JP3871560B2 - 皮膜形成処理用アルミニウム合金、ならびに耐食性に優れたアルミニウム合金材およびその製造方法 - Google Patents

皮膜形成処理用アルミニウム合金、ならびに耐食性に優れたアルミニウム合金材およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばPCD装置、PVD装置、LCD(液晶ディスプレイ)製造装置、半導体製造装置等の装置材料として好適に使用され、皮膜形成処理によって優れた耐食性が得られるアルミニウム合金、ならびに耐食性に優れたアルミニウム合金材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
上述の各種装置を構成するチャンバー、サセプター、バッキングプレート等の部材材料として、アルミニウム合金、特にAl−Mg系のJIS 5052アルミニウム合金やAl−Si−Mg系のJIS 6061アルミニウム合金からなる展伸材や鋳物材が使用されることが多い。また、これらの製造装置は高温で使用される上にシラン(SiH4)やフッ素系または塩素系のハロゲンガス等の腐食性ガス雰囲気で使用されるため、各部材に陽極酸化処理を施して表面に硬質の陽極酸化皮膜を形成し、耐食性を向上させている。
【0003】
しかし、このような表面処理をしても使用環境や使用頻度によっては早期に表面劣化が起こり、表面処理の更新が必要であった。特に、CVD、PVD処理装置では、使用温度が室温から約400℃までの広範囲にわたり、しかも繰り返し熱応力が加わるため、母材と陽極酸化皮膜との熱変形能の違いにより割れが生じることがある。また長期使用の間には、顕著な損傷はなくてもワークを処理する際に装置表面に接触して陽極酸化皮膜が摩耗することもある。
【0004】
そこで、半導体等の製造装置材料として、例えば特開平11−43734号公報においてMn、Cu、Feを添加したアルミニウム合金が提案されている。このアルミニウム合金は、重金属を添加することで熱的に安定な金属間化合物を生成させるとともに、熱サイクルが加わったときに緩衝効果を果たす二重構造の陽極酸化皮膜を生成させることによって、熱サイクルおよび腐食環境下における耐食性向上を図ったものである。
【0005】
また、特開平8−92684号公報においてフッ化処理用Al−Mg系合金が提案されている。このアルミニウム合金は、フッ化処理により形成されるフッ化不働態膜によって耐食性向上を図ったものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の特開平11−43734号公報記載のアルミニウム合金は、陽極酸化皮膜の欠陥から、母材中のAl−Fe系等の金属間化合物が腐食性ガスと反応して放出されたり、あるいは陽極酸化皮膜中の金属間化合物が僅かずつ蒸発または析出により放出されるという問題があった。このようなアルミニウム合金を、例えば半導体等の絶縁膜の成膜装置に使用すると、処理チャンバー内が放出された金属間化合物で汚染され、ひいては生成される絶縁膜が金属間化合物で汚染されて膜質が低下するという問題があった。
【0007】
また、特開平8−92684号公報記載のアルミニウム合金についても、形成されたフッ化不働態膜による耐食性が不十分であり、さらなる耐食性の向上が求められている。
【0008】
この発明は、上述の技術背景に鑑み、高温熱サイクル、腐食雰囲気下において強度および耐食性に優れた皮膜形成処理用アルミニウム合金、ならびに耐食性に優れたアルミニウム合金材およびその製造方法の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、この発明の皮膜形成処理用アルミニウム合金は、フッ化処理による単独皮膜、Ni−Pメッキ処理とフッ化処理による複合皮膜、陽極酸化処理とフッ化処理による複合皮膜のいずれかの耐食性皮膜を形成する処理を施すアルミニウム合金であって、Mg:2.0〜5.0質量%を含有し、さらにTi:0.02〜0.1質量%、B:0.007〜0.1質量%のうちの少なくとも1種を含有し、不純物としてのSi、Fe、Cu、Mn、Cr、ZnおよびNiの各含有量がそれぞれ0.1質量%以下に規制され、残部がAlおよび他の不純物からなることを基本要旨とする。
