JP5406238B2 - 車両用モータ制御装置 - Google Patents

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本発明は、電気自動車もしくはハイブリッド自動車における走行用の車両モータ(電動機、回転電機)を制御する車両用モータ制御装置に関するものである。
従来、車両の駆動源として走行用モータを備える電気自動車あるいは内燃機関と走行用モータとの両方を備えるハイブリッド自動車においては、走行用モータ駆動時に発生するトルクリプル(あるいはトルクリップル、トルク脈動とも云う)などの振動源が車両のサスペンションなどの弾性系の共振を発生させることが知られている。この共振によって車両に振動や騒音を発生させ搭乗者のフィーリングが悪化するという問題があり、その対策が求められていた。
このような走行用モータのトルクリプルなどの振動源に起因する車両の共振対策として、例えば、特許文献1に示される電気自動車の走行制御装置では、電子制御装置50内のCPU52は、運転者によるアクセルペダル60の操作量に基づいて、走行モータ30のトルク目標値を算出し、検出された走行モータ30の回転数を用いて回転脈動に同期させつつ、このモータの回転脈動を抑制する方向にトルク目標値を補正し、補正されたトルク出力値により走行モータ30を制御することにより、走行モータ30の回転数の脈動成分を抑制することを実現している。
また、特許文献2に示される車両の制御装置では、ECU30は、トルク算出部52と、時定数決定部53と、1次遅れフィルタ54とを備えており、トルク算出部52は、モータジェネレータMGの出力可能なパワーPmとモータ回転数MRNとに基づいてトルク指令値TRbの基本値を算出し、また、時定数決定部53は、モータ回転数MRNに基づいて時定数Tを決定し、1次遅れフィルタ54は、モータ回転数MRNの変動によってトルク指令値TRbの基本値に生じる周波数成分を除去して、トルク指令値TRbを出力する。時定数決定部53は、モータ回転数MRNが所定値より高いときの時定数Tよりもモータ回転数MRNが所定値より低いときの時定数Tが大きくなるように時定数Tを決定する。すなわち、1次遅れフィルタ54は、モータ回転数MRNに応じて決定された時定数Tに応じて、トルク指令値TRbの基本値を処理して、回転数MRNの変動によって基本値に生じる周波数成分を除去することにより、モータの回転数が低い領域におけるトルク変動を抑制することを可能にしている。
なお、ここで、車両の共振とはトルクリプルなどの振動源により車両全体が固有振動を起こすことを指す。車両の共振周波数は、車両の重量とサスペンションなどの弾性系のバネ定数および粘性係数によって定まる固有周波数である。すなわち、車両によって一意に決まる共振の固有周波数に対してトルクリプルなどの振動源の周波数成分が重なった場合に、車両の共振として現れる。
特開平10−23614号公報 特開2007−221896号公報
しかしながら、特許文献1の電気自動車の走行制御装置にあっては、車両の共振周波数
以外の周波数成分に対してもトルクリプルの補正を行なうため、結果的に車両の振動や騒音の原因にならないトルクリプル成分に対しても補正を行なうことになる。この補正制御により余計な高調波成分が発生し、新たな振動や騒音の原因になり得るという問題があった。
また、特許文献1では、レゾルバを用いてロータ回転角を取得し、ロータ回転角の時間変化を元に回転数を得る回転数センサが例示されているが、ロータ回転角から得られる回転数や回転数から得られるトルクリプル成分に時間的な遅延が発生し、トルクリプル抑制のために付与する補正トルクと実際のトルクリプル成分との間に位相差が発生し、抑制効果が十分に得られない可能性があった。
また、特許文献2に示される車両の制御装置にあっては、モータへの出力指令値とモータの回転数からモータのトルク指令を算出するため、モータへのトルク指令によりモータを駆動させるシステムには不適であるという問題や、トルク補正に1次遅れフィルタを用いるため、結果的に車両の共振の原因にならないトルクリプル成分に対して補正を行なっているという問題があった。