JP5648385B2 - 仮固定剤 - Google Patents

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Description

本発明は、仮固定剤、特に、基材を加工する際にこの基材を支持基材に仮固定するのに用いられる仮固定剤に関する。
半導体ウエハに研磨やエッチング等の加工を行うためには、半導体ウエハを支持するための基材上に半導体ウエハを一時的に仮固定する必要があり、そのための様々な方法が提案されている。例えば、現在では基材としてのPETフィルムに接着層を設けた固定用のフィルム上に半導体ウエハを固定する方法が多く用いられている。
この方法では、研削に用いられる一般的なバックグラインドマシンの研削精度(約1μm)と、半導体ウエハを固定するための一般的なバックグラインド(BG)テープの厚み精度(約5μm)とを合わせると、要求される厚み精度を超えてしまい、研削されたウエハの厚みにバラツキが生じると言う問題がある。
また、スルー・シリコン・ビア(Through Silicon Via)に用いる半導体ウエハを加工する場合、BGテープが付いた状態でビアホールや膜の形成を行うが、そのときの温度は低くとも150℃程度に達し、BGテープの粘着力を上げてしまう。また、膜形成のためのメッキの薬液によってBGテープの接着層が侵され、剥がれが生じたりする。
また、化合物半導体に代表される脆弱な半導体ウエハは、機械的研削によってダメージを受ける場合があるので、エッチングによって薄化を行う。このエッチングにおいては、ストレス除去を目的とする程度のエッチング量であれば特に問題はないが、数μmエッチングする場合には、エッチングの薬液によってBGテープが変質してしまうことがある。
一方で、表面が平滑な支持基材に固定材料を介して半導体ウエハを固定する方法が採用されるようになっている。
例えば、ストレス除去の目的でエッチングを行うには、高い温度まで加熱する必要があるが、PETフィルムではこのような高温に耐えることができないため、このような場合には支持基材を用いた方法が好ましく適用される。
支持基材への固定材料には、高温で軟化して半導体ウエハの脱離が容易になるような固定材料や、特定の薬液によって溶解するような固定材料が提案されている。
しかし、このような材料はハンドリングが悪く、脱離後に、半導体ウエハや装置の内部に残留した固定材料を薬液等で洗浄する必要がある。
また、支持基材から半導体ウエハを脱離させる際に、薄化した半導体ウエハが耐えられなくなり破損するおそれがあるが、半導体ウエハの薄型化が進むにつれてこの可能性が高まることが予想される。
本発明とは利用目的が異なるが、例えば、特許文献1および特許文献2には半導体装置の製造に係るポリマーが開示されている。
このようなポリマーを固定材料として用いた場合、高温に加熱することによりポリマーが分解し、その結果、薄化した半導体ウエハを支持基材から容易に脱離させることができる。
ここで、固定材料は、これを加熱することにより分解する分解温度が、半導体ウエハの研磨工程や半導体ウエハへのビアホールの形成工程における温度より高く設定されている必要があるため、半導体ウエハに施す各加工(工程)の種類に応じて、分解温度の異なるものが用意されていることが望まれる。
なお、このような問題は、半導体ウエハに限らず、固定部材を介して支持基材に固定した状態で加工を施す各種基材についても同様に生じている。
特表2006−504853号公報 特表2006−503335号公報
本発明の目的は、基材へのダメージを低減させつつ、精度の高い加工が可能であり、加工後の支持基材からの基材の脱離を適切な加熱温度で行い得る仮固定剤を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜()に記載の本発明により達成される。
(1) 基材を加工するために該基材を支持基材に仮固定し、前記基材の加工後に加熱することで前記基材を前記支持基材から脱離させるために用いられる仮固定剤であって、
下記式(2)で表わされるものをカーボネート構成単位として含んでなるポリカーボネートを樹脂成分として含有することを特徴とする仮固定剤。
Figure 0005648385
(2) 前記仮固定剤の前記加熱により、前記樹脂成分が分解することで、前記支持基材から前記基材が脱離される上記()に記載の仮固定剤。
) 分解が開始し終了するまでの前記加熱温度の幅は、230〜450℃である上記(1)または(2)に記載の仮固定剤。