【0010】
前記皮膜形成処理用アルミニウム合金において、Mg含有量は2.5〜4.5質量%、Ti含有量は0.03〜0.07質量%、B含有量は0.01〜0.05質量%が好ましく、Si、Fe、Cu、Mn、Cr、ZnおよびNiの各含有量はそれぞれ0.05質量%以下に規制されていることが好ましい。
【0011】
また、前記皮膜形成処理用アルミニウム合金は、CVD装置、PVD装置、液晶ディスプレイ(LCD)製造装置、半導体製造装置のいずれかにおける、チャンバー、サセプター、バッキングプレートのいずれかの材料として用いられるアルミニウム合金として好適に使用される。
【0012】
この発明の耐食性に優れたアルミニウム合金材は、Mg:2.0〜5.0質量%を含有し、さらにTi:0.02〜0.1質量%、B:0.007〜0.1質量%のうちの少なくとも1種を含有し、不純物としてのSi、Fe、Cu、Mn、Cr、ZnおよびNiの各含有量がそれぞれ0.1質量%以下に規制され、残部がAlおよび他の不純物からなるアルミニウム合金母材の表面に、フッ化処離による単独理皮膜、Ni−Pメッキ処理とフッ化処理による複合皮膜、陽極酸化処理とフッ化処理による複合皮膜のいずれかの耐食性皮膜が形成されてなることを基本要旨とする。
【0013】
また、前記アルミニウム合金母材におけるMg含有量は2.5〜4.5質量%、Ti含有量は0.03〜0.07質量%、B含有量は0.01〜0.05質量%が好ましく、Si、Fe、Cu、Mn、Cr、ZnおよびNiの各含有量はそれぞれ0.05質量%以下に規制されていることが好ましい。
【0014】
また、前記耐食性に優れたアルミニウム合金材は、CVD装置、PVD装置、液晶ディスプレイ(LCD)製造装置、半導体製造装置のいずれかにおける、チャンバー、サセプター、バッキングプレートのいずれかの材料として好適に使用される。
【0015】
この発明の耐食性に優れたアルミニウム合金材の製造方法は、Mg:2.0〜5.0質量%を含有し、さらにTi:0.02〜0.1質量%、B:0.007〜0.1質量%のうちの少なくとも1種を含有し、不純物としてのSi、Fe、Cu、Mn、Cr、ZnおよびNiの各含有量がそれぞれ0.1質量%以下に規制され、残部がAlおよび他の不純物からなるアルミニウム合金母材の表面に、フッ化処理による単独皮膜、Ni−Pメッキ処理とフッ化処理による複合皮膜、陽極酸化処理とフッ化処理による複合皮膜のいずれかの耐食性皮膜形成処理を施すことを基本要旨とする。
【0016】
また、前記耐食性に優れたアルミニウム合金材は、CVD装置、PVD装置、液晶ディスプレイ(LCD)製造装置、半導体製造装置における、チャンバー、サセプター、バッ キングプレートのいずれかの材料として用いられるアルミニウム合金材として好適に使用される。
【0017】
この発明の皮膜形成処理用アルミニウム合金、および耐食性に優れたアルミニウム合金材のアルミニウム合金母材の化学組成において、各元素の添加意義および規制意義は次のとおりである。
【0018】
Mgは合金強度を向上させる元素である。Mg含有量が2.0質量%未満では強度向上効果に乏しく、5.0質量%を超えると加工性が低下するため、Mg含有量は2.0〜5.0質量%とする。さらに、Mgには、フッ化処理を施した場合にフッ素とともにフッ化不働態膜を形成させ、また機械加工性を向上させる効果がある。好ましいMg含有量は2.5〜4.5質量%である。
