JP2010106286A - 犠牲組成物、その使用方法、及びその分解方法 - Google Patents

犠牲組成物、その使用方法、及びその分解方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、構造物を作製するのに使用される方法を提供することである。
【解決手段】本発明により、酸触媒分解を起こす犠牲ポリマーと、触媒量の光酸発生剤とを含有する組成物が提供される。
【選択図】なし

Description

[優先権の主張]
本出願は、2002年11月1日付け出願の出願番号第60/423,013を有する“Novel Selective-Temperature Sacrificial Polymeric Materials”という名称の同時係属中の米国仮出願の優先権を主張し、該出願全体を本明細書に援用する。
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する記載]
米国政府は、本発明の支払い済みのライセンスと、米国政府の国立科学財団(グラント#DMI−9980804)によって与えられたMDAの条件により提供される妥当な条件で他人にライセンスすることを特許権者に要求する限定された状況での権利とを有し得る。
[技術分野]
本発明は、一般的に犠牲組成物に関し、さらに詳しくは犠牲ポリマー及びその分解触媒、その使用方法、並びに犠牲ポリマーの分解方法に関する。
広範なマイクロエレクトロニックシステム及びマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)の用途により、低温熱分解性の犠牲材料に対する要求が増大している。この要求としては、電気接続、MEMS、マイクロ流体デバイス及びマイクロリアクターのエアギャップの製作が挙げられる。
エアギャップの形成は、マトリックスの有効誘電率を低下させることから、電気接続に重要である。埋設エアチャネルの作製は、多層配線盤、高解像度をもつマイクロディスプレーボード及びインクジェットプリンターヘッドにおけるバイアスの作製に有用である。MEMS技術において、マイクロエアキャビティ(micro-air cavity)の製作は、材料の熱膨張に関係した応力を緩和し得且つ温度活性化放出材料として作用することもできる。
エアギャップ技術を用いて作製されたマイクロ流体デバイス及びマイクロリアクターは、小規模の化学合成、医学診断、並びに微量化学分析及びにセンサーに使用できる。このようなデバイスでは、液体及び気体は、数十〜数百μm程度の横断面寸法をもつマイクロチャネルで処理される。このようなマイクロチャネルデバイスでの処理は、多数の利点、例えば低い試薬及び検体消費、高度小型化及び携帯用装置、迅速な処理時間、並びに使い捨て可能な装置を提供する。
しかし、これらの裏づけの全てにもかかわらず、マイクロ流体デバイスは、現在限定された数の用途で使用されてきており、一般的にその操作の複雑さ及び能力の点から未だどちらかといえば単純なデバイスである。例えば、実際に携帯用微量分析装置を作製する点で、現在の問題の一つは、電子素子(例えば、検出方法)及び流体素子の上記デバイスへの簡単な集積化が挙げられる。この前記デバイスに種々の機能を組み込むことができる能力を制御する、従ってマイクロ流体デバイスの機能性のレベルを制御する最も重要な問題の一つは、構造物を作製するのに使用される方法である。
マイクロ流体デバイスに関する用途は、種々様々な温度で数種類の材料に埋設マイクロチャネルの形成を必要とする。ポリカーボネート類は、電子ビームリトグラフィーによるナノ流体デバイスの作製において犠牲材料として使用されてきている。C.K. Harnett, et al., J Vac. Sci., Technol. B., vol.19(6), p.2842, 2001。エアギャップもまた、犠牲層としてポリメチレンの加熱フィラメント化学蒸着法を使用して作製されている。L.S. Lee, et al., Electrochem. and Solid State Lett., 4, p.G81, 2001。また、高次構造樹状物質、具体的には高分岐ポリマーがカンチレバービーム(cantilever beam)の作製において乾式放出犠牲材料として使用されている。H-J. Suh, et al., J. Microelectromech. Syst., Vol.9(2), pp.198-205, 2000。従来の研究もまた、250〜425℃の範囲で分解する非光感受性犠牲ポリマーを使用してエアギャップを作製している。P.A. Kohl, et al., Electrochemical and Solid State Lett., vol.1, p.49, 1998;D. Bhusari, et al., J Micromech. Microeng., vol.10(3), p.400, 2001。
図1A〜1Hは、非光感受性犠牲材料を使用して埋設エアキャビティ(air cavity)を形成する従来の提案された方法100を説明する横断面図である。図1Aは、例えば図1Bに示すような回転塗布により表面に配置された非光感受性犠牲材料12を有する前の基材10を説明する。図1Cは、犠牲材料12の表面に配置されたハードマスク14を説明する。図1Dは、ハードマスク14の表面にフォトリソグラフィー処理され、エッチング処理されたマスク部分16を例示し、これに対して図1Eは、マスク部分16の除去と、プラズマエッチングに暴露された犠牲ポリマー材料12の部分とを説明する。ハードマスク14は、次いで、図1Fに示されるように除去される。
図1Gは、犠牲ポリマー12及び基材10の表面の保護被膜層18の形成を説明する。図1Hは、犠牲ポリマー12を分解してエア領域20の形成を説明する。犠牲ポリマー12は、従来は、犠牲ポリマー12を、該ポリマーを分解するのに十分な温度(例えば、約300〜425℃)に加熱することによって分解されている。従来の犠牲ポリマーは、高い分解温度(例えば、約300〜425℃)を必要とし、これは、保護被膜材料及び基材は犠牲ポリマーを分解するのに必要とされる高い温度に耐えることができるものでなければならないという理由から、使用し得る保護被膜材料及び基材の種類を限定する。犠牲ポリマーとしてポリカーボネートポリマーを使用した場合には、分解温度を約250〜280℃まで低下させる。
従って、これまで取り組まれていない要求が、前記の欠陥及び不備を扱う業界に存在する。
簡単に説明すると、この開示の実施形態として、数ある中から、ポリマー組成物、その使用方法、及びその分解方法が挙げられる。典型的な組成物は、数ある中で、酸触媒分解を起こす犠牲ポリマーと触媒量の光酸発生剤とを含有する。
構造物の作製方法もまた提供される。一つの典型的な方法は、数ある中で、組成物を表面に配置すること(ここで、前記組成物は犠牲ポリマーと光酸発生剤とを含有するものである)、前記組成物の上にマスクを配置すること(ここで、前記マスクは、前記組成物中に形成されるべきエアギャップを規定するプロファイルをコードするものである)、マスクの隙間(ギャップ)を通して該組成物をエネルギーに暴露し、次いで該組成物の一部分を除去して該組成物にエアギャップを形成すること(ここで、除去された部分はマスクの隙間に相当する)を含む。
