JP2012129323A - 基材の加工方法 - Google Patents

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Junya Kusuki
淳也 楠木
Etsu Takeuchi
江津 竹内
Toshiharu Kuboyama
俊治 久保山
Toshihiro Sato
敏寛 佐藤
Hiromichi Sugiyama
広道 杉山
Masakazu Kawada
政和 川田
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【課題】支持基材上に基材を強固に仮固定することができ、かつ加工後の支持基材からの基材の脱離時には、容易に支持基材から脱離させることができる基材の加工方法を提供すること。
【解決手段】樹脂成分を含む仮固定剤2を用いて薄膜を形成する工程と、基材3と支持基材1とを貼り合わせる工程と、基材3を加工する工程と、薄膜に活性エネルギー線を照射する工程と、薄膜を加熱して基材3を脱離させる工程とを有し、活性エネルギー線の照射量をE[J/cm]、薄膜の平均厚さをM[cm]、薄膜を加熱する温度をT[℃]、薄膜を加熱する時間をt[分]としたとき、式1〜式3の関係を満足する。log(T・t)≦−10−4・(E/M)+5.7・・・式1。log(T・t)≧−10−4・(E/M)+3.8・・・式2。3.3×10−5≦E/M≦8.0×10・・・式3
【選択図】図1

Description

本発明は、基材の加工方法、特に、仮固定剤を用いて基材を支持基材に仮固定して基材を加工する基材の加工方法に関する。
半導体ウエハに研磨やエッチング等の加工を行うためには、半導体ウエハを支持するための基材上に半導体ウエハを一時的に仮固定する必要があり、そのための様々な方法が提案されている。例えば、現在では基材としてのPETフィルムに接着層を設けた固定用のフィルム上に半導体ウエハを固定する方法が多く用いられている。
この方法では、研削に用いられる一般的なバックグラインドマシンの研削精度(約1μm)と、半導体ウエハを固定するための一般的なバックグラインド(BG)テープの厚み精度(約5μm)とを合わせると、要求される厚み精度を超えてしまい、研削されたウエハの厚みにバラツキが生じると言う問題がある。
また、スルー・シリコン・ビア(Through Silicon Via)に用いる半導体ウエハを加工する場合、BGテープが付いた状態でビアホールや膜の形成を行うが、そのときの温度は低くとも180℃程度に達し、BGテープの粘着力を上げてしまう。また、膜形成のためのメッキの薬液によってBGテープの接着層が侵され、剥がれが生じたりする。
また、化合物半導体に代表される脆弱な半導体ウエハは、機械的研削によってダメージを受ける場合があるので、エッチングによって薄化を行う。このエッチングにおいては、ストレス除去を目的とする程度のエッチング量であれば特に問題はないが、数μmエッチングする場合には、エッチングの薬液によってBGテープが変質してしまうことがある。
一方で、近年、表面が平滑な支持基材に固定材料を介して半導体ウエハを固定する方法が採用されるようになっている。
例えば、ストレス除去の目的でエッチングを行うには、高い温度まで加熱する必要があるが、PETフィルムではこのような高温に耐えることができないため、このような場合には支持基材を用いた方法が好ましく適用される。
半導体ウエハの支持基材への固定材料には、高温で軟化して半導体ウエハの脱離を行え得るような固定材料(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
このような固定材料を用いた半導体ウエハの加工時では、半導体ウエハの加工時には、支持基材上に強固に固定され、半導体ウエハの脱離時では、支持基材から容易に脱離させ得ることが求められるが、現状、そのような固定材料を用いた半導体ウエハの加工方法は、見出されていないのが現状である。
なお、かかる問題は、半導体ウエハの加工に限らず、固定部材を介して支持基材に固定した状態で加工を施す各種基材についても同様に生じている。
特表2010−531385号公報
本発明の目的は、支持基材上に基材を仮固定して基材を加工する際には、支持基材上に基材を強固に仮固定することができ、かつ加工後の支持基材からの基材の脱離時には、容易に支持基材から脱離させることができる基材の加工方法を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(9)に記載の本発明により達成される。
(1)加熱により熱分解することで溶融または気化する樹脂成分を含む樹脂組成物で構成される仮固定剤を基材および支持基材のうちの少なくとも一方に供給したのち乾燥させて薄膜を形成する第1の工程と、
前記薄膜を介して、前記基材と前記支持基材とを貼り合わせる第2の工程と、
前記基材の前記支持基材と反対側の面を加工する第3の工程と、
前記薄膜に活性エネルギー線を照射する第4の工程と、
前記薄膜を加熱して前記樹脂成分を熱分解させることで、前記基材を前記支持基材から脱離させる第5の工程とを有し、
前記第4の工程における、前記活性エネルギー線の照射量をE[J/cm]とし、前記薄膜の平均厚さをM[cm]とし、さらに、前記第5の工程における、前記薄膜を加熱する温度をT[℃]とし、前記薄膜を加熱する時間をt[分]としたとき、これらが下記式1〜下記式3の関係を満足するよう設定されることを特徴とする基材の加工方法。
log(T・t)≦−10−4・(E/M)+5.7 ・・・ 式1
log(T・t)≧−10−4・(E/M)+3.8 ・・・ 式2
3.3×10−5≦E/M≦8.0×10 ・・・ 式3
(2)前記活性エネルギー線の照射量Eは、0.001〜20J/cmである上記(1)に記載の基材の加工方法。
(3)前記薄膜の厚さMは、5×10−4〜3×10−2cmである上記(1)または(2)に記載の基材の加工方法。
(4)前記薄膜を加熱する温度Tは、60〜400℃である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の基材の加工方法。
(5)前記薄膜を加熱する時間tは、1.67×10−3〜60分である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の基材の加工方法。
(6)前記第4の工程における前記薄膜への活性エネルギー線の照射により、前記第5の工程において、前記樹脂成分が熱分解する温度が低下する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の基材の加工方法。
(7)前記樹脂成分は、酸または塩基の存在下において前記熱分解する温度が低下するものであり、前記樹脂組成物は、さらに前記活性エネルギー線の照射により酸または塩基を発生する活性剤を含有する上記(6)に記載の基材の加工方法。
(8)前記活性剤は、前記樹脂組成物中において、前記樹脂成分に対して0.01〜50重量%含まれる上記(7)に記載の基材の加工方法。
(9)前記第1の工程において、前記基材および前記支持基材のうちの前記支持基材に対して選択的に前記仮固定剤を供給して前記薄膜を形成する上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の基材の加工方法。
本発明の基材の加工方法によれば、仮固定剤を用いて形成された薄膜を介して、基材を支持基材上に強固に仮固定した状態で基材を加工することができる。さらに、基材の加工後の薄膜に対して照射する活性エネルギー線の照射量と、支持基材からの脱離時における加熱の条件とが適切に設定されていることに起因して、基材を支持基材から容易に脱離させることができるという効果を奏する。
