JP2004186263A - 補強された半導体ウエハ及びicチップの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】取扱い性が良好で、厚さ50μm程度にまで研磨しても破損等することなく支持板を剥離することができる補強された半導体ウエハ、及び、厚さ50μm程度にまで研磨された半導体ウエハをダイシングして、小片化されたICチップを、割れ、カケ等を発生させることなく、支持板から剥離することができるICチップの製造方法を提供する。
【解決手段】半導体ウエハと、前記半導体ウエハの片面に加熱消滅性樹脂からなる接着剤又は加熱消滅性樹脂を含有する接着剤を介して接着された支持板とからなる補強された半導体ウエハ。
【選択図】 なし
【解決手段】半導体ウエハと、前記半導体ウエハの片面に加熱消滅性樹脂からなる接着剤又は加熱消滅性樹脂を含有する接着剤を介して接着された支持板とからなる補強された半導体ウエハ。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、取扱い性が良好で、厚さ50μm程度にまで研磨しても破損等することなく支持板を剥離することができる補強された半導体ウエハに関する。
また、厚さ50μm程度にまで研磨された半導体ウエハをダイシングして、小片化されたICチップを、割れ、カケ等を発生させることなく、支持板から剥離することができるICチップの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路(ICチップ)は、通常棒状の純度の高い半導体単結晶をスライスして半導体ウエハとした後、フォトレジストを利用して半導体ウエハ表面に所定の回路パターンを形成して、次いで半導体ウエハ裏面を研磨機により研磨して、半導体ウエハの厚さを100〜600μm程度まで薄くし、最後にダイシングしてチップ化することにより製造されている。
【0003】
近年、ICチップの用途が広がるにつれて、ICカード類に用いたり、積層して使用したりすることができる厚さ50μm程度の極めて薄い半導体ウエハも要求されるようになってきた。しかしながら、厚さが50μm程度の半導体ウエハは、従来の厚さが100〜600μm程度の半導体ウエハに比べて反りが大きく衝撃により割れやすくなるので取扱性に劣り、従来の半導体ウエハと同様に加工しようとすると、破損する場合がある。とりわけ、衝撃を受けやすい研磨工程又はダイシング工程で破損する危険性が高く、また、ICチップの電極上にバンプを作製する際にも破損しやすいため歩留まりが悪い。このため、厚さ50μm程度の薄い半導体ウエハからICチップを製造する過程におけるウエハの取扱い性の向上が重要な課題となっていた。
【0004】
そこで半導体ウエハを接着剤により支持板に固定した補強された半導体ウエハが提案されている。半導体ウエハを支持板で補強することにより、薄い半導体ウエハであっても研磨工程で破損することがなく、取扱い性を格段に向上させることができる。しかし、このように補強された半導体ウエハから支持板を剥離する際に半導体ウエハを破損してしまうことがあるという問題点があった。従って、半導体ウエハと支持板とを接着する接着剤には、研磨等の加工を行う際には充分な接着力を有しており、加工後には糊残りすることなく容易に剥がせることが求められていた。
【0005】
また、半導体ウエハをダイシング工程で小片化したICチップを、リードフレーム上にダイボンディングする工程においても、ICチップをダイシングテープとよばれる支持テープから剥離させる際に、ニードルピン等でICチップを支持テープ側より押し上げる必要があり、ICチップが破損しやすく歩留まりが悪かった。このため、極めて薄いICチップのダイボンディング工程におけるピックアップ性の向上についても重要な課題となっていた。これに対して、ニードルピンに代えて、偏心ローラを用いたニードルレスピックアップ方式(例えば、NECマシナリー社製のニードルレスピックアップユニット等)が提案されている。しかしながら、それでも既存のダイシングテープからICチップを剥離させた場合には、ICチップが破損したり、ICチップにカケ等が生じてしまうことがあった。
そこで、ダイシングテープにも、ダイシング工程では充分な接着力を有しており、ダイシング後にはニードルピンを用いることなく、糊残りすることなく容易に剥がせることが求められていた。
【0006】
これに対して、例えば、特許文献1には、ポリマーの側鎖又は主鎖に放射線重合性官能基を有する多官能性モノマー又はオリゴマーが結合された粘着剤が開示されている。放射線重合性官能基を有することにより紫外線照射によりポリマーが硬化することを利用して、剥離時に紫外線を照射することにより糊残りなく剥離することができるというものである。一方、特許文献2には、熱膨張性微小球を含有する粘着剤層を有する粘着シートが開示されている。これは、剥離時に加熱すると熱膨張性微小球が膨張して接着力を低下させることから、容易に剥離することができるというものである。
しかしながらこれらの接着剤を用いても、厚さ50μm程度の極めて薄い半導体ウエハの場合には、やはり剥離の際に破損してしまったり、粘着力がわずかに残るため、ニードルピン等を用いずにダイシングテープからICチップを容易にピックアップすることはできなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−32946号公報
【特許文献2】
特開平11−166164号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、取扱い性が良好で、半導体ウエハを厚さ50μm程度にまで研磨しても破損等することなく支持板を剥離することができる補強された半導体ウエハ、及び、厚さ50μm程度にまで研磨され、小片化されたICチップを割れ、カケ等を発生させることなく、支持板から剥離することができるICチップの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、半導体ウエハと、前記半導体ウエハの片面に加熱消滅性樹脂からなる接着剤又は加熱消滅性樹脂を含有する接着剤を介して接着された支持板とからなる補強された半導体ウエハである。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明の補強された半導体ウエハは、半導体ウエハと支持板とからなる。
上記半導体ウエハとしては特に限定されず、例えば、シリコン、ガリウム砒素等の半導体からなるものが挙げられる。
上記半導体ウエハの厚さとしては特に限定されないが、半導体ウエハが薄いほど本発明による破損防止の効果が発揮されやすく、研磨後の厚さが50μm程度、例えば、20〜80μmの厚さの半導体ウエハである場合に特に優れた破損防止の効果が得られる。
【0011】
上記支持板としては特に限定されないが、例えば、ガラス板;アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の樹脂からなる板状体等が挙げられる。なお、上記支持板は、後述するように、半導体ウエハと支持板とを接着する接着剤が刺激により架橋する架橋性樹脂を含有するものであって、架橋させる刺激が光である場合には透明であることが好ましい。
上記支持板の厚さの好ましい下限は500μm、好ましい上限は3mmであり、より好ましい下限は1mm、より好ましい上限は2mmである。また、上記支持板の厚さのばらつきは、1%以下であることが好ましい。
【0012】
上記半導体ウエハと支持板とは加熱消滅性樹脂からなる接着剤又は加熱消滅性樹脂を含有する接着剤を介して接着される。本明細書において加熱消滅性樹脂とは、加熱することにより気体に分解するか、又は、分解して気化し、固体形状を失う樹脂を意味する。
上記加熱消滅性樹脂としては、例えば、ポリメチレンマロン酸ジエステル、ポリブチレン、ニトロセルロース、α−メチルスチレンポリマー、プロピレンカーボネートポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボン酸ジヒドラジドとジイソシアネートを重合させた共重合体、これらのポリマーの過酸化物等、及び、これらのポリマーに必要に応じてジブチルフタレートやジオクチルフタレートなどの可塑剤や、キシレンオイル、テルペンオイル、パラフィンワックスなどの軟化剤を加えて粘着性を付与したもの等が知られている。また、ポリブテンやポリメタクリル酸ラウリルも加熱消滅性樹脂として用いることができる。
【0013】
これらの加熱消滅性樹脂を速やかに消滅させるためには、通常250〜400℃に加熱する必要があるが、半導体ウエハを長時間高温にさらすと半導体ウエハの性能に悪影響を与えることがあり、また、装置も大がかりなものが必要となる。
また、後述するように加熱消滅性樹脂組成物の消滅により発生する気体の圧力により剥離を行う場合には、できる限り低温で速やかに消滅する加熱消滅性樹脂を用いることが好ましい。
従来、比較的低温で速やかに消滅し得る加熱消滅性樹脂はなかったが、本発明者らは、鋭意検討の結果、架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂を架橋させた樹脂が、150〜170℃に加熱することで速やかに消滅することに加え、リードフレームを構成する金属や樹脂等の幅広い材料に対して優れた接着性を有し、しかも、シート状に成形したときに適度なシート強度を有することを見出した。
【0014】
上記ポリオキシアルキレン樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリオキシプロピレン樹脂、ポリオキシエチレン樹脂、ポリオキシテトラメチレン樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリオキシプロピレン樹脂を50重量%以上とし、ポリオキシエチレン樹脂又はポリオキシテトラメチレン樹脂を含む混合樹脂とすれば、樹脂の混合割合を調整することにより、消滅する温度と消滅するまでの時間とを調整できることから好ましい。
【0015】
上記架橋性シリル基としては、例えば、オキシムシリル基、アルケニルオキシシリル基、アセトキシシリル基、ハロゲノシリル基、ビニルシリル基、シラノール基等が挙げられる。なかでも、末端にアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂は、弾性にすぐれたゴム状の架橋樹脂となることから好適である。
上記アルコキシシリル基としては、例えば、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロピルオキシシリル基、イソプロピルオキシシリル基、ブトキシシリル基、tert−ブトキシシリル基、フェノキシシリル基、ベンジルオキシシリル基等が挙げられる。なお、ジアルコキシシリル基又はトリアルコキシシリル基の場合、同じアルコキシ基であってもよく、異なるアルコキシ基を組み合わせたものであってもよい。これらの架橋性シリル基は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、ポリオキシアルキレン樹脂の種類や架橋性シリル基が異なる複数種類のポリオキシアルキレン樹脂を併用してもよい。
【0016】
上記架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂を架橋させるには、下記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒を用いることが好ましい。これにより、可視光線、紫外線や電子線等の光を照射(以下、光照射ともいう)することでポリオキシアルキレン樹脂組成物を架橋、硬化させることができる。なかでも、光反応性が高く架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂に対する溶解性にも優れていることから、カルボン酸無水物、カルボン酸イミド及びジアシルホスフィンオキサイドが好適である。このような光反応触媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
