JP2007270199A - 耐高温酸化性に優れたチタン合金およびエンジン排気管 - Google Patents

耐高温酸化性に優れたチタン合金およびエンジン排気管 Download PDF

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Abstract

【課題】800℃を越えるより高温での耐高温酸化性を向上させたチタン合金や、このチタン合金で構成されたエンジン排気管を提供することを目的とする。
【解決手段】チタン合金として、Siを特定量含むとともに、Alを規制したTi−Si系の成分組成とし、エンジン排気管などに用いるチタン合金の800℃を越える、より高温での耐高温酸化性を向上させる。更に、Nb、Mo、CrのSiとの複合添加、等軸結晶粒の粗大化、針状組織化、チタン合金最表面Siの濃化、銅、酸素、炭素などの不純物の低減などの手段を適宜付加して、チタン合金の800℃を越える850℃などより高温での耐高温酸化性を向上させる。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐高温酸化性に優れたチタン合金および耐高温酸化性が必要とされるエンジン排気管に関するものである。本発明で言うチタン合金とは、圧延などの塑性加工や成形加工によって、板、条、線、管などの種々の形状とされたチタン合金材のことを言う。
チタン合金は一般的な鉄鋼材料に比較して、比強度が高く、軽量化が強く指向されている自動車を中心とする輸送機分野への適用が進みつつある。その中でエンジン周りの排気系の排気管材料は、現在ステンレス鋼が主流であるが、上記軽量化目的のために排気管のチタン化が検討されつつある。しかしながら排気管の温度は部位によっては500℃以上の高温になるため、酸化の進行が早く、耐久性向上のためには、耐高温酸化性が要求される。
ここで、エンジン周りの排気系の排気管とは、自動車用や自動二輪用のマフラーにおける、エキゾーストマニホールド、エキゾーストパイプ、触媒マフラー、プリマフラー、サイレンサー(メインマフラー)などのマフラー部品などを含むものである。
このチタン材の耐高温酸化性 (以下、単に耐酸化性とも言う) を高めるために、各種表面処理の他に、従来からチタン合金自体の改善が提案されている。例えば、Alを0.5〜2.3質量%含有させ、組織をα相主体とするチタン合金が提案されている(特許文献1参照)。また、Al:0.3〜1.5質量%と、Si:0.1〜1.0質量%とを複合添加したチタン合金も提案されている(特許文献2参照)。ここでは、Siの作用として、結晶粒成長の抑制による疲労特性向上とともに、Al添加により生じる耐食性の低下を最小限に抑制することと、耐高温酸化性、耐スケールロス性や耐酸素拡散相形成性を高めることが記載されている。
特開2001-234266 号公報 (特許請求の範囲) 特開2005-290548 号公報 (特許請求の範囲)
しかし、エンジン周りの排気系の排気管材料は、排ガスの温度が高くなるにつれ、より高温での高温酸化が生じる懸念がある。したがって、エンジン周りの排気系の排気管材料として、チタン材には、より高温での優れた耐高温酸化性が求められる。即ち、排気系の排気管材料として、チタン材には、車種によっては800℃を越えるより高温の850〜870℃程度の高温でも、優れた耐高温酸化性が求められる場合がある。この場合、800℃を越える温度では、使用温度が上がるにつれて、耐高温酸化性は加速度的に低下するため、800℃における耐高温酸化性が優れていても、より高温の850℃程度の耐高温酸化性が優れているとは限らない。言い換えると、800℃における耐高温酸化性評価によっては、より高温の850℃程度の耐高温酸化性を保証できない。
一方、前記した通り、従来から、チタン材の耐高温酸化性を高めるためには、Alを含有させることが有効とされているが、前記特許文献2に記載されている通り、Al添加によって耐食性の低下が必然的に生じる。このため、Al添加によって耐食性の低下を抑制するために、特許文献2のように、Siを複合添加している。しかしながら、このSiの複合添加効果は、前記特許文献2に記載されている通り、800℃程度の高温酸化に限定され、より高温の850℃程度の耐高温酸化性を保証できない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、800℃を越える、より高温の耐高温酸化性を向上させたチタン合金や、このチタン合金で構成されたエンジン排気管を提供することを目的とする。
この目的を達成するための、本発明の耐高温酸化性に優れたチタン合金の要旨は、Siを0.15〜2質量%含むとともに、Alを0.30質量%未満に規制し、残部チタンおよび不可避的不純物からなることである。
上記要旨のチタン合金において、更に耐高温酸化性を向上させるために、チタン合金組織の平均結晶粒径が15μm以上であることが好ましい。
上記要旨のチタン合金において、更に耐高温酸化性を向上させるために、チタン合金が針状組織を有することが好ましい。
