JP2010132933A - ニッケル材及びニッケル材の製造方法 - Google Patents

ニッケル材及びニッケル材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた表面性状を有するニッケル材の提供を課題としている。
【解決手段】本発明に係るニッケル材は、ニッケルが主成分として含有されており、最表面におけるホウ素の濃度が1原子%以上であることを特徴としている。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ニッケル材とその熱処理方法に関し、特には、半田付けや溶接などによる接合を良好に実施させ得るニッケル材とその製造方法に関する。
ニッケルが主成分として含有されてなる部材(ニッケル材)は、種々の用途に用いられており、例えば、ニッケルが99重量%以上含有されてなるニッケル材は、導電性、機械的強度、耐食性などに優れることから、電池の内部配線材料(リード、タブ)や耐アルカリ用プラント材料などに広く使用されている。
この電池の内部配線材料には、薄板状のニッケル材(ニッケル薄板)が多く用いられており、この薄板状のニッケル材は、通常、工業的な圧延工程でコイル状に製造され、必要幅にスリット切断されて前記内部配線材料等に用いられている。
例えば、リチウムイオン電池用のリード材は、厚み約0.2〜0.05mmのニッケル薄板を3〜5mm程度の幅にスリット切断して作製されている。
一般に金属薄板をスリット切断する工程では、回転刃が用いられており、この回転刃の前後において板の蛇行や形状変形が生じるとスリット切断した後の金属条に折れや切断端面の粗れが生じるなどの不具合が生じる。
そのようなことから、通常、金属薄板をまっすぐ平坦な状態でスリット切断させるべく、回転刃の前後に金属薄板を押さえるための板押さえ部品を設置して、この板押さえ部品で金属薄板を押さえつつスリット切断することが行われている。
このようなスリット切断においては、板押さえ部品と金属薄板とが摺接されることから、金属薄板の表面に擦過疵が形成されることを防止すべく、板押さえ部品は、金属薄板に接する接触面がフェルト等の繊維部材で形成されたりしている。
しかし、ニッケル薄板をスリット切断する場合においては、上記板押え部品とニッケル薄板との接触箇所から白色の粉末物質(以下、「白色粉末」ともいう)が発生して、ニッケル薄板の表面に微細な疵を生じさせてしまうことがある。
ところで、電池は集電体、リード、ケース、基板等の数多くの金属部材で構成されており、これらをロウ付け(半田付け)、溶接などによって接合することによって形成されている。
したがって、このような用途に使用されることの多いニッケル材には、上記のような白色粉末の発生が抑制された表面性状を有することが求められているのみならず、半田付けや溶接などに適した表面性状を有することが求められている。
このことに対し、下記特許文献1にはニッケルを99質量%以上含有しているニッケル薄板でリチウムイオン二次電池のリードを形成させる場合において、露点−30℃以下の非酸化性雰囲気中で焼鈍を行った後に冷間圧延を実施して硬さHv80〜190に調整することが記載されている。
また、この特許文献1には、このようにニッケル薄板を形成させることにより酸化皮膜を薄くすることができて半田による接合性を向上させ得ることが記載されている。
しかし、従来、上記のような白色粉末に対する対策は殆ど検討されておらず、この特許文献1においても白色粉末に対する対策は一切記載されていない。
すなわち、従来、ニッケル薄板においては、接合性に優れ、且つ白色粉末の発生が抑制された優れた表面性状を付与することが困難であるという問題を有している。
なお、このような問題は、上記のようなニッケル薄板のみならず、ニッケルが主成分として含有されているニッケル材すべてにおいて共通する問題である。
特許第3741311号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、優れた表面性状を有するニッケル材の提供を課題としている。
本発明者らは、フェルト等の繊維部材との摺接時における白色粉末の発生が、表面のニッケル酸化物が水酸化物に変化することを主たる原因としていることを見出し、その対策について鋭意検討を行った結果、本発明の完成にいたった。
すなわち、本発明に係るニッケル材は、ニッケルを主成分として含有し、最表面におけるホウ素の濃度が1原子%以上であることを特徴としている。
