JP2010179539A - 液体噴射装置及び液体噴射ヘッドの駆動方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】吐出される液滴の尾部を縮小させて、高速吐出を行わせることができると共に、吐出安定性を向上した液体噴射装置及び液体噴射ヘッドの駆動方法を提供する。
【解決手段】液体を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室と、該圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧力発生手段とを具備する液体噴射ヘッドと、前記圧力発生手段に、前記圧力発生室を膨張させる膨張要素P01と、前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液体を吐出させる収縮要素P03、P07と、前記収縮要素P03、P07の途中に、前記圧力発生室を膨張させる再膨張要素P05とを具備する駆動信号を供給する駆動手段と、を具備し、前記再膨張要素P05を、前記ノズル開口における2つの異なる位相を持つメニスカスの振動が逆位相となっていない状態で開始する。
【選択図】 図4
【解決手段】液体を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室と、該圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧力発生手段とを具備する液体噴射ヘッドと、前記圧力発生手段に、前記圧力発生室を膨張させる膨張要素P01と、前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液体を吐出させる収縮要素P03、P07と、前記収縮要素P03、P07の途中に、前記圧力発生室を膨張させる再膨張要素P05とを具備する駆動信号を供給する駆動手段と、を具備し、前記再膨張要素P05を、前記ノズル開口における2つの異なる位相を持つメニスカスの振動が逆位相となっていない状態で開始する。
【選択図】 図4
Description
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置及び液体噴射ヘッドの駆動方法に関する。
インクジェット式プリンターやプロッター等のインクジェット式記録装置は、インクカートリッジやインクタンク等のインク貯留手段に貯留されたインクを、インク滴として吐出可能なインクジェット式記録ヘッドを有する。
ここで、インクジェット式記録ヘッドとしては、ノズル開口に連通する圧力発生室と、複数の圧力発生室に連通する共通の液体室であるリザーバーと、圧力発生室に圧力変化を生じさせてノズル開口から液滴を吐出させる圧力発生手段とを具備する。そして、インクジェット式記録ヘッドに搭載される圧力発生手段としては、例えば、縦振動型の圧電素子、撓み振動型の圧電素子、静電気力を用いたもの、発熱素子を用いたものなどが挙げられる。
このようなインクジェット式記録ヘッドにインク滴の吐出を行わせた際に、吐出されたインク滴の尾部が長くなってしまうという問題や、二次的な微小なインク滴が吐出されるなどの問題が発生する場合がある。そして、このような問題が生じると、早いタイミングで複数のインク滴を吐出させる高周波吐出を行わせることができず、高速印刷を行うことができない。
このため、圧電素子等の圧力発生手段に供給する駆動信号として、圧力発生室の体積を収縮させてインク滴を吐出させた収縮要素の後、圧力発生室を膨張させてインク柱を切断する膨張要素を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
しかしながら、さらなる高速印刷が望まれており、インク滴の尾部をさらに低減することが必要である。このため、インク柱を切断する膨張要素の駆動電圧を高めると共に、電圧を印加する時間を短くして、電圧変化を急峻にすることが考えられるが、このような急峻な電圧変化を行うと、インク滴を吐出させた後のノズル開口のインクのメニスカスの振動が大きくなり、二次的なインク滴が吐出されてしまうことや、次のインク滴の吐出に悪影響を与えてしまうなどの問題がある。
そして、このような問題は、上記特許文献1〜3では、解決することができるものではない。また、このような問題は、特に高粘度のインクを吐出させる場合に、顕著に現れる。