本発明の基材の加工方法が適用された、半導体ウエハを加工する加工工程を説明するための縦断面図である。 活性エネルギー線の照射量と、薄膜の平均厚さと、薄膜を加熱する温度と、薄膜を加熱する時間との関係を示したグラフである。
以下、本発明の基材の加工方法を、添付図面に示す好適実施形態に基いて詳細に説明する。
まず、本発明の基材の加工方法を説明するのに先立って、本発明に用いられる仮固定剤について説明する。
<仮固定剤>
仮固定剤は、基材を加工するために該基材を支持基材に仮固定し、前記基材の加工後に、活性エネルギー線の照射後に加熱することで前記基材を前記支持基材から脱離させるために用いられ、前記活性エネルギー線の照射後における加熱により熱分解する樹脂成分を含有する樹脂組成物からなるものである。
このような仮固定剤を用いることにより、仮固定剤を用いて形成された薄膜により基材を支持基材に仮固定した状態で基材を加工することができ、さらに、活性エネルギー線の照射後における加熱により薄膜を溶融または気化させることで基材を支持基材から脱離させることができる。
以下、この樹脂成分を含有する樹脂組成物を構成する各成分について、順次、説明する。
樹脂成分は、仮固定時(基材の加工時)には、基材を支持基材に固定する機能を有し、さらに、活性エネルギー線照射の後に加熱するとその熱分解する温度が活性エネルギー線を照射しない場合よりも低下するため、活性エネルギー線照射の後の加熱により、支持基材からの基材の脱離を容易に行え得る機能を有するものである。
この樹脂成分としては、酸または塩基の存在下において低分子化することに起因して、気化または溶融するものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリカーボネート系樹脂、ビニル系樹脂および(メタ)アクリル系樹脂であるのが好ましく、特に、ポリカーボネート系樹脂であるのが好ましい。これらのものは、酸または塩基の存在下において、その低分子化する温度がより顕著に低下するものであるため、樹脂成分としてより好適に選択される。
ビニル系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリスチレン、ポリ―α―メチルスチレンのようなスチレン誘導体の重合体、ポリ(エチルビニルエーテル)、ポリ(ブチルビニルエーテル)、ポリビニルホルマールのようなポリビニルエーテル類やその誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリ―α―メチルスチレンであるのが好ましい。かかる樹脂成分は、作業性に優れるという点から、特に好適に用いられる。
また、(メタ)アクリル系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような各種(メタ)アクリル系モノマーから選択される共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリメタクリル酸メチルまたはポリメタクリル酸エチルであるのが好ましい。かかる樹脂成分は、作業性に優れるという点から、特に好適に用いられる。
ポリカーボネート系樹脂としては、特に制限されないが、ポリプロピレンカーボネート樹脂、ポリエチレンカーボネート樹脂、1,2−ポリブチレンカーボネート樹脂、1,3−ポリブチレンカーボネート樹脂、1,4−ポリブチレンカーボネート樹脂、cis−2,3−ポリブチレンカーボネート樹脂、trans−2,3−ポリブチレンカーボネート樹脂、α,β−ポリイソブチレンカーボネート樹脂、α,γ−ポリイソブチレンカーボネート樹脂、cis−1,2−ポリシクロブチレンカーボネート樹脂、trans−1,2−ポリシクロブチレンカーボネート樹脂、cis−1,3−ポリシクロブチレンカーボネート樹脂、trans−1,3−ポリシクロブチレンカーボネート樹脂、ポリヘキセンカーボネート樹脂、ポリシクロプロペンカーボネート樹脂、ポリシクロヘキセンカーボネート樹脂、1,3−ポリシクロヘキサンカーボネート樹脂、ポリ(メチルシクロヘキセンカーボネート)樹脂、ポリ(ビニルシクロヘキセンカーボネート)樹脂、ポリジヒドロナフタレンカーボネート樹脂、ポリヘキサヒドロスチレンカーボネート樹脂、ポリシクロヘキサンプロピレンカーボネート樹脂、ポリスチレンカーボネート樹脂、ポリ(3−フェニルプロピレンカーボネート)樹脂、ポリ(3−トリメチルシリロキシプロピレンカーボネート)樹脂、ポリ(3−メタクリロイロキシプロピレンカーボネート)樹脂、ポリパーフルオロプロピレンカーボネート樹脂、ポリノルボルネンカーボネート樹脂、ポリノルボルナンカーボネート樹脂、exo−ポリノルボルネンカーボネート樹脂、endo−ポリノルボルネンカーボネート樹脂、trans−ポリノルボルネンカーボネート樹脂、cis−ポリノルボルネンカーボネート樹脂が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ポリプロピレンカーボネート/ポリシクロヘキセンカーボネート共重合体、1,3−ポリシクロヘキサンカーボネート/ポリノルボルネンカーボネート共重合体、ポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,1,4,4−テトラメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−5−ノルボルネン−2−endo−3−endo−ジメタン)]樹脂、ポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,4−ジメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−5−ノルボルネン−2−endo−3−endo−ジメタン)]樹脂、ポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,1,4,4−テトラメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−p−キシレン)]樹脂、およびポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,4−ジメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−p−キシレン)]樹脂、1,3−ポリシクロヘキサンカーボネート樹脂/exo−ポリノルボルネンカーボネート樹脂、1,3−ポリシクロヘキサンカーボネート樹脂/endo−ポリノルボルネンカーボネート樹脂等の共重合体を用いることもできる。
さらに、ポリカーボネート系樹脂としては、上記の他、カーボネート構成単位において、少なくとも2つの環状体を有するポリカーボネート樹脂を用いることもできる。
環状体の数は、カーボネート構成単位において、2つ以上であればよいが、2〜5であるのが好ましく、2または3であるのがより好ましく、2であるのがさらに好ましい。カーボネート構成単位としてこのような数の環状体が含まれることにより、支持基材と基材との密着性が優れたものとなる。また、仮固定剤の加熱により、かかるポリカーボネート樹脂が熱分解して低分子化することにより、溶融するものとなる。
また、複数の環状体は、それぞれの頂点同士が互いに連結している連結多環系構造をなしていてもよいが、それぞれが有する一辺同士が互いに連結している縮合多環系構造をなしているのが好ましい。これにより、仮固定剤としての耐熱性と、このものが溶融する際の熱分解時間を短縮することを両立することができる。
