ところで、回転角に含まれる誤差には、上記変動誤差の他に、遅れ誤差がある。遅れ誤差は、回転角センサの出力信号に基づく回転角の算出処理に回転角算出装置が所定の演算時間を要することに起因して発生する。この遅れ誤差が回転角に含まれる場合、回転角算出装置によって算出される回転角は、実際の回転角に対して所定角遅れた値となる。
上記遅れ誤差が回転角に含まれると、変動誤差が回転角に含まれる場合と同様に、回転機の制御性が低下するおそれがある。特に、遅れ誤差は回転機の回転速度が高いほど大きくなる傾向にあることから、例えば回転機の小型化等を目的として回転機の高回転化が図られる場合には、回転角の把握精度の低下が顕著となるおそれがある。そして、この場合、遅れ誤差が回転機の制御に及ぼす影響が大きくなるおそれがある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、回転角算出装置によって算出される回転角に含まれる遅れ誤差が回転機の制御に及ぼす影響を抑制することのできる回転機の制御装置を提供することにある。また、本発明の目的は、上記回転角に含まれる遅れ誤差を除去することのできる回転角算出装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
第1の発明は、回転機の回転角に応じた出力信号を出力する回転角センサと、前記出力信号に基づき前記回転角を算出する回転角算出装置とを備える回転機の制御システムに適用され、前記回転角算出装置によって算出される回転角に基づき前記回転機を制御する制御回路を備える回転機の制御装置において、前記回転機の回転速度が高いほど、実際の前記回転角に対する前記回転角算出装置によって算出される回転角の遅れが前記回転機の制御に及ぼす影響を打ち消す方向に前記回転機の制御に用いるパラメータの値の補正量を大きく設定して且つ該補正量によって前記パラメータの値を補正する処理を行う補正手段を備えることを特徴とする。
上記発明では、回転機の回転速度が高いほど遅れ誤差が大きくなる傾向にあることに鑑み、回転速度が高いほど上記態様にて回転機の制御に用いるパラメータの値の補正量を大きく設定し、設定された補正量によって上記パラメータの値を補正する。これにより、回転角算出装置によって算出される回転角に含まれる遅れ誤差が回転機の制御に及ぼす影響を抑制することができる。
第2の発明は、第1の発明において、前記補正手段は、前記補正する処理として、前記回転速度が高いほど前記回転角算出装置によって算出される回転角の進角側への補正量を大きく設定して且つ該補正量によって前記算出される回転角を補正する処理を行うことを特徴とする。
上記発明では、上記態様にて算出される回転角の進角側への補正量によって回転角算出装置にて算出される回転角を補正することで、回転角に含まれる遅れ誤差を除去することができる。これにより、遅れ誤差が回転機の制御に及ぼす影響を好適に抑制することができる。
第3の発明は、第2の発明において、前記補正手段は、前記補正する処理として、前記回転機の回転加速度が0よりも大きいほど前記進角側への補正量を大きく設定し、前記回転機の回転加速度が0よりも小さいほど前記進角側への補正量を小さく設定する処理を更に行うことを特徴とする。
回転角の進角側への補正量を回転速度によって定める場合、回転加速度が0よりも大きくなる回転機の加速時や回転加速度が0よりも小さくなる回転機の減速時等、回転機の回転加速度が0でない状況下において、上記補正量が遅れ誤差を除去するための適切な値からずれ、回転角から遅れ誤差を適切に除去することができなくなるおそれがある。特に、回転加速度の0からのずれ量が大きくなる状況下においては、上記適切な値からのずれが顕著となり、回転機の制御性の低下が顕著となることが懸念される。ここで、上記発明では、回転機の回転速度に加えて、回転機の回転加速度を用いて上記態様にて上記進角側への補正量を設定する。このため、回転機の回転加速度が0でない状況下において、回転角から遅れ誤差を適切に除去するための補正量を適切に設定することができる。
なお、上記発明において、回転角算出装置による回転角の算出周期が制御回路による回転機の制御に関する演算周期よりも長く設定されることがある。この設定は、回転角算出装置の演算負荷の低減等を図ることを目的としたものである。こうした設定がなされると、回転機の回転加速度が0でない状況下において、回転機の制御に関する演算タイミングにおける回転角の把握精度が低下しやすい。このため、上記設定がなされる場合、第5の発明の発明特定事項を備えるメリットが大きい。
ここで、回転角算出装置による回転角の算出周期が制御回路による回転機の制御に関する演算周期よりも長く設定される構成において、回転角の具体的な補正態様としては、例えば、上記回転角算出装置によって算出される回転角に基づき、上記回転速度を算出する算出手段と、上記算出手段によって算出される直近の回転速度、及び上記算出手段による上記直近の回転速度の算出タイミングから現在の上記回転機の制御に関する演算タイミングまでの時間に基づき、現在の上記回転速度を推定する手段とを更に備え、上記補正手段は、上記推定された回転速度を用いて上記補正する処理を行うものが挙げられる。
第4の発明は、第2又は3の発明において、前記補正する処理によって補正された回転角に基づき、前記回転機に流れる相電流をd軸上の電流及びq軸上の電流に変換する電流変換手段と、前記回転機のd軸上の指令電流及びq軸上の指令電流を設定する指令電流設定手段とを更に備え、前記制御回路は、前記設定されたd軸上の指令電流に前記変換されたd軸上の電流を制御して且つ、前記設定されたq軸上の指令電流に前記変換されたq軸上の電流を制御することを特徴とする。
上記発明では、電流制御が行われる回転機の制御システムにおいて、遅れ誤差が除去された回転角を用いて回転機を流れる相電流をd軸上の電流及びq軸上の電流に変換する。これにより、遅れ誤差が電流制御に及ぼす影響を好適に抑制することができる。
第5の発明は、第2又は3の発明において、前記回転機の回転速度と、前記回転機の指令トルクとに基づき該回転機の指令電圧ベクトルの振幅を設定する振幅設定手段と、前記回転機の出力トルクを前記指令トルクに制御すべく前記指令電圧ベクトルの位相を設定する位相設定手段とを更に備え、前記制御回路は、前記指令電圧ベクトル及び前記補正する処理によって補正された回転角に基づき前記回転機の出力トルクを前記指令トルクに制御することを特徴とする。
上記発明では、トルク制御が行われる回転機の制御システムにおいて、遅れ誤差が除去された回転角を用いて回転機の出力トルクを指令トルクに制御する。これにより、遅れ誤差がトルク制御に及ぼす影響を好適に抑制することができる。
第6の発明は、第5の発明において、前記補正する処理によって補正された回転角に基づき、前記回転機に流れる相電流をd軸上の電流及びq軸上の電流に変換する電流変換手段と、少なくとも前記変換されたd軸上の電流及びq軸上の電流に基づき、前記回転機の出力トルクを算出するトルク算出手段とを更に備え、前記位相設定手段は、前記トルク算出手段によって算出された出力トルクを前記指令トルクに制御すべく前記位相を設定することを特徴とする。
上記発明では、遅れ誤差が除去された回転角を用いて回転機を流れる相電流をd軸上の電流及びq軸上の電流に変換し、少なくとも上記変換されたd軸上の電流及びq軸上の電流に基づき回転機の出力トルクを算出する。そして、算出された出力トルクを用いて指令電圧ベクトルの位相を設定する。これにより、遅れ誤差がトルク制御に及ぼす影響をより好適に抑制することができる。
第7の発明は、第2〜6のいずれか1つの発明において、前記補正手段は、前記制御回路又は前記回転角算出装置のいずれかに備えられることを特徴とする。
第8の発明は、第1の発明において、前記回転機に流れる相電流をd軸上の電流及びq軸上の電流に変換する電流変換手段を更に備え、前記補正手段は、前記補正する処理として、前記回転速度が高いほど前記d軸上の電流及び前記q軸上の電流の前記回転機の遅角側への補正量を大きく設定して且つ該補正量によって前記d軸上の電流及び前記q軸上の電流を補正する処理を行い、前記制御回路は、前記補正する処理によって補正された前記d軸上の電流及び前記q軸上の電流に基づき前記回転機を制御することを特徴とする。
上記発明では、上記態様にて回転機を流れるdq軸上の電流を補正する。これにより、回転角に含まれる遅れ誤差がdq軸上の電流の変換処理に及ぼす影響を抑制することができ、ひいては遅れ誤差が回転機の制御に及ぼす影響を適切に抑制することができる。
