JP2010133003A - 耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材、ポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性の確認方法、並びに耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件設定方法 - Google Patents

耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材、ポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性の確認方法、並びに耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件設定方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2010133003A
JP2010133003A JP2009053398A JP2009053398A JP2010133003A JP 2010133003 A JP2010133003 A JP 2010133003A JP 2009053398 A JP2009053398 A JP 2009053398A JP 2009053398 A JP2009053398 A JP 2009053398A JP 2010133003 A JP2010133003 A JP 2010133003A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
anodic oxide
aluminum alloy
oxide film
porous anodic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2009053398A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5416436B2 (ja
Inventor
Koji Wada
浩司 和田
Takayuki Tsubota
隆之 坪田
Mamoru Hosokawa
護 細川
Atsushi Hisamoto
淳 久本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2009053398A priority Critical patent/JP5416436B2/ja
Publication of JP2010133003A publication Critical patent/JP2010133003A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5416436B2 publication Critical patent/JP5416436B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Abstract

【課題】アルミニウム合金で成る基材の表面に形成したポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材を提供することを課題とする。
【解決手段】Mg:0.4〜1.5質量%、Si:0.4〜1.5質量%、Mn:0.4〜1.5質量%を含有し、Fe、Cr、Cuの含有量が夫々0.03質量%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物であるアルミニウム合金基材の表面にポーラス型陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム合金部材であって、皮膜の膜厚が30μm以上であり、且つ、皮膜の空隙率と真密度の関係が、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ドライエッチング装置、CVD装置、イオン注入装置、スパッタリング装置などの半導体や液晶の製造設備などの真空チャンバ、或いはその真空チャンバの内部に設けられる部品の材料として好適に用いられるアルミニウム合金部材と、そのアルミニウム合金部材の表面に形成されるポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性の確認方法と、その耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件を設定する方法に関するものである。
アルミニウム合金を基材として、その表面にポーラス型陽極酸化皮膜などの陽極酸化皮膜を形成して、アルミニウム合金基材に耐腐食性(耐高温ガス腐食性)や耐摩耗性などを付与させる陽極酸化処理は、従来から広く採用されてきた。
例えば、半導体製造設備のプラズマ処理装置に用いられる真空チャンバ、並びにその真空チャンバの内部に設けられる電極等の各種部品は、アルミニウム合金を用いて形成されることが通常である。しかしながら、そのアルミニウム合金を無垢のままで使用すれば、耐腐食性や耐摩耗性などを維持することができないので、アルミニウム合金によって形成された基材の表面に陽極酸化処理を施してポーラス型陽極酸化皮膜などの陽極酸化皮膜を形成することで、耐腐食性や耐摩耗性などを維持していた。
このアルミニウム合金基材の表面に陽極酸化皮膜を形成する理由は、真空チャンバの内部では、シリコン・ウエハなどの被処理物に半導体製造の前処理工程や製造工程において、室温から200℃以上の高温環境下で様々な種類の腐食性ガスやプラズマによって所定の加工が行われるため、真空チャンバの内面や、真空チャンバの内部に設けられる電極等の各種部品も前記した雰囲気に曝されることになり、無垢のアルミニウム合金のままでは、耐腐食性や耐摩耗性などを維持することができないためである。
近年、このような、表面に陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム合金部材に関する種々の提案がなされている。被処理物の低汚染化、すなわち、Fe、Cr、Cuの低減というという観点から、陽極酸化処理を施す基材の材料として、高純度のアルミニウム中に、Mg、Siを添加し、不純物の含有量を極力制限したアルミニウム合金基材が、特許文献1〜7として提案されている。これら特許文献1〜7記載のアルミニウム合金部材では、被処理物の低汚染化に対しては効果が期待できるもの、必ずしも十分な耐久性を得ることができない。
一方で、表面に耐久性に優れた陽極酸化皮膜を形成できる基材の材料として、高純度のアルミニウム中に、Mg、Siを添加したうえに、更に、Mn、Cu、Feを添加したアルミニウム合金基材が、被処理物の低汚染化に対しては効果が期待できるうえに、耐久性に優れた皮膜が形成できるアルミニウム合金基材であるとして特許文献8,9として提案されている。
しかしながら、特許文献8,9記載のアルミニウム合金部材には、汚染源となるCu、Feが含有されていることから、被処理物の低汚染化に対しては十分な効果が期待できないうえ、現行の使用ガス環境下では皮膜久性が不足する問題や、陽極酸化皮膜の成長速度が遅く、生産性に劣るといった問題がある。
本出願人は、それらの問題を解消した陽極酸化処理用アルミニウム合金等を特許文献10として提案している。この特許文献10記載の陽極酸化処理用アルミニウム合金は、合金成分として、Mg:0.1〜2.0質量%、Si:0.1〜2.0質量%、Mn:0.1〜2.0質量%を含有し、Fe、Cr、Cuの含有量が夫々0.03質量%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物であるアルミニウム合金である。
しかしながら、アルミニウム合金基材の合金成分(Mg、Si、Mn)を上記したような成分範囲とするだけでは、その表面に形成される陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性については、必ずしも良好とすることはできなかった。
また、アルミニウム合金基材の表面に形成された陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性が良好であることを容易に確認することができる手段、アルミニウム合金で成る基材の表面に陽極酸化皮膜を形成する際に、その形成条件を容易に設定することができる手段に関する優れた先行技術は特にないのが現状であった。
特開平10−88271号公報 特開2004−99972号公報 特開2002−241992号公報 特開2002−256488号公報 特開2003−119539号公報 特開2003−119540号公報 特開2003−171727号公報 特開平11−43734号公報 特開2001−220637号公報 特開2008−45161号公報
