JP2010195686A - リン酸アスコルビル誘導体又はその塩、その製造方法、及び化粧料。 - Google Patents

リン酸アスコルビル誘導体又はその塩、その製造方法、及び化粧料。 Download PDF

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亜鐘 神山
Keiichi Uehara
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Abstract

【課題】リン酸アスコルビルが有する、美白作用、コラーゲン産生促進作用等のさらなる機能の向上と、有機溶剤にも溶けやすく、酸性水溶液中でも安定で、変色、変臭、活性低下等が少ない、新規なリン酸アスコルビル誘導体又はその塩を提供することを課題とする。
【解決手段】リン酸アスコルビルの特定の水酸基の水素が、R、R−O−CH−CH(OH)−CH−、R−O−CH−CH(CHOH)−、R−CH(CHOH)−、R−CH(OH)−CH−(Rは、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基)、又はヒドロキシシクロヘキシル基で置換されているグリコシルアスコルビン酸誘導体又はその塩、並びにリン酸アスコルビルと、アルキルグリシジルエーテル、エポキシアルカン、脂環式エポキシ等のエポキシ化合物を反応させることを特徴とするその製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、化粧料の原料等として好適に用いられるリン酸アスコルビルの誘導体又はその塩に関する。又、前記リン酸アスコルビル誘導体の製造方法に関する。本発明は、更に、前記リン酸アスコルビル誘導体又はその塩を配合した化粧料に関する。
アスコルビン酸は、安全かつ有用な抗酸化物質であり、優れた美白作用、コラーゲン産生促進作用など多彩な生理活性作用を有する化合物として知られている。しかし、アスコルビン酸は、光、熱、酸素、金属イオンに対して不安定であり、分解や着色などの問題があり、化粧品分野での利用が妨げられていた。
そこで、アスコルビン酸の大きな欠点である経時安定性を向上させた物質として、アスコルビン酸リン酸マグネシウムなどの、アスコルビン酸とリン酸を結合させマグネシウム塩としたものなど、アスコルビン酸誘導体が開発されており、特許文献1乃至3に記載されている。これらのアスコルビン酸誘導体は、生体内ではアスコルビン酸を遊離し、美白作用、コラーゲン産生促進作用などを示す。
また、熱、光、酸素及び金属イオンに対する安定性がアスコルビン酸より向上している。しかしながら、これらは、油性原料には溶けにくく、さらに水への溶解性が低く、イオン性化合物であることなどから乳化系における乳化安定性への影響が大きい等の問題を有し、美白効果、コラーゲン産生促進効果は未だ満足いくものには至っていない。
特公44−31237号公報 特開2005−60239号公報 特開2005−41808号公報
本発明は、水、油性原料にも溶けやすく、変色、変臭、活性低下等の問題が少ないとともに、美白作用、コラーゲン産生促進作用、しわ形成抑制作用、光老化防止作用、メイラード反応阻害作用、乾燥肌改善作用、皮膚弾力性改善作用、くすみ防止作用、グルタチオンの細胞内合成増強作用等をリン酸アスコルビルと同等以上に奏するアスコルビン酸とリン酸の縮合物の誘導体又はその塩を提供することを課題とする。本発明は、又、この新規なリン酸アスコルビル誘導体又はその塩を、容易に安価に製造することができる製造方法を提供することを課題とする。本発明は更に、この新規なリン酸アスコルビル誘導体又はその塩を配合した化粧料を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記実情に鑑みて鋭意検討した結果、下記一般式(I)で示される新規なリン酸アスコルビル誘導体又はその塩は、リン酸アスコルビルと同等またはそれ以上の美白作用、保湿作用、コラーゲン産生促進作用、しわ形成抑制作用、光老化防止作用、メイラード反応阻害作用、乾燥肌改善作用、皮膚弾力性改善作用、くすみ防止作用、グルタチオンの細胞内合成増強作用などの優れた作用を有するとともに、変色、変臭、活性低下等が少ないことを見出した。本発明者らは、更に、下記の一般式(I)で示される新規なリン酸アスコルビル誘導体は、リン酸アスコルビルと、エポキシド骨格を有するグリシドール、アルキルグリシジルエーテル、エポキシアルカン等を、単に反応させることにより容易に製造できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
本発明は、下記の一般式(I)で表わされることを特徴とするリン酸アスコルビル誘導体又はその塩を提供する(請求項1)。