さらに、複数の環状体は、それぞれ、5員環または6員環であるあるのが好ましい。これにより、カーボネート構成単位の平面性が保たれることから、溶剤に対する溶解性をより安定させることができる。
このような複数の環状体は、脂環式化合物であるのが好ましい。各環状体が脂環式化合物である場合に、前述したような効果がより顕著に発揮されることになる。
これらのことを考慮すると、ポリカーボネート系樹脂において、カーボネート構成単位としては、例えば、下記化学式(1X)で表わされるものが特に好ましい構造である。
Figure 2012129323
なお、上記化学式(1X)で表わされるカーボネート構成単位を有するポリカーボネート系樹脂は、デカリンジオールと、炭酸ジフェニルのような炭酸ジエステルとの重縮合反応により得ることができる。
また、上記化学式(1X)で表わされるカーボネート構成単位において、デカリンジオールが有する水酸基に連結する炭素原子に由来するものは、それぞれ、デカリン(すなわち、縮合多環系構造を形成する2つの環状体)を構成する炭素原子に結合し、かつ、これら水酸基に連結する炭素原子の間に3つ以上の原子が介在しているのが好ましい。これにより、ポリカーボネート系樹脂の分解性を制御でき、その結果、仮固定剤としての耐熱性と、このものが溶融する際の熱分解時間を短縮することを両立することができる。さらに、溶剤に対する溶解性をより安定させることができる。
このようなカーボネート構成単位としては、例えば、下記化学式(1A)、(1B)で表わされるものが挙げられる。
Figure 2012129323
さらに、複数の環状体は、脂環式化合物である他、複素脂環式化合物であってもよい。各環状体が複素脂環式化合物である場合であっても、前述したような効果がより顕著に発揮されることになる。
この場合、ポリカーボネート系樹脂において、カーボネート構成単位としては、例えば、下記化学式(2X)で表わされるものが特に好ましい構造である。
Figure 2012129323
なお、上記化学式(2X)で表わされるカーボネート構成単位を有するポリカーボネート系樹脂は、下記化学式(2a)で表わされるエーテルジオールと、炭酸ジフェニルのような炭酸ジエステルとの重縮合反応により得ることができる。
Figure 2012129323
また、上記化学式(2X)で表わされるカーボネート構成単位において、上記化学式(2a)で表わされる環状エーテルジオールが有する水酸基由来の炭素原子は、それぞれ、上記環状エーテル(すなわち、縮合多環系構造を形成する2つの環状体)を構成する炭素原子に結合し、かつ、これら炭素原子の間に3つ以上の原子が介在しているのが好ましい。これにより、仮固定剤としての耐熱性と、このものが溶融する際の熱分解時間を短縮することを両立することができる。さらに、溶剤に対する溶解性をより安定させることができる。
このようなカーボネート構成単位としては、例えば、下記化学式(2A)で表わされる1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール(イソソルビド)型のものや、下記化学式(2B)で表わされる1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール(イソマンニド)型ものが挙げられる。
Figure 2012129323
ポリカーボネート系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、5,000〜800,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量を上記下限以上とすることにより、支持基材に対する濡れ性が向上すること、さらに、成膜性を向上するという効果を得ることができる。また、上記上限値以下とすることで、各種溶剤に対する溶解性、さらには、仮固定剤の加熱による溶融および気化がより顕著に認められるという効果を得ることができる。
なお、ポリカーボネート系樹脂の重合方法は、特に限定されるわけではないが、例えば、ホスゲン法(溶剤法)または、エステル交換法(溶融法)等の公知の重合方法を用いることができる。
また、樹脂成分は、樹脂組成物を構成する全量(溶剤を含む場合には、溶剤を除いた全量)の10wt%〜100wt%の割合で配合することが好ましい。さらに好ましくは、50wt%以上、特には、80wt%〜100wt%の割合で配合することが好ましい。10wt%以上、特に80wt%以上とすることで、仮固定剤を熱分解した後の残渣を低減できるという効果がある。また、樹脂組成物中の樹脂成分を多くすることで短時間で仮固定剤を熱分解できるという効果がある。
ところで、上記のような樹脂成分は、酸または塩基の存在下において、熱分解する温度が低下するものである。さらに、ポリカーボネート系樹脂の中でも、特に、ポリプロピレンカーボネート、1,4−ポリブチレンカーボネート、1,3−ポリシクロヘキサンカーボネート/ポリノルボルネンカーボネート共重合体が、かかる熱分解する温度の低下がより顕著に認められるものである。
そこで、樹脂成分の他に、樹脂組成物中に、仮固定剤への活性エネルギー線の照射により酸または塩基を発生する活性剤が含まれる構成とすることで、樹脂成分を、仮固定剤への活性エネルギー線の照射により熱分解する温度が低下するものとし得る。
したがって、仮固定剤(樹脂組成物)を、樹脂成分と、仮固定剤への活性エネルギー線の照射により酸または塩基を発生する活性剤とを含有するものとすることで、活性エネルギー線照射により樹脂成分が熱分解する温度が低下するため、活性エネルギー線照射の後の仮固定剤の加熱により、基材の支持基材からの脱離を比較的低い温度においても、より容易に行え得るという効果が得られる。
(活性剤)
活性剤は、上述したように、活性エネルギー線の照射によってエネルギーを加えられることにより、酸または塩基のような活性種を発生させるものであり、この活性種の作用により、前記樹脂成分の熱分解する温度を低下させる機能を有するものである。
この活性剤としては、特に限定されないが、例えば、活性エネルギー線の照射により酸を発生する光酸発生剤や、活性エネルギー線の照射により塩基を発生する光塩基発生剤等が挙げられる。
光酸発生剤としては、特に限定されないが、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(DPI−TPFPB)、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムテトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレート(TTBPS−TPFPB)、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート(TTBPS−HFP)、トリフェニルスルホニウムトリフレート(TPS−Tf)、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート(DTBPI−Tf)、トリアジン(TAZ−101)、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(TPS−103)、トリフェニルスルホニウムビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド(TPS−N1)、ジ−(p−t−ブチル)フェニルヨードニウム、ビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド(DTBPI−N1)、トリフェニルスルホニウム、トリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド(TPS−C1)、ジ−(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド(DTBPI−C1)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でも、特に、樹脂成分の溶融粘度を効率的に下げることができるという観点から、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(DPI−TPFPB)が好ましい。
