JP2010192890A - 小型インダクタ及び同小型インダクタの製造方法 - Google Patents

小型インダクタ及び同小型インダクタの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低抵抗及び高インダクタンスを有し、磁気飽和が発生し難いことにより直流重畳特性が良好な小型インダクタを提供すること。
【解決手段】小型インダクタ10は、コイル11と、コイル埋設体12と、閉磁路構成体13と、を有する。コイル埋設体は、第1透磁率を有する多孔質のセラミック焼成体であり、コイルを埋設している。コイル埋設体には、コイルの内側において「コイルの軸線に沿って貫通する貫通孔12a」が形成されている。閉磁路構成体は、前記第1透磁率よりも大きい第2透磁率を有する略緻密なセラミック焼成体である。閉磁路構成体は、コイル埋設体の外周部及び貫通孔に密に配設される。その結果、磁路は、主として閉磁路構成体に形成され、コイル近傍における磁束密度が低下する。よって、磁気飽和が発生し難く、直流重畳特性が良好なインダクタが提供される。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、電源回路等に使用される小型パワーインダクタ等の小型インダクタ及び同小型インダクタの製造方法に関する。
従来から、小型パワーインダクタが知られている。小型パワーインダクタは、例えば、半導体への電源供給回路及びDC−DCコンバータ等の電源回路において、信号のノイズ抑制、整流及び信号の平滑化等の機能を実現するために使用される。このような小型パワーインダクタとして、巻線型インダクタ及び積層型インダクタ等が知られている。
小型パワーインダクタには、小型であること、インダクタンスが大きいこと、抵抗が小さいこと、及び、直流重畳特性が良好なこと、等が要求される。直流重畳特性が良好であるとは、コイルに交流電気信号に加えて比較的大きな直流電気信号を流した場合(即ち、大きな直流重畳電流を流した場合)であっても、磁気飽和(磁路の透磁率が小さくなること)が発生せず、従って、インダクタンスが低下しないことである。
従来の巻線型インダクタ100は、その断面図である図27に示したように、コア(磁芯)101と、コイル(導線)102と、を含む。コイル102は、コア101の周囲にらせん状に巻回されている。巻線型インダクタ100においてコイル102に電流を流したとき、磁路は図27の破線により示したように形成される。この磁路は、空間を通過する。即ち、巻線型インダクタ100は、開磁路構造を有する。このため、磁束密度は過大となり難く、従って磁気飽和が発生し難いので、巻線型インダクタ100の直流重畳特性は比較的良好である。しかしながら、巻線型インダクタ100のインダクタンスを大きくするためには細い導線102をコア101の回りに多数回巻かなければならい。このため、抵抗が大きくなるという問題がある。更に、巻線型インダクタ100は、その製造工程が複雑であり、且つ、小型化するにも限界がある。
これに対し、従来の積層型インダクタ110は、その透視斜視図である図28及び断面図である図29に示したように、磁性体111と、磁性体111内に埋設されたコイル112と、一対の端子電極113と、を備えている。コイル112は、各層毎に所定の形状に形成された薄板状の導体112aと、各層の薄板状導体112aを上下方向において電気的に接続するビア(VIA)ホール内の導体112bと、により形成されている。一対の端子電極113は磁性体111の両端部に形成されている。
このような積層型インダクタ110においてコイル112に電流を流したとき、磁路は図29の破線により示したように形成される。この磁路は、磁性体111のみを通過する。即ち、積層型インダクタ110は閉磁路構造を有する。従って、積層型インダクタ110はコイル112の巻数が比較的少なくても高いインダクタンスが得られるから、抵抗を小さくすること及び小型化が可能である。しかしながら、図30に模式的に示したように、コイル112に電流を流したとき、コイル112に近い領域において磁束密度が極めて大きくなる。このため、磁気飽和が発生し易いから、積層型インダクタ110の直流重畳特性は良好でない。
図31は、このような問題に対処した「従来の積層型インダクタ120」の断面図である。積層型インダクタ120は、セラミックからなる第1の外装体121と、樹脂層122と、中間体123と、樹脂層124と、第2の外装体125と、コア126と、渦巻き状のコイル導体127と、を備える。コア126は、中間体123及び第2の外装体125の中央部に形成されている。コイル導体127は、コア126を取り囲むように形成されている。第1の外装体121、第2の外装体125及びコア126は高透磁率材料から形成されている。中間体123は低透磁率材料から形成されている。従って、積層型インダクタ120において、一部の磁路は図31に破線により示したように開磁路となる。この結果、磁束密度は過大となり難く、従って磁気飽和が発生し難いので、小型で且つ直流重畳特性が良好な積層型インダクタ120が提供される(例えば、特許文献1を参照。)。
特開2001−267129号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の積層型インダクタ120は、第1の外装体121の上に、樹脂層122、中間体123、樹脂層124及び第2の外装体125を積層し、且つ、その後にコア126を形成しなければならないので、製造工程が複雑であり、製造コストが高いという問題がある。加えて、一部の磁路が開磁路であるから、インダクタンスを大きくするためにはコイル導体127の巻き数を大きくしなければならず、大型化するという問題もある。
本発明は、上記課題を解決した小型インダクタ及び同小型インダクタの製造方法を提供する。本発明による小型インダクタは、コイルと、コイル埋設体と、閉磁路構成体と、を備える。
前記コイルは、渦巻き状に形成された導体からなる。本明細書において、「渦巻き状に形成された導体」とは、その渦巻きが伸びる方向(軸線方向)に直交する平面にて同導体を切断した断面形状が円である場合に限らず、楕円、正方形及び長方形等である場合を含む。換言すると、渦巻き状に形成された導体の外形形状は、円柱形状に限られず、直方体形状及び円錐台形状等であってもよい。「渦巻き状」は「螺旋状」も含む。
前記コイル埋設体は、第1透磁率を有するセラミック焼成体である。前記コイル埋設体には前記コイルが埋設されている。前記コイル埋設体には、前記コイルの内側において「前記コイルの軸線に沿って貫通する貫通孔」が形成されている。
前記閉磁路構成体は、前記第1透磁率よりも大きい第2透磁率を有するセラミック焼成体(焼成により一体化された焼成体)である。前記閉磁路構成体は、前記コイル埋設体の外周部及び前記貫通孔に密に配設されていて、前記コイル埋設体を埋設している(前記コイルを内部に収容している)。その結果、前記閉磁路構成体は、前記コイルに対する「切断部のない閉磁路」を構成するように形成されている。
これによれば、コイルの近傍には「第1透磁率を有するセラミック焼成体(コイル埋設体からコイルを除いた部分)」が配設され、その外側に「第1透磁率よりも大きい第2透磁率を有するセラミック焼成体(閉磁路構成体)」が配設される。従って、コイル近傍に形成される磁界の強度(磁束密度)が従来の積層型インダクタに比べて低下するので、磁気飽和が発生し難い。即ち、直流重畳特性の優れた小型インダクタが提供される。
加えて、コイル(コイルが通電された際に同コイルが発生する磁界)に対する磁路は、第2透磁率を有する閉磁路構成体内を主として通過する。一方、閉磁路構成体は焼成により一体化されたセラミックの焼成体である。従って、閉磁路構成体を通過する磁路は、空隙等の低透磁率からなる部分を有さない閉磁路(切断部のない閉磁路)となっている。従って、コイルの巻き数を多くしなくても、コイルのインダクタンスは大きくなる。このように、本発明によれば、上述した各要求を満たすことができる小型インダクタが提供され得る。
この場合、前記コイル埋設体はセラミックの多孔質体からなることが好適である。これによれば、閉磁路構成体の透磁率(第2透磁率)よりも小さい透磁率(第1透磁率)を有するコイル埋設体を容易に提供することができる。なお、閉磁路構成体はセラミックの緻密体であってもよく、前記コイル埋設体よりも空孔の存在率が低いセラミックの多孔質体であってもよい。
更に、本発明による小型インダクタにおいて、
前記第2透磁率(μ2)に対する前記第1透磁率(μ1)の比(μ1/μ2)が0.19以上であって且つ0.75以下であることが望ましい。
実験によれば、比(μ1/μ2)が0.19以上であって且つ0.75以下となるようにコイル埋設体の透磁率(μ1)及び閉磁路構成体の透磁率(μ2)を調整することにより、直流重畳特性に特に優れた小型インダクタを得ることができた。
更に、本発明による小型インダクタにおいて、
前記コイル埋設体及び前記閉磁路構成体は互いに同一種類であって且つ同一粒径の磁性粉を分散させたセラミックの多孔質体であり、
理論密度に対する実際の密度の比を相対密度と定義するとき、
前記閉磁路構成体の相対密度(ρ2)に対する前記コイル埋設体の相対密度(ρ1)の比(ρ1/ρ2)が0.73以上であって且つ0.92以下であることが望ましい。