ここで、上記要旨とは別に、Alを0.30質量%未満に規制しない場合において、本発明の耐高温酸化性に優れたチタン合金の別の要旨は、Siを0.15〜2質量%含み、AlをSiとの合計含有量で2質量%以下含み、残部チタンおよび不可避的不純物からなるチタン合金であって、等軸結晶粒組織を有し、その平均結晶粒径を15μm以上とする。
同じくAlを0.30質量%未満に規制しない場合において、本発明の耐高温酸化性に優れたチタン合金のいま一つの別の要旨は、Siを0.15〜2質量%含み、AlをSiとの合計含有量で2質量%以下含み、残部チタンおよび不可避的不純物からなるチタン合金であって、このチタン合金が針状組織を有することとする。
また、より耐高温酸化性を向上させるためには、上記各要旨のチタン合金が、更に、Nb、Mo、Crの内から選択される1種または2種以上を、前記Siとの合計含有量またはSiおよびAlとの合計含有量で2質量%以下含むことが好ましい。
また、より耐高温酸化性を向上させるためには、上記各要旨のチタン合金が、更に、チタン合金最表面のSiの平均濃度が0.5at%以上であることが好ましい。
また、より耐高温酸化性を向上させるためには、上記各要旨のチタン合金が、更に、その表面に、乾燥後の平均塗膜厚みが10〜100μmであり、乾燥後の塗膜中のAl含有量が30〜90質量%である、有機金属化合物塗装皮膜を有することが好ましい。
更に、これら要旨あるいは後述する好ましい態様のチタン合金は、エンジン排気管に適用されること(エンジン排気管用途)が好ましい。
前記目的を達成するための、本発明耐高温酸化性に優れたエンジン排気管の要旨は、これら要旨あるいは後述する好ましい態様のチタン合金で構成されることである。
本発明では、従来の発想を変えて、チタン材の耐高温酸化性を高めるために有効とされるAlを敢えて添加せず、これに代えて、Siのみを単独添加した場合に、却って、800℃を越える、より高温の850℃程度の耐高温酸化性を向上させることを知見した。
この点、本発明チタン合金の上記要旨のように、Siを特定量含むとともに、Alを積極的に規制することによって、800℃を越える、より高温の850℃程度の耐高温酸化性を向上させることができる。
以下に、本発明の実施態様として、本発明の各要件の限定理由とを具体的に説明する。
(チタン合金成分組成)
本発明のチタン合金は、800℃を越える、より高温の耐高温酸化性(以下、単に耐高温酸化性とも言う)に優れさせるために、Siを0.15〜2質量%含むとともに、Alを0.30質量%未満に規制し、残部チタンおよび不可避的不純物からなる。
(Si)
Siは、耐高温酸化性の向上に必須の元素である。また、Siは高温強度も向上させる。このためには、Siを0.15質量%以上含有させることが必要である。一方、Si含有量が2質量%を越えると、成形性の劣化が著しく、チタン合金の排気管への成形加工が困難となる。
(Al)
Alは、SiやNb、Mo、Crと同様に耐高温酸化性を向上させる元素である。しかし、Alの場合、チタン合金の使用温度が800℃を超えると、酸化スケールの剥離を起こしやすくする作用が発現し、この剥離により基材への酸素の拡散進入が抑制されず、この結果耐酸化性の劣化につながる。したがい本発明では、Alを上記弊害を及ぼさない範囲である0.30質量%未満に積極的に規制する。このAl含有量が0.30質量%以上に多いと、酸化スケールの剥離による耐高温酸化性の低下が必然的に生じ、800℃を越える、より高温の850℃程度の耐高温酸化性が達成できない。
なお、このように、チタン合金において、Alによる耐高温酸化性の低下が著しく生じ、Alを0.30質量%未満に積極的に規制する必要があるのは、通常の組織として、平均結晶粒径が15μm未満の微細等軸結晶粒組織を有するチタン合金である(請求項1に対応)。
ここで、チタン合金の組織を、その平均結晶粒径を15μm以上とした比較的粗大な等軸結晶粒組織とするか、チタン合金を針状組織とした場合には、Alを0.30質量%未満に規制しなくても良い(請求項4、5に対応)。これら比較的粗大な等軸結晶粒組織か針状組織による耐高温酸化性が向上する分、Alによる耐高温酸化性低下が抑制されるからである。したがって、チタン合金が、これら比較的粗大な等軸結晶粒組織か針状組織を有する場合には、AlをSiとの合計含有量で2質量%以下含むことを許容する。
(Nb、Mo、Cr)
Nb、Mo、Crは、800℃を越える、より高温の850℃程度の耐高温酸化性向上に有効であり、Siと複合添加(共存)することで相乗効果が期待できる。このため、本発明チタン合金は、更に、Nb、Mo、Crの内から選択される1種または2種以上を、前記SiまたはSiとAlとの合計含有量で2質量%以下含んでも良い。これらの元素の、Siとの合計量、または、Alを実質量( 0.30質量%以上) 含む場合にはSiとAlとの合計量、が2質量%を超えると、成形性が劣化し、排気管への成形加工が困難となる。したがって、これらの元素の、Siとの合計量、または、Alを実質量( 0.30質量%以上) 含む場合にはSiとAlとの合計量を2質量%以下とする。
(その他不純物)