第9の発明は、第8の発明において、前記補正手段は、前記補正する処理として、前記回転速度が高いほど前記d軸上の電流及び前記q軸上の電流から定まる実電流ベクトルの前記遅角側への補正量を大きく設定して且つ該補正量によって前記実電流ベクトルを回転補正する処理を行うことを特徴とする。
上記発明では、dq軸上の電流を適切に補正することができる。
第10の発明は、第1,8又は9の発明において、前記補正手段は、前記補正する処理として、前記回転速度が高いほど前記回転機のd軸上の指令電圧及び該回転機のq軸上の指令電圧の前記回転角の進角側への補正量を大きく設定して且つ該補正量によって前記d軸上の指令電圧及び前記q軸上の指令電圧を補正する処理を行い、前記補正されたd軸上の指令電圧及びq軸上の指令電圧を指令相電圧に変換する電圧変換手段を更に備え、前記制御回路は、前記変換された前記指令相電圧に基づき前記回転機を制御することを特徴とする。
上記発明では、上記態様にて回転機に印加されるdq軸上の指令電圧を補正する。これにより、回転角に含まれる遅れ誤差が指令相電圧の変換処理に及ぼす影響を抑制することができ、ひいては遅れ誤差が回転機の制御に及ぼす影響を適切に抑制することができる。
第11の発明は、第10の発明において、前記補正手段は、前記補正する処理として、前記回転速度が高いほど前記d軸上の指令電圧及び前記q軸上の指令電圧から定まる指令電圧ベクトルの前記進角側への補正量を大きく設定して且つ該補正量によって前記指令電圧ベクトルを回転補正する処理を行うことを特徴とする。
上記発明では、dq軸上の指令電圧を適切に補正することができる。
第12の発明は、第1,8又は9の発明において、前記制御システムには、直流電源と、前記回転機を該直流電源の正極側に接続する高電位側スイッチング素子及び前記回転機を前記直流電源の負極側に接続する低電位側スイッチング素子の直列接続体とが更に備えられ、前記回転角と関係付けられた前記スイッチング素子のオン操作信号又はオフ操作信号を生成する手段を更に備え、前記補正手段は、前記補正する処理として、前記回転速度が高いほど前記回転角と関係付けられた前記操作信号の出力タイミングの前記回転角の進角側への補正量を大きく設定して且つ該補正量によって前記出力タイミングを補正する処理を行い、前記制御回路は、前記補正する処理によって補正された前記出力タイミングに基づき前記操作信号を出力することで前記回転機を制御することを特徴とする。
上記発明では、上記態様にて設定される補正量によってスイッチング素子の操作信号の出力タイミングを補正する。すなわち、回転速度が高いほど上記出力タイミングを早める。これにより、回転角に含まれる遅れ誤差が回転機の制御に及ぼす影響を適切に抑制することができる。
第13の発明は、第8〜12のいずれか1つの発明において、前記回転機の回転速度と、前記回転機の指令トルクとに基づき該回転機の指令電圧ベクトルの振幅を設定する振幅設定手段と、前記回転機の出力トルクを前記指令トルクに制御すべく前記指令電圧ベクトルの位相を設定する位相設定手段とを更に備え、前記制御回路は、前記指令電圧ベクトル及び前記補正する処理によって補正された前記パラメータの値に基づき前記回転機の出力トルクを前記指令トルクに制御することを特徴とする。
上記発明では、指令電圧ベクトルに加えて、上記補正する処理によって補正された上記パラメータの値に基づき回転機のトルク制御を行う。これにより、遅れ誤差がトルク制御に及ぼす影響を好適に抑制することができる。
第14の発明は、第13の発明において、前記回転機に流れる相電流をd軸上の電流及びq軸上の電流に変換する電流変換手段と、少なくとも前記変換されたd軸上の電流及びq軸上の電流に基づき、前記回転機の出力トルクを算出するトルク算出手段とを更に備え、前記位相設定手段は、前記トルク算出手段によって算出された出力トルクを前記指令トルクに制御すべく前記位相を設定することを特徴とする。
上記発明では、少なくとも上記変換されたd軸上の電流及びq軸上の電流に基づき回転機の出力トルクを算出し、算出された出力トルクを用いて指令電圧ベクトルの位相を設定することから、遅れ誤差がトルク制御に影響を及ぼし得る。このため、こうした上記発明は、遅れ誤差がトルク制御に及ぼす影響を抑制できる第13の発明の発明特定事項を備えるメリットが大きい。
第15の発明は、第8〜12のいずれか1つの発明において、前記回転機のd軸上の指令電流及びq軸上の指令電流を設定する指令電流設定手段を更に備え、前記制御回路は、前記補正する処理によって補正された前記パラメータの値に基づき、前記設定されたd軸上の指令電流に前記回転機のd軸上の電流を制御して且つ、前記設定されたq軸上の指令電流に前記回転機のq軸上の電流を制御することを特徴とする。
上記発明では、上記補正する処理によって補正された上記パラメータの値に基づき、dq軸上の実電流をdq軸上の指令電流に制御する。これにより、遅れ誤差が電流制御に及ぼす影響を好適に抑制することができる。
第16の発明は、第15の発明において、前記補正手段は、前記補正する処理として、前記回転速度が高いほど前記d軸上の指令電流及び前記q軸上の指令電流の前記回転角の進角側への補正量を大きく設定して且つ該補正量によって前記d軸上の指令電流及び前記q軸上の指令電流を補正する処理を行い、前記制御回路は、前記補正する処理によって補正された前記d軸上の指令電流に前記d軸上の電流を制御して且つ、前記補正された前記q軸上の指令電流に前記q軸上の電流を制御することを特徴とする。
上記発明では、上記態様にて回転機に対するdq軸上の指令電流を補正する。こうした上記発明によれば、回転角算出装置によって算出される回転角に含まれる遅れ誤差が回転機の電流制御に及ぼす影響を抑制可能なように指令電流を設定することができ、遅れ誤差が回転機の制御に及ぼす影響を適切に抑制することができる。
第17の発明は、第16の発明において、前記補正手段は、前記補正する処理として、前記回転速度が高いほど前記d軸上の指令電流及び前記q軸上の指令電流から定まる指令電流ベクトルの前記進角側への補正量を大きく設定して且つ該補正量によって前記指令電流ベクトルを回転補正する処理を行うことを特徴とする。
上記発明では、dq軸上の指令電流を適切に補正することができる。
第18の発明は、第8〜17のいずれか1つの発明において、前記補正手段は、前記補正する処理として、前記回転機の回転加速度が大きいほど、実際の前記回転角に対する前記回転角算出装置によって算出される回転角の遅れが前記回転機の制御に及ぼす影響を打ち消す方向への前記補正量の変更を大きくする処理を更に行うことを特徴とする。
回転角の補正量を回転速度によって定める場合、回転加速度が0よりも大きくなる回転機の加速時や回転加速度が0よりも小さくなる回転機の減速時等、回転機の回転加速度が0でない状況下において、上記補正量が遅れ誤差を除去するための適切な値からずれ、回転角から遅れ誤差を適切に除去することができなくなるおそれがある。特に、回転加速度の0からのずれ量が大きくなる状況下においては、上記適切な値からのずれが顕著となり、回転機の制御性の低下が顕著となることが懸念される。ここで、上記発明では、回転機の回転加速度が大きいほど、実際の回転角に対する回転角算出装置によって算出される回転角の遅れが回転機の制御に及ぼす影響を打ち消す方向への上記補正量の変更を大きくする処理を更に行う。このため、回転機の回転加速度が0でない状況下において、回転角から遅れ誤差を適切に除去するための補正量を適切に設定することができる。
第19の発明は、第8〜18のいずれか1つの発明において、前記補正手段は、前記制御回路に備えられることを特徴とする。
第20の発明は、第1〜19のいずれか1つの発明において、前記回転角算出装置によって算出される回転角に基づき、前記回転機の回転速度を含む前記回転角の時間変化に関する情報を算出する速度算出手段を更に備え、前記補正手段は、前記速度算出手段によって算出される情報を用いて前記補正する処理を行うことを特徴とする。
なお、上記補正する処理において回転加速度を用いる場合、回転角の時間変化に関する情報とは、回転機の回転速度及び回転加速度のことをいう。
第21の発明は、第1〜19のいずれか1つの発明において、所定の数式モデルを用いて前記回転機の回転角を推定する推定手段と、前記推定手段によって推定される回転角に基づき、前記回転機の回転速度を含む前記回転角の時間変化に関する情報を算出する速度算出手段とを更に備え、前記補正手段は、前記速度算出手段によって算出される情報を用いて前記補正する処理を行うことを特徴とする。