実験によれば、比(ρ1/ρ2)が0.73以上であって且つ0.92以下である場合、直流重畳特性に特に優れた小型インダクタを得ることができた。
更に、本発明による小型インダクタにおいて、
前記コイルの外側端部から前記コイル埋設体の外側端部までの距離及び前記コイルの内側端部から前記コイル埋設体の内側端部までの距離は互いに等しく、その距離である前記コイル埋設体の厚さ(t)が30μm以上であって100μm以下であることが好ましい(図6及び図8を参照。)。
実験によれば、厚さ(t)が30μm未満であると、コイルの周辺にクラックが発生した。加えて、厚さ(t)が100μmよりも大きいと、インダクタンスが大きく低下した。
このような小型インダクタを製造するための本発明による1つの製造方法(第1の製造方法)は、
(A)コイル作成工程と、
(B)焼成前コイル埋設体を作成する焼成前コイル埋設体作成工程と、
(C)焼成前インダクタを作成する焼成前インダクタ作成工程と、
(D)前記焼成前インダクタを焼成させる焼成工程と、
を含む。
(A)前記コイル作成工程は、導線を渦巻き状に巻回することにより、渦巻き状に形成された導体からなるコイルを作成する工程である。
(B)前記焼成前コイル埋設体作成工程は、前記焼成前コイル埋設体を作成する工程であり、次の工程を含む。
(B1)前記コイルを収容する凹部と、前記凹部内に立設され且つ前記コイルの内側を貫通することができる形状を有する柱状部と、を有する第1金型を準備する工程(第1金型準備工程)。前記コイルを収容する凹部は、前記コイルの形状(前記コイルの外周部により画定される形状)よりも大きな空間である。前記柱状部は、前記コイルに接することなく同コイルの軸線側(内側)を貫通することができる形状を備える。
(B2)前記柱状部が前記コイルの内側を貫通するように前記コイルを前記第1金型内に配置する工程(コイル配置工程)。コイルは第1金型に接触することなく、且つ、第1金型内に完全に収容される。
(B3)第1磁性粉を含むとともに「熱ゲル化特性又は熱硬化性」を有するセラミックスラリーであって、焼成後にその透磁率が第1透磁率となるように調整されたセラミックスラリー(第1のセラミックスラリー)を、前記第1金型内に注ぐ工程(第1注型工程)。
(B4)前記第1金型内に注がれた第1のセラミックスラリーが形状を維持するように(即ち、ゲル化又は熱硬化するように)同第1のセラミックスラリーを変化させ、前記コイルを埋設するとともに同コイルの内側に前記柱状部により形成された貫通孔を備える焼成前コイル埋設体を作成する工程(第1硬化工程)。
(C)前記焼成前インダクタ作成工程は、前記焼成前インダクタを作成する工程であり、次の工程を含む。
(C1)前記焼成前コイル埋設体を収容する空間を有する第2金型を準備する工程(第2金型準備工程)。前記焼成前コイル埋設体を収容する空間は、前記焼成前コイル埋設体の外周部により画定される形状よりも大きな空間である。
(C2)前記第2金型内に前記焼成前コイル埋設体を配置する工程(焼成前コイル埋設体配置工程)。このとき、焼成前コイル埋設体と第2金型とが接することのないように、焼成前コイル埋設体を前記第2金型内に保持する。焼成前コイル埋設体は、焼成前コイル埋設体に接触することなく、第2金型内に完全に収容される。
(C3)第2磁性粉を含むとともに「熱ゲル化特性又は熱硬化性」を有するセラミックスラリーであって、焼成後にその透磁率が「前記第1透磁率よりも大きな第2透磁率」となるように調整された第2のセラミックスラリーを前記第2金型内に注ぐことにより、前記焼成前コイル埋設体の外周部及び前記貫通孔に前記第2のセラミックスラリーを存在させる工程(第2注型工程)。
(C4)前記第2金型内に注がれた第2のセラミックスラリーが形状を維持するように(即ち、ゲル化又は熱硬化するように)、同第2のセラミックスラリーを変化させる工程(第2硬化工程)。
通常、この種の小型インダクタにおいては、セラミックグリーンシートに印刷等により形成されたペースト状金属(例えば、銀)を焼成することによりコイルを作成する。即ち、コイルは焼結金属から作成される。しかしながら、焼結金属にはフラックス等の混入物や気孔が不可避的に存在するので、抵抗が大きくなる。これに対し、上記製造方法によれば、コイルは焼結金属ではなく、通常の金属(例えば、稠密な純金属)から別途作成され得る。従って、小型インダクタの抵抗を小さくすることができる。
更に、通常のセラミックスラリー内に「変形し難い剛体のコイル」を埋設させた後、そのセラミックスラリーを乾燥させて「焼成前コイル埋設体(その後の焼成により前記コイル埋設体になる構造体)」を作成すると、その焼成前コイル埋設体中にクラックが発生する。このクラックは、焼成前コイル埋設体が乾燥して行く途中にて溶媒が蒸発し、それによって焼成前コイル埋設体が収縮するために発生する。
これに対し、上記焼成前コイル埋設体作成工程においては、「熱ゲル化特性又は熱硬化性」を有するセラミックスラリーを用いて「焼成前コイル埋設体」が作成される。換言すると、ゲルキャスト成形によって「焼成前コイル埋設体」が作成される。ゲルキャスト成形においては、スラリーからなる構造体は化学反応により形状を維持しうる状態へと変化し(即ち、硬化し)、その後に溶媒が蒸発する。従って、その構造体は殆ど収縮しない。その結果、クラックを有さない「焼成前コイル埋設体」が極めて容易に作成される。
加えて、上記焼成前インダクタ作成工程においても、ゲルキャスト成形法に基いて「焼成前閉磁路構成体(閉磁路構成体の焼成前構造体)」が作成される。従って、焼成前閉磁路構成体にもクラックは発生しない。そして、焼成前コイル埋設体と焼成前閉磁路構成体とからなる焼成前インダクタが、前記焼成工程において焼成させられる。従って、「前記コイル埋設体の外周部及び前記貫通孔」に前記第2透磁率を有する閉磁路構成体を容易に作成することができる。即ち、第1製造方法によれば、上述した構造を有する「本発明による小型インダクタ」を容易に作成することができる。
この小型インダクタの製造方法において、
前記第1のセラミックスラリーは、
前記第1のセラミックスラリーが前記焼成工程にて焼成されることにより得られる部分が多孔質体となるように機能する造孔剤を含むことが好適である。
前記造孔剤は、例えば、前記焼成工程において消失する微粒子(例えば、アクリル等の微粒子)であってもよい。
これによれば、前記コイル埋設体(前記第1のセラミックスラリーが前記焼成工程にて焼成されることにより得られる部分)に空孔が多数形成されるので、低透磁率(前記第2透磁率よりも小さい前記第1透磁率)を有するコイル埋設体を容易に作成することができる。
更に、これらの小型インダクタの製造方法において、
前記第1のセラミックスラリーは、
前記第1のセラミックスラリーが前記焼成工程にて焼成されることにより得られる部分が多孔質体となるように、メディアン径が第1粒径に調整された磁性粉を前記第1磁性粉として含み、
前記第2のセラミックスラリーは、
前記第2のセラミックスラリーが前記焼成工程にて焼成されることにより得られる部分が緻密体となるように(第1のセラミックスラリーが前記焼成工程にて焼成されることにより得られる部分よりも緻密になるように)、メディアン径が前記第1粒径よりも小さい第2粒径に調整された磁性粉を前記第2磁性粉として含むことができる。
これによれば、前記第1のセラミックスラリーに「メディアン粒径が比較的大きい磁性粉(第1粒径の磁性粉)」が混入されているので、前記コイル埋設体(前記第1のセラミックスラリーが前記焼成工程にて焼成されることにより得られる部分)に空孔が多数形成される。その結果、低透磁率(前記第2透磁率よりも小さい前記第1透磁率)を有するコイル埋設体を容易に作成することができる。
一方、前記第2のセラミックスラリーに「メディアン粒径が比較的小さい磁性粉(第2粒径の磁性粉)」が混入されているので、前記閉磁路構成体(前記第2のセラミックスラリーが前記焼成工程にて焼成されることにより得られる部分)は相対的により緻密な(コイル埋設体よりも気孔率の小さい)セラミック焼成体となる。その結果、高透磁率(前記第1透磁率よりも大きい前記第2透磁率)を有する閉磁路構成体を容易に作成することができる。
本発明による他の1つの小型インダクタの製造方法(第2の製造方法)は、
(E)焼成前コイル埋設体作成工程と、(F)焼成前インダクタ作成工程と、(G)前記焼成前インダクタを焼成させる焼成工程と、を含む。
(E)前記焼成前コイル埋設体作成工程は、焼成前コイル埋設体を作成する工程であり、次の工程を含む。
(E1)焼成後に第1透磁率を有するように調整された材料からなるセラミックグリーンシートを複数枚準備する工程(セラミックグリーンシート準備工程)。
(E2)準備したセラミックグリーンシートの各々の上部に「所定の領域の周りを取り囲むパターンを有する」ように薄膜導体を形成する工程(薄膜導体形成工程)。
(E3)前記複数のセラミックグリーンシートを積層する(積層工程を実施する)とともに、積層方向において隣接する前記セラミックグリーンシート(積層方向において互いに隣接する二枚のセラミックグリーンシート)にそれぞれ形成されている前記薄膜導体同士を「ビアホール(ビアホール内の導体)を用いて電気的に接続する」ことにより、「渦巻き状に形成された導体からなるコイル」を作成する工程(コイル作成工程)。