さらに、本発明に係るニッケル材の製造方法は、ニッケルを主成分として含有し、最表面におけるホウ素の濃度が1原子%以上であるニッケル材を製造すべく、窒素、水素、及びアルゴンの内の1種以上が用いられてなり露点が−30℃以下の雰囲気ガス中における450〜900℃のいずれかの温度での熱処理を実施して前記最表面のホウ素を濃化させることを特徴としている。
本発明のニッケル材には、ホウ素が所定の量で含有されている。このホウ素は、拡散速度が速く表面濃化されやすいことから、ニッケル材の表面酸化物の形成抑制に特に有効に作用する。
そのため、本発明のニッケル材は、酸化被膜の形成が抑制されるとともに水酸化物の発生も抑制されることとなり、接合性に優れるとともに白色粉末の発生も抑制されることとなる。
また、本発明のニッケル材の製造方法によれば、ニッケル材の表面に酸化被膜が形成されることを抑制しつつホウ素の表面濃化が促進されることとなる。
したがって、ニッケル材を接合性に優れた状態とさせ得るとともに、白色粉末の発生を抑制させ得る。
すなわち、本発明によれば、接合性に優れ、且つ白色粉末の発生が抑制されたニッケル材を提供することができ、優れた表面性状を有するニッケル材を提供することができる。
以下に、電池用リード材(以下、単に「リード材」ともいう)などに好適に用いられ得る薄板状のニッケル材(以下「ニッケル薄板」ともいう)を例示しつつ本発明の実施形態について説明する。
本実施形態のリード材は、ニッケルを主たる成分とする材料によって形成されたニッケル薄板が用いられて構成されており、その最表面のホウ素の濃度が1原子%以上となるようにホウ素が含有されているニッケル薄板が用いられて構成されている。
このニッケル薄板の最表面におけるホウ素の濃度をより確実に上記濃度とするためには、その材料成分を所定の成分とすることが好ましい。
また、施される熱処理によってもニッケル薄板の最表面におけるホウ素の濃度を調整することができる。
本実施形態に係るニッケル薄板を形成する材料成分には、ホウ素及びニッケルが必須成分として含有されている。
また、任意成分としては、鉄、マンガン、チタン、マグネシウム等が含有されうる。
さらには、不純物として、炭素、ケイ素、窒素、銅、イオウ等が含まれ得る。
また、原料由来のコバルトも不純物成分として含有され得る。
(ホウ素)
材料成分に占めるホウ素の割合は、0.0004質量%を超え、0.0100質量%以下であることが重要である。
ホウ素の含有量が0.0004質量%以下の場合には、表面濃化の効果が認められにくくなり、例えば、濃化させるための熱処理工程を長期化させる必要があり、接合性に優れ、白色粉末の発生が抑制された優れた表面性状を有するニッケル薄板を簡便に得ることが困難となる。
一方で、ホウ素を多く添加するほど表面濃化させやすくはなるものの熱処理過程において昇華してしまい有効に利用できなくなるおそれがある。
したがって、必要以上にホウ素を添加しても、有効に活用できないばかりでなく、材料コストの上昇を招くおそれがあることから、含有させるホウ素の量の上限は、0.0100質量%に規定されることが好ましい。
このようにホウ素を含有させることで、例えば、焼鈍などのための熱処理をニッケル薄板に施した際に、ニッケル薄板表面でニッケルよりもホウ素が優先的に酸化されて酸化ホウ素(B23)や窒化ホウ素(BN)を形成するとともに、前者が450℃程度で溶解してニッケル薄板の表面を覆うべく作用することから、この表面におけるニッケル酸化物の形成を抑制する効果が発揮される。
(鉄)
鉄を材料成分に含有させることにより、ニッケル薄板の強度が向上されるという効果が発揮され得る。
そのため、0.4質量%以下の含有量であれば、本実施形態のニッケル薄板の形成に用いる任意成分として採用しうる。
(マンガン)
マンガンは、鉄と同様にニッケル薄板の強度の向上に有効であり、0.3質量%以下の含有量であれば本実施形態のニッケル薄板の形成に用いる任意成分として採用しうる。
(チタン)
チタンは、材料成分における窒素をトラップする効果を奏することから0.02質量%以下の含有量であれば本実施形態のニッケル薄板の形成に用いる任意成分として採用しうる。
(マグネシウム)
マグネシウムは、熱間加工性を改善する効果があり、0.015質量%以下の含有量であれば本実施形態のニッケル薄板の形成に用いる任意成分として採用しうる。