第22の発明は、第1〜19のいずれか1つの発明において、前記回転機は、車載回転機であり、前記回転機が備えられる車両には、回転軸を有して且つ前記回転機とは異なる車載機器と、前記回転軸の回転角に関する情報を検出する検出手段とが更に備えられ、前記回転機の回転軸と前記車載機器の回転軸とは機械的に連結され、前記検出手段の検出値に基づき、前記回転機の回転速度を含む前記回転角の時間変化に関する情報を算出する速度算出手段を更に備え、前記補正手段は、前記速度算出手段によって算出される情報を用いて前記補正する処理を行うことを特徴とする。
第23の発明は、第1〜19のいずれか1つの発明において、前記回転角算出装置は、前記算出される回転角が規定角となる場合に基準信号を出力する機能を有し、前記基準信号が出力される時間間隔に基づき、前記回転機の回転速度を含む前記回転角の時間変化に関する情報を算出する速度算出手段を更に備え、前記補正手段は、前記速度算出手段によって算出される情報を用いて前記補正する処理を行うことを特徴とする。
第24の発明は、第1〜19のいずれか1つの発明において、前記回転角センサは、互いに位相が「π/2」だけ相違する一対の変調波によって搬送波が変調された一対の被変調波を前記出力信号とするレゾルバであり、前記一対の被変調波のうち少なくとも1つに基づき、前記回転機の回転速度を含む前記回転角の時間変化に関する情報を算出する速度算出手段を更に備え、前記補正手段は、前記速度算出手段によって算出される情報を用いて前記補正する処理を行うことを特徴とする。
第25の発明は、第1〜19のいずれか1つの発明において、前記回転機の各相に印加される誘起電圧に基づき、前記回転機の回転速度を含む前記回転角の時間変化に関する情報を算出する速度算出手段を更に備え、前記補正手段は、前記速度算出手段によって算出される情報を用いて前記補正する処理を行うことを特徴とする。
第26の発明は、第1〜19のいずれか1つの発明において、前記回転機の回転速度を含む前記回転角の時間変化に関する情報を推定する速度推定手段を更に備え、前記補正手段は、前記速度推定手段によって推定される情報を用いて前記補正する処理を行うことを特徴とする。
回転角算出装置の演算負荷の低減等を図ることを目的として、回転角算出装置による回転角の算出周期が制御回路による回転機の制御に関する演算周期よりも長く設定されることがある。こうした設定がなされると、回転機の回転加速度が0でない状況下において、回転機の制御に関する演算タイミングにおける回転角の把握精度が低下しやすい。この点、上記発明では、速度推定手段を備えることで、上記算出周期が上記演算周期よりも長い場合において、例えば回転機の制御に関する演算タイミングにおける回転角を適切に把握することができる。
第27の発明は、第26の発明において、前記速度推定手段は、前記回転速度を含む前記回転角の時間変化に関する情報を予測する手段であり、前記補正手段は、前記予測される情報を用いて前記補正する処理を行うことを特徴とする。
上記発明では、近い将来の回転速度を含む上記情報を推定する、すなわち回転速度を含む上記情報を予測することで、予測される情報を用いて、例えば回転速度の変化を見込んで回転機の制御に用いるパラメータの値を補正することができる。
なお、第26の発明(又は第27の発明)が第3又は第18の発明の発明特定事項を備える場合、回転機の回転加速度を推定(又は予測)する手段を更に備え、推定(又は予測)される回転加速度を用いて上記補正する処理を行ってもよい。
第28の発明は、第1〜27のいずれか1つの発明において、前記補正手段は、実際の前記回転角に対する前記回転角算出装置によって算出される回転角の遅れが前記回転機の制御に及ぼす影響を打ち消す方向への前記補正量を前記回転機の回転速度と関連付けて規定するマップ、及び前記打ち消す方向への前記補正量を前記回転機の回転速度と関連付けて規定する数式のうち少なくとも1つである規定情報を用いて前記補正する処理を行うことを特徴とする。
上記発明では、例えば、上記回転角の遅れが回転機の制御に及ぼす影響を打ち消すための処理に要する時間の低減を図ることができる。
第29の発明は、第28の発明において、当該回転機の制御装置には、前記回転角算出装置に応じた専用の前記規定情報が記憶された記憶手段が備えられることを特徴とする。
回転角算出装置の個体差等に起因して、回転角センサの出力信号に基づき回転角を算出するための演算時間が回転角算出装置毎に相違し得る。この点に鑑み、上記発明では、回転角算出装置に応じた専用の規定情報が記憶された記憶手段を備えている。このため、回転角の遅れが回転機の制御に及ぼす影響をいっそう好適に抑制することができる。
第30の発明は、第1〜29のいずれか1つの発明において、前記補正手段を第1の補正手段とし、規定期間における前記回転角の平均値に基づき前記回転角の予測値を算出し、該算出される予測値に基づき前記回転角算出装置によって算出される回転角を補正する第2の補正手段を更に備え、前記制御回路は、前記第2の補正手段によって補正された回転角に基づき、前記回転機を制御することを特徴とする。
上記発明では、第2の補正手段を備えることで、回転角に含まれる変動誤差を除去することができ、ひいては変動誤差が回転機の制御に及ぼす影響を抑制することができる。
第31の発明は、回転体の回転角に応じた出力信号を出力する回転角センサに適用され、前記出力信号に基づき前記回転角を算出する回転角算出装置において、前記回転体の回転速度が高いほど前記算出される回転角の進角側への補正量を大きく設定して且つ該補正量によって前記算出される回転角を補正する処理を行う補正手段を備えることを特徴とする。
上記発明では、回転体の回転速度が高いほど遅れ誤差が大きくなる傾向にあることに鑑み、回転速度が高いほど回転角算出装置によって算出される回転角の進角側への補正量を大きく設定する。そして、設定される補正量によって上記算出される回転角を補正する。これにより、回転角算出装置によって算出される回転角に含まれる遅れ誤差を除去することができる。
第32の発明は、第31の発明において、前記補正手段は、前記補正する処理として、前記回転体の回転加速度が大きいほど前記進角側への補正量を大きく設定し、前記回転体の回転加速度が0よりも小さいほど前記進角側への補正量を小さく設定する処理を更に行うことを特徴とする。
回転角の進角側への補正量を回転速度によって定める場合、回転加速度が0よりも大きくなる回転機の加速時や回転加速度が0よりも小さくなる回転機の減速時等、回転体の回転加速度が0でない状況下において、上記補正量が遅れ誤差を除去するための適切な値からずれ、回転角から遅れ誤差を適切に除去することができなくなるおそれがある。特に、回転加速度の0からのずれ量が大きくなる状況下においては、上記適切な値からのずれが顕著になることが懸念される。ここで、上記発明では、回転体の回転速度に加えて、回転体の回転加速度を用いて上記態様にて上記進角側への補正量を設定する。このため、回転体の回転加速度が0でない状況下において、回転角から遅れ誤差を除去するための補正量を適切に設定することができる。
第33の発明は、第31又は32の発明において、前記回転体の回転速度を含む前記回転角の時間変化に関する情報を推定する速度推定手段を更に備え、前記補正手段は、前記速度推定手段によって推定される情報を用いて前記補正する処理を行うことを特徴とする。
回転角算出装置の演算負荷の低減等を図ることを目的として、回転角算出装置による回転角の算出周期が、例えば回転角センサが適用される機器の制御に関する演算周期よりも長く設定されることがある。こうした設定がなされると、上記機器の有する回転体の回転加速度が0でない状況下において、機器の制御に関する演算タイミングにおける回転角の把握精度が低下しやすい。この点、上記発明では、速度推定手段を備えることで、例えば機器の制御に関する演算タイミングにおける回転角を適切に把握することができる。
第34の発明は、第33の発明において、前記速度推定手段は、前記回転速度を含む前記回転角の時間変化に関する情報を予測する手段であり、前記補正手段は、前記予測される情報を用いて前記補正する処理を行うことを特徴とする。
上記発明では、近い将来の回転速度を推定する、すなわち回転速度を予測することで、予測される回転速度を用いて、例えば回転速度の変化を見込んで上記算出される回転速度を補正することができる。