別の組成物、方法、特徴及び利点は、以下の図面及び詳細な説明を検討することによって当業者には明らかであろうし又は明らかになるであろう。全てのこのような追加の組成物、方法、特徴及び利点が本明細書の記載に含まれ、本発明の範囲に含まれ且つ添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
本明細書に開示の多くの局面は、以下の図面を参考にしてよりよく理解できる。図面の中の要素は、必ずしも縮尺通りではなく、それよりもむしろ本明細書の開示の原理を明確に説明することが特に強調される。また、図面において、同じ参照番号は幾つかの図面を通じて対応する部分を示す。
図1A−1Hは、非光感受性犠牲材料を使用して埋設エアギャップを形成する従来の提案された方法を説明する横断面図である。 図2A−2Fは、酸触媒分解を起こすポリマーを使用して埋設エアギャップを形成する代表的な方法を説明する横断面図である。 図3A−3Fは、酸触媒分解を起こすポリマーを使用して埋設エアギャップを形成する別の代表的な方法を説明する横断面図である。 図4A−4Fは、犠牲ポリマーを分解困難にするためのネガ型安定化を受けるポリマーを使用して埋設エアキャビティを形成する別の代表的な方法を説明する横断面図である。 図2〜4の方法で使用される典型的な犠牲ポリマーの化学構造を説明する。 図2〜3の方法で使用される典型的な光酸発生剤の化学構造を説明する。 図2〜3の方法で使用される別の典型的な光酸発生剤の化学構造を説明する。 種々の開示された犠牲組成物の熱重量分析プロットである。 代表的な開示された犠牲組成物から形成されたエアギャップのリソグラフ画像の走査型電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真である。 別の犠牲組成物から形成されたエアギャップのSEM顕微鏡写真である。 別の犠牲組成物から形成されたエアギャップのSEM顕微鏡写真である。 エアチャネルを形成する代表的な方法の種々の工程中の代表的な開示された犠牲組成物の赤外線(IR)スペクトルのグラフである。 紫外線(UV)に露光された後の代表的な開示された犠牲組成物の質量分析(MS)走査を説明する。 UVに暴露されない代表的な開示された犠牲組成物のMS走査を説明する。 代表的な犠牲ポリマー及びその関連分解生成物の選択されたMS走査を説明する。 代表的な犠牲ポリマー配合物の分解から発生するその他の代表的な揮発性化合物の化学構造を表す。 代表的な犠牲ポリマーの酸触媒分解のメカニズムの化学構造を表す。 図17に示した酸触媒分解反応中に発生したアルドール縮合生成物のメカニズムの化学構造を表す。
一般的に、ポリマー、その使用方法、それにより形成された構造物、及びその分解方法が開示される。ポリマーの実施形態は、電気相互接続、マイクロエレクトロメカニカル(MEMS)、マイクロ流体デバイス、及びマイクロリアクターにエアギャップを形成するのに使用できる。また、犠牲組成物を従来使用されている温度よりも低い温度で分解する方法が開示される。
開示の犠牲組成物の実施形態としては、犠牲ポリマー及び1種又はそれ以上のポジ型又はネガ型成分が挙げられるが、これらに限定されない。ポジ型成分としては、例えば光酸発生剤を挙げることができる。
一般的に、光酸発生剤が、犠牲ポリマーをより除去し易くする(例えば、溶媒に対する安定性を小さくする)ために使用できる。例えば、犠牲組成物(例えば、犠牲ポリマー及びポジ型成分)の層の半分は熱エネルギー(例えば、高められた温度)又は光エネルギー(例えば、紫外(UV)光、近紫外光及び/又は可視光)の形のいずれかのエネルギーに暴露され、別の半分は暴露されない。その後に、層全体が溶媒又は熱に暴露され、この溶媒又は熱は前記エネルギーに暴露された層を溶解する。
理論に束縛されることを意図しないが、光エネルギーに暴露されると、ポジ型光酸発生剤は酸を生成する。次いで、塩基又は高められた温度に暴露されると、犠牲ポリマーの溶解が、光又は熱エネルギーに暴露されない犠牲組成物に比べて高められる。その結果として、例えば、マスクが、前記の暴露された犠牲ポリマーを除去することによって犠牲組成物から三次元構造物を作成するのに使用できる。
一般的に、ネガ型組成物が、犠牲ポリマーを除去することをより困難にする(例えば、標準的に犠牲ポリマーを溶解するであろう溶媒又は熱に対してより安定にする)ために使用できる。例えば、犠牲組成物(犠牲ポリマー及びネガ型光開始剤を含有する)の層の半分が光エネルギーに暴露され、他の半分は暴露されない。その後に、層全体が溶媒又は熱に暴露され、この溶媒又は熱は前記エネルギーに暴露されなかった層を溶解する。
さらに詳しくは、暴露された領域は架橋感光性ポリマーを含有し、これに対して暴露されなかった部分は非架橋感光性ポリマーを含有する。非架橋感光性ポリマーは、架橋感光性ポリマー(例えば、感光性三次元構造物)を後に残す溶媒を用いて除去することができる。
理論に束縛されることを意図しないが、光エネルギーに暴露されると、ネガ型光開始剤の数ある中の1つは、犠牲ポリマー同士の間で架橋反応を開始して架橋感光性ポリマーを形成するフリーラジカルを生成することができる。従って、例えば、マスクが、非架橋感光性ポリマーを除去することによって感光性ポリマーから感光性三次元構造物を作製するのに使用できる。
一般的に、犠牲組成物は、その後に犠牲ポリマーを熱分解することによって内部に形成されたエア領域(本明細書では、同義的に「エアギャップ」、「エアキャビティ」及び/又は「エアチャネル」ともいう)を有することができる三次元構造物を作成するための犠牲材料として、マイクロエレクトロニクス(例えば、マイクロプロセッサーチップ、通信チップ及び光電チップ)、マイクロフルイディクス、センサー、分析装置(例えば、マイクロクロマトグラフィー)などの分野で使用できるが、これらの分野に限定されない。また、犠牲ポリマーは、例えば絶縁体として使用できる。
犠牲組成物を使用して三次元構造を有するエア領域を作成する実施形態については、犠牲組成物の分解は、犠牲組成物(例えば、保護被膜層)を取り囲む1種又はそれ以上の材料に浸透するのに十分に小さい気体分子を生成するであろう。また、犠牲組成物は、周囲の材料内にエア領域を形成する間、過度の圧力増加を引き起こさないように徐々に分解することが好ましい。さらにまた、犠牲組成物は、周囲の材料の分解又は崩壊温度よりも低い分解温度を有することが望ましい。犠牲組成物はまた、保護被膜材料の被着又は硬化温度よりも高いが犠牲組成物が使用されている構造物中の諸成分の分解温度よりも低い分解温度を有することが望ましい。