[式中、
,R,R,R,及びRは、H、R−O−CH−CH(OH)−CH−、R−O−CH−CH(CHOH)−、R−CH(CHOH)−、R−CH(OH)−CH−、又はヒドロキシシクロヘキシル基、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、又はベンジルであり
及びRは、H、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、又はフェニル基であり、
及びRは、H、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又はフェニル基である。
但し、R,R,R,R,及びRの少なくとも一つはH、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、又はベンジルではない。]
本発明は、前記式(I)で表わされるリン酸アスコルビル誘導体である。さらに、前記式(I)中のR、R、RがHの場合、このHが解離した水素イオンを、金属イオンやアンモニウムイオン等の陽イオンで置換してなるリン酸アスコルビル誘導体の塩も本発明に含まれる。
後述のように、一般式(I)で表わされるリン酸アスコルビル誘導体又はその塩は、リン酸アスコルビルのアスコルビン酸骨格の3位及び/又は6位の水酸基及び/又はリン酸の水酸基に、グリシドール、特定構造のアルキルグリシジルエーテル、アルケニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレンオキサイド、エポキシアルカン、エポキシアルケン、スチレンオキサイド及び脂環式エポキシから選ばれるエポキシ環を有する化合物(エポキシ化合物)を反応させる工程を有する方法により製造することができる。リン酸アスコルビルと、グリシドール、アルキルグリシジルエーテル、アルケニルグリシジルエーテル又はフェニルグリシジルエーテルとを反応させる際には、エポキシ環は、1級水酸基又は2級水酸基が生じるように開環する。従って、反応生成物は、R,R,R,R,Rが、R−O−CH−CH(OH)−CH−であるものとR−O−CH−CH(CHOH)−であるものとの混合物となる場合もあり、又アスコルビン酸と、エチレンオキサイド、エポキシアルカン、エポキシアルケン、又はスチレンオキサイドとを反応させる際には、R,R,R,R,Rが、R−CH(CHOH)−であるものとR−CH(OH)−CH−であるものとの混合物となる場合もある。(前記式中、RはH、アルキル基、アルケニル基、フェニル基を表す。)
ただし、上記反応においては、主に、2級水酸基が生じるように開環してリン酸アスコルビルの水酸基と反応するので、R,R,R,R,Rが、R−O−CH−CH(CHOH)−又はR−CH(CHOH)−であるものよりも、R−O−CH−CH(OH)−CH−又はR−CH(OH)−CH−であるものが生じやすい。
請求項2に記載の発明は、一般式(I)中の、
またはRが,H、R6−O−CH−CH(OH)−CH−、R−O−CH−CH(CHOH)−、R−CH(CHOH)−、R−CH(OH)−CH−であり、
が、H、R6−O−CH−CH(OH)−CH−、R−O−CH−CH(CHOH)−、R−CH(CHOH)−、R−CH(OH)−CH−であり、
、RがHであり、かつRまたはRのどちらか一方がHあることを特徴とする請求項1に記載のアスコルビン酸誘導体及びその塩である。ここで、R〜Rは、請求項1に記載の発明についてした定義と同じ意味を表す。
前記一般式(I)で表わされるリン酸アスコルビル誘導体又はその塩は、リン酸アスコルビルより、美白効果が優れるが、中でも、この請求項2に記載の発明であるリン酸アスコルビル誘導体は美白効果がより優れ、また乳化系に於いても良好な安定性を示し、好ましい。
さらに、請求項3に記載の発明であるリン酸アスコルビル誘導体又はその塩は、リン酸アスコルビルより、油性原料にも溶けやすく、水への溶解性に優れ、また乳化系に於いても良好な安定性を示し、好ましい。
一般式(I)で表されるリン酸アスコルビル誘導体の具体例を以下に例示するが、本発明の範囲は以下に示すものに限定されるものではない。
なお、以下の例示において、
グリセリルとは、HOCH−CH(OH)−CH−又はHOCH−CH(CHOH)−を示し、
アルキルグリセリル基とは、R−O−CH−CH(OH)CH−又はR−O−CH−CH(CHOH)−(Rはアルキル基を示す。)を示し、
アルキル基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ベヘニル基等を示し、
アルケニル基とは、ビニル基、アリル基、ブテニル基、イソブテニル基、クロチル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等を示し、
ヒドロキシアルキル基とは、R−CH−CH(OH)−又はR−CH(OH)−CH−(Rはアルキル基を示す。)を示し、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシノニル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシウンデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシトリデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシペンタデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシヘプタデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシノナデシル基、ヒドロキシエイコシル基、ヒドロキシベヘニル基等を挙げることができる。
(1)リン酸[アスコルビル−2−/グリセリル]
リン酸[アスコルビル−2−/アルキルグリセリル]、リン酸[アスコルビル−2−/メチルグリセリル]、リン酸[アスコルビル−2−/エイコシルグリセリル]、
ここで、リン酸[アスコルビル−2−/メチルグリセリル]とは下の式(II)に示す構造のものを表す。