(E4)前記所定の領域に貫通孔を形成する工程(貫通孔形成工程)。この貫通孔形成工程は、前記積層工程によって積層されたセラミックグリーンシートに対してパンチ加工等により貫通孔を設ける工程であってもよく、前記積層工程の前の段階において各セラミックグリーンシートに対しパンチ加工等によって貫通孔を形成しておく工程であってもよい。
この焼成前コイル埋設体作成工程は、従来の「積層型インダクタ」の製造方法に含まれる工程と同様な工程である。これによれば、セラミックグリーンシートを用いながら「焼成前コイル埋設体」を簡単に作成することができる。
(F)前記焼成前インダクタ作成工程は、焼成前インダクタを作成する工程であり、次の工程を含む。この焼成前インダクタ作成工程は、前述した第1の製造方法における焼成前インダクタ作成工程(C)と実質的に同じ工程を含む。
(F1)前記焼成前コイル埋設体を収容する空間を有する金型を準備する工程(金型準備工程)。前記金型の「焼成前コイル埋設体を収容する空間」は、前記焼成前コイル埋設体の外周部により画定される形状よりも大きな空間である。
(F2)前記金型内に前記焼成前コイル埋設体を配置する工程(焼成前コイル埋設体配置工程)。このとき、焼成前コイル埋設体と金型とが接することのないように、焼成前コイル埋設体を前記金型内に保持する。また、コイルは金型内に完全に収容される。
(F3)磁性粉を含むとともに「熱ゲル化特性又は熱硬化性」を有するセラミックスラリーであって、焼成後にその透磁率が「前記第1透磁率よりも大きい第2透磁率」となるように調整されたセラミックスラリー(上記第2セラミックスラリー)を前記金型内に注ぐことにより、前記焼成前コイル埋設体の外周部及び前記貫通孔に前記セラミックスラリーを存在させる工程(注型工程)。
(F4)前記金型内に注がれたセラミックスラリーが形状を維持するように(即ち、ゲル化又は熱硬化するように)、同セラミックスラリーを変化させる工程(硬化工程)。
この焼成前インダクタ作成工程によれば、ゲルキャスト成形法に基いて「焼成前閉磁路構成体(閉磁路構成体の焼成前構造体)」が作成される。従って、焼成前閉磁路構成体の乾燥途中において、焼成前閉磁路構成体が収縮しないから、焼成前閉磁路構成体にクラックが生じることがない。
そして、この工程により、前記焼成前コイル埋設体を焼成前閉磁路構成体に収容した「焼成前インダクタ」が作成され、続く焼成工程においてその焼成前インダクタが焼成させられる。従って、「前記コイル埋設体の外周部及び前記貫通孔」に第2透磁率を有する閉磁路構成体を容易に作成することができる。即ち、第2製造方法によっても、上述した構造を有する「本発明による小型インダクタ」を容易に作成することができる。
本発明の実施形態に係る小型インダクタの縦断面図(小型インダクタの軸線に沿って切断した断面図)である。 図1に示した小型インダクタの横断面図(小型インダクタの軸線に直交する平面にて切断した断面図)である。 図1に示したコイルの断面図である。 本発明に係る第1の製造方法(第1製造方法)において使用される第1金型の縦断面図である。 第1製造方法における焼成前コイル埋設体作成工程を説明するための図である。 第1製造方法の途中の段階にて作成される焼成前コイル埋設体の縦断面図である。 第1製造方法において使用される第2金型の縦断面図を含む図である。 第1製造方法の途中の段階にて作成される焼成前インダクタの縦断面図である。 第1製造方法により製造されたインダクタ(μ1/μ2=0.06)の特性を示したグラフである。 第1製造方法により製造されたインダクタ(μ1/μ2=0.19)の特性を示したグラフである。 第1製造方法により製造されたインダクタ(μ1/μ2=0.31)の特性を示したグラフである。 第1製造方法により製造されたインダクタ(μ1/μ2=0.63)の特性を示したグラフである。 第1製造方法により製造されたインダクタ(μ1/μ2=0.13)の特性を示したグラフである。 第1製造方法により製造されたインダクタ(μ1/μ2=0.25)の特性を示したグラフである。 第1製造方法により製造されたインダクタ(μ1/μ2=0.38)の特性を示したグラフである。 第1製造方法により製造されたインダクタ(μ1/μ2=0.75)の特性を示したグラフである。 本発明に係る第2の製造方法(第2製造方法)における焼成前コイル埋設体作成工程を説明するための図である。 第2製造方法の途中の段階にて作成される焼成前コイル埋設体の縦断面図である。 第2製造方法において使用される金型の縦断面図を含む図である。 第2製造方法の途中の段階にて作成される焼成前インダクタの縦断面図である。 第2製造方法により製造されたインダクタ(μ1/μ2=0.34)の特性を示したグラフである。 本発明の応用形態であるLCフィルタの透視斜視図である。 図22のCut線における断面図である。 図22において右側面を透視した場合における、1つのコイル形状を示した図である。 本発明の応用形態であるフェライトバーアンテナの透視斜視図である。 図25のCut線における断面図である。 従来の巻線型インダクタの断面図である。 従来の積層型インダクタの透視斜視図である 図28に示した積層型インダクタの断面図である 図28に示した積層型インダクタにおける磁束密度を示した図である。 磁気飽和が発生しないように工夫された従来の積層型インダクタの断面図である。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態に係る「小型インダクタ及び同小型インダクタの製造方法」について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る「小型インダクタ10」の縦断面図である。図2は、小型インダクタ10の横断面図である。小型インダクタ10は、コイル11と、コイル埋設体12と、閉磁路構成体13と、を備える。
コイル11は、渦巻き状に形成された導体からなる。従って、コイル11は略円筒形状を有する。本例において、コイル11は、断面が円形であってその直径が0.1mm(φ0.1mm)の銀(Ag)線からなる。即ち、コイル11は稠密な純金属から構成することができる。コイル11は中心軸周りに5ターン巻かれている。コイル11の表面はフェライト粒子分散樹脂からなる被膜により覆われている。その被膜の厚さは10μmである。
ここで、上記Ag線の断面形状は円形に限られず、楕円形、正方形、長方形等である場合を含む。特に、コイル11の軸線方向と平行な面にて導体(Ag線)の断面形状を見た場合、軸線方向の長さを、軸線方向に直交する長さよりも小さくすると、導線の間隔(ピッチ)を短くでき、結果として導体を高密度に巻回することができる。このため、少ない巻回数でインダクタンスを大きくすることができる点で有利である。
コイル埋設体12は、第1透磁率を有する多孔質のセラミック焼成体である。コイル埋設体12は略円筒形状を有する。コイル埋設体12の外周の直径はコイル11の外周の直径よりも大きい。コイル埋設体12内には、コイル11がコイル埋設体12と略同軸に配置されている。コイル埋設体12の中央部には、コイル埋設体12(及びコイル11)と同軸の「円柱状の貫通孔12a」が形成されている。貫通孔12aの直径はコイル11の内周の直径よりも小さい。このように、コイル埋設体12は、コイル11が埋設され、且つ、コイル11の内側においてコイル11の軸線(中心軸)に沿って貫通する貫通孔12aを備えたセラミック焼成体である。
閉磁路構成体13は、前記第1透磁率よりも大きい第2透磁率を有する緻密な(コイル埋設体12よりも緻密な、コイル埋設体12よりも気孔率の小さい)セラミック焼成体である。閉磁路構成体13は略直方体形状を有する。閉磁路構成体13の平面視における形状は略正方形であり、その正方形の一辺の長さはコイル埋設体12の外周の直径よりも大きい。なお、閉磁路構成体13は略円柱状形状を有していてもよい。この場合、閉磁路構成体13の外周の直径はコイル埋設体12の外周の直径よりも大きい。閉磁路構成体13の中央部には、コイル埋設体12と同形の空間が形成され、その空間にコイル埋設体12が配設(埋設)されている。換言すると、閉磁路構成体13内には、コイル埋設体12が閉磁路構成体13と略同軸に配置されている。
このように、閉磁路構成体13は、コイル埋設体12の外周部(コイル埋設体12の側面に隣接する外部、上面に隣接する外部、及び、下面に隣接する外部)に密に配設された部分13aと、コイル埋設体12の貫通孔12aに密に配設された部分13bと、を有する「コイル埋設体12を埋設したセラミック焼成体」である。
小型インダクタ10においては、閉磁路構成体13の透磁率(第2透磁率)はコイル埋設体12の透磁率(第1透磁率)よりも大きい。従って、コイル11に通電した際に形成される磁束の多くは、図1に破線により示したように、閉磁路構成体13の内部を通過する。このように、閉磁路構成体13は、コイル11に対して「空隙等の低透磁率からなる部分を有さない閉磁路(切断部のない閉磁路)」を構成する。