なお、チタン合金には、一般的に、溶解原料や溶解工程において、酸素、鉄が主な不純物元素として含まれる。これら酸素、鉄は、排気管形状へのチタン合金の成形性を低下させる。したがって、含むとしても、酸素、鉄の含有量は、合計で0.20質量%以下であることが好ましい。
また、Cuは、耐高温酸化性を劣化させる。ただ、Cuは排気管としての高温強度特性を高めるためには有効である。このため、Cuは前記SiまたはSiとAlまたはSiとAlとNb、Mo、Crとの合計含有量で2質量%以下含んでも良い。ただし、成形性の劣化も勘案すると、好ましくはCu量は0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下が推奨される。
(チタン合金組織)
本発明のチタン合金を、更に、800℃を越える、より高温の850℃程度の耐高温酸化性に優れさせるためには、以上説明した成分組成の他に、本発明のチタン合金組織を以下に説明する好ましい態様とする。即ち、チタン合金最表面のSiの平均濃度を高める、チタン合金組織の平均結晶粒径を大きくする、針状組織とする、の内から1種または2種以上選択されるチタン合金組織とする。これらの組織を上記成分組成と適宜組み合わせて用いることで、相乗効果も期待できる。
(最表面のSi濃化)
チタン合金最表面にSiを濃化させ、Siの平均濃度を高めるほど、耐高温酸化性に優れる。このため、本発明チタン合金組織では、更に耐高温酸化性に優れさせるために、チタン合金最表面のSiの平均濃度が0.5at%以上であることが好ましい。この最表面に濃化しているSiはチタン中に固溶したSiであってもよく、Ti5 Si3 等のTiとSiとの金属間化合物や、Siの酸化物、炭化物等の化合物形で存在してもよい。
この最表面のSi濃度は、基本的には、チタン合金(基材)のSi含有量ともに高くなるものであり、規定の範囲のSi含有量を満足して、通常通りチタン合金を製造すれば、チタン合金最表面のSiの平均濃度が0.5at%以上に濃化される可能性がある。しかし、一方で、製造方法によっては、酸素や炭素等の表面汚染層が数μm の深さまで存在するような場合があり、このような場合には、最表面に存在するSi量の平均濃度が0.5at%未満となり、優れた耐高温酸化性向上効果が望めない可能性も高い。それゆえ、チタン合金最表面のSi濃度は、チタン合金のSi含有量によって一律に決まるものではない。このため、チタン合金最表面のSiの平均濃度を0.5at%以上とする場合には、酸素や炭素等の表面汚染層が形成されないような製造条件を特に選択することが好ましい。
このチタン合金最表面のSi濃度は、X線マイクロアナリシス分析(Electron Probe Micro Analysis 、略してEPMA)の中の波長分散方式(Wave Dispersive Spectroscopy、略してWDS )での表面定量分析により測定できる。より詳細には、最表面の分析部をX500〜X1000 に拡大し、まず定性分析により存在元素を調べた後、それぞれの存在量をZAF 法を用いた半定量分析により定量的に濃度を求めることが出来る。最表面の濃度は分析時の電子線の侵入深さにより変わるが、分析時の加速電圧を15kvの一定にすることで、1 〜2.5 μm 程度の電子線侵入深さとなる。したがって、本発明における最表面のSi濃度とは、表面から1 〜2.5 μm 程度の深さまでのSiの平均濃度を意味する。以下、最表面のSi濃度とはこのように定義される濃度を意味する。
(等軸粒)
常法により製造した場合、本発明チタン合金組織は、通常通り等軸粒となる。この等軸粒組織により、チタン合金の成形性や機械的特性(強度)などの特性が確保される。
(平均結晶粒径)
一方、この等軸粒組織の場合に、チタン合金の高温酸化性に対しては、その平均結晶粒径が大きく関与する。すなわち平均結晶粒径がある程度大きい方が耐高温酸化性が向上する。具体的には平均結晶粒径が15μm以上でこの効果が現れ、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上でこの効果は顕著になる。一方で、平均結晶粒径が過度に大きくなると、成形時の肌荒れの問題や疲労強度の低下が生じるので、この問題が重要視される用途の場合には、平均結晶粒径の上限は100μm程度となる。
800℃を越える、より高温の850℃程度の耐高温酸化性に結晶粒径が影響する理由は、現時点では明確にできていないが高温酸化の進行のメカニズムに関係すると推測される。すなわち高温に曝された際に生じる表面からの酸素の拡散進入は、結晶粒界において起こりやすく、このため粒界部の存在割合が小さい平均結晶粒径の大きい材料の方が高温酸化が抑制されるものと考えられる。
なお、本発明のTi−Si系チタン合金を常法で製造した場合、Ti5 Si3 等のTiとSiとの金属間化合物やβ相がマトリックスのチタン中に分散、形成され、これにより結晶粒の成長が抑制される。このSiの結晶粒成長抑制作用は、前記特許文献2にも記載されている。このため、特にSiを含有させたチタン合金において、常法により、平均結晶粒径を、高温酸化抑制に有効な、15μm以上に大きくすることは困難である。