(2)リン酸[アスコルビル−2−/アルケニルグリセリル]、例えば、リン酸[アスコルビル−2−/アリルグリセリル]、リン酸[アスコルビル−2−/クロチルグリセリル]、リン酸[アスコルビル−2−/ビニルグリセリル]、リン酸[アスコルビル−2−/イソブテニルグリセリル]、リン酸[アスコルビル−2−/オクテニルグリセリル]、リン酸[アスコルビル−2−/デセニルグリセリル]、リン酸[アスコルビル−2−/ドデセニルグリセリル]、
リン酸[アスコルビル−2−/フェニルグリセリル]
リン酸[アスコルビル−2−/ヒドロキシアルキル]、リン酸[アスコルビル−2−/ヒドロキシフェニルエチル]
(3)リン酸[6−O−グリセリルアスコルビル−2−]、
リン酸[6−O−アルキルグリセリルアスコルビル−2−]、例えばリン酸[6−O−メチルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[6−O−エイコシルグリセリルアスコルビル−2−]、
リン酸[6−O−アルケニルグリセリルアスコルビル−2−]、例えば、リン酸[6−O−アリルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[6−O−クロチルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[6−O−ビニルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[6−O−イソブテニルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[6−O−オクテニルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[6−O−デセニルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[6−O−ドデセニルグリセリルアスコルビル−2−]、
リン酸[6−O−フェニルグリセリルアスコルビル−2−]
リン酸[6−O−ヒドロキシアルキルアスコルビル−2−]、リン酸[6−O−ヒドロキシフェニルアスコルビル−2−]
(4)リン酸[5−O−グリセリルアスコルビル−2−]、
リン酸[5−O−アルキルグリセリルアスコルビル−2−]、例えばリン酸[5−O−メチルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[5−O−エイコシルグリセリルアスコルビル−2−]、
リン酸[5−O−アルケニルグリセリルアスコルビル−2−]、例えば、リン酸[5−O−アリルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[5−O−クロチルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[5−O−ビニルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[5−O−イソブテニルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[5−O−オクテニルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[5−O−デセニルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[5−O−ドデセニルグリセリルアスコルビル−2−]、
リン酸[5−O−フェニルグリセリルアスコルビル−2−]
リン酸[5−O−ヒドロキシアルキルアスコルビル−2−]、リン酸[5−O−ヒドロキシフェニルエチルアスコルビル−2−]
(5)リン酸[3−O−グリセリルアスコルビル−2−]、
リン酸[3−O−アルキルグリセリルアスコルビル−2−]、例えばリン酸[3−O−メチルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[3−O−エイコシルグリセリルアスコルビル−2−]、
リン酸[3−O−アルケニルグリセリルアスコルビル−2−]、例えば、リン酸[3−O−アリルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[3−O−クロチルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[3−O−ビニルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[3−O−イソブテニルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[3−O−オクテニルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[3−O−デセニルグリセリルアスコルビル−2−]、リン酸[3−O−ドデセニルグリセリルアスコルビル−2−]、
リン酸[3−O−フェニルグリセリルアスコルビル−2−]
リン酸[3−O−ヒドロキシアルキルアスコルビル−2−]、リン酸[3−O−ヒドロキシフェニルエチルアスコルビル−2−]
(6)リン酸[6−O−アルキルグリセリルアスコルビル−2−/アルキルグリセリル]、リン酸[6−O−ヒドロキシアルキルアスコルビル−2−/ヒドロキシアルキル]、リン酸[6−O−ヒドロキシアルキルアスコルビル−2−/アルキルグリセリル]、リン酸[6−O−アルキルグリセリルアスコルビル−2−/ヒドロキシアルキル]、リン酸[アスコルビル−2−/アルキルグリセリル/アルキルグリセリル]、リン酸[アスコルビル−2−/ヒドロキシアルキル/ヒドロキシアルキル]、リン酸[アスコルビル−2−/アルキルグリセリル/ヒドロキシアルキル]
(7)リン酸[3−O−アルキルグリセリルアスコルビル−2−/アルキルグリセリル]、リン酸[3−O−ヒドロキシアルキルアスコルビル−2−/ヒドロキシアルキル]、リン酸[3−O−ヒドロキシアルキルアスコルビル−2−/アルキルグリセリル]、リン酸[3−O−アルキルグリセリルアスコルビル−2−/ヒドロキシアルキル]
(8)リン酸[3−O−アルキルグリセリル−6−O−アルキルグリセリルアスコルビル−2−/アルキルグリセリル]、リン酸[3−O−ヒドロキシアルキル−6−O−ヒドロキシアルキルアスコルビル−2−/ヒドロキシアルキル]、リン酸[3−O−アルキルグリセリル−6−O−ヒドロキシアルキルアスコルビル−2−/アルキルグリセリル]、リン酸[3−O−アルキルグリセリル−6−O−ヒドロキシアルキルアスコルビル−2−/ヒドロキシアルキル]
前記式(I)で表わされるリン酸アスコルビル誘導体、すなわちアスコルビン酸部の3位もしくは5位もしくは6位水酸基、またはリン酸部の水酸基が位置特異的にエーテル化されたリン酸アスコルビル誘導体又はその塩は、リン酸アスコルビルと、グリシドール、アルキルグリシジルエーテル、アルケニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレンオキサイド、エポキシアルカン、エポキシアルケン、スチレンオキサイド及び脂環式エポキシから選ばれるエポキシ化合物を反応させることにより、リン酸アスコルビルにある5つの水酸基の中で、アスコルビン酸部の3位、6位水酸基、またはリン酸の水酸基を位置特異的にエーテル化する方法により製造することができる。
本発明者は、検討の結果、リン酸アスコルビルと、グリシドール、アルキルグリシジルエーテル、アルケニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレンオキサイド、エポキシアルカン、エポキシアルケン、スチレンオキサイド及び脂環式エポキシから選ばれるエポキシ化合物を、リン酸部の水酸基に選択的に付加反応を行う場合は、アスコルビン酸部の3位、または5位及び6位の水酸基を保護基で保護しない場合でも、先ず、リン酸の水酸基にエポキシが反応し付加体が得られることを見出した。
このようにして得られたリン酸付加体に、更にグリシドール、アルキルグリシジルエーテル、アルケニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレンオキサイド、エポキシアルカン、エポキシアルケン、スチレンオキサイド及び脂環式エポキシから選ばれるエポキシ化合物を反応させることにより、アスコルビン酸部の3位及び/又は6位の水酸基をエーテル化することができ、2つ、又は3つの水酸基が位置特異的にエーテル化された化合物が得られることも見出した。
ここで、リン酸部の水酸基のエーテル化に用いるエポキシ化合物と、アスコルビン酸の3位及び/又は6位の水酸基のエーテル化に用いるエポキシ化合物は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。この反応によれば、アスコルビン酸部の3位、5位及び6位の水酸基、を保護基で保護する工程が不要であるので、工程数が減少し反応も簡易なものとなる。従って、前記式(I)で表わされるリン酸アスコルビル誘導体等の、水酸基が位置特異的にエーテル化されたリン酸アスコルビル誘導体又はその塩の製造方法として好ましい。
本発明は、請求項4において、この好ましい製造方法、即ちリン酸アスコルビルと、グリシドール、アルキルグリシジルエーテル、アルケニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレンオキサイド、エポキシアルカン、エポキシアルケン、スチレンオキサイド及び脂環式エポキシから選ばれるエポキシ化合物を、リン酸アスコルビルの5位及び6位の水酸基を保護せずに反応させる工程を有することを特徴とするリン酸アスコルビル誘導体又はその塩の製造方法を提供する。
請求項5に記載の発明は、前記エポキシ化合物が、下記式(III)で表される化合物、下記式(IV)で表される化合物、及び1,2−エポキシシクロヘキサンから選ばれることを特徴とするグリコシルアスコルビン酸誘導体又はその塩の製造方法である。前記エポキシ化合物の中でも、これらの特定のエポキシ化合物を用いた場合は、位置特異的なエーテル化がより顕著に達成される。