本発明は、上記従来の問題を解決せんとしてなされたもので、アルミニウム合金で成る基材の表面に形成したポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材を提供することを課題とするものである。また、そのポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性が良好であることを容易に確認することができるポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性の確認方法を提供することを課題とするものである。更には、耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜を容易に形成することができる耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件設定方法を提供することを課題とするものである。
また、半導体製造装置におけるシリコン・ウエハやCVD装置におけるガラス基板などの被処理物を載置する、下部電極やサセプタ、或いは静電チャックなどから、前記被処理物の裏面がFe、Cr、Cuなどによって汚染されることを低減することができるアルミニウム合金部材を提供することも副次的な目的とする。
請求項1記載の発明は、Mg:0.4〜1.5質量%、Si:0.4〜1.5質量%、Mn:0.4〜1.5質量%を含有し、Fe、Cr、Cuの含有量が夫々0.03質量%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物であるアルミニウム合金で成る基材の表面に膜厚が30μm以上のポーラス型陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム合金部材であって、前記ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率と真密度の関係が、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足することを特徴とする耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材である。
請求項2記載の発明は、前記ポーラス型陽極酸化皮膜のポア間の障壁厚さが25nm以下であることを特徴とする請求項1記載の耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材である。
請求項3記載の発明は、Mg:0.4〜1.5質量%、Si:0.4〜1.5質量%、Mn:0.4〜1.5質量%を含有し、Fe、Cr、Cuの含有量が夫々0.03質量%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物であるアルミニウム合金で成る基材の表面に、膜厚が30μm以上のポーラス型陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム合金部材の、前記ポーラス型陽極酸化皮膜の300℃以上における使用温度T℃での耐クラック性および耐腐食性の確認方法であって、前記ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率と真密度の関係が、「皮膜の空隙率≧(201−0.35×T)−(71−0.16T)×皮膜の真密度」という条件を満足することで、前記ポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性が良好であることを確認することを特徴とするポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性の確認方法である。
請求項4記載の発明は、Mg:0.4〜1.5質量%、Si:0.4〜1.5質量%、Mn:0.4〜1.5質量%を含有し、Fe、Cr、Cuの含有量が夫々0.03質量%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物であるアルミニウム合金で成る基材の表面に、膜厚が30μm以上のポーラス型陽極酸化皮膜を形成するための条件を設定する、300℃以上における使用温度T℃での耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件設定方法であって、前記ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率と真密度の関係が、「皮膜の空隙率≧(201−0.35×T)−(71−0.16T)×皮膜の真密度」という条件を満足するように、前記ポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件を設定することを特徴とする耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件設定方法である。
本発明の請求項1記載のアルミニウム合金部材によると、アルミニウム合金で成る基材の表面に形成したポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性を優れたものとすることができる。
本発明の請求項2記載のアルミニウム合金部材によると、半導体製造装置におけるシリコン・ウエハやCVD装置におけるガラス基板などの被処理物を載置する、下部電極やサセプタ、或いは静電チャックなどから、前記被処理物の裏面がFe、Cr、Cuなどによって汚染されることを、ポーラス型陽極酸化皮膜中のポア間の障壁の厚さを調整することで、低減することができる。
本発明の請求項3記載のポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性の確認方法によると、ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率と真密度の関係から、そのポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性が良好であるということを容易に確認することができる。
本発明の請求項4記載の耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件設定方法によると、アルミニウム合金で成る基材の表面にポーラス型陽極酸化皮膜を形成する際に、ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率と真密度の関係が、「皮膜の空隙率≧(201−0.35×T)−(71−0.16T)×皮膜の真密度」という条件を満足するようにポーラス型陽極酸化皮膜の各種形成条件を設定することで、耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜を容易に形成することができる。また、その形成条件を設定することが可能か否かの判断も容易に行うことができる。
実施例の評価試験で得られた皮膜の空隙率と腐食発生サイクル数の関係を示すグラフ図である。 実施例の400℃加熱時、350℃加熱時、300℃加熱時での評価試験で得られた皮膜の空隙率と真密度の関係を示すグラフ図である。
本発明者らは、従来からのアルミニウム合金で成る基材の表面に、陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム合金部材では、耐クラック性および耐腐食性という観点から判断すると必ずしも十分でないので、更に優れた耐クラック性および耐腐食性を備えたアルミニウム合金部材を見出すために鋭意検討を行った。
その結果、アルミニウム合金で成る基材の表面に形成する陽極酸化皮膜として、耐プラズマ性の観点で優れる膜厚が30μm以上のポーラス型陽極酸化皮膜を選択し、これを選択したうえ、更に、そのポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率と真密度の関係を、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足するようにすることで、耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材を得ることができることを確認した。尚、本明細書では、前記不等式で示したように、ポーラス型陽極酸化皮膜のことを単に皮膜として説明する場合もある。
まず、本発明者らは、バリア型の陽極酸化処理では膜厚1μm程度の陽極酸化皮膜しか得られることができず、耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材とすることができないため、厚膜を形成できるポーラス型の陽極酸化皮膜をアルミニウム合金で成る基材の表面に形成したアルミニウム合金部材を、検討対象とすることとした。
