JP7242996B2 - 銅合金 - Google Patents
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Description
Cu-Fe-P系合金は、銅母相中にFe又はFe-P等の金属間化合物を析出させた析出強化型合金であって、強度、導電性および熱伝導性に優れていることから、様々な用途で広く使用されている。
近年、Cu-Fe-P系合金の用途拡大や、電気・電子機器の軽量化、薄肉化、小型化などに伴い、Cu-Fe-P系合金に対しても、より一層の高強度化、高導電率化、良好な熱伝導性が求められている。
最近では、さらなる多ピン化が進んでおり、これにともなって、スタンピング加工後の加工品に歪みが残留しやすく、ピンの形状が不揃いとなる傾向にある。
しかし、このような熱処理を行った場合には、材料が軟化して強度が低下し、必要な強度を確保できなくなるおそれがある。また、生産性を向上させるために、上述の熱処理は、より高温、短時間で実施することが求められている。
このため、Cu-Fe-P系合金においては、熱処理後も十分な強度を確保することができる耐熱性が要求されている。
例えば、特許文献1においては、円相当直径が10~40nmのFe又はFe-P化合物の析出粒子の存在密度を20個/μm2以上としたCu-Fe-P系合金が提案されている。
なお、本発明における析出物粒子の粒径は、組織観察において、析出物粒子の面積に等しい面積を持つ円の直径(円相当直径)である。
また、本発明の銅合金においては、前記不可避不純物として含まれるCの含有量が5質量ppm未満、Crの含有量が7質量ppm未満、Moの含有量が5質量ppm未満、Wの含有量が1質量ppm未満、Vの含有量が1質量ppm未満、Nbの含有量が1質量ppm未満とされているので、溶解・鋳造時において液相分離を促進する作用を有する元素が低減されているので、鋳塊内に粗大なFe系晶出物が生成することを抑制でき、発生する表面欠陥の個数を低減することができる。
また、粒径が5nm以上15nm未満の析出物粒子は、観察された粒径が5nm以上100nm未満の析出物粒子の総数に対する個数割合が55%を超えるとともに個数密度が40個/μm2以上とされているので、可動転位の移動を抑制して回復や再結晶を遅らせるとともに粒界に対するピン止め効果を発揮することができ、耐熱性を十分に向上させることができる。
よって、本発明の銅合金によれば、はんだ耐候性、および、耐熱性を両立することが可能となる。
また、本発明の銅合金においては、導電率が55%IACS以上とされているので、高い導電性が要求される用途にも適用することができる。
この場合、Mg、Coが母相中に固溶および一部がFe系およびFe-P系析出物に固溶することにより、固溶強化および一部は析出強化によって、はんだ耐候性を維持したまま、耐熱性及び強度を向上させることが可能となる。
この場合、Ni、Al、Siを含有することにより、耐熱性をさらに向上させることが可能となる。
この場合、引張強度が480MPa以上とされているので、高い強度が要求される用途にも適用することができる。
この場合、ビッカース硬度が130Hv以上とされているので、容易に変形することがなく、電気・電子機器用部品として特に適している。
また、本実施形態の銅合金においては、さらに、Ni;0.005質量%以上0.5質量%以下、Al;0.005質量%以上0.5質量%以下、Si;0.005質量%以上0.5質量%以下、のいずれか一種又は二種以上を含有していてもよい。
また、粒径が50nm以上100nm未満の析出物粒子の個数密度が1.0個/μm2以上とされ、粒径が5nm以上15nm未満の析出物粒子の個数密度が40個/μm2以上とされている。
析出物粒子の個数割合を算出する際には、粒径5nm未満の析出物粒子は、観察が困難であること、また、はんだ耐候性や耐熱性の向上に対して実質的に作用効果を有さないことから対象外とした。また、粒径100nm以上の析出物粒子は、はんだ耐候性や耐熱性の向上に対して実質的に作用効果を有さないこと、また、表面欠陥の原因となり得ることから対象外とした。