また、光塩基発生剤としては、特に限定されないが、例えば、5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナン、1−(2−ニトロベンゾイルカルバモイル)イミダゾール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でも、特に、樹脂成分の溶融粘度を効率的に下げることができるという観点から、5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナンおよびこの誘導体が好ましい。
前記活性剤は、樹脂成分に対して0.01〜50重量%程度であるのが好ましく、0.1〜30重量%程度であるのがより好ましい。かかる範囲内とすることにより、樹脂成分が熱分解する温度を低下させるのに十分な量の活性種を活性剤から発生させることができるため、活性エネルギー線の照射により、樹脂成分が熱分解する温度をより確実に低下させることができる。その結果、活性エネルギー線の照射後における加熱により、基材が支持基材から容易に脱離される。
このような活性剤の添加により、活性エネルギー線を照射することで、酸または塩基のような活性種が発生し、この活性種の作用によって、樹脂成分の主鎖にその熱分解温度が低下する構造が形成され、その結果、樹脂成分の熱分解する温度が低下すると推察される。
ここで、樹脂成分としてポリカーボネート系樹脂であるポリプロピレンカーボネート樹脂を使用し、活性剤として光酸発生剤を使用した場合の熱分解温度が低下するメカニズムについて説明する。下記式(1Z)で示すように、先ず、前記光酸発生剤由来のHが、ポリプロピレンカーボネート樹脂のカルボニル酸素をプロトン化し、さらに極性遷移状態を転移させ不安定な互変異性中間体[A]および[B]を生じる。次に、中間体[A]は、アセトンおよびCOとして断片化する熱切断が起こるため、熱分解温度が低下する。また、中間体[B]は炭酸プロピレンを生成し、炭酸プロピレンはCOおよびプロピレンオキシドとして断片化する熱閉環構造を形成するため、熱分解温度が低下する。
Figure 2012129323
(増感剤)
また、仮固定剤は、前記活性剤とともに、特定の波長の活性エネルギー線に対する活性剤の反応性を発現あるいは増大させる機能を有する成分である増感剤を含んでいても良い。
増感剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ベンツピレン、フルオランテン、ルブレン、ピレン、キサントン、インダンスレン、チオキサンテン−9−オン、2‐イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4‐プロポキシチオキサントン、およびこれらの混合物等が挙げられる。
このような増感剤の含有量は、前述した光酸発生剤等の活性剤および光ラジカル開始剤の総量100重量部に対して、100重量部以下であるのが好ましく、20重量部以下であるのがより好ましい。
以上のような樹脂組成物には、さらに、以下に示すような他の成分が含まれていてもよい。
(酸化防止剤)
すなわち、樹脂組成物(仮固定剤)は、酸化防止剤を含んでいてもよい。
この酸化防止剤は、樹脂組成物(仮固定剤)中における酸の発生や、自然酸化を防止する機能を有している。
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、Ciba Fine Chemicals社製、「Ciba IRGANOX(登録商標) 1076」および「Ciba IRGAFOS(登録商標) 168」が好適に用いられる。
また、他の酸化防止剤としては、例えば、「Ciba Irganox 129」、「Ciba Irganox 1330」、「Ciba Irganox 1010」、「Ciba Cyanox(登録商標) 1790」、「Ciba Irganox 3114、Ciba Irganox 3125」等を用いることもできる。
酸化防止剤の含有量は、上述した樹脂成分100重量部に対して、0.1〜10重量部であるのが好ましく、0.5〜5重量部であるのがより好ましい。
(添加剤)
また、樹脂組成物(仮固定剤)は、必要により酸捕捉剤、アクリル系、シリコーン系、フッ素系、ビニル系等のレベリング剤、シランカップリング剤、希釈剤等の添加剤等を含んでも良い。
シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
樹脂組成物(仮固定剤)がシランカップリング剤を含むことにより、基材と支持基材との密着性の向上を図ることができる。
また、希釈剤としては、特に限定されないが、例えば、シクロヘキセンオキサイドやα−ピネンオキサイド等のシクロエーテル化合物、[メチレンビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビスオキシランなどの芳香族シクロエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどのシクロアリファティックビニルエーテル化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
樹脂組成物(仮固定剤)が希釈剤を含むことにより、仮固定剤の流動性を向上させることができ、後述する犠牲層形成工程において、仮固定剤の支持基材に対する濡れ性を向上させることが可能となる。
(溶剤)
また、樹脂組成物(仮固定剤)は、溶媒を含有していても良い。
樹脂組成物を、溶媒を含む構成とすることで、樹脂組成物の粘度等の調整が容易に行え得る。
溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、メシチレン、デカリン、ミネラルスピリット類等の炭化水素類、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジグライム等のアルコール/エーテル類、炭酸エチレン、酢酸エチル、酢酸N−ブチル、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等のエステル/ラクトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド/ラクタム類が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これにより、仮固定剤の粘度を調整することが容易となり、支持基材に仮固定剤で構成される犠牲層(薄膜)の形成が容易となる。
前記溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物(仮固定剤)の全量の5〜98重量%であることが好ましく、10〜95重量%であることがより好ましい。
<半導体装置の製造方法>
上述したような仮固定剤が、例えば、半導体装置の製造方法に適用される。
すなわち、半導体装置の製造方法における、半導体ウエハの加工に、仮固定剤を用いた本発明の基材の加工方法が適用される。