より具体的に、チタン合金製造の常法と言える冷間圧延の圧下率は、材質で異なるが概ね20〜70%である。またその後実施される焼鈍の温度は600〜800℃であり、真空焼鈍のような焼鈍時間が数時間〜十数時間の長時間になる焼鈍では600〜700℃程度の低温側の温度条件が採用され、連続焼鈍酸洗のような短時間の処理では700〜800℃の高温側の温度条件が採用される。このような常法の範囲で、本発明のTi−Si系チタン合金を冷間圧延、焼鈍しても、平均結晶粒径を15μm以上にすることは難しい。言い換えると、Ti−Si系チタン合金の平均結晶粒径を15μm以下にする場合には、この常法の範囲で製造する。
これに対して、本発明Ti−Si系チタン合金の平均結晶粒径を15μm以上に大きくするためには、冷間圧延の圧下率を20%以下に小さくするとともに、焼鈍温度を825℃以上かつβ変態点以下の条件に高温化する。更に、好ましい圧下率は15%以下で、さらに好ましくは10%以下である。また、好ましい焼鈍温度は850℃以上、β変態点以下である。この焼鈍温度がβ変態点温度を越えると、後述する針状組織となる。したがって、部材の結晶粒を等軸粒にし、良好な成形性や機械的特性を工業的に安定して得ることを重視する場合には、焼鈍温度の上限は、β変態点温度以下とする。
(Al含有量との関係)
ここで、チタン合金の組織を、その平均結晶粒径を15μm以上とした比較的粗大な等軸結晶粒組織とすれば、前記した通り、Alを0.30質量%未満に規制しなくても良い。即ち、これら比較的粗大な等軸結晶粒組織の作用により、耐高温酸化性が向上する分、Alによる耐高温酸化性低下作用が抑制される。そして、この効果は、チタン合金の前記した平均結晶粒径が大きいほど、大きくなる。
(結晶粒径の測定方法)
本発明で言う結晶粒径とは、チタン合金の圧延(L) 方向断面の平均結晶粒径である。この結晶粒径は、チタン合金板から採取した試料 (試験片) 断面を0.05〜0.1mm 粗研磨した後、鏡面研磨し、この後エッチングした表面を、100 倍の光学顕微鏡を用いて観察し、前記L 方向にラインインターセプト法で測定する。1 測定ライン長さは0.95mmとし、1 視野当たり各3 本で合計5 視野を観察することにより、全測定ライン長さを0.95×15mmとする。このように、板の先端部と後端部とを除く、チタン合金板中央部の任意の10箇所において測定した各平均結晶粒径を、更に平均化したものを、チタン合金の平均結晶粒径とする。
(針状組織)
これら等軸粒により、チタン合金の上記成形性や機械的特性などの特性を多少犠牲にしても差し支えのない用途の場合には、800℃を越える、より高温の耐高温酸化性の更なる向上のために、チタン合金を針状組織にしても良い。
ここで、チタン合金の組織を針状組織とすれば、前記した通り、Alを0.30質量%未満に規制しなくても良い。これら針状組織により、耐高温酸化性が向上する分、Alによる耐高温酸化性低下が抑制される。なお、本発明チタン合金の焼鈍温度がβ変態点を越えて高くなると、チタン合金の組織全体が上記針状組織となる。
一般的にチタン合金の組織は、冷間圧延後β変態点以下で最終焼鈍されているので等軸組織を呈している。これに対して本発明では、耐高温酸化性に優れさせるために、等軸粒ではなく、好ましくは針状組織とする。この針状組織の形成法は特に限定するものではないが、チタン合金を、例えば冷間圧延後に、β変態点以上に最終的に加熱後冷却することにより生成させることができる。この点、冷間圧延後に直にβ変態点以上に加熱後冷却せずとも、この間に低温での加熱が入っても、最終的にβ変態点以上に加熱すれば (最終加熱温度がβ変態点以上であれば) 針状組織は得られる。例えば、冷間圧延後、等軸組織になるようにβ変態点以下で焼鈍されて、元々等軸組織を呈しているコイル、シート、加工成型部材等であっても、β変態点以上に再加熱冷却することによっても、針状組織を生成させることができる。
この針状組織は、前記した等軸粒における結晶粒径の制御と違って、冷間圧延の圧下率にかかわりなく(圧下率を制御しなくとも)、ただ、β変態点以上の温度に加熱後、冷却することで、必然的に(簡便に)得られる。実際の用途からくる製品厚さの制約条件によっては、冷間圧延の圧下率を自由に選択、制御できないような場合も起こり得る。そのような場合には、耐高温酸化性を向上させるためには、等軸粒組織にこだわらず、この針状組織化を選択することも有用である。なお、上記加熱後の冷却は放冷で良く、急冷乃至強制冷却する必要は無い。
(断面ミクロ組織)
本発明の等軸粒の断面ミクロ組織を図1、2(図面代用写真)に、本発明の針状組織の断面ミクロ組織を図3(図面代用写真)に、各々示す。図1、2はチタン合金の断面ミクロ組織を100倍の光学顕微鏡で、図3は200倍の光学顕微鏡で観察したものである。
ここで、図1の場合、等軸組織を呈しており、平均結晶粒径は15μm以下になっている。図2の場合、図1と同様に等軸組織であるが、後述する低圧下率と高温焼鈍の組合せにより、平均結晶粒径が30μm程度に大きくなっている。図3の場合、後述するβ変態点以上に加熱してから冷却を行ったため、針状組織となっている。