犠牲ポリマーとしては、ポリノルボルネン、ポリカーボネート、それぞれの官能化化合物、ポリノルボルネンとポリノルボルネンカーボネートとのコポリマー、並びにこれらの組合せのような化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。ポリノルボルネンとしては、アルケニル置換ノルボルネン(例えば、シクロ−アクリレートノルボルネン)を挙げることができるが、これらに限定されない。ポリカーボネートとしては、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリシクロヘキサンカーボネート(PCC)、ポリシクロヘキサンプロピレンカーボネート(PCPC)、及びポリノルボルネンカーボネート(PNC)、並びにこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。開示された犠牲組成物に含有される代表的な犠牲ポリマーの化学構造を図5に示す。開示された犠牲ポリマーとして使用し得る具体的なポリカーボネートとしては、例えば、ポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,1,4,4−テトラメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−5−ノルボルネン−2−endo−3−endo−ジメタン)]、ポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,4−ジメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−5−ノルボルネン−2−endo−3−endo−ジメタン)]、ポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,1,4,4−テトラメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−p−キシレン)]、及びポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,4−ジメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−p−キシレン)]が挙げられる。一般に、開示された犠牲ポリマーの分子量は約10,000〜200,000である。
犠牲ポリマーは、犠牲組成物の約1重量%〜50重量%であることができる。特に、犠牲ポリマーは、犠牲組成物の約5重量%〜15重量%であることができる。
前記のように、犠牲組成物は、ネガ型成分及び/又はポジ型成分を含有することができる。ネガ型成分は、犠牲ポリマー中で架橋を生じる反応物質を生成する化合物含有することができる。ネガ型成分としては、感光性フリーラジカル発生剤などの化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。別のネガ型成分、例えば光酸発生剤(例えば、エポキシド官能化系中で)を使用できる。
ネガ型感光性フリーラジカル発生剤は、光に暴露されると2種又はそれ以上の化合物(その少なくとも1つはフリーラジカルである)に分解する化合物である。特に、ネガ型光開始剤としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819、Ciba Specialty Chemicals Inc.)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(Irgacure 369、Ciba)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(Irgacure 651、Ciba)、2−メチル−1[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(Irgacure 907、Ciba)、ベンゾインエチルエーテル(BEE、Aldrich)、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノ−プロピオフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノン(Irgacure 1300、Ciba)、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−エチルシクロヘキサノン(BAC−E)、及びこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。
ポジ型成分としては、光酸発生剤(1種又は複数)を挙げることができるが、これらに限定されない。さらに詳しくは、ポジ型光酸発生剤としては、求核ハロゲン化物(例えば、ジフェニルヨードニウム塩、ジフェニルフルオロニウム塩)及び錯金属ハライド陰イオン(例えば、トリフェニルスルホニウム塩)を挙げることができるが、これらに限定されない。特に、光酸発生剤は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(DPI−TPFPB)、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムテトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレート(TTBPS−TPFPB)、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート(TTBPS−HFP)、トリフェニルスルホニウムトリフレート(TPS−Tf)、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート(DTBPI−Tf)、トリアジン(TAZ−101)、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(TPS−103)、Rhodosil(商品名) Photoinitiator 2074(FABA)、トリフェニルスルホニウムビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド(TPS−N1)、ジ−(p−t−ブチル)フェニルヨードニウム、ビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド(DTBPI−N1)、トリフェニルスルホニウム、トリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド(TPS−C1)、ジ−(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド(DTBPI−C1)、及びこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。これらの化学構造を図6及び7に示す。
光酸発生剤は、犠牲組成物の約0.5重量%〜5重量%であることができる。特に、光酸発生剤は、犠牲組成物の約1重量%〜3重量%であることができる。
光酸発生剤と犠牲ポリマーで説明されなかった犠牲組成物の残りの割合(例えば、約50%〜約99%)は、溶媒、例えばメシチレン、N−メチル−2−ピロリジノン、炭酸プロピレン、アニソール、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸N−ブチル、ジグライム、3−エトキシプロピオン酸エチル、及びこれらの組合によって構成されることができるが、これらの溶媒に限定されない。