以下、この本発明の基材の加工方法の実施形態の一例について説明する。
この半導体ウエハ(基材)の加工には、上述した仮固定剤を、半導体ウエハおよび支持基材のうちの少なくとも一方に供給したのち乾燥させて犠牲層(薄膜)を形成する第1の工程と、犠牲層を介して、半導体ウエハと支持基材とを貼り合わせる第2の工程と、半導体ウエハの支持基材と反対側の面を加工する第3の工程と、犠牲層に活性エネルギー線を照射する第4の工程と、犠牲層を加熱して前記樹脂成分を熱分解させることで、半導体ウエハを支持基材から脱離させる第5の工程とを有する。かかる構成の半導体ウエハの加工方法において、本発明では、第4の工程における、活性エネルギー線の照射量をE[J/cm]とし、犠牲層の平均厚さをM[cm]とし、さらに、第5の工程における、犠牲層を加熱する温度をT[℃]とし、犠牲層を加熱する時間をt[分]としたとき、これらが下記式1〜下記式3の関係を満足するよう設定される。
log(T・t)≦−10−4・(E/M)+5.7 ・・・ 式1
log(T・t)≧−10−4・(E/M)+3.8 ・・・ 式2
3.3×10−5≦E/M≦8.0×10 ・・・ 式3
図1は、本発明の基材の加工方法が適用された、半導体ウエハを加工する加工工程を説明するための縦断面図、図2は、活性エネルギー線の照射量と、薄膜の平均厚さと、薄膜を加熱する温度と、薄膜を加熱する時間との関係を示したグラフである。なお、以下の説明では、図1中、上側を「上」、下側を「下」とする。
以下、これら各工程について順次説明する。なお、以下では、半導体ウエハおよび支持基材のうちの支持基材に対して犠牲層を選択的に形成する場合を一例に説明する。
(犠牲層形成工程)
まず、支持基材1を用意し、図1(a)に示すように、この支持基材(基材)1上に、上述した仮固定剤を用いて犠牲層2を形成する(第1の工程)。
この犠牲層2は、仮固定剤を支持基材1上に供給した後加熱して乾燥させることで容易に形成することができる。
ここで、成膜される犠牲層2のTMA(Thermomechanical Analysis)軟化点は、特に限定されないが、200℃未満であるのが好ましく、50〜180℃程度であるのがより好ましい。これにより、次工程(貼り合わせ工程)において、加熱した際にその少なくとも表面を溶融状態とすることができる。
なお、TMA軟化点とは、熱機械測定装置(TMA)により測定されるものであり、測定対象物を一定の昇温速度で、一定の荷重を掛けながら昇温し、測定対象物の位相を観測することにより求められる。本明細書では、犠牲層2の位相が変化し始める温度をもってTMA軟化点と定義することとし、具体的には、TMA軟化点は、例えば、熱機械測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製、「Q400EM」)を用いて、測定温度範囲25〜250℃とし、昇温速度を5℃/minとした際に、10gの荷重を1mmφの石英ガラスピン(針)にかけた時に位相が変化し始める温度を測定することで求めることができる。
また、仮固定剤を支持基材1上に供給する方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、スプレー法、印刷法、フィルム転写法、スリットコート法、スキャン塗布法等の各種塗布法を用いることができる。これらの中でも、特に、スピンコート法が好ましく用いられる。スピンコート法によれば、より均一で平坦な犠牲層2を容易に形成することができる。
スピンコート法を用いる場合、仮固定剤として、その粘度(25℃)が500〜100,000mPa・sのものを用いるのが好ましく、1,000〜50,000mPa・s程度のものを用いるのがより好ましい。
なお、粘度(25℃)は、E型粘度計(東機産業製、粘度計TVE−22型)で、コーン温度25℃、3分後の値を測定値とすることができる。
さらに、かかる仮固定剤を供給する支持基材1の回転数を300〜4,000rpm程度に設定するのが好ましく、500〜3,500rpm程度に設定するのがより好ましい。
スピンコート法を用いる際に、これらを満足する条件で犠牲層2を成膜することにより、得られる犠牲層2の平均厚さを50〜100μm程度の厚さのものとすることができる。さらに、このような厚さの犠牲層2をほぼ均一な厚さで成膜することが可能となる。
さらに、仮固定剤の粘度(25℃)をA[mPa・s]とし、支持基材1の回転数をB[rpm]としたとき、A/Bは、0.13〜330であるのが好ましく、0.5〜100であるのがより好ましい。これにより、平均厚さ5×10−4〜3×10−2cmの犠牲層2を特に均一で平坦な厚さで成膜することができる。
なお、支持基材1としては、基材3を支持し得る程度の強度を有するものであれば、特に限定されないが、光透過性を有するものであるのが好ましい。これにより、仮固定剤を、活性エネルギー線の照射により、熱分解する温度が低下するものとした場合に、支持基材1側から活性エネルギー線を透過させて、犠牲層2に活性エネルギー線を確実に照射することができるようになる。
光透過性を有する支持基材1としては、例えば、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリカーボネートのような樹脂材料等を主材料として構成される基板が挙げられる。
(貼り合わせ工程)
次に、図1(b)に示すように、支持基材1上の犠牲層2が設けられた面上に、半導体ウエハ(基材)3をその機能面31が犠牲層2側になるように載置し、この状態で、熱圧着することにより、支持基材1に犠牲層2を介して半導体ウエハ3を貼り合わせる(第2の工程)。
すなわち、犠牲層2を介して、半導体ウエハ3と支持基材1とを、機能面31を支持基材1側にして貼り合わせる。
この熱圧着による貼り合わせは、例えば、真空プレス機、ウエハボンダー等の装置を用いて容易に行うことができる。
ここで、犠牲層2を介在させた状態で、半導体ウエハ3と支持基材1とが互いに近づく方向に加圧する際の圧力は、特に限定されないが、0.01〜3MPa程度であるのが好ましく、0.05〜2MPa程度であるのがより好ましい。
また、この際、犠牲層2を加熱する温度は、特に限定されないが、100〜300℃程度であるのが好ましく、120〜250℃程度であるのがより好ましい。
さらに、加圧および加熱する時間は、特に限定されないが、0.1〜10分程度であるのが好ましく、0.5〜10分程度であるのがより好ましい。
かかる条件で犠牲層2を機能面31に熱圧着することにより、犠牲層2の少なくとも表面が溶融した状態で、機能面31に接触することとなる。ここで、半導体ウエハ3の機能面31には、導電性材料で構成される配線やバンプ等が形成されていることから、機能面31は凹凸面で構成される。このように機能面31が凹凸面で構成されるが、犠牲層2の少なくとも溶融した状態となっているため、犠牲層2が機能面31に接触した際には、その凹凸形状に追従して犠牲層2が機能面31に埋入することとなるため、半導体ウエハ3と支持基材1とが一定の間隔を維持した状態で、犠牲層2を介して半導体ウエハ3と支持基材1とが接合される。
なお、犠牲層2のTMA軟化点が前記犠牲層形成工程で説明した範囲内のものである場合に、上述した加圧条件および温度条件で犠牲層2を機能面31に熱圧着することで、犠牲層2を介した半導体ウエハ3と支持基材1との接合をより優れた精度で行うことが可能となる。
また、機能面31における凹凸は、バンプのように嵩高いものが形成されていたとしても、通常、50μm未満の高低差のものとなっている。したがって、本発明によれば、前記犠牲層形成工程において、その平均膜厚が5×10−4〜3×10−2cm程度の犠牲層2が成膜されており、かかる凹凸面で構成される機能面31に、犠牲層2を埋入させることができるため、犠牲層2を介して半導体ウエハ3と支持基材1とを一定の離間距離に保つことができる。