図1のチタン合金は、例えば、本発明のTi-0.5Si-0.1Al-0.2Nb合金(数字はいずれも質量%)で、40%の圧下率で冷間圧延後、800℃で6分大気焼鈍したものである。図2のチタン合金は、上記合金を10%の圧下率で冷間圧延後、850℃で6分大気焼鈍したものである。図3のチタン合金は、上記合金を40%の圧下率で冷間圧延後、β変態点約900℃を超える950℃に6分間加熱後、冷却したものである。
図3の針状組織の場合、等軸組織の場合のように平均結晶粒径を求めることはできない。本発明では、この針状組織自体は、通常の平均結晶粒径やアスペクト比などで規定しにくい。このため、この針状組織は、明確には、履歴である製造方法により規定される。即ち、この針状組織は、チタン合金をβ変態点以上に加熱する熱処理により生成した針状組織と規定される。なお、この針状組織とするβ変態点以上に加熱後冷却する熱処理の前後に、低温での熱処理などが入っても良いことは、前記した通りである。
(製造方法)
本発明チタン合金の製造方法は、上記製造方法の好ましい態様や、組織作り分けの条件はあるものの、その工程自体は、鋳塊溶製、熱間鍛造、熱延、焼鈍、冷間圧延、焼鈍あるいは熱処理等からなる常法により製造できる。そして、耐高温酸化性を向上させるための好ましい組織などの作り分けは、前記した通り、冷間圧延、焼鈍あるいは熱処理条件を変えて行なう。
(表面処理)
以上のようにして得られた本発明チタン合金は、850℃程度の耐高温酸化性に優れているため、表面処理無しで用いられ良い。ただ、このように表面処理無しの裸だけではなく、種々の表面処理を施して用いられても良い。
この際の表面処理としては、その表面処理皮膜自身が、850℃程度のより高温の耐高温酸化性に優れていることが好ましい。このような特性を有する表面処理皮膜としては、乾燥後の平均塗膜厚みが10〜100μmであり、乾燥後の塗膜中のAl含有量が30〜90質量%であるような、有機金属化合物塗装皮膜が好ましい。
この有機金属化合物塗装皮膜は、Al片またはAl粉体を含有する、ナーセムチタン、ナーセムジルコニウム、酢酸クロム、シリコーン、シリカゾル、アルミナゾルおよびアルミニウムイソプロポキシドなどの、安定で取り扱いが容易で毒性が低い有機金属化合物の塗装皮膜である。
このような、所定量のAlを含有する有機金属化合物の水溶液あるいは溶剤による溶液、あるいは分散液からなる塗料を、本発明チタン合金表面に、塗布あるいは浸漬などの周知の方法により塗装し、200℃以下の温度で乾燥する。塗装後の塗膜乾燥を200℃以下で行うと一層の耐高温酸化性が期待できる。200℃以上の高温で乾燥をすると、塗膜の乾燥硬化反応が急激に起こり、塗膜中のAl鱗片、Al粉体が塗膜中に空間を多く作った状態で固定されてしまい、この空間が酸素の侵入を許し、結果的に優れた耐高温酸化性が得られ難くなる。これに対し、200℃以下で塗膜乾燥を行うと、乾燥に時間を要するため、Al鱗片、Al粉体が空間を埋める位置まで移動して硬化するため、塗膜中の空間が少なくなり、結果的に優れた耐高温酸化性が得られる。
そして、この乾燥後の平均塗膜厚みが10〜100μmであり、乾燥後の塗膜中のAl平均含有量が30〜90質量%であるような、有機金属化合物塗装皮膜とする。乾燥後の平均塗膜厚み(膜厚)が10μm未満であれば、ピンホール等の欠陥部を通して、下地チタンが腐食雰囲気に曝され、また、塗膜自身の減肉しろが少なすぎて下地の保護性が得られず、塗装皮膜としての意味が無い。
一方、乾燥後の平均塗膜厚み(膜厚)が100μmを越えた場合、膜応力等の影響で塗膜が剥離しやすくなる。したがって、乾燥後の平均塗膜厚みは10〜100μmの範囲とする。乾燥後の平均塗膜厚みは、塗膜断面を、例えば任意の10箇所で、光学顕微鏡で観察、測定し、平均化することにより測定できる。
乾燥後の塗膜中のAl平均含有量が30質量%未満であれば、より高温での耐高温酸化性向上効果が不十分であり、逆に、90質量%を越えると、塗膜の強度が不足するため、外力や基材の収縮等による塗膜の早期破壊につながる。したがって、乾燥後の塗膜中のAl平均含有量が30〜90質量%の範囲とする。この塗膜中のAl含有量は、塗膜表面または塗膜断面を、例えば任意の10箇所、EPMAにより分析して平均化することにより測定できる。
なお、塗膜中の(添加する)Alの形状は、鱗片状が最も耐高温酸化特性に優れるが、粉体状でも、また鱗片状と粉体状の混合物でも、より高温での耐高温酸化特性を得ることは可能である。本塗膜(塗装)により、850℃程度の耐高温酸化性が向上する理由は、このようなAlを含有する塗膜自身が、高温酸化に対しての耐性を有するのと、チタン合金が高温に曝された際に、塗膜中のAlと基材のチタンが反応し、高温酸化に対しての耐性を有する層を形成するためと考えられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより、下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