なお、第33の発明(又は第34の発明)が第32の発明の発明特定事項を備える場合、回転体の回転加速度を推定(又は予測)する手段を更に備え、推定(又は予測)される回転加速度を用いて上記補正する処理を行ってもよい。
第35の発明は、第31〜34のいずれか1つの発明において、前記補正手段は、前記進角側への補正量を前記回転体の回転速度と関連付けて規定するマップ、及び前記進角側への補正量を前記回転体の回転速度と関連付けて規定する数式のうち少なくとも1つである規定情報を用いて前記補正する処理を行うことを特徴とする。
上記発明では、例えば、回転角算出装置が回転角の補正に要する時間の低減を図ることができる。
第36の発明は、第35の発明において、当該回転角算出装置には、その個体に応じた専用の前記規定情報が記憶された記憶手段が備えられることを特徴とする。
回転角算出装置の個体差等に起因して、回転角センサの出力信号に基づき回転角を算出するための演算時間が回転角算出装置毎に相違し得る。この点に鑑み、上記発明では、回転角算出装置に応じた専用の規定情報が記憶された記憶手段を備えている。このため、回転角に含まれる遅れ誤差をいっそう好適に除去することができる。
第37の発明は、第31〜36のいずれか1つの発明において、前記補正手段を第1の補正手段とし、規定期間における前記回転角の平均値に基づき前記回転角の予測値を算出し、該算出される予測値に基づき前記算出される回転角を補正する第2の補正手段を更に備えることを特徴とする。
上記発明では、第2の補正手段を備えることで、回転角に含まれる変動誤差を適切に除去することができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる制御装置をパラレルハイブリッド車両に搭載される回転機の制御システムに適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
図示されるように、モータジェネレータ10は、車載主機としての3相の電動機兼発電機であり、変速装置12等を介して駆動輪14に機械的に連結されている。本実施形態では、モータジェネレータ10として、永久磁石同期モータ(例えば埋め込み磁石同期モータIPMSM)を用いている。なお、変速装置12は、モータジェネレータ10の回転速度を変速装置12の変速比に応じた回転速度に変換する機能等を有している。
上記モータジェネレータ10には、車載主機としてのエンジン16の出力軸(クランク軸)が機械的に連結されている。本実施形態では、クランク軸とモータジェネレータ10の出力軸とは同一軸で接続されている。このため、クランク軸の回転速度(エンジン回転速度)は、モータジェネレータ10の回転速度と同一となる。
モータジェネレータ10は、インバータIV及びシステムメインリレー18等を介して高圧バッテリ20に接続されている。高圧バッテリ20は、例えば百V以上となる端子電圧を有する蓄電池である。ちなみに、高圧バッテリ20としては、例えば、リチウムイオン蓄電池や、ニッケル水素蓄電池を採用することができる。
インバータIVは、パワー素子としての高電位側のスイッチング素子Sjp(j=u,v,w)及び低電位側のスイッチング素子Sjnの直列接続体が3つ並列接続されて構成されている。そして、これら高電位側のスイッチング素子Sjp及び低電位側のスイッチング素子Sjnの接続点が、モータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。本実施形態では、これら高電位側のスイッチング素子Sjp及び低電位側のスイッチング素子Sjnとして、電圧制御形のスイッチング素子である絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いている。なお、高電位側のスイッチング素子Sjp,低電位側のスイッチング素子Sjnの入出力端子間(コレクタ及びエミッタ間)には、フリーホイールダイオードFDp、FDnが接続されている。
制御システムには、モータジェネレータ10のV,W相を流れる電流iv,iwを検出する電流センサ22,24と、インバータIVの入力電圧を検出する電圧センサ26とが備えられている。
また、制御システムには、モータジェネレータ10の回転角(電気角)を検出するためのレゾルバ28が備えられている。レゾルバ28は、1次側コイル30及び一対の2次側コイル32,34を備えて構成されている。詳しくは、モータジェネレータ10の回転子10aには、1次側コイル30が機械的に連結されている。1次側コイル30は、正弦波状の励磁信号Scによって励磁され、励磁信号Scによって1次側コイル30に生じた磁束は、一対の2次側コイル32,34を鎖交する。この際、1次側コイル30と一対の2次側コイル32,34との相対的な配置関係が回転子10aの回転角θ(電気角)に応じて周期的に変化するため、2次側コイル32,34を鎖交する磁束数は、周期的に変化する。本実施形態では、2次側コイル32,34のそれぞれに生じる電圧の位相が互いに「π/2」だけずれるように一対の2次側コイル32,34と1次側コイル30とが配置されている。これにより、2次側コイル32,34のそれぞれの出力電圧は、励磁信号Scを変調波sinθ、cosθのそれぞれによって変調した被変調波となる。より具体的には、励磁信号Scを「sinΩt」とすると、被変調波はそれぞれ「sinθ×sinΩt」,「cosθ×sinΩt」となる。以下、これら1対の被変調波をレゾルバ信号と称すこととする。
上記各種センサの検出値は、図示しないインターフェースを介して低圧システムを構成するモータ制御装置(MGECU36)に取り込まれる。MGECU36は、CPU、ROM及びRAM等からなって且つ制御回路を構成するマイコン36aと、回転角算出装置としてのレゾルバデジタルコンバータ(以下、R/Dコンバータ36b)とを備える制御装置である。
MGECU36は、制御対象としてのモータジェネレータ10の制御量を制御すべく、上記インバータIVを操作する。詳しくは、モータジェネレータ10の出力トルクを指令トルクに制御すべく、インバータIVのU相、V相、及びW相のそれぞれについての高電位側のスイッチング素子Sjpを操作する操作信号gjpと、低電位側のスイッチング素子Sjnを操作する操作信号gjnとを生成する。なお、高電位側のスイッチング素子Sjpについての操作信号gjpと、低電位側のスイッチング素子Sjnについての操作信号gjnとは、交互にオン操作指令となる相補信号である。
ちなみに、上記エンジン16は、MGECU36とは別の制御装置(EGECU)によって制御される。また、モータジェネレータ10の指令トルクや、エンジン16の指令トルクは、MGECU36やEGECUよりも上位(アクセルペダル等のユーザインターフェースから入力されるユーザの要求からみて上流側)の制御装置(HVECU)によって指示される。
上記R/Dコンバータ36bは、アナログ信号としての上記レゾルバ信号をデジタル信号に変換して回転子10aの回転角(電気角)を算出する機能を有している。なお、R/Dコンバータ36bは、自身によって算出される回転角が規定角(例えば0°)に到達したタイミングを外部に知得させるべく、回転角信号とは別に、回転角が規定角に到達するごとにパルス状の信号である基準信号(ノースマーカ信号)を出力する機能も有している。なお、本実施形態において、基準信号の出力周期は、モータジェネレータ10の1回転周期(360°)と同じ周期となる。
次に、図2を用いて、マイコン36aによって実行されるモータジェネレータ10の制御量の制御(電流フィードバック制御)に関する処理等について説明する。
図示されるように、2相変換部B1は、R/Dコンバータ36bから出力される回転角θcと、電流センサ22,24によるV相,W相電流の検出値iv,iwとに基づき、モータジェネレータ10の各相を流れる電流iu,iv,iwを、回転2相座標系の実電流であるd軸上の実電流(d軸実電流idr)と、q軸上の実電流(q軸実電流iqr)とに変換する。なお、これら実電流の変換の際に用いられるモータジェネレータ10のU相を流れる電流iuは、V相,W相を流れる電流の検出値iv,iwに基づき算出する。
速度算出部B2は、R/Dコンバータ36bから出力される回転角θcに基づき、回転子10aの回転速度ω(電気角速度)を算出する。