) 50%重量減少温度が320〜400℃である上記(1)ないし()のいずれかに記載の仮固定剤。
) 180℃における溶融粘度が1〜300Pa・sである上記(1)ないし()のいずれかに記載の仮固定剤。
) 前記樹脂成分への活性エネルギー線の照射により、前記溶融粘度が低下する上記()に記載の仮固定剤。
本発明の仮固定剤は、基材へのダメージを低減させつつ、精度の高い加工が可能であり、加工後の基材の支持基材からの脱離を適切な加熱温度で行い得るという効果を奏する。
本発明の仮固定剤を用いて、半導体ウエハを加工する加工工程を説明するための縦断面図である。
以下、本発明の仮固定剤について詳細に説明する。
<仮固定剤>
本発明の仮固定剤は、基材を加工するためにこの基材を支持基材に仮固定し、基材の加工後に加熱することで基材を支持基材から脱離させるために用いられるものであり、少なくとも2つの環状体をカーボネート構成単位に含んでなるポリカーボネートを樹脂成分として含有することを特徴とする。これにより、仮固定剤(樹脂成分)の分解が開始し終了するまでの加熱温度の幅を、230〜450℃程度に設定することが可能となる。
したがって、基材を支持基材に仮固定した状態で基材に施す加工が分解開始温度未満の温度履歴で行われる際に、本発明の仮固定剤を選択することで、精度の高い加工が可能である。さらに、仮固定剤の加熱により、仮固定剤(樹脂成分)を分解させることで、支持基材から基材を脱離させるとき、この加熱温度を230〜450℃の幅で設定することが可能となるため、前記加工の際の温度履歴と比較的近い加熱温度とすることができ、基材へのダメージを確実に低減させることができる。
(樹脂成分)
樹脂成分は、少なくとも2つの環状体をカーボネート構成単位に含んでなるポリカーボネートである。
この環状体の数および種類を適宜選択することにより、樹脂成分(ポリカーボネート)の分解温度を上述したような幅で容易に調整することが可能となる。
環状体の数は、2つ以上であればよいが、2〜5であるのが好ましく、2または3であるのがより好ましく、2であるのがさらに好ましい。カーボネート構成単位としてこのような数の環状体が含まれることにより、仮固定剤は、優れた密着性で基材と支持基材とを接合し得るものとなる。
また、複数の環状体は、それぞれの頂点同士が互いに連結している連結多環系構造をなしていてもよいが、それぞれが有する一辺同士が互いに連結している縮合多環系構造をなしているのが好ましい。これにより、樹脂成分すなわち仮固定剤の分解が開始し終了するまでの加熱温度の幅を、より確実に230〜450℃の範囲内に設定することができる。
さらに、複数の環状体は、それぞれ、5員環または6員環であるあるのが好ましい。これにより、カーボネート構成単位の平面性が保たれることから、後述する溶媒に対する溶解性をより安定させることができる。
このような複数の環状体は、脂環式化合物であるのが好ましい。各環状体が脂環式化合物である場合に、前述したような効果がより顕著に発揮されることになる。
これらのことを考慮すると、ポリカーボネート(樹脂成分)において、カーボネート構成単位としては、例えば、下記化学式(1)で表わされるものが特に好ましい構造である。
Figure 0005648385
なお、上記化学式(1)で表わされるカーボネート構成単位を有するポリカーボネートは、デカリンジオールと、炭酸ジフェニルのような炭酸ジエステルとの重縮合反応により得ることができる。
また、上記化学式(1)で表わされるカーボネート構成単位において、デカリンジオールが有する水酸基に連結する炭素原子に由来するものは、それぞれ、デカリン(すなわち、縮合多環系構造を形成する2つの環状体)を構成する炭素原子に結合し、かつ、これら水酸基に連結する炭素原子の間に3つ以上の原子が介在しているのが好ましい。これにより、ポリカーボネートの分解性を制御でき、その結果、ポリカーボネート(仮固定剤)の分解が開始し終了するまでの加熱温度の幅を、より確実に230〜450℃の範囲内に設定されることになる。さらに、後述する溶媒に対する溶解性をより安定させることができる。
このようなカーボネート構成単位としては、例えば、下記化学式(1A)、(1B)で表わされるものが挙げられる。
Figure 0005648385
さらに、複数の環状体は、脂環式化合物である他、複素脂環式化合物であってもよい。各環状体が複素脂環式化合物である場合であっても、前述したような効果がより顕著に発揮されることになる。
この場合、ポリカーボネート(樹脂成分)において、カーボネート構成単位としては、例えば、下記化学式(2)で表わされるものが特に好ましい構造である。