なお、このような問題はインクジェット式記録装置だけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射装置においても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、吐出される液滴の尾部を縮小させて、高速吐出を行わせることができると共に、吐出安定性を向上した液体噴射装置及び液体噴射ヘッドの駆動方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室と、該圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧力発生手段とを具備する液体噴射ヘッドと、前記圧力発生手段に、前記圧力発生室を膨張させる膨張要素と、前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液体を吐出させる収縮要素と、前記収縮要素の途中に、前記圧力発生室を膨張させる再膨張要素とを具備する駆動信号を供給する駆動手段と、を具備し、前記再膨張要素が、前記ノズル開口における2つの異なる位相を持つメニスカスの振動が逆位相となっていない状態で開始されることを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、収縮要素の途中に、再膨張要素をノズル開口の2つの位相を持つメニスカスの振動が逆位相となっていない状態で開始することで、吐出する液滴の尾部を短くすることができると共に、液滴を吐出した後のメニスカスの振動を安定させることができる。また、収縮要素の途中に再膨張要素を入れるだけなので、収縮要素の後に尾部を切る要素が不要となり、液滴を吐出するための駆動波形を短い周期で圧力発生手段に印加することができ、液滴の高速吐出(高周波吐出)を実現できる。
かかる態様では、収縮要素の途中に、再膨張要素をノズル開口の2つの位相を持つメニスカスの振動が逆位相となっていない状態で開始することで、吐出する液滴の尾部を短くすることができると共に、液滴を吐出した後のメニスカスの振動を安定させることができる。また、収縮要素の途中に再膨張要素を入れるだけなので、収縮要素の後に尾部を切る要素が不要となり、液滴を吐出するための駆動波形を短い周期で圧力発生手段に印加することができ、液滴の高速吐出(高周波吐出)を実現できる。
ここで、前記収縮要素が、前記圧力発生室を収縮させる第1収縮要素と、収縮した当該圧力発生室の容積を維持するホールド要素と、該ホールド要素の後に設けられて圧力発生室を収縮させる第2収縮要素とを具備し、前記再膨張要素が、前記ホールド要素の後に連続して設けられており、前記第2収縮要素が、前記再膨張要素で膨張した前記圧力発生室の容積を収縮させることが好ましい。これによれば、メニスカスが所定のタイミングで再膨張要素を開始させることができる。
また、前記再膨張要素が、前記膨張要素による前記圧力発生室の容積よりも小さな容積となるように膨張させることが好ましい。これによれば、再膨張要素によってメニスカスが暴れるのを抑制して、短い尾部の液滴を吐出させることができる。
また、前記液体噴射ヘッドに、10m・Pas以上の粘度の液体を供給する供給手段をさらに具備することが好ましい。これによれば、特に液滴の尾部が長くなる高粘度の液体を、短い尾部で吐出させることができる。
さらに本発明の他の態様は、液体を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室と、該圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧力発生手段とを具備する液体噴射ヘッドの駆動方法であって、前記圧力発生室を膨張させる膨張要素と、前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液体を吐出させる収縮要素と、前記収縮要素の途中に、前記圧力発生室を膨張させると共に、前記ノズル開口における2つの異なる位相を持つメニスカスの振動が逆位相となっていない状態で開始される再膨張要素と、を具備する駆動信号によって前記圧力発生手段を駆動することを特徴とする液体噴射ヘッドの駆動方法にある。
かかる態様では、収縮要素の途中に、再膨張要素をノズル開口の2つの位相を持つメニスカスの振動が逆位相となっていない状態で開始することで、吐出する液滴の尾部を短くすることができると共に、液滴を吐出した後のメニスカスの振動を安定させることができる。また、収縮要素の途中に再膨張要素を入れるだけなので、収縮要素の後に尾部を切る要素が不要となり、液滴を吐出するための駆動波形を短い周期で圧力発生手段に印加することができ、液滴の高速吐出(高周波吐出)を実現できる。
かかる態様では、収縮要素の途中に、再膨張要素をノズル開口の2つの位相を持つメニスカスの振動が逆位相となっていない状態で開始することで、吐出する液滴の尾部を短くすることができると共に、液滴を吐出した後のメニスカスの振動を安定させることができる。また、収縮要素の途中に再膨張要素を入れるだけなので、収縮要素の後に尾部を切る要素が不要となり、液滴を吐出するための駆動波形を短い周期で圧力発生手段に印加することができ、液滴の高速吐出(高周波吐出)を実現できる。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の概略斜視図である。