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、車両用モータのトルクリプルに起因する車両の共振を解消できる車両用モータ制御装置を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明の車両用モータ制御装置は、車両用モータに取り付けられたモータ電気角センサにより検出されたモータ電気角から共振補償トルク値を算出する車両共振補償演算部と、車両制御装置から出力された前記車両用モータを駆動させるトルク指令値を前記共振補償トルク値にて補償処理し、モータ駆動トルク値を算出する補償演算器と、前記モータ駆動トルク値に基づき、バッテリの直流を三相交流に変換するインバータに、前記車両用モータを駆動させる駆動電流を指令する駆動電流指令演算部と、を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項2に係る車両用モータ制御装置は、前記車両共振補償演算部には補償ゲイン演算部が備えられ、前記補償ゲイン演算部は、前記モータ電気角センサからモータ発生トルクのトルクリプル成分を求め、当該トルクリプル成分の値を正負反転させ、前記共振補償トルク値として出力することを特徴とするものである。
また、請求項3に係る車両用モータ制御装置は、前記車両共振補償演算部には前記車両用モータの個体毎に予め計測された前記車両の共振周波数を記録する記録部を有し、前記トルクリプル成分の周波数を制限する周波数制限部が備えられ、前記周波数制限部は、前記共振周波数と前記トルクリプル成分の周波数とを比較し、前記トルクリプル成分の周波数が前記車両の共振源となり得る周波数内であると判定された場合に、前記共振補償トルク値を出力させることを特徴とするものである。
本発明の車両用モータ制御装置によれば、車両用モータの角速度から得られるトルクリプルの中で車両の共振周波数成分に関するものをフィードフォワードすることにより、車両の共振を解消できる車両用モータ制御装置を実現することができる。
実施の形態1に係る車両用モータ制御装置を含む車両システムの全体構成図である。 実施の形態1におけるモータ電気角とモータ発生トルクの関係を示す図である。 実施の形態1におけるトルクリプル成分と共振補償トルク値との関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態に係る車両用モータ制御装置について、図1、図2及び図3に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る車両用モータ制御装置を含む車両システムの全体構成図であり、図2は、実施の形態1の動作を説明するためのモータ電気角とモータ発生トルクの関係を示す図であり、また、図3は、トルクリプル成分と共振補償トルク値との関係を示す図である。
図1に示すように、車両用モータ制御装置1は、車両制御装置2から出力されたトルク指令値Trefと車両共振補償演算部23から出力された共振補償トルク値Tcmpによりトルク指令値Trefに補償処理する補償演算器20と、補償演算器20から算出されたモータ駆動トルク値Tref cmpにより各種演算処理を実施し、バッテリ8の直流をインバータ22により三相交流に変換、車両用モータ3を駆動させる電流指令演算部21と、車両用モータ3に取り付けられたモータ電気角センサ(レゾルバ)4により検出されたモータ電気角θから共振補償トルク値Tcmpを算出する車両共振補償演算部23と、により構成されている。また、車両共振補償演算部23は、角速度を算出する角速度検出部24と、モータ電気角θからモータ発生トルクのトルクリプル(成分脈流成分)Trを算出し、共振補償トルク値Tcmpを出力する補償ゲイン演算部25と、補償ゲイン演算部25から出力された共振補償トルク値Tcmpを角速度検出部24から得られた角速度のトルクリプル周波数Frによりその出力の可否を判定する周波数制限部26と、共振補償トルク値Tcmpの上限値及び下限値の調整を行い、共振補償トルク値Tcmpを補償演算器20に出力するリミッタ27と、により構成されている。
次に、車両用モータ制御装置1の動作の詳細について説明する。
まず、車両制御装置1には、各種センサ7が接続されており、各運転状態量が検知される。ここでは、ドライバのアクセルペダルの踏み込み量を検知するアクセルポジションセンサ(図示せず)、ブレーキペダルの踏み込み量を検知するブレーキポジションセンサ(図示せず)、車両の速度を検知する車速センサ(図示せず)が接続され、車両制御装置1は、ドライバからのアクセルやブレーキの入力量と車速に応じて、車両用モータ制御装置
1へのトルク指令値Trefを決定する。