(加工工程)
次に、犠牲層2を介して支持基材1上に固定された半導体ウエハ3の機能面31と反対側の面(裏面)を加工する(第3の工程)。
この半導体ウエハ3の加工は、特に限定されず、例えば、図1(c)に示すような半導体ウエハ3の裏面の研削・研磨の他、半導体ウエハ3へのビアホールの形成、ストレスリリースのための半導体ウエハ3の裏面のエッチング、リソグラフィー、さらには半導体ウエハ3の裏面への薄膜のコート、蒸着等が挙げられる。
ここで、本実施形態では、前記犠牲層形成工程および前記貼り合わせ工程で説明したように、均一な膜厚で犠牲層2が形成され、かつ、凹凸面で構成される機能面31に対してその凹凸形状に追従するようにして犠牲層2が接合している。これにより、導体ウエハ3と支持基材1とが一定の間隔を維持した状態で、犠牲層2を介して半導体ウエハ3が支持基材1に接合される。そのため、例えば、不均一な膜厚の犠牲層を介して半導体ウエハ3が支持基材1に接合されている場合に、機能面31と反対側の面の研削・研磨を行うと、犠牲層2の不均一な膜厚に起因して、半導体ウエハ3の厚さにバラツキが生じるおそれがあるが、上記のように、半導体ウエハ3と支持基材1との間の離間距離を一定の間隔を維持することで、厚さのバラツキの発生を確実に防止することができる。
(活性エネルギー線照射工程)
次に、図1(d)に示すように、犠牲層2に活性エネルギー線を照射する(第4の工程)。
これにより、犠牲層(樹脂組成物)2に、酸または塩基の存在により熱分解する温度が低下する樹脂成分と、仮固定剤への活性エネルギー線の照射により酸または塩基を発生する活性剤とが含まれることから、仮固定剤(樹脂組成物)中に含まれる活性剤にエネルギーが付与されると、活性剤から酸または塩基のような活性種が発生するため、この活性種の作用により、樹脂成分の熱分解する温度が低下する。
したがって、次工程(脱離工程)における犠牲層2の加熱に先立って、犠牲層2に活性エネルギー線を照射する構成とすることで、犠牲層2を加熱する際の加熱温度や加熱時間等を低くしたり短くすることができるため、この加熱をより緩和な条件で行うことができる。
なお、本発明では、この活性エネルギー線照射の条件が、適切な範囲内に設定されているが、この点については、後に詳述する。
(脱離工程)
次いで、図1(e)に示すように、犠牲層2を加熱して樹脂成分を熱分解させて低分子化させることにより、犠牲層2を溶融または気化させた後、半導体ウエハ3を支持基材1から脱離させる(第5の工程)。
ここで、本明細書中において、脱離とは、半導体ウエハ3を支持基材1から剥離する操作を意味し、犠牲層2が溶融状態となる場合や気化する場合に関わらず、例えば、この操作は、支持基材1の表面に対して垂直方向に半導体ウエハ3を脱離させる方法や、支持基材1の表面に対して水平方向にスライドさせて半導体ウエハ3を脱離させる方法や、図1(f)に示すように、半導体ウエハ3の一端側から半導体ウエハ3を支持基材1から浮かせることで脱離させる方法等が挙げられる。
なお、前記加熱工程を経ることで、犠牲層2が気化している場合には、半導体ウエハ3と支持基材1との間から犠牲層2が除去されているため、支持基材1からの半導体ウエハ3の脱離をより容易に行うことができる。
なお、本発明では、犠牲層2を加熱する温度は、前記工程(活性エネルギー線照射工程)で説明した活性エネルギー線の照射量に応じて、適宜設定されるが、この点については、後に詳述する。
(洗浄工程)
次に、前記脱離工程において、犠牲層2を加熱することで犠牲層2が溶融状態となる場合や、気化した犠牲層2の一部が残存している場合には、必要に応じて、半導体ウエハ3の機能面31に残存する犠牲層2を洗浄する。
すなわち、機能面31に残留した犠牲層2の残留物を除去する。
この残留物の除去方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、プラズマ処理、薬液浸漬処理、研磨処理、加熱処理等が挙げられる。
なお、本実施形態では、犠牲層形成工程において、犠牲層2を支持基材1に形成する構成としたが、かかる場合に限定されず、支持基材1および半導体ウエハ3の双方に犠牲層2を形成する構成としてもよいし、支持基材1への犠牲層2の形成を省略して半導体ウエハ3に選択的に犠牲層2を形成する構成としてもよい。
以上のようにして、半導体ウエハ3の裏面が加工されるが、本発明では、脱離工程において、比較的緩和な条件であっても、半導体ウエハ3を支持基材1から容易に脱離させるためには、活性エネルギー線照射工程における、犠牲層2に対する活性エネルギー線の照射条件が、適切な範囲内に設定されていることが求められる。
かかる点に、本発明者は着目し、検討を重ねた結果、活性エネルギー線照射工程における、活性エネルギー線の照射量をE[J/cm]とし、犠牲層2の平均厚さをM[cm]とし、さらに、脱離工程における、犠牲層2を加熱する温度をT[℃]とし、犠牲層2を加熱する時間をt[分]としたとき、これらが下記式1〜下記式3の関係を満足するよう設定することで、半導体ウエハ3を支持基材1から容易に脱離させ得ることを見出した。
log(T・t)≦−10−4・(E/M)+5.7 ・・・ 式1
log(T・t)≧−10−4・(E/M)+3.8 ・・・ 式2
3.3×10−5≦E/M≦8.0×10 ・・・ 式3
かかる関係を満足させることにより、活性エネルギー線が照射された犠牲層2に含まれる活性剤から活性種が適切な量で発生し、かつ、この活性種の作用によって樹脂成分が熱分解する温度を的確に低下させることができる。そして、このように熱分解する温度が低下している樹脂成分に対して、適切な加熱条件(温度および時間)で加熱して、樹脂成分を溶融または気化させることにより、半導体ウエハ3の変質・劣化を伴うことなく、半導体ウエハ3を支持基材1から容易に脱離させることができる。
ここで、前記式1〜前記式3なる関係を満足させることで、半導体ウエハ3を支持基材1から容易に脱離させることができるようになるのは、以下のような本発明者の検討結果によるものである。
すなわち、活性エネルギー線の照射量E、犠牲層2の平均厚さM、犠牲層2を加熱する温度Tおよび犠牲層2を加熱する時間tの関係を検討した。その結果、T・tとE/Mとの関係が、半導体ウエハ3を支持基材1から脱離し得るか否かの境界を決定する要素であることが判ってきた。そして、本発明者は、さらなる検討を行った結果、log(T・t)をY座標、E/MをX座標としたとき、これらが一次関数の関係となっていることが明らかとなったことから、半導体ウエハ3を支持基材1から脱離し得るか否かの境界線を、最小二乗法を用いて求めたところ、下記式4の関係となっていることが判った。すなわち、下記式4は、図2中の■印のような位置となっているときには、半導体ウエハ3を支持基材1から脱離させることができず、図2中の◆印のような位置となっているときには、半導体ウエハ3を支持基材1から脱離させることができる脱離可能境界線であることが判った。
log(T・t)=−10−4・(E/M)+3.8 ・・・ 式4
したがって、式2を満足するように、活性エネルギー線の照射量E、犠牲層2の平均厚さM、犠牲層2を加熱する温度Tおよび犠牲層2を加熱する時間tを設定すれば、半導体ウエハ3を支持基材1から脱離させることができるが、Y座標の値すなわちlog(T・t)が大きくなり過ぎると、加熱の条件が過酷となり、半導体ウエハ3が変質・劣化する恐れがあるため、この点が回避される境界線についてさらに検討したところ、下記式5がその境界線であることが判った。これに基づいて、式1を満足することにより、半導体ウエハ3の変質・劣化を的確に防止または抑制し得ることを見出した。
