JP2010193549A - 交流電動機の制御システム - Google Patents

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Abstract

【課題】実トルクが不安定になる現象が生じることを抑制可能な、交流電動機の制御システムを提供する。
【解決手段】信号処理回路44は、レゾルバ25からの信号をパルス信号に変換し、パルス信号をカウントする。信号処理回路44は、そのカウント値を所定のサンプリング周期でサンプリングすることにより、交流電動機M1の回転数を演算する。インバータ制御回路46は、交流電動機M1のトルク偏差のフィードバック制御に従ってインバータ14から交流電動機M1へ印加される矩形波電圧の電圧位相を変化させる。積分ゲイン設定部450は、信号処理回路44により演算された回転数SPが、その演算結果にエリアシング誤差が生じる回転数範囲として予め定められた範囲の中にある場合には、演算された回転数SPが予め定められた範囲の外にある場合に比較して、積分ゲインKicを低下させる。
【選択図】図4

Description

本発明は、交流電動機の制御システムに関し、特に、トルクフィードバック制御に従って交流電動機を制御する制御システムに関する。
直流電源を用いて交流電動機を駆動制御するために、インバータを用いた駆動方法が採用されている。交流電動機を駆動するためのインバータの制御としては、たとえばトルク指令値とトルク推定値との偏差に基づくフィードバック制御(トルクフィードバック制御)がある。
たとえば特開平8−182119号公報(特許文献1)は、トルクフィードバック制御におけるフィードバックゲインの係数を変更する、電気自動車用走行用モータの制御方法を開示する。この制御方法では、モータの回転数の検出値がベース回転数を超えた場合に、トルク指令値のフィードバックゲインを決定する際の係数の値を変更する。
特開平8−182119号公報
ところでモータの回転数の検出値には誤差が含まれる可能性がある。特開平8−182119号公報(特許文献1)に記載の技術によれば、検出誤差のために回転数の検出値がベース回転数の前後で変動する場合、係数が頻繁に変更される可能性がある。この場合には、実トルク、すなわちモータに入力される(あるいはモータから出力される)トルクが不安定になる可能性がある。
本発明の目的は、実トルクが不安定になる現象が生じることを抑制可能な、交流電動機の制御システムを提供することである。
本発明は要約すれば、回転子を有するとともにインバータによって駆動される交流電動機の制御システムである。制御システムは、回転子の回転角度に応じた角度信号を出力するレゾルバと、角度信号を、回転角度に比例する個数のパルスを有するパルス信号に変換して出力するレゾルバデジタル変換器と、パルス信号に含まれるパルスをカウントするカウンタと、カウンタのカウント値を所定のサンプリング周期でサンプリングすることにより、回転子の回転数を演算する回転数演算部と、交流電動機のトルク偏差のフィードバック制御に従ってインバータから交流電動機へ印加される矩形波電圧の電圧位相を変化させるように構成された矩形波電圧制御部とを備える。矩形波電圧制御部は、トルク偏差を比例演算することにより電圧位相の第1の制御量を設定する比例制御演算部と、積分ゲインを用いてトルク偏差を積分演算することにより電圧位相の第2の制御量を設定する積分制御演算部と、第1および第2の制御量の和に従った電圧位相に対応させて、インバータの制御指令を生成する制御信号発生部と、回転数演算部により演算された回転数に従って、積分ゲインを設定する積分ゲイン設定部とを含む。積分ゲイン設定部は、回転数演算部により演算された回転数が、回転数演算部の演算結果にエリアシング誤差が生じる回転数範囲として予め定められた範囲の中にある場合には、回転数演算部により演算された回転数が予め定められた範囲の外にある場合に比較して、積分ゲインを低下させる。
本発明によれば、交流電動機の実トルクが不安定になる現象が生じることを抑制することができる。
この発明の実施の形態による交流電動機の制御システムの構成を説明する概略ブロック図である。 図1の制御装置30のブロック図である。 図2に示す信号処理回路44の機能ブロック図である。 図2に示すインバータ制御回路46の構成を示す機能ブロック図である。 レゾルバの出力に誤差が含まれる場合におけるカウンタのカウント値を模式的に示す図である。 回転数演算部56の演算結果がエリアシング領域内にある場合における、回転数演算部56の演算結果を示す図である。 図3に示した積分ゲイン設定部450により実行される、積分ゲインの設定処理を説明するフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、この発明の実施の形態による交流電動機の制御システムの構成を説明する概略ブロック図である。