代表的な犠牲ポリマーは、図5に示す化学構造を有する。犠牲ポリマーを使用してエアギャップ構造を作成する場合には、犠牲ポリマーの分解温度を知ることが役立つ。以下の表1に、動的熱重量分析(TGA)を使用して測定される種々の実験条件下での典型的な犠牲ポリマーの半分解温度T1/2d(但し、T1/2dは50%の重量が失われる温度である)を示す。
Figure 2010106286
ここで、犠牲組成物を一般的に説明すると、犠牲組成物を使用して三次元構造物を製造する典型的な実施形態を以下に記載する。この場合、三次元構造物は分解されてエア領域(例えば、実質的に固形又は液体物質を除く気体で満たされた領域又は真空領域)を形成することができる。
一般的に、犠牲組成物の層を基材及び/又は基材上の層の上に配置して、三次元構造物を製造することができる。三次元構造物の形状をコードするマスクが、以下に記載のようにして犠牲組成物又はその部分の表面上に又はそれよりも上に配置される。犠牲組成物は、マスクを介して光及び/又は熱エネルギーに暴露され、暴露されなかった犠牲組成物(ネガ型)又は暴露された犠牲組成物(ポジ型)が除去された後に三次元構造物が形成される。
マスクは、三次元構造を規定する濃度プロファイル(density profile)をコードする。マスクを光及び/又は熱エネルギーに暴露すると、既知量のエネルギーがマスクの一部分を通り抜ける。マスクの設計は、マスクを通り抜けるエネルギーの量を調節するために使用される。特に、マスクは、マスク上の位置の関数としてマスクを通り抜けるエネルギーの量を調節するために設計することできる。従って、マスクを設計し、使用して、マスク上の位置の関数としてマスクを通り抜けるエネルギーの量を変化させることによって犠牲組成物から三次元構造物を製造することができる。マスクは、当該技術で知られている方法で形成することができる(例えば、米国特許第4,622,114号公報)。
三次元構造物(及び対応するエア領域)は、横断面、例えば非長方形横断面、非対称横断面、湾曲横断面、アーチ形横断面、テーパー横断面、楕円又はその部分に対応する横断面、放物線又はその部分に対応する横断面、双曲線又はその部分に対応する横断面、及びこれらの組合せを有することができるが、これらに限定されない。例えば、三次元構造としては、非長方形構造、非正方形構造、湾曲構造、テーパー構造、楕円又はその部分に対応する構造、放物線又はその部分に対応する構造、双曲線又はその部分に対応する構造、及びこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。また、三次元構造物は、空間的に変化した高さを有する横断面を有することができる。例示しないが、非長方形、テーパー及び非対称のエア領域は、例えばマイクロ流体デバイス、センサー及び分析装置を形成するために別のエア領域及び/又はエアチャネルと一緒に形成することができる。
内部に形成されたエア領域250を有するデバイスの典型的な実施形態を、図2Fの横断面図に示す。このデバイスは、基材210と保護被膜層240を有し得る。
その上に犠牲組成物が配置される基材210は、マイクロプロセッサーチップ、マイクロ流体デバイス、センサー、分析装置及びこれらの組合せなどのシステムに使用できるが、これらに限定されない。従って、基材210は、具体的な所定の装置又はデバイスに適した材料で作製されるものであることができる。しかし、典型的な材料としては、ガラス、ケイ素、ケイ素化合物、ゲルマニウム、ゲルマニウム化合物、ガリウム、ガリウム化合物、インジウム、インジウム化合物、又はその他の半導体材料及び/又は化合物が挙げられるが、これらに限定されない。また、基材210としては、例えば非半導体基材材料、例えば誘電体、金属(例えば、銅及びアルミニウム)、セラミックス、又はプリント配線板中に認められる有機材料を挙げることができる。
保護被膜層240は、エア領域250を形成する間に犠牲ポリマーの分解によって生成する分解ガスに透過性又は半透過性である特徴を有するモジュールポリマーであることができる。また、保護被膜層240は、作製及び使用条件下で破裂又は崩壊しないように弾性を有する。さらにまた、保護被膜層240は、犠牲組成物が分解する温度範囲で安定である。
保護被膜層240の例としては、化合物、例えばポリイミド、ポリノルボルネン、エポキシド、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレン、無機ガラス、及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。さらに詳しくは、保護被膜層240としては、化合物、例えばAmoco Ultradel(商品名)7501、Promerus Avatrel(商品名)誘電ポリマー、DuPont 2611、DuPont 2734、DuPont 2771、DuPont 2555、二酸化ケイ素、窒化ケイ素及び酸化アルミニウムが挙げられる。保護被膜層240は、例えば、回転塗布法、ドクターブレード法、スパッタリング法、積層法、スクリーン又はステンシル印刷法、化学蒸着(CVD)法、有機金属化学蒸着(MOCVD)法、プラズマ蒸着システムなどの方法を使用して基材210表面に被着させることができる。
追加の要素(component)を基材210、保護被膜層240及び/又はエア領域250の表面及び/又は内部に配置できることが認められるべきである。また、追加の要素を、本明細書に記載のようなエア領域を有する構造中に含有させることができる。追加の要素としては、電子部品(例えば、スイッチ及びセンサー)、機械部品(例えば、ギア及びモーター)、電子化学部品(例えば、可動ビーム及びミラー)、光学部品(例えば、レンズ、格子及びミラー)、光電部品、流体部品(例えば、クロマトグラフ及び冷却剤を供給できるチャネル)及びこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。
図2A〜2Fは、犠牲組成物(該犠牲組成物は犠牲ポリマーとポジ型成分とを含有する)を使用してエア領域を形成する代表的な方法200を説明する横断面図である。図2Aは、図2Bに示されるような、例えば回転塗布によってその表面に配置される犠牲材料220を有する前の、基材210を説明する。図2Cは、犠牲材料220の表面上に又はそれよりも上に配置されたマスク230を説明し、この犠牲材料220はエネルギー及び/又は放射に供される。図2CはUV線の形で加えられるエネルギーを表すが、別の形の光エネルギー又は熱エネルギーを加えることができる。
図2Dは、マスク230を通して図2CのUV線に暴露された選択された部分の犠牲組成物220の除去を説明する。マスク230は、エア領域250の断面を規定する光学濃度プロファイルをコードする。犠牲組成物220の除去される部分は、該犠牲組成物を加熱することによって除去される。犠牲組成物220の照射を受けた部分を除去するのに使用される温度は、犠牲組成物220中に前記の光酸発生剤を存在させることにより、従来の方法の温度よりも低い。図2Cに示される工程で照射を受けた犠牲ポリマー220を実質的に分解するのに必要な温度は、約50℃〜400℃である。例えば、この温度は約110℃であってもよい。