log(T・t)=−10−4・(E/M)+5.7 ・・・ 式5
さらに、X座標(E/M)すなわち活性エネルギー線の照射量E、犠牲層2の平均厚さMの適切な範囲について検討したところ、式3を満足することで、犠牲層2中に十分量の活性種を発生させることができ、かつ、加工工程において半導体ウエハ3と支持基材1とを接合する固定剤としての機能を犠牲層2に発揮させ得ることが判った。
よって、上記式(1)〜上記式(3)を満足させること、すなわち、図2中の斜線を引いた領域に位置するように、活性エネルギー線の照射量E、犠牲層2の平均厚さM、犠牲層2を加熱する温度Tおよび犠牲層2を加熱する時間tをそれぞれ設定することにより、半導体ウエハ3を支持基材1から容易に脱離させ得ることを、本発明者は見出し、本発明を完成するに至った。
なお、活性エネルギー線の照射量Eは、上記式(1)〜上記式(3)を満足するように設定されていれば良いが、0.001〜20J/cm程度であるのが好ましく、0.1〜10J/cm程度であるのがより好ましい。これにより、より適切な量の活性種を犠牲層2中に発生させることができるようになる。
また、犠牲層2の厚さMは、5×10−4〜3×10−2cm程度であるのが好ましく、1×10−3〜1×10−2cm程度であるのがより好ましい。これにより、加工工程において、半導体ウエハ3と支持基材1とを接合する固定剤としての機能を犠牲層2に好適に発揮させ得るとともに、かかる犠牲層2を介して半導体ウエハ3と支持基材1との離間距離をより確実に一定の大きさに保つことができる。
さらに、犠牲層2を加熱する条件、すなわち、加熱する温度Tおよび加熱する時間tは、それぞれ、60〜400℃程度および1.67×10−3〜60分程度であるのが好ましく、100〜300℃程度および1.0×10−2〜10分程度であるのがより好ましい。犠牲層2の加熱条件をかかる範囲内に設定することで、半導体ウエハ3の変質・劣化をより的確に抑制または防止することができる。
なお、本実施形態では、支持基材1に犠牲層2を選択的に形成することとしたが、かかる場合に限定されず、半導体ウエハ3に選択的に形成するようにしてもよいし、支持基材1および半導体ウエハ3の双方に形成するようにしてもよい。ただし、本実施形態のように、支持基材1に選択的に形成する構成とすることで、犠牲層2の形成のための時間と手間の簡略化が図られ、さらに、支持基材1の犠牲層2を形成する面を平坦面で構成し得ることから、犠牲層2を確実に均一な膜厚を有するものとし得るという効果も得られる。
また、本実施形態では、基材として半導体ウエハ3を用いた場合を一例に説明したが、かかる場合に限らず、例えば、配線基板および回路基板等を用いることもできる。
以上、本発明の基材の加工方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
たとえば、本発明の基材の加工方法に用いられる仮固定剤に含まれる各構成材料は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
また、本発明の基材の加工方法には、必要に応じて任意の工程が追加されてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[実施例1]
<ポリカーボネートの合成>
イソソルビド102.01g(0.698モル)、炭酸ジフェニル149.53g(0.698モル)、炭酸セシウム0.0023g(6.98×10−6モル)をそれぞれ秤量し、その後、これらを反応容器に入れた。
反応の第1工程として、窒素雰囲気下で、120℃に加熱した加熱槽に反応容器を浸し、攪拌し、原料を溶解させ、2時間攪拌を続けた。
次に、反応の第2工程として、反応容器内を10kPaに減圧し、120℃で1時間攪拌を続けた。
次に、反応の第3工程として、反応容器内を0.5kPa以下に減圧し、120℃で1.5時間攪拌を続けた。
次に、反応の第4工程として、反応容器内を0.5kPa以下に減圧したまま、約30分かけて加熱槽の温度を180℃に昇温した後、180℃で1.5時間攪拌を続けた。
なお、前記反応の第2〜4工程で生じたフェノールは反応容器外へ留去した。
そして、反応容器内の圧力を常圧に戻した後、γ−ブチロラクトン1200mLを加え、生成物を溶解させた。
次に、イソプロパノール/水=9/1(v/v)の混合溶液12.0Lを攪拌させた状態で、生成物を溶解した溶液を滴下した。
次に、析出した沈殿を吸引濾過で回収し、回収した沈殿をイソプロパノール/水=9/1(v/v)の混合溶液4.0Lで洗浄した後、吸引濾過で回収した。
回収した沈殿を真空乾燥機で80℃/18時間乾燥することにより、上記化学式(2A)で表わされるイソソルビド型ポリカーボネートの粉末123.15gを得た。
<仮固定剤の調製>
得られたイソソルビド型ポリカーボネート100.0g、活性剤(光酸発生剤)としてGSID26−1(BASFジャパン社製)2.0gをγ−ブチロラクトン198.0gに溶解し、樹脂成分濃度33重量%の仮固定剤を調製した。
<ウエハ接合サンプル作製>
上記で調製した仮固定剤をスピンコート法で200mmφのガラスウエハ上に塗布し、大気中で120℃×5分間、220℃×5分間の条件でソフトベークし、厚み50μmの仮固定剤層(薄膜)を得た。その後、仮固定剤層上に8インチのベアシリコンウエハを設置し、サブストレート・ボンダー(型番SB−8e、ズース・マイクロテック社製)を用い、仮固定剤を介して半導体ウエハとガラスとを固定した(雰囲気:10−2mbar、温度:220℃、荷重:10kN、時間:5分)。
<ウエハ剥離試験>
上記で作成した仮固定剤を使用したガラスウエハとシリコンウエハの積層体を、ガラス側から200mj/cm(i線換算)の条件でi線を照射し、さらに、上下240℃の熱板ではさみ、真空吸着させた後、半導体ウエハを1分間かけてスライドさせることにより、ガラスから脱離することができた。また、シリコンウエハおよびガラス上の残渣は、γ−ブチロラクトンに揺動させながら、5分間浸漬することにより除去することができた。
[実施例2]
<ウエハ剥離試験>
実施例1で得られたガラスウエハとシリコンウエハの積層体を、ガラス側から200mj/cm(i線換算)の条件でi線を照射し、さらに、上下230℃の熱板ではさみ、真空吸着させた後、シリコンウエハを9分間かけてスライドさせることにより、ガラスから脱離することができた。また、半導体ウエハおよびガラス上の残渣は、γ−ブチロラクトンに揺動させながら、5分間浸漬することにより除去することができた。
[実施例3]
<ポリカーボネートの合成>
1,3−シクロヘキサンジオール30.43g(0.262モル)、endo,endo−2,3−ノルボルナンジメタノール23.02g(0.147モル)、炭酸ジフェニル84.63g(0.395モル)、炭酸リチウム0.0163g(0.0021モル)を反応容器に入れた。反応の第1工程として、窒素雰囲気下で、120℃に加熱した加熱槽に反応容器を浸し、攪拌し、原料を溶解させ、2時間攪拌を続けた。反応の第2工程として、反応容器内を10kPaに減圧し、120℃で1時間攪拌を続けた。反応の第3工程として、反応容器内を0.5kPa以下に減圧し、120℃で1.5時間攪拌を続けた。反応の第4工程として、反応容器内を0.5kPa以下に減圧したまま、約30分かけて加熱槽の温度を180℃に昇温した後、180℃で1時間攪拌を続けた。反応の第2〜4工程で生じたフェノールは反応容器外へ留去した。