[式中、R10は、H、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、又はフェニル基である。]

[式中、R11は、H、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又はフェニル基である。]
この特定構造のエポキシ化合物を用いる方法によれば、前記の効果がより優れ、保護基形成反応等を必要とせずに、1回の反応のみで、リン酸部の水酸基を位置特異的にエーテル化することができ、高い生産効率で、前記本発明のアスコルビン酸誘導体又はその塩を製造することができる。アスコルビン酸部の6位水酸基も同様に選択的に反応を行える。
式(III)で表される化合物としては、
グリシドール、アルキルグリシジルエーテル、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、ヘプチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、ヘプタデシルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル、ノナデシルグリシジルエーテル、
アルケニルグリシジルエーテル、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、イソブテニルグリシジルエーテル、クロチルグリシジルエーテル、オクテニルグリシジルエーテル、デセニルグリシジルエーテル、ドデセニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルが例示される。
式(IV)で表されるエポキシアルカンとしては、エチレンオキサイド、アルキルオキシラン、例えば、メチルオキシラン、エチルオキシラン、プロピルオキシラン、イソプロピルオキシラン、ブチルオキシラン、ペンチルオキシラン、ヘキシルオキシラン、ヘプチルオキシラン、オクチルオキシラン、ノニルオキシラン、デシルオキシラン、ウンデシルオキシラン、ドデシルオキシラン、トリデシルオキシラン、テトラデシルオキシラン、ペンタデシルオキシラン、ヘキサデシルオキシラン、ヘプタデシルオキシラン、オクタデシルオキシラン、ノナデシルオキシランが、
式(IV)で表されるエポキシアルケンとしては、イソプロピレンオキシラン、ブテンオキシラン、ペンテンオキシラン、ヘキセンオキシラン、ヘプテンオキシラン、オクテンオキシラン、ノネンオキシラン、デセンオキシラン、ウンデセンオキシラン、ドデセンオキシラン、トリデセンオキシラン、テトラデセンオキシラン、ペンタデセンオキシラン、ヘキサデセンオキシラン、ヘプタデセンオキシラン、オクタデセンオキシラン、ノナデセンオキシランが例示される。
グリシジルエーテルは、市販品を用いることができる。また、アルコール類にエピハロ(クロロ)ヒドリンを反応することによっても得ることができる。
本発明のリン酸アスコルビル誘導体又はその塩の製造方法で用いられるリン酸アスコルビルは、アスコルビン酸部の4位、5位の炭素の立体がS配置、R配置のいずれでもよい。また、グリシドール、アルキルグリシジルエーテル、アルケニルグリシジルエーテル、又はエポキシアルカン、エポキシアルケン等のエポキシ化合物等も同様にS体、R体またはその混合物でもよい。
請求項4又は請求項5に記載の発明を構成する反応は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、又はそれらの混合溶媒等を挙げることができ、特に制限はない。ただし、前記エポキシ化合物として、式(III)で表され、かつR10が、H、炭素数1〜8のアルキル基もしくは炭素数2〜8のアルケニル基である化合物、又は式(IV)で表されかつR11が、H、炭素数1〜8のアルキル基もしくは炭素数2〜8のアルケニル基である化合物が用いられる場合は、環境への負荷を低減し、かつコスト、安全性の点から水系溶媒が好ましい(請求項6)。水系溶媒としては、水の他、水を主体とし水と相溶する溶媒との混合溶媒を挙げることができる。
反応温度は特に制限ないが、より好ましくは30〜100℃、更に好ましくは40〜90℃である。反応溶媒のpHは特に制限はないが、
前記リン酸アスコルビル誘導体又はその塩であって、エポキシ化合物をアスコルビン酸部のリン酸の水酸基に反応させ製造する場合は、酸性条件下が好ましい。
この反応は、反応系内をアルゴン、窒素、ヘリウムなどの不活性ガスで置換して行うことが好ましく、不活性ガス下で反応を行うことにより、着色、着臭などを低減することができる。触媒としては、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ触媒、硫酸等の酸触媒を使用することが可能である。臭化テトラブチルアンモニウム等の相間移動触媒を使用することも可能である。反応を行うときは、十分に混ざるように、触媒を少量の水に溶解させて添加してもよい。又、リン酸アスコルビルとエポキシ化合物等の原料の混合方法は特に限定されないが、エポキシ化合物を反応系中に滴下する事もできる。
リン酸アスコルビルに対するエポキシ化合物の使用量は、特に制限はないが、リン酸アスコルビルの1モルに対して0.5〜5モルが好ましい。リン酸アスコルビルに対するエポキシ化合物の使用量が少ない程、付加反応の位置特異性、即ち、アスコルビン酸のリン酸部の水酸基への選択的付加が明白になる。アスコルビン酸部の6位水酸基へも同様に選択的に反応を行える。又、一つの水酸基にのみ付加させる場合は、0.5〜1.5モル程度の範囲が好ましい。
アスコルビン酸部の6位の水酸基、リン酸部の水酸基にエポキシ化合物を2つ以上付加させた化合物は、例えば、前記の条件(0.5〜1.5モル程度)にて一つの水酸基のみに付加した付加体を得た後、後述の方法等により精製を行って一つの水酸基のみに付加した付加体のみを取り出し、その後、その付加体に、エポキシ化合物を0.5〜1.5モル程度反応させる方法により、エポキシ化合物を二つ付加したものを得ることができ、さらに、同様の反応を行うことで、残りの水酸基に付加した化合物を得る。精製前と精製後の反応で使用するエポキシ化合物を変えることにより、リン酸部の水酸基、アスコルビン酸の6位水酸基、他の水酸基に異なるエポキシ化合物が付加された化合物を得ることができる。
前記一般式(I)のリン酸アスコルビル誘導体又はその塩であって、R又はR、R、R、Rのいずれかが、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、又はベンジル基であるものは、例えばハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化ベンジル等との反応により行うことができる。なお、ハロゲン化アリル、ハロゲン化クロチル、ハロゲン化ベンジル等の場合は水溶媒で反応を行う事もできる。
前記のようにして製造されるアスコルビン酸誘導体又はその塩はシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー、イオン交換樹脂等の樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー、活性炭処理、抽出、蒸留、結晶化等の手段により精製することができる。