【化1】
【0018】
式(1)中、mは2〜5の整数を表し、Y(m)は周期表のIVB族、VB族又はVIB族の原子を表し、Zは水素基、炭化水素基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン基、アルコキシル基、アルキルチオ基、カルボニルオキシ基又はオキソ基を表す。
【0019】
上記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒は、上記式(1)で表される官能基のうち、異なるものを複数種有していてもよい。
【0020】
上記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒としては、例えば、酸素、硫黄、窒素、リン及び炭素からなる群より選択されるY(m)で示される原子に対し、カルボニル基が2個結合した化合物であって、Y(m)で示される原子の価数に応じて適宜、Zで示される炭化水素基又はオキシド基を有するもの等が挙げられる。
【0021】
上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族系炭化水素基、不飽和脂肪族系炭化水素基、芳香族系炭化水素基等が挙げられる。これらの炭化水素基は、本発明の目的を阻害しない範囲でアミノ基、水酸基、エーテル基、エポキシ基、重合性不飽和基、ウレタン基、ウレア基、イミド基、エステル基等の置換基を有していても良い。また、異なる炭化水素基を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
上記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒は、環状化合物であってもよい。このような環状化合物としては、例えば、環状鎖の中に1個又は2個以上の同種又は異種の上記一般式(1)で表される官能基を有する化合物等が挙げられる。更に、複数個の同種又は異種の上記環状化合物を適当な有機基で結合した化合物や、複数個の同種又は異種の上記環状化合物をユニットとして少なくとも1個以上含む双環化合物等も用いることができる。
【0023】
上記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒としては、Y(m)で表される原子が酸素原子の場合には、例えば、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、ブチル酸無水物、イソブチル酸無水物、バレリック酸無水物、2−メチルブチル酸無水物、トリメチル酢酸無水物、ヘキサン酸無水物、ヘプタン酸無水物、デカン酸無水物、ラウリル酸無水物、ミリスチリル酸無水物、パルミチン酸無水物、ステアリル酸無水物、ドコサン酸無水物、クロトン酸無水物、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、オレイン酸無水物、リノレイン酸無水物、クロロ酢酸無水物、ヨード酢酸無水物、ジクロロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、クロロジフルオロ酢酸無水物、トリクロロ酢酸無水物、ペンタフルオロプロピオン酸無水物、ヘプタフルオロブチル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、2,2−ジメチルコハク酸無水物、イソブチルコハク酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、ヘキサヒドロ−4−メチルフタル酸無水物、イタコン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、2−メチルマレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、グルタル酸無水物、1−ナフチル酢酸無水物、安息香酸無水物、フェニルコハク酸無水物、フェニルマレイン酸無水物、2,3−ジフェニルマレイン酸無水物、フタル酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物、4,4’−(ヘキサフルオロプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸無水物等;マレイン酸無水物とラジカル重合性二重結合を持つ化合物の共重合体として、例えば、マレイン酸無水物と(メタ)アクリレートの共重合体、マレイン酸無水物とスチレンの共重合体、マレイン酸無水物とビニルエーテルの共重合体等が挙げられる。これらのうち市販品としては、例えば、旭電化社製のアデカハードナーEH−700、アデカハードナーEH−703、アデカハードナーEH−705A;新日本理化社製のリカシッドTH、リカシッドHT−1、リカシッドHH、リカシッドMH−700、リカシッドMH−700H、リカシッドMH、リカシッドSH、リカレジンTMEG;日立化成社製のHN−5000、HN−2000;油化シェルエポキシ社製のエピキュア134A、エピキュアYH306、エピキュアYH307、エピキュアYH308H;住友化学社製のスミキュアーMS等が挙げられる。
【0024】
上記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒としては、Y(m)で表される原子が窒素原子の場合には、例えば、コハク酸イミド、N−メチルコハク酸イミド、α,α−ジメチル−β−メチルコハク酸イミド、α−メチル−α−プロピルコハク酸イミド、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(1−ピレニル)マレイミド、3−メチル−N−フェニルマレイミド、N,N’−1,2−フェニレンジマレイミド、N,N’−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−(4−メチル−1,3−フェニレン)ビスマレイミド、1,1’−(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスマレイミド、フタルイミド、N−メチルフタルイミド、N−エチルフタルイミド、N−プロピルフタルイミド、N−フェニルフタルイミド、N−ベンジルフタルイミド、ピロメリット酸ジイミド等が挙げられる。
【0025】
上記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒としては、Y(m)で表される原子がリン原子の場合には、例えば、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド等が挙げられる。
【0026】
上記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒としては、Y(m)で表される原子が炭素原子の場合には、例えば、2,4−ペンタンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、3−クロロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1−ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン等のジケトン類;ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルメチルマロネート、テトラエチル1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸等のポリカルボン酸エステル類;メチルアセチルアセトナート、エチルアセチルアセトナート、メチルプロピオニルアセテート等のα−カルボニル−酢酸エステル類等が挙げられる。なかでも、消滅後の残さが極めて少ないことから、ジアシルフォスフィンオキシド及びその誘導体が好適である。
【0027】
上記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒の配合量の好ましい使用量としては、架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂100重量部に対して0.01重量部、好ましい上限は30重量部である。0.01重量部未満であると、光反応性を示さなくなることがあり、30重量部を超えると、ポリオキシアルキレン樹脂組成物の光透過性が低下して、光を照射しても表面のみが架橋、硬化し、深部は架橋、硬化しないことがある。より好ましい下限は0.1重量部、より好ましい下限は20重量部である。
【0028】
上記架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂を架橋する際には、増感剤を併用してもよい。増感剤を併用することにより、光反応性が向上し、光の照射時間を短くしたり、光の照射エネルギーを低くしたり、表面から深部まで均一に架橋、硬化させたりすることができる。
上記増感剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール誘導体化合物;ハロゲン化ケトン;アシルフォスフィンオキシド;アシルフォスフォナート;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシドビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド;ビス(η5−シクロペンタジエニル)−ビス(ペンタフルオロフェニル)−チタニウム、ビス(η5−シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピリ−1−イル)フェニル]−チタニウム;アントラセン、ペリレン、コロネン、テトラセン、ベンズアントラセン、フェノチアジン、フラビン、アクリジン、ケトクマリン、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン、アセトフェノン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