【0019】
TiおよびBは、結晶粒の微細化、合金の強度向上および熱膨張係数の低下に効果のある元素である。結晶粒の微細化によって表面処理性が向上し、母材と皮膜との密着性が高まるとともに皮膜が均質となって、皮膜形成による耐食性が助長される。また、合金強度が向上すると、熱処理時および機械加工時の歪みが低減される。さらに、熱膨張係数が低下すると皮膜の密着性がさらに向上し、熱歪みに対する劣化が抑制される。これらの効果はTiまたはBの少なくとも一方の含有によって得られるが、両方の添加により顕著な効果を得ることができる。Ti含有量が0.02質量%未満、あるいはB含有量が0.007質量%未満では前記効果に乏しく、Ti含有量あるいはB含有量が0.1質量%を超えると合金の溶解温度が上がって添加が困難となる。好ましいTi含有量は0.03〜0.07質量%であり、好ましいB含有量は0.01〜0.05質量%である。
【0020】
また、不純物としての重金属Si、Fe、Cu、Mn、Cr、ZnおよびNiが多量に含有されていると、母材および皮膜中のAl−Fe系金属間化合物の生成量が増し、皮膜欠陥から、金属間化合物が蒸発または析出により放出され、あるいはハロゲンガス等の腐食性ガスと反応して金属組織から脱落して放出される。重金属単体でも放出される。また、重金属含有量および金属間化合物量が増えると皮膜の欠陥が増大し、重金属および金属間化合物が放出され易くなる。そして、このアルミニウム合金またはアルミニウム合金材が、例えばCVD装置用材料、PVD装置用材料、LCD製造装置用材料、半導体製造装置のいずれかにおける、チャンバー、サセプター、バッキングプレートのいずれかの材料として用いられる場合には、放出された重金属および金属間化合物が処理または製造されるLCD、半導体等を汚染して製品品質を劣化させる。さらに、強度向上および加工性向上のために上記範囲のMgを添加するためには、金属間化合物を生成させる不純物としての重金属を規制する必要がある。このため、前記各重金属元素はそれぞれ0.1質量%以下に規制して、金属間化合物の生成量を抑制するとともに皮膜欠陥を減少させる必要がある。これらの重金属元素の好ましい含有量はそれぞれ0.05質量%以下である。
【0021】
この発明の耐食性に優れたアルミニウム合金材は、上述した組成のアルミニウム合金母材の表面に、フッ化処理による単独皮膜、Ni−Pメッキ処理とフッ化処理による複合皮膜、陽極酸化処理とフッ化処理による複合皮膜のいずれかの耐食性皮膜が形成されている。前記皮膜は、上述したように母材合金の組成制御によって欠陥の少ない皮膜に形成されているため、高温熱サイクル、腐食環境下においても重金属および金属間化合物が放出されにくく、優れた耐食性、特にガス耐食性を有し、ひいては合金材としての耐食性が優れている。また、長時間の使用劣化によって皮膜が割れたり摩耗して母材が露出した場合でも、母材中の重金属含有量そのものが規制されているために放出量も少なく、半導体等への汚染による悪影響も少ない。
【0022】
前記耐食性皮膜としては、フッ化処理皮膜の単独皮膜、あるいはNi−Pメッキ処理とフッ化処理による複合皮膜、または陽極酸化処理とフッ化処理による複合皮膜を例示でき、いずれも上述した優れた耐食性が得られる。これらのうち、単独皮膜は皮膜形成処理が容易である点で推奨でき、複合皮膜は異種皮膜の複合化により耐食性を相乗的に向上しうる点で推奨できる。
【0023】
なお、このような皮膜によって優れたガス耐食性を有する合金材は、水に対しても優れた耐食性を示す。
【0024】
前記耐食性に優れたアルミニウム合金材の製造方法においては、所要形状に加工した母材に対して耐食性皮膜形成処理を施す。各耐食性皮膜形成処理は常法に従って行えば良く、条件は限定されない。
【0025】
