JP2010168536A - 二軸配向ポリエステルフィルム - Google Patents

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孝明 小嶋
Kotaro Nozawa
晃太郎 能澤
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Abstract

【課題】 耐加水分解性に優れ、高温高湿度環境や屋外での長期使用の際に起こりうる、デラミネーションによる外観不良を防ぎ、機械的性能が良好な二軸配向ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 リン元素の含有量が0〜170ppmであり、末端カルボン酸量が26当量/トン以下であり、150℃で30分間熱処理後のフィルム表面のオリゴマー量が0.80mg/m以下であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、太陽電池裏面封止材用として好適な二軸配向ポリエステルフィルムに関し、さらに詳しくは、耐加水分解性に優れ、高温高湿度環境や屋外での長期使用の際に起こりうる、デラミネーションによる外観不良を防ぎ、機械的性能が良好な二軸配向ポリエステルフィルムに関するものである。
太陽電池裏面封止材とは、日光が照射しない太陽電池裏面側からの水分の浸透を防ぐことを目的とした部材であり、必要とされる物性として、ガスバリア性、耐加水分解性、耐絶縁破壊性などが挙げられる。一般的にはガラス板が使用されているが、柔軟性に欠ける、太陽電池としての総重量が重くなるなどの観点から、軽く、柔軟性があり、上記必要物性を満たした部材による代替が求められており、フッ化ビニル樹脂フィルムとポリエステルフィルムの貼り合せフィルムやフッ素樹脂を塗布したポリエステルフィルム、ガスバリア性ポリエステルフィルムと耐加水分解性ポリエステルフィルムの貼り合せフィルムなどが使用されている。
ポリエステルフィルムは、機械的特性、熱的特性、耐薬品性に優れ、様々な用途に用いられている。特に、ポリエチレンテレフタレートを主成分としたフィルムは、工業用途、包装用途、印刷用途など各種用途で使用されてきているが、ポリエステルフィルムを高温高湿度環境で使用すると、分子鎖中のエステル結合部位の加水分解が起こり、機械的特性が劣化するほか、太陽電池裏面封止材として貼り合せて積層フィルムを構成した際に、貼り合せ界面にオリゴマーが析出し、デラミネーションの要因となることが知られている。
よって、ポリエステルフィルムを、例えば屋外で長期(20年)にわたって使用する場合、あるいは高湿度環境で使用する場合を想定し、加水分解を抑制すべく様々な検討が行われている。
ポリエステルの加水分解は、ポリエステル分子鎖の末端カルボン酸量が高いほど分解が速いことが知られている。よって、特許文献1には、エポキシ化合物を使用することで、分子鎖末端のカルボン酸をエステル化し末端カルボン酸量を低減させることで、耐加水分解性を向上させる技術が開示されている。しかし、エポキシ化合物は、製膜プロセスでの溶融押出工程、または、マテリアルリサイクル工程において、ゲル化を誘発し、異物を発生させる可能性が高く、環境的にも、コスト的にも好ましくない。
特許文献2には、ポリカルボジイミドなどのカルボジイミドを添加して末端カルボン酸量を低下させる技術が開示されているが、カルボジイミドはそれ自体熱変成を起こしやすく、反応条件によってポリエステルの着色や物性の低下、異物の発生を誘発することがある。
また、ポリエステルの加水分解は、酸性、アルカリ性環境下で促進することが知られている(非特許文献1)。よって、重合反応において好ましくない着色を防止する目的で添加されている安定剤のリン酸、亜リン酸等のリン化合物は、系内を酸性にするため、加水分解性に悪影響を与えると考えられる。
この問題を解決するため、特許文献3には、末端カルボン酸を規定量に抑制し、かつ、特定のリン酸エステルを規定量含有させることで、耐加水分解性を向上させる技術が開示されている。しかし、当該技術におけるリン酸エステルは特徴ある構造をしているため、リン酸エステルを調整する工程およびコストが必要になる。よって、安価で、かつ、屋外で長期(例えば20年)にわたる使用が可能なポリエステルフィルムを提供するには適していない。
湯木和男著 飽和ポリエステル樹脂ハンドブック 廣済堂発行 1989年 特開平9−227767号公報 特公昭38−152220号公報 特開平8―3428号公報
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであって、その解決課題は、耐加水分解性に優れ、高温高湿度環境や屋外での長期使用の際に起こりうる、デラミネーションによる外観不良を防ぎ、機械的性能が良好な二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記実状に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成からなる二軸配向ポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、リン元素の含有量が0〜170ppmであり、末端カルボン酸量が26当量/トン以下であり、150℃で30分間熱処理後のフィルム表面のオリゴマー量が0.80mg/m以下であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルムに存する。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明において、ポリエステルフィルムに使用するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものを指す。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4―シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。