上記架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂は、必要に応じてアルキルシラン化合物又はアルコキシシラン化合物と併用してもよい。上記アルキルシラン化合物又はアルコキシシラン化合物としては、例えば、ジメトキシジメチルシラン、シクロヘキシルジメトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシメチルオクチルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、クロロメチル(ジイソプロポキシ)メチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリメトキシプロピルシラン、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、(3−クロロプロピル)トリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、トリス(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3−グリシドキシプロピル)メチルシラン、クロロトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、クロロトリス(1,3−ジメチルブトキシ)−シラン、ジクロロジエトキシシラン、3−(トリエトキシシリル)−プロピオニトリル、4−(トリエトキシシリル)−ブチロニトリル、3−(トリエトキシシリル)−プロピルイソシアネート、3−(トリエトキシシリル)−プロピルチオイソシアネート、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、1,3,5,7−テトラエトキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラプロキシシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロポキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラブトキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタエトキシ−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルシクロテトラシラザン、1,7−ジアセトキシオクタメチルテトラシロキサン、1,7−ジクロロオクタメチルテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジクロロトリシロキサン、1,3−ジクロロテトライソプロピルジシロキサン、1,3−ジエトキシテトラメチルジシロキサン、1,3−ジメトキシテトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジクロロジシロキサン、1,2−ビス(メチルジクロロシリル)エタン、ジアセトキシジフェニルシラン、メチルトリス(エチルメチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(N,N−ジエチルアミノキシ)シラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)メチルイソプロポキシシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)エトキシメチルシラン、トリス(1−メチルビニロキシ)ビニルシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、トリアセトキシビニルシラン、テトラアセトキシシラン、ジアセトキシメチルフェニルシラン、ジメトキシエチルメチルケトオキシムメチルシラン等が挙げられる。
【0030】
上記接着剤中に占める加熱消滅性樹脂の割合は特に限定されない。加熱消滅性樹脂が主成分となって上記接着剤の大部分を占める場合には、加熱することにより上記接着剤を消滅させることができ、極めて容易に支持板を剥離することができる。一方、接着剤全体が消滅しない程度の含有量である場合であっても、加熱消滅性樹脂の分解により発生した気体が、半導体ウエハから接着剤の接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させることから、容易に支持板を剥離することができる。
【0031】
加熱消滅性樹脂の分解により発生した気体が、半導体ウエハから接着剤の接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させるようにするためには、上記接着剤は、更に、刺激により架橋する架橋性樹脂成分を含有することが好ましい。加熱消滅性樹脂を分解して気体を発生させる前に刺激を与えて架橋性樹脂成分を架橋させれば、接着剤全体が硬化して、加熱消滅性樹脂の分解により発生した気体がより効率よく接着剤から気体を放出させることができ、より容易に支持板を剥離することができる。
また、上記接着剤中に占める刺激により架橋する架橋性樹脂成分の割合は特に限定されないが、上記刺激により架橋する架橋性樹脂成分の割合が30重量%以上であることが好ましい。上記刺激により架橋する架橋性樹脂成分の割合が30重量%未満の場合、接着剤全体が充分に硬化しないことがある。
【0032】
上記刺激により架橋する架橋性樹脂成分としては特に限定されず、例えば、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとを主成分とし、必要に応じて光重合開始剤を含んでなる光硬化型粘着剤や、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとを主成分とし、熱重合開始剤を含んでなる熱硬化型粘着剤等が挙げられる。
【0033】
このような光硬化型粘着剤又は熱硬化型粘着剤等の後硬化型粘着剤は、光の照射又は加熱により粘着剤の全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、重合硬化による弾性率の上昇が著しくなり、粘着力が大きく低下する。また、硬い硬化物中で加熱消滅性樹脂を分解させて気体を発生させると、発生した気体の大半は外部に放出され、放出された気体は、被着体から接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。
【0034】
上記重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーという)をあらかじめ合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という)と反応させることにより得ることができる。
【0035】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、常温で粘着性を有するポリマーとして、一般の(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様に、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとし、これと官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られるものである。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万〜200万程度である。
【0036】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー;アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0037】
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0038】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合はエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がヒドロキシル基の場合はイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がエポキシ基の場合はカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられ、同官能基がアミノ基の場合はエポキシ基含有モノマーが用いられる。
【0039】
上記多官能オリゴマー又はモノマーとしては、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱又は光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2〜20個のものである。このようなより好ましい多官能オリゴマー又はモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。その他、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
上記光重合開始剤としては、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられ、このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
上記熱重合開始剤としては、熱により分解し、重合硬化を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられ、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエール、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、熱分解温度が高いことから、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が好適である。これらの熱重合開始剤のうち市販されているものとしては特に限定されないが、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーメンタH(以上いずれも日本油脂製)等が好適である。これら熱重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
上記接着剤は、有機過酸化物を含有してもよい。有機過酸化物を含有することにより上記加熱消滅性樹脂からなる接着剤又は加熱消滅性樹脂を含有する接着剤を消滅させる時間を短縮させることができる。
上記有機過酸化物としては、例えば、p−メンタンハイドロキシパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロキシパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロキシパーオキサイド、クメンハイドロキシパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロキシパーオキサイド、t−ブチルハイドロキシパーオキサイド等のハイドロキシパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピルベンゼン)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド;1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール;t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ ラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート等のパーオキシエステル等が挙げられる。
【0043】
上記接着剤は、更に、必要に応じて、架橋促進剤、増粘剤、チキソトロープ剤、物性調整剤、増量剤、補強剤、可塑剤、着色剤、難燃剤等の各種添加剤を加えても良い。
【0044】
上記架橋促進剤としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド等の錫化合物、テトラ−n−ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のアルキルオキシチタネート等が挙げられる。ただし、これらの架橋促進剤は、必ず残さとなることから、接着剤の消失を行う場合には必要最小限の添加に止めるべきである。
【0045】
上記増粘剤は、上記接着剤の粘性特性を調整するために添加するものである。上記増粘剤としては、上記ポリオキシアルキレン樹脂との相溶性の高い高分子化合物から適宜選択され、例えば、アクリル系高分子、メタクリル系高分子、ポリビニルアルコール誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン誘導体、ポリエステル類、ポリエーテル類、ポリイソブテン、ポリオレフィン類、ポリアルキレンオキシド類、ポリウレタン類、ポリアミド類、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、NBR、SBS、SIS、SEBS、水添NBR、水添SBS、水添SIS、水添SEBS等やこれら共重合体の官能基変成体が挙げられる。これらの増粘剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