前記のように、本発明のリン酸アスコルビル誘導体又はその塩は、アスコルビン酸が元来有する美白作用、コラーゲン産生促進作用などの優れた作用を有するとともに、保湿作用を有し、かつ長期間の保存でも安定で、変色、変臭、活性低下等が少ない。そこで、このリン酸アスコルビル誘導体又はその塩を成分として含有させることにより、優れた美白作用、コラーゲン産生促進作用、保湿作用、光老化防止作用、メイラード反応阻害作用、乾燥肌改善作用、皮膚弾力性改善作用、くすみ防止作用、グルタチオンの細胞内合成増強作用等を有するとともに、経時安定性にも優れた皮膚外用剤、毛髪化粧料等の各種化粧料を得ることができる。又、食品の添加剤、飼料等としても利用できる。
請求項7は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のリン酸アスコルビル誘導体又はその塩を配合したことを特徴とする化粧料を提供するものである。
本発明のリン酸アスコルビル誘導体又はその塩を、優れた保湿作用を付与するために化粧料に配合する場合は、各種化粧料への配合量は、1から20重量%が好ましい。他の作用を付与するために配合する場合、その配合量の範囲は、化粧料の用途により異なり、特に限定できないが、通常、0.01%〜20重量%の範囲である。0.01%重量未満の場合は、美白効果等、本発明のアスコルビン酸誘導体又はその塩が有する効果を十分示せない場合が多い。一方、20重量%を超える場合は、配合量に見合った効果が望めない場合が多い、また剤系を壊す恐れがある。
本発明の化粧料には、この必須成分の他に、通常、用いられる成分、例えば、油性原料、界面活性剤、高分子化合物、紫外線吸収剤、薬剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、美白剤などを適宜配合することができる。又、本発明のアスコルビン酸誘導体又はその塩は、保湿剤としても作用するが、本発明の化粧料には、他の保湿剤を適宜配合することができる。
油性原料としては、オリーブ油、椿油、マカデミアナッツ油、茶実油、ヒマシ油、トリ(カプリン/カプリル)グリセリルなどの油脂類、ホホバ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ラノリン、ミツロウなどのロウ類、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワランなどの炭化水素類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸などの脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸−2−オクチルドデシル、2−エチルへキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ−2−エチルヘキサノイン、などのエステル類、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどのシリコーン類などが挙げられる。
界面活性剤としては、高級脂肪酸石鹸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アシル−N−メチルタウリン塩、N−アシルアミノ酸塩、アルキルリン酸エステル塩などのアニオン性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ヒドロキシイミダゾリニウムベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーンなどの非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
他の保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、マルチトール、ソルビトール、1,3-ブチレングリコール、乳酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなどが挙げられる。
高分子化合物としては、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、高分子のジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。
酸化防止剤としては、ビタミンEやタンニン、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)等を挙げることができる。
美白剤としては、アルブチン、ビタミンC誘導体、エラグ酸、カミツレエキス、甘草エキス、ルシノール、ローズマリーエキス等が挙げられる。
本発明の化粧料の剤系は任意であり、溶液系、可溶化系、乳化系、ゲル系、粉末分散系、水−油二層系等いずれも可能であり、目的とする製品に応じて上記一般式で表されるアスコルビン酸誘導体又はその塩と上記任意配合成分とを配合して製造することができる。
本発明の、前記一般式(I)で示されるリン酸アスコルビル誘導体又はその塩は、美白作用、コラーゲン産生促進作用、光老化防止作用、メイラード反応阻害作用、乾燥肌改善作用、皮膚弾力性改善作用、くすみ防止作用、グルタチオンの細胞内合成増強作用等のアスコルビン酸誘導体が元来有する優れた機能を有するとともに、保湿作用を有し、長期間の保存でも安定で、変色、変臭、活性低下等が少ないものである。従って、この化合物を皮膚外用剤や毛髪化粧料などの化粧料に配合することにより、美白作用や保湿作用などに優れ、かつ長期間の保存でも安定した化粧料を得る事ができる。本発明の化粧料は、この美白作用や保湿作用などに優れ、かつ長期間の保存でも安定した化粧料(美白化粧料や保湿化粧料など)である。
本発明の製造方法によれば、保護基の形成工程を経ずに、リン酸アスコルビルとエポキシ化合物等を単に反応するのみで、前記一般式(I)で示されるリン酸アスコルビル誘導体又はその塩を製造することができ、従って、本発明のリン酸アスコルビル誘導体又はその塩を、容易に安価に製造することができる。
次に、本発明を実施するための具体的な形態を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例により限定されるものではない。
実施例1 リン酸[6−O−ブチルグリセリルアスコルビル−2−/ブチルグリセリル]の合成
アルゴン雰囲気下、リン酸アスコルビル−2−(3.00g)に、DMSO3.0mLを加え、さらにブチルグリシジルエーテル(3.66g)を加えた。50℃に加温し3時間攪拌した後、減圧下に濃縮して得られた残渣5.78gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。その後、クロロホルム/メタノール/水=65/35/5混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行い、リン酸[6−O−ブチルグリセリルアスコルビル−2−/ブチルグリセリル](0.20g)を得た。