図1を参照して、モータ制御システム100は、直流電源Bと、電圧センサ10,13と、システムリレーSR1,SR2と、コンバータ12と、平滑コンデンサC1,C2と、インバータ14と、電流センサ24と、交流電動機M1と、レゾルバ25と、制御装置30とを備える。
交流電動機M1は、たとえばハイブリッド自動車または電気自動車(以下ではこれらの自動車を「電動車両」と総称する)の駆動輪を駆動するためのトルクを発生するための駆動モータである。なお、この交流電動機はエンジン(図示せず)により駆動される発電機の機能を持つように、そして、エンジンに対して電動機として動作し、たとえば、エンジン始動を行ない得るようなものとしてハイブリッド自動車に組み込まれてもよい。
直流電源Bは、たとえばニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池を含んで構成される。電圧センサ10は、直流電源Bから出力される直流電圧(バッテリ電圧)Vbを検出して、その検出した直流電圧Vbを制御装置30へ出力する。
システムリレーSR1,SR2は、制御装置30からの信号SEによりオン/オフされる。
コンバータ12は、リアクトルL1と、電力用半導体スイッチング素子(以下、単にスイッチング素子とも称する)Q1,Q2と、ダイオードD1,D2とを含む。スイッチング素子としては、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が適用される。
スイッチング素子Q1,Q2は制御装置30からそれぞれ与えられる信号S1,S2に応じて動作する。これによりコンバータ12は昇圧動作あるいは降圧動作を行なう。コンバータ12は、昇圧動作時において、直流電源Bから供給された直流電圧を昇圧してインバータ14へ供給する。一方、コンバータ12は、降圧動作時において、平滑コンデンサC2を介してインバータ14から供給された直流電圧を降圧して直流電源Bを充電する。
インバータ14は、電源ライン7およびアースライン5の間に並列に接続される、U相アーム15、V相アーム16およびW相アーム17から成る。各相アームは、電源ライン7およびアースライン5の間に直列接続されたスイッチング素子から構成される。具体的にはU相アーム15は、スイッチング素子Q3,Q4から成り、V相アーム16は、スイッチング素子Q5,Q6から成り、W相アーム17は、スイッチング素子Q7,Q8から成る。また、スイッチング素子Q3〜Q8のコレクタ/エミッタ間には、ダイオードD3〜D8がそれぞれ逆並列接続されている。
各相アーム15〜17の中間点は、交流電動機M1のU相コイル、V相コイルおよびW相コイルの一端側とそれぞれ電気的に接続される。たとえば、交流電動機M1は、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルが中性点に共通接続されて構成された、3相永久磁石モータである。
スイッチング素子Q3〜Q8のオン・オフは、制御装置30からのスイッチング制御信号S3〜S8によって制御される。インバータ14は、平滑コンデンサC2から直流電圧が供給されると、制御装置30からのスイッチング制御信号S3〜S8に応答したスイッチング素子Q3〜Q8のスイッチング動作により直流電圧を交流電圧に変換して、交流電動機M1を駆動する。
インバータ14は、モータ制御システム100が搭載されたハイブリッド自動車または電気自動車の回生制動時、スイッチング制御信号S3〜S8に応答したスイッチング素子Q3〜Q8のスイッチング動作により、交流電動機M1が発電した交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を平滑コンデンサC2を介してコンバータ12へ供給する。ここで言う回生制動とは、ハイブリッド自動車または電気自動車を運転するドライバーによるフットブレーキ操作があった場合の回生発電を伴なう制動や、フットブレーキを操作しないものの、走行中にアクセルペダルをオフすることで回生発電をさせながら車速を減速(または加速を中止)させることを含む。