Figure 0005648385
なお、上記化学式(2)で表わされるカーボネート構成単位を有するポリカーボネートは、下記化学式(2a)で表わされるエーテルジオールと、炭酸ジフェニルのような炭酸ジエステルとの重縮合反応により得ることができる。
Figure 0005648385
また、上記化学式(2)で表わされるカーボネート構成単位において、上記化学式(2a)で表わされる環状エーテルジオールが有する水酸基由来の炭素原子は、それぞれ、上記環状エーテル(すなわち、縮合多環系構造を形成する2つの環状体)を構成する炭素原子に結合し、かつ、これら炭素原子の間に3つ以上の原子が介在しているのが好ましい。これにより、ポリカーボネートの分解性を制御でき、その結果、ポリカーボネート(仮固定剤)の分解が開始し終了するまでの加熱温度の幅を、より確実に230〜450℃の範囲内に設定されることになる。さらに、後述する溶媒に対する溶解性をより安定させることができる。
このようなカーボネート構成単位としては、例えば、下記化学式(2A)で表わされる1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール(イソソルビド)型のものや、下記化学式(2B)で表わされる1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール(イソマンニド)型ものが挙げられる。
Figure 0005648385
なお、樹脂成分(仮固定剤)の分解が開始し終了するまでの加熱温度の幅が230〜450℃であること、換言すれば、樹脂成分の分解が開始する開始温度が230℃以上であり、かつ樹脂成分の分解が終了(完結)する終了温度が450℃以下であることは、熱重量分析(TGA)で得られる分析結果を用いて求めることができる。
すなわち、まず、γ−ブチロラクトン(GBL)に溶解した樹脂成分をシリコン基板上にスピンコート法を用いて塗布した後、加熱板上において約120℃で5分間ソフトベークすることで溶媒を蒸発させる。次に、シリコン基板上に形成された樹脂成分で構成される薄膜(試料)を、窒素雰囲気下で30℃から500℃まで10℃/分の速度で上昇させるTGAにより分析することができる。そして、5%重量減少温度(Td5)を開始温度、95%重量減少温度(Td95)を終了温度としてそれぞれ求めることが可能である。
また、TGAにより分析される50%重量減少温度(Td50)は、320〜400℃程度であるのが好ましく、330〜380℃程度であるのがより好ましい。これにより、基材へのダメージをより確実に低減させることができる。
なお、5%重量減少温度、50%重量減少温度および95%重量減少温度とは、それぞれ、加熱により、5%、50%および95%の樹脂成分の重量が失われる温度を意味する。
樹脂成分(ポリカーボネート)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、5,000〜800,000であることがより好ましい。重量平均分子量を上記下限以上とすることにより、後述する仮固定剤層形成工程において、仮固定剤の支持基材に対する濡れ性が向上する効果、さらに、成膜性を向上するという効果を得ることができる。
また、樹脂成分は、仮固定剤の全量の10〜100重量%程度の割合で配合されているのが好ましく、30〜100重量%の割合で配合されているのがより好ましい。樹脂成分の含有量を上記下限値以上とすることで、後述する脱離工程後に、仮固定剤が基材または支持基材に残留してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
(活性剤)
また、仮固定剤は、活性エネルギー線の照射によってエネルギーを加えることにより活性種を発生する活性剤を含み、この活性種の存在下で上述した樹脂成分の50%重量減少温度が低下することが好ましい。これにより、基材へのダメージをより確実に低減させることができる。
活性剤としては、特に限定されないが、例えば、光酸発生剤、光塩基発生剤等が挙げられる。