1H−NMR (400MHz, CDOD): δ ppm 0.91(6H,t−like),1.37(4H,m),1.54(4H,m),3.45(8H,m),3.67(2H,d−like),3.92(4H,m),3.96(7H,m),4.83(1H,brs)
13C−NMR (100MHz, CDOD): δ ppm 14.24,20.25,32.78,63.36,69.04,69.09,69.14,70.69,70.81,72.33,72.71,77.32,115.36,161.58,172.77
実施例2 リン酸[6−O−グリセリルアスコルビル−2−/グリセリル]の合成
アルゴン雰囲気下、リン酸アスコルビル−2−(3.00g)に、DMSO3.0mLを加え、さらにグリシドール(3.12g)を加え、50℃に加温し3時間攪拌した後、減圧下に濃縮し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノール/水=65/35/5混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行うことにより、リン酸[6−O−グリセリルアスコルビル−2−/グリセリル]を得ることができる。

実施例3 リン酸[アスコルビル−2−/ヘキサデシルグリセリル]の合成
アルゴン雰囲気下、リン酸アスコルビル−2−(3.00g)に、DMSO5.0mLを加え、さらにヘキサデシルグリシジルエーテル(4.18g)を加え、60℃に加温し5時間攪拌した後、減圧下に濃縮し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノール/水=70/3/0.3混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行うことにより、リン酸[アスコルビル−2−/ヘキサデシルグリセリルを得ることができる。
実施例4 リン酸[アスコルビル−2−/2−ヒドロキシデシル]の合成
アルゴン雰囲気下、リン酸アスコルビル−2−(3.00g)に、DMSO5.0mLを加え、さらに1,2−エポキシデカン(2.19g)を加え、60℃に加温し5時間攪拌した後、減圧下に濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノール/水=70/3/0.3混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行うことにより、リン酸[アスコルビル−2−/2−ヒドロキシデシル]を得ることができる。
実施例5 リン酸[6−O−(2−ヒドロキシヘキサデシル)アスコルビル−2−]の合成
アルゴン雰囲気下、リン酸アスコルビル−2−(3.00g)に、水5mL、DMSO5.0mLを加え、炭酸水素ナトリウム(3.93g)、さらに1,2−エポキシヘキサデカン(3.37g)を加え、60℃に加温し5時間攪拌した後、メタノールを加えろ過し、減圧下に濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノール/水=70/3/0.3混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行うことにより、リン酸[6−O−(2−ヒドロキシヘキサデシル)アスコルビル−2−]を得ることができる。
実施例6 リン酸[3−O−フェニルグリセリルアスコルビル−2−/フェニルグリセリル]の合成
アルゴン雰囲気下、リン酸アスコルビル−2−(3.00g)に、水5mL、DMSO5.0mLを加え、炭酸水素ナトリウム(0.85g)、さらにフェニルグリシジルエーテル(3.64g)を加え、60℃に加温し5時間攪拌した後、メタノールを加えろ過し、減圧下に濃縮して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、その後、クロロホルム/メタノール/水=70/3/0.3混液にて溶出し、減圧下にて濃縮を行うことにより、リン酸[3−O−フェニルグリセリルアスコルビル−2−/フェニルグリセリル]を得ることができる。