表1、2に記載した成分組成のチタン冷延板について、850℃での高温の耐高温酸化性を評価した。具体的には、表1、2に記載した成分組成の約120gの鋳塊をボタンアーク炉にて溶製した。チタン分の添加には表面を清浄に洗浄したJIS1種純チタンのスクラップ材を使用した。各鋳塊を、熱間鍛造、熱延、焼鈍を常法にて行った後、所定の圧下率で冷間圧延を行った。この後、冷延板を脱脂し、所定の温度と条件で焼鈍を行い、共通して、厚さ2mmの冷間圧延板を作製した。そしてこの冷間圧延板から2mmt ×25mmw ×25mml の試験片を採取した。
(平均結晶粒径制御)
各表1、2に記載したチタン合金の内、試験片の平均結晶粒径が10μm以下(表1、2に<10と記載)の例は、チタン合金の冷間圧延の圧下率を、常法の範囲内の概ね40%とした。その後800℃、均熱時間6分の真空焼鈍を行った。
これに対して、試験片の平均結晶粒径が15μmを越える例は、上記常法とは異なり、所望の平均結晶粒径の大きさと材質によって、チタン合金の冷間圧延の圧下率を20%以下の範囲から選択して小さくするとともに、真空焼鈍を温度825℃以上かつβ変態点以下の条件範囲から選択し、時間は均熱時間6分とした。
(針状組織)
また、針状組織を得た例は、冷間圧延の圧下率は常法の範囲内の概ね40%とし、この冷延板を、チタン合金のβ変態点を超える950℃で均熱時間6分間の真空加熱した。このようにして得られた供試材から採取した試験片全体の組織が針状組織であった。
(最表面Siの平均濃度制御)
チタン合金最表面のSiの平均濃度が0.5at%以上である、最表面Siの濃化例は、概ね圧下率が40%の冷間圧延後、真空焼鈍に代えて、850℃で6分間大気焼鈍した後、チタン合金最表面に酸素や炭素等の表面汚染層を数μm の深さまで存在させないように、600℃の溶融ソルト(NaNO3 55質量% 、NaOH35質量% 、残KCl 、NaCl等を含有)に1分間浸漬した後、HF 1質量% 、HNO3 20 質量% 、60℃の水溶液に浸漬して、板厚で片面50μm 酸洗除去した後、直ちに水流により十分に撹拌された流水中に2 分浸漬し、次いで撹拌された80℃の水に3 分間浸漬し湯洗を実施して供試材とした。
焼鈍後の、このような条件の酸洗処理を施し、表面を100 μm だけ酸洗溶削(片面当たり50μm 溶削)したのは、冷間圧延時に圧延油との反応で最表面に生じた酸素や炭素等の表面汚染層(濃化層)などを完全に除去するためである。また、酸洗後十分な流水浸漬と湯洗を実施したのは、酸洗後の洗浄が不十分となり、酸洗後のチタン表面に厚い酸化皮膜や酸洗液中の不純物の付着膜が形成され、表面Si濃度が低下するのを防ぐためである。以上のような処理の結果、最表面のSi濃度が相対的に増加していると推考される。
この製造条件での試験片の平均結晶粒径は10μm以下であり、試験片の平均結晶粒径が15μmを越える例は、冷間圧延における圧下率を20%以下の範囲から選択し、より大きな平均結晶粒径を得たい場合には、より圧下率を小さくした。また、組織を針状組織とした例での、最表面Siの濃化は、上記大気焼鈍の工程のみをチタン合金のβ変態点を超える950℃で6分間の条件に代えて、後は、上記最表面Siの濃化のための同じ工程、条件で行なった。
各試験片の最表面のSi量は以下の方法で分析した。すなわち分析前の試料に数分間アセトンによる超音波洗浄を施し、表面に付着している油分等の汚染物を除去した後、日本電子社製EPMA分析装置JXA-8900RLを用い分析した。分析倍率はX500、加速電圧は15kvとし、定性分析により表面に存在する元素を調べた後、存在元素の存在量をZAF 法を用いた半定量分析により求めた。
(耐高温酸化性)
耐高温酸化性は、高温酸化試験により評価した。即ち、これらの試験片を、800℃を越える、より高温の850℃で100時間の高温大気中に曝した場合の、高温酸化試験前後における試験片の重量増加(酸化増量:mg/cm2 )を測定した。そして、重量増加が少ないものほど、耐高温酸化性に優れると評価した。なお、酸化スケールの剥離が認められた試料については、剥離した酸化スケールの重量も本重量測定に加味した。表1、2にこれらの結果を示す。
表1、2に示す通り、本発明の成分組成要件を満足する発明例1〜11、また、本発明の組織要件またはSi表面濃化要件を満足する発明例12〜26、27〜35は、各々850℃における高温の耐高温酸化性に優れている。
(成分組成の影響)
発明例1〜11は、平均結晶粒径が10μm未満の微細等軸粒である組織を前提に、成分組成要件を範囲内でふっている。この発明例の中でも、単独でSiのみを、その下限0.15質量%に近く含有させた発明例3は、Si含有量がより高い他の発明例4、5に比して各々850℃における耐高温酸化性が、相対的に劣る。したがって、Si単独の850℃における耐高温酸化性向上効果が裏付けられる。発明例5はSi含有量が上限2質量%に近く、ビッカース硬度が230ポイントであり、他の発明例に比して50〜80ポイント程度増加していた。このため、チタン合金の排気管への成形加工が困難であると予想される。
Al含有量が比較的高い発明例2は、Si含有量が同じで、Al含有量が比較的低い発明例1に比して、各々850℃における高温の耐高温酸化性が、スケール剥離が生じやすくなることを理由に相対的に劣る。後述するAl含有量が高過ぎる比較例の結果と合わせて、より高温の耐高温酸化性を向上させるための、Al含有量を0.30質量%未満に規制することの意義が裏付けられる。