本発明のポリエステルフィルムは、後述する蛍光X線分析装置を用いた分析にて検出されるリン元素量が特定範囲にあるものであり、当該リン元素は、通常はポリエステル製造時に添加されるリン酸化合物に由来するものである。本発明においては、リン元素量は0〜170ppmの範囲である必要があり、好ましくは0〜150ppmの範囲であり、さらに好ましくは1〜150ppmの範囲である。特定量のリン元素を満足することにより、耐加水分解性を高度にフィルムに付与することができる。リン元素量が多すぎると、加水分解が促進することになるため好ましくない。
リン酸化合物の例としては、リン酸、亜リン酸あるいはそのエステルホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、亜ホスホン酸化合物、亜ホスフィン酸化合物など公知のものが該当し、具体例としては、正リン酸、ジメチルフォスフェート、トリメチルフォスフェート、ジエチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、ジプロピルフォスフェート、トリプロピルフォスフェート、ジブチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、ジアミルフォスフェート、トリアミルフォスフェート、ジヘキシルフォスフェート、トリヘキシルフォスフェート、ジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、エチルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
また、熱分解や加水分解を抑制するために触媒として働きうる金属化合物をできる限り含まないことが好ましいが、フィルムの生産性を向上すべく溶融時の体積固有抵抗値を低くするため、マグネシウム、カルシウム、リチウム、マンガン等の金属を、通常300ppm以下、好ましくは250ppm以下であれば含有させることができる。また、後述する粒子や各種添加剤を配合するために、マスターバッチ法を利用するなどの方法を用いる場合などでは、重合触媒の金属成分としてアンチモンあるいはチタンを含有することもできるが、本発明の優れた耐加水分解性、耐候性を得るために、重合触媒のフィルム全体に対する含有量は、アンチモン元素として好ましくは400ppm以下、あるいはチタン元素として15ppm以下とする。なお、ここでいう金属化合物には、後述するポリエステル中に配合する粒子は含まない。
本発明のフィルム中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化珪素、カオリン、酸化アルミニウム等の粒子が挙げられる。また、特公昭59―5216号公報、特開昭59―217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜10μmが好ましい。平均粒径が0.01μm未満の場合には、フィルムに易滑性を与える効果が不足する。一方、10μmを超える場合には、フィルム生産時に破断が頻発して生産性が低下する場合がある。
さらに、ポリエステル中の粒子含有量は、フィルムを構成する全ポリエステルに対し通常0.0003〜1.0重量部、好ましくは0.0005〜0.5重量部の範囲である。
粒子含有量が0.0003重量部未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、1.0重量部を超えて添加する場合には粒径が大きすぎる場合と同様、フィルムの生産性が不十分な場合がある。
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後に添加し、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
本発明のフィルムは、塗布や染料、顔料をフィルム中に配合することにより着色されていてもよく、中でも、耐候性を高度に保つため、高ヘーズを有するか白色に着色されていることが好ましい。白色のフィルムとするためには、平均粒径1.0μm以下の酸化チタン粒子または平均粒径3μm以下の硫酸バリウム粒子を2〜30重量部、好ましくは3〜20重量部、フィルム中に含有させる。酸化チタン粒子あるいは硫酸バリウム粒子の含有量が2重量部未満の場合は、耐候性向上効果が得られなくなることがある。一方、酸化チタン粒子または硫酸バリウム粒子の含有量が30重量部を超える場合や、平均粒径がそれぞれ所定の範囲を超える場合は、上記した効果が得られない場合があり、また、フィルム生産工程におけるフィルム破断が頻発して生産性が大きく低下するなどの問題が発生することがある。
一方、高ヘーズのフィルムとする場合、ポリエステルと相溶性が低いポリマーをブレンドする方法や、粒子を含有させる方法が採用できる。ただし、当該ブレンドポリマー自身の耐候性等の問題もあり、本願においてはフィルムの耐候性を高度に保つため粒子を含有させる方法が好ましい。かかる目的で配合する粒子としては、前記易滑性向上を目的としたものと同様のものを使用できる。この場合のフィルムヘーズは、好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、特に好ましくは40%である。