このようにニッケル薄板の形成に用いる材料成分に質量%で、0.0004%を超え、且つ0.0100%以下のホウ素を含有させ、鉄の含有量を0.4%以下、マンガンの含有量を0.3%以下、チタンの含有量を0.02%以下、マグネシウムの含有量を0.015%以下として、さらに、残部をニッケル及び下記に示す不純物とすることでニッケル薄板の表面におけるホウ素の濃度を1原子%以上に濃化させることが容易になる。
(不純物)
前記不純物としては、炭素、ケイ素、窒素、銅、イオウ等が挙げられ、これらの不純物は、通常、1質量%以下の合計含有量であれば、ニッケル薄板の形成に問題を生じさせるおそれは低い。
また、これら以外に、原料由来のコバルトも不純物として含有され得る。
このコバルトは、0.1質量%以下であれば、本実施形態のニッケル薄板の形成に用いる材料成分として含有させうる。
(その他成分)
なお、より確実に且つ簡易な製法によって、ニッケル薄板の最表面におけるホウ素の濃度を1原子%以上とさせ得る点においては、ニッケル薄板を、上記材料成分のみによって形成することが好適ではあるが、例えば、上記成分以外に、タングステン、アルミニウム、ニオブなどを10質量%以下の合計含有量で添加させた場合であっても、熱処理条件等の調整によって1原子%以上に表面濃化させることが可能であり、しかも、これらを先の成分に加えることでニッケル薄板の強度の向上を図ることができる。
次いで、上記のような材料によってニッケル薄板を製造する製造方法について説明する。特に、熱処理によるホウ素の濃化について具体的に説明する。
上記のような材料成分によって形成されたニッケル薄板は、適度な熱処理を加えることによってホウ素の表面濃化を促進させることができ、その場合においては、ニッケル薄板の最表面におけるホウ素の濃度が1原子%以上、好ましくは3原子%以上となるようにホウ素の表面濃化を実施させることが望ましい。
このホウ素の表面濃化を生じさせるための熱処理としては、通常、ニッケル薄板を無酸化雰囲気中で熱処理することにより実施可能である。
例えば、熱処理には、窒素、水素、アルゴンの内の1種、又は複数種を混合した混合ガスを雰囲気ガスとして用い、しかも、露点が−30℃以下、好ましくは、−40℃以下、特に好ましくは−70℃以下の雰囲気ガスを用いて、この雰囲気ガス中でニッケル薄板を450〜900℃のいずれかの温度に加熱することでホウ素の表面濃化をより好適に実施させ得る。
雰囲気ガスが上記のような露点を有していることが好ましいのは、露点が−30℃よりも高くなると雰囲気ガス中に含まれる水分によってニッケルの酸化が著しく進行してしまって、ホウ素を含有させた効果が得られなくなるおそれを有するためである。
また、熱処理温度が上記のように範囲のいずれかであることが好ましいのは、ホウ素の酸化物の融点が450℃であり、これよりも低い温度では、ホウ素の酸化物が形成されても溶融して表面に広がることができずに局部的に偏在してしまうおそれを有するためであり、一方で、900℃を超える温度とするとホウ素の酸化物の昇華が顕著になって、ニッケル材の表面酸化被膜の形成を十分に抑制させることができなくなるおそれを有するためである。
なお、最表面におけるホウ素の濃度がどの程度の値となるように表面濃化されているかについては、X線光電子分光分析装置(XPS/ESCA)やオージェ電子分光分析装置(AES)などによる分析手法でニッケル材(ニッケル薄板)の表面から数nmの深さまで(例えば、5nm深さまで)の元素分析を実施して、ホウ素原子の数が全体に対して何%となっているかを計算して確認することができる。
このとき、最表面におけるホウ素の濃度が1原子%未満の場合は表面濃化が不十分であり、ニッケル材の酸化を抑制する効果が十分なものとならないおそれがある。
したがって、少なくとも、表面におけるホウ素の濃度が1原子%以上、好ましくは、3原子%以上となるように熱処理条件を定めることが好ましい。
なお、最表面におけるホウ素の濃度の上限は、特に限定されるものではないが最大に濃化させたとしても、通常、20原子%程度となる。
また、このときホウ素は、酸化物(B23)を形成していてもよく、窒化物(BN)を形成していてもよい。
上記熱処理は、仕上げ圧延等によってニッケル薄板の板厚調整を実施した後に通常実施される。また、要すれば、上記熱処理の後に硬さ調整のための調質圧延を実施しても良く、この調質圧延に引き続き形状矯正を実施させることも可能である。
このような熱処理を行う製造方法によって形成されたニッケル薄板は、その後、スリット切断される場合において最も顕著な効果を発揮するが、電池のリード材以外に用いられるような場合にあっては、パンチング加工される可能性もある。