電流センサ24は、交流電動機M1に流れるモータ電流を検出し、その検出したモータ電流を制御装置30へ出力する。なお、三相モータ電流iu,iv,iwの瞬時値の和は零であるので、図1に示すように電流センサ24は2相分のモータ電流(たとえば、V相電流ivおよびW相電流iw)を検出するように配設すれば足りる。
レゾルバ25は、交流電動機M1の回転軸に取り付けられており、交流電動機M1の回転子の回転角度に応じた信号SIN,COSを制御装置30へ出力する。
電圧センサ13は、平滑コンデンサC2の両端の電圧VH、すなわち、コンバータ12の出力電圧(インバータ14の入力電圧に相当する。以下同じ。)を検出し、その検出した電圧VHを制御装置30へ出力する。
制御装置30は、レゾルバ25から信号SIN,COSを受ける。制御装置30は、レゾルバ25からの信号SIN,COSに基づいて、交流電動機M1の回転子の回転角度θおよび回転数SPを演算する。
制御装置30は、外部に設けられたECU(Electrical Control Unit)からのトルク指令値Trqcomと、電圧センサ10からの直流電圧Vbと、電圧センサ13からの電圧VHと、電流センサ24からのモータ電流iv,iwと、レゾルバ25からの信号SIN,COSを受けて、交流電動機M1がトルク指令値Trqcomに従ったトルクを出力するように、コンバータ12およびインバータ14の動作を制御する。すなわち制御装置30は、コンバータ12およびインバータ14の動作を制御するためのスイッチング制御信号S1〜S8を生成して出力する。
図2は、図1の制御装置30の制御ブロック図である。図2を参照して、制御装置30は、発振回路42と、信号処理回路44と、インバータ制御回路46とを含む。
発振回路42は、所定の周波数の正弦波電圧である基準信号REFを発生して、レゾルバ25の励磁コイル(図示せず)へ出力する。レゾルバ25の2つの2次コイル(ともに図示せず)にはそれぞれ、回転体との間の距離に応じた誘導電圧が発生する。このとき、第1の2次コイルには、正弦波状に振幅変調された信号SINが誘起される。また、第2の2次コイルには、余弦波状に振幅変調された信号COSが誘起される。そして、レゾルバ25は、誘起された信号SINおよびCOSを信号処理回路44へ出力する。なお、以下において、信号SIN,COSを総じて「振幅変調信号」とも称する。
信号処理回路44は、振幅変調信号SIN,COSを受けると、後述する方法に従って、交流電動機M1の回転子の回転角度θ、およびその回転子の回転数SPを演算する。信号処理回路44は、その演算した回転角度θおよび回転数SPをインバータ制御回路46へ出力する。
インバータ制御回路46は、信号処理回路44から回転角度θおよび回転数SPを受け、外部ECUからトルク指令値Trqcomを受け、電流センサ24からモータ電流iv,iwを受ける。インバータ制御回路46は、回転角度θ、回転数SP、トルク指令値Trqcom、モータ電流iv,iwに基づいて、インバータ14を制御するためのスイッチング制御信号S3〜S8を生成し、その生成した信号S3〜S8をインバータ14へ出力する。
本実施の形態では、インバータ制御回路46は、矩形波電圧制御に従ってインバータ14を制御する。矩形波電圧制御では、モータ印加電圧の振幅が固定される。このため、矩形波電圧制御では、実トルク値とトルク指令値との偏差に基づいて矩形波電圧パルスの位相が制御されることにより、トルク制御が実行される。すなわちインバータ制御回路46は、トルクフィードバック制御を実行する。なおインバータ制御回路46の構成については後述する。
図3は、図2に示す信号処理回路44の機能ブロック図である。図3を参照して、信号処理回路44は、R/D(レゾルバデジタル)コンバータ50と、カウンタ52と、角度演算部54と、回転数演算部56と、タイマ60とを含む。
R/Dコンバータ50は、レゾルバ25から信号SIN,COSを受けるとともに、発振回路42から基準信号REFを受ける。R/Dコンバータ50は、信号SIN,COSおよび基準信号REFに基づいて、交流電動機M1の回転子の回転角度に比例する個数のパルスを含むパルス信号SA(A相パルス信号)、およびパルス信号SAに対して1/4周期の位相差を有するパルス信号SB(B相パルス信号)を出力する。回転子の1回転に対応する周期の間に、所定数(たとえば4096)のパルスがA相パルス信号として出力されるとともに、その所定数のパルスがB相パルス信号として出力される。
