XPS)により解析した。装置はサーモフィッシャーサイエンティフィック社製のESCALAB250を用い、励起源には出力15kV×10mAのアルミニウムのKα線を用いた。皮膜の量は0〜1100eVの間で検出されたすべての元素(P、C、O、Al、Si、N、Na)に占めるリンの相対元素濃度から、また、化学結合状態はリンの2p軌道の化学シフトから、それぞれ評価した。その結果を図1及び表2に示す。
ICPにより比較例1のアルミニウム細線の組成分析を行ったところ、アルミニウム以外の元素は検出限界の0.01atomic%以下であった。
実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例3で得たワイヤグリッド偏光フィルムを縦100mm、横100mmで切り出し、カール度合いを測定した。カール度合いは、20℃、55%相対湿度の環境下で平滑で水平な台の上に24時間静置した後の頂点と底面の高さの差をもって評価した。実施例1、2、および比較例1〜3においては樹脂基材の吸水性が低いため、大きなカールは無く、高さの差は1mm以下であり、皮膜層形成後で基のカールが極めて小さかった。一方、実施例3においては樹脂基材の吸水性が高いため、若干の吸水膨張による変形が確認され、高さの差は約5mmであった。ここで、樹脂基材自体そのもののカールは0mmであった。
Claims (11)
- 樹脂基材と、前記樹脂基材上に形成された金属ワイヤと、前記金属ワイヤを被覆する皮膜層と、を具備するワイヤグリッド偏光板であって、前記皮膜層が2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、及びヒドロキシエチリデン二リン酸からなる群から選択される少なくとも1つのリン酸化合物を含み、
前記皮膜層のリンの相対元素濃度は、X線光電子分光法により0〜1100eVの間で検出されたすべての元素(P、C、O、Al、Si、N、Na)に対して0.3%以上3.5%以下であることを特徴とするワイヤグリッド偏光板。 - 樹脂基材と、前記樹脂基材上に形成された金属ワイヤと、前記金属ワイヤを被覆する皮膜層と、を具備するワイヤグリッド偏光板であって、前記皮膜層が2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、及びヒドロキシエチリデン二リン酸からなる群から選択される少なくとも1つのリン酸化合物を含み、
前記金属ワイヤの主成分がアルミニウムであり、
前記金属ワイヤと前記皮膜層との間の界面層のアルミニウムとリンとの比率[(P/Al)×100%]が5%以上30%以下であることを特徴とするワイヤグリッド偏光板。 - 前記皮膜層のリンの相対元素濃度は、X線光電子分光法により0〜1100eVの間で検出されたすべての元素(P、C、O、Al、Si、N、Na)に対して0.3%以上3.5%以下であることを特徴とする請求項2記載のワイヤグリッド偏光板。
- 前記皮膜層と前記金属ワイヤとの間に、Al−O−Pの結合基を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のワイヤグリッド偏光板。
- 前記皮膜層が、前記リン酸化合物の水酸基と、前記金属ワイヤ表面に存在する水酸基と、が脱水縮合した結合を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のワイヤグリッド偏光板。
- 前記金属ワイヤのピッチ幅が150nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のワイヤグリッド偏光板。
- 前記皮膜層の厚みが50nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のワイヤグリッド偏光板。
- (a)金属ワイヤ表面の酸化皮膜層を酸やアルカリなどの処理液を用いて除去し、その後水洗する工程、(b)2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、及びヒドロキシエチリデン二リン酸からなる群から選択される少なくとも1つのリン酸化合物を溶媒に溶解したリン酸化合物溶液にワイヤグリッド偏光板を浸漬し、リン酸化合物溶液から取り出す工程、(c)金属ワイヤ表面に付着した余分なリン酸化合物溶液を除去するため、化合物に応じて適宜選択される溶媒に浸漬して除去する工程、を含み、
前記皮膜層のリンの相対元素濃度を、X線光電子分光法により0〜1100eVの間で検出されたすべての元素(P、C、O、Al、Si、N、Na)に対して0.3%以上3.5%以下とすることを特徴とするワイヤグリッド偏光板の製造方法。 - (a)金属ワイヤ表面の酸化皮膜層を酸やアルカリなどの処理液を用いて除去し、その後水洗する工程、(b)2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、及びヒドロキシエチリデン二リン酸からなる群から選択される少なくとも1つのリン酸化合物を溶媒に溶解したリン酸化合物溶液にワイヤグリッド偏光板を浸漬し、リン酸化合物溶液から取り出す工程、(c)金属ワイヤ表面に付着した余分なリン酸化合物溶液を除去するため、化合物に応じて適宜選択される溶媒に浸漬して除去する工程、を含み、
前記金属ワイヤの主成分はアルミニウムであり、前記金属ワイヤと前記皮膜層との間の界面層のアルミニウムとリンとの比率[(P/Al)×100%]を5%以上30%以下とすることを特徴とするワイヤグリッド偏光板の製造方法。 - 前記皮膜層のリンの相対元素濃度を、X線光電子分光法により0〜1100eVの間で検出されたすべての元素(P、C、O、Al、Si、N、Na)に対して0.3%以上3.5%以下とすることを特徴とする請求項9記載のワイヤグリッド偏光板の製造方法。
- 前記(a)工程後、水が乾かないうちに前記(b)工程に移ることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれかに記載のワイヤグリッド偏光板の製造方法。
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