発明例6〜11は、Nb、Mo、Crが、Siと複合添加されており、Si含有量が同じであるSi単独添加の発明例1に比して、各々850℃における高温の耐高温酸化性が相対的に優れる。したがって、Nb、Mo、Crのチタン合金のより高温の耐高温酸化性向上効果が裏付けられる。
(結晶粒径と最表面Si濃度の影響)
発明例12〜26は、等軸粒である組織を前提に、平均結晶粒径と最表面Siの平均濃度をふっている。発明例12〜14同士、発明例15、16同士、発明例17、18同士、発明例22〜24同士の各比較において、平均結晶粒径が15μm以上であって、平均結晶粒径が大きい例ほど、各々850℃における高温の耐高温酸化性が、相対的に優れる。したがって、結晶粒径の粗大化による、より高温の耐高温酸化性向上効果が裏付けられる。
また、結晶粒径を粗大化させた発明例15〜18では、Al含有量が0.30質量%以上と高いにもかかわらず、Al含有量を0.30質量%以下に抑制した上で結晶粒径を粗大化させた発明例12〜14に比較して、若干は劣るものの、各々850℃における耐高温酸化性が優れている。したがって、結晶粒径の粗大化による、Al含有の悪影響を抑制した、より高温の耐高温酸化性向上効果が裏付けられる。
また、発明例25、26では、Al含有量が0.30質量%を越えているにもかかわらず、Al含有量を0.30質量%以下に抑制した上で最表面Si濃度を濃化させた発明例23,24に比較して、若干は劣るものの、各々850℃における耐高温酸化性が優れている。したがって、これから、最表面Si濃度の濃化による、Al含有の悪影響を抑制した、より高温の耐高温酸化性向上効果が裏付けられる。
(針状組織の影響)
表2の発明例27〜35は、針状組織を前提に、成分や最表面Siの平均濃度をふっている。
発明例28,30,31では、Al含有量が0.30質量%を越えているにもかかわらず、Al含有量を0.30質量%以下に抑制した発明例27、29に比較して、若干は劣るものの、各々850℃における耐高温酸化性が優れている。したがって、針状組織化による、Al含有の悪影響を抑制した、より高温の耐高温酸化性向上効果が裏付けられる。
また、最表面Si濃度を濃化させている発明例35は、濃化させていない発明例27に比して、各々850℃における耐高温酸化性が優れている。したがって、針状組織化と最表面Si濃度の濃化の複合による、より高温の耐高温酸化性向上効果が裏付けられる。
発明例32、33は、Nb、Mo、Crが、Siと複合添加されており、Si含有量が同じであるSi単独添加の発明例29に比して、各々850℃における耐高温酸化性が相対的に優れる。したがって、針状組織化とNb、Mo、Cr添加の複合による、チタン合金のより高温の耐高温酸化性向上効果が裏付けられる。
(比較例)
表2の36〜46は比較例であり、上記した発明例に比して、850℃における耐高温酸化性が著しく劣る。
比較例36〜40は、Al含有量を0.30質量%以下に抑制しているにもかかわらず、Si含有量が少な過ぎる。特に、比較例37〜40は、耐高温酸化性向上のための、Nb、Mo、Crの複合添加、結晶粒径粗大化、針状組織化、などの手段が用いられているにもかかわらず、850℃における耐高温酸化性が著しく劣る。したがって、これら他の手段に比した、Siの850℃における耐高温酸化性の高い向上効果が裏付けられる。
比較例41、42は、Si含有量が多過ぎる。このため、ビッカース硬度が280〜300ポイントであり、Si含有量が上限の発明例5に比しても、50〜70ポイント程度増していた。このため、チタン合金の排気管への成形加工はできないと予想される。これらから、Si含有量の上限の意義が裏付けられる。
比較例43、44は、組織が平均結晶粒径が10μm未満の微細等軸粒で、最表面Si濃度の濃化も無いのに加えて、Al含有量が上限を越えて多過ぎる。この結果、比較例43、44は各々850℃における耐高温酸化性が著しく劣る。前記Al含有量が高い発明例の結果と合わせて、850℃における耐高温酸化性を向上させるための、Al含有量を0.30質量%未満に規制することの意義が裏付けられる。
比較例45、46は、酸素、鉄の含有量が不純物の域(規定上限値)を越えて多過ぎる。このため、成形性が極めて悪く、排気管への成形加工はできないと予想される。
なお、これら比較例36〜46につき、従来の耐高温酸化性の評価基準であった、比較的低温の800℃で高温酸化試験を行なった結果、高温酸化試験前後における試験片の酸化増量は、各例とも2〜15mg/cm2 程度減少した。
Figure 2007270199
Figure 2007270199
(表面処理チタン合金)
次ぎに、これら表1、2から選択した本発明チタン合金に対して、Alを含有する有機金属化合物塗装皮膜を設けた本発明態様につき、この塗装皮膜の耐高温酸化性を評価した。この結果を表3に示す。