車両用モータ制御装置1では、車両制御装置2が出力するトルク指令値Trefと車両共振補償演算部23が算出する共振補償トルク値Tcmpとから、補償演算器20が車両用モータ3を駆動するモータ駆動トルク値Tref cmpを算出し、電流指令演算部21は、このモータ駆動トルク値Tref cmpを元に、dq軸変換、三相変換などの各種演算を行い、三相交流の制御条件を決定し、バッテリ8からの直流成分を所望の三相交流波形を出力するようインバータ22内のパワースイッチング素子に働きかけ、車両用モータ3を駆動させる。
車両用モータ3はトランスミッション(T/M)5を介して車両の駆動輪6に接続され、駆動輪6は車両用モータ3のトルクによって回転され地面からの反力によって、車両は推進力を得ることができる。なお、ここで、トランスミッションは単なる減速機であってもよいし、数段の減速比を変更できる機構を備えた変速機であってもよい。
続いて、車両共振補償演算部23が算出する共振補償トルク値Tcmpについて説明する。トルクリプルは基本的には、電圧の高調波成分、モータ形状、巻き線方式などによって発生し、一般的にモータ周波数の6倍の周波数成分(6f成分)が多いとされる。本実施の形態における車両共振補償演算部23は、この6f成分を除去/軽減する共振補償トルク値Tcmpを演算により算出する。
図2(a)は、モータ電気角θとモータ発生トルクTとの関係を示すもので、モータ発生トルクTに6f成分の脈動が含まれている様子を示すグラフである。図2(b)は、その部分拡大図である。図2において、モータ発生トルクTは、トルク指令値Trefに対して脈動し、その脈動の周期はモータ電気角θの周期に対して1/6となる。すなわち、モータ電気角θの6倍の周波数(6f)となる。また、モータ発生トルクTのトルクリプル成分Trは、初期位相θ0、振幅G0およびモータ電気角θによって特定することができ、初期位相θ0と振幅G0はモータ固有の値として計測可能である。
車両共振補償演算部23には、車両用モータ3に設けられたモータ電気角センサ4からモータ電気角θが入力される。補償ゲイン演算部25には、事前に計測した初期位相θ0と振幅G0とが記録されており、初期位相θ0、振幅G0およびモータ電気角θによってモータ発生トルクTのトルクリプル成分Trを求め、求めた値を正負反転し共振補償トルク値Tcmpとして出力する。図3に、トルクリプル成分Trと共振補償トルク値Tcmpとの関係を示す。次いで、補償演算器20により共振補償トルク値Tcmpにトルク指令値Trefが加算処理され、モータ駆動トルク値Tref cmpとして電流指令演算部21に送られ、これに基づき、電流指令演算部21はインバータ22に指示を与え、車両用モータ3を駆動することでトルクリプル成分Trが打ち消される。
ここで、車両共振補償演算部23に入力されるモータ電気角θとしては、モータ電気角センサ4からの出力値を用いてもよいし、モータトルク、モータ電流から推定されるモータ電気角θを用いてもよい。
次に、周波数制限部26の動作について説明する。周波数制限部26は、角速度検出部24によりモータ電気角θの時間変化から検出された車両用モータ3の角速度ωが入力され、この角速度ωからトルクリプルの周波数Fr(6f)を算出する。また、周波数制限部26には、事前に計測された車両の共振周波数F0を記録させておき、周波数制限部26は、この車両の共振周波数F0と6f成分の周波数とを比較し、6f成分が車両共振の振動源と成り得ると判定された場合には共振補償トルク値Tcmpを出力する。
一例として、6f成分の周波数が、車両の共振周波数F0の±5%の範囲にある場合には、補償ゲイン演算部25の共振補償トルク値Tcmpが出力され、それ以外の周波数の場合には、共振補償トルク値Tcmpが出力されず、出力値として“0”が出力されるように周波数制限部26により制限が加えられる。
ここでは、周波数制限部26は、出力する共振補償トルク値Tcmpをモータ電気角センサ4から出力される電気角θから角速度ωを求めて決定しているが、車両用モータ3に角速度センサを設けて直接、角速度ωを検出してもよいし、車両に備えられた車速センサや車両の上下加速度、前後加速度センサの出力からトルクリプルが車両共振の振動源となり得るかを判定し、抑制すべき周波数帯域を決定してもよい。
また、ここでは、周波数制限部26は、車速、モータ角速度、車体の加速度等の車両の運転状態量によって共振補償トルク値Tcmpの出力の有無を切り替えるように構成されているが、共振補償トルク値Tcmpの値を調整するように構成してもよい。