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の概略斜視図である。
本実施形態の液体噴射装置は、例えば、インクジェット式記録装置であり、図1に示すように、詳しくは後述するインクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インクジェット式記録ヘッドにインクを供給する供給手段を構成するインクカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
また、キャリッジ軸5の一端部近傍には、駆動モーター6が設けられており、駆動モーター6の軸の先端部には外周に溝を有する第1のプーリー6aが設けられている。さらに、キャリッジ軸5の他端部近傍には、駆動モーター6の第1のプーリー6aに対応する第2のプーリー6bが回転自在に設けられており、これら第1のプーリー6aと第2のプーリー6bとの間には環状でゴム等の弾性部材からなるタイミングベルト7が掛けられている。
そして、駆動モーター6の駆動力がタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ3に沿ってプラテン8が設けられている。このプラテン8は図示しない紙送りモーターの駆動力により回転できるようになっており、給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
ここで、上述のようなインクジェット式記録装置Iに搭載されるインクジェット式記録ヘッドについて説明する。図2は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの一例を示す断面図である。
図2に示すインクジェット式記録ヘッド10は、縦振動型の圧電素子を有するタイプであり、流路基板11には、複数の圧力発生室12が並設され、流路基板11の両側は、各圧力発生室12に対応してノズル開口13を有するノズルプレート14と、振動板15とにより封止されている。また、流路基板11には、各圧力発生室12毎にそれぞれインク供給口16を介して連通されて複数の圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバー17が形成されており、リザーバー17には、図示しないインクカートリッジが接続される。
一方、振動板15の圧力発生室12とは反対側には、各圧力発生室12に対応する領域にそれぞれ圧電素子18の先端が当接されて設けられている。これらの圧電素子18は、圧電材料19と、電極形成材料20及び21とを縦に交互にサンドイッチ状に挟んで積層され、振動に寄与しない不活性領域が固定基板22に固着されている。
このように構成されたインクジェット式記録ヘッド10では、インクカートリッジに連通されるインク流路を介してリザーバー17にインクが供給され、インク供給口16を介して各圧力発生室12に分配される。実際には、圧電素子18に電圧を印加することにより圧電素子18を収縮させる。これにより、振動板15が圧電素子18と共に変形されて(図中上方向に引き上げられて)圧力発生室12の容積が広げられ、圧力発生室12内にインクが引き込まれる。そして、ノズル開口13に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路からの記録信号に従い、圧電素子18の電極形成材料20及び21に印加していた電圧を解除すると、圧電素子18が伸張されて元の状態に戻る。これにより、振動板15も変位して元の状態に戻るため圧力発生室12が収縮され、内部圧力が高まりノズル開口13からインク滴が吐出される。すなわち、本実施形態では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として縦振動型の圧電素子18が設けられている。
図3は、インクジェット式記録装置の制御構成を示すブロック図である。ここで、図3を参照して、本実施形態のインクジェット式記録装置の制御について説明する。本実施形態のインクジェット式記録装置は、図3に示すように、プリンターコントローラー111とプリントエンジン112とから概略構成されている。プリンターコントローラー111は、外部インターフェース113(以下、外部I/F113という)と、各種データを一時的に記憶するRAM114と、制御プログラム等を記憶したROM115と、CPU等を含んで構成した制御部116と、クロック信号を発生する発振回路117と、液体噴射ヘッド10へ供給するための駆動信号を発生する駆動信号発生回路119と、駆動信号や印刷データに基づいて展開されたドットパターンデータ(ビットマップデータ)等をプリントエンジン112に送信する内部インターフェース120(以下、内部I/F120という)とを備えている。