光酸発生剤としては、特に限定されないが、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(DPI−TPFPB)、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムテトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレート(TTBPS−TPFPB)、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート(TTBPS−HFP)、トリフェニルスルホニウムトリフレート(TPS−Tf)、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート(DTBPI−Tf)、トリアジン(TAZ−101)、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(TPS−103)、トリフェニルスルホニウムビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド(TPS−N1)、ジ−(p−t−ブチル)フェニルヨードニウム、ビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド(DTBPI−N1)、トリフェニルスルホニウム、トリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド(TPS−C1)、ジ−(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド(DTBPI−C1)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でも、特に、樹脂成分の熱分解温度を効率的に下げることができるという観点から、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(DPI−TPFPB)が好ましい。
また、光塩基発生剤としては、特に限定されないが、例えば、5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナン、1−(2−ニトロベンゾイルカルバモイル)イミダゾール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でも、特に、樹脂成分の熱分解温度を効率的に下げることができるという観点から、5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナンおよびこの誘導体が好ましい。
前記活性剤は、仮固定剤の全量の0.01〜50重量%程度であるのが好ましく、0.1〜30重量%程度であるのがより好ましい。上記下限値以上とすることで、前記樹脂成分の熱分解温度を安定的に下げることが可能となり、上記上限値以下とすることで仮固定剤が基材または支持基材に残渣として残留することを効果的に防止することが可能となる。
このような活性剤の添加により、後述する加熱工程に先立って、活性エネルギー線照射工程を施す構成とすることで、樹脂成分(ポリカーボネート)の主鎖の熱切断が容易となる構造を形成するため、または、樹脂成分自身が容易に熱分解する熱閉環構造を形成する(熱閉環反応)。
(溶媒)
また、仮固定剤は、溶媒を含有していても良い。
溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、メシチレン、デカリン、ミネラルスピリット類等の炭化水素類、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジグライム等のアルコール/エーテル類、炭酸エチレン、酢酸エチル、酢酸N−ブチル、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等のエステル/ラクトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド/ラクタム類が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。仮固定剤が溶媒を含有することにより、仮固定剤の粘度を調整することが容易となり、支持基材に仮固定剤で構成される仮固定剤層(薄膜)の形成が容易となる。
前記溶媒の含有量は、特に限定されるものではないが、仮固定剤の全量の5〜98重量%であることが好ましく、10〜95重量%であることがより好ましい。
(酸化防止剤)
また、仮固定剤は、酸化防止剤を含んでいてもよい。
この酸化防止剤は、仮固定剤中における酸の発生や、樹脂組成物の自然酸化を防止する機能を有している。
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、Ciba Fine Chemicals社製、「Ciba IRGANOX(登録商標) 1076」および「Ciba IRGAFOS(登録商標) 168」が好適に用いられる。