試験例1 [メラニン産生抑制試験]
美白効果の試験として、B16メラノーマ4A5細胞のテオフィリン誘発メラニン産生に対する作用の評価を、下記の手順により、本発明のアスコルビン酸誘導体について行った。
(1)B16マウス メラノーマ4A5株を、2.0×10cells/wellの細胞密度で48穴プレートに播種した。
(2)10%ウシ胎児血清(Invitrogen社製)含有ダルベッコ変法イーグル培地(SIGMA社製、以下D−MEMと略記する。)にて24時間培養後、0.2mMテオフィリン、及び所定の濃度の試料を含有した10%ウシ胎児血清含有D−MEMに交換した。
(3)試料共存下で3日間培養後、アスピレーターを用いて培地を除去し、蒸留水を添加後超音波により細胞を破砕した。
(4)その後、タンパク量を、BCA protein assay kit(PIERCE社製)を用いて定量し、又、メラニンの生成量を、後述のアルカリ可溶化法にて測定した。細胞破砕液に終濃度2Nとなるように水酸化ナトリウムを添加して加熱溶解(60℃、15分)後、マイクロプレートリーダーを用いて450nmの吸光度を測定した。メラニン量は、合成メラニン(SIGMA)を標準品として作成した検量線から算出した。タンパク量でメラニン量を除することにより単位タンパクあたりのメラニン量を算出した。
(5)メラニン生成抑制率は、次式から算出した。
メラニン生成抑制率(%)=[1−(A−B)/(C−B)]×100
[式中、Aは、試料添加時の単位タンパクあたりのメラニン量(g/g)、Bは、normal群の単位タンパクあたりのメラニン量(g/g)、Cはcontrol群の単位タンパクあたりのメラニン量(g/g)を示す。]
Normalはテオフィリン(−)、試料(−)、Controlはテオフィリン(+)、試料(−)とした。
試料を100μM以下の濃度で測定したときのメラニン生成抑制率に基づき、美白効果を下記のように表記した。なお、測定はN=4で行った。
<20% :△
20−40% :○
40%以上 :◎

表1の結果は、本発明のリン酸アスコルビル誘導体は、公知のアスコルビン酸誘導体又はその塩、即ち、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸グルコシド、アスコルビン酸リン酸マグネシウムより優れる美白効果を有することを示している。
試験例2 [コラーゲン産生評価試験]
正常ヒト皮膚繊維芽細胞を、2.5×10cells/wellの細胞密度になるように10%(v/v)のウシ胎児血清(Invitrogen社製)含有D−MEMで調整後、96穴プレート上で24時間のプレインキュベージョンを行った。培地を除去した後、次に5%(v/v)ウシ胎児血清含有D−MEMで100μMの濃度に調製したサンプルを各ウェルに添加した後37℃、5%CO下で48時間培養した。培養終了後、遊離コラーゲン量をSircol collagen assay kit(Biocolor社製)を用いて測定した。なお、測定はN=4で行った。
試料を100μMの濃度で測定したときのコラーゲン産生量をControl群と比較し、その結果(Control群を100%としたときの%値)を以下の基準に基づき表2に示す。
<100% :±
100−200%:+
表2の結果は、本発明のリン酸アスコルビル誘導体は、コラーゲン産生促進物質として非常に優れるアスコルビン酸や、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、3−O−エチルアスコルビン酸等の公知のアスコルビン酸誘導体と、同等程度のコラーゲン産生促進効果を有することが明らかである。
試験例3 [安定性試験]
各種試験サンプルの2%水溶液を希水酸化ナトリウム水溶液、または希塩酸水溶液でそれぞれpH5に調製し、50mLのスクリュー管に入れ密栓し、50℃にて4週間保管し、臭い及び着色度を下記の方法、基準に基づき評価し結果を表3に示す。
臭い:
10人のパネラーにより、次の基準で評価した。
3: ほとんど無臭。
2: 少し異臭が感じられる。
1: 強い異臭が感じられる。
この評価結果に基づき、下記の様に分類した。
○:10人の総合点が25以上
△:10人の総合点が16〜24
×:15以下
着色:
10人のパネラーにより、次の基準で評価した。
3: 調製直後と比較しほとんど変化なし。
2: 調製直後と比較し着色する。
1: 調製直後と比較し強く着色。
この評価結果に基づき、下記の様に分類した。
○:10人の総合点が25以上
△:10人の総合点が16〜24
×:15以下
表3に示すように、本発明のリン酸アスコルビル酸誘導体は、臭い、着色の面で安定性に優れていることが確認された。