カウンタ52は、R/Dコンバータ50からパルス信号SA,SB(A相パルス信号およびB相パルス信号)を受ける。カウンタ52は、A相パルス信号を常時監視し、A相パルス信号が「L」レベルから「H」レベルに反転した際に、B相パルス信号が「H」レベルであれば、カウント値をインクリメントする。一方、カウンタ52は、A相パルス信号が「L」レベルから「H」レベルに反転した際に、B相パルス信号が「L」レベルであれば、カウント値をデクリメントする。
カウンタ52は、カウント値が上限値(上述の4096)に達するごとに、カウント値をリセットする。ただし、回転角度θを演算する必要がない場合には、必ずしもカウント値をリセットしなくてもよい。その理由は、回転数演算部56による回転数の算出において、カウント値のリセットが必須でないためである。
角度演算部54は、単位時間あたりの角度移動量に基づいて交流電動機M1の回転子の回転角度θを算出し、回転数演算部56および図示しないインバータ制御回路46に出力する。より具体的には、角度演算部54は、タイマ60から時刻T(n)を取得するとともに、カウンタ52から時刻T(n)におけるカウント値C(n)を取得して、メモリ(レジスタ)にそれらの値を格納する。次いで、角度演算部54は、所定の演算周期(例えば、0.25ms)後に、タイマ60から時刻T(n+1)を取得するとともに、カウンタ52から時刻T(n+1)におけるカウント値C(n+1)を取得し、メモリに格納する。その後、角度演算部54は、メモリに格納された時刻およびカウント値に基づいて、単位時間あたりの角度移動量Δθを算出する。つまり、角度演算部54は、Δθ=(C(n+1)−C(n))/(T(n+1)−T(n))との式に従って、単位時間あたりの角度移動量Δθを算出する。角度演算部54は、角度移動量Δθの時間積分値に基づいて、交流電動機M1の回転子の角度θを算出する。
回転数演算部56は、角度演算部54と同様に、所定の演算周期(例えば、0.25ms)における角度移動量Δθを演算するとともに、その角度移動量Δθに基づいて、単位時間(たとえば1分)あたりの交流電動機M1の回転子の回転数SPを演算する。
図4は、図2に示すインバータ制御回路46の構成を示す機能ブロック図である。図4を参照して、インバータ制御回路46は、電力演算部410と、トルク演算部420と、偏差演算部425と、比例制御演算部430と、積分制御演算部440と、積分ゲイン設定部450と、加算部455と、矩形波発生器460と、信号発生部470とを含む。なお、図4中の各機能ブロックについては、制御装置30によって実行される所定プログラムおよび/または制御装置30内の電子回路(ハードウェア)による制御演算処理によって実現されるものとする。
電力演算部410は、電流センサ24によるV相電流ivおよびW相電流iwから求められる各相電流と、各相(U相,V相、W相)電圧Vu,Vv,Vwとに基づいて、下記式(1)に従ってモータへの供給電力(モータ電力)Pmtを算出する。
Pmt=iu・Vu+iv・Vv+iw・Vw …(1)
トルク演算部420は、電力演算部410によって求められたモータ電力Pmt、および信号処理回路44からの回転角度θに基づいて算出される角速度ωを用いて、下記(2)式に従ってトルク推定値Tqを算出する。
Tq=Pmt/ω …(2)
なお、トルク推定値Tqについては、上記電力演算部410およびトルク演算部420による推定方式に限定されるものではなく、任意の手法によって求めることが可能である点を確認的に記載する。あるいは、電力演算部410およびトルク演算部420に代えてトルクセンサを配置することによって、トルク推定値Tqを求めてもよい。
偏差演算部425は、トルク推定値Tqおよびトルク指令値Trqcomに従って、トルク偏差ΔTq(ΔTq=Trqcom−Tq)を演算する。
比例制御演算部430は、今回の制御周期におけるトルク偏差ΔTq、すなわちトルク偏差ΔTqの現在値と、所定の比例ゲインKpとの積に基づいて、P(比例)制御演算に係る位相制御量φpを演算する。すなわち、φp=Kp・ΔTqで演算される。
これに対して、積分制御演算部440は、トルク偏差ΔTqの積分値と所定の積分ゲインKicとに基づいて、I(積分)制御に係る位相制御量φiを演算する。すなわち、φi=ΣKic・ΔTqで演算される。
加算部455は、比例制御演算部430による位相制御量φpおよび積分制御演算部440による位相制御量φiの和に従って、電圧位相φvを設定する。すなわち、以下の(3)式に従って、トルク偏差ΔTqから位相φvが算出される。
φv=φp+φi=Kp・ΔTq+Σ(Kic・ΔTq) …(3)