ポーラス型陽極酸化皮膜に発生するクラックは、「皮膜に加わる力>皮膜が耐える力」という条件で発生する。ポーラス型陽極酸化皮膜に加わる力は、加熱によるアルミニウム合金基材とポーラス型陽極酸化皮膜の線膨張差で発生し、ポーラス型陽極酸化皮膜に加わる力は、ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率が大きくなると小さくなる。一方、皮膜が耐える力は、ポーラス型陽極酸化皮膜の真密度が大きくなると同様に大きくなる。従って、空隙率、真密度が大きいポーラス型陽極酸化皮膜をアルミニウム合金基材の表面に形成することで、耐クラック性および耐腐食性を向上させることができる。
以上のような観点で、更に実験検討を重ねた結果、耐プラズマ性の観点で優れる膜厚が30μm以上のポーラス型陽極酸化皮膜を選択し、これを選択したうえで、ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率と真密度の関係を、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足させるようにすることで、このポーラス型陽極酸化皮膜を表面に形成したアルミニウム合金部材を、耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材とすることができることを確認した。
次に、前記したポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率と真密度の算出方法について説明する。ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率は、皮膜表面や断面のSEM(走査電子顕微鏡)観察やTEM(透過電子顕微鏡)観察によって、空隙部の体積を求め、皮膜みかけ体積に対する比率として百分率(%)で算出する。一方、ポーラス型陽極酸化皮膜の真密度は、皮膜みかけ密度と前記空隙率から算出することができ、「真密度=皮膜みかけ密度/((100−空隙率)/100)」という式から求めることができる。
尚、皮膜みかけ密度は、「陽極酸化処理アルミニウム合金重量=アルミニウム合金体積×アルミニウム合金密度+皮膜みかけ体積×皮膜みかけ密度」という式に、測定した「陽極酸化処理アルミニウム合金重量」、アルミニウム合金の面積と板厚から計算した「アルミニウム合金体積」、別途求めた「アルミニウム合金密度=アルミニウム合金重量/アルミニウム合金体積」、ポーラス型陽極酸化皮膜の面積と体積から計算した「皮膜みかけ体積」を代入することで求めることができる。
また、このような耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材に、更に低汚染性に優れるという効果を付与させるために、本発明者らは、更に鋭意検討を行った。その結果、ポーラス型陽極酸化皮膜のポア間の障壁厚さを25nm以下とすることで、半導体製造装置におけるシリコン・ウエハやCVD装置におけるガラス基板などの被処理物を載置する、下部電極やサセプタ、或いは静電チャックなどから、前記被処理物の裏面がFe、Cr、Cuなどによって汚染されることを、低減することができることを見出した。
尚、本発明で定義するポア間の障壁厚さとは、陽極酸化皮膜の表面をSEM(走査電子顕微鏡)で観察したときの、1μm中に存在するポア間の障壁厚さの平均値のことを示す。具体的には、陽極酸化皮膜の表面をSEM(走査電子顕微鏡)で観察したときの、近接する10個以上のポアについて、夫々最近接したポア間の最短距離(固体部分の最小厚さ)を測定し、ポアとポアがつながっている場合はそのポア間の障壁厚さは0とし、その測定した平均値を求めることで、ポア間の障壁厚さとした。本発明では、このポア間の障壁厚さを25nm以下とすることを要件とした。
尚、本発明では、ポア間の障壁厚さが25nm以下のポーラス型陽極酸化皮膜を形成することを要件としたが、ポア間の障壁厚さの下限は特に規定しない。しかしながら、後述の電解電圧や処理温度の制御にてポア間の障壁厚さを5nm未満に制御することは実質不可能であり、下限を5nmとすることが好ましい。
以下、アルミニウム合金で成る基材の表面に、膜厚が30μm以上のポーラス型陽極酸化皮膜を形成した際に、そのポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率と真密度の関係が、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足するポーラス型陽極酸化皮膜となるための、製造条件等のポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件について説明する。
また、併せて、ポア間の障壁厚さが25nm以下となるポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件についても説明する。
ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率は前記したように大きい方が良いが、その皮膜の空隙率は、皮膜中に形成されるポアの径を大きくするか、或いはポアの数密度を大きくすることで、大きくすることができる。一方、ポーラス型陽極酸化皮膜の真密度も前記したように大きい方が良いが、皮膜の真密度は、アルミナセラミックの密度である4.0g/cmを超えるのは困難であると考えられ、その皮膜の真密度は大きくても3.6g/cmであると考えることができる。また、ポア間の障壁厚さも、前記したポアの数密度とポア径に関係する。
アルミニウム合金で成る基材の表面にポーラス型陽極酸化皮膜を形成させる製造条件のうち、ポーラス型陽極酸化皮膜のポア径、ポアの数密度、真密度に影響を及ぼす製造条件は、「陽極酸化処理時の電解電圧」、「陽極酸化処理の処理温度」、並びに「陽極酸化処理液の組成」であって、「アルミニウム合金基材の組成」もポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件として影響を及ぼす。以上の4条件が、本発明のポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件である。
陽極酸化処理時の電解電圧は、皮膜のポア径、ポアの数密度、真密度に夫々影響を及ぼす。この電解電圧が大きくなると、皮膜のポア径と真密度は大きくなるが、ポアの数密度は逆に小さくなる。すなわち、電解電圧が小さいと皮膜のポア径と真密度が小さくなり、逆に電解電圧が大きいとポアの数密度が小さくなる。また、ポア間の障壁厚さは、ポアの数密度とポア径のバランスの結果、電解電圧を小さくするほど、障壁厚さは薄くなる。
このようなこと考慮すると、処理温度、陽極酸化処理液の組成、アルミニウム合金基材の組成にも影響されるが、空隙率と真密度の関係が、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足するようにするための最適な電圧範囲は、およそ20〜60Vの範囲内に存在すると考えられる。また、ポア間の障壁厚さを25nm以下とするには、電圧は35V以下とする必要があるが、電圧が小さすぎると成膜速度が遅くなるため、この点も考慮すると、最適な電圧範囲は、およそ20〜35Vの範囲内に存在すると考えられる。
陽極酸化処理の処理温度は、主として皮膜のポア径に大きく影響する。処理温度が高いほど皮膜のポア径が大きくなるため、皮膜の空隙率を大きくするには、また、ポア間の障壁厚さを薄くするには、できるだけ高温で処理するのが良いと考えられる。実験を重ねた結果、少なくとも30℃以上で処理しなければ、所望の空隙率、ポア間の障壁厚さを得ることができないということが確認できた。
但し、処理温度が40℃を超えると、陽極酸化処理液の蒸発量が多くなって製造の管理が難しくなる。また、陽極酸化処理時の電解電圧、陽極酸化処理液の組成、アルミニウム合金基材の組成の影響も受けるため、具体的な上限温度はここで特定することはできないが、高温になるほど陽極酸化処理中の皮膜の化学溶解が大きくなって30μm以上の皮膜を形成できなくなる。
以上のことから、陽極酸化処理時の電解電圧、陽極酸化処理液の組成、アルミニウム合金基材の組成も関係するが、一般に陽極酸化処理の処理温度は、30〜40℃の範囲内とする必要がある。
ポーラス型の陽極酸化皮膜を形成するための陽極酸化処理液としては、シュウ酸、硫酸、リン酸、クロム酸を挙げることができるが、汚染の観点から皮膜中にクロム(Cr)が残存することになるクロム酸は使用することができない。また、硫酸を用いた場合、皮膜の化学溶解が大きくなりすぎ、前述の処理温度の範囲(30〜40℃)では、30μm以上の膜厚の皮膜を形成することが難しくなる。無理に形成しようとすると、低い電解電圧で形成しなければならなくなり、所望の真密度を得ることができなくなる。また、リン酸を用いた場合、処理温度を高温としても皮膜の成長速度が小さいため、リン酸は適切な陽極酸化処理液とはいえない。