上記チキソトロープ剤は、上記接着剤の粘性特性を調整するために添加するものである。上記チキソトロープ剤としては、例えば、コロイダルシリカ、ポリビニルピロリドン、疎水化炭酸カルシウム、ガラスバルーン、ガラスビーズ等が挙げられる。また、上記チキソトロープ剤は、上記ポリオキシアルキレン樹脂と親和性の高い表面を有するものが好ましい。
【0047】
上記物性調整剤は、上記接着剤を用いてなるシートの引張り特性等を改善するために添加するものである。上記物性調整剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサエチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサエチレンジアミン等の各種シランカップリング剤等が挙げられる。これらの物性調整剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
上記増量剤としては特に限定されないが、上記ポリオキシアルキレン樹脂組成物のチキソトロープ性等への影響の少ないものが好適であり、例えば、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水珪素、含水珪素、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。これらの増量剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
上記可塑剤としては、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル類、グリセリンモノオレイル酸エステル等の脂肪酸−塩基酸エステル類、アジピン酸ジオクチル等の脂肪酸二塩基酸エステル類、ポリプロピレングリコール類等が挙げられる。これらの可塑剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
上記接着剤は、更に、必要に応じてタレ防止剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、溶剤、香料、顔料、染料等が添加されてもよい。
【0051】
上記加熱消滅性樹脂として上記架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂を架橋させたものを含有する接着剤は、他の接着剤成分と架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂、上記光反応触媒、必要に応じて上記増感剤との混合物を流延して光照射を行うことにより形成することができる。
光照射に利用できる光源としては、上記ポリオキシアルキレン樹脂組成物が感光し硬化が開始する波長を含む光源であれば特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマーレーザー、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。これらの光源は単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
なお、上記加熱消滅性樹脂として上記架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂を架橋させたものを含有する接着剤は、窒素雰囲気中では少なくとも200℃以上に加熱しなければ消滅しないが、酸素雰囲気中では150℃程度の温度で消滅させることができる。従って、加熱時の雰囲気ガスに含まれる酸素濃度を調整することによっても上記加熱消滅性樹脂を含有する接着剤を消滅させる時間を調整することができる。
【0053】
上記加熱消滅性樹脂を含有する接着剤は、架橋や硬化の程度を調整することによりシート状に加工して用いてもよいし、ペースト状で用いてもよい。
また、シート状に加工する場合には、基材のないノンサポートタイプであってもよいし、離型処理された又はされていない基材の片面に上記接着剤からなる接着層が形成されたサポートタイプであってもよい。
【0054】
本発明の補強された半導体ウエハは、半導体ウエハが支持板により補強されているので、取扱い性に極めて優れ、半導体ウエハを50μm程度にまで研磨しても破損することがない。更に、半導体ウエハと支持板とが上記加熱消滅性樹脂を含有する接着剤により接着されていることから、加熱することにより、接着剤が消滅するか、または加熱消滅性接着剤の分解により発生した気体により接着力が低下することから、半導体ウエハを破損することなく極めて容易に半導体ウエハと支持板とを剥離することができる。とりわけ、上記加熱消滅性樹脂として上記架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂を架橋させた樹脂を用いる場合には、150〜180℃の加熱で剥離させることができる。
【0055】
本発明の補強された半導体ウエハを用いれば、容易にICチップを製造することができる。
本発明の補強された半導体ウエハを用いてICチップを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、本発明の補強された半導体ウエハを研磨した後、研磨した半導体ウエハにダイシングテープを貼り付けてから加熱して加熱消滅性樹脂を分解させることにより半導体ウエハをダンシングテープに転写し、ダイシングして得られたICチップをピックアップする方法(第1の態様);本発明の補強された半導体ウエハを研磨し、研磨面からダイシングしてICチップを作製した後、加熱して加熱消滅性樹脂を分解させ、ICチップを吸引装置によりピックアップする方法(第2の態様);既に研磨されている補強された半導体ウエハをダイシングしてICチップを作製した後、加熱して加熱消滅性樹脂を分解させ、ICチップを吸引装置によりピックアップする方法(第3の態様)等が挙げられる。
これらの、本発明の補強された半導体ウエハを用いたICチップの製造方法もまた、本発明の1つである。
【0056】
第1の態様の本発明のICチップの製造方法では、まず、半導体ウエハを研磨する。半導体ウエハは支持板に固定されていることから、研磨中に破損することがない。上記研磨の方法としては特に限定されず、通常のICチップの製造方法において用いられる方法を用いることができ、例えば、支持板を固定し、高速回転する研磨用砥石を用いて切削水をかけながら完成時のチップの厚さにまでウエハを研磨する方法等が挙げられる。
【0057】
次いで、研磨した半導体ウエハにダイシングテープを貼り付けてから加熱して加熱消滅性樹脂を分解させることにより半導体ウエハをダンシングテープに転写する。加熱により、接着剤の主成分が上記加熱消滅性樹脂である場合には、粘着剤が実質上消滅する。一方、接着剤が消滅しない場合であっても、上記加熱消滅性樹脂を分解により発生した気体により接着剤の接着力を低下させるので、半導体ウエハと支持板とを容易に剥離することができる。
なお、上記接着剤が上記刺激により架橋する架橋性樹脂成分を含有する場合には、加熱して上記加熱消滅性樹脂を分解させるのに先立って、刺激を与えて架橋性樹脂成分を架橋させることが好ましい。これにより、より容易に半導体ウエハと支持板とを剥離することができる。
最後に通常の方法によりダイシングを行い、得られたICチップをピックアップする。
【0058】
第2の態様の本発明のICチップの製造方法では、まず、半導体ウエハを研磨する。研磨の方法としては、第1の態様の本発明のICチップの製造方法の場合と同様である。次いで、支持板に固定した状態で、研磨面からダイシングしてICチップを作製した後、加熱して加熱消滅性樹脂を分解させ、得られたICチップをピックアップする。この方法では、加熱により接着剤からICチップを押し上げる強いガス圧力が加わり場合によっては上記接着剤が実質的に消滅することによりICチップは、支持板上に浮いたような状態にあることから、ニードルを用いることなく吸引装置によりピックアップすることができるので、ピックアップ時の衝撃によりICチップが破損したり、カケが生じたりするのを抑制することができる。
【0059】
また、研磨済みの半導体ウエハが得られる場合には、第3の態様の本発明のICチップの製造方法を用いることができる。即ち、研磨済みの半導体ウエハに上記接着剤を介して支持板に接着した補強された半導体ウエハをダイシングしてICチップを作製した後、加熱して加熱消滅性樹脂を分解させ、得られたICチップをピックアップする。この方法では、加熱により接着剤からICチップを押し上げる強いガス圧力が加わり、場合によっては上記接着剤が実質的に消滅することによりICチップは支持板上に浮いたような状態にあることから、ニードルを用いることなく吸引装置によりピックアップすることができるので、ピックアップ時の衝撃によりICチップが破損したり、カケが生じたりするのを抑制することができる。
【0060】
本発明の補強された半導体ウエハの厚さに合わせて収納容器内面にカセットが形成されている半導体ウエハ収納容器もまた、本発明の1つである。
【0061】
また、得られたICチップについても50μm程度の極めて薄いものは運搬中に破損することがある。そこで上記加熱消滅性樹脂からなる接着剤又は加熱消滅性樹脂を含有する接着剤を用いてICチップトレイに接着すれば、取扱い性が向上する。このような、ICチップが加熱消滅性樹脂からなる接着剤又は加熱消滅性樹脂を含有する接着剤を介して接着されているICチップトレイもまた、本発明の1つである。
本発明のICチップトレイの形状としては特に限定されないが、例えば、シート状であって、表面にICチップを固定するためのくぼみを有するもの等が挙げられる。
【0062】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
架橋性シリル基を有するポリオキシプロピレン樹脂(商品名「MSポリマーS303」、鐘淵化学工業社製)100重量部にジアシルフォスフィンオキシド化合物(商品名「イルガキュア819」、チバスペシャルティーケミカル社製)3重量部を加えた液状樹脂組成物を厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム表面に乾燥後の厚みが10μmとなるように塗工し、紫外線を照射して硬化させ樹脂シートを得た。得られた樹脂シートはゲル状でゴム弾性があり粘着性を示す樹脂テープであった。
得られた樹脂テープを介して、厚み100μmの表面に回路が形成されたシリコンウエハと厚さ1mmのガラス板とを接着して補強されたシリコンウエハを作製した。
【0064】
得られた補強された半導体ウエハを研磨装置に取り付け、シリコンウエハの厚さが約50μmになるまで研磨した。
次いで、180℃のオーブンに入れて加熱したところ、樹脂シートが分解し、シリコンウエハを容易にガラス板から剥離することができた。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、取扱い性が良好で、厚さ50μm程度にまで研磨しても破損等することなく支持板を剥離することができる補強された半導体ウエハ、及び、厚さ50μm程度にまで研磨された半導体ウエハをダイシングして、小片化されたICチップを、割れ、カケ等を発生させることなく、支持板から剥離することができるICチップの製造方法を提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、取扱い性が良好で、厚さ50μm程度にまで研磨しても破損等することなく支持板を剥離することができる補強された半導体ウエハに関する。