以上、説明したように、小型インダクタ10においては、コイル11の近傍に「第1透磁率を有するセラミック焼成体(コイル埋設体12からコイル11を除いた部分)」が配設され、その外側に「第1透磁率よりも大きい第2透磁率を有するセラミック焼成体(閉磁路構成体)13」が配設される。従って、コイル11に電流を流した場合、コイル11の近傍に形成される磁界の強度(磁束密度)が相対的に低下するので、磁気飽和が発生し難い。この結果、小型インダクタ10は、直流重畳特性の優れたインダクタとなっている。
加えて、コイル11に対する磁路は、主として「第2透磁率を有し、且つ、焼成により一体化された略緻密なセラミックの焼成体」からなる閉磁路構成体13内に形成される。よって、この磁路は、空隙等の低透磁率からなる部分を通過することのない閉磁路となっている。従って、コイル11の巻き数を多くしなくても、コイル11のインダクタンスを大きくすることができる。
この結果、小型インダクタ10は、小型であり、コイルの巻き数を少なくできるので抵抗が小さく、インダクタンスが大きく、且つ、磁気飽和が生じ難いので直流重畳特性に優れたインダクタとなっている。加えて、コイル11は「焼結金属ではなく」、通常の金属(稠密な純金属、本例において、銀)から形成されている。従って、小型インダクタ10は、抵抗が極めて小さいインダクタとなっている。
<第1製造方法>
次に、本発明の第1実施形態に係る「小型インダクタ10の製造方法(以下、「第1製造方法」と称呼する。)」について説明する。この第1製造方法は、
(A)渦巻き状に形成された導体からなるコイルを作成するコイル作成工程と、
(B)焼成前コイル埋設体を作成する焼成前コイル埋設体作成工程と、
(C)焼成前インダクタを作成する焼成前インダクタ作成工程と、
(D)焼成前インダクタを焼成させる焼成工程と、
を含む。以下、各工程について説明する。
(A)コイル作成工程
断面が円形であってその直径が0.1mm(φ0.1mm)の銀(Ag)線を準備する。次いで、この銀線を、フェライト粒子分散樹脂(分散樹脂)からなる膜(厚さ10μm)により被覆する。この分散樹脂に含まれる樹脂はポリエステルである。この分散樹脂に含まれるフェライト粒子の粒径は0.5μmである。このフェライト粒子は40体積%となるように分散樹脂に対して添加される。次に、その銀線を、図3に示したように、中心軸(軸線)C1周りに5ターン巻回し、コイル11を作成する。コイル11の直径(コイル径)L1は1.4mmである。なお、銀線の直径、コイル11のターン数(巻回数)及び直径、並びに、フェライト粒子分散樹脂の成分等は適宜変更され得る。
(B)焼成前コイル埋設体作成工程
焼成前コイル埋設体作成工程は、(B1)第1金型準備工程、(B2)コイル配置工程、(B3)第1注型工程、及び、(B4)第1硬化工程を含む。
(B1)第1金型準備工程
先ず、図4に示した第1金型21を準備する。第1金型21の外形は略円柱状である。第1金型21は、コイル11を収容する円柱状の凹部21aと、円柱状の柱状部21bと、を有する。柱状部21bは、凹部21a内において凹部21aと同軸となるように凹部21aの底面に立設されている。
凹部21aの直径L2は、コイル11の外径L1outよりも大きい。凹部21aの深さはコイル11の高さよりも大きい。即ち、凹部21aは、コイル11の形状(コイル11の外周部により画定される形状)よりも大きな空間であり、コイル11を収容することができる。柱状部21bの直径L3は、コイル11の内径L1inよりも小さい。柱状部21bの高さはコイルの高さよりも大きい。従って、柱状部21bは、コイル11の内側(内周側、中心軸C1を含む空間)を貫通することができる形状を有する。
(B2)コイル配置工程
コイル配置工程は、図5に示したように、柱状部21bがコイル11の内側を貫通するように、コイル11を第1金型21(凹部21a)内に配置する工程である。このとき、コイル11は凹部21aと同軸的に配置される。即ち、コイル11の中心軸C1と、凹部21a及び柱状部21bの中心軸C2と、が一致するように、コイル11が第1金型21内に収容される。このとき、コイル11が凹部21aの壁面(側壁面、底壁面)及び柱状部21bの壁面から所定距離だけ離間するように、コイル11が保持される。加えて、コイル11は凹部21a内に完全に収容させられる。
(B3)第1注型工程
先ず、第1のセラミックスラリーS1を準備する。第1のセラミックスラリーS1は、第1磁性粉を含むとともに「熱ゲル化特性又は熱硬化性」を有するセラミックスラリーであって、乾燥及び焼成後に「その透磁率が第1透磁率となるように調整されたセラミックスラリー」である。
本例において、第1のセラミックスラリーS1は次の要領に従って準備される。
第1磁性粉としてフェライト粉体を準備する。このフェライト粉体には、日本重化学工業社製のNi−Cu−Znフェライト(品番JR21(メディアン径0.8μm)、又は、品番JR07(メディアン径0.8μm))であって、そのメディアン径が0.5μmとなるように粒度調整されたものが使用される。
造孔剤を準備する。この造孔剤には、綜研化学社製のアクリル微粒子(品番MX−150、粒径1.5μm)が使用される。この造孔剤は、後の焼成工程(D)において消失する微粒子である。
次に、上記フェライト粉末及び上記造孔剤を、それぞれが25体積%及び20体積%となるようにしながら、ジルコニアボール、溶媒及び分散剤とともにボールミルに投入して混合する。このとき、ボールミルを80rpmにて24時間回転させる。
上記溶媒及び上記分散剤は以下の通りである。
・溶媒:トリアセチン及びグルタル酸ジメチルの混合物。トリアセチン及びグルタル酸ジメチルは、重量比で1:9とする。
・分散剤:上記溶媒100重量部に対して4.3重量部のマリアリム(商品名)。
上記ボールミルによる混合の結果として得られたスラリーに、以下に述べる樹脂、硬化剤及び触媒を加える。
・樹脂:上記溶媒100重量部に対して6.5重量部の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート。
・硬化剤:上記溶媒100重量部に対して0.38重量部のエチレングリコール。
・触媒:上記溶媒100重量部に対して0.05重量部の6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノール。
この結果、第1磁性粉を含むとともに「熱ゲル化特性又は熱硬化性(この場合、熱硬化性)」を有するセラミックスラリーであって、焼成後にその透磁率が第1透磁率となるように調整された第1のセラミックスラリーS1が準備される。
次いで、図5に示したように、第1のセラミックスラリーS1を第1金型21内(凹部21a)に注ぐ。なお、第1金型21の凹部21a及び柱状部21bの表面には離型剤を予め塗布しておく。以上が、第1注型工程である。
(B4)第1硬化工程
その後、第1のセラミックスラリーS1を第1金型21内に24時間保持する。この間に第1のセラミックスラリーS1はゲル化する。次に、ゲル化したスラリーS1を130℃の環境下に4時間放置することによって乾燥させる。これにより、ゲルが硬化した硬化体が作成される。その後、硬化した硬化体を第1金型21から取り出す(離型する)。即ち、第1硬化工程は、第1金型21内に注がれた第1のセラミックスラリーS1が形状を維持するように(即ち、ゲル化又は熱硬化するように)、第1のセラミックスラリーS1を変化させる工程である。
この結果、図6に示した「焼成前コイル埋設体12’(その後の焼成により前記コイル埋設体12となる構造体)」が作成される。焼成前コイル埋設体12’は、コイル11を埋設するとともに、貫通孔12a’(焼成後に貫通孔12aとなる孔)を備えている。なお、本例における焼成前コイル埋設体12’の所定部位の寸法は図6に記載したとおりである。
(C)焼成前インダクタ作成工程
焼成前インダクタ作成工程は、(C1)第2金型準備工程、(C2)焼成前コイル埋設体配置工程、(C3)第2注型工程、及び、(C4)第2硬化工程、を含む。
(C1)第2金型準備工程
図7に示した第2金型22を準備する。第2金型22は、焼成前コイル埋設体12’を収容する凹部22a(空間22a)を有する。凹部22aの形状は略直方体である。また、凹部22aの底面の形状は略正方形である。
凹部22aの底面の一辺の長さL4は、焼成前コイル埋設体12’の外径L2よりも大きい。凹部22aの深さは焼成前コイル埋設体12’の高さよりも大きい。即ち、焼成前コイル埋設体12’を収容するための空間22aは、焼成前コイル埋設体12’の外周部により画定される形状よりも大きな空間である。
(C2)焼成前コイル埋設体配置工程
焼成前コイル埋設体配置工程は、図7に示したように、第2金型22(凹部22a)内に焼成前コイル埋設体12’を配置する工程である。このとき、焼成前コイル埋設体12’は凹部22aと同軸的に配置される。即ち、コイル11及び焼成前コイル埋設体12’の中心軸C1と凹部22aの中心軸C3とが一致するように、焼成前コイル埋設体12’が凹部22a内に配置される。更に、この場合、凹部22aの各壁部と焼成前コイル埋設体12’とを所定の距離だけ離間させる。加えて、焼成前コイル埋設体12’は凹部22a内に完全に収容させられる。
(C3)第2注型工程
先ず、第2のセラミックスラリーS2を準備する。第2のセラミックスラリーS2は、第2磁性粉を含むとともに「熱ゲル化特性又は熱硬化性」を有するセラミックスラリーであって、焼成後にその透磁率が「前記第1透磁率よりも大きな第2透磁率」となるように調整されたセラミックスラリーである。