反応容器内の圧力を常圧に戻した後、テトラヒドロフラン600mlを加え、生成物を溶解させた。イソプロパノール/水=9/1(v/v)の混合溶液6.0Lを攪拌させた状態で、生成物を溶解した溶液を滴下した。析出した沈殿を吸引濾過で回収し、回収した沈殿をイソプロパノール/水=9/1(v/v)の混合溶液3.0Lで洗浄した後、吸引濾過で回収した。
回収した沈殿を真空乾燥機で60℃/18時間乾燥し、ポリカーボネートの粉末49.27gを得た。
<仮固定材の調整>
得られた樹脂100.0g、活性剤(光酸発生剤)としてGSID26−1(BASFジャパン社製)2.0gをγ−ブチロラクトン198.0gに溶解し、樹脂成分濃度33重量%の仮固定剤を調製した。
<ウエハ接合サンプル作成>
上記で調製した仮固定剤をスピンコート法で200mmφのガラスウエハ上に塗布し、大気中で120℃×5分間、220℃×5分間の条件でソフトベークし、厚み15μmの仮固定剤層を得た。その後、仮固定剤層上に8インチのベアシリコンウエハを設置し、サブストレート・ボンダー(型番SB−8e、ズース・マイクロテック社製)を用い、仮固定剤を介して半導体ウエハとガラスとを固定した(雰囲気:10−2mbar、温度:220℃、荷重:10kN、時間:5分)。
<ウエハ剥離試験>
上記で作成した仮固定剤を使用したガラスウエハとシリコンウエハの積層体を、ガラス側から1140mj/cm(i線換算)の条件でi線を照射し、さらに、上下130℃の熱板ではさみ、真空吸着させた後、半導体ウエハを6.5分間かけてスライドさせることにより、ガラスから脱離することができた。また、シリコンウエハおよびガラス上の残渣は、γ−ブチロラクトンに揺動させながら、5分間浸漬することにより除去することができた。
[実施例4]
<仮固定材の調整>
ポリプロピレンカーボネート QPAC40(EMPOWER MATERIALS社製)100.0g、活性剤(光酸発生剤)のRhodorsil Photoinitiator2074(ローディアジャパン(株)社製Rhodorsil Photoinitiator2074)5g、増感剤の1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン(英Lambson社製SPEEDCURE CPTX(商品名))1.5gをγ−ブチロラクトン340.0gに溶解し、樹脂成分濃度22重量%の仮固定剤を調製した。
<ウエハ接合サンプル作成>
上記で調製した仮固定剤をスピンコート法で200mmφのガラスウエハ上に塗布し、大気中で120℃×5分間、220℃×5分間の条件でソフトベークし、厚み50μmの仮固定剤層を得た。その後、仮固定剤層上に8インチのベアシリコンウエハを設置し、サブストレート・ボンダー(型番SB−8e、ズース・マイクロテック社製)を用い、仮固定剤を介して半導体ウエハとガラスとを固定した(雰囲気:10−2mbar、温度:160℃、荷重:10kN、時間:5分)。
<ウエハ剥離試験>
上記で作成した仮固定剤を使用したガラスウエハとシリコンウエハの積層体を、ガラス側から1000mj/cm(i線換算)の条件でi線を照射し、さらに、上下140℃の熱板ではさみ、真空吸着させた後、半導体ウエハを1分間かけてスライドさせることにより、ガラスから脱離することができた。また、シリコンウエハおよびガラス上の残渣は、γ−ブチロラクトンに揺動させながら、5分間浸漬することにより除去することができた。
[比較例1]
<ウエハ接合サンプル作成>
実施例4で調製した仮固定剤をスピンコート法で200mmφのガラスウエハ上に塗布し、大気中で120℃×5分間、220℃×5分間の条件でソフトベークし、厚み15μmの仮固定剤層を得た。その後、仮固定剤層上に8インチのベアシリコンウエハを設置し、サブストレート・ボンダー(型番SB−8e、ズース・マイクロテック社製)を用い、仮固定剤を介して半導体ウエハとガラスとを固定した(雰囲気:10−2mbar、温度:160℃、荷重:10kN、時間:5分)。
<ウエハ剥離試験>
上記で作成した仮固定剤を使用したガラスウエハとシリコンウエハの積層体を、ガラス側から1140mj/cm(i線換算)の条件でi線を照射し、さらに、上下100℃の熱板ではさみ、真空吸着させた後、半導体ウエハを20秒間かけてスライドしようとしたが、スライド時の負荷オーバーでガラスから脱離することができなかった。
[まとめ]
以下に、実施例1〜4、比較例1の評価結果を表1に示す。
Figure 2012129323
表1に示したように、各実施例では、活性エネルギー線の照射量E、仮固定剤層の平均厚さM、仮固定剤層を加熱する温度Tおよび仮固定剤層を加熱する時間tの関係が上記式1〜式3の関係を満足することに起因して、ガラスウエハから半導体ウエハを容易に脱離させることができた。
これに対して、比較例1では、上記のパラメーターが上記式1〜式3の関係を満足しなかったため、ガラスウエハからの半導体ウエハの脱離を行うことができない結果となった。
1 支持基材
2 犠牲層
3 半導体ウエハ
31 機能面

Claims (9)

  1. 加熱により熱分解することで溶融または気化する樹脂成分を含む樹脂組成物で構成される仮固定剤を基材および支持基材のうちの少なくとも一方に供給したのち乾燥させて薄膜を形成する第1の工程と、
    前記薄膜を介して、前記基材と前記支持基材とを貼り合わせる第2の工程と、
    前記基材の前記支持基材と反対側の面を加工する第3の工程と、
    前記薄膜に活性エネルギー線を照射する第4の工程と、
    前記薄膜を加熱して前記樹脂成分を熱分解させることで、前記基材を前記支持基材から脱離させる第5の工程とを有し、
    前記第4の工程における、前記活性エネルギー線の照射量をE[J/cm]とし、前記薄膜の平均厚さをM[cm]とし、さらに、前記第5の工程における、前記薄膜を加熱する温度をT[℃]とし、前記薄膜を加熱する時間をt[分]としたとき、これらが下記式1〜下記式3の関係を満足するよう設定されることを特徴とする基材の加工方法。
    log(T・t)≦−10−4・(E/M)+5.7 ・・・ 式1
    log(T・t)≧−10−4・(E/M)+3.8 ・・・ 式2
    3.3×10−5≦E/M≦8.0×10 ・・・ 式3
  2. 前記活性エネルギー線の照射量Eは、0.001〜20J/cmである請求項1に記載の基材の加工方法。
  3. 前記薄膜の厚さMは、5×10−4〜3×10−2cmである請求項1または2に記載の基材の加工方法。
  4. 前記薄膜を加熱する温度Tは、60〜400℃である請求項1ないし3のいずれかに記載の基材の加工方法。
  5. 前記薄膜を加熱する時間tは、1.67×10−3〜60分である請求項1ないし4のいずれかに記載の基材の加工方法。
  6. 前記第4の工程における前記薄膜への活性エネルギー線の照射により、前記第5の工程において、前記樹脂成分が熱分解する温度が低下する請求項1ないし5のいずれかに記載の基材の加工方法。
  7. 前記樹脂成分は、酸または塩基の存在下において前記熱分解する温度が低下するものであり、前記樹脂組成物は、さらに前記活性エネルギー線の照射により酸または塩基を発生する活性剤を含有する請求項6に記載の基材の加工方法。
  8. 前記活性剤は、前記樹脂組成物中において、前記樹脂成分に対して0.01〜50重量%含まれる請求項7に記載の基材の加工方法。
  9. 前記第1の工程において、前記基材および前記支持基材のうちの前記支持基材に対して選択的に前記仮固定剤を供給して前記薄膜を形成する請求項1ないし8のいずれかに記載の基材の加工方法。
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