陽極酸化処理は、硫酸浴、蓚酸浴等により処理する。例えばアルミニウム合金材を半導体等製造装置材料として使用する場合であれば、液組成:10%H2SO4、液温0+/-2℃、電流密度:DC2〜4.5A/dm2、電圧:23〜120V、処理時間:60分の条件で処理すると、約50μmの硬質陽極酸化皮膜を形成することができる。
【0026】
フッ化処理は、加熱下でフッ素ガスまたはフッ化物ガスをアルミニウム合金母材の表面に接触させるか、あるいは液体フッ化物を接触させる方法等を例示でき、フッ化不働態皮膜を形成することができる。
【0027】
Ni−Pメッキ処理とフッ化処理による複合皮膜を形成する場合は、例えば次亜りん酸塩を還元剤とした硫酸ニッケル浴を用いてNi−Pメッキ処理を施してメッキ皮膜を形成した後、上述したフッ化処理を施す。これにより、Ni−Pメッキ皮膜とフッ化不働態皮膜との複合皮膜が形成される。
【0028】
また、陽極酸化処理とフッ化処理による複合皮膜を形成する場合は、上述した陽極酸化処理を施して陽極酸化皮膜を形成した後、上述したフッ化処理を施す。これにより、陽極酸化皮膜とフッ化不働態皮膜との複合皮膜が形成される。
【0029】
また、いずれの場合も、皮膜形成処理の前処理として脱脂洗浄、エッチング、表面研磨等、後処理としての洗浄、乾燥、加熱等は適宜行う。
【0030】
所要形状への加工も常法に従えば良く限定されないが、半導体等製造装置材料として高温熱サイクル、腐食環境下で使用する場合は、切削、研削時および接合時の残留応力を除去するために、それぞれの加工後に350〜380℃で熱処理することが好ましい。
【0031】
また、この発明のアルミニウム合金および合金材は、高温、腐食ガス雰囲気に曝されるあらゆる部材に適した合金および合金材であり、特にCVD装置用、PVD装置用、液晶ディスプレイ(LCD)製造装置用、半導体製造装置用のアルミニウム合金材料として好適に使用される。
【0032】
【実施例】
後掲の表1に示す各組成のアルミニウム合金について、常法に従ってDC鋳造した鋳塊を450〜600℃で均質化処理し、その後熱間圧延および冷間圧延を施して厚さ4mmのアルミニウム合金板を製作した。
【0033】
50mm×50mmに切断した各アルミニウム合金板に対し、下記条件で皮膜を形成した。
(硫酸陽極酸化皮膜の形成)
浴組成:15%H2SO4、浴温:25℃、電圧:20V、処理時間:20分で陽極酸化処理を行い、膜厚:20μmの皮膜を形成した。
(蓚酸陽極酸化皮膜の形成)
浴組成:4%(COOH)2・2H2O、浴温:25℃、電圧:30V、処理時間:30分で陽極酸化処理を行い、膜厚:15μmの皮膜を形成した。
(フッ化処理皮膜の形成)
前処理として化学研磨を行った後、20%フッ素ガス(F2)+80%N2を導入したチャンバー内で、260℃×24時間保持し、膜厚2μmのフッ化不働態皮膜を形成した。
(Ni−Pメッキ処理とフッ化処理の複合皮膜の形成)
次亜りん酸塩を還元剤とした硫酸ニッケル浴中で、無電解Ni−Pメッキを行い15μmのメッキ皮膜を形成した後、20%フッ素ガス(F2)+80%N2を導入したチャンバー内で260℃×24時間保持し、Ni−Pメッキ皮膜とフッ化不働態皮膜との複合皮膜を形成した。この複合皮膜の膜厚は3μmであった。
(陽極酸化処理とフッ化処理の複合皮膜の形成)
上述の方法で20μmの硫酸陽極酸化皮膜を形成した後、20%フッ素ガス(F2)+80%N2を導入したチャンバー内で260℃×24時間保持し、硫酸陽極酸化皮膜とフッ化不働態皮膜との複合皮膜を形成した。この複合皮膜の膜厚は3μmであった。
【0034】
そして、各皮膜を形成したアルミニウム合金板に対し、下記の方法によりガス耐食性試験および強度試験を行った。
〔ガス耐食性試験〕