本例において、第2のセラミックスラリーS2は次の要領に従って準備される。
第2磁性粉としてフェライト粉体を準備する。このフェライト粉体には、日本重化学工業社製のNi−Cu−Znフェライト(品番JR21(メディアン径0.8μm)、又は、品番JR07(メディアン径0.8μm))であって、そのメディアン径が0.5μmとなるように粒度調整されたものが使用される。
次に、上記フェライト粉末を、40体積%となるようにしながら、ジルコニアボール、溶媒及び分散剤とともにボールミルに投入して混合する。このとき、ボールミルを80rpmにて24時間回転させる。
上記溶媒及び上記分散剤は以下の通りである。
・溶媒:トリアセチン及びグルタル酸ジメチルの混合物。トリアセチン及びグルタル酸ジメチルは、重量比で1:9とする。
・分散剤:上記溶媒100重量部に対して4.3重量部のマリアリム(商品名)。
上記ボールミルによる混合の結果として得られたスラリーに、以下に述べる樹脂、硬化剤及び触媒を加える。
・樹脂:上記溶媒100重量部に対して6.5重量部の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート。
・硬化剤:上記溶媒100重量部に対して0.38重量部のエチレングリコール。
・触媒:上記溶媒100重量部に対して0.05重量部の6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノール。
この結果、第2磁性粉を含むとともに「熱ゲル化特性又は熱硬化性(この場合、熱硬化性)」を有するセラミックスラリーであって、焼成後にその透磁率が第2透磁率となるように調整された第2のセラミックスラリーS2が準備される。
次いで、図7に示したように、第2のセラミックスラリーS2を第2金型22(凹部22a)内に注ぐ。なお、第2金型22の凹部22aの表面には離型剤を予め塗布しておく。この結果、焼成前コイル埋設体12’の外周部及び貫通孔12a’に第2のセラミックスラリーS2が密に存在させられる。以上が、第2注型工程である。
(C4)第2硬化工程
その後、第2のセラミックスラリーS2を第2金型22内に24時間保持する。この間に第2のセラミックスラリーS2はゲル化する。次に、ゲル化したスラリーS2を130℃の環境下に4時間放置することによって乾燥させる。これにより、ゲルが硬化した硬化体が作成される。その後、硬化した硬化体を第2金型22から取り出す(離型する)。即ち、第2硬化工程は、第2金型22内に注がれた第2のセラミックスラリーS2が形状を維持するように(即ち、ゲル化又は熱硬化するように)、第2のセラミックスラリーS2を変化させる工程である。
この結果、図8に示した「コイル11を埋設した焼成前コイル埋設体12’、及び、焼成前コイル埋設体12’を内部に収容した焼成前閉磁路構成体13’」からなる焼成前インダクタ10’が作成される。なお、本例における焼成前閉磁路構成体13’の所定部位の寸法は図8に記載したとおりである。
(D)焼成前インダクタを焼成させる焼成工程
次に、上記のようにして作成された焼成前インダクタ10’を炉内に置き、その環境温度(炉内温度)を50℃/hの温度上昇率にて500℃にまで上昇させ、その後、環境温度(炉内温度)を500℃に維持して2時間放置する。これにより、焼成前インダクタ10’の脱脂が行われる。
次に、環境温度(炉内温度)を、500℃から950℃にまで15分間にて迅速に上昇させ、次いで、環境温度(炉内温度)を950℃に維持して2時間放置する。この結果、焼成前インダクタ10’が焼成される。即ち、焼成前コイル埋設体12’は第1透磁率を有する多孔質のセラミック焼成体へと変化し、焼成前閉磁路構成体13’は第2透磁率を有する略緻密なセラミック焼成体へと変化する。従って、図1及び図2に示した小型インダクタ10が製造される。その後、接続端子等を作成する。接続端子は、例えば、Agペーストを600℃で30分の条件にて小型インダクタ10に焼き付けることにより形成される。
以上、説明したように、第1製造方法によれば、「熱ゲル化特性又は熱硬化性」を有するセラミックススラリーを用いるゲルキャスト成形によって「焼成前コイル埋設体12’」が作成される。ゲルキャスト成形においては、乾燥前の構造体が乾燥する際、その構造体が収縮し難い。従って、剛体であるコイル11を含む焼成前コイル埋設体12’を、クラックが発生しないようにしながら、容易且つ確実に製造することができる。
更に、第1製造方法によれば、コイル11の近傍に相対的に低透磁率体(第1透磁率を有するコイル埋設体12)が存在し、その低透磁率体を囲むように高透磁率体(第2透磁率を有する閉磁路構成体13)が存在するインダクタ10が、一度の焼成によって提供される。従って、簡素な製造工程により高性能な小型インダクタ10を製造することができる。
加えて、第1のセラミックスラリーS1は、「第1のセラミックスラリーS1が焼成工程にて焼成されることにより得られる部分が多孔質体となるように機能する造孔剤」を含む。従って、コイル埋設体12を多孔質体とすることができるので、コイル埋設体12の透磁率を閉磁路構成体13の透磁率よりも容易に小さくすることができる。
なお、第1のセラミックスラリーS1は、第1のセラミックスラリーS1が焼成工程にて焼成されることにより得られる部分が多孔質体となるように、メディアン径が第1粒径に調整された磁性粉(フェライト粒子)を前記第1磁性粉として含み、
前記第2のセラミックスラリーS2は、第2のセラミックスラリーS2が焼成工程にて焼成されることにより得られる部分が緻密体(第1のセラミックスラリーS1が焼成工程にて焼成されることにより得られる部分よりも気孔率が小さい略緻密体)となるように、メディアン径が前記第1粒径よりも小さい第2粒径に調整された磁性粉(フェライト粒子)を前記第2磁性粉として含むことができる。
これによっても、コイル埋設体12を気孔率が比較的高い多孔質体とすることができるので、コイル埋設体12の透磁率を閉磁路構成体13の透磁率よりも容易に小さくすることができる。
更に、メディアン径がセラミックスラリーS2に含まれる磁性粉のメディアン径よりも小さい磁性粉を第1のセラミックスラリーS1に混合するとともに、前述した造孔剤を第1のセラミックスラリーS1に混入させておいてもよい。
加えて、上記第1製造方法においては、脱脂後の焼成前インダクタ10’を焼成するにあたり、炉内温度を、500℃から950℃にまで15分間という短時間内に上昇させている(昇温速度=450℃/15分)。このように焼成時における温度を制御することにより、コイル埋設体12内のコイル11近傍にクラックが発生することをより確実に回避することができる。以下、この理由について述べる。
一般に、セラミックの焼成を行う場合、炉内温度は、脱脂温度500℃から焼成温度900℃まで5時間程度をかけて除々に上昇させられる。この間、例えば、温度が700℃程度になった時点から焼結が除々に開始・進行する。一方、コイル11は銀等の導体金属から形成されていて、その融点は900℃よりも高い(例えば、銀の場合960℃)。従って、従来のようにセラミックを焼成すると、剛体であるコイル11によってセラミックの焼成に伴う収縮が阻害され、セラミックが焼結を開始した初期にセラミックにクラックが発生する。
これに対し、上記第1製造方法のように温度を制御すると(即ち、急速昇温すると)、セラミックの焼結が開始する時点においてコイル11の温度が銀の融点近くに達していて、コイル11の硬度が低下する。この結果、セラミックの焼結開始後においてセラミックに大きな応力が加わることがない。よって、セラミックにクラックが生じない。
このように、第1製造方法の上記焼成工程は、「焼成前インダクタ10’(特に、焼成前コイル埋設体12’)の焼結(緻密化)開始時又は開始直後において、コイル11の温度がそのコイル11を構成する金属の融点近傍の温度に到達するように、焼成前インダクタ10’の温度を制御する工程(その焼成温度にまで急速に上昇させる温度制御工程)である。」ということもできる。
なお、焼成前インダクタ10’(特に、焼成前コイル埋設体12’)の焼結(緻密化)開始時におけるセラミック(焼成前インダクタ10’)の破壊強度を高めるために、第1スラリーS1のセラミック粉末の充填度を従来の32体積%程度から54体積%程度にまで増大させておいてもよい。
表1及び表2は、コイル埋設体12の透磁率(第1透磁率μ1)、閉磁路構成体13の透磁率(第2透磁率μ2)及びコイル埋設体12の厚さtを種々の値に変化させながら、第1製造方法に基づいて製造した小型インダクタ、の評価結果を示す。
これらの小型インダクタは、「第2透磁率μ2に対する第1透磁率μ1の比(μ1/μ2)が6〜88%の範囲において変化するように」製造された。より具体的には、比(μ1/μ2)は、第2透磁率μ2を一定(160又は80)に維持し、且つ、第1透磁率μ1を変更することにより調整された。第1透磁率μ1は、コイル埋設体12の相対密度ρ1を後述するように変化させることにより調整された。相対密度は、周知のアルキメデス法によって求めた実際の部材の密度を、その部材の理論密度により除した値である。なお、表1に示された総てのサンプルのコイル埋設体12及び閉磁路構成体13に使用されたフェライト粉体は、Ni−Cu−Znフェライト(日本重化学工業社製の品番JR21)である。表2に示された総てのサンプルのコイル埋設体12及び閉磁路構成体13に使用されたフェライト粉体は、別のNi−Cu−Znフェライト(日本重化学工業社製の品番JR07)である。