また、他の酸化防止剤としては、例えば、「Ciba Irganox 129」、「Ciba Irganox 1330」、「Ciba Irganox 1010」、「Ciba Cyanox(登録商標) 1790」、「Ciba Irganox 3114、Ciba Irganox 3125」等を用いることもできる。
酸化防止剤の含有量は、上述した樹脂成分100重量部に対して、0.1〜10重量部であるのが好ましく、0.5〜5重量部であるのがより好ましい。
(添加剤)
また、仮固定剤は、必要により酸捕捉剤、アクリル系、シリコーン系、フッ素系、ビニル系等のレベリング剤、シランカップリング剤、希釈剤等の添加剤等を含んでも良い。
シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
仮固定剤がシランカップリング剤を含むことにより、基材と支持基材との密着性の向上を図ることができる。
また、希釈剤としては、特に限定されないが、例えば、シクロヘキセンオキサイドやα−ピネンオキサイド等のシクロエーテル化合物、[メチレンビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビスオキシランなどの芳香族シクロエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどのシクロアリファティックビニルエーテル化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
仮固定剤が希釈剤を含むことにより、仮固定剤の流動性を向上させることができ、後述する仮固定剤層形成工程において、仮固定剤の支持基材に対する濡れ性を向上させることが可能となる。
<半導体装置の製造方法>
次に、本発明の仮固定剤を、半導体装置の製造に適用した場合を一例に説明する。
すなわち、半導体装置の製造方法における、半導体ウエハの加工に適用した実施形態を一例に説明する。
この半導体ウエハ(基材)の加工には、支持基材上に、本発明の仮固定剤を用いて仮固定剤層を形成する工程と、仮固定剤層を介して支持基材上に半導体ウエハを貼り合わせる工程と、半導体ウエハの支持基材と反対側の面を加工する工程と、仮固定剤層を加熱することで支持基材から半導体ウエハを脱離させる工程とが含まれる。
図1は、本発明の仮固定剤を用いて、半導体ウエハを加工する加工工程を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、図1中、上側を「上」、下側を「下」とする。
以下、これら工程について順次説明する。
(仮固定剤層形成工程)
まず、支持基材1を用意し、この支持基材(基材)1上に、本発明の仮固定剤を用いて、仮固定剤層2を形成する(図1(a)参照)。
この仮固定剤層2は、本発明の仮固定剤を支持基材1上に供給した後、乾燥させることで容易に形成することができる。
また、本発明の仮固定剤を支持基材1上に供給する方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、スプレー法、印刷法、フィルム転写法、スリットコート法、スキャン塗布法等の各種塗布法を用いることができる。これらの中でも、特に、スピンコート法が好ましく用いられる。スピンコート法によれば、より均一で平坦な仮固定剤層2を容易に形成することができる。
(貼り合わせ工程)
次に、支持基材1上の仮固定剤層2が設けられた面上に、半導体ウエハ(基材)3をその機能面31が仮固定剤層2側になるように載置し、これにより、支持基材1に仮固定剤層2を介して半導体ウエハ3を貼り合わせる(図1(b)参照)。
この貼り合わせは、例えば、真空プレス機、ウエハボンダー等の装置を用いて容易に行うことができる。
(加工工程)
次に、仮固定剤層2を介して支持基材1上に固定された半導体ウエハ3の機能面31と反対側の面(裏面)を加工する。
この半導体ウエハ3の加工は、特に限定されず、例えば、図1(c)に示すような半導体ウエハ3の裏面の研磨の他、半導体ウエハ3へのビアホールの形成、ストレスリリースのための半導体ウエハ3の裏面のエッチング、リソグラフィー、さらには半導体ウエハ3の裏面への薄膜のコート、蒸着等が挙げられる。
なお、本実施形態における半導体ウエハの加工では、仮固定剤層形成工程において、本発明の仮固定剤を用いて、その膜厚が均一で、かつ表面が平滑な優れた精度を有する仮固定剤層2が形成されているため、優れた精度をもって半導体ウエハ3の加工を行え得るという効果を奏する。