図2Eは、犠牲ポリマー220及び暴露された基材210の表面での保護被膜層240の形成を説明する。図2Fは、犠牲ポリマー220の分解によるエア領域250の形成を説明する。図2Fに示される工程で犠牲ポリマーを実質的に分解するのに必要な温度は、約100℃〜250℃である。例えば、この温度は約170℃であってもよい。
図3A〜3Fは、犠牲組成物(該犠牲組成物は犠牲ポリマーとポジ型成分とを含有する)を使用してエア領域250を形成する別の方法300を説明する横断面図である。図3Aは、例えば図3Bに示されるような、例えば回転塗布によって表面に配置される犠牲材料220を有する前の、基材210を説明する。図3Cは、犠牲材料220の表面又は上に配置されたマスク230を説明し、犠牲材料220はエネルギー及び/又は放射に供される。図3CはUV線の形で加えられるエネルギーを表すが、別の形の光エネルギー又は熱エネルギーを加えることができる。
図3Dは、マスク230を通して光エネルギーに暴露された後の架橋犠牲組成物領域225を説明する。図3Eは、犠牲ポリマー220及び架橋組成物領域225の表面での保護被膜層240の形成を説明する。図3Fは、非架橋犠牲ポリマー220の分解によるエア領域250の形成を説明する。犠牲組成物220の除去される部分は、犠牲組成物を加熱することによって除去される。図3Fの犠牲材料220の照射を受けた部分を除去するのに使用される温度は、犠牲組成物220中に前記のように光酸発生剤を存在させることにより、従来の方法の温度よりも低い。
図4A〜4Fは、図4Fに例示されるエア領域250を作製するための代表的な方法400を表す横断面図である。明確にするために、前記の作製方法の幾つかの部分は図4A〜4Fに含まれないことが認められるべきである。それ自体は、下記の作製方法は、エア領域250を作製するのに必要な工程全てを含む完全なリストであることを意図するものではない。また、プロセス工程を、図4A〜4Fに例証した順序と異なる順序で行ってもよいし又は幾つかの工程を同時に行ってもよいことから、作製方法には融通性がある。
図4Aは、基材210を説明する。図4Bは、表面に配置された犠牲組成物260(ネガ型)を有する基材210を説明する。犠牲組成物260は、基材210上に、例えば、回転塗布法、ドクターブレード法、スパッタリング法、積層法、スクリーン又はステンシル印刷法、溶融分散法、化学蒸着(CVD)法、有機金属化学蒸着(MOCVD)法及びプラズマ蒸着システムなどの方法を使用して被着させることができる。
図4Cは、犠牲組成物260の表面又は上に配置されたマスク230を説明する。マスク230は、感光性エア領域250の断面図を規定する光学濃度プロファイルをコードする。
図4Dは、選択された非架橋犠牲組成物材料270を除去した後の、マスク230を通して光エネルギーに暴露された後の架橋犠牲組成物領域270を説明する。非架橋犠牲組成物材料260は、液体、例えば溶媒中に溶解することにより及び/又は熱により、あるいは犠牲組成物材料260のポリマー成分を除去又は溶解することができる任意の別の方法により除去することができる。
図4Eは、架橋犠牲組成物領域270表面上での保護被膜層240の形成を説明する。保護被膜層240は、基材210上に、例えば回転塗布法、ドクターブレード法、スパッタリング法、積層法、スクリーン又はステンシル印刷法、溶融分散法、化学蒸着(CVD)法、有機金属化学蒸着(MOCVD)法及びプラズマ蒸着システムなどの方法を使用して被着させることができる。
図4Fは、架橋犠牲組成物領域270の分解によるエア領域250の形成を説明する。架橋犠牲組成物領域270は、架橋犠牲組成物270を、該ポリマーを分解するのに十分な温度(例えば、約250℃)まで加熱することによって分解することができる。
[代表的な犠牲組成物の薄膜の熱重量分析]
図8は、犠牲ポリマー、ポリプロピレンカーボネート(PPC)及び光酸発生剤(PAG)からなる典型的な犠牲組成物についての動的熱重量分析(TGA)の結果を説明する。この組成物は、約12重量%のPPCと、PPCの5重量%のDPI−TPFPBとからなっていた(“PPC:PAG”)。代表的な試料は、アニソールに溶解した前記ポリマーをシリコンウェーハ表面に回転塗布し、加熱板上において約110℃で10分間ソフトベークして溶媒を蒸発させ、次いで適用できる場合には1J/cmの240nmのUV線に暴露することにより調製した。次いで、試料をシリコンから取り出し、窒素雰囲気下で30℃から450℃まで1℃の速度で動的TGAにより分析した。
図8は、(a)UV線照射後のPPC、PAG、(b)UV線照射されなかったPPC、PAG、(c)PAGを存在させないPPC、及び(d)PAGを存在させないがUV線照射したPPCについてのTGA熱グラフを示す。図8(a)に示されるように、光酸により誘導された分解の開始温度は80℃であることが認められ、T1/2dは100℃であった。分解は230℃で完結し、TGA皿の残留物は3重量%未満であった。
犠牲ポリマー材料がUV照射を受けなかった場合には(図8(b))、温度がPAGの分解温度に到達した時点で熱分解により誘導されたPAG酸生成によって分解が生じた。分解は、168℃での開始から狭い温度範囲で生じた。230℃で、加熱による酸によって誘導された分解が完結し、残留物は1.5重量%未満であった。
PAGを存在させないPPCの分解挙動が図8(c)に示され、T1/2dは210℃であることが認められた。230℃で、19重量%の質量が皿に残った。分解は287℃で完結し、残留物は3重量%であった。350℃で、残留物の重量%は、上記と同じ条件下で(a)、(b)及び(c)それぞれについて1.79%、0.12%及び0.37%であった。
PAGを存在させないがUV線に暴露した犠牲ポリマー(ここではPPC)薄膜の分解挙動は(図8(c))、UV照射を受けなかった犠牲ポリマー薄膜の分解挙動と同様であることが認められた。これは、PAGを存在させないでUV照射すると犠牲ポリマーで変化が生じなかったことを示す。このように、ポリカーボネート類の光酸誘導分解は分解温度を著しく低下させる。しかし、それは熱分解誘導酸触媒分解又はポリプロピレンカーボネート単独の熱分解よりも多い残留物を残す。残留物の量は、酸触媒分解用の配合物中のPAG量の割合を下げることによって1重量%未満まで持ってゆくことができる。
[感光性犠牲組成物を使用した光パターン形成及びエアギャップの作製]
アニソールに溶解したPPC(12重量%):DPI−TPFPB(PPCの5重量%)配合物を使用して得られたポジ型パターン。前記溶液をシリコン表面に回転塗布し、加熱板上において110℃で10分間ソフトベークして1.58μmの厚みを得た。得られた薄膜に、明視野石英マスクを通して1J/cm(240nm)の線量を用いてUV照射した。薄膜を、加熱板上において110℃で3分間露光後ベークすることによって乾燥現像した。110℃で、UVはPPCの酸誘導分解を生じた。図9は、暗視野マスクを使用して生成させたリソグラフ画像の走査型電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真を示す。PPC(20重量%):DPI−TPFPB(PPCの5重量%)のアニソール溶解配合物を使用した以外は、前記の方法を前記のようにして反復して5.45μmの薄膜を得た。PPCが分解され、除去されている領域は円形及び正方形であった。