なお、本発明のポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料、顔料を添加することができる。また、耐候性を向上する目的で、ポリエステルに対して0.01〜5重量部の範囲で紫外線吸収剤、特にベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤等を含有させることができる。
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常20〜250μm、好ましくは25〜200μmの範囲である。
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
すなわち、公知の手法により乾燥したまたは未乾燥のポリエステルチップを混練押出機に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。溶融押出工程においても、条件により末端カルボン酸量が増加するので、本願発明においては、押出工程における押出機内でのポリエステルの滞留時間を短くすること、一軸押出機を使用する場合は原料をあらかじめ水分量が50ppm以下、好ましくは30ppm以下になるように十分乾燥すること、二軸押出機を使用する場合はベント口を設け、40ヘクトパスカル以下、好ましくは30ヘクトパスカル以下、さらに好ましくは20ヘクトパスカル以下の減圧を維持すること等の方法を採用する。
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、160〜220℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。
さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
本発明においては、前述のとおり、ポリエステルの溶融押出機を2台または3台以上用いて、いわゆる共押出法により2層または3層以上の積層フィルムとすることができる。
層の構成としては、A原料とB原料とを用いたA/B構成、またはA/B/A構成、さらにC原料を用いてA/B/C構成またはそれ以外の構成のフィルムとすることができる。
かくして得られる本発明のフィルムは、フィルムを構成するポリエステルの末端カルボン酸量が26当量/トン以下、好ましくは24当量/トン以下である。末端カルボン酸量が26当量/トンを超えると、ポリエステルの耐加水分解性が劣る。一方、本願発明の耐加水分解性を鑑みると、ポリエステルの末端カルボン酸量の下限はないが、重縮合反応の効率、溶融押出工程での熱分解等の点から通常は10当量/トン程度である。
ポリエステルフィルムの耐加水分解性は、フィルム全体に関連する特性であり、本願発明においては、共押出による積層構造を有するフィルムの場合、当該フィルムを構成するポリエステル全体として末端カルボン酸量が上記した範囲であることが必要である。同様に、本願発明において必要とする触媒として含有するリンの含有量は、共押出による積層構造を有するフィルムの場合、当該フィルムを構成するポリエステル全体として含有量が前述の範囲であることが必要である。
また、ポリエステルフィルムに耐加水分解性を付与するにおいて、リン元素の含有量および末端カルボン酸量を上記範囲にするほか、フィルムの極限粘度が0.65以上、さらには0.68以上であることが望ましい。フィルムの極限粘度が0.65未満である場合は、ポリエステルフィルムの耐加水分解性が劣り、高温高湿度環境や屋外での長期使用が難しくなることがある。一方、本願発明の耐加水分解性を鑑みると、ポリエステルの極限粘度の上限はないが、溶融押出工程での熱分解等の点から通常は0.80程度である。
本発明において、ポリエステルの末端カルボン酸量および極限粘度を特定範囲とするため、例えば、ポリエステルチップの押出工程における押出機内でのポリエステルの滞留時間を短くする方法などが用いられる。また、低末端カルボン酸量のポリエステルチップを製膜することで、末端カルボン酸量が特定範囲のポリエステルフィルムを得てもよい。ポリエステルチップの末端カルボン酸量を低くする方法としては、溶融重合で得られたチップを固相重合する方法や、重合効率を上げる方法、重合速度を速くする方法、分解速度を抑制する方法など従来公知の方法を採用しうる。例えば、溶融重合時間を短くする方法、重合触媒量を増やす方法、高活性の重合触媒を使用する方法、重合温度を低くする方法などによって行われる。また、フィルム製造において、溶融工程を経た再生原料を配合すると末端カルボン酸量が増大するので、本願発明においてはかかる再生原料を配合しないことが好ましく、配合するとしても20重量部以下とすることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、150℃で30分間熱処理後のフィルム表面のオリゴマー量が0.80mg/m以下、好ましくは0.40mg/m以下である。ここでいうオリゴマー量とは、後述する方法で測定した環状三量体量(ポリエステル起因オリゴマー)を指す。表面オリゴマー量が0.80mg/mを超える場合は、屋外で長期(20年)にわたって使用する際に、太陽電池裏面封止材として構成した貼り合せ積層フィルムの貼り合せ界面にオリゴマーが析出することによりデラミネーションが起きる。デラミネーションが起きた場合、デラミネーションの発生箇所から水分が太陽電池内部に浸透し、発電素子をショートさせるなどの問題が発生する。