さらに、本実施形態である銅合金においては、引張強度が480MPa以上とされていることが好ましい。
また、本実施形態である銅合金においては、ビッカース硬度が130Hv以上とされていることが好ましい。
Feは、母相中に固溶するとともに、FeまたはFe―Pの析出物粒子を生成する。このFeまたはFe―Pの析出物粒子が母相中に分散されることにより、導電率を低下させることなく、強度、硬さ、耐熱性を向上させる。
ここで、Feの含有量が1.5質量%未満では、強度向上の効果等が十分でない。一方、Feの含有量が2.7質量%を超えると、大きな晶出物が生成して表面の清浄性を損なうおそれがある。さらに導電率および加工性の低下をもたらすおそれがある。
したがって、本実施形態においては、Feの含有量を1.5質量%以上2.7質量%以下に設定している。
なお、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、Feの含有量の下限を1.8質量%以上とすることが好ましく、2.1質量%以上とすることがさらに好ましい。また、大きな晶出物の生成を確実に抑制するためには、Feの含有量の上限を2.6質量%以下とすることが好ましく、2.4質量%以下とすることがさらに好ましい。
Pは、脱酸作用を有する元素である。また、上述のように、FeとともにFe―Pの析出物粒子を生成し、導電率を低下させることなく、強度、硬さ、耐熱性を向上させる。
ここで、Pの含有量が0.008質量%未満では、強度向上の効果等が十分でない。一方、Pの含有量が0.20質量%を超えると、導電率および加工性の低下をもたらすことになる。
したがって、本実施形態においては、Pの含有量を0.008質量%以上0.20質量%以下に設定している。
なお、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、Pの含有量の下限を0.01質量%以上とすることが好ましく、0.02質量%以上とすることがさらに好ましい。また、導電率および加工性の低下を確実に抑制するためには、Pの含有量の上限を0.15質量%以下とすることが好ましく、0.12質量%以下とすることがさらに好ましい。
Znは、はんだ濡れ性及びはんだ耐候性を向上させる作用を有する元素である。
ここで、Znの含有量が0.01質量%未満では、はんだ濡れ性及びはんだ耐候性を向上させる作用効果を十分に奏功せしめることができない。一方、Znの含有量が0.5質量%を超えてもその効果が飽和することになる。
したがって、本実施形態においては、Znの含有量を0.01質量%以上0.5質量%以下に設定している。
なお、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、Znの含有量の下限を0.02質量%以上とすることが好ましく、0.05質量%以上とすることがさらに好ましい。また、Znの含有量の上限を0.35質量%以下とすることが好ましく、0.20質量%以下とすることがさらに好ましい。
Snは、母相中に固溶することにより、はんだ耐候性を維持したまま、耐熱性および強度を向上させる作用を有する元素である。
ここで、Snの含有量が0.01質量%未満では、上述の効果を十分に奏功せしめることができない。一方、Snの含有量が0.5質量%を超えると、導電率が著しく低下することになる。
したがって、本実施形態においては、Snの含有量を0.01質量%以上0.5質量%以下に設定している。
なお、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、Snの含有量の下限を0.02質量%以上とすることが好ましく、0.03質量%以上とすることがさらに好ましい。また、導電率の低下をさらに抑制するためには、Snの含有量の上限を0.3質量%以下とすることが好ましく、0.2質量%以下とすることがさらに好ましい。
Mg,Coは、母相中に固溶して固溶強化によって、はんだ耐候性を維持したまま耐熱性および強度を向上させる作用を有している。このため、要求特性に応じて、適宜添加してもよい。