さらに、リミッタ27は、共振補償トルク値Tcmpに対して予め設定された上限値および下限値の調整を行なう。すなわち、予期せぬ外乱等により共振補償トルク値Tcmpとして大きな値が発生した場合に、リミッタ27は、インバータ22や車両用モータ3の制御に悪影響を与えないよう共振補償トルク値Tcmpの値に制限を加える働きをする。
車両共振補償演算部23は、6f成分の周波数が車両共振の振動源となり得る場合において、6f成分を除去/軽減するように構成されている。しかし、車両の慣性モーメントは、高車速になるにつれて上がり、振動源に起因した車両の共振は高車速域では発生せず低車速域でのみ発生する特徴をもつ。このため、車速が低速の場合においてのみ、共振補償トルク値Tcmpを出力する構成にしてもよい。
これにより、車両用モータの角速度から得られるトルクリプルの中で車両の共振周波数成分に関するものをフィードフォワードし、車両の共振周波数成分を補償し、車両の共振を解消することができる。
このように、実施の形態1における車両用モータ制御装置によれば、車両の車両用モータの角速度から車両共振の振動源となるトルクリプル成分を算出し、このトルクリプル成分に対して正負反転した共振補償トルク値を求め、トルク指令値に加算することによって、迅速にトルクリプル成分のみを除去/軽減することができ、車両の共振を解消できる車両用モータ制御装置を実現することができるという顕著な効果が期待できる。
なお、図1で示す実施の形態1の全体構成図では、車両として電気自動車(EV)を想定した場合について説明したが、適用される車両は電気自動車だけではなく、内燃機関と車両用モータの両方を備えるハイブリッド自動車であってもよく、電気自動車の場合、各車輪に車両用モータを備えるインホイールモータタイプのものであってもよい。
また、上記実施の形態1では、車両共振補償演算や電流指令演算に関する演算を行なう制御部とインバータ部が別体である場合について説明を行なったが、制御部とインバータ部を一体としてもよい。また、車両用モータは三相交流モータであれば、永久磁石式のものであってもよいし、誘導モータ式のものであってもよい。これらの場合も、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
さらに、本発明の実施の形態の例として、実施の形態1について詳述したが、本発明はこの実施の形態1に限定されるものではなく、種々の設計変更を加えることが可能である。
1 車両用モータ制御装置
2 車両制御装置
3 車両用モータ
4 モータ電気角センサ(レゾルバ)
5 トランスミッション(T/M)
6 駆動輪
7 各種センサ
8 バッテリ
20 補償演算器
21 電流指令演算部
22 インバータ
23 車両共振補償演算部
24 角速度検出部
25 補償ゲイン演算部
26 周波数制限部
27 リミッタ

Claims (3)

  1. 車両用モータに取り付けられたモータ電気角センサにより検出されたモータ電気角から共振補償トルク値を算出する車両共振補償演算部と、
    車両制御装置から出力された前記車両用モータを駆動させるトルク指令値を前記共振補償トルク値にて補償処理し、モータ駆動トルク値を算出する補償演算器と、
    前記モータ駆動トルク値に基づき、バッテリの直流を交流に変換するインバータに、前記車両用モータを駆動させる駆動電流を指令する駆動電流指令演算部と、を備えたことを特徴とする車両用モータ制御装置。
  2. 前記車両共振補償演算部には補償ゲイン演算部が備えられ、前記補償ゲイン演算部は、前記モータ電気角センサからモータ発生トルクのトルクリプル成分を求め、当該トルクリプル成分の値を正負反転させ、前記共振補償トルク値として出力することを特徴とする請求項1に記載の車両用モータ制御装置。
  3. 前記車両共振補償演算部には前記車両用モータの個体毎に予め計測された前記車両の共振周波数を記録する記録部を有し、前記トルクリプル成分の周波数を制限する周波数制限部が備えられ、前記周波数制限部は、前記共振周波数と前記トルクリプル成分の周波数とを比較し、前記トルクリプル成分の周波数が前記車両の共振源となり得る周波数内であると判定された場合に、前記共振補償トルク値を出力させることを特徴とする請求項2に記載の車両用モータ制御装置。
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