実施例7 クリーム
表4に示す組成の(1)〜(5)の油相部の原料、および(6)〜(10)の水相部の原料をそれぞれ70℃に加温し溶解して、油相および水相をそれぞれ調製した。その後、水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却することにより、乳化を壊すことなく美白効果に優れたクリームを調製する。なお、表4以後の表中、配合量は重量部を表す。


* 配合量を計100重量部とするために必要な量を意味する。以下の表においても同じである。

実施例8 乳液
表5に示す組成の(1)〜(9)の油相部の原料、および(10)〜(13)の水相部の原料をそれぞれ70℃に加温し溶解して、油相および水相をそれぞれ調製した。その後、水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却することにより、乳化を壊すことなく美白効果に優れた乳液を調製する。


実施例9 乳液
表6に示す組成の(5)〜(10)の油相部の原料、および(1)〜(4)、(11)〜(12)の水相部の原料をそれぞれ70℃に加温し溶解して、油相および水相をそれぞれ調製した。その後、水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却することにより、乳化を壊すことなく美白効果に優れた乳液を調製することができる。
実施例10 クリーム
表7に示す組成の(1)〜(2)の油相部の原料、および(3)〜(10)の水相部の原料をそれぞれ70℃に加温し溶解して、油相および水相をそれぞれ調製した後、水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却することにより、クリームを調製することができる。このクリームは、乳化を壊すことなく美白効果に優れた皮膚用化粧料として用いられる。

実施例11 化粧水
表8に示す組成の(1)〜(6)の原料を、よく攪拌しながら混合することにより化粧水を調製することができる。この化粧水は、リン酸[6−O−ブチルグリセリルアスコルビル−2−/ブチルグリセリル]を7重量%含んでいるので、乳化を壊すことなく優れた保湿効果を有する。

実施例12 クリーム
表9に示す組成の(1)〜(6)の油相部を、および(7)〜(10)の水相部をそれぞれ70℃に加温溶解する。水相部に油相部を加え予備乳化を行い、ついでホモミキサーで乳化した後、よく攪拌しながら室温まで冷却してクリームを調製することができる。このクリームは、乳化を壊すことなく美白効果に優れた皮膚用化粧料として用いることができる。

Claims (7)

  1. 下記の一般式(I)で表わされることを特徴とするアスコルビン酸誘導体又はその塩。

    [式中、
    ,R,R,R,及びRは、H、R−O−CH−CH(OH)−CH−、R−O−CH−CH(CHOH)−、R−CH(CHOH)−、R−CH(OH)−CH−、又はヒドロキシシクロヘキシル基、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、又はベンジル基であり
    及びRは、H、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、又はフェニル基であり、
    及びRは、H、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又はフェニル基である。
    但し、R,R,R,R,及びRの少なくとも一つはH、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、又はベンジル基ではない。]
  2. 前記一般式(I)中の、
    またはRが,H、R6−O−CH−CH(OH)−CH−、R−O−CH−CH(CHOH)−、R−CH(CHOH)−、R−CH(OH)−CH−であり、
    が、H、R6−O−CH−CH(OH)−CH−、R−O−CH−CH(CHOH)−、R−CH(CHOH)−、R−CH(OH)−CH−であり、
    、RがHであり、かつRまたはRのどちらか一方がHあることを特徴とする請求項1に記載のアスコルビン酸誘導体又はその塩。
  3. 前記一般式(I)中の、
    またはRが、R6−O−CH−CH(OH)−CH−、R−O−CH−CH(CHOH)−、R−CH(CHOH)−、R−CH(OH)−CH−であり、
    、RがHであり、かつRまたはRのどちらか一方がHあることを特徴とする請求項1に記載のアスコルビン酸誘導体又はその塩。
  4. リン酸アスコルビルと、グリシドール、アルキルグリシジルエーテル、アルケニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレンオキサイド、エポキシアルカン、エポキシアルケン、スチレンオキサイド及び脂環式エポキシから選ばれるエポキシ化合物を反応させる工程を有することを特徴とするリン酸アスコルビル誘導体又はその塩の製造方法。
  5. 前記エポキシ化合物が、下記式(III)で表される化合物、下記式(IV)で表される化合物、及び1,2−エポキシシクロヘキサンから選ばれることを特徴とする請求項1乃至3に記載のアスコルビン酸誘導体又はその塩の製造方法。

    [式中、R10は、H、炭素数1〜22のアルキル基である。]

    [式中、R11は、H、炭素数1〜20のアルキル基である。]
  6. 前記エポキシ化合物が、式(III)で表され、かつR18が、H、炭素数1〜8のアルキル基である化合物、又は式(IV)で表されかつR19が、H、炭素数1〜8のアルキル基である化合物であり、かつ、前記アスコルビン酸と、前記エポキシ化合物との反応が、水系溶媒中で行われることを特徴とする請求項3に記載のアスコルビン酸誘導体又はその塩の製造方法。
  7. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアスコルビン酸誘導体又はその塩を配合したことを特徴とする化粧料。
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