従って、シュウ酸がポーラス型の陽極酸化皮膜を形成するための陽極酸化処理液として最適である。陽極酸化処理液としてのシュウ酸の濃度は、一般的な20〜50g/Lで良く、前段で述べた問題が発生しない程度であれば、硫酸などの添加剤を加えても問題はない。
前述のように、アルミニウム合金基材の組成も、形成されるポーラス型陽極酸化皮膜のポア径、ポアの数密度、真密度に影響を及ぼすが、汚染の観点から、Fe、Cr、Cuの含有量が夫々0.03質量%以下に規制されたアルミニウム合金基材にあっては、添加元素として、Mg:0.4〜1.5質量%、Si:0.4〜1.5質量%、Mn:0.4〜1.5質量%を含有させることで、皮膜の空隙率と真密度の関係が、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足するポーラス型陽極酸化皮膜をアルミニウム合金基材の表面に形成することができる。
尚、Fe、Cr、Cuの含有量が夫々0.03質量%以下の純アルミニウム(4N)において、Mg、Si、Mnの何れかが0.4〜1.5質量%の範囲から逸脱するアルミニウム合金を基材として用いた場合、皮膜の空隙率と真密度の関係が、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足するポーラス型陽極酸化皮膜を基材の表面に形成することはできない。
以上に説明したように、膜厚が30μm以上のポーラス型陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム合金部材であって、前記ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率と真密度の関係が、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足することで、耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材を得ることができるため、逆に、この「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足することを確認することで、ポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性が良好であるということを確認することができる。詳しい確認方法については、次の実施例で説明する。
また、ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率と真密度の関係が、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足するように、前記ポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件、すなわち、「陽極酸化処理時の電解電圧」、「陽極酸化処理の処理温度」、「陽極酸化処理液の組成」、「アルミニウム合金基材の組成」の4条件を適正に設定することで、耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜をアルミニウム合金基材の表面に形成することができる。詳しい皮膜の形成条件設定方法についても、次の実施例で説明する。
この実施例では、まず、本発明の耐クラック性および耐腐食性に関する効果を確証するため、これらの評価試験を実施した。表1に記載した各成分組成(表1に示す各元素の列に示す数値の単位は質量%)を有するアルミニウム合金鋳塊を溶製(サイズ:220mmW×250mmL×t100mm、冷却速度:15〜10℃)し、その鋳塊を切断して面削(サイズ:220mmW×150mmL×t60mm)した後、均熱処理(540℃×4h)を施した。均熱処理後、60mm厚の素材を熱間圧延により6mm厚の板材に圧延し、切断(サイズ:220mmW×400mmL×t6mm)した後、溶体化処理(510〜520℃×30min)を施した。溶体化処理後、水焼入れし、時効処理(160〜180℃×8h)を施して供試合金板を得た。
その供試合金板より、25mm×35mm(圧延方向)×t3mmの試験片を切り出し、その表面をRa1.6の表面粗さに面削加工した。次いで、60℃−10%NaOH水溶液中に2分浸漬した後に水洗し、更に、30℃−20%HNO水溶液中に2分浸漬した後に水洗して表面を清浄化した後に、表1に示す各条件で陽極酸化処理を施して試験片の表面にポーラス型陽極酸化皮膜を形成した。尚、形成したポーラス型陽極酸化皮膜の膜厚は、夫々処理時間を調整して45±2μmの範囲とした。
以上のようにして作製した各試料(アルミニウム合金部材)を、5%Cl−Arガス雰囲気下(400℃)に4時間静置した後、目視により腐食の発生の有無を観察すること(詳細は本出願人が先に出願した特開2003−34894号公報を参照)を1サイクルとし、腐食の発生が観察されるまで、繰返し評価試験を行った。腐食の発生が9〜10サイクルで始めて確認できた試料や10サイクルでも確認することができなかった試料を適正と判断し、それらを合格とした。これら合格試料を、本発明では耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材であると評価した。尚、評価試験は10サイクルまでとし、10サイクルでも腐食が確認できない場合は、「>10」として表1に記載した。
その試験結果を表1および図1に示す。尚、表1には耐クラック性および耐腐食性をまとめて耐食性として記載している。また、空隙率は、皮膜表面や断面のSEM(走査電子顕微鏡)観察やTEM(透過電子顕微鏡)観察によって、空隙部の体積を求め、皮膜みかけ体積に対する比率として百分率(%)で算出し、真密度は、「真密度=皮膜みかけ密度/((100−空隙率)/100)」という式に、空隙率と皮膜みかけ密度を代入して求めた。また、図1にはNo.1〜17のデータのみをグラフに記載している。
Figure 2010133003
表1によると、アルミニウム合金で成る基材の合金組成を適切に調整したうえで、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足するNo.5、6、7、12、13、14、15、16では、腐食の発生が9〜10サイクルで始めて確認されたり、10サイクルでも確認することができなかったりした。これらは適正な試料であると判断することができる。
一方、アルミニウム合金で成る基材の合金組成は条件を満足しないが、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足するNo.18、19、20では腐食の発生が5サイクル或いは6サイクルで始めて確認できた。これらのNo.18、19、20で、腐食の発生が5サイクル或いは6サイクルで確認された理由は、化合物が粗大化して腐食物が発生したためと考えられる。また、アルミニウム合金で成る基材の合金組成は条件と、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を、共に満足しないNo.1、2、3、4、8、9、10、11、17では、腐食の発生を2〜4サイクルの間で確認した。
以上の評価試験の結果からアルミニウム合金で成る基材の合金組成を、Mg:0.4〜1.5質量%、Si:0.4〜1.5質量%、Mn:0.4〜1.5質量%とし、Fe、Cr、Cuの含有量を夫々0.03質量%以下に規制し、残部をAlおよび不可避的不純物とした上で、ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率と真密度の関係が、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足するようにすることで、耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材を得ることができることを確認した。また、アルミニウム合金で成る基材の合金組成を適切に調整することで、更に耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材を得ることができることも確認した。
尚、Fe、Cr、Cuの含有量が夫々0.03質量%以下に規制されたアルミニウム合金基材を用いて作製したNo.1、2、3、4の試料が、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足しなかったのは、Mg、Si、Mnの含有量の何れかが0.4〜1.5質量%の範囲に収まらなかったことが原因と考えられる。
