JP2010132933A - ニッケル材及びニッケル材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係るニッケル材は、ニッケルが主成分として含有されており、最表面におけるホウ素の濃度が1原子%以上であることを特徴としている。
【選択図】 なし
Description
例えば、リチウムイオン電池用のリード材は、厚み約0.2〜0.05mmのニッケル薄板を3〜5mm程度の幅にスリット切断して作製されている。
そのようなことから、通常、金属薄板をまっすぐ平坦な状態でスリット切断させるべく、回転刃の前後に金属薄板を押さえるための板押さえ部品を設置して、この板押さえ部品で金属薄板を押さえつつスリット切断することが行われている。
しかし、ニッケル薄板をスリット切断する場合においては、上記板押え部品とニッケル薄板との接触箇所から白色の粉末物質(以下、「白色粉末」ともいう)が発生して、ニッケル薄板の表面に微細な疵を生じさせてしまうことがある。
したがって、このような用途に使用されることの多いニッケル材には、上記のような白色粉末の発生が抑制された表面性状を有することが求められているのみならず、半田付けや溶接などに適した表面性状を有することが求められている。
また、この特許文献1には、このようにニッケル薄板を形成させることにより酸化皮膜を薄くすることができて半田による接合性を向上させ得ることが記載されている。
すなわち、従来、ニッケル薄板においては、接合性に優れ、且つ白色粉末の発生が抑制された優れた表面性状を付与することが困難であるという問題を有している。
そのため、本発明のニッケル材は、酸化被膜の形成が抑制されるとともに水酸化物の発生も抑制されることとなり、接合性に優れるとともに白色粉末の発生も抑制されることとなる。
したがって、ニッケル材を接合性に優れた状態とさせ得るとともに、白色粉末の発生を抑制させ得る。
また、施される熱処理によってもニッケル薄板の最表面におけるホウ素の濃度を調整することができる。
また、任意成分としては、鉄、マンガン、チタン、マグネシウム等が含有されうる。
さらには、不純物として、炭素、ケイ素、窒素、銅、イオウ等が含まれ得る。
また、原料由来のコバルトも不純物成分として含有され得る。
材料成分に占めるホウ素の割合は、0.0004質量%を超え、0.0100質量%以下であることが重要である。
ホウ素の含有量が0.0004質量%以下の場合には、表面濃化の効果が認められにくくなり、例えば、濃化させるための熱処理工程を長期化させる必要があり、接合性に優れ、白色粉末の発生が抑制された優れた表面性状を有するニッケル薄板を簡便に得ることが困難となる。
一方で、ホウ素を多く添加するほど表面濃化させやすくはなるものの熱処理過程において昇華してしまい有効に利用できなくなるおそれがある。
したがって、必要以上にホウ素を添加しても、有効に活用できないばかりでなく、材料コストの上昇を招くおそれがあることから、含有させるホウ素の量の上限は、0.0100質量%に規定されることが好ましい。
鉄を材料成分に含有させることにより、ニッケル薄板の強度が向上されるという効果が発揮され得る。
そのため、0.4質量%以下の含有量であれば、本実施形態のニッケル薄板の形成に用いる任意成分として採用しうる。
マンガンは、鉄と同様にニッケル薄板の強度の向上に有効であり、0.3質量%以下の含有量であれば本実施形態のニッケル薄板の形成に用いる任意成分として採用しうる。
チタンは、材料成分における窒素をトラップする効果を奏することから0.02質量%以下の含有量であれば本実施形態のニッケル薄板の形成に用いる任意成分として採用しうる。
マグネシウムは、熱間加工性を改善する効果があり、0.015質量%以下の含有量であれば本実施形態のニッケル薄板の形成に用いる任意成分として採用しうる。
前記不純物としては、炭素、ケイ素、窒素、銅、イオウ等が挙げられ、これらの不純物は、通常、1質量%以下の合計含有量であれば、ニッケル薄板の形成に問題を生じさせるおそれは低い。
このコバルトは、0.1質量%以下であれば、本実施形態のニッケル薄板の形成に用いる材料成分として含有させうる。
なお、より確実に且つ簡易な製法によって、ニッケル薄板の最表面におけるホウ素の濃度を1原子%以上とさせ得る点においては、ニッケル薄板を、上記材料成分のみによって形成することが好適ではあるが、例えば、上記成分以外に、タングステン、アルミニウム、ニオブなどを10質量%以下の合計含有量で添加させた場合であっても、熱処理条件等の調整によって1原子%以上に表面濃化させることが可能であり、しかも、これらを先の成分に加えることでニッケル薄板の強度の向上を図ることができる。
上記のような材料成分によって形成されたニッケル薄板は、適度な熱処理を加えることによってホウ素の表面濃化を促進させることができ、その場合においては、ニッケル薄板の最表面におけるホウ素の濃度が1原子%以上、好ましくは3原子%以上となるようにホウ素の表面濃化を実施させることが望ましい。
例えば、熱処理には、窒素、水素、アルゴンの内の1種、又は複数種を混合した混合ガスを雰囲気ガスとして用い、しかも、露点が−30℃以下、好ましくは、−40℃以下、特に好ましくは−70℃以下の雰囲気ガスを用いて、この雰囲気ガス中でニッケル薄板を450〜900℃のいずれかの温度に加熱することでホウ素の表面濃化をより好適に実施させ得る。