前記アルミニウム合金板を、半導体製造工程における絶縁膜の成膜装置の処理チャンバー内に投入し、半導体絶縁膜の絶縁不良が発生するまでの時間を計測した。試験に使用したシリコンウエーハは直径200mm、厚さ700μm、チャンバー寸法は幅400mm×奥行き400mm×高さ200mmであり、絶縁膜の成膜はプラズマCVD(400℃、腐食性ガス:SiH4−N2O、プラズマ励起雰囲気)により行った。
【0035】
前記絶縁膜の成膜試験において、絶縁不良は、アルミニウム合金中に不純物として含有される重金属またはこの重金属によって形成された金属間化合物が絶縁膜を汚染し、SiまたはSiO2への拡散係数が大となったためであると推測される。従って、絶縁不良までの時間、換言すれば成膜可能時間が長いほどアルミニウム合金母材または各皮膜からの重金属および金属間化合物の放出量が少ないと評価することができる。評価結果を表1に示す。
【0036】
なお、参考例6,9の同一組成のアルミニウム合金において、硫酸陽極酸化皮膜よりも蓚酸陽極酸化皮膜の成膜可能時間が長いのは、蓚酸陽極酸化皮膜の耐熱性によるものと推測される。
【0037】
また、複合皮膜を形成した2種類のアルミニウム合金板(実施例11,12))が、陽極酸化処理皮膜またはフッ化処理皮膜の単独皮膜(実施例1〜10)よりも成膜可能時間が長いのは異種皮膜の複合化によりガス耐食性が相乗的に向上したことによると考えられる。
〔強度試験〕
ガス耐食性試験と同サンプルを用い、JIS Z2201に基づいて引張試験を行い、強度を比較した。評価結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
Figure 0003871560
【0039】
表1の結果より、重金属の含有量を規制したアルミニウム合金、および各耐食性皮膜を形成したアルミニウム合金板は、高温、腐食雰囲気下における絶縁膜の成膜可能時間が長く、母材または各皮膜からの重金属および金属間化合物の放出量が少ないことを裏付けている。また、重金属含有量の規制により、金属化合物の生成量が少ないことに加え、欠陥の少ない皮膜が形成されて、重金属や金属間化合物が放出されにくいことも成膜可能時間延長に寄与していると推測される。さらに所定量のMg、Ti、Bを含有することで優れた強度が得られる。
【0040】
これらの結果より、各実施例の皮膜形成処理用アルミニウム合金および皮膜を形成したアルミニウム合金板は、強度、耐食性が優れており、CVD装置用材料、PVD装置用材料、LCD製造装置用材料、半導体製造装置用材料として好適である。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の皮膜形成処理用アルミニウム合金は、フッ化処理による単独皮膜、Ni−Pメッキ処理とフッ化処理による複合皮膜、陽極酸化処理とフッ化処理による複合皮膜のいずれかの耐食性皮膜を形成する処理を施すアルミニウム合金であって、Mg:2.0〜5.0質量%を含有し、さらにTi:0.02〜0.1質量%、B:0.007〜0.1質量%のうちの少なくとも1種を含有し、不純物としてのSi、Fe、Cu、Mn、Cr、ZnおよびNiの各含有量がそれぞれ0.1質量%以下に規制され、残部がAlおよび他の不純物からなるから、母材および形成される皮膜中の重金属含有量、およびこれらの重金属によって形成される金属間化合物量が少ない。また、これらの量が少ないことによって、欠陥の少ない皮膜を生成させることができて耐食性が優れ、高温熱サイクル、腐食環境下においても、皮膜欠陥からの重金属および金属間化合物の放出量が少ない。さらに、Mgの含有により優れた強度が得られ、Ti、Bの含有により優れた表面処理性、皮膜密着性、強度、低い熱膨張係数が得られ、これらによる加工歪みの低減、皮膜密着性のさらなる向上、熱歪みに対する劣化抑制といった効果が得られる。
【0042】