矩形波発生器460は、加算部455によって設定された電圧位相φvに従って各相電圧指令値(矩形波パルス)Vu,Vv,Vwを発生する。信号発生部470は、各相電圧指令値Vu,Vv,Vwに従ってスイッチング制御信号S3〜S8を発生する。インバータ14がスイッチング制御信号S3〜S8に従ったスイッチング動作を行なうことにより、電圧位相φvに従った矩形波電圧が、交流電動機M1の各相電圧として印加される。
積分ゲイン設定部450は、信号処理回路44によって演算された交流電動機M1の回転数SPを受けて、回転数SPに対する補正処理(具体的には、なまし処理)を実行する。そして積分ゲイン設定部450は、積分ゲインKicが、補正された回転数SP(以下、SPaと表す)の絶対値に反比例するように積分ゲインKicを変化させる。すなわち、積分ゲイン設定部450は積分ゲインKicが1/|SPa|に比例するように積分ゲインKicを変化させる。
さらに積分ゲイン設定部450は、信号処理回路44により演算された回転数SPが、その回転数SPにエリアシング誤差が生じる回転数範囲として予め定められた範囲(エリアシング領域)内にある場合には、回転数SPがエリアシング領域外にある場合に比較して積分ゲインKicを低下させる。
このような積分ゲインKicの低下を行なわなくとも、一般的なトルクフィードバック制御を実現することはできる。しかしながら、回転数SPに含まれるエリアシング誤差を考慮しない場合、交流電動機M1に対して入力あるいは出力されるトルク(実トルク)が不安定になる可能性がある。
以下に、数値を示しながらエリアシング誤差が生じる理由を説明する。ただし、以下の数値は一例であって、本発明を限定するものではない。
一般に、レゾルバの出力は、周期的に変化するN次(Nは1以上の整数)の誤差を含みうる。「N次の誤差」とは、その周期が角度信号の周期の1/N倍となる誤差である。
図5は、レゾルバの出力に誤差が含まれる場合におけるカウンタのカウント値を模式的に示す図である。図5を参照して、ラインLN1は、カウンタ52によるパルス信号のカウント値を示す。ラインLN2は、カウント値の真値を示す。レゾルバの出力に誤差が含まれていなければ、ラインLN2に示されるようにカウント値は時間に比例する。しかしながらレゾルバの出力に誤差が含まれることにより、カウント値はラインLN1に示されるように変化する。すなわちカウント値はラインLN2を基準として振動する。
ここでレゾルバ25が、2Xタイプ(回転子の1回転で2周期分の角度信号を出力するタイプ)とする。さらに、回転数演算部56におけるサンプリング周期Tsが2.5(ms)であるとする。すなわち、Ts=T(n+1)−T(n)=2.5(ms)である。さらに誤差の次数Nを1とする。
回転子の1分間の回転数が6000(rpm)であるとすると、レゾルバ25の角度信号の周期Tに対応する時間は、1/6000×60/2=5(ms)である。レゾルバ25の1次の誤差の周期は、角度信号の周期と一致するので、5(ms)となる。この場合、サンプリングにより取得されたカウント値と真値との差分ΔCerrは、正値と負値とが交互に繰返されるよう変化する。このため、カウント値に基づく回転数が振動する。このように、レゾルバ誤差の周期がサンプリング周期の整数倍になると、カウント値のサンプリングに起因する回転数の誤差、すなわちエリアシング誤差が発生する可能性がある。
図6は、回転数演算部56の演算結果がエリアシング領域内にある場合における、回転数演算部56の演算結果を示す図である。上記領域は、具体的には6000±X(rpm)である。また、交流電動機M1の回転数は6000(rpm)で一定であるとする。
図6を参照して、カウンタ52のカウント値に基づく回転数は、時間に対して周期的に変化する。上述のように、サンプリングにより取得されたカウント値と真値との差分ΔCerrの値は正値と負値とを交互に繰返すよう変化する。このため、真の回転数が一定値であるのに対し、回転数演算部56の演算結果である回転数SPは振動する。
さらに本実施の形態では、積分ゲインが回転数SPに応じて変化する。回転数SPのエリアシング誤差により回転数SPが振動した場合には積分ゲインも振動する。
積分ゲインが振動することによって電圧位相φvが誤差を持って振動する。上述のように、矩形波電圧制御では、矩形波電圧パルスの位相が制御されることによりトルク制御が実行されるので、電圧位相φvが誤差を持って振動すると実トルクが振動する。
たとえば交流電動機M1が電動車両の駆動輪の駆動に用いられる場合には、電圧位相φvが振動することにより交流電動機M1に対して入出力されるトルクが振動する。このため電動車両の挙動への影響が生じ得る。