また、このような加工工程において、上記のような加工の種類に応じて、仮固定剤層2は加熱され、温度履歴を経ることとなるが、この温度履歴が上述した仮固定剤の分解開始温度未満である場合に、本発明の仮固定剤が選択される。かかる場合に、本発明の仮固定剤を選択することで、この仮固定剤に含まれる樹脂成分の分解が開始する開始温度以上であるため、本工程における加熱(温度履歴)により、樹脂成分が分解してしまうのを確実に防止することができる。その結果、半導体ウエハ3と支持基材1との間で剥離が生じることなく前記裏面を加工することが可能であるため、前記加工を優れた寸法精度で行うことができる。
(加熱工程)
次に、図1(d)に示すように、仮固定剤層2を加熱することで、仮固定剤層2を構成する仮固定剤(前記樹脂成分)を分解させることにより、仮固定剤層2を気化および/または粘度を低下させる。
本工程における加熱温度は、前記加工工程による温度履歴よりも高い温度に設定され、かつ、仮固定剤層2を構成する仮固定剤(樹脂成分)を分解させ得る範囲で可能な限り低く設定される。
すなわち、本発明では、仮固定剤(樹脂成分)の分解が開始し終了するまでの前記加熱温度の幅が230〜450℃であるため、本工程における加熱温度もかかる範囲内の温度に設定する。これにより、仮固定剤(樹脂成分)分を確実に分解させることができ、形成される分解物が気化したり、分解物の形成により仮固定剤の溶融粘度が低下することになるため、後述する脱離工程において、半導体ウエハ3を支持基材1から確実に脱離させることが可能となる。
なお、仮固定剤の溶融粘度(180℃)は、上述した樹脂成分を含有する構成とすることで、好ましくは1〜300Pa・s程度、より好ましくは2〜200Pa・s程度に設定することが可能となる。前記溶融粘度をかかる範囲内に設定することで、後述する脱離工程において、半導体ウエハ3を支持基材1からより確実に脱離させることが可能となる。
(脱離工程)
次に、半導体ウエハ3を支持基材1から脱離させる。
ここで、本明細書中において、脱離とは、半導体ウエハ3を支持基材1から剥離する操作を意味し、例えば、この操作は、支持基材1の表面に対して垂直方向に半導体ウエハ3を脱離させる方法や、支持基材1の表面に対して水平方向にスライドさせて半導体ウエハ3を脱離させる方法や、図1(e)に示すように、半導体ウエハ3の一端側から半導体ウエハ3を支持基材1から浮かせることで脱離させる方法等が挙げられる。
この際、前記加熱工程を経ることで、半導体ウエハ3と支持基材1との間に位置する仮固定剤層2が分解物の気化により除去されていたり、その溶融粘度が低下していたりするため、支持基材1からの半導体ウエハ3の脱離を容易に行うことができる。
なお、脱離工程後、仮固定剤層2の溶融粘度が低下して、半導体ウエハ3または支持基材1に仮固定剤層2が残留している場合には、この残留物を除去するようにする。
残留物の除去方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、プラズマ処理、薬液浸漬処理、研磨処理、加熱処理等が挙げられる。
(活性エネルギー線照射工程)
なお、仮固定剤中に活性剤が含まれる場合、前記加熱工程に先立って、活性剤にエネルギーを付与することを目的に、仮固定剤層2に活性エネルギー線を照射する活性エネルギー線照射工程を経るようにしてもよい。
この照射工程では、仮固定剤層(仮固定剤)2に活性エネルギー線を照射することにより、仮固定剤中の活性剤より活性種が発生する。そして、該活性種によって樹脂成分の熱分解温度が低下する。そのため、上述した加熱工程での加熱温度をより低い温度に設定するのが可能となることから、半導体ウエハ3へのダメージを低減させ得るとともに、熱分解に要する時間の短縮が可能となる。
また、活性エネルギー線としては、特に限定されず、例えば、紫外線、可視光、赤外線のような光、X線、電子線のような粒子線等が挙げられる。
なお、この活性エネルギー線照射工程は、前記加工工程に先立って行ってもよい。
また、本実施形態では、仮固定剤層形成工程において、仮固定剤層2を支持基材1に形成する構成としたが、かかる場合に限定されず、支持基材1および半導体ウエハ3の双方に仮固定剤層2を形成する構成としてもよいし、支持基材1への仮固定剤層2の形成を省略して半導体ウエハ3に選択的に仮固定剤層2を形成する構成としてもよい。