ここで、Mgの含有量が0.005質量%未満、あるいは、Coの含有量が0.005質量%未満の場合には、上述の効果を十分に奏功せしめることができない。一方、Mgの含有量が0.5質量%を超える、あるいは、Coの含有量が0.5質量%を超える場合には、導電率が著しく低下することになる。
したがって、本実施形態においては、Mg、Coを添加する場合には、Mgの含有量を0.005質量%以上0.5質量%以下、Coの含有量を0.005質量%以上0.5質量%以下に設定している。
なお、Mg,Coを添加する場合には、Mgの含有量の下限を0.01質量%以上とすることが好ましく、Coの含有量の下限を0.01質量%以上とすることが好ましい。さらにはMgの含有量の下限を0.02質量%以上とすることが好ましく、Coの含有量の下限を0.02質量%以上とすることが好ましい。さらに、Mgの含有量の上限を0.2質量%以下とすることが好ましく、Coの含有量の上限を0.2質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは、Mg、Coのうちいずれか1種または2種の合計含有量を0.2質量%以下とすることが好ましい。
Ni,Al,Siは、耐熱性をさらに向上させる作用を有している。このため、要求特性に応じて、適宜添加してもよい。
ここで、Niの含有量が0.005質量%未満、Alの含有量が0.005質量%未満、あるいは、Siの含有量が0.005質量%未満の場合には、上述の効果を十分に奏功せしめることができない。一方、Niの含有量が0.5質量%を超える、Alの含有量が0.5質量%を超える、あるいは、Siの含有量が0.5質量%を超える場合には、導電率が著しく低下することになる。
したがって、本実施形態においては、Ni,Al,Siを添加する場合には、Niの含有量を0.005質量%以上0.5質量%以下、Alの含有量を0.005質量%以上0.5質量%以下、Siの含有量を0.005質量%以上0.5質量%以下に設定している。
なお、Ni,Al,Siを添加する場合には、Niの含有量の下限を0.01質量%以上とすることが好ましく、Alの含有量の下限を0.01質量%以上とすることが好ましく、Siの含有量の下限を0.01質量%以上とすることが好ましい。さらに、Niの含有量の上限を0.1質量%以下とすることが好ましく、Alの含有量の上限を0.1質量%以下とすることが好ましく、Siの含有量の上限を0.1質量%以下とすることが好ましい。
C、Cr、Mo、W、V、Nbは、不可避不純物として上述の銅合金中に含有されるものである。ここで、C、Cr、Mo、W、V、Nbの含有量が多い場合、銅合金薄板の表面欠陥が大幅に増加することになる。この表面欠陥は、Cr、Mo、W、V、Nbのうちの少なくとも1種以上とFeとCとを含有する鉄合金粒子が起因となる。
なお、さらに粗大な晶出物の発生を抑制するためには、不可避不純物であるCの含有量を4質量ppm未満とすることが好ましい。さらに好ましくは3質量ppm以下、より好ましくは2質量ppm以下である。Moの含有量を1質量ppm未満、さらに0.6質量ppm未満とすることが望ましい。また、Crの含有量を5質量ppm未満、Wの含有量を0.6質量ppm未満、Vの含有量を0.6質量ppm未満、Nbの含有量を0.6質量ppm未満とすることが好ましい。
例えば175℃といった高温環境下で長時間使用した場合には、はんだ層中におけるCuの拡散が銅合金中よりも速いため、カーケンダル効果によって銅合金とはんだ層との界面に粒径15nm未満の微細な析出物粒子が凝集する。これらの微細な析出物粒子は、銅合金からはんだ層側に拡散するCuと対向して拡散する空孔の流れを妨げ、結果として空孔の拡散が遅延する。その結果、時間とともに界面近傍に空孔が凝集し、粗大なボイドを生じさせて剥離が生じ、はんだ耐候性が低下することになる。
以上のことから、本実施形態においては、粒径が50nm以上100nm未満の析出物粒子の個数割合を1.0%超えとし、個数密度を1.0個/μm2以上としている。