また、交流電動機M1とエンジンとを搭載するハイブリッド自動車において、交流電動機M1をエンジンにより駆動される発電機、あるいはエンジンに対する電動機として使用する場合には、交流電動機M1に対して入出力されるトルクが振動することにより、エンジン出力が振動することが起こりうる。この場合には、燃費の悪化、あるいは出力トルクの振動などが生じる可能性がある。
そこで、本実施の形態では、回転数演算部56により検出された回転数SPが、エリアシング領域内である場合に積分ゲインを低下させる。この処理について具体的に説明する。
図7は、図3に示した積分ゲイン設定部450により実行される、積分ゲインの設定処理を説明するフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、たとえば一定の時間ごとに、メインルーチンから呼び出されて実行される。
図7および図2を参照して、ステップST1において、積分ゲイン設定部450は、回転数演算部56により検出された交流電動機M1の回転数SPが、エリアシング誤差が発生する回転数として予め定められた範囲の中にあるか否かを判定する。具体的には、積分ゲイン設定部450は、回転数演算部56により演算された回転数SPがspd1より大きく、かつ、spd2より小さいという条件が成立するか否かを判定する。
上記のように、エリアシング誤差が発生する回転数は、回転数演算部56のサンプリング周期、およびレゾルバ25のタイプ(たとえば2X)、レゾルバ25の誤差の次数等にに基づいて予め算出することが可能である。ただし、エリアシング誤差が実際に発生する回転数は、その演算によって算出された回転数を中心とした、ある程度の範囲に広がるものと考えられる。また、その範囲は、たとえば、矩形波電圧制御の実行時におけるトルク脈動の大きさ、あるいは、レゾルバ25の検出誤差、あるいは電動車両の駆動輪(タイヤ)から交流電動機M1への伝達系の特性に応じて異なりうる。したがって、エリアシング誤差が発生する回転数領域(すなわち、spd1<SP<spd2で定められる範囲)は、これらを考慮して、たとえば実験等によって予め定められた範囲が採用される。
回転数SPがspd1より大きく、かつ、spd2より小さいと判定された場合(ステップST1においてYES)、処理はステップST2に進む。一方、回転数SPがspd1以下である場合、または、回転数SPがspd2以上である場合(ステップST1においてNO)、処理はステップST4に進む。
ステップST2において、積分ゲイン設定部450は、回転数SPの時間変化率(回転数変化率)が、所定値acc1より小さいか否かを判定する。回転数変化率が所定値acc1より小さいと判定された場合(ステップST2においてYES)、処理はステップST3に進む。一方、回転数変化率が所定値acc1以上と判定された場合(ステップST2においてNO)、処理はステップST4に進む。
ステップST3において、積分ゲイン設定部450は、積分ゲインKicを低下させる。すなわち、積分ゲイン設定部450は、以下の(4)式に従って積分ゲインKicを算出する。
Kic=α×1/|SPa|×A …(4)
ここで、|SPa|は、上述したように、回転数SPに対してなまし処理を実行した後の回転数の絶対値である。α,Aは定数である。さらに定数Aは0<A<1との条件を満たす値である。
ステップST4において、積分ゲイン設定部450は、以下の(5)式に従って積分ゲインKicを算出する。
Kic=α×1/|SPa| …(5)
(4)式および(5)式を比較すれば分かるように、|SPa|が同じであるとすると、ステップST3において算出される積分ゲインKicはステップST4において算出される積分ゲインKicのA倍(0<A<1)となる。つまり、ステップST3の処理が実行されることにより積分ゲインKicが低下する。
ステップST3またはステップST4の処理が終了すると、全体の処理が終了する。
図7のフローチャートの処理をより詳しく説明すると以下の通りである。
回転数演算部56により演算された回転数SPが、エリアシング領域内(エリアシング誤差が生じる回転数範囲内)であるか否かが判定される(ステップST1)。回転数SPがエリアシング領域外である場合(ステップST1においてNO)、積分ゲインKicの低下は行なわれない(ステップST4)。一方、回転数SPがエリアシング領域内である場合(ステップST1においてYES)、回転数変化率が所定値acc1より小さいか否かが判定される(ステップST2)。