以上、本発明の仮固定剤を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
たとえば、仮固定剤に含まれる各構成材料は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.仮固定剤の調製
まず、以下に示すような実施例1〜2および比較例の仮固定剤を調製した。
[実施例1]
<ポリカーボネートの合成>
イソソルビド102.01g(0.698モル)、炭酸ジフェニル149.53g(0.698モル)、炭酸セシウム0.0023g(6.98×10−6モル)をそれぞれ秤量し、その後、これらを反応容器に入れた。
反応の第1工程として、窒素雰囲気下で、120℃に加熱した加熱槽に反応容器を浸し、攪拌し、原料を溶解させ、2時間攪拌を続けた。
次に、反応の第2工程として、反応容器内を10kPaに減圧し、120℃で1時間攪拌を続けた。
次に、反応の第3工程として、反応容器内を0.5kPa以下に減圧し、120℃で1.5時間攪拌を続けた。
次に、反応の第4工程として、反応容器内を0.5kPa以下に減圧したまま、約30分かけて加熱槽の温度を180℃に昇温した後、180℃で1.5時間攪拌を続けた。
なお、前記反応の第2〜4工程で生じたフェノールは反応容器外へ留去した。
そして、反応容器内の圧力を常圧に戻した後、γ−ブチロラクトン1200mLを加え、生成物を溶解させた。
次に、イソプロパノール/水=9/1(v/v)の混合溶液12.0Lを攪拌させた状態で、生成物を溶解した溶液を滴下した。
次に、析出した沈殿を吸引濾過で回収し、回収した沈殿をイソプロパノール/水=9/1(v/v)の混合溶液4.0Lで洗浄した後、吸引濾過で回収した。
回収した沈殿を真空乾燥機で80℃/18時間乾燥することにより、上記化学式(2A)で表わされるイソソルビド型ポリカーボネートの粉末123.15gを得た。
<仮固定剤の調製>
得られたイソソルビド型ポリカーボネート100.0gをγ−ブチロラクトン200.0gに溶解し、樹脂成分濃度33重量%の仮固定剤を調製した。
[実施例2]
<仮固定剤の調製>
実施例1で得られたイソソルビドポリカーボネート100.0g、活性剤(光酸発生剤)としてGSID26−1(チバジャパン社製)2.0gをγ−ブチロラクトン198.0gに溶解し、樹脂成分濃度33重量%の仮固定剤を調製した。
[比較例]
<仮固定剤の調製>
ポリプロピレンカーボネート(EMPOWER MATERIALS社製、「型番:QPAC40」)100gをγ−ブチロラクトン(溶剤)310gに溶解した。このポリプロピレンカーボネート溶液に、活性剤(光酸発生剤)のRhodosilPhotoinitiator2074(ローディアジャパン(株)社製Rhodorsil Phoinitiator2074)5g、増感剤の1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン(英Lambson社製SPEEDCURE CPTX(商品名))1.5gをγ−ブチロラクトン(溶剤)30gに溶解させた溶液を加えて、攪拌し、樹脂濃度24重量%の仮固定剤を作製した。
2.評価
<重量減少温度>
上記で調製した実施例1〜2および比較例の仮固定剤について、ぞれぞれ、TG/DTA装置(セイコーインスツルメンツ社製、「型番:6200型」)により、仮固定剤の5%重量減少温度、50%重量減少温度および95%重量減少温度を測定した(雰囲気:窒素、昇温速度:10℃/分)。
ここで、8インチ透明ガラス上に、各実施例および各比較例で調製した仮固定剤を、スピンコータを用いて塗布(回転数:1,200rpm、時間:30秒)し、次いで、120℃、5分の条件でベークを行い乾燥させることにより、仮固定剤層を形成し、これら仮固定剤層について、5%重量減少温度、50%重量減少温度および95%重量減少温度を測定した。また、実施例2の仮固定剤層については2000mj/cm(i線換算)、比較例の仮固定剤層については500mj/cm(i線換算)となるようにi線を照射した後に、TG/DTA装置により、仮固定剤の重量減少温度を測定した。
<溶融粘度>
上記で調製した実施例1〜2および比較例の仮固定剤について厚さ50μmのフィルムになる条件でシリコンウエハ上に塗布し、大気中で120℃で5分間ソフトベークした。
次に、そのシリコンウエハ上に仮固定剤を再度同じ条件で塗布し、大気中で120℃で5分間ソフトベークした後、さらに、大気中で160℃で10分間のハードベークを行った。