なお、透磁率は直接計測することができない。そこで、コイル埋設体12又は閉磁路構成体13と同じ相対密度を有し、それらのそれぞれを構成する粒子の粒径と同じ粒径を有するバルクの透磁率を測定することにより、第1透磁率μ1又は第2透磁率μ2を求めた。より具体的に述べると、そのようなバルクを外径16.5mm、内径5.0mm、厚さ4.2mのトロイダル形状(環状)に加工し、次いで、LCRメータ(アジレント社製4285A,磁性材料測定電極1645A)を用いてその加工したバルクの1MHzにおけるインダクタンスを測定し、その測定したインダクタンスに基いて比透磁率を計算により求め、その比透磁率から第1透磁率μ1又は第2透磁率μ2を推定した。
コイル埋設体12の相対密度ρ1は、上述した造孔剤であるアクリル微粒子の添加量を調整することにより変化させた。より具体的に述べると、上記第1のセラミックスラリーS1を準備する際に用いた「上記フェライト粉末及び上記造孔剤」の合計が常に45体積%になるようにしながら、上記フェライト粉末を「25体積%(このときの上記造孔剤の量は20体積%である。)〜40体積%(このときの上記造孔剤の量は5体積%である。)」において変化させることにより、コイル埋設体12の相対密度(従って、第1透磁率μ1)を調整した。
コイル埋設体12の厚さtは、コイル11の外側端部(外周)からコイル埋設体12の外側端部(外周)までの距離であり、且つ、コイル11の内側端部からコイル埋設体12の内側端部(貫通孔12a)までの距離である(図6及び図8を参照。)。この厚さtは、図4に示した第1金型21の距離L2及び距離L3を調整することにより変更した。
図9乃至図12は、表1に示したサンプル1〜12についての直流重畳特性を調べた結果を示したグラフである。図13乃至図16は、表2に示したサンプル21〜32についての直流重畳特性を調べた結果を示したグラフである。大きな直流電流Idcを流した場合にインダクタンスLが大きいサンプルほど、直流重畳特性は良好であるということができる。表1及び表2の評価結果は、この視点に基づいている。表1及び表2において、「×」は参照品(表1のサンプル16及び表2のサンプル36、即ち、リファレンス)に比較して良好な直流重畳特性を示さなかったこと、「○」は参照品よりも良好な直流重畳特性を示したこと、「△」は参照品と同等の直流重畳特性を示したこと、を表す。なお、参照品は、コイル埋設体と閉磁路構成体とを区別することなく、コイル11を第2透磁率μ2を有する磁性体に埋設させたインダクタである。これらの参照品の外形形状は他のサンプルと同じである。
Figure 2010192890
Figure 2010192890
これらから理解されるように、第2透磁率(μ2)に対する第1透磁率(μ1)の比(μ1/μ2)が0.19以上であって且つ0.75以下であるインダクタのインダクタンスは、インダクタに流れる直流電流を増大させたとき、参照品のインダクタンスよりも大きくなった(図10〜図12、及び、図14〜図16を参照。)。即ち、比(μ1/μ2)が0.19以上であって且つ0.75以下であると、直流重畳特性が参照品よりも良好なインダクタが得られることが確認された。換言すると、閉磁路構成体13の相対密度(ρ2)に対するコイル埋設体12の相対密度(ρ1)の比(ρ1/ρ2)が0.73以上であって且つ0.92以下であれば、直流重畳特性に優れた小型インダクタを製造することができた。
これに対し、図9に示したように比(μ1/μ2)が0.06である場合、及び、図13に示したように比(μ1/μ2)が0.13である場合、インダクタを流れる直流電流Idcを増大させても、インダクタンスが参照品のインダクタンスを越えることはなかった。更に、表1に示したように比(μ1/μ2)が0.81である場合、及び、表2に示したように比(μ1/μ2)が0.88である場合、コイル11の周辺にクラックが発生し、インダクタを測定することができなかった。
加えて、表1及び表2に示されていないが、コイル埋設体12の厚さ(t)が30μm未満であると、コイル埋設体12及び閉磁路構成体13にクラックが発生し、インダクタを測定することができなかった。更に、表1及び表2に示されていないが、コイル埋設体12の厚さ(t)が100μmよりも大きいと、インダクタンスが大きく低下した。これは、閉磁路構成体とコイルとの距離が過大となって、閉磁路構成体中を通過する磁束が低下するからであると推定される。以上から、コイル埋設体12の厚さ(t)は30μm以上であって100μm以下であることが好ましい。
なお、コイル埋設体12となる第1のセラミックスラリーS1の材料粉末の粒径を変更することによりコイル埋設体12の相対密度を変更した場合(第1透磁率μ1を変更した場合)にも、上記と同様の結果が確認された。
<第2製造方法>
次に、本発明の第2実施形態に係る「小型インダクタ10の製造方法(以下、「第2製造方法」と称呼する。)」について説明する。この第2製造方法は、(E)焼成前コイル埋設体作成工程と、(F)焼成前インダクタ作成工程と、(G)焼成前インダクタを焼成させる焼成工程と、を含む。以下、各工程について説明する。
(E)焼成前コイル埋設体作成工程
この焼成前コイル埋設体作成工程は、セラミックグリーンシートを用いて焼成前コイル埋設体を作成するための工程であり、(E1)セラミックグリーンシート準備工程、(E2)薄膜導体形成工程、(E3)コイル作成工程(積層工程を含む)、及び、(E4)貫通孔形成工程、を含む。但し、貫通孔形成工程(E4)は、(E3)コイル作成工程の積層工程により得られた「積層されたセラミックグリーンシート」にパンチ加工等により貫通孔を設ける工程であってもよく、(E3)コイル作成工程の積層工程の前に各セラミックグリーンシートに対しパンチ加工等によって貫通孔を形成しておく工程であってもよい。
(E1)セラミックグリーンシート準備工程
図17に示したように、セラミックグリーンシート31を複数毎準備する。セラミックグリーンシート31は、ファライト粒子を含む材料から形成される。セラミックグリーンシート31は略長方形状を有する薄板体である。セラミックグリーンシート31に含まれるフェライト粒子は、セラミックグリーンシート31の焼成後に形成されるセラミックが第1透磁率を有するように調整される。
(E2)薄膜導体形成工程
図17に示したように、薄膜導体32を印刷等によって形成する。薄膜導体32は、準備したセラミックグリーンシート31の各々の上部に「図17に破線により示した所定の領域Aの周りを取り囲む所定パターン」を有するように形成される。本例において、前記所定パターンは、長方形のセラミックグリーンシート31の隣接する二辺に沿って直角に折れ曲がる形状を有する。なお、次の積層工程にて積層されるセラミックグリーンシート31のうち、最も上に位置することになるセラミックグリーンシートと最も下に位置することになるセラミックグリーンシートには、端子部32aに相当するパターンも形成しておく。なお、薄膜導体32は、セラミックグリーンシート31の上部に形成され且つその薄膜導体32の上面(露呈面)とセラミックグリーンシート31の上面とが同一平面となるように形成されてもよい。
(E3)コイル作成工程
次に、薄膜導体32が形成された複数のセラミックグリーンシート31を積層し且つ圧着することにより積層体を作成する。このとき、隣接する二枚のセラミックグリーンシート31をセラミックグリーンシート31の上面に直交する方向から透視した場合、二つの薄膜導体32が所定の領域Aを取り囲む閉曲線を描くように、セラミックグリーンシート31を積層する。この工程を積層工程とも称呼する。更に、積層方向において隣接するセラミックグリーンシート31(積層方向において互いに隣接する二枚のセラミックグリーンシート31,31)にそれぞれ形成されている薄膜導体32,32同士を「ビアホール」を用いて電気的に接続する(図17の破線の矢印を参照。)。これにより、「渦巻き状に形成された導体からなるコイル」が作成される。このビアホールを用いた接続は、例えば、セラミックグリーンシート31の所定位置(薄膜導体32の下方)にビアホールを形成し、そのビアホールに薄膜導体32と同じ材質からなる金属を充填しておくことによりなされ得る。
(E4)貫通孔形成工程
図18に示したように、その積層体の所定の領域Aに「打ち抜き加工」により貫通孔33a’を形成する。この結果、略直方体の焼成前コイル埋設体33’が作成される。
(F)焼成前インダクタ作成工程
この焼成前インダクタ作成工程は、前述した第1製造方法における焼成前インダクタ作成工程(C)と実質的に同じ工程を含む。即ち、焼成前インダクタ作成工程は、(F1)金型準備工程、(F2)焼成前コイル埋設体配置工程、(F3)注型工程、及び、(F4)硬化工程を含む。
(F1)金型準備工程
図19に示した金型41を準備する。金型41は、焼成前コイル埋設体33’を収容する凹部41a(空間41a)を有する。凹部41aの形状は、焼成前コイル埋設体33’の形状と相似形の略直方体である。凹部41aは、焼成前コイル埋設体33’の外周部により画定される形状よりも大きな空間である。