従来のニッケル薄板では、繰返してパンチング加工するうちに表面の酸化皮膜が剥がれて金型に付着し、クリアランス量を変化させて、切断バリを端面部に発生させたり、場合によっては製品形状が大きく損なわれたり、押し込み疵等が発生したりするおそれを有している。
一方で、本発明のニッケル薄板は、ホウ素の作用によって強度の高い安定した表面皮膜を有していることから、長期にわたって安定した状態でパンチング加工を実施することができ、得られる製品の品質に対しても有益な効果が得られる。
このようにして得られるニッケル薄板、ならびに、このニッケル薄板が用いられてなるリード材は、その最表面にホウ素が濃化されていることから、酸化被膜の形成が抑制されることとなり、半田付けや溶接における酸化被膜による接合性の低下が抑制されうる。
また、ホウ素の表面濃化によって水酸化物の形成も同時に抑制されることとなり、この水酸化物を原因とした白色粉末の発生も防止されうる。
なお、本実施形態においては、接合性ならびに白色粉体の発生防止に対するより顕著な効果が期待できることからニッケル薄板を例示しているが、棒状、管状、線状、ブロック状など種々の形態のニッケル材も本発明の意図する範囲である。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるも
のではない。
(ホウ素添加の効果について)
従来のニッケル薄板をスリット切断した際に発生された白色粉末を採取し、これをESCA分析した。
また、同じくESCAにて従来のニッケル薄板の表面と、材料成分としてホウ素を所定量で含有させて作製したニッケル薄板の表面とを分析した結果を、図1、図2に示す。
図中の(a)は白色粉末、(b)は従来のニッケル薄板、(c)はホウ素を含有させたニッケル薄板の分析結果である。
一般に金属表面は酸化皮膜、すなわち金属酸化物で覆われている。
ニッケル薄板についても同様に、その表面はニッケル酸化物[NiO]で覆われていると考えられる。
図1のESCA分析結果では、スリット切断工程で採取した白色粉末(a)は水酸化物[Ni(OH)2]の位置に明瞭なピークを示しており、従来のニッケル薄板(b)の表面皮膜も同様に水酸化物のピークを呈している。
このことから白色粉末がニッケル薄板の表面皮膜が脱落したものであること、ならびに、この表面被膜は、酸化物[NiO]が大気中の水分を吸収して経時的に水酸化物[Ni(OH)2〕]に変化したものと考えられる。
なお、ニッケルの酸化物(NaCl型構造)と水酸化物(CdI2型構造)とは構造的に異なり、後者は層状構造のためせん断的な応力に対して弱いと考えられる。すなわち、表面皮膜中にニッケル水酸化物が存在することにより皮膜が脆くなり、そのため白色粉末の発生量が増加するものと思われる。
上記の問題解決にはニッケル酸化を抑制できれば表面皮膜中のニッケル水酸化物量は少なくなり、スリット切断工程での白色粉末の発生量を少なくできると考えられる。
ニッケルの表面酸化(酸化物の生成)の抑制方法を検討した結果、ニッケルよりも酸化ポテンシャルの低い元素をあらかじめ添加しておき、熱処理過程で当該元素を優先酸化させることによってニッケルの酸化が抑制されることが見出された。
ニッケルよりも酸化ポテンシャルが低く、且つニッケルに微量添加することが可能な元素にはホウ素、ケイ素、アルミニウム、チタン、マンガン、マグネシウム、カルシウム等がある。
中でもホウ素は、金属中での拡散速度が速く特に有効である。
ホウ素は、熱処理の過程で最表面に速やかに拡散してニッケルよりも先に酸化されるため、表面皮膜中に濃化しやすい。
その結果、ニッケル酸化物の形成を抑制できるとともに酸化皮膜の厚みも薄くなり、この酸化物が水酸化物に変化することによる表面皮膜の脆化も生じにくくなる。
図1の(c)(ホウ素を含有するニッケル薄板)では、金属ニッケルの位置に強いピークを示し、従来品(b)のような水酸化物のピークは殆ど観測されない。
さらに、この(c)では、図2に示すようにホウ素の領域に明瞭なピークが認められる。
すなわち当該ニッケル薄板の最表面は、ホウ素が濃化した状態となっており、ニッケル酸化物の生成が抑制されていることがわかる。
(評価試料の作製)
表1に示す、サンプルNo.1〜16のニッケル薄板を作製し評価を行った。
まず、主成分であるニッケルを、電気炉を用いた真空下酸素吹精脱炭法(VOD)プロセスにより溶製し、この溶製過程でホウ素を表1に示す量(B添加量)となるように添加した。
得られたスラブを熱間圧延し、その後、最終板厚が表1の値(板厚)となるまで冷間圧延しニッケル薄板を作製した。