本発明のポリエステルは、溶融重合反応で得られた物であってもよいが、溶融重合後、チップ化したポリエステルを固相重合することにより原料中に含まれるオリゴマー量が低減できるので、固相重合反応で得られた物を使用する方法が好ましく用いられる。また、ポリビニルアルコールや硬化型シリコーンなどの塗布によりフィルム表面にオリゴマー析出防止層を形成してもよい。
本発明においては、前記延伸工程においてまたはその後に、フィルムに接着性、帯電防止性、滑り性、離型性等を付与するために、フィルムの片面または両面に塗布層を形成したり、コロナ処理等の放電処理を施したりすることなどもできる。
本発明によれば、耐加水分解性に優れ、高温高湿度環境や屋外での長期使用の際に起こりうる、デラミネーションによる外観不良を防ぎ、機械的性能が良好な二軸配向ポリエステルフィルムを提供でき、本発明の工業的価値は高い。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、この実施例に限定されるものではない。なお、フィルムの諸物性の測定および評価方法を以下に示す。
(1)末端カルボン酸量(当量/トン)
いわゆる滴定法によって、末端カルボン酸の量を測定した。すなわちポリエステルをベンジルアルコールに溶解し、フェノールレッド指示薬を加え、水酸化ナトリウムの水/メタノール/ベンジルアルコール溶液で滴定した。
(2)触媒由来元素の定量
蛍光X線分析装置(島津製作所社製型式「XRF−1500」)を用いて、下記表1に示す条件下で、FP法により単枚測定でフィルム中の元素量を求めた。積層フィルムの場合はフィルムを溶融してディスク状に成型して測定することにより、フィルム全体に対する含有量を測定した。なお、この方法での検出限界は、通常1ppm程度である。
Figure 2010168536
(3)極限粘度
測定試料1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量部)の溶媒に溶解させて濃度c=0.01g/cmの溶液を調製し、30℃にて溶媒との相対粘度ηを測定し、極限粘度[η]を求めた。
(4)耐加水分解性
120℃―100%RHの雰囲気にてフィルムを35時間処理し、フィルムの機械的特性として破断伸度を測定した。処理前後での破断伸度の保持率(%)を下記の式にて算出し、下記の基準で判断した。
破断伸度保持率=処理後の破断伸度÷処理前の破断伸度×100
◎:保持率が80%以上
○:保持率が60〜80%
△:保持率が30〜60%
×:保持率が30%未満
(5)フィルムの熱処理
A4サイズのケント紙と熱処理を行うポリエステルフィルムを合わせ、ゼムクリップ等で四隅をクリップし、ケント紙とポリエステルフィルムを止める。その際、オリゴマー析出防止層を設けていれば、塗布層のある面が外側になるようにする。窒素雰囲気下、150℃のオーブンに前記ポリエステルフィルムを30分間放置し熱処理を行う。
(6)フィルム表面オリゴマー量
上部が開放され、底辺の面積が250cmとなるように、熱処理後のポリエステルフィルムを折って、四角の箱を作成する。塗布層を設けている場合は、塗布層面が内側となるようにする。次いで、上記の方法で作成した箱の中に、DMF(ジメチルホルムアミド)10mlを入れ3分間放置後、DMFを回収する。回収したDMFを液体クロマトグラフィー(島津LC−7A)に供給してDMF中のオリゴマー量を求め、この値をDMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面オリゴマー量(mg/m)とする。
次に以下の例において使用したポリエステル原料について説明する。
<ポリエステル(1)、(2)の製造法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸カルシウム0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。
4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物に二酸化チタン0.002部、エチレングリコールに分散させた平均粒子径2.6μmのシリカ粒子0.08重量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には40パスカルとした。
反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.60に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステル(1)のチップを得た。極限粘度は0.61、ポリマーの末端カルボン酸量は31当量/トンであった。得られたポリエステルチップを真空下220℃にて固相重合し、極限粘度0.68、ポリマーの末端カルボン酸量は12当量/トンのポリエステル(2)のチップを得た。
<ポリエステル(3)の製造法>
ポリエステル(2)の製造において、エステル交換反応後に二酸化チタン0.001部を加えた以外は同様の方法で、ポリエステル(3)を得た。得られたポリエステル(3)の極限粘度は0.73、ポリマーの末端カルボン酸量は12当量/トンであった。
<ポリエステル(4)の製造法>
ポリエステル(2)の製造において、エステル交換反応後に正リン酸0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.04部を加えた以外は同様の方法で、ポリエステル(4)を得た。得られたポリエステル(4)の極限粘度は0.83、ポリマーの末端カルボン酸量は12当量/トンであった。