回転数変化率が所定値acc1以上である場合(ステップST2においてNO)、積分ゲインKicの低下は行なわれない(ステップST4)。回転数変化率が大きい場合には、回転数SPがエリアシング領域内に入ったとしても、すぐに、回転数SPはその領域外の値へと変化する。すなわち、回転数SPは実質的にはエリアシング領域外にある。このため積分ゲインを低下させなくとも、交流電動機M1のトルクが振動する可能性を小さくできる。
一方、回転数変化率が所定値acc1より小さい場合(ステップST2においてYES)、積分ゲインKicが低下される(ステップST3)。回転数変化率が小さい場合には、回転数SPがエリアシング領域内に留まる可能性が高い。したがって、この場合には積分ゲインKicを低下させる。
積分ゲインKicを低下させることによって、回転数SPのエリアシング誤差により回転数SPが振動しても積分ゲインの変動を抑制することができる。したがって電圧位相φvの振動を抑制できる。この結果、交流電動機M1に対して入出力されるトルクが振動するという現象が生じることを抑制できる。
なお、積分ゲインKicを低下させることによって、トルク制御の応答性が低下することが考えられる。ただし、回転数変化率が小さいということは、電動車両の走行状態が安定している(走行スピードがほぼ一定である)ということである。したがって積分ゲインKicを低下させることによりトルク制御の応答性が低下したとしても、電動車両の挙動に与える影響は小さくなると考えられる。つまり本実施の形態によれば電動車両の走行状態が変化することを抑制しつつ、実トルクの振動を抑制することが可能となる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
5 アースライン、7 電源ライン、10,13 電圧センサ、12 コンバータ、13 電圧センサ、14 インバータ、15 U相アーム、16 V相アーム、17 W相アーム、24 電流センサ、25 レゾルバ、30 制御装置、42 発振回路、44 信号処理回路、46 インバータ制御回路、50 R/Dコンバータ、52 カウンタ、54 角度演算部、56 回転数演算部、60 タイマ、100 モータ制御システム、410 電力演算部、420 トルク演算部、425 偏差演算部、430 比例制御演算部、440 積分制御演算部、450 積分ゲイン設定部、455 加算部、460 矩形波発生器、470 信号発生部、B 直流電源、C1,C2 平滑コンデンサ、D1〜D8 ダイオード、L1 リアクトル、LN1,LN2 ライン、M1 交流電動機、Q1〜Q8 スイッチング素子、SR1,SR2 システムリレー。

Claims (1)

  1. 回転子を有するとともにインバータによって駆動される交流電動機の制御システムであって、
    前記回転子の回転角度に応じた角度信号を出力するレゾルバと、
    前記角度信号を、前記回転角度に比例する個数のパルスを有するパルス信号に変換して出力するレゾルバデジタル変換器と、
    前記パルス信号に含まれる前記パルスをカウントするカウンタと、
    前記カウンタのカウント値を所定のサンプリング周期でサンプリングすることにより、前記回転子の回転数を演算する回転数演算部と、
    前記交流電動機のトルク偏差のフィードバック制御に従って前記インバータから前記交流電動機へ印加される矩形波電圧の電圧位相を変化させるように構成された矩形波電圧制御部とを備え、
    前記矩形波電圧制御部は、
    前記トルク偏差を比例演算することにより前記電圧位相の第1の制御量を設定する比例制御演算部と、
    積分ゲインを用いて前記トルク偏差を積分演算することにより前記電圧位相の第2の制御量を設定する積分制御演算部と、
    前記第1および前記第2の制御量の和に従った前記電圧位相に対応させて、前記インバータの制御指令を生成する制御信号発生部と、
    前記回転数演算部により演算された前記回転数に従って、前記積分ゲインを設定する積分ゲイン設定部とを含み、
    前記積分ゲイン設定部は、前記回転数演算部により演算された前記回転数が、前記回転数演算部の演算結果にエリアシング誤差が生じる回転数範囲として予め定められた範囲の中にある場合には、前記回転数演算部により演算された前記回転数が前記予め定められた範囲の外にある場合に比較して、前記積分ゲインを低下させる、交流電動機の制御システム。
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