より具体的には、この塗装皮膜を設けた本発明チタン合金試験片の高温酸化試験を前記した条件と同じ条件にて行い、各酸化増量を測定する。この各酸化増量と(A)、この塗装皮膜を設けた本発明チタン合金に対応する、表1、2の本発明チタン合金の(塗装皮膜を設けない)前記高温酸化試験における酸化増量(B)との比(A/B)を求めて、塗膜の耐高温酸化性を評価した。この酸化増量比A/Bが小さいほど、塗膜側の耐高温酸化性に対する寄与率が高いこととなり、塗膜の耐高温酸化性が高いと言える。この点、表3において、耐高温酸化性評価は、酸化増量比A/Bが0.45以下を○、0.45を越え0.65までを△、0.65を越えるものを×と評価した。
塗装は、前記実施例と同じ試験片を用い、表3に示すような膜厚(乾燥後の膜厚)、塗膜中のAl含有量(乾燥後のAl含有量)となるように、鱗片状のAlを含有させた非変性のシリコーン樹脂と有機溶剤を含調整した溶液に、試験片を浸漬塗装した。この塗装後の乾燥は、(1)120℃×15分の仮乾燥を行い、その後190℃×30分の本乾燥を実施(表3には乾燥温度190℃と記載)、(2)120℃×15分の仮乾燥を行い、その後210℃×30分の本乾燥を実施(表3には乾燥温度210℃と記載)、の二通りで実施した。
表3から分かる通り、前記した好ましい条件範囲である、乾燥後の平均塗膜厚みが10〜100μmであり、乾燥後の塗膜中のAl含有量が30〜90質量%である、有機金属化合物塗装皮膜の例48、55〜57は、塗膜の高温酸化性が優れている。即ち、塗装皮膜を設けない表1、2の対応する本発明チタン合金よりも、前記高温酸化試験における酸化増量が少なく、前記酸化増量の差が比較的大きく、塗膜の高温酸化性が優れている。
これに対して、乾燥後の平均塗膜厚みが好ましい範囲の下限や上限である例47、49、乾燥後の塗膜中のAl含有量が好ましい範囲の下限や上限である例50、51、あるいは乾燥温度が好ましい範囲から外れて高過ぎる例52は、この好ましい範囲から外れる例53、54に比しては、塗膜の高温酸化性が優れている。しかし、塗膜条件が前記した好ましい条件範囲である例48、55〜57よりは、塗膜の高温酸化性が劣っている。
したがって、前記好ましい塗膜条件範囲や、前記好ましい乾燥条件範囲の、塗膜の耐高温酸化性に対する臨界的な意義が分かる。
Figure 2007270199
本発明によれば、800℃を越える850℃など、より高温での耐高温酸化性が優れたチタン合金およびエンジン排気管を提供できる。この本発明チタン合金で構成されたエンジン排気管とは、溶接部構造や機械的な接合構造などの種々の接合構造を有するものを全て含むものである。また、本発明は800℃を超えるより高温での耐酸化性に特に優れるが、800℃以下の環境においても、従来材よりも優れた耐酸化性を有し、有用であることは言うまでもない。
本発明チタン合金の微細等軸粒組織を示す図面代用写真である。 本発明チタン合金の粗大等軸粒組織を示す図面代用写真である。 本発明チタン合金の針状組織を示す図面代用写真である。

Claims (10)

  1. Siを0.15〜2質量%含むとともに、Alを0.30質量%未満に規制し、残部チタンおよび不可避的不純物からなる耐高温酸化性に優れたチタン合金。
  2. 前記チタン合金が有する等軸結晶粒組織の平均結晶粒径が15μm以上である請求項1に記載の耐高温酸化性に優れたチタン合金。
  3. 前記チタン合金が針状組織を有する請求項1または2に記載の耐高温酸化性に優れたチタン合金。
  4. Siを0.15〜2質量%含み、AlをSiとの合計含有量で2質量%以下含み、残部チタンおよび不可避的不純物からなるチタン合金であって、等軸結晶粒組織を有し、その平均結晶粒径が15μm以上である耐高温酸化性に優れたチタン合金。
  5. Siを0.15〜2質量%含み、AlをSiとの合計含有量で2質量%以下含み、残部チタンおよび不可避的不純物からなるチタン合金であって、このチタン合金が針状組織を有する耐高温酸化性に優れたチタン合金。
  6. 前記チタン合金が、更に、Nb、Mo、Crの内から選択される1種または2種以上を、前記Siとの合計含有量またはSiおよびAlとの合計含有量で2質量%以下含む請求項1乃至5のいずれか1項に記載の耐高温酸化性に優れたチタン合金。
  7. 前記チタン合金最表面のSiの平均濃度が0.5at%以上である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の耐高温酸化性に優れたチタン合金。
  8. 前記チタン合金が、その表面に、乾燥後の平均塗膜厚みが10〜100μmであり、乾燥後の塗膜中のAl含有量が30〜90質量%である、有機金属化合物塗装皮膜を有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の耐高温酸化性に優れたチタン合金。
  9. 前記チタン合金の用途がエンジン排気管である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の耐高温酸化性に優れたチタン合金。
  10. 請求項1乃至8のいずれか1項のチタン合金で構成されたエンジン排気管。
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