また、厚さ50μm程度にまで研磨された半導体ウエハをダイシングして、小片化されたICチップを、割れ、カケ等を発生させることなく、支持板から剥離することができるICチップの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路(ICチップ)は、通常棒状の純度の高い半導体単結晶をスライスして半導体ウエハとした後、フォトレジストを利用して半導体ウエハ表面に所定の回路パターンを形成して、次いで半導体ウエハ裏面を研磨機により研磨して、半導体ウエハの厚さを100〜600μm程度まで薄くし、最後にダイシングしてチップ化することにより製造されている。
【0003】
近年、ICチップの用途が広がるにつれて、ICカード類に用いたり、積層して使用したりすることができる厚さ50μm程度の極めて薄い半導体ウエハも要求されるようになってきた。しかしながら、厚さが50μm程度の半導体ウエハは、従来の厚さが100〜600μm程度の半導体ウエハに比べて反りが大きく衝撃により割れやすくなるので取扱性に劣り、従来の半導体ウエハと同様に加工しようとすると、破損する場合がある。とりわけ、衝撃を受けやすい研磨工程又はダイシング工程で破損する危険性が高く、また、ICチップの電極上にバンプを作製する際にも破損しやすいため歩留まりが悪い。このため、厚さ50μm程度の薄い半導体ウエハからICチップを製造する過程におけるウエハの取扱い性の向上が重要な課題となっていた。
【0004】
そこで半導体ウエハを接着剤により支持板に固定した補強された半導体ウエハが提案されている。半導体ウエハを支持板で補強することにより、薄い半導体ウエハであっても研磨工程で破損することがなく、取扱い性を格段に向上させることができる。しかし、このように補強された半導体ウエハから支持板を剥離する際に半導体ウエハを破損してしまうことがあるという問題点があった。従って、半導体ウエハと支持板とを接着する接着剤には、研磨等の加工を行う際には充分な接着力を有しており、加工後には糊残りすることなく容易に剥がせることが求められていた。
【0005】
また、半導体ウエハをダイシング工程で小片化したICチップを、リードフレーム上にダイボンディングする工程においても、ICチップをダイシングテープとよばれる支持テープから剥離させる際に、ニードルピン等でICチップを支持テープ側より押し上げる必要があり、ICチップが破損しやすく歩留まりが悪かった。このため、極めて薄いICチップのダイボンディング工程におけるピックアップ性の向上についても重要な課題となっていた。これに対して、ニードルピンに代えて、偏心ローラを用いたニードルレスピックアップ方式(例えば、NECマシナリー社製のニードルレスピックアップユニット等)が提案されている。しかしながら、それでも既存のダイシングテープからICチップを剥離させた場合には、ICチップが破損したり、ICチップにカケ等が生じてしまうことがあった。
そこで、ダイシングテープにも、ダイシング工程では充分な接着力を有しており、ダイシング後にはニードルピンを用いることなく、糊残りすることなく容易に剥がせることが求められていた。
【0006】
これに対して、例えば、特許文献1には、ポリマーの側鎖又は主鎖に放射線重合性官能基を有する多官能性モノマー又はオリゴマーが結合された粘着剤が開示されている。放射線重合性官能基を有することにより紫外線照射によりポリマーが硬化することを利用して、剥離時に紫外線を照射することにより糊残りなく剥離することができるというものである。一方、特許文献2には、熱膨張性微小球を含有する粘着剤層を有する粘着シートが開示されている。これは、剥離時に加熱すると熱膨張性微小球が膨張して接着力を低下させることから、容易に剥離することができるというものである。
しかしながらこれらの接着剤を用いても、厚さ50μm程度の極めて薄い半導体ウエハの場合には、やはり剥離の際に破損してしまったり、粘着力がわずかに残るため、ニードルピン等を用いずにダイシングテープからICチップを容易にピックアップすることはできなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−32946号公報
【特許文献2】
特開平11−166164号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、取扱い性が良好で、半導体ウエハを厚さ50μm程度にまで研磨しても破損等することなく支持板を剥離することができる補強された半導体ウエハ、及び、厚さ50μm程度にまで研磨され、小片化されたICチップを割れ、カケ等を発生させることなく、支持板から剥離することができるICチップの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、半導体ウエハと、前記半導体ウエハの片面に加熱消滅性樹脂からなる接着剤又は加熱消滅性樹脂を含有する接着剤を介して接着された支持板とからなる補強された半導体ウエハである。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明の補強された半導体ウエハは、半導体ウエハと支持板とからなる。
上記半導体ウエハとしては特に限定されず、例えば、シリコン、ガリウム砒素等の半導体からなるものが挙げられる。
上記半導体ウエハの厚さとしては特に限定されないが、半導体ウエハが薄いほど本発明による破損防止の効果が発揮されやすく、研磨後の厚さが50μm程度、例えば、20〜80μmの厚さの半導体ウエハである場合に特に優れた破損防止の効果が得られる。
【0011】
上記支持板としては特に限定されないが、例えば、ガラス板;アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の樹脂からなる板状体等が挙げられる。なお、上記支持板は、後述するように、半導体ウエハと支持板とを接着する接着剤が刺激により架橋する架橋性樹脂を含有するものであって、架橋させる刺激が光である場合には透明であることが好ましい。
上記支持板の厚さの好ましい下限は500μm、好ましい上限は3mmであり、より好ましい下限は1mm、より好ましい上限は2mmである。また、上記支持板の厚さのばらつきは、1%以下であることが好ましい。
【0012】
上記半導体ウエハと支持板とは加熱消滅性樹脂からなる接着剤又は加熱消滅性樹脂を含有する接着剤を介して接着される。本明細書において加熱消滅性樹脂とは、加熱することにより気体に分解するか、又は、分解して気化し、固体形状を失う樹脂を意味する。
上記加熱消滅性樹脂としては、例えば、ポリメチレンマロン酸ジエステル、ポリブチレン、ニトロセルロース、α−メチルスチレンポリマー、プロピレンカーボネートポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボン酸ジヒドラジドとジイソシアネートを重合させた共重合体、これらのポリマーの過酸化物等、及び、これらのポリマーに必要に応じてジブチルフタレートやジオクチルフタレートなどの可塑剤や、キシレンオイル、テルペンオイル、パラフィンワックスなどの軟化剤を加えて粘着性を付与したもの等が知られている。また、ポリブテンやポリメタクリル酸ラウリルも加熱消滅性樹脂として用いることができる。
【0013】
これらの加熱消滅性樹脂を速やかに消滅させるためには、通常250〜400℃に加熱する必要があるが、半導体ウエハを長時間高温にさらすと半導体ウエハの性能に悪影響を与えることがあり、また、装置も大がかりなものが必要となる。
また、後述するように加熱消滅性樹脂組成物の消滅により発生する気体の圧力により剥離を行う場合には、できる限り低温で速やかに消滅する加熱消滅性樹脂を用いることが好ましい。
従来、比較的低温で速やかに消滅し得る加熱消滅性樹脂はなかったが、本発明者らは、鋭意検討の結果、架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂を架橋させた樹脂が、150〜170℃に加熱することで速やかに消滅することに加え、リードフレームを構成する金属や樹脂等の幅広い材料に対して優れた接着性を有し、しかも、シート状に成形したときに適度なシート強度を有することを見出した。
【0014】
上記ポリオキシアルキレン樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリオキシプロピレン樹脂、ポリオキシエチレン樹脂、ポリオキシテトラメチレン樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリオキシプロピレン樹脂を50重量%以上とし、ポリオキシエチレン樹脂又はポリオキシテトラメチレン樹脂を含む混合樹脂とすれば、樹脂の混合割合を調整することにより、消滅する温度と消滅するまでの時間とを調整できることから好ましい。
【0015】
上記架橋性シリル基としては、例えば、オキシムシリル基、アルケニルオキシシリル基、アセトキシシリル基、ハロゲノシリル基、ビニルシリル基、シラノール基等が挙げられる。なかでも、末端にアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂は、弾性にすぐれたゴム状の架橋樹脂となることから好適である。
上記アルコキシシリル基としては、例えば、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロピルオキシシリル基、イソプロピルオキシシリル基、ブトキシシリル基、tert−ブトキシシリル基、フェノキシシリル基、ベンジルオキシシリル基等が挙げられる。なお、ジアルコキシシリル基又はトリアルコキシシリル基の場合、同じアルコキシ基であってもよく、異なるアルコキシ基を組み合わせたものであってもよい。これらの架橋性シリル基は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、ポリオキシアルキレン樹脂の種類や架橋性シリル基が異なる複数種類のポリオキシアルキレン樹脂を併用してもよい。
【0016】
上記架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂を架橋させるには、下記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒を用いることが好ましい。これにより、可視光線、紫外線や電子線等の光を照射(以下、光照射ともいう)することでポリオキシアルキレン樹脂組成物を架橋、硬化させることができる。なかでも、光反応性が高く架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂に対する溶解性にも優れていることから、カルボン酸無水物、カルボン酸イミド及びジアシルホスフィンオキサイドが好適である。このような光反応触媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
【化1】
【0018】
式(1)中、mは2〜5の整数を表し、Y(m)は周期表のIVB族、VB族又はVIB族の原子を表し、Zは水素基、炭化水素基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン基、アルコキシル基、アルキルチオ基、カルボニルオキシ基又はオキソ基を表す。
【0019】
上記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒は、上記式(1)で表される官能基のうち、異なるものを複数種有していてもよい。
【0020】
上記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒としては、例えば、酸素、硫黄、窒素、リン及び炭素からなる群より選択されるY(m)で示される原子に対し、カルボニル基が2個結合した化合物であって、Y(m)で示される原子の価数に応じて適宜、Zで示される炭化水素基又はオキシド基を有するもの等が挙げられる。
【0021】
上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族系炭化水素基、不飽和脂肪族系炭化水素基、芳香族系炭化水素基等が挙げられる。これらの炭化水素基は、本発明の目的を阻害しない範囲でアミノ基、水酸基、エーテル基、エポキシ基、重合性不飽和基、ウレタン基、ウレア基、イミド基、エステル基等の置換基を有していても良い。また、異なる炭化水素基を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