これは、Mg−Si−Mnによる効果が十分ではなく、皮膜のポア径が小さくなり、その結果、空隙率が小さくなったためと考えられる。表1に示す空隙率は、61−7×皮膜の真密度に対して16.2〜19.8も小さく、また、処理温度も35℃と既に高温で、たとえ40℃に処理温度を上げたとしても空隙率を十分に大きくすることはできない。また、ポア径、真密度、ポアの数密度とトレードオフの関係にある陽極酸化処理時の電解電圧を調整しても「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足できる見込みは小さい。従って、No.1、2、3、4の組成のアルミニウム合金の適用は断念すべきと判断することができる。
また、同様にFe、Cr、Cuの含有量が夫々0.03質量%以下に規制されたアルミニウム合金基材を用いて作製したNo.8、9、10、11の試料も「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足しなかった。
しかしながら、Mg、Si、Mnの含有量は、全て0.4〜1.5質量%の範囲に収まっており、アルミニウム合金基材の組成が同一組成のNo.12、13が、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足したことを考えると、陽極酸化処理時の電解電圧、陽極酸化処理の処理温度、並びに陽極酸化処理液の組成といったポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件を調整することで、耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材を作製することができると考えられる。
No.8、9については、処理液温度が夫々25℃、28℃と低く、また、表1に示す空隙率は、61−7×皮膜の真密度に対してやや低い程度であるので、その処理液温度を高くすることで、所望のポーラス型陽極酸化皮膜を形成できる見込みがあり、その方向でポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件を調整し、設定すれば良い。
No.10については、表1に示す空隙率が、61−7×皮膜の真密度に対して僅かに0.1低いだけであるので、処理設備での温調能力や処理液蒸発の対策に特に問題がなければ、処理液温度を34℃から更に高くすれば対応できる。尚、設備的制約がある場合は、空隙率と、61−7×皮膜の真密度の差は僅かであることから、陽極酸化処理時の電解電圧を最適化することで、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足することができる可能性がある。従って、50V前後の電解電圧で、皮膜のポア径、真密度、ポアの数密度と定量的関係を調整し、電解電圧を最適化することで、ポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件を設定することが可能か否かの判断をし、可能性がある場合はポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件の設定に着手すれば良い。
陽極酸化処理時の電解電圧を55VにしたNo.11については、皮膜のポア径が大きくなったものの、ポアの数密度が小さくなり、結果として空隙率が小さくなっており、電解電圧を低くすることで所望の皮膜を形成できる見込みがある。電解電圧を50VとしたNo.10でもやや空隙率が小さかったことから、電解電圧を50Vより低くすることで所望の皮膜を形成できると想定することができる。実際に、No.13では、電解電圧を45Vとすることで所望の皮膜を形成することができた。
また、各試料(アルミニウム合金部材)を、5%Cl−Arガス雰囲気下で、400℃で加熱したときに、ポーラス型陽極酸化皮膜に加わる応力(単位:MPa)を、薄膜ストレス測定装置(KLA Tencor社、FLX−2320)を用いて、ポーラス型陽極酸化皮膜を室温から400℃まで加熱することで、測定した。その結果を、表2に示す。
Figure 2010133003
この試験で得られたポーラス型陽極酸化皮膜に加わる応力と、空隙率の関係から、「ポーラス型陽極酸化皮膜に加わる力は、ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率が大きくなると、小さくなる。」ということが分かる。
このように、ポーラス型陽極酸化皮膜に加わる力と、空隙率は相関することから、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件式は、表2に示した結果から「14000/400℃加熱時に皮膜に加わる応力(MPa) ≧61−7×皮膜の真密度」という条件式に置き換えることができる。当然のことではあるが、表2に示すこの試験結果では、表1に示す先の試験結果と同じ試験結果を得ることができた。
次に、先の400℃に加熱した試験では不合格であったNo.1〜4、No.8〜11、No.17について、改めて供試合金板から各試料(アルミニウム合金部材)を作製し、400℃加熱時と同じ要領で、350℃加熱時の腐食試験を実施した。更に、この試験で不合格であったNo.1〜4、No.8、No.17について、再度改めて供試合金板から各試料(アルミニウム合金部材)を作製し、400℃加熱時と同じ要領で、300℃加熱時の腐食試験を実施した。これらの試験結果を表3および図2に示す。
Figure 2010133003
図2には、350℃加熱時、300℃加熱時に加え、400℃加熱時の試験結果も併せて示す。これら全ての試験結果を総合して勘案すると、試験温度T℃で、ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率と真密度の関係が、「皮膜の空隙率≧(201−0.35×T)−(71−0.16T)×皮膜の真密度」という条件を満足するものが、試験結果が合格になることが分かった。尚、表3には、「(201−0.35×T)−(71−0.16T)×皮膜の真密度」という式に350℃、300℃を代入して求めた、「78.5−15×真密度」、「96−23×真密度」という表示を夫々している。
すなわち、「皮膜の空隙率≧(201−0.35×T)−(71−0.16T)×皮膜の真密度」という式から、300℃以上における使用温度T℃での耐クラック性および耐腐食性を確認することができ、また、300℃以上における使用温度T℃での耐クラック性および耐腐食性の形成条件を設定することができる。
続いて、半導体製造装置におけるシリコン・ウエハやCVD装置におけるガラス基板などの被処理物を載置する、下部電極やサセプタ、或いは静電チャックなどからの被処理物の裏面への汚染の評価、すなわち、低汚染性の評価試験を実施した。
低汚染性の評価試験は、表1に示す各条件で陽極酸化処理を施した各試験片の上に、夫々被処理物としてSi基板を載せて、下部電極の使用環境を模擬した400℃、1.5×10−3Torr(2Pa)の減圧下で、真空熱処理を2時間実施した。その後、Si基板の試験片と接触した裏面を、全反射蛍光X線分析法(TXRF)を用いて分析した。尚、この試験に用いた試料は、表1に示す試験で合格であったNo.5、6、7、12、13、14、15、16についてのみ、評価試験を実施した。
実機の半導体製造装置等において要求される低汚染性は、各プロセス、使用環境等によって、夫々異なるため、定量的に低汚染性の基準値を設定することは困難である。そこで、この評価試験では、配線幅45nmの最新型プロセスを想定して低汚染性の評価を行い、全反射蛍光X線分析法(TXRF)を用いて測定したSi基板裏面の単位面積当たりのFe原子数が、10×1010atoms/cm以下であった場合の、試験片の陽極酸化皮膜を低汚染性に優れると判断した。
尚、ポア間の障壁厚さは、前記したように、陽極酸化皮膜の表面をSEM(走査電子顕微鏡)で観察したときの、1μm中に存在するポア間の障壁厚さの平均値のことを示す。具体的には、陽極酸化皮膜の表面をSEM(走査電子顕微鏡)で観察したときの、近接する10個以上のポアについて、夫々最近接したポア間の最短距離(固体部分の最小厚さ)を測定し、ポアとポアがつながっている場合はそのポア間の障壁厚さは0とし、その測定した平均値を求めることで、ポア間の障壁厚さとした。その試験結果を表4に示す。
Figure 2010133003
No.6、12、16では、ポア間の障壁厚さは、23nm、21nm、22nmと、何れも25nm以下であったため、Si基板裏面の単位面積当たりのFe原子数は、10×1010atoms/cm以下であり、低汚染性に優れていた。
これに対し、ポア間の障壁厚さが25nmを超えるNo.5、7、13、14、15では、Si基板裏面の単位面積当たりのFe原子数は、10×1010atoms/cmを超えており、低汚染性に優れたものとはいえない。

