ところで、リサイクル燃料集合体収納用バスケットにはB−Al材が用いられる。B−Al材は、中性子吸収を目的に含有されるボロン又はボロン化合物の硬度が高いため、切削や押出成形等の製法により製造されるが、高い技術力を要する材料である。このため、特許文献1に開示されたリサイクル燃料集合体収納用バスケットは、バスケットを構成する部材の製造が困難であるという問題を有する。本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、リサイクル燃料集合体収納用バスケットを構成する部材を容易に製造することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るリサイクル燃料集合体収納用バスケットは、厚さ方向に貫通する複数の孔を有する第1の板状部材と、厚さ方向に貫通する複数の孔を有し、かつ前記第1の板状部材の板面に直交して組み合わされる第2の板状部材と、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とで囲まれる空間に配置される筒状の部材であり、当該筒状の部材の内部にリサイクル燃料集合体を収納する筒状構造体と、を含むことを特徴とする。
このリサイクル燃料集合体収納用バスケットは、第1の板状部材と第2の板状部材とで、板状部材同士が所定の距離をおいて対向するように、第2の板状部材とリサイクル燃料集合体を収納する筒状構造体とを交互に配置して構成される。このように、リサイクル燃料集合体収納用バスケットは、板状の部材と筒状構造体とで構成できるので、複雑な切削加工等が不要となり、容易に製造できる。また、切削が困難なB−Al材は筒状構造体に用いるが、板を折り曲げて筒状に成型したり、熱間押出成型で筒状構造体を一体に成型したりすることで、筒状構造体の切削加工を最小限に抑えることができる。また、第1の板状部材及び第2の板状部材も、圧延成型や熱間押出成型で必要な厚さの板を得ることができ、単純形状とすることで製造難易度を低減することができるので、リサイクル燃料集合体収納用バスケットを構成する部材の切削加工を低減して、リサイクル燃料集合体収納用バスケットを構成する部材を容易に製造できる。
また、上述の特許文献1に開示された構造では、高速中性子を減速させるために配置する部材の突起により、リサイクル燃料集合体を収納するために必要な空間を作るため、隣接する収納部には二枚の板(隣り合う角管の壁)とエレメントの壁との計3枚の板が存在する。そして、各部材には、それぞれ同程度の負荷に耐えられる強度が求められるため、それぞれの板の厚さを小さくできず、結果としてリサイクル燃料集合体収納用バスケットの肥大化(収納密度は粗になる)させていた。本発明のリサイクル燃料集合体収納用バスケットは、リサイクル燃料集合体を収納する空間(セル)を、筒状構造体と第1の板状部材あるいは第2の板状部材との二重の壁面で構成するので、三重の壁面で前記セルを構成する上述の特許文献1に開示された構造よりもコンパクト化を図ることができる。また、本発明のリサイクル燃料集合体収納用バスケットは、筒状構造体の間に、基本的には非B−Al材を第1の板状部材及び第2の板状部材を配置し、かつ大部分を孔とする。これによって、高速中性子を減速させるために必要な空間を作り出して、リサイクル燃料集合体収納用バスケットのコンパクト化を図ることができる。
本発明の望ましい態様としては、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットにおいて、前記第1の板状部材に設けられる前記孔の開口面積、及び前記第2の板状部材に設けられる前記孔の開口面積は、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットの外周部よりも中心部の方が大きいことが好ましい。リサイクル燃料集合体収納用バスケットの中心部は、高い未臨界機能を要求されるため極力開口面積を大きくする必要がある。この構成により、相対的に未臨界機能要求が低い外周部においては伝熱性能を確保するために、第1の板状部材や第2の板状部材に設けられる孔の開口面積を、外周部では相対的に小さくすることにより、第1の板状部材や第2の板状部材の伝熱面積を確保できる。
リサイクル燃料集合体収納用バスケットの中央部の温度は高いが、伝熱の必要量は外周部と比べると小さいので、中央部の板状部材での熱伝達に必要な板の面積は少なくて済む。このため、中央部の板状部材の開口面積は大きく取ることができる。一方、リサイクル燃料集合体収納用バスケットの外周部の温度は低いが、伝熱の必要量は中央部と比べると大きい。このため、外周部の板状部材での伝熱に必要な面積は大きくする必要があり、外周部の板状部材の開口面積は小さくすることが必要である。
本発明の望ましい態様としては、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットにおいて、前記第1の板状部材と、前記第2の板状部材との少なくとも一方には、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットの軸方向に向かう溝部が設けられることが好ましい。この溝により、リサイクル燃料集合体収納用バスケットからの排水が容易になる。
本発明の望ましい態様としては、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットにおいて、前記第2の板状部材は、前記第1の板状部材と組み合わされる部分に凹部を有し、前記第1の板状部材に設けられる隣接する孔の間に前記凹部が組み合わされることが好ましい。このような構成により、第1の板状部材と第2の板状部材との相互の位置を速やかに、かつ正確に合わせることができるので、リサイクル燃料集合体収納用バスケットを容易に製造できる。
本発明の望ましい態様としては、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットにおいて、前記第2の板状部材は、前記第1の板状部材と組み合わされる部分に凸部を有し、前記第1の板状部材に設けられる孔とは異なる孔に、前記凸部が組み合わされることが好ましい。このような構成により、第1の板状部材と第2の板状部材との相互の位置を速やかに、かつ正確に合わせることができるので、リサイクル燃料集合体収納用バスケットを容易に製造できる。
本発明の望ましい態様としては、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットにおいて、前記第1の板状部材に設けられる孔、及び前記第2の板状部材に設けられる孔は、前記筒状構造体の長手方向と平行な方向よりも前記筒状構造体の長手方向と直交する方向の方が大きいことが好ましい。