外部I/F113は、例えば、キャラクターコード、グラフィック関数、イメージデータ等によって構成される印刷データを、図示しないホストコンピューター等から受信する。また、この外部I/F113を通じてビジー信号(BUSY)やアクノレッジ信号(ACK)が、ホストコンピューター等に対して出力される。RAM114は、受信バッファー121、中間バッファー122、出力バッファー123、及び、図示しないワークメモリーとして機能する。そして、受信バッファー121は外部I/F113によって受信された印刷データを一時的に記憶し、中間バッファー122は制御部116が変換した中間コードデータを記憶し、出力バッファー123はドットパターンデータを記憶する。なお、このドットパターンデータは、階調データをデコード(翻訳)することにより得られる印字データによって構成してある。
また、ROM115には、各種データ処理を行わせるための制御プログラム(制御ルーチン)の他に、フォントデータ、グラフィック関数等を記憶させてある。制御部116は、受信バッファー121内の印刷データを読み出すと共に、この印刷データを変換して得た中間コードデータを中間バッファー122に記憶させる。また、中間バッファー122から読み出した中間コードデータを解析し、ROM115に記憶させているフォントデータ及びグラフィック関数等を参照して、中間コードデータをドットパターンデータに展開する。そして、制御部116は、必要な装飾処理を施した後に、この展開したドットパターンデータを出力バッファー123に記憶させる。
そして、インクジェット式記録ヘッド10の1行分に相当するドットパターンデータが得られたならば、この1行分のドットパターンデータは、内部I/F120を通じてインクジェット式記録ヘッド10に出力される。また、出力バッファー123から1行分のドットパターンデータが出力されると、展開済みの中間コードデータは中間バッファー122から消去され、次の中間コードデータについての展開処理が行われる。
プリントエンジン112は、インクジェット式記録ヘッド10と、紙送り機構124と、キャリッジ機構125とを含んで構成してある。紙送り機構124は、紙送りモーターとプラテン8等から構成してあり、記録紙等の印刷記憶媒体をインクジェット式記録ヘッド10の記録動作に連動させて順次送り出す。即ち、この紙送り機構124は、印刷記憶媒体を副走査方向に相対移動させる。
キャリッジ機構125は、インクジェット式記録ヘッド10を搭載可能なキャリッジ3と、このキャリッジ3を主走査方向に沿って走行させるキャリッジ駆動部とから構成してあり、キャリッジ3を走行させることによりインクジェット式記録ヘッド10を主走査方向に移動させる。なお、キャリッジ駆動部は、上述したように駆動モーター6及びタイミングベルト7等で構成されている。
インクジェット式記録ヘッド10は、副走査方向に沿って多数のノズル開口13を有し、ドットパターンデータ等によって規定されるタイミングで各ノズル開口13から液滴を吐出する。そして、このようなインクジェット式記録ヘッド10の圧電素子18には、図示しない外部配線を介して電気信号、例えば、後述する駆動信号(COM)や印字データ(SI)等が供給される。なお、このように構成されるプリンターコントローラー111及びプリントエンジン112では、プリンターコントローラー111と、駆動信号発生回路119から出力された所定の駆動波形を有する駆動信号を選択的に圧電素子18に入力するラッチ132、レベルシフター133及びスイッチ134等を有する駆動回路(図示なし)とが圧電素子18に所定の駆動信号を印加する駆動手段となる。
なお、これらのシフトレジスター131、ラッチ132、レベルシフター133、スイッチ134及び圧電素子18は、それぞれ、インクジェット式記録ヘッド10の各ノズル開口13毎に設けられており、これらのシフトレジスター131、ラッチ132、レベルシフター133及びスイッチ134は、駆動信号発生回路119が発生した吐出駆動信号や緩和駆動信号から駆動パルスを生成する。ここで、駆動パルスとは実際に圧電素子18に印加される印加パルスのことである。
このようなインクジェット式記録ヘッド10では、最初に発振回路117からのクロック信号(CK)に同期して、ドットパターンデータを構成する印字データ(SI)が出力バッファー123からシフトレジスター131へシリアル伝送され、順次セットされる。この場合、まず、全ノズル開口13の印字データにおける最上位ビットのデータがシリアル伝送され、この最上位ビットのデータシリアル伝送が終了したならば、上位から2番目のビットのデータがシリアル伝送される。以下同様に、下位ビットのデータが順次シリアル伝送される。