したがって、少なくとも、表面におけるホウ素の濃度が1原子%以上、好ましくは、3原子%以上となるように熱処理条件を定めることが好ましい。
なお、最表面におけるホウ素の濃度の上限は、特に限定されるものではないが最大に濃化させたとしても、通常、20原子%程度となる。
従来のニッケル薄板では、繰返してパンチング加工するうちに表面の酸化皮膜が剥がれて金型に付着し、クリアランス量を変化させて、切断バリを端面部に発生させたり、場合によっては製品形状が大きく損なわれたり、押し込み疵等が発生したりするおそれを有している。
一方で、本発明のニッケル薄板は、ホウ素の作用によって強度の高い安定した表面皮膜を有していることから、長期にわたって安定した状態でパンチング加工を実施することができ、得られる製品の品質に対しても有益な効果が得られる。
また、ホウ素の表面濃化によって水酸化物の形成も同時に抑制されることとなり、この水酸化物を原因とした白色粉末の発生も防止されうる。
のではない。
従来のニッケル薄板をスリット切断した際に発生された白色粉末を採取し、これをESCA分析した。
また、同じくESCAにて従来のニッケル薄板の表面と、材料成分としてホウ素を所定量で含有させて作製したニッケル薄板の表面とを分析した結果を、図1、図2に示す。
図中の(a)は白色粉末、(b)は従来のニッケル薄板、(c)はホウ素を含有させたニッケル薄板の分析結果である。
ニッケル薄板についても同様に、その表面はニッケル酸化物[NiO]で覆われていると考えられる。
図1のESCA分析結果では、スリット切断工程で採取した白色粉末(a)は水酸化物[Ni(OH)2]の位置に明瞭なピークを示しており、従来のニッケル薄板(b)の表面皮膜も同様に水酸化物のピークを呈している。
このことから白色粉末がニッケル薄板の表面皮膜が脱落したものであること、ならびに、この表面被膜は、酸化物[NiO]が大気中の水分を吸収して経時的に水酸化物[Ni(OH)2〕]に変化したものと考えられる。
上記の問題解決にはニッケル酸化を抑制できれば表面皮膜中のニッケル水酸化物量は少なくなり、スリット切断工程での白色粉末の発生量を少なくできると考えられる。
中でもホウ素は、金属中での拡散速度が速く特に有効である。
その結果、ニッケル酸化物の形成を抑制できるとともに酸化皮膜の厚みも薄くなり、この酸化物が水酸化物に変化することによる表面皮膜の脆化も生じにくくなる。
さらに、この(c)では、図2に示すようにホウ素の領域に明瞭なピークが認められる。
すなわち当該ニッケル薄板の最表面は、ホウ素が濃化した状態となっており、ニッケル酸化物の生成が抑制されていることがわかる。
表1に示す、サンプルNo.1〜16のニッケル薄板を作製し評価を行った。
まず、主成分であるニッケルを、電気炉を用いた真空下酸素吹精脱炭法(VOD)プロセスにより溶製し、この溶製過程でホウ素を表1に示す量(B添加量)となるように添加した。
得られたスラブを熱間圧延し、その後、最終板厚が表1の値(板厚)となるまで冷間圧延しニッケル薄板を作製した。
得られたニッケル材は光輝焼鈍炉にて熱処理を行った。このときの焼鈍炉の雰囲気ガス組成、露点および熱処理温度は、表1の通りとした。
各サンプルNo.のニッケル薄板の表面皮膜の組成を調べるためにESCA分析を行い、ニッケルとホウ素の存在量を調査した。
ニッケル領域については、ピーク解析を行い酸化物と金属の状態比率を調べた。
この場合、ニッケルの酸化物比率が低いほど表面酸化皮膜が薄いことを示している。
結果を、表1に示す。
いずれも、添加量に比べて極めて高濃度な状態で表面にホウ素が存在しており、ホウ素が表面に濃化していることがわかる。
この図からも明らかなように、ホウ素添加量を多くするほど表面ホウ素濃度も増加している。
この図からは、表面ホウ素濃度が高くなるほどニッケル酸化物の比率が低下する傾向にあることがわかる。すなわち、ホウ素の表面濃化によってニッケルの酸化が抑制されていることが確認できる。
同じスリット切断装置を用いて、各サンプルNo.のニッケル薄板(200mm幅のコイル)を50mm幅にスリット加工したときに白色粉末の発生を観察し、白色粉末が発生しなかった場合を「○」、発生はしたが少量であった場合を「△」、大量に発生した場合を「×」として判定した。
結果を、表1に示す。
各サンプルNo.のニッケル薄板を、厚み10μmの銅箔に超音波接合し、容易に接合できる場合を「○」、接合性に難がある場合を「△」として判定した。
結果を、表1に示す。
Claims (2)
- ニッケルを主成分として含有し、最表面におけるホウ素の濃度が1原子%以上であることを特徴とするニッケル材。
- ニッケルを主成分として含有し、最表面におけるホウ素の濃度が1原子%以上であるニッケル材を製造すべく、窒素、水素、及びアルゴンの内の1種以上が用いられてなり露点が−30℃以下の雰囲気ガス中における450〜900℃のいずれかの温度での熱処理を実施して前記最表面のホウ素を濃化させることを特徴とするニッケル材の製造方法。
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