第1の板状部材及び第2の板状部材に設けられる孔は、縦横比が等しい孔、例えば、正方形でもよいが、高燃焼して高発熱するリサイクル燃料集合体を収納する場合、リサイクル燃料集合体収納用バスケットの径方向(リサイクル燃料集合体収納用バスケットの軸と直交する方向)への熱搬送能力が不足するおそれがある。したがって、径方向への熱搬送能力を向上させるために、第1の板状部材及び第2の板状部材に設けられる孔は、筒状構造体の長手方向と直交する方向が広く、筒状構造体の長手方向と平行な方向を狭くする。そして、相対的にはリサイクル燃料集合体収納用バスケットの径方向を向く面積を大きくして、リサイクル燃料集合体収納用バスケットの軸方向を向く面積を小さくする。これによって、第1の板状部材及び第2の板状部材の総面積が増加することを抑制しつつ、第1の板状部材及び第2の板状部材に設けられる孔の面積が減少しないように構成する。
孔が正方形の場合、板状部材は筒状構造体の長手方向も、筒状構造体の径方向も等しい熱搬送能力を持ちうる。しかし、孔を長方形にすると、板状部材の熱搬送能力は、筒状構造体の長手方向と筒状構造体の径方向では、単位面積当たりの熱搬送面積を大きく異ならせることが容易になる。例えば、一枚の板材に4個の正方形の孔がある場合は、板材の熱搬送能力に方向性はなく、板材の剛性にも異方性はない。次に、4個の正方形の孔を設けた板材と同様の開口率で、一枚の板材に6個の長方形の孔がある場合は、板材の熱搬送能力に方向性が生じる。一枚の板材に6個の長方形の孔を設けた場合に、長方形の短辺を筒状構造体の長手方向と平行に配置すると、筒状構造体の径方向に熱搬送可能な伝熱経路が多く確保され、その結果として筒状構造体の長手方向と比べて、筒状構造体の径方向に多くの熱を搬送できる。一方、板材の剛性には異方性が生じ、筒状構造体の長手方向の剛性は筒状構造体の径方向と比較すると相対的には剛性が低くなるが、筒状構造体の長手方向には板の自重以外の荷重は作用しない。このため、筒状構造体の長手方向は、筒状構造体の径方向と比べると大きな剛性は必要とされない。逆に、筒状構造体の径方向には、リサイクル燃料集合体等の荷重も作用するので大きな剛性が必要とされる。
本発明の望ましい態様としては、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットにおいて、前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材は、前記第1の板状部材に設けられる孔、及び前記第2の板状部材に設けられる孔を複数かつ斜めに分割する梁部を備えることが好ましい。
リサイクル燃料集合体収納用バスケットは、万一のため、リサイクル燃料集合体収納容器の水平落下、垂直落下、斜め落下を想定して設計される。このため、第1の板状部材及び第2の板状部材は、リサイクル燃料集合体収納用バスケットの軸方向及び当該軸方向に直交する方向の剛性のみならず、斜め落下に対する剛性も確保する必要がある。
単純に、バスケットの軸方向及び当該軸方向と直交する方向との剛性を上げると、高速中性子を減速させるための空間を作り出す第1の板状部材及び第2の板状部材に設けられる孔の面積が十分確保できないおそれがある。また、第1の板状部材及び第2の板状部材の厚さを大きくすると、隣接するリサイクル燃料集合体の距離が大きくなる結果、リサイクル燃料集合体収納用バスケットのコンパクト化が困難になる。
これを回避するため、第1の板状部材及び第2の板状部材に設ける孔の基本的な形状を正方形又は長方形とした場合、孔を斜め方向(例えば、孔の対角線方向)に分断する梁部を設けることにより、梁部が形成される方向に対する剛性が向上する。これによって、斜め落下に対する剛性を向上させることができる。
ここで、斜め方向落下においては、水平面とリサイクル燃料集合体収納容器の軸とのなす角度が30度程度のときにおける落下姿勢でリサイクル燃料集合体収納容器が落下する場合に、リサイクル燃料集合体収納用バスケットの負荷が最も大きくなる。第1の板状部材及び第2の板状部材に設ける孔の基本的な形状を正方形とし、梁部を前記孔の対角線に沿って形成すると、梁部とリサイクル燃料集合体収納用バスケットの軸との角度は45度程度になる。したがって、リサイクル燃料集合体収納用バスケットに対する負荷が最も大きくなる落下姿勢においては、梁部による剛性向上の効果が十分に発揮されないおそれがある。また、第1の板状部材及び第2の板状部材に設ける孔の基本的な形状を正方形とした場合に、梁部を有効な角度(梁部とリサイクル燃料集合体収納容器の軸とのなす角度が60度程度)で設けると、それぞれの孔の面積を一定にすることが困難であり、高速中性子を減速させる空間を確保することが難しくなる。
これに対して、第1の板状部材及び第2の板状部材に設ける孔の形状を、短辺(縦)がリサイクル燃料集合体収納容器の軸と平行になる長方形とし、縦横比を適切に設定する(例えば、縦1に対し横√3)。このようにすれば、孔の対角線に沿って梁部を設けることで、最も負荷が大きくなる姿勢での斜め落下に対する剛性を確保でき、また、それぞれの孔の面積を一定にして、高速中性子を減速させる空間を確保できる。
なお、梁部は、高速中性子を減速させるために必要な孔の開口面積を減少させるが、梁部によって斜め方向のみならず、リサイクル燃料集合体収納用バスケットの軸方向及び当該軸方向と直交する方向においても第1の板状部材及び第2の板状部材の剛性を向上させることができる。その結果、リサイクル燃料集合体収納用バスケットの軸方向及び当該軸方向と直交する方向に孔を拡大して、高速中性子の減速に必要な開口面積を確保し、かつ、リサイクル燃料集合体収納用バスケットに求められる剛性も確保できる。
本発明の望ましい態様としては、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットにおいて、複数の前記第1の板状部材が前記筒状構造体の長手方向に向かって積み重ねられることが好ましい。リサイクル燃料集合体収納用バスケットは、約4mの長さを有するので、第1の板状部材を一枚の板で製造すると、組み立て途中での部材の保持や相互の組み付けでの位置合わせが困難になる。一方で、各部材の仕上がりや精度を向上させ、そりやたわみを最小限に抑えることも必要である。そこで、第1の板状部材を、筒状構造体の長手方向に向かって分割し、作業の進捗に応じて分割した第1の板状部材を積み重ねるようにすることで、上述した問題点を解決できる。