得られたニッケル材は光輝焼鈍炉にて熱処理を行った。このときの焼鈍炉の雰囲気ガス組成、露点および熱処理温度は、表1の通りとした。
(評価1:表面分析)
各サンプルNo.のニッケル薄板の表面皮膜の組成を調べるためにESCA分析を行い、ニッケルとホウ素の存在量を調査した。
ニッケル領域については、ピーク解析を行い酸化物と金属の状態比率を調べた。
この場合、ニッケルの酸化物比率が低いほど表面酸化皮膜が薄いことを示している。
結果を、表1に示す。
この表1にも示されているように、ホウ素の添加量が0.0004質量%を超えるサンプルNo.1〜11のニッケル薄板の表面をESCA分析した結果、表面皮膜におけるホウ素濃度は、最小で2.1原子%であり、最大で20.1原子%であった。
いずれも、添加量に比べて極めて高濃度な状態で表面にホウ素が存在しており、ホウ素が表面に濃化していることがわかる。
一方で、ホウ素添加量が0.0004質量%であるサンプルNo.12〜16のニッケル薄板は、熱処理の有無に関わらずいずれも表面皮膜からホウ素が検出されなかった。
また、図3にホウ素添加量と表面ホウ素濃度の関係を示す。なお、黒三角の凡例で示すデータは、最表面のホウ素濃度が1原子%未満のものであり、黒丸の凡例で示すデータは、最表面のホウ素濃度が1原子%以上のものである。
この図からも明らかなように、ホウ素添加量を多くするほど表面ホウ素濃度も増加している。
また、図4には、表面ホウ素濃度とニッケル酸化物比率との関係をプロットしたグラフを示す。なお、黒三角の凡例で示すデータは、最表面のホウ素濃度が1原子%未満のものであり、黒丸の凡例で示すデータは、最表面のホウ素濃度が1原子%以上のものである。
この図からは、表面ホウ素濃度が高くなるほどニッケル酸化物の比率が低下する傾向にあることがわかる。すなわち、ホウ素の表面濃化によってニッケルの酸化が抑制されていることが確認できる。
(評価2:白色粉末の発生)
同じスリット切断装置を用いて、各サンプルNo.のニッケル薄板(200mm幅のコイル)を50mm幅にスリット加工したときに白色粉末の発生を観察し、白色粉末が発生しなかった場合を「○」、発生はしたが少量であった場合を「△」、大量に発生した場合を「×」として判定した。
結果を、表1に示す。
なお、ホウ素の添加量が0.0004質量%を超えるサンプルの内、No.4とNo.6は、スリット切断工程で僅かに白色粉末が発生したが、実用上は、問題となるレベルではなかった。それ以外については白色粉末の発生は全く認められなかった。
一方で、ホウ素添加量が0.0004質量%であるサンプルNo.12〜16のニッケル薄板は、熱処理の有無に関わらずいずれも白色粉末が大量に発生し、外観上好ましくない結果となった。
(評価3:接合性)
各サンプルNo.のニッケル薄板を、厚み10μmの銅箔に超音波接合し、容易に接合できる場合を「○」、接合性に難がある場合を「△」として判定した。
結果を、表1に示す。
ホウ素の添加量が0.0004質量%を超えるサンプルNo.1〜11のニッケル薄板は、いずれも良好な接合性が得られた。
一方で、ホウ素添加量が0.0004質量%であるサンプルNo.12〜16のニッケル薄板は、サンプルNo.1〜11のニッケル薄板と同等の接合性を得るためには接合荷重を大きくする必要があるなどの点で問題を有していた。
Figure 2010132933
この評価結果からも、本発明のニッケル材は、表面性状に優れたものであることがわかる。
ESCA分析結果:ニッケル領域(a:白色粉末,b:従来品,c:ホウ素添加品)。 ESCA分析結果:ホウ素領域(c:ホウ素添加品)。 ホウ素添加量(B添加量)と表面ホウ素浪度(表面B濃度)との関係を表すグラフ。 表面ホウ素濃度(表面B濃度)とニッケル酸化物比率(Niの酸化物比率)との関係を表すグラフ。

Claims (2)

  1. ニッケルを主成分として含有し、最表面におけるホウ素の濃度が1原子%以上であることを特徴とするニッケル材。
  2. ニッケルを主成分として含有し、最表面におけるホウ素の濃度が1原子%以上であるニッケル材を製造すべく、窒素、水素、及びアルゴンの内の1種以上が用いられてなり露点が−30℃以下の雰囲気ガス中における450〜900℃のいずれかの温度での熱処理を実施して前記最表面のホウ素を濃化させることを特徴とするニッケル材の製造方法。
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