Claims (4)

  1. Mg:0.4〜1.5質量%、Si:0.4〜1.5質量%、Mn:0.4〜1.5質量%を含有し、Fe、Cr、Cuの含有量が夫々0.03質量%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物であるアルミニウム合金で成る基材の表面に膜厚が30μm以上のポーラス型陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム合金部材であって、
    前記ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率と真密度の関係が、「皮膜の空隙率≧61−7×皮膜の真密度」という条件を満足することを特徴とする耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材。
  2. 前記ポーラス型陽極酸化皮膜のポア間の障壁厚さが25nm以下であることを特徴とする請求項1記載の耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材。
  3. Mg:0.4〜1.5質量%、Si:0.4〜1.5質量%、Mn:0.4〜1.5質量%を含有し、Fe、Cr、Cuの含有量が夫々0.03質量%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物であるアルミニウム合金で成る基材の表面に、膜厚が30μm以上のポーラス型陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム合金部材の、前記ポーラス型陽極酸化皮膜の300℃以上における使用温度T℃での耐クラック性および耐腐食性の確認方法であって、
    前記ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率と真密度の関係が、「皮膜の空隙率≧(201−0.35×T)−(71−0.16T)×皮膜の真密度」という条件を満足することで、前記ポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性が良好であることを確認することを特徴とするポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性の確認方法。
  4. Mg:0.4〜1.5質量%、Si:0.4〜1.5質量%、Mn:0.4〜1.5質量%を含有し、Fe、Cr、Cuの含有量が夫々0.03質量%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物であるアルミニウム合金で成る基材の表面に、膜厚が30μm以上のポーラス型陽極酸化皮膜を形成するための条件を設定する、300℃以上における使用温度T℃での耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件設定方法であって、
    前記ポーラス型陽極酸化皮膜の空隙率と真密度の関係が、「皮膜の空隙率≧(201−0.35×T)−(71−0.16T)×皮膜の真密度」という条件を満足するように、前記ポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件を設定することを特徴とする耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件設定方法。
JP2009053398A 2008-10-30 2009-03-06 耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材、ポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性の確認方法、並びに耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件設定方法 Expired - Fee Related JP5416436B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009053398A JP5416436B2 (ja) 2008-10-30 2009-03-06 耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材、ポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性の確認方法、並びに耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件設定方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008279932 2008-10-30
JP2008279932 2008-10-30
JP2009053398A JP5416436B2 (ja) 2008-10-30 2009-03-06 耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材、ポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性の確認方法、並びに耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件設定方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010133003A true JP2010133003A (ja) 2010-06-17
JP5416436B2 JP5416436B2 (ja) 2014-02-12