そして、当該ビットの印字データが全ノズル分が各シフトレジスター131にセットされたならば、制御部116は、所定のタイミングでラッチ132へラッチ信号(LAT)を出力させる。このラッチ信号により、ラッチ132は、シフトレジスター131にセットされた印字データをラッチする。このラッチ132がラッチした印字データ(LATout)は、電圧増幅器であるレベルシフター133に印加される。このレベルシフター133は、印字データが例えば「1」の場合に、スイッチ134が駆動可能な電圧値、例えば、数十ボルトまでこの印字データを昇圧する。そして、この昇圧された印字データは各スイッチ134に印加され、各スイッチ134は、当該印字データにより接続状態になる。
そして、各スイッチ134には、駆動信号発生回路119が発生した駆動信号(COM)も印加されており、スイッチ134が選択的に接続状態になると、このスイッチ134に接続された圧電素子18に選択的に駆動信号が印加される。このように、例示したインクジェット式記録ヘッド10では、印字データによって圧電素子18に吐出駆動信号を印加するか否かを制御することができる。例えば、印字データが「1」の期間においてはラッチ信号(LAT)によりスイッチ134が接続状態となるので、駆動信号(COMout)を圧電素子18に供給することができ、この供給された駆動信号(COMout)により圧電素子18が変位(変形)する。また、印字データが「0」の期間においてはスイッチ134が非接続状態となるので、圧電素子18への駆動信号の供給は遮断される。なお、この印字データが「0」の期間において、各圧電素子18は直前の電位を保持するので、直前の変位状態が維持される。
なお、上記の圧電素子18は、上述のように縦振動型の圧電素子18である。この縦振動型の圧電素子18を用いると、充電により圧電素子18が縦方向に縮んで圧力発生室12を膨張させ、放電により圧電素子18が縦方向に伸長して圧力発生室12を収縮させる。このようなインクジェット式記録ヘッド10では、圧電素子18に対する充放電に伴って対応する圧力発生室12の容積が変化するので、圧力発生室12の圧力変動を利用してノズル開口13から液滴を吐出させることができる。
ここで、圧電素子18に入力される本実施形態の駆動信号(COM)を表す駆動波形について説明する。なお、図4は、本実施形態の駆動信号を示す駆動波形である。
圧電素子18に入力される駆動波形は、共通電極を基準電位(本実施形態では0V)として、個別電極に印加されるものである。駆動波形は、図4に示すように、中間電位Vmを維持した状態から第1電位V1まで上昇させる第1膨張要素P01と、第1電位V1を一定時間維持する第1ホールド要素P02と、第1電位V1から第2電位V2まで降下させる第1収縮要素P03と、第2電位V2を一定時間維持する第2ホールド要素P04と、第2電位V2から第3電位V3まで上昇させる再膨張要素P05と、第3電位V3を一定時間維持する第3ホールド要素P06と、第3電位V3から中間Vmまで降下させる第2収縮要素P07と、を具備する。
本実施形態では、第1収縮要素P03と第2収縮要素P07とが、圧力発生室12の容積を収縮させてノズル開口13からインク滴を吐出させる収縮要素として機能する。
また、駆動波形には、収縮要素の途中、すなわち、第1収縮要素P03と第2収縮要素P07との間に再膨張要素P05が設けられている。このような再膨張要素P05は、収縮要素によってノズル開口13からインク滴が吐出される途中に挿入されたものである。また、再膨張要素P05は、詳しくは後述するが、ノズル開口13における2つの異なる位相を持つメニスカスの振動が逆位相となっていない状態で開始される。ここで、ノズル開口13における2つの異なる位相を持つメニスカスの振動が逆位相となっていない状態とは、ノズル開口13における2つの異なる位相を持つメニスカスの振動が、互いに強め合っている状態を言う。この2つの異なる位相を持つメニスカスの振動が互いに強め合うとは、例えば、一方がノズル開口13の吐出方向に移動し、他方も吐出方向と同じ方向に向かっている状態のことである。また、2つの異なる位相を持つメニスカスの振動が逆位相となっていない状態とは、例えば、一方がノズル開口13の吐出方向に移動し、他方が吐出方向や圧力発生室12側に移動しておらず、止まっている状態であってもよい。
本実施形態では、再膨張要素P05は、ノズル開口13のインクのメニスカスの中央部が慣性力で吐出方向に移動し、ノズル開口13の内壁面側のインクが、メニスカスの中央部と逆位相となっていない状態、すなわち、吐出方向とは反対側に向かっていないタイミングで開始される。ちなみに、上述したように、ノズル開口13の内壁面側のインクが吐出方向とは反対側に向かっていない状態とは、圧力発生室12側に向かっている状態以外を指し、ノズル開口13の内壁面側のインクが停止した状態又はインク滴の吐出方向に向かっている状態を言う。