(F2)焼成前コイル埋設体配置工程
金型41内に焼成前コイル埋設体33’を配置する。このとき、焼成前コイル埋設体33’は凹部41aと同軸的に配置される。更に、この場合、凹部41aの各壁部と焼成前コイル埋設体33’とを所定の距離だけ離間させる。即ち、焼成前コイル埋設体33’と金型41とが接することのないように、焼成前コイル埋設体33’を金型41内に保持する。加えて、焼成前コイル埋設体33’は凹部41a内に完全に収容させられる。
(F3)注型工程
先ず、セラミックスラリーSを準備する。このセラミックスラリーSは、上述した第2のセラミックスラリーS2と同様にして準備される。従って、セラミックスラリーSは、磁性粉を含むとともに「熱ゲル化特性又は熱硬化性」を有するセラミックスラリーであって、焼成後にその透磁率が「前記第1透磁率よりも大きい第2透磁率」となるように調整されたセラミックスラリーである。
次いで、図19に示したように、セラミックスラリーSを金型41(凹部41a)内に注ぐ。なお、金型41の凹部41aの表面には離型剤を予め塗布しておく。この結果、焼成前コイル埋設体33’の外周部及び貫通孔33a’にセラミックスラリーSが密に存在させられる。以上が、注型工程である。
(F4)硬化工程
その後、上述した第2硬化工程と同様に、セラミックスラリーSを金型41内に24時間保持する。この間にセラミックスラリーSはゲル化する。次に、ゲル化したスラリーSを130℃の環境下に4時間放置することによって乾燥させる。これにより、ゲルが硬化した硬化体が作成される。その後、硬化した硬化体を金型41から取り出す(離型する)。即ち、この硬化工程は、金型41内に注がれたセラミックスラリーSが形状を維持するように(即ち、ゲル化又は熱硬化するように)、セラミックスラリーSを変化させる工程である。
この結果、図20に示した「焼成前コイル埋設体33’、及び、焼成前コイル埋設体33’を内部に収容した焼成前閉磁路構成体34’」からなる焼成前インダクタ35’が作成される。
(G)焼成前インダクタを焼成させる焼成工程
次に、上述した焼成工程(D)に記載した条件と同様な条件又は従来と同様の条件(脱脂温度500℃から焼成温度900℃まで5時間程度をかけて除々に上昇させる条件)にて、焼成前インダクタ35’を焼成する。この結果、図1に示した小型インダクタ10と同様な小型インダクタ(コイル32、コイル埋設体33及び閉磁路構成体34を備えるインダクタ35)が作成される。この小型インダクタ35の形状は略直方体であり、コイル32は薄板状の焼結金属からなる。
表3は、第2製造方法に基づいて製造した小型インダクタの評価結果を示す。コイル埋設体33の透磁率(第1透磁率μ1)は、コイル埋設体33の相対密度ρ1を調整することにより変更した。表3に示したサンプル1において、「閉磁路構成体34の透磁率である第2透磁率μ2に対する第1透磁率μ1の比(μ1/μ2)」は、0.34であった。このとき、閉磁路構成体34の相対密度ρ2に対するコイル埋設体33の相対密度ρ1の比(ρ1/ρ2)は、0.85であった。なお、第1透磁率μ1及び第2透磁率μ2は、前述した方法と同様、バルクの値から算出した。更に、コイル埋設体33の相対密度ρ1は、上述した造孔剤であるアクリル微粒子の添加量により変化させた。より具体的に述べると、セラミックグリーンシート31を作成するためのスラリーにおいて、フェライト粉末に対する造孔剤の量を25体積%とした。表3のサンプル2は参照品である。この参照品は、コイル埋設体と閉磁路構成体とを区別することなく、コイル32を第2透磁率μ2を有する磁性体に埋設させたインダクタである。この参照品の外形形状は表3のサンプル1と同じである。
Figure 2010192890
図21は表3に示したサンプル1及びサンプル2のインダクタンスLを示したグラフである。図21及び表3からも明らかなように、サンプル1のインダクタンスは、インダクタに流れる直流電流Idcを大きくしたとき、サンプル2(参照品)のインダクタンスより大きくなった。即ち、第2製造方法によっても、直流重畳特性に優れた小型インダクタが得られることが確認された。
以上、説明したように、第2製造方法によれば、従来の「積層型インダクタ」の製造方法に含まれる工程と同様な工程を含む「(E)焼成前コイル埋設体作成工程」により、セラミックグリーンシートを用いながら「焼成前コイル埋設体33’」を簡単に作成することができる。
更に、第2製造方法においても、焼成前インダクタ作成工程(F)においてゲルキャスト成形法が用いられることにより焼成前閉磁路構成体34’が作成される。従って、焼成前閉磁路構成体34’の乾燥途中において、焼成前閉磁路構成体34’が収縮しないから、焼成前閉磁路構成体34’にクラックが生じることがない。そして、焼成前コイル埋設体33’を焼成前閉磁路構成体34’に収容した「焼成前インダクタ35’」が焼成工程(G)において焼成させられる。従って、「コイル埋設体の外周部及び貫通孔」に第2透磁率を有する略緻密な閉磁路構成体を容易に作成することができる。即ち、第2製造方法によっても、上述した構造を有する「本発明による小型インダクタ」を容易に作成することができる。
以上、本発明による小型インダクタ及び小型インダクタの製造方法の実施形態について説明した。これによれば、高性能の小型インダクタを簡単な方法にて製造することができる。なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、コイル11は、その渦巻きが伸びる方向(軸線方向)に直交する平面にて切断した断面形状が円である場合に限らず、楕円、正方形及び長方形等であってもよい。換言すると、渦巻き状に形成された導体の外形形状は、円柱形状に限られず、直方体形状及び円錐台形状等であってもよい。「渦巻き状」は「螺旋状」も含む。
ところで、本願に記載された製造方法によって作製された、所定の断面積、形状(例えばコイル状)に加工された純金属ワイヤからなる導体がフェライト中に埋設された物品は、次に挙げるような製品にも応用できる。
<LCフィルタ>
積層コンデンサと積層インダクタを同時焼成により複合化した、LCフィルタと呼ばれる製品がある。このインダクタ部分を、本願に記載された製造方法によって、純金属ワイヤの埋設により形成することで、導体表面の凹凸を小さくすることができる(導体表面を滑らかにすることができる)。よって、マイクロ波領域(高周波領域)で使用した場合、電流が導体表面に集中すること(表皮効果)による損失を少なくすることができる。また、導体ペーストなどによって形成される焼結導体と比較して、純金属のコイルはフラックス等の混入物や気孔が存在せずに稠密であるため、低抵抗化が図れる。またさらに、インダクタ部分の純金属ワイヤ端部をコンデンサ部にはみ出させた構造とすることで、コンデンサ部分とインダクタ部分の界面の接合強度が、アンカー効果によって増大し、素子の信頼性が増す点で好ましい。
LCフィルタへの応用について実施形態を図22〜20に示す。なお、ここで図示されたものは一例であり、実施形態がこれに限定されることはない。
図22の128は本発明のLCフィルタの透視斜視図であり、コンデンサ部129とインダクタ部130、及び端子131、を備えている。
図23は図22のCut線における断面図である。コンデンサ部129に導体132が、インダクタ部130にコイル状に形成された金属ワイヤ133が形成されている。そして、金属ワイヤ133の端部134がコンデンサ部129に突き出している。
図24は図22の右側面を透視した方向からの1つのコイル形状を示した図である。コイルの端部134が上方向(コンデンサ部の方向)へ突き出している。この突き出し部134によって、コンデンサ部とインダクタ部との接合強度が増大する。
<近距離無線用フェライトバーアンテナ>
本願に記載された製造方法によれば、コイルの一部がフェライトに埋設された形態を作製することができる。この形態による利点として、例えば、フェライトのバー(棒)に導線を巻きつけたアンテナにおいて、コイルの一部をフェライトに埋設させることで、埋設された面だけ磁束を閉磁路構造とすることができる。これにより、指向性の高いアンテナとして利用することができる。また、磁束が放射される面を凹部に湾曲させることで、指向性に加えて感度も大きくすることができる。この形態の応用例としては、RFID(電磁波を用いた非接触の自動認識技術の総称)などの近距離無線用の他に電波時計などの長波受信用やAM/FMアンテナ等が挙げられる。
アンテナへの応用について実施形態を図25〜図26に示す。なお、ここで図示されたものは一例であり、実施形態がこれに限定されることはない。
図25の135は本発明のフェライトバーアンテナの透視斜視図であり、フェライト部136と、コイル部137と、を備えている。
コイル部137は導線を数十〜数千回巻回したコイルであり、その端部138が外部に露出している。
図26は図25のCut線における断面図であり、コイル137の一部がフェライト部136に埋設されている。コイル外周にあるフェライト部136とコイル137とを密着させることで、密着側の磁束を閉じこめている。本実施例の場合、コイル137の円周長さの25%が埋設されているが、埋設されている割合が10%より小さくなると、磁束の閉じこめ効果が小さくなる。また、50%より大きくなると、外部に放射される磁束が少なくなるので、10%以上50%以下の範囲でフェライト部136に埋設されていることが望ましい。