[開示方法の実施例]
犠牲ポリマー材料として感光性ポリカーボネートを使用して、図2に示した方法200使用するプロセスフローによりエアギャップを作製した。2種類の封入材料、すなわちAvatrel EPM(商品名)及びAvatrel 2000P(商品名)(Promerus, LLC.)を使用した。
最初に、感光性PPC(12重量%):DPI−TPFPB(PPCの5重量%)配合物をシリコンウェーハ表面に回転塗布し、加熱板上において100℃で10分間ソフトベークして5.45μmの厚みを得た。得られた感光性薄膜を、70μm幅のラインと35μm幅のスペースとをもつライン/スペースパターンを有する明視野マスクを使用して光パターン形成した。110℃で1〜10分間の露光後ベーキングによりUV照射領域を分解した。AVATREL EPM封入材料を回転塗布し、加熱板上において80℃で5分間ソフトベークした。非露光領域を、窒素雰囲気下にリンドベルグ(Lindberg)横型環状炉の中において150℃で4時間分解した。図10は、3.9μmのAVATREL EPM(商品名)誘電材料により封入された70μm幅の得られたエアチャネル構造の横断面SEM顕微鏡写真画像を示す。封入材料としてAVATREL 2000P(商品名)を使用して、同様の作製プロセス手順に従った。しかし、AVATREL 2000Pを回転塗布した後に、薄膜に365nmで1J/cmでUV照射し、オーブンの中において110℃で30分間露光後ベークした。ベーキングにより、AVATREL 2000P(商品名)ポリマーが架橋した。保護被膜の得られた厚みは9.3μmであった。次いで、非露光犠牲ポリマーを、窒素雰囲気下にリンドベルグ横型環状炉の中で、170℃で1時間分解した。
図11は、AVATREL 2000P(商品名)封入剤中の得られた70μm幅の埋設エアチャネルのSEM画像を示す。エアチャネルは、可視破砕片が混入しておらず、これは封入ポリマー材料又は「保護被膜」材料中への揮発物の透過性を示す。
また、犠牲組成物としてPPC、TTBPS−TPFPB配合物を使用して図3に記載の方法300を使用するプロセスフローにより、エアチャネルを作製した。PAG、すなわちTTBPS−TPFPBは、DPI−TPFPBよりも高い温度で熱分解するという理由から選択された。高い分解温度のPAGは、犠牲材料の非露光領域をそのまま残し、これに対して露光領域は選択的に分解された。TTBPS−TPFPBの分解温度は、示差操作熱量測定(DSC)から190℃であることが認められた。AVATREL EPM封入剤中の埋設エアチャネルを、図3の方法300として記載のプロセス手順を使用して作製した。PPC(20重量%)、TTBPS−TPFPB(PPCの5重量%)配合物を、シリコンウェーハの表面に回転塗布し、加熱板上において110℃でソフトベークし、5.45μmの厚みを得た。得られた感光性PPC薄膜に、100μm幅のライン及び240μm幅のスペースのライン/スペースパターンを有する明視野マスクを通して光照射した(1J/cm、240nm)。次いで、AVATREL EPM封入剤を回転塗布し、80℃で5分間ソフトベークして、封入層から溶媒を除去した。次いで、露光領域を窒素雰囲気下に環状炉の中において110℃で30分間加熱することによって選択的に分解してエアギャップを形成した。
[代表的な犠牲組成物薄膜の分解のFT−IR分析]
PPC(12重量%):DPI−TPFPB PAG(PPCの5重量%)の酸触媒分解をFT−IRで調べた。犠牲組成物を、NaCl板表面に回転塗布し、加熱板上で110℃で10分間ソフトベークした。得られた薄膜の厚みは1.45μmであると測定された。非露光薄膜のフーリエ変換赤外線(FT−IR)スペクトルが、図12(a)に示すように記録された。次いで、薄膜をUV線(1J/cm、240nm)に露光し、再度走査した(図12(b))。この薄膜を、加熱板上において110℃で2時間露光後ベークした(図12(c))。図12(a)において、2990cm-1、1470cm-1及び1250cm-1の吸収は、PPCのC−H伸縮振動、C−H変角振動及びC−C伸縮振動それぞれに帰属した。1750cm-1の強い吸収帯は、PPCのC=O伸縮振動に相当する。UV露光PPC薄膜(図12(b))を調べると、感光性酸発生剤が照射中に活性化された以外は、化学構造に特定の変換は生じていなかった。全てのピークの強度は、110℃で最終ベーク後にはほぼ0であった(図12(c))。これは、犠牲ポリマーPPCの揮発生成物への分解によるものと考えられる。
[質量分析によって監視した代表的な犠牲組成物の分解]
電子衝撃イオン化を使用した質量分析法(MS)を用いて、典型的な犠牲組成物について解重合及び揮発プロセス中に発生した化学種を検出した。3種類の代表的な試料を分析して、分解中に生成された化学種の性質を調べた。最初の場合には、PPC(12重量%):DPI−TPFPB(PPCの5重量%)配合物を、シリコンウェーハ表面に回転塗布し、加熱板上において110℃で10分間ソフトベークし、次いで240nmで1J/cmのUV照射を用いて照射を受けさせた。第二の場合には、試料を上記のようにして調製したが、UV照射を受けさせなかった。第三の場合には、光酸発生剤を存在させない犠牲ポリマー(ここではPPC)から発生される揮発物を調べるために、試料をPPCだけを含有する溶液から調製した。このPPC薄膜にはUV照射を行わなかった。前記の3種類の薄膜をシリコンウェーハから取り出し、ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)で分析して種々の条件下での揮発物の発生を調べた。試料に30℃から110℃まで5℃/分の速度で温度勾配を付け、30分間保持し、次いで300℃まで15℃/分の速度で温度勾配を付け、20分間保持した。
UV露光によるPPC:DPI−TPFPB配合物の分解についての質量スペクトルデータは、アセトン及び炭酸プロピレンそれぞれに相当する58及び102の質量対電荷比(m/z)のイオン電流を示す。UV照射を受けた感光性ポリカーボネート試料のスキャンを図13(a)、(b)及び(c)に示す。分解プロセス中の種々の時間間隔でのこれらのスキャンにより、これらの2つの突出した化学種の発生が明らかにされる。図13(a)もまた、m/z 43.1、40.1及び36.1にアセトンの分解生成物に相当する別の化学種を示す。m/z 58のピークも、CH3CH2CHOの形成に相当し得る。図13(b)は、分子量43、57及び87に相当する別の高強度の揮発物を示し、これらは炭酸プロピレンの分解生成物であり且つエチレンオキシド、プロピレンオキシド及び炭酸エチレンそれぞれに帰属する。63℃での質量スペクトルを図13(c)に示す。168m/zの高強度ピークは、PAGの分解断片に帰属させることができる。これは、光酸、即ちテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[B(C654]の陰イオンの誘導断片であるペンタフルオロベンゼン(HC65)の質量と一致する。これは、67℃で168 m/zの強い質量ピークを示した前記光酸(アニソールに溶解された)を熱分解することによって確認された。テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート陰イオンは、加熱の際に分解してペンタフルオロベンゼンとトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを生成できる。反応は、ポリカーボネート配合物の分解により発生した特別に興味のある揮発物を含む。