前記皮膜形成処理用アルミニウム合金において、Mg含有量が2.5〜4.5質量%である場合は特に優れた強度が得られる。Ti含有量が0.03〜0.07質量%、またはB含有量が0.01〜0.05質量%である場合には、特に優れた表面処理性、皮膜密着性、強度、低い熱膨張係数が得られ、これらによる加工歪みの低減、皮膜密着性のさらなる向上、熱歪みに対する劣化抑制といった効果も顕著となる。
【0043】
Si、Fe、Cu、Mn、Cr、ZnおよびNiの各含有量がそれぞれ0.05質量%以下に規制されている場合には、特にこれらの重金属含有量および金属間化合物の少ない皮膜を形成することができる。
【0044】
また、この発明の耐食性に優れたアルミニウム合金材は、母材が上述の化学組成であり、重金属含有量およびこれらの重金属によって形成される金属間化合物量が少ない。このため、表面に形成されている耐食性皮膜は欠陥の少ない耐食性に優れたものとなり、高温熱サイクル、腐食環境下においても、皮膜欠陥からの重金属および金属間化合物の放出量が少ない。また、Mgの含有によって母材強度が優れ、Ti、Bの含有によって表面処理性、皮膜密着性、強度、低い熱膨張係数が得られ、これらによる加工歪みの低減、皮膜密着性のさらなる向上、熱歪みに対する劣化抑制といった効果が得られ、ひいては皮膜形成による耐食性を助長する。
【0045】
従って、高温熱サイクル、腐食環境下で使用されるCVD装置、PVD装置、LCD製造装置、半導体製造装置における、チャンバー、サセプター、バッキングプレートのいずれかの材料として、この発明の皮膜形成処理用アルミニウム合金または耐食性に優れたアルミニウム合金材を使用することにより、これらの装置で処理または製造される製品への重金属および金属間化合物の汚染を抑制し、製品品質を向上させることができる。さらに、長時間の使用劣化によって耐食性皮膜が割れたり摩耗して母材が露出した場合でも、重金属含有量そのものが規制されているから放出量も少なく、製品への汚染による悪影響も少ない。
【0046】
特に、前記耐食性皮膜が、フッ化処理皮膜の単独皮膜である場合は皮膜形成処理が容易である。また、前記耐食性皮膜が、Ni−Pメッキ処理とフッ化処理による複合皮膜、または陽極酸化処理とフッ化処理による複合皮膜である場合には、異種皮膜の複合化によって特に優れた耐食性が得られる。
【0047】
また、この発明の耐食性に優れたアルミニウム合金材の製造方法は、上述の組成の合金母材に対して各皮膜形成処理を施すものであり、この発明の耐食性に優れたアルミニウム合金材を製造することができる。
【0048】
特に、前記耐食性皮膜形成処理が、フッ化処理の単独処理である場合は皮膜形成処理が容易である。また、前記耐食性皮膜形成処理が、Ni−Pメッキ処理とフッ化処理による複合処理、または陽極酸化処理とフッ化処理による複合処理である場合には、異種皮膜の複合皮膜が形成されるため特に優れた耐食性が得られる。
【0049】
また、この発明のアルミニウム合金および合金材は耐食性に優れているから、高温、腐食ガス雰囲気に曝されるあらゆる部材材料に適している。特にこのような環境で使用されるCVD装置用、PVD装置用、液晶ディスプレイ(LCD)製造装置用、半導体製造装置いずれかにおける、チャンバー、サセプター、バッキングプレートのいずれかのアルミニウム合金材料として適し、優れた耐食性を有するこれらの装置を構成することができる。

Claims (14)

  1. フッ化処理による単独皮膜、Ni−Pメッキ処理とフッ化処理による複合皮膜、陽極酸化処理とフッ化処理による複合皮膜のいずれかの耐食性皮膜を形成する処理を施すアルミニウム合金であって、Mg:2.0〜5.0質量%を含有し、さらにTi:0.02〜0.1質量%、B:0.007〜0.1質量%のうちの少なくとも1種を含有し、不純物としてのSi、Fe、Cu、Mn、Cr、ZnおよびNiの各含有量がそれぞれ0.1質量%以下に規制され、残部がAlおよび他の不純物からなることを特徴とする皮膜形成処理用アルミニウム合金。