そして、仮固定剤のフィルムにカッターにて30×30mmの切り込みを入れ、2%フッ酸溶液に浸漬することにより、シリコンウエハから仮固定剤を引き剥がし、厚さ100μmの測定サンプル(仮固定剤層)を作製した。作製した測定サンプルは、純水にて洗浄し、60℃/10hrの条件で乾燥させた。
得られた測定サンプルを用い、粘弾性測定装置(HAAKE社製、Rheo stress RS150)を用いて、周波数を1Hz、25℃から10℃/分で昇温し、一定せん断速度にて溶融粘度を測定し、180℃雰囲気における溶融粘度を測定値とした。
ここで、実施例2の仮固定剤層については2000mj/cm(i線換算)、比較例の仮固定剤層については500mj/cm(i線換算)となるようにi線を照射した後に、粘弾性測定装置により、仮固定剤の溶融粘度を測定した。
以上のようにして得られた実施例1、2および比較例の仮固定剤について測定された重量減少温度および溶融粘度を、それぞれ、表1および表2に示す。
Figure 0005648385
Figure 0005648385
表1に示すように、実施例1、2の仮固定剤では、その分解が開始し終了するまでの加熱温度の幅を230〜450℃の範囲内に設定することが可能であった。これに対して、比較例の仮固定剤では、かかる温度範囲を逸脱する結果となった。
さらに、実施例1、2の仮固定剤では、これらで構成された仮固定剤層の溶融粘度を、それぞれ、1〜300(Pa・s)の範囲内に設定することが可能であった。
<半導体装置の製造>
さらに、上記実施例1、2および比較例で調製した仮固定剤を使用して、それぞれ、上述した半導体装置の製造方法と同様の方法で、半導体装置の製造を行った。
すなわち、上記実施例1、2および比較例で調製した仮固定剤をスピンコート法でそれぞれガラス上に塗布し、大気中で120℃×5分間の条件でソフトベークした。次に、そのガラス上に実施例1、2および比較例で調製したの仮固定剤を再度同じ条件で塗布し、大気中で120℃×5分間の条件でソフトベークした後、さらに、大気中で180℃×10分間の条件でハードベークを行い、厚み50μmの仮固定剤層を得た。その後、仮固定剤層上に半導体ウエハを設置し、仮固定剤を介して半導体ウエハとガラスとを固定した。
次に、半導体ウエハの研磨を行い、その後、半導体ウエハとガラスの積層体を大気中で230℃×10分の条件で加熱した。
この際、比較例の仮固定剤を使用した半導体ウエハとガラスの積層体では、仮固定剤がこの時点で揮発し、半導体ウエハとガラスが分離してしまった。
その後、実施例1の仮固定剤を使用した半導体ウエハとガラスの積層体は、上下180℃の熱板ではさみ、真空吸着させた後、半導体ウエハを2.0mm/秒の速度でスライドさせ、ガラスから脱離することができた。また、半導体ウエハおよびガラス上の残渣は、γ−ブチロラクトンに揺動させながら、5分間浸漬することにより除去することができた。
また、実施例2の仮固定剤を使用した半導体ウエハとガラスの積層体を、ガラス側から2000mj/cm(i線換算)の条件でi線を照射し、さらに、上下180℃の熱板ではさみ、真空吸着させた後、半導体ウエハを2.0mm/秒の速度でスライドさせることにより、ガラスから脱離することができた。また、半導体ウエハおよびガラス上の残渣は、γ−ブチロラクトンに揺動させながら、5分間浸漬することにより除去することができた。
1 支持基材
2 仮固定剤層
3 半導体ウエハ
31 機能面

Claims (6)

  1. 基材を加工するために該基材を支持基材に仮固定し、前記基材の加工後に加熱することで前記基材を前記支持基材から脱離させるために用いられる仮固定剤であって、
    下記式(2)で表わされるものをカーボネート構成単位として含んでなるポリカーボネートを樹脂成分として含有することを特徴とする仮固定剤。
    Figure 0005648385
  2. 前記仮固定剤の前記加熱により、前記樹脂成分が分解することで、前記支持基材から前記基材が脱離される請求項に記載の仮固定剤。
  3. 分解が開始し終了するまでの前記加熱温度の幅は、230〜450℃である請求項1または2に記載の仮固定剤。
  4. 50%重量減少温度が320〜400℃である請求項1ないしのいずれかに記載の仮固定剤。
  5. 180℃における溶融粘度が1〜300Pa・sである請求項1ないしのいずれかに記載の仮固定剤。
  6. 前記樹脂成分への活性エネルギー線の照射により、前記溶融粘度が低下する請求項に記載の仮固定剤。
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