なお、上述の作用効果を奏功せしめるためには、粒径が50nm以上100nm未満の析出物粒子の個数割合を1.5%以上とすることが好ましく、2.0%以上とすることがさらに好ましい。また、粒径が50nm以上100nm未満の析出物粒子の個数密度を1.5個/μm2以上とすることが好ましく、2.0個/μm2以上とすることがさらに好ましい。
粒径が5nm以上15nm未満の析出物粒子は、可動転位に対して障害となり、回復や再結晶を遅らせる効果、及び、粒界に対するピン止め効果、を有しており、耐熱性を大きく向上させる。
以上のことから、本実施形態においては、粒径が5nm以上15nm未満の析出物粒子の個数割合を55%超えとし、個数密度を40個/μm2以上としている。
なお、上述の作用効果を奏功せしめるためには、粒径が5nm以上15nm未満の析出物粒子の個数割合を60%以上とすることが好ましく、65%以上とすることがさらに好ましい。また、粒径が5nm以上15nm未満の析出物粒子の個数密度を50個/μm2以上とすることが好ましく、60個/μm2以上とすることがさらに好ましい。より好ましくは65個/μm2以上である。
本実施形態である銅合金において、導電率が55%IACS以上である場合には、リードフレームやコネクタ等の電気・電子機器用部品の素材として特に適している。
なお、本実施形態である銅合金の導電率は、57%IACS以上であることが好ましく、60%IACS以上であることがさらに好ましい。
本実施形態である銅合金において、引張強度が480MPa以上である場合には、強度に優れており、リードフレームやコネクタ等の電気・電子機器用部品の素材として特に適している。なお、本実施形態では、圧延方向に対して平行方向に引張試験を行った際の引張強度が480MPa以上とされている。
なお、本実施形態である銅合金の引張強度は500MPa以上であることが好ましく、 530MPa以上であることがさらに好ましい。
本実施形態である銅合金において、ビッカース硬度が130Hv以上である場合には、容易に変形することがなく、リードフレームやコネクタ等の電気・電子機器用部品の素材として特に適している。
なお、本実施形態である銅合金のビッカース硬度は140Hv以上であることが好ましく、150Hv以上であることがさらに好ましい。
まず、銅原料を溶解して得られた銅溶湯に、前述の元素を添加して成分調整を行い、銅合金溶湯を製出する。なお、各種元素の添加には、元素単体や母合金等を用いることができる。また、上述の元素を含む原料を銅原料とともに溶解してもよい。また、本合金のリサイクル材およびスクラップ材を用いてもよい。ここで、銅溶湯は、純度が99.99質量%以上とされたいわゆる4NCu、あるいは99.999質量%以上とされたいわゆる5NCuとすることが好ましい。
そして、成分調整された銅合金溶湯を鋳型に注入して鋳塊を製出する。なお、量産を考慮した場合には、連続鋳造法または半連続鋳造法を用いることが好ましい。
次に、得られた鋳塊の均質化のために熱処理を行う。鋳塊を850℃以上1050℃以下で1時間以上保持することが好ましい。
ここで、均質化工程S02における保持時間の上限に制限はないが、コストや製造効率を考慮すると24時間以下とすることが好ましい。
また、均質化工程S02における冷却速度に特に制限はなく、空冷や水冷を実施すればよい。
次に、必要に応じて熱間加工を実施する。また、この熱間加工工程において均質化工程S02を兼ねてもよい。この熱間加工工程S03において、後の工程で析出物の粒径を制御するために十分に溶体化させる。
850℃以上1050℃以下で1時間以上保持した後、550℃以上1050℃以下で熱間加工を実施する。
そして、熱間加工工程S03後の導電率を40%IACS以下、好ましくは35%IACS以下、さらに好ましくは30%IACS以下の範囲内とする。
このような導電率にするためには、熱間加工終了温度を600℃以上にし、その後、空冷もしくは水冷を選択すればよい。
また、この熱間加工工程S03においては、加工方法について特に限定はなく、例えば圧延、線引き、押出、溝圧延、鍛造、プレス等を採用することができる。なお、本実施形態では、圧延加工を行うものとしている。