上記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒は、環状化合物であってもよい。このような環状化合物としては、例えば、環状鎖の中に1個又は2個以上の同種又は異種の上記一般式(1)で表される官能基を有する化合物等が挙げられる。更に、複数個の同種又は異種の上記環状化合物を適当な有機基で結合した化合物や、複数個の同種又は異種の上記環状化合物をユニットとして少なくとも1個以上含む双環化合物等も用いることができる。
【0023】
上記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒としては、Y(m)で表される原子が酸素原子の場合には、例えば、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、ブチル酸無水物、イソブチル酸無水物、バレリック酸無水物、2−メチルブチル酸無水物、トリメチル酢酸無水物、ヘキサン酸無水物、ヘプタン酸無水物、デカン酸無水物、ラウリル酸無水物、ミリスチリル酸無水物、パルミチン酸無水物、ステアリル酸無水物、ドコサン酸無水物、クロトン酸無水物、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、オレイン酸無水物、リノレイン酸無水物、クロロ酢酸無水物、ヨード酢酸無水物、ジクロロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、クロロジフルオロ酢酸無水物、トリクロロ酢酸無水物、ペンタフルオロプロピオン酸無水物、ヘプタフルオロブチル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、2,2−ジメチルコハク酸無水物、イソブチルコハク酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、ヘキサヒドロ−4−メチルフタル酸無水物、イタコン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、2−メチルマレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、グルタル酸無水物、1−ナフチル酢酸無水物、安息香酸無水物、フェニルコハク酸無水物、フェニルマレイン酸無水物、2,3−ジフェニルマレイン酸無水物、フタル酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物、4,4’−(ヘキサフルオロプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸無水物等;マレイン酸無水物とラジカル重合性二重結合を持つ化合物の共重合体として、例えば、マレイン酸無水物と(メタ)アクリレートの共重合体、マレイン酸無水物とスチレンの共重合体、マレイン酸無水物とビニルエーテルの共重合体等が挙げられる。これらのうち市販品としては、例えば、旭電化社製のアデカハードナーEH−700、アデカハードナーEH−703、アデカハードナーEH−705A;新日本理化社製のリカシッドTH、リカシッドHT−1、リカシッドHH、リカシッドMH−700、リカシッドMH−700H、リカシッドMH、リカシッドSH、リカレジンTMEG;日立化成社製のHN−5000、HN−2000;油化シェルエポキシ社製のエピキュア134A、エピキュアYH306、エピキュアYH307、エピキュアYH308H;住友化学社製のスミキュアーMS等が挙げられる。
【0024】
上記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒としては、Y(m)で表される原子が窒素原子の場合には、例えば、コハク酸イミド、N−メチルコハク酸イミド、α,α−ジメチル−β−メチルコハク酸イミド、α−メチル−α−プロピルコハク酸イミド、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(1−ピレニル)マレイミド、3−メチル−N−フェニルマレイミド、N,N’−1,2−フェニレンジマレイミド、N,N’−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−(4−メチル−1,3−フェニレン)ビスマレイミド、1,1’−(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスマレイミド、フタルイミド、N−メチルフタルイミド、N−エチルフタルイミド、N−プロピルフタルイミド、N−フェニルフタルイミド、N−ベンジルフタルイミド、ピロメリット酸ジイミド等が挙げられる。
【0025】
上記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒としては、Y(m)で表される原子がリン原子の場合には、例えば、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド等が挙げられる。
【0026】
上記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒としては、Y(m)で表される原子が炭素原子の場合には、例えば、2,4−ペンタンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、3−クロロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1−ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン等のジケトン類;ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルメチルマロネート、テトラエチル1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸等のポリカルボン酸エステル類;メチルアセチルアセトナート、エチルアセチルアセトナート、メチルプロピオニルアセテート等のα−カルボニル−酢酸エステル類等が挙げられる。なかでも、消滅後の残さが極めて少ないことから、ジアシルフォスフィンオキシド及びその誘導体が好適である。
【0027】
上記式(1)で表される官能基を有する光反応触媒の配合量の好ましい使用量としては、架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂100重量部に対して0.01重量部、好ましい上限は30重量部である。0.01重量部未満であると、光反応性を示さなくなることがあり、30重量部を超えると、ポリオキシアルキレン樹脂組成物の光透過性が低下して、光を照射しても表面のみが架橋、硬化し、深部は架橋、硬化しないことがある。より好ましい下限は0.1重量部、より好ましい下限は20重量部である。
【0028】
上記架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂を架橋する際には、増感剤を併用してもよい。増感剤を併用することにより、光反応性が向上し、光の照射時間を短くしたり、光の照射エネルギーを低くしたり、表面から深部まで均一に架橋、硬化させたりすることができる。
上記増感剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール誘導体化合物;ハロゲン化ケトン;アシルフォスフィンオキシド;アシルフォスフォナート;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシドビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド;ビス(η5−シクロペンタジエニル)−ビス(ペンタフルオロフェニル)−チタニウム、ビス(η5−シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピリ−1−イル)フェニル]−チタニウム;アントラセン、ペリレン、コロネン、テトラセン、ベンズアントラセン、フェノチアジン、フラビン、アクリジン、ケトクマリン、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン、アセトフェノン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
上記架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂は、必要に応じてアルキルシラン化合物又はアルコキシシラン化合物と併用してもよい。上記アルキルシラン化合物又はアルコキシシラン化合物としては、例えば、ジメトキシジメチルシラン、シクロヘキシルジメトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシメチルオクチルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、クロロメチル(ジイソプロポキシ)メチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリメトキシプロピルシラン、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、(3−クロロプロピル)トリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、トリス(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3−グリシドキシプロピル)メチルシラン、クロロトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、クロロトリス(1,3−ジメチルブトキシ)−シラン、ジクロロジエトキシシラン、3−(トリエトキシシリル)−プロピオニトリル、4−(トリエトキシシリル)−ブチロニトリル、3−(トリエトキシシリル)−プロピルイソシアネート、3−(トリエトキシシリル)−プロピルチオイソシアネート、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、1,3,5,7−テトラエトキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラプロキシシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロポキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラブトキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタエトキシ−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルシクロテトラシラザン、1,7−ジアセトキシオクタメチルテトラシロキサン、1,7−ジクロロオクタメチルテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジクロロトリシロキサン、1,3−ジクロロテトライソプロピルジシロキサン、1,3−ジエトキシテトラメチルジシロキサン、1,3−ジメトキシテトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジクロロジシロキサン、1,2−ビス(メチルジクロロシリル)エタン、ジアセトキシジフェニルシラン、メチルトリス(エチルメチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(N,N−ジエチルアミノキシ)シラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)メチルイソプロポキシシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)エトキシメチルシラン、トリス(1−メチルビニロキシ)ビニルシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、トリアセトキシビニルシラン、テトラアセトキシシラン、ジアセトキシメチルフェニルシラン、ジメトキシエチルメチルケトオキシムメチルシラン等が挙げられる。