指令電流設定部B3は、モータジェネレータ10の出力トルクを指令トルクTrq*とするための回転2相座標系の電流の指令値であるd軸上の指令電流(d軸指令電流id*)と、q軸上の指令電流(q軸指令電流iq*)とを設定する。ここでは、モータジェネレータ10の出力トルクTが、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq、d軸の電流id、q軸の電流iq、電機子鎖交磁束定数φ及び極対数Pを用いると、以下の式(e1)となることが利用される。
T=P{φ・iq+(Ld−Lq)id・iq}…(e1)
ちなみに、d軸指令電流id*,q軸指令電流iq*は、例えば、指令トルクTrq*と関係付けられたこれら指令電流id*,iq*が規定されるマップ(電流指令マップ)を用いて算出すればよい。
d軸電流比較部B4は、d軸指令電流id*とd軸実電流idrとの偏差Δidを算出する。ここで、上記偏差Δidは、d軸指令電流id*からd軸実電流idrを減算した値である。一方、q軸電流比較部B5は、q軸指令電流iq*とq軸実電流iqrとの偏差Δiqを算出する。ここで、上記偏差Δiqは、q軸指令電流iq*からq軸実電流iqrを減算した値である。
d軸指令電圧設定部B6は、上記偏差Δidを用いた比例積分制御(PI制御)に基づくフィードバック操作量に、周知の非干渉化制御を行うための非干渉項をフィードフォワード操作量として加えることで、d軸指令電圧Vd*を設定する。一方、q軸指令電圧設定部B7は、上記偏差Δiqを用いた比例積分制御(PI制御)に基づくフィードバック操作量に、非干渉化制御を行うための非干渉項をフィードフォワード操作量として加えることで、q軸指令電圧Vq*を設定する。なお、非干渉項は、速度算出部B2から出力される回転速度ωと、指令電流設定部B3から出力されるd軸指令電流id*,q軸指令電流iq*とを入力として非干渉項算出部B8によって算出される。
3相変換部B9は、R/Dコンバータ36bから出力される回転角θcに基づき、指令電圧Vd*,Vq*を3相の固定座標系の指令電圧であるU相の指令電圧Vu,V相の指令電圧Vv,W相の指令電圧Vwに変換する。
PWM変調部B10は、インバータIVの3相の出力電圧を指令電圧Vu,Vv,Vwを模擬した電圧とするための上記操作信号gjk(j=u,v,w;k=p,n)を生成する。ここでは、例えば、指令電圧Vu,Vv,VwをインバータIVの入力電圧VINVによって規格化したものと、三角波形状のキャリアとの大小比較結果を上記操作信号gjkとすればよい。そして、生成された操作信号gjkをインバータIVに対して出力する。
ところで、本実施形態において、上述したモータジェネレータ10の制御処理で用いる回転角θcは、後述する誤差補正処理によって誤差が除去されたものとなっている。以下、上記誤差について説明した後、誤差補正処理について説明する。
まず、図3を用いて、R/Dコンバータ36bにて算出される回転角に含まれる誤差について説明する。
上記誤差としては、変動誤差βと遅れ誤差δとがある。まず、変動誤差βについて説明すると、変動誤差βは、モータジェネレータ10に取り付けられたレゾルバ角(電気角)周期の整数倍の成分が重畳した誤差である。すなわち、変動誤差βが含まれる場合の回転角は、実際の回転角に変動誤差が重畳された値となる。なお、図3に2点鎖線にて、レゾルバ角の1周期(本実施形態では、モータジェネレータ10の1回転周期)と同じ周期を有する変動誤差βが実際の回転角(図中破線)に含まれる場合の回転角を例示する。
次に、遅れ誤差δについて説明すると、遅れ誤差δが含まれる場合の回転角は、実際の回転角(図中破線)に対して所定角ずれた値(図中一点鎖線)となる。具体的には、例えば、モータジェネレータ10の1回転周期と同じ周期を有する変動誤差βに加えて、遅れ誤差δが含まれる場合の回転角は、図中実線にて示すように、実際の回転角に対して所定角ずれた値に変動誤差βが重畳された値となる。この遅れ誤差δは、レゾルバ信号を入力とした回転角の算出処理にR/Dコンバータ36bが所定の演算時間(例えば数μsecの固定値)を要することに起因して発生する。
ここで、回転角に遅れ誤差δや変動誤差βが含まれる場合、回転角の把握精度が低下し、モータジェネレータ10のトルク制御性が低下するおそれがある。
特に、上記遅れ誤差δは、回転速度ωが高くなるほど大きくなる傾向にあるため、インバータIVが高周波数域でスイッチング操作される場合には、モータジェネレータ10のトルク制御性の悪化が顕著となるおそれがある。
こうした事態を回避すべく、本実施形態では、R/Dコンバータ36bにおいて上記誤差補正処理を行っている。以下、先の図2を用いて、誤差補正処理を含むR/Dコンバータ36bの演算処理について説明する。
R/Dコンバータ36bにおいて、A/D変換部B11は、所定周期でレゾルバ信号をデジタル信号に変換する。
角度算出部B12は、変換されたデジタル信号に基づき回転子10aの回転角θを算出する。
速度算出部B13は、角度算出部B12から出力される回転角θに基づき回転子10aの回転速度ω(電気角速度)を算出する。ここで、回転速度ωは、具体的には、例えば、今回のサンプリングタイミングにおける回転角θから過去(前回)のサンプリングタイミングにおける回転角θを減算した値を、レゾルバ信号がデジタル信号に変換される周期で除算した値として算出すればよい。
遅れ補正量設定部B14は、速度算出部B13から出力される回転速度ωに基づき遅れ補正量Cδを設定する。詳しくは、図4に示すように、回転速度ωが高いほど遅れ補正量Cδを大きく設定する。ここで、本実施形態では、遅れ補正量Cδについて、回転子10aの回転角の進角側(回転子10aの回転方向)を正としている。なお、遅れ補正量Cδは、具体的には例えば、回転速度ωと関係付けられた遅れ補正量Cδが規定される補正マップを用いて設定すればよい。また、補正マップは、R/Dコンバータ36b内の記憶手段(不揮発性メモリ)に記憶されている。
ちなみに、本実施形態では、R/Dコンバータ36bの備える記憶手段(不揮発性メモリ)には、その固体に応じた専用の補正マップが記憶されている。すなわち、R/Dコンバータ36b毎に適合された補正マップが記憶される。これは、R/Dコンバータ36bの個体差等に起因して、R/Dコンバータ36bにおける演算処理に要する時間が相違し得ることに鑑みたものである。
先の図2に戻り、加算部B15は、角度算出部B12から出力される回転角θと、遅れ補正量設定部B14から出力される遅れ補正量Cδとを加算する。これにより、回転角から遅れ誤差δが除去される。
誤差補正部B16は、回転角から変動誤差βを除去する。ここで、変動誤差βの除去手法として、本実施形態では、特開2004−242370号公報に記載される手法を用いる。この手法について説明すると、まず、回転速度ωが一定となる状況下又は回転速度ωの変動が少ない状況下において、規定期間における回転角の平均値に基づき回転角の予測値を算出する。ここで、規定期間は、レゾルバ角の1周期とする。そして算出された予測値と、加算部B15から出力される回転角との差に基づき、次回の規定期間において回転角の増減補正を行う。
ちなみに、本実施形態において、回転速度ωの変動が小さい状況下において誤差補正処理が行われることが望ましい。これは、回転速度ωの変動が大きいと、遅れ補正量設定部B14によって設定される遅れ補正量Cδが、遅れ誤差δを除去する適切な値からずれる度合いが大きくなることを回避するためである。このため、回転速度ωの変動が大きい状況下においては、例えば、誤差補正処理を一時的に中断する処理等を行ってもよい。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)回転速度ωが高いほど遅れ補正量Cδを大きく設定し、設定された遅れ補正量Cδを角度算出部B12から出力される回転角に加算した。これにより、回転角から遅れ誤差δを適切に除去することができ、ひいては遅れ誤差δがモータジェネレータ10のトルク制御性に及ぼす影響を抑制することができる。すなわち、モータジェネレータ10のトルク制御性の向上を図ることができる。
(2)誤差補正部B16によって回転角から変動誤差βを除去する処理を行った。これにより、モータジェネレータ10のトルク制御性を更に向上させることができる。
(3)R/Dコンバータ36b毎に適合された補正マップをR/Dコンバータ36bのメモリに記憶させた。これにより、R/Dコンバータ36bの個体差等に起因するコンバータ内の演算時間のばらつきが遅れ補正量Cδの算出精度に与える影響を好適に抑制することができる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、誤差補正処理をマイコン36aにて行う。