反応生成物と思われる生成物を図16に示す。ビフェニル誘導体(m/z 210)及びペンタフルオロベンゼン(m/z 168)は、PAGすなわちDPI−TPFPBの分解により生じた。m/z値137、116及び98をもつ別のフラグメントは、PPCの分解生成物である。さらに高い温度では、少量のさらに高い分子量のフラグメントが認められた。これらはより複雑な断片化パターンにより生じ得る。
UVに露光されないPPC配合物の質量スペクトルが図14に示され、UV照射を受けたPPC配合物と同様の断片化パターンを示す。具体的には、アセトン及び炭酸プロピレンそれぞれに相当する58及び102のm/zピークが認められた。m/z=58のピークもまた、CH3CH2CHOに相当し得る。これにより、酸触媒PPC分解がPAGの熱分解又は熱活性化について同じであることが確認される。酸無し(及びUV照射無し)のPPCの質量スペクトルを図15に示す。145℃でm/z=102の質量ピークは、炭酸プロピレン(酸触媒PPCを用いた場合のように)に帰属させることができる。87、57及び43のその他の質量ピークは、炭酸プロピレンフラグメント、すなわち炭酸エチレン、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドそれぞれに帰属させることができる。
[代表的な犠牲ポリマーの酸触媒分解のメカニズム]
ある研究において、MSデータは、典型的な犠牲ポリマー、例えばポリプロピレンカーボネートの分解が光分解又は加熱によってPAGからその場で生成される酸によって開始されることを示す。理論に束縛されることなく、PPCの分解は二つの段階、ポリマー鎖の切断反応、次いで非ジッパー反応で生じ得ると考えられる。180℃での熱分解で、ポリプロピレンカーボネートは炭酸プロピレンを生成したことが認められた。また、炭酸プロピレンはCO2及びプロピレンオキシドとして断片化された。ポリプロピレンカーボネート配合物(UV照射を受けてた配合物及び受けていない配合物)の分解による2種類の顕著な化学種、すなわちアセトン及び炭酸プロピレンの発生は、以下の2つの経路の分解メカニズムの提案をもたらす。
図17(a)は、DPI−TPFPB PAGの分解を説明する。240nmのUV線に露光すると、PAGの陽イオン部分が分解して錯陰イオンと対を形成してプロトン酸を形成するプロトンを生成する。このメカニズム図において、−RHは溶媒又はポリマーそれ自体からのプロトンの供与体である。ヨードニウム塩の分解は、UV露光によって又はヨードニウム塩の陽イオン/陰イオン対の熱分解によって達成できる。従って、ヨードニウム塩は、光酸発生剤として及び潜在的加熱酸発生剤として作用することができる。オニウム塩を光又は熱で分解すると、同一の反応生成物が得られることが報告されている。J.V. Crivello, et al., J. Polym. Sci. Part A、 Polym. Chem., vol.21, p.97, 1983.
図17(b)は、ポリプロピレンカーボネートの酸触媒分解について提案されたメカニズムを記載する。ポストベーク中に、生成した酸(H+-)由来のH+がカルボニル酸素をプロトン化し、さらに極性遷移状態を転移させ不安定な互変異性中間体、即ち[A]及び[B]をもたらす。質量スペクトルから、本発明者らはアセトン及び炭酸プロピレンそれぞれに帰属した58のm/z及び102のm/zで強い質量ピークを認めた。アセトンは、転移し、アセトン及びCO2として断片化する中間体[A](経路1)として生成し得る。炭酸プロピレンの形成は、中間体[B](経路2)の陰イオンの分子内攻撃に寄与し得、環状炭酸プロピレンの形成をもたらす。これはまた、プロピレンオキシド及びCO2と熱分解する。43のm/z及び57のm/zの質量ピークにより、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドそれぞれの形成が確認される。
この高い酸性環境における炭酸プロピレンの形成について別の経路を提案することが妥当である。H+は末端二重結合を活性化し(経路2b)、対イオンX-によるプロトンのさらなる転移及び吸引の際に炭酸プロピレンを生成し得る環状遷移状態の形成をもたらす。経路1による分解のさらなる確認は、アルドール縮合生成物の形成である。116のm/z及び98のm/zの質量ピークは、アルドール縮合によって生成された生成物によるものである(図18)。
[結論]
犠牲ポリマーと触媒量の光酸発生剤との酸触媒によるエアギャップの作製が実証された。FT−IR及び質量スペクトル研究に基づいて、ポリプロピレンカーボネート及びDPI−TPFPB系についての詳細なメカニズムが提案された。数種類の犠牲組成物の分解挙動もまたTGAを使用して研究された。低い分解温度は、PAG濃度又は犠牲ポリマー構造によって分解温度を調整するメカニズムを提供する。露光による犠牲組成物領域を選択的に分解する方法を提供することによって、これらの材料は、種々のマイクロエレクトニクス、マイクロ流体、及びMEMS製作用途の見込みのある候補である。特に、誘電体に使用される溶媒への開示犠牲ポリマーの不溶性は、組合せを特に価値あるものにする。
本明細書に開示の前記の実施形態は、実施についての単なる可能な例であり、本明細書に開示の原理の明確な理解のために記載するものであることが強調されるべきである。本明細書の開示の前記の実施形態に対して、本明細書の開示の精神及び原理から実質的に逸脱することなく多数の改変及び変更をなし得る。このような改変及び変更の全ては、本明細書の開示の範囲内に包含され且つ特許請求の範囲によって保護されることが意図される。

Claims (31)

  1. 酸触媒分解を起こす犠牲ポリマーと、触媒量の光酸発生剤とを含有する組成物。
  2. 前記組成物が約100〜120℃の温度範囲で分解するものである請求項1記載の組成物。
  3. 前記組成物が約175〜200℃の温度範囲で分解するものである請求項1記載の組成物。
  4. 前記組成物が約100〜120℃の温度範囲で分解し且つ前記ポリマー又は光酸発生剤(PAG)から固形残留物を実質的に残さないものである請求項1記載の組成物。
  5. 前記組成物が紫外(UV)線に露光後に約100〜120℃の温度範囲で分解するものである請求項1記載の組成物。
  6. 前記組成物が接着剤として作用するものである請求項1記載の組成物。
  7. 前記組成物がポジ型犠牲材料である請求項1記載の組成物。
  8. 前記ポリマーが、(1)ポリカーボネート、及び(2)ポリノルボルネンとポリノルボルネンカーボネートとのコポリマー、並びにこれらの組合せの中から選択されるものである請求項1記載の組成物。