【0030】
上記接着剤中に占める加熱消滅性樹脂の割合は特に限定されない。加熱消滅性樹脂が主成分となって上記接着剤の大部分を占める場合には、加熱することにより上記接着剤を消滅させることができ、極めて容易に支持板を剥離することができる。一方、接着剤全体が消滅しない程度の含有量である場合であっても、加熱消滅性樹脂の分解により発生した気体が、半導体ウエハから接着剤の接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させることから、容易に支持板を剥離することができる。
【0031】
加熱消滅性樹脂の分解により発生した気体が、半導体ウエハから接着剤の接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させるようにするためには、上記接着剤は、更に、刺激により架橋する架橋性樹脂成分を含有することが好ましい。加熱消滅性樹脂を分解して気体を発生させる前に刺激を与えて架橋性樹脂成分を架橋させれば、接着剤全体が硬化して、加熱消滅性樹脂の分解により発生した気体がより効率よく接着剤から気体を放出させることができ、より容易に支持板を剥離することができる。
また、上記接着剤中に占める刺激により架橋する架橋性樹脂成分の割合は特に限定されないが、上記刺激により架橋する架橋性樹脂成分の割合が30重量%以上であることが好ましい。上記刺激により架橋する架橋性樹脂成分の割合が30重量%未満の場合、接着剤全体が充分に硬化しないことがある。
【0032】
上記刺激により架橋する架橋性樹脂成分としては特に限定されず、例えば、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとを主成分とし、必要に応じて光重合開始剤を含んでなる光硬化型粘着剤や、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとを主成分とし、熱重合開始剤を含んでなる熱硬化型粘着剤等が挙げられる。
【0033】
このような光硬化型粘着剤又は熱硬化型粘着剤等の後硬化型粘着剤は、光の照射又は加熱により粘着剤の全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、重合硬化による弾性率の上昇が著しくなり、粘着力が大きく低下する。また、硬い硬化物中で加熱消滅性樹脂を分解させて気体を発生させると、発生した気体の大半は外部に放出され、放出された気体は、被着体から接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。
【0034】
上記重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーという)をあらかじめ合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という)と反応させることにより得ることができる。
【0035】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、常温で粘着性を有するポリマーとして、一般の(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様に、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとし、これと官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られるものである。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万〜200万程度である。
【0036】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー;アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0037】
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0038】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合はエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がヒドロキシル基の場合はイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がエポキシ基の場合はカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられ、同官能基がアミノ基の場合はエポキシ基含有モノマーが用いられる。
【0039】
上記多官能オリゴマー又はモノマーとしては、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱又は光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2〜20個のものである。このようなより好ましい多官能オリゴマー又はモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。その他、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
上記光重合開始剤としては、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられ、このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
上記熱重合開始剤としては、熱により分解し、重合硬化を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられ、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエール、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、熱分解温度が高いことから、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が好適である。これらの熱重合開始剤のうち市販されているものとしては特に限定されないが、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーメンタH(以上いずれも日本油脂製)等が好適である。これら熱重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
上記接着剤は、有機過酸化物を含有してもよい。有機過酸化物を含有することにより上記加熱消滅性樹脂からなる接着剤又は加熱消滅性樹脂を含有する接着剤を消滅させる時間を短縮させることができる。
上記有機過酸化物としては、例えば、p−メンタンハイドロキシパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロキシパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロキシパーオキサイド、クメンハイドロキシパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロキシパーオキサイド、t−ブチルハイドロキシパーオキサイド等のハイドロキシパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピルベンゼン)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド;1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール;t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ ラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート等のパーオキシエステル等が挙げられる。
【0043】
上記接着剤は、更に、必要に応じて、架橋促進剤、増粘剤、チキソトロープ剤、物性調整剤、増量剤、補強剤、可塑剤、着色剤、難燃剤等の各種添加剤を加えても良い。
【0044】
上記架橋促進剤としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド等の錫化合物、テトラ−n−ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のアルキルオキシチタネート等が挙げられる。ただし、これらの架橋促進剤は、必ず残さとなることから、接着剤の消失を行う場合には必要最小限の添加に止めるべきである。
【0045】
上記増粘剤は、上記接着剤の粘性特性を調整するために添加するものである。上記増粘剤としては、上記ポリオキシアルキレン樹脂との相溶性の高い高分子化合物から適宜選択され、例えば、アクリル系高分子、メタクリル系高分子、ポリビニルアルコール誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン誘導体、ポリエステル類、ポリエーテル類、ポリイソブテン、ポリオレフィン類、ポリアルキレンオキシド類、ポリウレタン類、ポリアミド類、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、NBR、SBS、SIS、SEBS、水添NBR、水添SBS、水添SIS、水添SEBS等やこれら共重合体の官能基変成体が挙げられる。これらの増粘剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
上記チキソトロープ剤は、上記接着剤の粘性特性を調整するために添加するものである。上記チキソトロープ剤としては、例えば、コロイダルシリカ、ポリビニルピロリドン、疎水化炭酸カルシウム、ガラスバルーン、ガラスビーズ等が挙げられる。また、上記チキソトロープ剤は、上記ポリオキシアルキレン樹脂と親和性の高い表面を有するものが好ましい。
【0047】
上記物性調整剤は、上記接着剤を用いてなるシートの引張り特性等を改善するために添加するものである。上記物性調整剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサエチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサエチレンジアミン等の各種シランカップリング剤等が挙げられる。これらの物性調整剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
上記増量剤としては特に限定されないが、上記ポリオキシアルキレン樹脂組成物のチキソトロープ性等への影響の少ないものが好適であり、例えば、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水珪素、含水珪素、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。これらの増量剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