熱間加工工程S03の後に、必要に応じて冷間で粗加工を実施する。このときの加工率は10%以上95%以下の範囲内とすることが好ましい。
なお、この粗加工工程S04においては、加工方法について特に限定はなく、例えば圧延、線引き、押出、溝圧延、鍛造、プレス等を採用することができる。なお、本実施形態では、圧延加工を行うものとしている。
粗加工工程S04後に溶体化熱処理工程S05を行う。この溶体化は、後の析出物の粒径を制御するのに重要な工程である。ここでは、熱処理温度を800℃以上1000℃未満、熱処理温度での保持時間を1分以上24時間未満の条件で実施する。熱処理温度は、850℃以上1000℃未満とすることが好ましく、900℃以上1000℃未満とすることがより好ましい。
溶体化熱処理後は溶体化状態を保つために水冷すればよい。もしくは500℃以下まで400℃/分の冷却速度で冷却すればよい。溶体化を確実に実施したことを確認するために、溶体化熱処理工程S05後の導電率は35%IACS以下、好ましくは30%IACS以下、より好ましくは25%IACS以下とするのがよい。
溶体化熱処理工程S05の後に、冷間加工を実施する。このときの加工率を10%以上95%以下の範囲内とすることが好ましい。
なお、この第1冷間加工工程S06においては、加工方法について特に限定はなく、例えば圧延、線引き、押出、溝圧延、鍛造、プレス等を採用することができる。なお、本実施形態では、圧延加工を行うものとしている。
次に、550℃以上800℃未満で1秒以上1時間未満保持する熱処理を実施する。この第1析出熱処理工程S07により、粒径50nm以上の析出物粒子の個数密度を向上させる。
そして、第1析出熱処理工程S07後の導電率を20%IACS以上40%IACS以下の範囲内、好ましくは25%IACS以上40%IACS以下の範囲内、さらに好ましくは25%IACS以上37%IACS以下の範囲内、より好ましくは25%IACS以上35%IACS以下の範囲内とする。
このような導電率にするために、第1析出熱処理工程S07における昇温速度および降温速度を適宜設定することが好ましい。
第1析出熱処理工程S07の後に、冷間加工を実施する。このときの加工率を10%以上95%以下の範囲内とすることが好ましい。
なお、この第2冷間加工工程S08においては、加工方法について特に限定はなく、例えば圧延、線引き、押出、溝圧延、鍛造、プレス等を採用することができる。なお、本実施形態では、圧延加工を行うものとしている。
次に、550℃以上900℃未満で1時間以上24時間未満保持する熱処理を実施する。この第2析出熱処理工程S09により、粒径50nm以上の析出物粒子の個数密度をさらに向上させる。
そして、第2析出熱処理工程S09後の導電率を20%IACS以上40%IACS以下の範囲内、好ましくは25%IACS以上40%IACS以下の範囲内、さらに好ましくは25%IACS以上37%IACS以下の範囲内、より好ましくは25%IACS以上35%IACS以下の範囲内とする。
このような導電率にするために、第2析出熱処理工程S09における昇温速度および降温速度を適宜設定することが好ましい。
第2析出熱処理工程S09の後に、必要に応じて第3冷間加工を実施してもよい。このときの加工率は10%以上95%以下の範囲内とすることが好ましい。
なお、この第3冷間加工工程S10においては、加工方法について特に限定はなく、例えば圧延、線引き、押出、溝圧延、鍛造、プレス等を採用することができる。なお、本実施形態では、圧延加工を行うものとしている。
次に、450℃以上600℃以下で1時間を超えて24時間以下保持する熱処理を実施する。高温で熱処理する場合には保持時間を短く、低温で熱処理する場合には保持時間を長くすることが好ましい。この第3析出熱処理工程S11により、粒径が5nm以上15nm未満の析出物粒子の個数を増加させる。
そして、第3析出熱処理工程S11の条件については、その後の工程の条件を考慮して、最終製品における導電率が55%IACS以上となるように設定することが好ましい。