このような再膨張要素P05が開始されるタイミングは、第2ホールド要素P04の時間によって制御される。例えば、第2ホールド要素P04が短すぎると、ノズル開口13における2つの異なる位相を持つメニスカスの振動が逆位相となった状態で、再膨張要素P05が開始される。すなわち、第2ホールド要素P04が短すぎると、ノズル開口13のインクのメニスカスの中央部が吐出方向に移動し、ノズル開口13の内壁面側のインクが吐出方向とは反対側(圧力発生室12側)に向かっている状態となる。このような状態で再膨張要素P05が入力されると、吐出されるインク滴の尾部が長くなってしまう。これに対して、第2ホールド要素P04を適宜調整して、再膨張要素P05が、ノズル開口13における2つの異なる位相を持つメニスカスの振動が逆位相となっていない状態で開始することで、吐出されるインク滴の尾部を短くすることができる。
ここで、本実施形態の駆動波形とノズル開口13のメニスカスとの関係について説明する。なお、図5及び図6は、ノズル開口のメニスカスの状態を示す要部断面図である。
まず、図4に示す膨張要素P01が圧電素子18に印加されると、圧電素子18が圧力発生室12の容積を膨張させる方向に変形して、図5(a)に示すようにノズル開口13内のメニスカス30が圧力発生室12側に引き込まれると共に、圧力発生室12にはリザーバー17側からインクが供給される。
次に、図4に示す第1ホールド要素P02が圧電素子18に印加されると、図5(b)に示すように、ノズル開口13のメニスカス30は、慣性力によってさらに圧力発生室12側に向かって移動する。
次に、図4に示す第1収縮要素P03が圧電素子18に印加されると、圧電素子18が伸張する。これにより、圧力発生室12は膨張容積から第2電位V2に対応する収縮容積まで急激に収縮され、圧力発生室12内のインクが加圧されてノズル開口13からインク滴の吐出が開始される。すなわち、図5(c)に示すように、ノズル開口13のインクのメニスカス30の中央部31は吐出側に移動する(柱状に盛り上がる)。このとき、ノズル開口13の内壁面側のインクは、慣性力によって圧力発生室12側に移動している。すなわち、インクのノズル開口13の内壁面側には、粘性層(粘性境界層)32が存在し、ノズル開口13のメニスカスには、中央部と内壁面(粘性層32)との2つの異なる位相が存在する。
次に、図4に示す第2ホールド要素P04が圧電素子18に印加されると、図5(d)に示すように、ノズル開口13のメニスカス30の中央部31のインクが吐出側に移動する(ノズル開口13のメニスカス30の中央部31の柱状の成長が促進される)。また、ノズル開口13の内壁面側のインク(粘性層32)は、メニスカス30の中央部31と同様に吐出側に移動する。これにより、ノズル開口13における2つの異なるメニスカスの振動が、逆位相ではない状態となる。すなわち、ノズル開口13の内壁面側のインク(粘性層32)は、圧力発生室12側に向かっていたものが、この第2ホールド要素P04によって、停止するか又は吐出側に移動した状態で、次の再膨張要素P05が開始される。
そして、図4に示す再膨張要素P05が圧電素子18に入力されると、図6(a)に示すようにノズル開口13のインクのメニスカス30の中央部31と内壁面側の粘性層32との両方が、圧力発生室12側に移動する。このようにメニスカス30の中央部31が圧力発生室12側に移動することにより、メニスカス30の中央部31において柱状に成長した部分40は引きちぎられるように吐出側に移動する。
次に、図4に示す第3ホールド要素P06が圧電素子18に印加されると、図6(b)に示すように、メニスカス30の中央部31と内壁面側の粘性層32とはさらに圧力発生室12側に向かって移動し、メニスカス30の柱状に成長した部分40の分離が進行する。そして、図4に示す第2収縮要素P07が圧電素子18に印加されることで、図6(c)に示すように、メニスカス30の中央部31と柱状に成長した部分40との分離が進行し、メニスカスの柱状に成長した部分40が完全に引きちぎられてインク滴40として吐出される。実質的には、第3ホールド要素P06の成分によってインク滴40の吐出は行われ、第2収縮要素P07は、再膨張要素P05に対してカウンターを当てるように、すなわち、メニスカスの振動を抑える制振要素としても機能する。
もちろん、第2収縮要素P07を中間電位Vmよりも低い電位(例えば、電位V4)に達するまで行うようにしてもよい。この場合には、圧力発生室12の電位V4に相当する収縮状態で、圧力発生室12内のインク圧力はその固有振動によって下降・上昇を繰り返す。したがって、第2収縮要素P07を中間電位Vmよりも低い電位に達するまで行う場合には、圧力発生室12の圧力の上昇タイミングに合わせて中間電位Vmまで戻す制振要素を供給して、圧力発生室12を基準容積まで復帰(収縮)し、圧力発生室12内の圧力変動を吸収するようにすればよい。