  2. Mg含有量は2.5〜4.5質量%である請求項1に記載の皮膜形成処理用アルミニウム合金。
  3. Ti含有量は0.03〜0.07質量%である請求項1または2に記載の皮膜形成処理用アルミニウム合金。
  4. B含有量は0.01〜0.05質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の皮膜形成処理用アルミニウム合金。
  5. Si、Fe、Cu、Mn、Cr、ZnおよびNiの各含有量はそれぞれ0.05質量%以下に規制されている請求項1〜4のいずれかに記載の皮膜形成処理用アルミニウム合金。
  6. 前記皮膜形成処理用アルミニウム合金は、CVD装置、PVD装置、液晶ディスプレイ(LCD)製造装置、半導体製造装置のいずれかにおける、チャンバー、サセプター、バッキングプレートのいずれかの材料として用いられるアルミニウム合金である請求項1〜5のいずれかに記載の皮膜形成処理用アルミニウム合金。
  7. Mg:2.0〜5.0質量%を含有し、さらにTi:0.02〜0.1質量%、B:0.007〜0.1質量%のうちの少なくとも1種を含有し、不純物としてのSi、Fe、Cu、Mn、Cr、ZnおよびNiの各含有量がそれぞれ0.1質量%以下に規制され、残部がAlおよび他の不純物からなるアルミニウム合金母材の表面に、フッ化処理による単独皮膜、Ni−Pメッキ処理とフッ化処理による複合皮膜、陽極酸化処理とフッ化処理による複合皮膜のいずれかの耐食性皮膜が形成されてなることを特徴とする耐食性に優れたアルミニウム合金材。
  8. 前記アルミニウム合金母材におけるMg含有量は2.5〜4.5質量%である請求項のいずれかに記載の耐食性に優れたアルミニウム合金材。
  9. 前記アルミニウム合金母材におけるTi含有量は0.03〜0.07質量%である請求項7または8のいずれかに記載の耐食性に優れたアルミニウム合金材。
  10. 前記アルミニウム合金母材におけるB含有量は0.01〜0.05質量%である請求項7〜9のいずれかに記載の耐食性に優れたアルミニウム合金材。
  11. 前記アルミニウム合金母材におけるSi、Fe、Cu、Mn、Cr、ZnおよびNiの各含有量はそれぞれ0.05質量%以下に規制されている請求項7〜10のいずれかに記載の耐食性に優れたアルミニウム合金材。
  12. 前記耐食性に優れたアルミニウム合金材は、CVD装置、PVD装置、液晶ディスプレイ(LCD)製造装置、半導体製造装置のいずれかにおける、チャンバー、サセプター、バッキングプレートのいずれかの材料として用いられるアルミニウム合金材である請求項7〜11のいずれかに記載の耐食性に優れたアルミニウム合金材。
  13. Mg:2.0〜5.0質量%を含有し、さらにTi:0.02〜0.1質量%、B:0.007〜0.1質量%のうちの少なくとも1種を含有し、不純物としてのSi、Fe、Cu、Mn、Cr、ZnおよびNiの各含有量がそれぞれ0.1質量%以下に規制され、残部がAlおよび他の不純物からなるアルミニウム合金母材の表面に、フッ化処理による単独皮膜、Ni−Pメッキ処理とフッ化処理による複合皮膜、陽極酸化処理とフッ化処理による複合皮膜のいずれかの耐食性皮膜形成処理を施すことを特徴とする耐食性に優れたアルミニウム合金材の製造方法。
  14. 前記耐食性に優れたアルミニウム合金材は、CVD装置、PVD装置、液晶ディスプレイ(LCD)製造装置、半導体製造装置のいずれかにおける、チャンバー、サセプター、バッキングプレートのいずれかの材料として用いられるアルミニウム合金材である請求項13のいずれかに記載の耐食性に優れたアルミニウム合金材の製造方法。
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