第3析出熱処理工程S11における昇温速度や降温速度は適宜設定すればよいが、昇温速度は1℃/分以上、降温速度は300℃まで0.1℃/分以上とすることが好ましい。
第3析出熱処理工程S11の後に、仕上げ加工を実施する。このときの加工率を10%以上95%以下の範囲内とすることが好ましい。
なお、この仕上げ加工工程S12においては、加工方法について特に限定はなく、例えば圧延、線引き、押出、溝圧延、鍛造、プレス等を採用することができる。なお、本実施形態では、圧延加工を行うものとしている。
次に、必要に応じて、仕上げ加工工程S12で生じた残留歪みを除去することを目的として200℃以上700℃未満で1秒以上24時間未満保持する歪除去熱処理を実施する。高温で熱処理する場合には保持時間を短く、低温で熱処理する場合には保持時間を長くすることが好ましい。
さらに、本実施形態である銅合金において、引張強度が480MPa以上である場合には、高い強度が要求される用途にも適用することができる。
また、本実施形態である銅合金において、ビッカース硬度が130Hv以上とされている場合には、容易に変形することがなく、電気・電子機器用部品として特に適している。
上述の実施形態では、銅合金の製造方法の一例について説明したが、銅合金の製造方法は、実施形態に記載したものに限定されることはなく、既存の製造方法を適宜選択して製造してもよい。
これにより、表1に示す成分組成の銅合金溶湯を溶製し、カーボン鋳型に注湯して鋳塊を製出した。また、鋳塊の大きさは、厚さ約25mm×幅約70mm×長さ約100mmとした。
熱間圧延後に形成された表面の酸化膜を除去するために面削を行い、熱間圧延後の導電率を渦電流法によって測定した。測定された導電率を表2に示す。
その後、溶体化熱処理として950℃で2時間の熱処理を実施し、熱処理後水冷した。溶体化熱処理後、表面を研磨した後、渦電流法によって導電率を計測した。得られた導電率を表2に示した。
その後、第1析出熱処理工程として、電気炉を用いて表2に記載の熱処理温度で1時間から4時間の間で所定時間保持した後、空冷、炉冷もしくは水冷した。
熱処理後に形成された表面の酸化膜を除去するために研磨を行った。その後、第1析出熱処理工程後の導電率を渦電流法によって測定した。測定された導電率を表2に示す。
熱処理後に形成された表面の酸化膜を除去するために研磨を行い、第2析出熱処理工程後の導電率を渦電流法によって測定した。測定された導電率を表2に示す。
次に、第3析出熱処理工程として、電気炉を用いて表2に記載の熱処理温度で1時間から24時間の間で所定時間保持した。熱処理後には300℃まで炉冷した後、空冷もしくは水冷した。
その後、第3析出熱処理工程後の導電率を渦電流法によって測定した。測定された導電率を表2に示す。
析出物粒子の観察は以下の方法で実施した。評価測定用のサンプルの圧延方向に直交する面、すなわちRD面を機械研磨し、鏡面状に仕上げたのち、日立ハイテクノロジーズ製のIM-4000を用いて、表面をArイオンを用いて4.0kVの加速電圧でイオンミリング加工したのち、電界放出型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、SU8220)を用いて行った。
析出物粒子サイズが20nm以上100nm未満のものについては観察倍率を30000倍の視野(約13μm2)、5nm以上20nm未満の析出物粒子サイズについては観察倍率を100000倍の視野(約1μm2)で観察したSEM写真より、画像処理し析出物のみにコントラストをつけた。
コントラストをつけた画像から、画像解析ソフト「Win ROOF」を用いて、析出物の面積から円相当径を算出した。析出物分布を求める際には、析出物粒子サイズが20nm以上100nm未満のものについては30000倍の視野(約13μm2)で3視野以上、5nm以上20nm未満の析出物粒子サイズについては観察倍率を100000倍の視野(約1μm2)で3視野以上で行った。図2に本発明例4の100000倍で観察したSEM写真(図2(a))およびその写真を用いて析出物のみにコントラストをつけた画像(図2(b))を示した。