上記可塑剤としては、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル類、グリセリンモノオレイル酸エステル等の脂肪酸−塩基酸エステル類、アジピン酸ジオクチル等の脂肪酸二塩基酸エステル類、ポリプロピレングリコール類等が挙げられる。これらの可塑剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
上記接着剤は、更に、必要に応じてタレ防止剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、溶剤、香料、顔料、染料等が添加されてもよい。
【0051】
上記加熱消滅性樹脂として上記架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂を架橋させたものを含有する接着剤は、他の接着剤成分と架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂、上記光反応触媒、必要に応じて上記増感剤との混合物を流延して光照射を行うことにより形成することができる。
光照射に利用できる光源としては、上記ポリオキシアルキレン樹脂組成物が感光し硬化が開始する波長を含む光源であれば特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマーレーザー、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。これらの光源は単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
なお、上記加熱消滅性樹脂として上記架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂を架橋させたものを含有する接着剤は、窒素雰囲気中では少なくとも200℃以上に加熱しなければ消滅しないが、酸素雰囲気中では150℃程度の温度で消滅させることができる。従って、加熱時の雰囲気ガスに含まれる酸素濃度を調整することによっても上記加熱消滅性樹脂を含有する接着剤を消滅させる時間を調整することができる。
【0053】
上記加熱消滅性樹脂を含有する接着剤は、架橋や硬化の程度を調整することによりシート状に加工して用いてもよいし、ペースト状で用いてもよい。
また、シート状に加工する場合には、基材のないノンサポートタイプであってもよいし、離型処理された又はされていない基材の片面に上記接着剤からなる接着層が形成されたサポートタイプであってもよい。
【0054】
本発明の補強された半導体ウエハは、半導体ウエハが支持板により補強されているので、取扱い性に極めて優れ、半導体ウエハを50μm程度にまで研磨しても破損することがない。更に、半導体ウエハと支持板とが上記加熱消滅性樹脂を含有する接着剤により接着されていることから、加熱することにより、接着剤が消滅するか、または加熱消滅性接着剤の分解により発生した気体により接着力が低下することから、半導体ウエハを破損することなく極めて容易に半導体ウエハと支持板とを剥離することができる。とりわけ、上記加熱消滅性樹脂として上記架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン樹脂を架橋させた樹脂を用いる場合には、150〜180℃の加熱で剥離させることができる。
【0055】
本発明の補強された半導体ウエハを用いれば、容易にICチップを製造することができる。
本発明の補強された半導体ウエハを用いてICチップを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、本発明の補強された半導体ウエハを研磨した後、研磨した半導体ウエハにダイシングテープを貼り付けてから加熱して加熱消滅性樹脂を分解させることにより半導体ウエハをダンシングテープに転写し、ダイシングして得られたICチップをピックアップする方法(第1の態様);本発明の補強された半導体ウエハを研磨し、研磨面からダイシングしてICチップを作製した後、加熱して加熱消滅性樹脂を分解させ、ICチップを吸引装置によりピックアップする方法(第2の態様);既に研磨されている補強された半導体ウエハをダイシングしてICチップを作製した後、加熱して加熱消滅性樹脂を分解させ、ICチップを吸引装置によりピックアップする方法(第3の態様)等が挙げられる。
これらの、本発明の補強された半導体ウエハを用いたICチップの製造方法もまた、本発明の1つである。
【0056】
第1の態様の本発明のICチップの製造方法では、まず、半導体ウエハを研磨する。半導体ウエハは支持板に固定されていることから、研磨中に破損することがない。上記研磨の方法としては特に限定されず、通常のICチップの製造方法において用いられる方法を用いることができ、例えば、支持板を固定し、高速回転する研磨用砥石を用いて切削水をかけながら完成時のチップの厚さにまでウエハを研磨する方法等が挙げられる。
【0057】
次いで、研磨した半導体ウエハにダイシングテープを貼り付けてから加熱して加熱消滅性樹脂を分解させることにより半導体ウエハをダンシングテープに転写する。加熱により、接着剤の主成分が上記加熱消滅性樹脂である場合には、粘着剤が実質上消滅する。一方、接着剤が消滅しない場合であっても、上記加熱消滅性樹脂を分解により発生した気体により接着剤の接着力を低下させるので、半導体ウエハと支持板とを容易に剥離することができる。
なお、上記接着剤が上記刺激により架橋する架橋性樹脂成分を含有する場合には、加熱して上記加熱消滅性樹脂を分解させるのに先立って、刺激を与えて架橋性樹脂成分を架橋させることが好ましい。これにより、より容易に半導体ウエハと支持板とを剥離することができる。
最後に通常の方法によりダイシングを行い、得られたICチップをピックアップする。
【0058】
第2の態様の本発明のICチップの製造方法では、まず、半導体ウエハを研磨する。研磨の方法としては、第1の態様の本発明のICチップの製造方法の場合と同様である。次いで、支持板に固定した状態で、研磨面からダイシングしてICチップを作製した後、加熱して加熱消滅性樹脂を分解させ、得られたICチップをピックアップする。この方法では、加熱により接着剤からICチップを押し上げる強いガス圧力が加わり場合によっては上記接着剤が実質的に消滅することによりICチップは、支持板上に浮いたような状態にあることから、ニードルを用いることなく吸引装置によりピックアップすることができるので、ピックアップ時の衝撃によりICチップが破損したり、カケが生じたりするのを抑制することができる。
【0059】
また、研磨済みの半導体ウエハが得られる場合には、第3の態様の本発明のICチップの製造方法を用いることができる。即ち、研磨済みの半導体ウエハに上記接着剤を介して支持板に接着した補強された半導体ウエハをダイシングしてICチップを作製した後、加熱して加熱消滅性樹脂を分解させ、得られたICチップをピックアップする。この方法では、加熱により接着剤からICチップを押し上げる強いガス圧力が加わり、場合によっては上記接着剤が実質的に消滅することによりICチップは支持板上に浮いたような状態にあることから、ニードルを用いることなく吸引装置によりピックアップすることができるので、ピックアップ時の衝撃によりICチップが破損したり、カケが生じたりするのを抑制することができる。
【0060】
本発明の補強された半導体ウエハの厚さに合わせて収納容器内面にカセットが形成されている半導体ウエハ収納容器もまた、本発明の1つである。
【0061】
また、得られたICチップについても50μm程度の極めて薄いものは運搬中に破損することがある。そこで上記加熱消滅性樹脂からなる接着剤又は加熱消滅性樹脂を含有する接着剤を用いてICチップトレイに接着すれば、取扱い性が向上する。このような、ICチップが加熱消滅性樹脂からなる接着剤又は加熱消滅性樹脂を含有する接着剤を介して接着されているICチップトレイもまた、本発明の1つである。
本発明のICチップトレイの形状としては特に限定されないが、例えば、シート状であって、表面にICチップを固定するためのくぼみを有するもの等が挙げられる。
【0062】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
架橋性シリル基を有するポリオキシプロピレン樹脂(商品名「MSポリマーS303」、鐘淵化学工業社製)100重量部にジアシルフォスフィンオキシド化合物(商品名「イルガキュア819」、チバスペシャルティーケミカル社製)3重量部を加えた液状樹脂組成物を厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム表面に乾燥後の厚みが10μmとなるように塗工し、紫外線を照射して硬化させ樹脂シートを得た。得られた樹脂シートはゲル状でゴム弾性があり粘着性を示す樹脂テープであった。
得られた樹脂テープを介して、厚み100μmの表面に回路が形成されたシリコンウエハと厚さ1mmのガラス板とを接着して補強されたシリコンウエハを作製した。
【0064】
得られた補強された半導体ウエハを研磨装置に取り付け、シリコンウエハの厚さが約50μmになるまで研磨した。
次いで、180℃のオーブンに入れて加熱したところ、樹脂シートが分解し、シリコンウエハを容易にガラス板から剥離することができた。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、取扱い性が良好で、厚さ50μm程度にまで研磨しても破損等することなく支持板を剥離することができる補強された半導体ウエハ、及び、厚さ50μm程度にまで研磨された半導体ウエハをダイシングして、小片化されたICチップを、割れ、カケ等を発生させることなく、支持板から剥離することができるICチップの製造方法を提供できる。
Claims (8)
- 半導体ウエハと、前記半導体ウエハの片面に加熱消滅性樹脂からなる接着剤又は加熱消滅性樹脂を含有する接着剤を介して接着された支持板とからなることを特徴とする補強された半導体ウエハ。
- 加熱消滅性樹脂からなる接着剤又は加熱消滅性樹脂を含有する接着剤は、前記加熱消滅性樹脂の分解により固体形状を失うことを特徴とする請求項1記載の補強された半導体ウエハ。
- 加熱消滅性樹脂を含有する接着剤は、更に、刺激により架橋する架橋性樹脂成分を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の補強された半導体ウエハ。
- 請求項1、2又は3記載の補強された半導体ウエハを用いたICチップの製造方法であって、
前記補強された半導体ウエハを研磨した後、研磨した半導体ウエハにダイシングテープを貼り付けてから加熱して加熱消滅性樹脂を分解させることにより半導体ウエハをダンシングテープに転写し、ダイシングして得られたICチップをピックアップする
ことを特徴とするICチップの製造方法。 - 請求項1、2又は3記載の補強された半導体ウエハを用いたICチップの製造方法であって、
前記補強された半導体ウエハを研磨し、研磨面からダイシングしてICチップを作製した後、
加熱して加熱消滅性樹脂を分解させ、ICチップを吸引装置によりピックアップする
ことを特徴とするICチップの製造方法。 - 請求項1、2又は3記載の補強された半導体ウエハを用いたICチップの製造方法であって、
既に研磨されている補強された半導体ウエハをダイシングしてICチップを作製した後、加熱して加熱消滅性樹脂を分解させ、ICチップを吸引装置によりピックアップする
ことを特徴とするICチップの製造方法。 - 請求項1、2又は3記載の補強された半導体ウエハの厚さに合わせて収納容器内面にカセットが形成されていることを特徴とする半導体ウエハ収納容器。
- ICチップが加熱消滅性樹脂からなる接着剤又は加熱消滅性樹脂を含有する接着剤を介して接着されていることを特徴とするICチップトレイ。
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