  9. 前記ポリマーが、ポリプロピレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリシクロヘキサンカーボネート、ポリシクロヘキサンプロピレンカーボネート、ポリノルボルネンカーボネート及びこれらの組合せの中から選択されたポリカーボネートである請求項1記載の組成物。
  10. 光酸発生剤が、求核ハロゲン化物、錯金属ハロゲン化物陰イオン及びこれらの組合せの中から選択されるものである請求項1記載の組成物。
  11. 光酸発生剤がジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、ジフェニルフルオロニウム塩及びこれらの組合せの中から選択されるものである請求項1記載の組成物。
  12. 光酸発生剤が、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(DPI−TPFPB)、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(TTBPS−TPFPB)、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート(TTBPS−HFP)、トリフェニルスルホニウムトリフレート(TPS−Tf)、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート(DTBPI−Tf)、トリアジン(TAZ−101)、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(TPS−103)、Rhodosil(商品名)Photoinitiator 2074(FABA)、トリフェニルスルホニウムビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド(TPS−N1)、ジ(p−t−ブチル)フェニルヨードニウムビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド(DTBPI−N1)、トリフェニルスルホニウムトリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド(TPS−C1)、ジ(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウム、トリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド(DTBPI−C1)、及びこれらの組合せの中から選択されるものである請求項1記載の組成物。
  13. 前記犠牲ポリマーが前記組成物の約1〜50重量%であり且つ光酸発生剤が前記組成物の約0.5〜5重量%である請求項1記載の組成物。
  14. ポリマーと、触媒量のネガ型光開始剤とを含有する組成物。
  15. 前記ポリマーが、ポリカーボネート、ポリノルボルネンとポリノルボルネンカーボネートとのコポリマー、並びにこれらの組合せの中から選択されるものである請求項14記載の組成物。
  16. 前記ネガ型光開始剤が、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、ベンゾインエチルエーテル、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノ−プロピオフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノン、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−エチルシクロヘキサノン(BAC−E)、及びこれらの組合せの中から選択されるものである請求項14記載の組成物。
  17. 構造物の作製方法であって、
    組成物を表面に配置すること、ここで、前記組成物は犠牲ポリマーと光酸発生剤とを含有するものである;
    該組成物の少なくとも一部分をエネルギーに暴露すること;及び、
    該組成物の一部分を除去して該組成物に第一のエアギャップを形成すること、ここで、前記の除去された部分はエネルギーに暴露された部分に相当する
    を含む当該作製方法。
  18. さらに、前記組成物の表面又はそれよりも上にマスクを配置することを含み、前記マスクが、前記組成物中に形成されるべきエアギャップを規定するプロファイルをコードするものである請求項17記載の方法。
  19. 前記犠牲ポリマーが、ポリカーボネート、ポリノルボルネンとポリノルボルネンカーボネートとのコポリマー、並びにこれらの組合せの中から選択されるものである請求項17記載の方法。
  20. エネルギーに対する前記組成物の暴露が、光及び熱の中から選択される形態のエネルギーに前記組成物を暴露することを含むものである請求項17記載の方法。
  21. エネルギーに対する前記組成物の暴露が、紫外線照射に前記組成物を暴露することを含むものである請求項17記載の方法。
  22. 前記組成物の一部分の除去が、該組成物を加熱することにより該組成物の一部分を除去すること、該組成物の1重量%未満の量の該組成物の残留物を残すことを含むものである請求項17記載の方法。
  23. さらに、保護被膜層を前記組成物の表面及び前記第一のエアギャップ中に配置すること、及び、熱エネルギーを使用して前記組成物を除去して第二のエアギャップを形成することを含む請求項17記載の方法。
  24. 熱エネルギーが100〜120℃の温度範囲にあるものである請求項23に記載の方法。
  25. さらに、前記組成物の選択部分を光エネルギーに暴露した後と前記組成物の選択部分を除去する前に、前記組成物の表面に保護被膜を配置することを含む請求項17記載の方法。
  26. 構造物の作製方法であって、
    組成物を表面に配置すること、ここで、前記組成物は犠牲ポリマーと触媒量の光酸発生剤とを含有するものである;
    該組成物の一部分をエネルギーに暴露すること、及び
    該組成物を約100〜180℃に加熱することによって、エネルギーに暴露された該組成物の一部分を除去し、該組成物にエアギャップを形成すること
    を含む当該作製方法。
  27. さらに、前記組成物の表面又はそれよりも上にマスクを配置することを含み、前記マスクが組成物中に形成されるべきエアギャップを規定するプロファイルをコードするものである請求項26記載の方法。
  28. さらに、エネルギーに暴露されていない前記組成物の一部分を、約175〜200℃の温度まで加熱することによって除去することを含む請求項26記載の方法。
  29. 前記犠牲ポリマーが、ポリカーボネート、及びポリノルボルネンとポリノルボルネンカーボネートとのコポリマー、並びにこれらの組合せの中から選択されるものである請求項26記載の方法。
  30. エネルギーに対する前記組成物の暴露が、光酸発生剤の有機陽イオンを分解し、このようにして強ブレンステッド酸を発生させることを含むものである請求項26記載の方法。
  31. エネルギーに対する前記組成物の暴露が前記犠牲ポリマーを前記ブレンステッド酸を用いて熱分解することを含むものである請求項30記載の方法。
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