JIS Z 2241に準じ、試料から13号B試験片を採取し、引張強度を測定した。なお、試験片は、引張方向が圧延方向と平行となるように採取した。評価結果を表3に示す。
評価測定用のサンプルから幅10mm×長さ100mmの試験片を採取し、4端子法によって電気抵抗を求めた。またマイクロメータを用いて試験片の寸法測定を行い、試験片の体積を算出した。そして測定した電気抵抗率、算出した体積から、導電率を測定した。なお、試験片は、その長手方向が圧延方向と平行になるように採取した。測定結果を表に示す。
JIS Z 2244に規定されているマイクロビッカース硬さ試験方法に準拠し、試験荷重0.98Nでビッカース硬さを測定した。評価結果を表3に示す。
耐熱試験する前の試料のビッカース硬さをHvRTとし、耐熱試験として450℃で5分保持する熱処理を実施した後に急冷し、室温で測定したときの硬度をHv450℃とし、Hv450℃/HvRTが90%以上であるものを「○」、90%未満であるものを「×」と表記した。評価結果を表3に示す。
試料から採取した短冊状(幅10mm、長さ50mm)の試験片を3個用意し、200℃に加熱したSn-40質量%Pbはんだ浴に5秒間浸漬することで、試験片の表面にはんだ層を形成した。このあと、175℃で100時間保持の熱処理を行った後、この試験片に180°曲げを加え、曲げた部分のはんだが剥離するか否かを確認した。3個とも剥離が確認されなかったものを「A」、1個だけ剥離が生じたものを「B」、2個以上で剥離が生じたものを「C」と表記した。評価結果を表3に示す。
粒径が5nm以上15nm未満の析出物粒子の個数割合が42%、個数密度が11.0個/μm2とされた比較例2においては、耐熱性が不十分であった。なお、はんだ耐候性は評価しなかった。
Snの含有量が0.61質量%とされた比較例3においては、導電率が51%IACSと低くなった。このため、耐熱性及びはんだ耐候性は評価しなかった。
以上のことから、本発明例によれば、耐熱性に優れ、かつ、はんだ耐候性に優れたCu-Fe-P系の銅合金を提供できることが確認された。
Claims (5)
- Fe;1.5質量%以上2.7質量%以下、P;0.008質量%以上0.20質量%以下、Zn;0.01質量%以上0.5質量%以下、Sn;0.01質量%以上0.5質量%以下を含有し、残部がCu及び不可避不純物とされており、
前記不可避不純物として含まれるCの含有量が5質量ppm未満、Crの含有量が7質量ppm未満、Moの含有量が5質量ppm未満、Wの含有量が1質量ppm未満、Vの含有量が1質量ppm未満、Nbの含有量が1質量ppm未満とされており、
観察された粒径が5nm以上100nm未満の析出物粒子を対象として、粒径が50nm以上100nm未満の析出物粒子の個数割合が1.0%超え2.5%以下の範囲内とされるとともに、粒径が5nm以上15nm未満の析出物粒子の個数割合が55%を超えており、
粒径が50nm以上100nm未満の析出物粒子の個数密度が1.0個/μm2以上とされ、粒径が5nm以上15nm未満の析出物粒子の個数密度が40個/μm2以上とされており、
導電率が55%IACS以上であることを特徴とする銅合金。 - さらに、Mg;0.005質量%以上0.5質量%以下、Co;0.005質量%以上0.5質量%以下のいずれか一種又は二種を含有することを特徴とする請求項1に記載の銅合金。
- さらに、Ni;0.005質量%以上0.5質量%以下、Al;0.005質量%以上0.5質量%以下、Si;0.005質量%以上0.5質量%以下、のいずれか一種又は二種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の銅合金。
- 引張強度が480MPa以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の銅合金。
- ビッカース硬度が130Hv以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の銅合金。
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