<ポリエステル(5)の製造法>
ポリエステル(2)の製造において、エステル交換反応後に正リン酸0.12部を添加した後、三酸化アンチモン0.04部を加えた以外は同様の方法で、ポリエステル(5)を得た。得られたポリエステル(5)の極限粘度は0.74、ポリマーの末端カルボン酸量は14当量/トンであった。
実施例1:
上記ポリエステル(1)およびポリエステル(3)を1:9の比率で混合したポリエステルを原料とし、ベント付き二軸押出機により、290℃で溶融押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定したキャスティングドラム上で急冷固化させて未延伸シートを得た。得られたシートを縦方向に83℃で3.7倍延伸した後、テンターに導き、110℃で横方向に3.9倍延伸し、さらに220℃で熱処理を行った。得られたフィルムの平均厚さは50μmであった。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表2に示す。得られたフィルムを用いて太陽電池裏面封止材を作成した際、貼り合せ時にフィルム表面に生じたオリゴマーによるデラミネーションは頻発せず、加水分解による強度劣化も抑制できた為、太陽電池裏面封止材として使用できる期間が満足できるレベルであった。
実施例2:
実施例1において、原料を上記ポリエステル(1)およびポリエステル(4)を1:9の比率で混合したポリエステルに変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表2に示す。得られたフィルムを用いて太陽電池裏面封止材を作成した際、貼り合せ時にフィルム表面に生じたオリゴマーによるデラミネーションは頻発せず、加水分解による強度劣化も抑制できた為、太陽電池裏面封止材として使用できる期間が満足できるレベルであった。
実施例3:
実施例1において、原料を上記ポリエステル(1)およびポリエステル(2)を1:9の比率で混合したポリエステルに変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表2に示す。得られたフィルムを用いて太陽電池裏面封止材を作成した際、貼り合せ時にフィルム表面に生じたオリゴマーによるデラミネーションは稀に発生したものの、加水分解による強度劣化も抑制できた為、太陽電池裏面封止材として使用できる期間が満足できるレベルであった。
実施例4:
実施例1において、原料を上記ポリエステル(1)およびポリエステル(2)を3:7の比率で混合したポリエステルに変更し、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン/ジブチル錫ジアセテート/アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)を100/50/1の比率で構成された塗布層を設けた以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムを用いて太陽電池裏面封止材を作成した際、貼り合せ時にフィルム表面に生じたオリゴマーによるデラミネーションは頻発せず、加水分解による強度劣化も抑制できた為、太陽電池裏面封止材として使用できる期間が満足できるレベルであった。
比較例1:
実施例4において、塗布層を設けなかった以外は、実施例4と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表3に示す。得られたフィルムを用いて太陽電池裏面封止材を作成した際、貼り合せ時にフィルム表面に生じたオリゴマーによってデラミネーションが頻発し、太陽電池裏面封止材として満足できる性能が得られなかった。
比較例2:
実施例1において、原料を上記ポリエステル(5)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表3に示す。得られたフィルムを用いて太陽電池裏面封止材を作成した際、貼り合せ時にフィルム表面に生じたオリゴマーによるデラミネーションは頻発しなかったものの、正リン酸によって加水分解が促進し、太陽電池裏面封止材として使用できる期間が満足できるレベルではなかった。
比較例3:
実施例1において、原料を上記ポリエステル(1)およびポリエステル(5)を4:6の比率で混合したポリエステルに変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表3に示す。得られたフィルムを用いて太陽電池裏面封止材を作成した際、貼り合せ時にフィルム表面に生じたオリゴマーによるデラミネーションは頻発しなかったものの、正リン酸および末端カルボン酸によって加水分解が促進し、太陽電池裏面封止材として使用できる期間が満足できるレベルではなかった。
Figure 2010168536
Figure 2010168536
本発明のフィルムは、例えば、高温高湿度環境で使用される各種用途において、好適に利用することができる。

Claims (1)

  1. リン元素の含有量が0〜170ppmであり、末端カルボン酸量が26当量/トン以下であり、150℃で30分間熱処理後のフィルム表面のオリゴマー量が0.80mg/m以下であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
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