そして、このような駆動波形によって、インク滴40を吐出させることで、吐出されたインク滴40の尾部を短くすることができると共に、インク滴40を吐出後のメニスカス30の振動を安定させることができる。すなわち、上述した駆動波形では、インク滴40を吐出するための収縮要素である第1収縮要素P03と第2収縮要素P07との間に再膨張要素P05を設けることで、ノズル開口13のインクのメニスカス30の動きを制御して、吐出されるインク滴40の尾部を短くすることができる。また、収縮要素P03、P07内に再膨張要素P05を設けることによって、第2電位V2から基準電位Vmまで一定の電圧変化率(時間に対する電圧の変化率;波形の傾き)で印加するのに比べて、二次的なインク滴の吐出を防止することができると共に、インク滴40を吐出後のメニスカス30の振動を安定させることができる。このように、インク滴40の尾部を短くすると共に、インク滴40の吐出後のメニスカス30の安定性を高めることで、次のインク滴40を吐出するまでの間隔を短くしても、吐出されたインク滴40の尾部が次のインク滴40に干渉することなく、常に同じインク吐出特性で安定したインク滴40の吐出を行わせることができる。この結果、インク滴40の高速吐出(高周波吐出)を行って高速印刷を行わせることができる。また、本実施形態の駆動波形では、収縮要素内に再膨張要素P05を設けただけであるため、1滴のインクの吐出に必要な時間(駆動波形の周期)を短くすることができる。すなわち、インク滴40を吐出する吐出波形の後に、別途インク滴40の尾部を切断するための波形(要素)を設ける必要がないため、短時間で多くのインク滴を吐出させて高速吐出(高周波吐出)を実現することができる。
なお、第1収縮要素P03が終了する第2電位V2、すなわち、再膨張要素P05が開始される第2電位V2は、第2収縮要素P07の終了する電位、すなわち中間電位Vmよりも高くするのが好ましい。これは、第1収縮要素P03が終了する第2電位V2を、第2収縮要素P07が終了する中間電位Vmよりも低くすると、ノズル開口13でメニスカスが暴れ、インク滴の尾部を短く切ることができないと共に二次的なインク滴が吐出されてしまう虞があるからである。
また、再膨張要素P05が終了する第3電位V3は、第1収縮要素P03が開始される第1電位V01よりも低くするのが好ましい。これは、再膨張要素P05が終了する第3電位V3が高いと、ノズル開口13でメニスカスが暴れ、インク滴の尾部を短く切ることができないと共に二次的なインク滴が吐出されてしまう虞があるからである。
(実施例1)
上述したインクジェット式記録ヘッド10を実施形態1の駆動波形(駆動信号)で駆動し、粘度が30m・Pasのインクを吐出させた。
上述したインクジェット式記録ヘッド10を実施形態1の駆動波形(駆動信号)で駆動し、粘度が30m・Pasのインクを吐出させた。
(比較例1)
実施例1と同じインクジェット式記録ヘッド10を図7に示す駆動波形で駆動し、粘度が30m・Pasのインクを吐出させた。
実施例1と同じインクジェット式記録ヘッド10を図7に示す駆動波形で駆動し、粘度が30m・Pasのインクを吐出させた。
なお、図7に示す比較例1の駆動波形は、実施形態1と同じ第1膨張要素P01と第1ホールド要素P02とを有し、第1ホールド要素P02の後、第1電位V1から中間電位Vmまで降下させる収縮要素P10を有するものである。
そして、実施例1と比較例1との吐出されたインク滴の状態を撮影した。この結果を図8に示す。なお、図8(a)は実施例1のインク滴の状態を撮影した画像であり、図8(b)は、比較例1のインク滴の状態を撮影した画像である。
図8(a)に示すように、実施例1の駆動波形によって吐出されたインク滴40の尾部41は、図8(b)に示す比較例1の駆動波形によって吐出されたインク滴140の尾部141よりも短くなることが分かった。
この結果からも分かるように、本発明の駆動信号を用いることで、インク滴40の尾部41を短くすることができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した駆動信号にインク滴が吐出しない程度に圧電素子18を微振動させる微振動パルスを設けるようにしてもよい。なお、微振動パルスとしては、台形状の波形形状を有する台形パルスを用いることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した駆動信号にインク滴が吐出しない程度に圧電素子18を微振動させる微振動パルスを設けるようにしてもよい。なお、微振動パルスとしては、台形状の波形形状を有する台形パルスを用いることができる。