図5に、本実施形態にかかる誤差補正処理を示す。なお、図5において、先の図2に示した処理と同一の処理については、便宜上同一の符号を示している。
図示されるように、遅れ補正量設定部B14、加算部B15及び誤差補正部B16がマイコン36aに備えられている。詳しくは、角度算出部B12から出力される回転角θは、マイコン36a内の誤差補正部B16に入力される。これにより、回転角θから、まず、変動誤差βが除去される。
遅れ補正量設定部B14は、速度算出部B2から出力される回転速度ωに基づき遅れ補正量Cδを設定する。
加算部B15は、誤差補正部B16から出力される変動誤差βが除去された回転角と遅れ補正量Cδとを加算する。これにより、回転角から遅れ誤差δが除去される。
このように、本実施形態では、上記構成を採用することで、マイコン36aにて誤差補正処理を行うことができる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図6に、本実施形態にかかる誤差補正処理を示す。なお、図6において、先の図2に示した処理と同一の処理については、便宜上同一の符号を示している。
図示されるように、R/Dコンバータ36b内の角度算出部B12から出力される回転角θは、マイコン36a内の誤差補正部B16に入力される。誤差補正部B16にて変動誤差βの除去された回転角θcは、2相変換部B1、速度算出部B2及び3相変換部B9に入力される。
電流ベクトル補正部B17は、速度算出部B2から出力される回転速度ωに基づき、d軸実電流idr及びq軸実電流iqrから定まる実電流ベクトルを遅角側(回転子10aの回転方向とは逆方向)に回転補正する処理を行う。この処理は、電流フィードバック制御における制御量としての実電流から遅れ誤差δの影響を除去するための処理である。
図7に、本実施形態にかかる実電流ベクトルの回転補正態様を示す。なお、図中、3相固定座標系に対する2相回転座標系(回転子10a)の回転方向も合わせて示している。
図示されるように、d軸実電流idr及びq軸実電流iqrから定まる実電流ベクトルを遅れ補正量Cδ(≧0)だけ遅角側に回転させることで、実電流ベクトルを遅角補正する。ここでは、先の第1の実施形態と同様に、回転速度ωが高いほど上記遅れ補正量Cδを大きく設定する。ちなみに、遅角補正された実電流ベクトルのd軸成分及びq軸成分をそれぞれ、d軸補正電流idc及びq軸補正電流iqcと称すこととする。
先の図6に戻り、d軸電流比較部B4は、d軸指令電流id*とd軸補正電流idcとの偏差Δidを算出する。一方、q軸電流比較部B5は、q軸指令電流iq*とq軸補正電流iqcとの偏差Δiqを算出する。
電圧ベクトル補正部B18は、速度算出部B2から出力される回転速度ωに基づき、d軸指令電圧Vd*及びq軸指令電圧Vq*から定まる指令電圧ベクトルを進角側(回転子10aの回転方向)に回転補正する処理を行う。この処理は、その後3相変換部B9において遅れ誤差δを含む回転角θcによって指令電圧Vd*,Vq*が3相の指令電圧Vu,Vv,Vwに変換されることから、上記指令電圧ベクトルを予め進角側に回転補正するための処理である。
本実施形態では、図8に示すように、d軸指令電圧Vd*及びq軸指令電圧Vq*から定まる指令電圧ベクトルを上記遅れ補正量Cδだけ進角側に回転させることで、指令電圧ベクトルを進角補正する。ちなみに、進角補正された指令電圧ベクトルのd軸成分及びq軸成分をそれぞれ、d軸補正電圧Vdc及びq軸補正電圧Vqcと称すこととする。これら補正電圧は、3相変換部B9に入力される。
このように、本実施形態では、電流ベクトル補正部B17及び電圧ベクトル補正部B18を備えることで、回転角θに含まれる遅れ誤差δがモータジェネレータ10のトルク制御性に及ぼす影響を抑制することができる。
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図9に、本実施形態にかかる誤差補正処理を示す。なお、図9において、先の図6に示した処理と同一の処理については、便宜上同一の符号を示している。
操作信号生成部B19は、d軸指令電圧Vd*及びq軸指令電圧Vq*と、誤差補正部B16から出力される回転角θc(電気角)とに基づき、マイコン36a内の図示しない不揮発性メモリに記憶されたパルスパターンからPWM信号を選択する。ここで、パルスパターンとは、モータジェネレータ10が定速度で運転される状況下において、電気角と関連付けられて且つインバータIVの入力電圧VINV毎に定められたPWM信号のことである。
ここで、本実施形態では、誤差補正処理として、速度算出部B2から出力される回転速度ωに基づき、パルスパターンから選択された上記操作信号gjkの出力タイミングを進角補正する処理を行う。すなわち、回転速度ωが高いほど上記操作信号gjkの出力タイミングを早める処理を行う。
図10に、本実施形態にかかる操作信号gjkの進角補正の一例を示す。詳しくは、図10(a)に、誤差補正部B16から出力される回転角θcの推移を示し、図10(b)に、補正前の操作信号gjkの推移を示し、図10(c)に、補正後の操作信号gjkの推移を示す。
図示されるように、操作信号gjkを補正量Δ(図中、1LSBを例示)だけ早いタイミングでインバータIVに対して出力する。なお、この補正量Δは、図11に示すように、回転速度ωが高いほど大きく設定される。
このように、本実施形態では、パルスパターンに基づき操作信号gjkを生成する構成において、操作信号gjkを上記補正量Δだけ早めたタイミングでインバータIVに対して出力することで、遅れ誤差δがモータジェネレータ10のトルク制御性に及ぼす影響を抑制することができる。
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図12に、本実施形態にかかる誤差補正処理を示す。なお、図12において、先の図2に示した処理と同一の処理については、便宜上同一の符号を示している。
本実施形態では、回転速度ωに加えて、回転子10aの回転加速度に基づき、遅れ補正量Cδを設定する。以下、こうした設定を可能とする構成について説明する。
加速度算出部B20は、速度算出部B13から出力される回転速度ωに基づき、回転子10aの回転加速度accを算出する。ここで、回転加速度accは、具体的には例えば、今回の算出された回転速度ωから過去に(前回)算出された回転速度ωを減算した値をレゾルバ信号がデジタル信号に変換される周期で除算した値として算出すればよい。
遅れ補正量設定部B14は、上述したように、回転速度ωが高いほど遅れ補正量Cδを大きく設定する。本実施形態では、さらに、加速度算出部B20から出力される回転加速度accが0よりも大きいほど遅れ補正量Cδを大きく設定し、回転加速度accが0よりも小さいほど遅れ補正量Cδを小さく設定する。
図13に、本実施形態にかかる誤差補正処理の一例を示す。詳しくは、図13(a)に、回転速度ωの推移を示し、図13(b)に、遅れ補正量設定部B14によって設定される遅れ補正量Cδの推移を示す。なお、図13は、車両の加速時における回転速度ω等の推移を示している。また、本実施形態では、R/Dコンバータ36bによる回転角の算出周期がマイコン36aによるモータジェネレータ10の制御処理の演算周期よりも長く設定されている。
図示されるように、直前の回転速度ωの算出タイミングからモータジェネレータ10の現在の制御演算タイミングまでの時間をΔtctlとし、回転加速度をaccとし、直前の回転速度ωの算出タイミングにおける回転速度をωcalとすると、回転速度ωが単調増加して回転加速度accが略一定となる状況下での現在の制御演算タイミングにおける回転速度の推定値ωestは、下式(e2)にて表される。
ωest=ωcal+acc×Δtctl…(e2)
上式(e2)によって推定される回転速度を上記補正マップに入力することで、制御演算タイミングにおける回転角度に把握精度を向上させることができ、ひいては遅れ補正量Cδを適切な値とすることができる。
これに対し、回転加速度accを用いた誤差補正処理を行わない場合には、制御演算タイミングにおいて把握される回転速度ωが実際の回転速度から「acc×Δtctl」だけ小さくなり、これにより、遅れ補正量Cδが遅れ誤差を除去するための適切な値からΔCδだけ小さくなる。こうした遅れ補正量Cδのずれは、回転加速度が大きくなる状況下において顕著となり、このずれによってモータジェネレータ10のトルク制御性の低下が顕著となるおそれがある。