また、コイル内にあるフェライト部(コア部)139と、コイル外にあるフェライト部136の透磁率を異なったものとしても良い。
<Bluetooth用アンテナ>
誘電体の中にコイル状に導体を形成したアンテナにおいて、本願に記載された製造方法によって作製される純金属ワイヤが埋設された形態によれば、導体表面の凹凸を小さくすることができる(導体表面を滑らかにすることができる)。よって、マイクロ波領域(高周波領域)で使用した場合、電流が導体表面に集中すること(表皮効果)による損失を少なくすることができる。また、導体ペーストなどによって形成される焼結導体と比較して、純金属のコイルはフラックス等の混入物や気孔が存在せずに稠密であるため、低抵抗化が図れる。更に、導体コイルを予め形成しておくことができるため、コイルの断面形状(円形、長方形等)や長手方向の形状(直線以外の形状)を任意に変化させることができ、設計の自由度が向上する。導体が埋設されるセラミックスとしては、誘電体の他に、磁性体を用いても良い。何れにおいても、波長短縮効果によりアンテナを小さくできるという利点も持つ。
<ダイプレクサ/デュプレクサ>
誘電体の中に導体が平板状に形成されたコンデンサ部と、コイル状に形成されたインダクタ部が一体化されたダイプレクサ/デュプレクサにおいて、本願に記載された製造方法によれば、コイル部に純金属ワイヤを用いることが可能なので、導体表面の凹凸を小さくすることができる(導体表面を滑らかにすることができる)。よって、マイクロ波領域(高周波領域)で使用した場合、電流が導体表面に集中すること(表皮効果)による損失を少なくすることができる。また、インダクタ部の誘電体の代わりに磁性体を用いると大きいインダクタンスが得られるため、結果として大幅に小型化することができる。
10…小型インダクタ、10’…焼成前インダクタ、11…コイル、12…コイル埋設体、12a…貫通孔、12’…焼成前コイル埋設体、13…閉磁路構成体、13’…焼成前閉磁路構成体、21…第1金型、21a…凹部、21b…柱状部、22…第2金型、22a…凹部、31…セラミックグリーンシート、32…薄膜導体、33’…焼成前コイル埋設体、33a’…貫通孔、34…焼成前閉磁路構成体、35…小型インダクタ、35’…焼成前インダクタ、41…金型、41a…凹部、100…巻線型インダクタ、101…コア、102…コイル、110…積層型インダクタ、111…磁性体、112…コイル、120…積層型インダクタ、121…第1外装体、122…樹脂層、123…中間体、124…樹脂層、125…第2外装体、126…コア、127…コイル導体、128…LCフィルタ、129…コンデンサ部、130…インダクタ部、131…端子、132…導体、133…コイル、134…コイル端部、135…フェライトバーアンテナ、136…フェライト部、137…コイル、138…コイル端部、139…コア。

Claims (9)

  1. 渦巻き状に形成された導体からなるコイルと、
    第1透磁率を有するセラミック焼成体であって前記コイルが埋設され且つ前記コイルの内側において前記コイルの軸線に沿って貫通する貫通孔が形成されたコイル埋設体と、
    前記第1透磁率よりも大きい第2透磁率を有するとともに前記コイル埋設体の外周部及び前記貫通孔に密に配設され、前記コイル埋設体を埋設することにより前記コイルに対する切断部のない閉磁路を構成するように形成されたセラミック焼成体からなる閉磁路構成体と、
    を備えた小型インダクタ。
  2. 請求項1に記載の小型インダクタにおいて、
    前記コイル埋設体はセラミックの多孔質体からなることを特徴とする小型インダクタ。
  3. 請求項1に記載の小型インダクタにおいて、
    前記第2透磁率(μ2)に対する前記第1透磁率(μ1)の比(μ1/μ2)が0.19以上であって且つ0.75以下であることを特徴とする小型インダクタ。
  4. 請求項1に記載の小型インダクタにおいて、
    前記コイル埋設体及び前記閉磁路構成体は互いに同一種類であって且つ同一粒径の磁性粉を分散させたセラミックの多孔質体であり、
    理論密度に対する実際の密度の比を相対密度と定義するとき、
    前記閉磁路構成体の相対密度(ρ2)に対する前記コイル埋設体の相対密度(ρ1)の比(ρ1/ρ2)が0.73以上であって且つ0.92以下であることを特徴とする小型インダクタ。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の小型インダクタにおいて、
    前記コイルの外側端部から前記コイル埋設体の外側端部までの距離及び前記コイルの内側端部から前記コイル埋設体の内側端部までの距離は互いに等しく、その距離である前記コイル埋設体の厚さ(t)が30μm以上であって100μm以下であることを特徴とする小型インダクタ。
  6. 小型インダクタの製造方法であって、
    渦巻き状に形成された導体からなるコイルを作成するコイル作成工程と、
    前記コイルを収容する凹部と、前記凹部内に立設され且つ前記コイルの内側を貫通することができる形状を有する柱状部と、を有する第1金型を準備し、前記柱状部が前記コイルの内側を貫通するように前記コイルを前記第1金型内に配置し、第1磁性粉を含むとともに熱ゲル化特性又は熱硬化性を有するセラミックスラリーであって焼成後にその透磁率が第1透磁率となるように調整された第1のセラミックスラリーを前記第1金型内に注ぎ、その後、前記第1金型内に注がれた第1のセラミックスラリーが形状を維持するように同第1のセラミックスラリーを変化させることにより、前記コイルを埋設するとともに同コイルの内側に前記柱状部により形成された貫通孔を備える焼成前コイル埋設体を作成する焼成前コイル埋設体作成工程と、
    前記焼成前コイル埋設体を収容する空間を有する第2金型を準備し、前記第2金型内に前記焼成前コイル埋設体を配置し、第2磁性粉を含むとともに熱ゲル化特性又は熱硬化性を有するセラミックスラリーであって焼成後にその透磁率が前記第1透磁率よりも大きい第2透磁率となるように調整された第2のセラミックスラリーを前記第2金型内に注ぐことにより前記焼成前コイル埋設体の外周部及び前記貫通孔に前記第2のセラミックスラリーを存在させ、その後、前記第2金型内に注がれた第2のセラミックスラリーが形状を維持するように同第2のセラミックスラリーを変化させることにより、焼成前インダクタを作成する焼成前インダクタ作成工程と、
    前記焼成前インダクタを焼成させる焼成工程と、
    を含む小型インダクタの製造方法。
  7. 請求項6に記載の小型インダクタの製造方法において、
    前記第1のセラミックスラリーは、
    前記第1のセラミックスラリーが前記焼成工程にて焼成されることにより得られる部分が多孔質体となるように機能する造孔剤を含むことを特徴とする小型インダクタの製造方法。
  8. 請求項6又は請求項7に記載の小型インダクタの製造方法において、
    前記第1のセラミックスラリーは、
    前記第1のセラミックスラリーが前記焼成工程にて焼成されることにより得られる部分が多孔質体となるように、メディアン粒径が第1粒径に調整された磁性粉を前記第1磁性粉として含み、
    前記第2のセラミックスラリーは、
    前記第2のセラミックスラリーが前記焼成工程にて焼成されることにより得られる部分が緻密体となるように、メディアン粒径が前記第1粒径よりも小さい第2粒径に調整された磁性粉を前記第2磁性粉として含むことを特徴とする小型インダクタの製造方法。
  9. 小型インダクタの製造方法であって、
    焼成後に第1透磁率を有するように調整された材料からなるセラミックグリーンシートを複数枚準備し、各セラミックグリーンシートにおいて所定の領域の周りを取り囲むパターンを有するように薄膜導体を形成し、前記複数のセラミックグリーンシートを積層することにより積層体を作成するとともにその積層方向において隣接する前記セラミックグリーンシートに形成されている前記薄膜導体同士をビアホールを用いて電気的に接続することにより渦巻き状に形成された導体からなるコイルを作成し、且つ、前記所定の領域に貫通孔を形成する、焼成前コイル埋設体作成工程と、
    前記焼成前コイル埋設体を収容する空間を有する金型を準備し、前記金型内に前記焼成前コイル埋設体を配置し、磁性粉を含むとともに熱ゲル化特性又は熱硬化性を有するセラミックスラリーであって焼成後にその透磁率が前記第1透磁率よりも大きい第2透磁率となるように調整されたセラミックスラリーを前記金型内に注ぐことにより前記焼成前コイル埋設体の外周部及び前記貫通孔に前記セラミックスラリーを存在させ、その後、前記金型内に注がれたセラミックスラリーが形状を維持するように同セラミックスラリーを変化させることにより、焼成前インダクタを作成する焼成前インダクタ作成工程と、
    前記焼成前インダクタを焼成させる焼成工程と、
    を含む小型インダクタの製造方法。
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