本発明の望ましい態様としては、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットにおいて、複数の前記第2の板状部材が前記筒状構造体の長手方向に向かって積み重ねられることが好ましい。これによって、作業の進捗に応じて分割した第2の板状部材を積み重ねるようにすることで、組み立て途中での部材の保持や相互の組み付けでの位置合わせが困難になるという問題を解消できる。
本発明の望ましい態様としては、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットにおいて、積み重ねられた第2の板状部材の一群は、隣接して配置される第2の板状部材の一群に対して、第2の板状部材が積み重ねられる方向の異なる位置で接続されることが好ましい。これによって、第1の板状部材の接続部分をつなぐ第2の板状部材が存在しなくなるおそれを回避できるので、リサイクル燃料集合体収納用バスケットの特定の箇所における剛性低下を抑制できる。また、第1の板状部材や第2の板状部材を分割することにより、リサイクル燃料集合体収納用バスケットの軸方向における第1の板状部材や第2の板状部材の寸法を小さくできるので、リサイクル燃料集合体収納用バスケットの各部の温度差に起因する内部応力を緩和できる。
本発明の望ましい態様としては、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットにおいて、前記筒状構造体は、板材を組み合わせて構成されることが好ましい。このようにすれば、熱間押出成形を用いずに、例えば、板材の折り曲げで筒状構造体を構成できるので、難押出材料であるB−Al材を用いて筒状構造体を構成する場合に好ましい。
本発明の望ましい態様としては、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットにおいて、前記筒状構造体は、一体成形された角パイプであることが好ましい。このように、筒状構造体を一体成形した角パイプとすることで、継ぎ目がない筒状構造体が得られ、溶接等では不可避の溶接ひずみを排除できる。
本発明の望ましい態様としては、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットにおいて、前記筒状構造体は、周方向の厚さが等しいことが好ましい。これによって、筒状構造体を熱間押出成形する際には、比較的容易に製造できる。
本発明の望ましい態様としては、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットにおいて、前記第1の板状部材に沿って一列に配列された複数の前記筒状構造体の列は、当該列に隣接して配置される、前記第1の板状部材に沿って一列に配列された複数の前記筒状構造体の他の列に対して、筒状構造体が配列されるピッチの半分ずれていることが好ましい。
このように、筒状構造体が配列されるピッチの半分ずらして、隣接する筒状構造体の列を配置することにより、筒状構造体の配置の自由度が向上する。そして、リサイクル燃料集合体収納用バスケットが収納されるリサイクル燃料集合体収納容器の断面積(軸方向に直交する平面で切った場合の断面の面積)が同じ場合、筒状構造体が配列されるピッチを半分ずらさずに隣接する筒状構造体の列を配置する場合よりも、多くの筒状構造体を配置できる。例えば、隣接する筒状構造体の列をずらさないで配置したときに24本の筒状構造体を配置できる場合、隣接する筒状構造体の列をずらして配置したときには26本あるいは28本の筒状構造体を配置できる。これによって、リサイクル燃料集合体収納用バスケットに収納可能なリサイクル燃料集合体の本数が増加するので、上述した構造は、リサイクル燃料集合体収納用バスケットの構造として好ましい。
本発明の望ましい態様としては、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットにおいて、前記第1の板状部材には溝部が形成され、また、前記第1の板状部材と組み合わされる前記第2の板状部材の部分には、前記溝部と組み合わされる突起部が形成されることが好ましい。
突起部と溝部とで第1の板状部材と第2の板状部材が係り合うので、両者を組み合わせて構成される空間に筒状構造体を配置すると、筒状構造体は、第1の板状部材及び第2の板状部材で支持される。これによって、筒状構造体は、内部に収納するリサイクル燃料集合体一本分の質量に耐えられればよいので、筒状構造体の側壁の厚さを小さくできる。
本発明の望ましい態様としては、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットにおいて、前記孔は、鉛直方向側に突出する部分又は凹み部を有することが好ましい。重力の作用によって、孔に設けた突出する部分又は凹み部に孔の内部の水が集まり流れ出るので、リサイクル燃料集合体収納用バスケットの排水性が向上する。また、プールではこの突出する部分から孔の内部の空気が集まり流れ出るので、バスケット1の気泡排出性が向上する。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るリサイクル燃料集合体収納容器は、開口部とキャビティとを備える胴と、前記開口部に取り付けられて、前記キャビティを密封する蓋と、前記キャビティ内に配置される、前記リサイクル燃料集合体収納用バスケットと、を備えることを特徴とする。これによって、リサイクル燃料集合体収納用バスケットを構成する部材の切削加工を低減して、リサイクル燃料集合体収納用バスケットを構成する部材を容易に製造できる。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るリサイクル燃料集合体収納用バスケットの製造方法は、厚さ方向に貫通する複数の孔を有する複数の第1の板状部材と、厚さ方向に貫通する複数の孔を有する複数の第2の板状部材とを互いに直交させて組み合わせる手順と、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とで囲まれる空間に、リサイクル燃料集合体を収納するための筒状構造体を配置する手順と、を含むことを特徴とする。これによって、簡単にリサイクル燃料集合体収納用バスケットを製造できる。
また、本発明に係るリサイクル燃料集合体収納用バスケットの製造方法は、厚さ方向に貫通する複数の孔を有する第1の板状部材の側面に、リサイクル燃料集合体を収納するための筒状構造体と、厚さ方向に貫通する複数の孔を有する第2の板状部材とを交互に配置することにより、リサイクル燃料集合体収納用バスケットを構成することを特徴とする。これによって、簡単にリサイクル燃料集合体収納用バスケットを製造できる。