ちなみに、図14に、車両の減速時における誤差補正処理の一例を示す。詳しくは、図14(a)及び図14(b)は、先の図13(a)及び図13(b)に対応している。
図示されるように、回転速度ωが単調減少して回転加速度accが略一定となる状況下において、回転加速度accを用いた誤差補正処理を行わない場合には、制御演算タイミングにおいて把握される回転速度ωが実際の回転速度から「acc×Δtctl」だけ大きくなり、これにより、遅れ補正量Cδが遅れ誤差を除去するための適切な値からΔCδだけ大きくなる。
このように、本実施形態では、回転速度の推定値ωestを用いた遅れ補正量Cδの設定により、車両の加速時や減速時等、回転加速度accの0からのずれ量が大きくなる状況下や、回転加速度accが一定でない状況下において、回転角から遅れ誤差δを適切に除去することができる。特に、本実施形態では、R/Dコンバータ36bによる回転角の算出周期がマイコン36aによるモータジェネレータ10の制御処理の演算周期よりも長く設定されるため、制御演算タイミングにおける回転角の把握精度が低下しやすい。このため、回転加速度を用いた遅れ補正量Cδの設定処理の利用価値が高い。
(第6の実施形態)
以下、第6の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、モータジェネレータ10の制御量の制御として、トルクフィードバック制御を行う。
図15に、本実施形態にかかる誤差補正処理を示す。なお、図15において、先の図6に示した処理と同一の処理については、便宜上同一の符号を示している。
加速度算出部B21は、速度算出部B2から出力される回転速度ωに基づき、回転子10aの回転加速度accを算出する。ここで、回転加速度accは、上記第5の実施形態の加速度算出部B20と同様な手法で算出すればよい。
電流ベクトル補正部B17は、速度算出部B2から出力される回転速度ωに加えて、加速度算出部B21から出力される回転加速度accに基づき遅れ補正量Cδを設定し、設定された遅れ補正量Cδだけ実電流ベクトルを遅角側に回転補正する。この処理は、上記第5の実施形態で説明したように、回転加速度accの0からのずれ量が大きくなる状況下や回転加速度accが一定でない状況下においても、実電流から遅れ誤差δの影響を適切に除去するための処理である。この処理について詳述すると、回転速度ωが高いほど上記遅れ補正量Cδを大きく設定する。さらに、回転加速度accが0よりも大きいほど遅れ補正量Cδを大きく設定し、回転加速度accが0よりも小さいほど遅れ補正量Cδを小さく設定する。
トルク推定部B22は、電流ベクトル補正部B17から出力されるd軸補正電流idc及びq軸補正電流iqcに基づき、モータジェネレータ10の推定トルクTeを算出する。ここで、推定トルクTeは、具体的には例えば、これら補正電流idc,iqcと推定トルクTeとが関係付けられたマップや数式を用いて算出すればよい。
偏差算出部B23は、指令トルクTrq*と推定トルクTeとの偏差ΔTrを算出する。ここで、上記偏差ΔTrは、指令トルクTrq*から推定トルクTeを減算した値である。
位相設定部B24は、上記偏差ΔTrに基づき、推定トルクTeを指令トルクTrq*にフィードバック制御するための操作量として位相δcを設定する。詳しくは、上記偏差ΔTrを用いた比例積分制御(PI制御)によって位相δcを設定する。
振幅設定部B25は、指令トルクTrq*と、速度算出部B2から出力される回転速度ω(電気角速度)とを入力として、指令電圧ベクトルの振幅Vnを設定する。ここで、ベクトルの振幅とは、ベクトルの各成分の2乗の和の平方根にて定義される。ちなみに、上記振幅Vnは、具体的には例えば、指令トルクTrq*及び回転速度ωと上記振幅Vnとが関係付けられたマップ等、指令トルクTrq*及び回転速度ωから振幅Vnを一義的に算出する手段を備えることで設定することができる。
操作信号生成部B26は、上記位相δc、上記振幅Vn、インバータIVの入力電圧VINV及び誤差補正部B16から出力される回転角θcに基づき、操作信号gjkを生成して出力する。詳しくは、操作信号生成部B26は、変調率毎に、回転角θcの1回転周期分の操作信号波形をパルスパターンとして記憶している。操作信号生成部B26では、インバータIVの入力電圧VINV及び振幅Vnに基づき変調率を算出し、これに応じて該当する操作信号波形を選択する。操作信号波形が選択されると、操作信号生成部B26では、この波形の出力タイミングを上記位相δcに基づき設定することで操作信号gjkを生成する。
ここで、本実施形態では、誤差補正処理として、速度算出部B2から出力される回転速度ωに加えて、加速度算出部B21から出力される回転加速度accを入力として、パルスパターンから選択された上記操作信号gjkの出力タイミングを進角補正する処理を行う。ここで、回転加速度accを用いるのは、回転加速度accの0からのずれ量が大きくなる状況下等においても、遅れ誤差δが操作信号gjkの出力タイミングに及ぼす影響を適切に除去するためである。上記出力タイミングの進角補正について詳述すると、上記第4の実施形態で説明したように、回転速度ωが高いほど補正量Δを大きく設定する。さらに、回転加速度accが0よりも大きいほど上記補正量Δを大きく設定し、回転加速度accが0よりも小さいほど上記補正量Δを小さく設定する。そして、設定された補正量Δだけ上記操作信号gjkの出力タイミングを早める。
ちなみに、本実施形態にかかるトルクフィードバック制御と、例えば上記第3の実施形態にかかる電流フィードバック制御とは、実際にはモータジェネレータ10の運転状態に応じて選択されて実行される。具体的には例えば、変調率が1よりも大きい所定値未満になると判断された場合、電流フィードバック制御を実行し、変調率が上記所定値以上になると判断された場合、トルクフィードバック制御を実行すればよい。
このように、本実施形態では、トルクフィードバック制御を行う構成において、回転速度ω及び回転加速度accに基づき、実電流ベクトルを回転補正したり、上記操作信号gjkの出力タイミングを早めたりすることで、遅れ誤差δがモータジェネレータ10のトルク制御性に及ぼす影響を抑制することができる。
(第7の実施形態)
以下、第7の実施形態について、先の第6の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、トルクフィードバック制御に基づく指令相電圧と、キャリアとの大小比較結果から操作信号gjkを生成する。
図16に、本実施形態にかかる誤差補正処理を示す。なお、図16において、先の図15に示した処理と同一の処理については、便宜上同一の符号を示している。
指令電圧設定部B27は、振幅設定部B25から出力される振幅Vnと、位相設定部B24から出力される位相δcとに基づき、d軸指令電圧Vd*及びq軸指令電圧Vq*を設定する。
電圧ベクトル補正部B18は、速度算出部B2から出力される回転速度ωに加えて、加速度算出部B21から出力される回転加速度accに基づき遅れ補正量Cδを設定し、設定された遅れ補正量Cδだけ指令電圧ベクトルを進角側に回転補正する。この処理は、回転加速度accの0からのずれ量が大きくなる状況下等においても、3相変換部B9にて遅れ誤差δが指令相電圧の算出に及ぼす影響を適切に除去すべく、指令電圧ベクトルを予め進角側に回転補正するための処理である。この処理について詳述すると、回転速度ωが高いほど上記遅れ補正量Cδを大きく設定する。さらに、回転加速度accが0よりも大きいほど遅れ補正量Cδを大きく設定し、回転加速度accが0よりも小さいほど遅れ補正量Cδを小さく設定する。
なお、電圧ベクトル補正部B18から出力されるd軸補正電圧Vdc及びq軸補正電圧Vqcは、3相変換部B9に入力される。
このように、本実施形態では、回転速度ω及び回転加速度accに基づく指令電圧ベクトルの回転補正によって、遅れ誤差δがモータジェネレータ10のトルク制御性に及ぼす影響を抑制することができる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・遅れ補正量Cδの設定手法としては、上記第1の実施形態に例示したものに限らない。例えば、回転速度ωを変数とする単調増加関数を用いて遅れ補正量Cδを設定してもよい。ここで、上記関数としては、例えば1次や2次の単調増加関数を用いればよい。