また、上述した実施形態1では、圧力発生手段として、縦振動型の圧電素子18を用いるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子を用いるようにしてもよい。ちなみに、縦振動型の圧電素子18を用いると、充電により圧電素子18が縦方向に縮んで圧力発生室12を膨張させ、放電により圧電素子18が縦方向に伸長して圧力発生室12を収縮させる。これに対して、圧力発生手段として撓み変形型の圧電素子を用いた場合には、充電により圧電素子が圧力発生室12側に変形して圧力発生室12を収縮し、放電により圧電素子が圧力発生室12とは反対側に変形して圧力発生室12を膨張させる。このような圧電素子を駆動する駆動信号は、上述した駆動信号の電位極性が反転した形状となる。
また、圧力発生手段として、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口13から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用してもよい。
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、インクジェット式記録ヘッド10(ヘッドユニット1A、1B)がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド10が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。勿論、このような液体噴射ヘッドを搭載した液体噴射装置も特に限定されるものではない。
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 12 圧力発生室、 13 ノズル開口、 17 リザーバー、 18 圧電素子(圧力発生手段)、 30 メニスカス、 31 中央部、 32 粘性層、 40、140 インク滴、 41、141 尾部、 111 プリンターコントローラー、 112 プリントエンジン、 116 制御部、 119 駆動信号発生回路、 131 シフトレジスター、 132 ラッチ、 133 レベルシフター、 134 スイッチ
Claims (5)
- 液体を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室と、該圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧力発生手段とを具備する液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段に、前記圧力発生室を膨張させる膨張要素と、前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液体を吐出させる収縮要素と、前記収縮要素の途中に、前記圧力発生室を膨張させる再膨張要素とを具備する駆動信号を供給する駆動手段と、を具備し、
前記再膨張要素が、前記ノズル開口における2つの異なる位相を持つメニスカスの振動が逆位相となっていない状態で開始されることを特徴とする液体噴射装置。 - 前記収縮要素が、前記圧力発生室を収縮させる第1収縮要素と、収縮した当該圧力発生室の容積を維持するホールド要素と、該ホールド要素の後に設けられて圧力発生室を収縮させる第2収縮要素とを具備し、
前記再膨張要素が、前記ホールド要素の後に連続して設けられており、前記第2収縮要素が、前記再膨張要素で膨張した前記圧力発生室の容積を収縮させることを特徴とする請求項1記載の液体噴射装置。 - 前記再膨張要素が、前記膨張要素による前記圧力発生室の容積よりも小さな容積となるように膨張させることを特徴とする請求項1又は2記載の液体噴射装置。
- 前記液体噴射ヘッドに、10m・Pas以上の粘度の液体を供給する供給手段をさらに具備することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射装置。
- 液体を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室と、該圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧力発生手段とを具備する液体噴射ヘッドの駆動方法であって、
前記圧力発生室を膨張させる膨張要素と、
前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液体を吐出させる収縮要素と、
前記収縮要素の途中に、前記圧力発生室を膨張させると共に、前記ノズル開口における2つの異なる位相を持つメニスカスの振動が逆位相となっていない状態で開始される再膨張要素と、
を具備する駆動信号によって前記圧力発生手段を駆動することを特徴とする液体噴射ヘッドの駆動方法。
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