Family

ID=42344551

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009053398A Expired - Fee Related JP5416436B2 (ja) 2008-10-30 2009-03-06 耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材、ポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性の確認方法、並びに耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件設定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5416436B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012167321A (ja) * 2011-02-14 2012-09-06 Kanagawa Acad Of Sci & Technol 陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法並びにその方法により製造された陽極酸化ポーラスアルミナ
JP2013517383A (ja) * 2010-01-20 2013-05-16 コンステリウム フランス 真空チャンバ用の6xxx合金製品の製造方法

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08144089A (ja) * 1994-11-16 1996-06-04 Kobe Steel Ltd AlまたはAl合金製真空チャンバ部材
JPH1143734A (ja) * 1997-07-23 1999-02-16 Kobe Steel Ltd ガス耐食性とプラズマ耐食性に優れるアルマイト皮膜形成性および耐熱性に優れた半導体製造装置用Al合金および半導体製造装置用材料
JP2000282294A (ja) * 1999-03-31 2000-10-10 Kobe Steel Ltd 耐熱割れ性および腐食性に優れた陽極酸化皮膜の形成方法並びに陽極酸化皮膜被覆部材
JP2001220637A (ja) * 2000-02-04 2001-08-14 Kobe Steel Ltd 陽極酸化処理用アルミニウム合金、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金部材およびプラズマ処理装置
JP2003119539A (ja) * 2001-10-12 2003-04-23 Showa Denko Kk 皮膜形成処理用アルミニウム合金、ならびに耐食性に優れたアルミニウム合金材およびその製造方法
JP2004099972A (ja) * 2002-09-10 2004-04-02 Kyushu Mitsui Alum Kogyo Kk 陽極酸化処理用アルミニウム合金及びそれを用いたプラズマ処理装置
WO2008018262A1 (en) * 2006-08-11 2008-02-14 Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho Aluminum alloy for anodizing having durability, contamination resistance and productivity, method for producing the same, aluminum alloy member having anodic oxide coating, and plasma processing apparatus