・上記第1の実施形態において、R/Dコンバータ36bから誤差補正部B16を除いてもよい。この場合であっても、回転角から遅れ誤差δを除去できることから、モータジェネレータ10のトルク制御性の低下を抑制することはできる。
・上記第1の実施形態において、誤差補正部B16によって変動誤差βを除去してから遅れ補正量設定部B14及び加算部B15によって遅れ誤差δを除去してもよい。また、上記第2の実施形態において、遅れ補正量設定部B14及び加算部B15によって遅れ誤差δを除去してから誤差補正部B16によって変動誤差βを除去してもよい。
・d軸実電流idr及びq軸実電流iqrの補正手法としては、上記第3の実施形態に例示したものに限らない。例えば、回転速度ωと関係付けられたd軸実電流の補正量及びq軸実電流の補正量が規定されるマップを用いてこれら補正量を設定し、設定された補正量によってd軸実電流idr及びq軸実電流のそれぞれを各別に補正する手法を採用してもよい。
なお、上記実電流の補正手法は、d軸指令電圧Vd*及びq軸指令電圧Vq*の補正にも適用できる。
・上記第3,第7の実施形態において、電流ベクトル補正部B17及び電圧ベクトル補正部B18のうちいずれかを備えない構成としてもよい。この場合、遅れ誤差δがモータジェネレータ10の制御に及ぼす影響の抑制度合いが低下するものの、上記影響を抑制することはできる。
また、上記第3の実施形態において、電流ベクトル補正部B17及び電圧ベクトル補正部B18の双方に代えて、指令電流設定部B3によって設定される指令電流を進角補正する処理部を備えることで、遅れ誤差δがモータジェネレータ10のトルク制御性に及ぼす影響を抑制してもよい。この場合、上記処理部において、例えば、d軸指令電流id及びq軸指令電流iqから定まる指令電流ベクトルを遅れ補正量Cδだけ進角側に回転補正する処理を行えばよい。ここでは、さらに、例えば上記第5の実施形態と同様に、回転加速度accに基づき遅れ補正量Cδを設定してもよい。
・電流フィードバック制御を行う上記第3,第4の実施形態において、回転加速度accの0からのずれ量が大きいほど、実際の回転角に対するR/Dコンバータ36bによって算出される回転角の遅れがモータジェネレータの制御に及ぼす影響を打ち消す方向への補正量の変更を大きくする処理を行ってもよい。ここでは、具体的には例えば、上記第7の実施形態と同様の回転加速度accに基づく遅れ補正量Cδの設定処理を採用すればよい。
・回転速度ωの算出手法としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、以下(A)〜(E)の手法を採用してもよい。
(A)モータジェネレータ10の固定子に備えられる各相のコイルに発生する誘起電圧を検出する手段(センサ)を備え、検出される誘起電圧に基づき回転速度ωを算出してもよい。これは、上記各相のコイルのそれぞれに発生する誘起電圧は、回転子10aの回転角(電気角)に応じて周期的に変化することに鑑みたものである。
(B)R/Dコンバータ36bから基準信号が出力される時間間隔が短いほど、回転速度ωを高く算出してもよい。
(C)エンジン16のクランク軸の回転角を検出するクランク角センサや、変速装置12の入力軸又は出力軸の回転速度を検出するセンサを備え、上記センサの検出値に基づき回転速度ωを算出してもよい。なお、クランク軸と機械的に連絡されて且つ変速装置12等の内部の潤滑を行うためのオイルポンプの入力回転軸の回転速度を検出するセンサを備え、このセンサの検出値に基づき回転速度ωを算出してもよい。
ちなみに、回転角の把握精度を確保する観点から、クランク角センサ等による回転速度の検出周期がモータジェネレータ10の制御演算周期と略同一であることが望ましい。
(D)一対のレゾルバ信号のうちいずれかを用いて回転角を算出し、算出された回転角の時間変化に基づき回転速度ωを算出してもよい。なお、一対のレゾルバ信号のうちいずれかに対応する変調波を把握することで上記回転角が算出される。
(E)モータジェネレータ10を流れる電流及びモータジェネレータ10に印加される電圧を入力とする所定の数式モデルを用いて回転速度ωを算出してもよい。ここで、数式モデルとしては、例えば、特開2009−44908号公報の明細書(段落「0033」〜「0042」等)に記載されているように、拡張誘起電圧モデルを用いた手法が考えられる。詳しくは、拡張誘起電圧モデルによって回転角を推定し、推定された回転角によって回転速度ωを算出すればよい。
ちなみに、誤差補正処理に回転加速度accを用いる場合、上記(A)〜(E)の手法を用いて回転加速度accを算出してもよい。
・上記第5の実施形態において、近い将来の回転速度ω及び回転加速度accを推定する処理、すなわち予測する処理を行い、予測される回転速度ω及び回転加速度accを用いて遅れ補正量設定部B14にて遅れ補正量Cδを設定してもよい。ここで、上記予測する処理としては、例えば、回転子10aの慣性モーメント及び回転加速度accの乗算値を有して且つ、HVECUから取得されるモータジェネレータ10の指令トルクTrq*,エンジン16の指令トルクと、駆動輪14からの負荷トルクとを入出力トルクとする力学モデルを用いて回転速度ω及び回転加速度accを予測すればよい。こうした手法により予測される回転速度ω等によれば、例えば回転速度ωや回転加速度accの変化を見込んだ遅れ補正量Cδの設定をすることなどができる。具体的には例えば、回転加速度が略一定とならず、回転加速度が変化する状況下において、上記力学モデルにより制御演算タイミングにおける回転加速度を予測して制御演算タイミングでの遅れ補正量Cδを設定することができる。
なお、上記予測する処理に用いる回転速度ωや回転加速度accは、上述した(A)〜(E)の手法のうち少なくとも1つによって算出されるものを用いることができる。
・上記第1,第5の実施形態において、R/Dコンバータ36bに外部入力端子を備え、上記端子を介して外部から回転速度ωや回転加速度accの情報を取得し、取得された回転速度ωや回転加速度accを用いて誤差補正処理を行ってもよい。
・上記第2〜第4の実施形態におけるモータジェネレータ10の制御処理等を、例えばモータジェネレータ10の運転状態に応じて切り替える制御ロジックを採用してもよい。具体的には、例えば、上記運転状態に応じて操作信号gjkの生成態様を変更すべく、上記第2の実施形態における制御処理と、上記第4の実施形態における制御処理とを切り替える制御ロジックが挙げられる。また、例えば、遅れ誤差δがモータジェネレータ10の制御に及ぼす影響を打ち消す処理を変更すべく、第2の実施形態における遅れ誤差δを除去する処理と、第3の実施形態における実電流ベクトル等を回転補正する処理とを切り替える制御ロジックが挙げられる。なお、こうした制御ロジックは、トルクフィードバック制御を行う制御構成にも適用できる。
・トルクフィードバック制御を行う制御構成(例えば上記第6の実施形態)において、上記第1,第2,第5の実施形態で示したようにR/Dコンバータ36b又はマイコン36aにて遅れ誤差δ及び変動誤差βを除去する誤差補正処理を行ってもよい。
・回転角センサとしては、レゾルバに限らず、インクリメンタルエンコーダや、アブソリュートエンコーダ、ホール素子等のセンサであってもよい。この場合であっても、回転角センサの出力信号に基づく回転角の算出処理に回転角算出装置が所定の演算時間を要することに起因して遅れ誤差δが生じ得るため、本願発明の適用が有効である。
・上記第6,第7の実施形態において、モータジェネレータ10の出力トルクを直接検出する検出手段(例えばトルクセンサ)を備え、トルク推定部B22によって算出された推定トルクTeに代えて、上記検出手段の検出値を用いてもよい。
・回転機としては、IPMSMに限らず、例えば、表面磁石同期モータSPMSMや、誘導機IM、シンクロナスリラクタンスモータSynRM等、他の回転機であってもよい。
・上記各実施形態では、電流フィードバック制御やトルクフィードバック制御が行われる制御構成としたが、回転機の角度情報を用いて制御する構成であれば他の制御構成であってもよい。
・回転角センサの適用対象としては、モータジェネレータ10に限らず、回転体を備える他の機器であってもよい。
・本願発明が適用される車両としては、パラレルハイブリッド車両に限らず、例えば、シリーズハイブリッド車両やシリーズパラレルハイブリッド車両であってもよい。また、車両としては、ハイブリッド車両に限らず、例えば、車載主機としての内燃機関を備えない電動車両や燃料電池車両等であってもよい。