本発明は、リサイクル燃料集合体収納用バスケットを構成する部材を容易に製造できる。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲内にあるものが含まれる。以下に説明するリサイクル燃料集合体格納用バスケットは、主として輸送、貯蔵用キャスクに使用するものであるが、これに限定されるものではない。例えば、貯蔵目的のコンクリートキャスク、あるいはキャニスタやリサイクル燃料集合体貯蔵プールのラックに使用できる。本発明は、PWR、BWR(Boiling Water Reactor)いずれに用いられるリサイクル燃料集合体に対しても適用できる。
(実施形態)
本実施形態は、厚さ方向に貫通する複数の孔を有する第1の板状部材と、厚さ方向に貫通する複数の孔を有する第2の板状部材とを、第1の板状部材の板面と第2の板状部材の板面とが直交するように組み合わせ、第1の板状部材と第2の板状部材とで囲まれる空間に、筒状の部材であって内部にリサイクル燃料集合体を収納する筒状構造体を配置して、リサイクル燃料集合体収納用バスケットを構成する点に特徴がある。本実施形態に係るリサイクル燃料集合体収納用バスケットについて説明する前に、リサイクル燃料集合体収納容器について説明する。なお、以下の説明では、リサイクル燃料集合体格納用バスケットを、必要に応じてバスケットと略称する。
図1は、リサイクル燃料集合体収納容器の一例であるキャスクの概要を示す断面図である。図2は、図1に示したキャスクのA−A断面図である。図1に示すように、キャスク200は、蓋200Tと胴200Bとから構成されて、胴200Bの内部にリサイクル燃料集合体を収納してから蓋200Tにより密封される。キャスク200の胴200Bは、図2に示すように、筒状の胴本体201と、胴本体201の外周に取り付けられる伝熱フィン207と、伝熱フィン207のもう一方の長辺側端部に取り付けられる外筒205と、胴200Bの外周と伝熱フィン207と外筒205とで構成される空間に充填される中性子遮蔽材209とで構成される。胴本体201は、γ線を遮蔽する機能を発揮させるため、十分な厚みを有する炭素鋼やステンレス鋼で製造される。なお、炭素鋼で胴本体201を製造する場合、十分なγ線遮蔽機能を発揮させるために、胴本体201の厚さは20cm〜30cmとしている。
胴本体201には、溶接によって筒状の胴本体201に底板を取り付けて構成することができる。また、胴本体201の外形に合わせた内部形状を持つコンテナ内に金属ビレットを装入し、胴本体201の内形に合わせた外形を持つ穿孔ポンチでこの金属ビレットを熱間成形することによって胴本体201と底板とを一体に成形してもよい。さらには、鋳造によって胴本体201を製造してもよい。
胴本体201の内部は、リサイクル燃料集合体を格納するバスケット1が収納されるキャビティ201Cとなる。このキャビティ201Cの中心軸(キャビティ軸Z)方向に垂直な断面内形状は円形であるが、キャスク200の仕様に応じて、八角形や四角形、略十字型・階段状等の断面内形状を持つキャビティも使用できる。ここで、キャビティ軸は、キャスク200の軸でもある。本実施形態において、キャビティ201Cの断面内形状は円形であるため、外形が多角形のバスケット1を収納する際には、第1スペーサ202a〜第4スペーサ202dを、バスケット1とキャビティ201Cとの間に介在させて、バスケット1をキャビティ201C内へ位置決めする。なお、第1スペーサ202a〜第4スペーサ202dに、バスケット1を構成する板状部材が嵌め合わされる溝を設け、第1スペーサ202a〜第4スペーサ202dと前記板状部材とを焼き嵌めや冷やし嵌め等によって組み合わせてもよい。
ここで、バスケット1は、その外周面をキャビティ201Cの内壁と接するようにすることが好ましい。これによって、未臨界機能を確保しつつ、容器との熱の受け渡しが広い面で行われるので少ない温度差で伝熱ができる。これによって、B−Al材と比較して、伝熱性に劣るB−SUS材を使用した場合でも収納物の温度を低く保つことができ、また、B−Al材の場合は収納物の温度をより低く保つことができる。
キャビティ201C内にリサイクル燃料集合体を収納した後は、キャビティ201Cの内部から放射性物質が漏洩することを防止するため、一次蓋200T1、二次蓋200T2及び三次蓋T3(図1)を前記胴の開口部に取り付けて、キャビティ201Cを密封する。そして、密封性能を確保するため、一次蓋200T1及び二次蓋200T2と胴本体201との間には金属又はエラストマー、あるいは金属とエラストマーとからなるガスケットを設ける。三次蓋T3は、一次蓋T1や二次蓋T2をさらにバックアップする目的で用いるが、この蓋構造は要求される仕様によっては一次蓋や二次蓋迄のものであってもよい。
胴本体201の外周には、板状部材で作られた複数の伝熱フィン207が放射状に取り付けられている。この伝熱フィン207は、アルミニウム板、銅板等といった熱の良導体で作られており、胴本体201の外周に溶接その他の接合手段によって、熱がよく伝わるようにしている。また、伝熱フィン207の外側には、炭素鋼等で作られた外筒205が、溶接その他の接合手段によって取り付けられている。キャビティ201C内に収納されたリサイクル燃料集合体は崩壊熱を発生する。この崩壊熱は、バスケット1及び胴本体201を伝わってから、伝熱フィン207を介して外筒205に伝導されて、外筒205の表面から大気中に放出される。
胴本体201と外筒205と二枚の伝熱フィン207とで囲まれる空間には、中性子を遮蔽するため、中性子遮蔽機能を有する材料(中性子遮蔽材209)が充填されている。このような機能を持つ材料としては、水素を多く含有する高分子材料であるレジン、ポリウレタン、又はシリコンその他の中性子遮蔽材料を使用することができる。この中性子遮蔽材料によって、リサイクル燃料集合体から放出される中性子を遮蔽し、キャスク200の外部へ漏洩する中性子を規制値よりも少なくする。
キャスク200は、リサイクル燃料集合体を収納した後、輸送及び貯蔵するために使用される。キャスクを輸送する場合には、図1に示すように、キャスクの軸、すなわちキャビティ軸Zの方向における両端部に緩衝体204を取り付けて、万一キャスク200の落下等が発生した場合でも、容器の十分な密封性能と収納物の健全性とを確保できるようにされる。次に、本実施形態に係るバスケットについて説明する。
図3は、本実施形態に係るバスケットを示す斜視図である。図4−1は、本実施形態に係るバスケットの一部拡大図である。図4−2は、本実施形態に係るバスケットを第1の板状部材の板面に直交する方向から見た側面図である。図4−3は、本実施形態に係るバスケットを第2の板状部材の板面に直交する方向から見た側面図である。
バスケット1は、第1の板状部材10と、第2の板状部材20と、筒状構造体である角パイプ30とを組み合わせて構成される。第1の板状部材10は、厚さ方向(すなわち、板面に直交する方向の寸法)に貫通する複数の孔11を有する。また、第2の板状部材20は、厚さ方向に貫通する複数の孔21を有し、第1の板状部材10の板面に直交して組み合わされる。すなわち、第1の板状部材10の板面と第2の板状部材20の板面とは互いに直交する。第1の板状部材10と第2の板状部材20とを組み合わせる場合、第1の板状部材10の面に、平面視が長方形である第2の板状部材の長辺側端部を当接させる。角パイプ30は、第1の板状部材10と第2の板状部材20とで囲まれる空間に配置される筒状の部材であり、角パイプ30の内部にリサイクル燃料集合体を収納する。角パイプ30の内部は、セル30Cという(図4−1参照)。
本実施形態において、図2に示すように、角パイプ30は、第1の板状部材10の板面に沿って一列に配列される。図2に示すように、第1の板状部材10は、キャスク200の胴本体201のキャビティ軸Zに直交する方向(胴本体201の径方向)に向かって一体で連続して構成されるので、キャビティ201Cの中心から外側に向かう伝熱性能が向上する。その結果、温度が上昇しやすいキャビティ201Cの中心部の熱を胴本体201の外周部へ伝え、放熱させやすくなる。
図4−1〜図4−3に示すように、隣接する角パイプ30同士の間には、第1の板状部材10及び第2の板状部材20が配置される。図3に示すように、第1の板状部材10に設けられる複数の孔11は、角パイプ30と第1の板状部材10と第2の板状部材20とを組み合わせたときに、角パイプ30の管軸Zpと平行な方向及び管軸Zpと直交する方向に配列される。このように、第1の板状部材10には、複数の孔11が格子状に形成される。第2の板状部材20に設けられる複数の孔21は、角パイプ30と第1の板状部材10と第2の板状部材20とを組み合わせたときに、角パイプ30の管軸Zpと平行な方向に配列される。第1の板状部材10に設けられる複数の孔11及び第2の板状部材20に設けられる複数の孔21は、角パイプ30のセル30C内に収納されるリサイクル燃料集合体から放出される高速中性子を減速させるフラックストラップとして機能する。このように、第1の板状部材10及び第2の板状部材20にそれぞれ複数の孔11、21を設けることにより、フラックストラップを容易に確保できる。
角パイプ30は、未臨界機能の確保と軽量化のため、B10(ボロン)を含むAl(アルミニウム)材料(以下、B−Al材という)によって製造される(以下同様)。Bは、B4C(炭化ボロン)のようなボロン化合物であってもよい。角パイプ30は、例えば、粉末冶金により製造したボロンアルミのビレットを熱間圧延や熱間押出成形することによって製造できる。第1の板状部材10及び第2の板状部材20は、アルミニウム合金(高強度アルミニウム材が好ましい)、鋼や炭素鋼にメッキ処理等の防食表面処理をしたもの、ステンレス合金等を用いることができる。なお、第1の板状部材10及び第2の板状部材20は、熱伝導率の高い材料が好ましい。
本実施形態では、角パイプ30のセル30Cにリサイクル燃料集合体を収納するので、第1の板状部材10及び第2の板状部材20は、角パイプ30を所定の間隔で保持するのみでよい。このため、第1の板状部材10及び第2の板状部材20には未臨界機能を持たせる必要はなく、伝熱性に優れたアルミニウムやアルミニウム合金、あるいは所定の伝熱性能を持つ各種の金属や合金を選択できる。このような金属材料は、B−Al材よりも加工が困難なものは稀であり、また、わざわざ加工の困難な材料を選択する必要もないため、アルミニウム合金が伝熱性能及び機械強度を確保する上で好適である。
バスケット1は、角パイプ30をB−Al材で製造し、第1の板状部材10及び第2の板状部材20をB−Al材よりも加工が容易な高強度アルミニウム材等で製造するので、コストダウンを図ることができる。また、第1の板状部材10及び第2の板状部材20には、切削加工や穿孔により、孔11及び孔21を容易に形成できるので、製造が容易である。なお、第1の板状部材10及び第2の板状部材20は、鋳造で製造してもよい。角パイプ30は、熱間押出成形により、容易に製造できる。
バスケット1は、第1の板状部材10及び第2の板状部材20自体の構造強度を容易に担保できる。また、複数の孔11を形成した第1の板状部材10及び複数の孔21を形成した第2の板状部材20でバスケット1を構成することで、図1に示すキャスク200が水平に落下したときの荷重を分散させやすくなる。さらに、第1の板状部材10と第2の板状部材20と角パイプ30とを組み合わせてバスケット1を構成するので、図4−1に示すセル30Cを千鳥状に配置することも容易である。
バスケット1は、複数の第1の板状部材10と、複数の第2の板状部材20とを互いに直交させて組み合わせた後、第1の板状部材10と第2の板状部材20とで囲まれる空間に、角パイプ30を順次配置することにより製造できる。また、第1の板状部材10の側面に、角パイプ30と第2の板状部材20とを交互に配置して一列に並べる手順と、並べられた角パイプ30の側面と第2の板状部材20の長辺側端部とに第1の板状部材10を組み合わせる手順とを繰り返して、バスケット1を構成してもよい。これによって、角パイプ30を順次配置する場合よりもコンパクトなバスケット1を製造できる。
図5−1は、本実施形態に係るバスケットを構成する角パイプの寸法を示す平面図である。図5−2は、長手方向に貫通孔が形成された第2の板状部材を用いてバスケットを構成した場合における角パイプの寸法を示す平面図である。図5−1に示すように、角パイプ30は、管軸Zpと直交する平面で切った断面内形状及び断面外形状が矩形である。角パイプ30の断面内の一辺はW1、W2であり、本実施形態ではW1=W2である。また、角パイプ30の厚さ(角パイプ30の側壁の壁面と垂直な方向における寸法)はt1であり周方向に向かって一定である。したがって、本実施形態において、角パイプ30の断面内形状及び断面外形状は正方形である。
第1の板状部材10に設けられる孔11の幅(バスケット1を構成した場合において、角パイプ30の管軸Zpと直交する方向の寸法)はL3であり、第2の板状部材20に設けられる孔21の幅(バスケット1を構成した場合において、角パイプ30の管軸Zpと直交する方向の寸法)はH3である。本実施形態において、第1の板状部材10に設けられる孔11の幅L3は、角パイプ30の断面内における一辺の長さW1と同じ大きさであり、第2の板状部材20に設けられる孔21の幅H3は、角パイプ30の断面内における一辺の長さW2と同じ大きさである。
図5−2に示すバスケット101は、第2の板状部材120の長手方向に貫通孔121が形成されている。第2の板状部材120の側壁の厚さはt3である。また、第1の板状部材10側における角パイプ130の厚さはt1であり、第2の板状部材120側における角パイプ130の厚さはt2である。バスケット101では、角パイプ30と第2の板状部材120とで、第1の板状部材10の板面と平行な方向における未臨界機能を確保する。このため、角パイプ130と第2の板状部材120とをB−Al材で製造するとともに、第2の板状部材120側における角パイプ130の厚さt2と第2の板状部材120の側壁の厚さt3との和が、第1の板状部材10側における角パイプ130の厚さt1となるようにしてある。また、第1の板状部材10の厚さt5と第2の板状部材120の貫通孔121のt5とは、通常は等しくなるようにしてある。
図6−1は、本実施形態に係るバスケットを構成する第1の板状部材の模式図である。図6−2は、本実施形態に係るバスケットを構成する第2の板状部材の模式図である。本実施形態では、第1の板状部材10に設けられる孔11の開口面積、及び第2の板状部材20に設けられる孔21の開口面積は、バスケット1の外周部よりも中心部の方を大きくしてもよい。例えば、図6−1に示すように、第1の板状部材10_1において、バスケット1の中心部(キャビティ軸Zの近傍)から径方向(キャビティ軸Zと直交する方向)外側に向かうにしたがって、孔11の開口面積を小さくする。同様に、異なる第1の板状部材10_1、10_2、10_3においては、バスケット1の中心部から径方向外側に向かって、それぞれの第1の板状部材10_1、10_2、10_3に設けられる孔11の開口面積を小さくする。
より具体的には、第1の板状部材10_1においては、R1で示される径方向において、孔11_11の開口面積A11>孔11_12の開口面積A12>・・・>孔11_1nの開口面積A1nとなるようにする。また、異なる第1の板状部材10_1、11−2、11−3においては、R2で示される径方向においてバスケット1の中心部に配置される第1の板状部材10_1に設けられる孔11_11の開口面積A11>第1の板状部材10_2に設けられる孔11_21の開口面積A21>第1の板状部材10_3に設けられる孔11_21の開口面積A31となるようにする。
また、図6−2に示すように、異なる第2の板状部材20_11、20_12・・・20_1nにおいては、バスケット1の中心部から径方向外側に向かって(図6−2の矢印R1方向)、それぞれの第2の板状部材20_11、20_12・・・20_1nに設けられる孔21の開口面積を小さくする。同様に、異なる第2の板状部材20_11、20_21、20_31においては、バスケット1の中心部から径方向外側に向かって(図6−2の矢印R2方向)、それぞれの第2の板状部材20_11、20_21、20_31に設けられる孔21の開口面積を小さくする。
より具体的には、第2の板状部材20_11においては、R1で示される径方向において、孔21_11の開口面積A11>孔21_12の開口面積A12>・・・>孔21_1nの開口面積A1nとなるようにする。また、異なる第2の板状部材20_11、20_21、20_31においては、R2で示される径方向においてバスケット1の中心部に配置される第2の板状部材20_11に設けられる孔21_11の開口面積A11>第2の板状部材20_21に設けられる孔21_21の開口面積A21>第2の板状部材20_31に設けられる孔21_21の開口面積A31となるようにする。
バスケット1の中心部は、高い未臨界機能を要求されるため、フラックストラップを大きく確保する必要がある。また、バスケット1の外周部は相対的に未臨界機能を低くすることが可能であり、上述した構成により、第1の板状部材10や第2の板状部材20に設けられる孔11、21の開口面積を相対的に小さくすることにより、第1の板状部材10や第2の板状部材20の伝熱面積を確保する。これによって、第1の板状部材10及び第2の板状部材20の伝熱性能を確保しやすくなる。
図7−1、図7−2は、本実施形態に係るバスケットを構成する第1の板状部材及び第2の板状部材を分割構造とした例を示す説明図である。図7−1は斜視図であり、図7−2は正面図である。本実施形態において、バスケット1は、第1の板状部材10及び第2の板状部材20をそれぞれ複数用いるとともに、バスケット1を構成した場合において角パイプ30の管軸Zpと平行な方向(キャビティ軸Zと平行な方向)に向かって、複数の第1の板状部材10及び複数の第2の板状部材20を積み重ねて構成してもよい。これによって、第1の板状部材10及び第2の板状部材20の寸法を小さくできるので、これらの製造が容易になり、また、バスケット1を組み立てる際には取り扱いが容易になる。
また、上記構成により、第1の板状部材10の全長、すなわち長手方向の寸法を短くできるので、バスケット1の各部の温度差に起因する熱伸び量を小さくして、第1の板状部材10が単体の場合、温度差に起因して発生する熱伸び量の差による熱応力を小さくできる。特に、第2の板状部材20の材料と第1の板状部材10の材料とが異なる場合にはより効果的である。
図7−2に示すように、キャビティ軸Zと平行な方向に積み重ねられた複数の第2の板状部材20の一群は、隣接して配置される第2の板状部材20の一群に対して、第2の板状部材20が積み重ねられる方向の異なる位置で接続される。これは、複数段積み重ねられる第1の板状部材10の異なる段に、異なる第2の板状部材20同士のつなぎ目を配置するということである。これによって、第1の板状部材10及び第2の板状部材20の分割にともない、バスケット1の特定箇所の剛性が低下することを抑制できる。
第2の板状部材20を分割して複数の部品で構成するのは、部材の共通化も考慮して、第1の板状部材10を2段、3段、4段を積み重ねた長さ程度に集約すると、部品点数を少なくできるが、第1の板状部材10と第2の板状部材20との熱伸びの差が少ない場合は、前記の段数をそれぞれ多く(例えば、4段を6段に)してもよい。
図8−1、図8−2は、第2の板状部材に水抜き用の溝を設けた例を示す図である。図9−1、図9−2は、第1の板状部材に水抜き用の溝を設けた例を示す図である。図8−1、図8−2に示すように、第2の板状部材20には、キャビティ軸Z(バスケット1の軸に相当する)方向に向かう溝22が設けられる。また、図9−1、図9−2に示すように、第1の板状部材10には、キャビティ軸Z(バスケット1の軸に相当する)方向に向かう溝12が設けられる。第2の板状部材20に設けられる溝22及び第1の板状部材10に設けられる溝12により、バスケット1からの排水が容易になるので好ましい。なお、キャビティ軸Z方向に向かう溝は、第1の板状部材10と第2の板状部材20との少なくとも一方に設ければよい。また、複数の第2の板状部材20すべてに溝22を設ける必要はなく、一部の第2の板状部材20に溝22を設ければよい。さらに、第1の板状部材10には、少なくとも一部にキャビティ軸Z方向に向かう溝が設けられていればよく、すべての第1の板状部材10に前記溝を設ける必要はない。また、プールではこの溝から未臨界機能に影響する孔の内部の空気が集まり流れ出るので、バスケット1の気泡排出性が向上し、未臨界機能を確保することが可能となる。
図10−1は、本実施形態に係るバスケットを構成する第2の板状部材の詳細な構造を示す図である。図10−2は、本実施形態に係るバスケットを構成する第1の板状部材の詳細な構造を示す図である。第1板状部材10と第2の板状部材20とを組み合わせた際に両者のずれを抑制するため、本実施形態では、第1の板状部材10と組み合わされる側における第2の板状部材20の端部に凹部20Uを設ける。そして、第1の板状部材10に設けられる隣接する孔11の間に形成される連結部11Cに第2の板状部材20の凹部20Uを組み合わせる。これによって、第1の板状部材10と第2の板状部材20とを組み合わせた場合には、凹部20Uと連結部11Cとが噛み合って、第1の板状部材10と第2の板状部材20とのずれが抑制される。その結果、バスケットの組み立てが容易になる。
図11−1は、本実施形態に係るバスケットを構成する第2の板状部材他の構造を示す図である。図11−2は、本実施形態に係るバスケットを構成する第1の板状部材の他の構造を示す図である。この構造においては、第1の板状部材10’と組み合わされる側における第2の板状部材20’の端部に凸部20Tを設ける。そして、第1の板状部材10’に設けられる孔11とは異なる孔10Hに、第2の板状部材20’の凸部20Tを組み合わせる。これによって、第1の板状部材10’と第2の板状部材20’とを組み合わせた場合には、凸部20Tと孔10Hとが組み合わさって、第1の板状部材10’と第2の板状部材20’とのずれが抑制される。凸部20Tと孔10Hとは全面(図では4面)で保持されるので角パイプが存在しない状態で組み立てる場合でも、バスケットの組み立てが容易になる。また、第2の板状部材の凸部20Tの全周が第1の板状部材10’に設けられる孔11で囲われるので、熱の搬送が容易になる効果も得ることができる。
図12−1〜図13−3は、本実施形態に係るバスケットを構成する第1の板状部材に設けられる孔を示す模式図である。次の説明では、第1の板状部材10に設けられる孔11を説明するが、第2の板状部材20に設けられる孔についても同様である。図12−1に示すように、第1の板状部材10に設けられる孔11は正方形であるが、図12−2に示す第1の板状部材10’’のように、長方形の孔11aとしてもよい。例示の図では、キャビティ軸Z方向に対して直交する水平な孔を示しているが、この孔のキャビティ軸Z方向に対して直交する孔の辺は水きり及び気泡排出を目的として勾配を設けてもよい。
また、第1の板状部材10や第2の板状部材に設けられる孔の形状は、正方形や長方形に限定されるものではなく、図13−1〜図13−3に示す第1の板状部材10b、10c、10dに設けられる孔11b、11c、11dのように、正方形又は長方形の孔に、この孔を複数かつ斜めに分割する梁部13を設けてもよい。この場合、孔11b、11c、11dの形状は三角形となる。梁部13を設けることにより、梁部13が形成される方向に対する第1の板状部材10b、10c、10dの剛性が向上する。その結果、図1、図2に示すキャスク200が斜めの姿勢で落下した場合におけるバスケット1の剛性が向上する。
図13−1に示す第1の板状部材10bは、孔11bに設けられる梁部13とキャビティ軸Zとのなす角度θが約45度であり、図13−2、図13−3に示す第1の板状部材10b、10cは、孔11b、11cに設けられる梁部13とキャビティ軸Zとのなす角度θが約60度である。キャスク200が斜め落下する場合、水平面とキャスク200の軸(キャビティ軸Z)とのなす角度が30度程度のときにおける落下姿勢でキャスク200が落下で、バスケット1の負荷が最も大きくなる。
このため、図13−2、図13−3に示す第1の板状部材10b、10cのように、梁部13とキャビティ軸Zとのなす角度θを60度程度(好ましくは60度)とすることが好ましい。これによって、バスケット1に対する負荷が最も大きくなる落下姿勢において、梁部13による剛性向上の効果を十分に発揮させることができる。
この場合、第1の板状部材に設ける孔の形状を、図13−3に示す孔11dのように、短辺がキャビティ軸Zと平行になる長方形とし、短辺を縦とした場合の縦横比を適切に設定する。例えば、前記縦横比を縦:横=1:√3に設定すれば、孔11dの対角線に沿って梁部13を設けることで、最も負荷が大きくなる姿勢でキャスク200が斜め落下した場合に対するバスケット1の剛性を確保でき、また、それぞれの孔11dの面積を一定にして、高速中性子を減速させる空間を確保できる。
図14は、本実施形態に係るバスケットの一つのセルを示す平面図である。図15、図16は、本実施形態に係るバスケットの一つのセルを管軸の周りに展開した図である。セル30Cは、角パイプ30の4個の側壁を囲む空間であり、角パイプ30の4個の側壁の周りには、それぞれ一対の第1の板状部材10e及び一対の第2の板状部材20eが配置される。一対の第1の板状部材10e同士、及び一対の第2の板状部材20e同士は、それぞれ対向して配置される。図14に示すように、対向して配置される一対の第1の板状部材10eをそれぞれB面、D面とし、対向して配置される一対の第2の板状部材20eをそれぞれA面、C面とする。
図15は、図14に示すセル30CのA面、B面、C面、D面それぞれに、三角形状の孔21e、11e、21e、11eを設けた例を示したものである。孔21e、11eは、2個を一組として管軸Zp方向に配列され、管軸Zpと直交する方向(図14に示すセル30Cの周方向)には、A面、B面、C面、D面それぞれに一組ずつ配置される。また、図16は、図14に示すセル30CのA面、B面、C面、D面それぞれに、2個を一組として孔21e、11eを配置したもので、管軸Zpと直交する方向には、A面、B面、C面、D面それぞれに複数組(図16に示す例では、4組)ずつ配置される。このように、セル30Cの周りに配置される一つの第1の板状部材10e、第2の板状部材20eに、セル30Cの周方向に向かって複数組(あるいは複数個)の孔を設けてもよい。
図17−1〜図17−5は、第1の板状部材、第2の板状部材に設けられる孔の形状の変形例を示す平面図である。図17−6は、第1の板状部材、第2の板状部材に設けられる孔の形状の変形例を示す断面図である。図17−1〜図17−6において、符号11は第1の板状部材に設けられる孔を意味し、符号21は第2の板状部材に設けられる孔を意味する。符号の後に付すアルファベットは、孔の形状が異なることを意味する。
図17−1に示すように、孔11f、21fの形状を三角形とする場合、三角形の頂点が鉛直方向(図17−1の矢印g方向)を向くようにすることが好ましい。すなわち、孔11f、21fは、鉛直方向側に突出する部分(鉛直方向突出部)Tを有することが好ましい。このようにすると、孔11f、21f内の水は、重力の作用によって三角形の頂部に集まり、鉛直方向、すなわち図1に示すキャスク200のキャビティ201Cの底部に流れ落ちるので、バスケットからの排水性が向上する。
図17−2は、孔11g、21gの形状を台形としたものであり、図17−3は、孔11h、21hの形状を五角形としたものであり、図17−4は、孔11i、21iの形状を六角形としたものである。いずれの場合も、鉛直方向突出部Tを設けることが好ましい。また、図17−5は、孔11j、21jの形状を円形としたものである。孔の形状を多角形とした場合、鉛直方向突出部Tとする頂点の位置を考慮して第1の板状部材や第2の板状部材に孔を穿孔する必要がある。しかし、孔の形状を円形とすれば、孔11j、21j内の水は必ず円弧の最も低い部分に向かうので、鉛直方向突出部Tの位置を考慮することなく穿孔できる。例示の図では、孔の上辺は水平になっているが、下辺と同様に勾配を設けてプールでの気泡排出性を向上させることもできる。
図17−6に示すように、孔11k、21kは、第1の板状部材10k、第2の板状部材20kの板面と垂直な方向に対して、孔11k、21kの軸Zhを傾斜させてもよい。このようにしても、孔11k、21k内の水は、低い方に向かって流れるので、排水性が向上する。
図18−1〜図18−7は、本実施形態に係るバスケットを構成する角パイプの例を示す断面図である。図18−1に示す角パイプ30は、周方向に向かって厚さが均一である。図18−2に示す角パイプ30aは、図18−1に示す角パイプ30の角部外側にRを設けたものである。図18−3に示す角パイプ30bは、周方向に向かって厚さが異なるものであり、図18−4に示す角パイプ30cは、図18−3に示す角パイプ30bの角部外側にRを設けたものである。これらの角パイプ30、30a、30b、30cは、例えば、粉末冶金やメカニカルアロイングを用いて製造したB−Al材のビレットを熱間押出成形することによって製造できる。
図18−5に示す角パイプ30dは、二枚の板材32dと、二枚の板材33dとを組み合わせて構成される。板材32dと33dとは、例えば、FSW(Friction Star Welding:摩擦攪拌溶接)等を含めた講義の溶接手段によって接合してもよい(以下同様)。板材32dの厚さはt1であり、板材33dの厚さはt7(t7>t1)である。すなわち、角パイプ30dは、周方向に向かって厚さが異なる。図18−6に示す角パイプ30eは、二枚の板材32eと、二枚の板材33eとを組み合わせて構成される。板材32eの厚さ及び板材33eの厚さはt1である。すなわち、角パイプ30eは、周方向に向かって厚さが均一である。このように、複数の板材を組み合わせて角パイプ30d、30eを構成すれば、難押出材であるB−Al材を用いる場合でも、比較的容易に角パイプ30d、30eを構成できる。
図18−7に示す角パイプ30fにおいて、板材を折り曲げて断面を略コの字形状に成形、あるいは、押出し成形により断面を略コの字形状に成形した部材34fは、1辺は、略角パイプの1辺に近い長さを有し、他の1辺は角パイプのコーナー部の先に短い壁面を形成できる程度の短い辺であることを特徴とし、角パイプ状にするためにコーナー付近でを組み合わせて構成される。このように、断面を略コの字形状に成型した部材34fを組み合わせて角パイプ30fを構成すれば、接合部の溶接に伴う変形の影響を最小にできるので上述した角パイプ30d、30eと同様に、難押出材であるB−Al材を用いる場合でも、比較的容易に角パイプ30d、30eを構成できる。略コの字形状に成形した部材は、FSW等を含めた広義の溶接手段によって接合される。
図19−1〜図19−5は、本実施形態に係るバスケットのセルの配置例を示す平面図である。図19−1〜図19−5中の#と数字との組み合わせは、セルの番号を示す。図19−1に示すバスケット1aは、16個のセルを4×4の格子状に配置した外側に、セルピッチの半分ずれてそれぞれ3個ずつセルを配置し、キャビティ201C内に計28個のセルを構成するものである。図19−2に示すバスケット1bは、計28個のセルを有し、#4〜#8のセル列と、#9〜#14のセル列とは、セル同士のピッチの半分ずれて配置される。同様に、#15〜#20のセル列と、#21〜#25のセル列とは、セル間距離(セルピッチ)の半分ずれて配置される。
図19−3に示すバスケット1cは、隣接するセル列同士がそれぞれセルピッチの半分ずれて配置されて、33個のセルが構成される。図19−4に示すバスケット1dは、隣接するセル列同士をずらさずに配置して、24個のセルを構成したものであり、図19−5に示すバスケット1eは、隣接するセル列同士をずらさずに配置して、30個のセルを構成したものである。このように、本実施形態では、第1の板状部材10と第2の板状部材20と角パイプ30とを組み合わせてバスケットを構成するので、セルの配置の自由度が向上する。
図20は、第1の板状部材と第2の板状部材との組み合わせ方の一例を示す拡大図である。この例では、第1の板状部材10fに溝10fsを形成し、第2の板状部材20fの端部に突起部20ftを設けて溝10fsに嵌め込む。これによって、第1の板状部材10fと第2の板状部材20fとの位置決めができるので、バスケットの組み立てが容易になる。
図21は、本実施形態の変形例に係るバスケットを示す平面図である。このバスケット1gは、角部に突起部30gtを有する角パイプ30g同士を当接させて一列に配列して、配列された角パイプ30gを一対の第1の板状部材10で挟持して構成される。角パイプ30gの突起部30gtで囲まれる空間FL及び第1の板状部材10に設けられる孔11がフラックストラップとなる。このバスケット1gは、隣接する角パイプ間に配置される第2の板状部材が不要になるので、部品点数を削減できるという利点がある。
以上、本実施形態では、厚さ方向に貫通する複数の孔を有する第1の板状部材と、厚さ方向に貫通する複数の孔を有する第2の板状部材とを組み合わせて形成される空間に、内部にリサイクル燃料集合体を収納する筒状構造体を配置して、リサイクル燃料集合体収納用バスケットを構成する。これによって、リサイクル燃料集合体収納用バスケットを構成する部材を容易に製造できる。