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08144089A (ja) * 1994-11-16 1996-06-04 Kobe Steel Ltd AlまたはAl合金製真空チャンバ部材
JPH1143734A (ja) * 1997-07-23 1999-02-16 Kobe Steel Ltd ガス耐食性とプラズマ耐食性に優れるアルマイト皮膜形成性および耐熱性に優れた半導体製造装置用Al合金および半導体製造装置用材料
JP2000282294A (ja) * 1999-03-31 2000-10-10 Kobe Steel Ltd 耐熱割れ性および腐食性に優れた陽極酸化皮膜の形成方法並びに陽極酸化皮膜被覆部材
JP2001220637A (ja) * 2000-02-04 2001-08-14 Kobe Steel Ltd 陽極酸化処理用アルミニウム合金、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金部材およびプラズマ処理装置
JP2003119539A (ja) * 2001-10-12 2003-04-23 Showa Denko Kk 皮膜形成処理用アルミニウム合金、ならびに耐食性に優れたアルミニウム合金材およびその製造方法
JP2004099972A (ja) * 2002-09-10 2004-04-02 Kyushu Mitsui Alum Kogyo Kk 陽極酸化処理用アルミニウム合金及びそれを用いたプラズマ処理装置
WO2008018262A1 (en) * 2006-08-11 2008-02-14 Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho Aluminum alloy for anodizing having durability, contamination resistance and productivity, method for producing the same, aluminum alloy member having anodic oxide coating, and plasma processing apparatus
JP2008045161A (ja) * 2006-08-11 2008-02-28 Kobe Steel Ltd プラズマ処理装置に用いられる陽極酸化処理用アルミニウム合金およびその製造方法、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金部材、ならびにプラズマ処理装置

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013517383A (ja) * 2010-01-20 2013-05-16 コンステリウム フランス 真空チャンバ用の6xxx合金製品の製造方法
JP2012167321A (ja) * 2011-02-14 2012-09-06 Kanagawa Acad Of Sci & Technol 陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法並びにその方法により製造された陽極酸化ポーラスアルミナ

Also Published As

Publication number Publication date
JP5416436B2 (ja) 2014-02-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN100503859C (zh) 用在半导体处理设备中的抗卤素的阳极氧化铝
CN1321207C (zh) 用于半导体处理设备中的抗卤素的阳极氧化铝
JP5833987B2 (ja) 陽極酸化処理性に優れたアルミニウム合金および陽極酸化処理アルミニウム合金部材
JP4168066B2 (ja) プラズマ処理装置に用いられる陽極酸化処理用アルミニウム合金およびその製造方法、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金部材、ならびにプラズマ処理装置
KR20090020496A (ko) 내구성과 저오염성을 겸비한 양극 산화 처리 알루미늄 합금
JP3919996B2 (ja) プラズマ処理装置用アルミニウム合金、プラズマ処理装置用アルミニウム合金部材およびプラズマ処理装置
JP7190491B2 (ja) フッ化物皮膜形成用アルミニウム合金部材及びフッ化物皮膜を有するアルミニウム合金部材
JP5416436B2 (ja) 耐クラック性および耐腐食性に優れたアルミニウム合金部材、ポーラス型陽極酸化皮膜の耐クラック性および耐腐食性の確認方法、並びに耐クラック性および耐腐食性に優れたポーラス型陽極酸化皮膜の形成条件設定方法
JP5369083B2 (ja) 高耐電圧性を有する表面処理アルミニウム部材およびその製造方法
JP3871560B2 (ja) 皮膜形成処理用アルミニウム合金、ならびに耐食性に優れたアルミニウム合金材およびその製造方法
JP3871544B2 (ja) 皮膜形成処理用アルミニウム合金、ならびに耐食性に優れたアルミニウム合金材およびその製造方法
JP3746878B2 (ja) ガス耐食性とプラズマ耐食性に優れるアルマイト皮膜形成性および耐熱性に優れた半導体製造装置用Al合金および半導体製造装置用材料
JP5937937B2 (ja) アルミニウム陽極酸化皮膜
JP2007290933A (ja) 耐食性部材とその製造方法およびこれを用いた半導体・液晶製造装置
JP2018024943A (ja) 窒化バナジウム膜、窒化バナジウム膜の被覆部材およびその製造方法
JP4774014B2 (ja) AlまたはAl合金
JP5438485B2 (ja) 表面処理部材
JP5452034B2 (ja) 半導体製造装置用表面処理部材、および、その製造方法
JP5416437B2 (ja) 半導体や液晶の製造設備における真空チャンバ或いはその真空チャンバの内部に設けられる部品の材料に用いられるアルミニウム合金部材
JP5370984B2 (ja) 真空機器用アルミニウム合金材およびその製造方法
JP5683077B2 (ja) 低汚染性に優れたアルミニウム合金部材
JP5397884B2 (ja) 真空機器用表面処理アルミニウム材の製造方法
JP2002256488A (ja) 陽極酸化処理用アルミニウム合金およびガス耐食性に優れたアルミニウム合金材
JP5426956B2 (ja) 半導体液晶製造装置用表面処理部材の製造方法
JP5419066B2 (ja) 真空機器用表面処理アルミニウム材の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20110413

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20110413

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110901

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20121031

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130917

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20131021

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20131112

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131115

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5416436

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees