JP2010097816A - リチウム二次電池用正極合剤ペースト - Google Patents

リチウム二次電池用正極合剤ペースト Download PDF

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Abstract

【課題】リチウム二次電池用正極合剤ペーストにおいて、正極活物質の導電性を阻害せずに分散安定化を図るとともに、電池材料粉体とバインダー成分の結着力を向上させ、ひいてはこれを用いて作製される電池の電池性能を向上させること。
【解決手段】前記課題は、塩基性官能基を有する樹脂と、正極活物質と、を含んでなるリチウム二次電池用正極合剤ペーストにより解決される。更に、バインダー成分、及び導電助剤を含んでなる前記ペーストにより解決される。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウム二次電池を構成する正極を作製するために使用する正極合剤ペースト及びその製造方法に関する。
又、本発明は、大電流での放電特性あるいは充電特性、サイクル特性、及び電極合剤の導電性に優れ、電極集電体と電極合剤との接触抵抗が小さい電極を具備するリチウム二次電池に関する。
近年、デジタルカメラや携帯電話のような小型携帯型電子機器が広く用いられるようになってきた。これらの電子機器には、容積を最小限にし、かつ重量を軽くすることが常に求められてきており、搭載される電池においても、小型、軽量かつ大容量の電池の実現が求められている。又、自動車搭載用等の大型二次電池においても、従来の鉛蓄電池に代えて、大型の非水電解質二次電池の実現が望まれている。
そのような要求に応えるため、リチウム二次電池の開発が活発に行われている。リチウム二次電池の電極としては、リチウムイオンを含む正極活物質、導電助剤、及び有機バインダー等からなる電極合剤を金属箔の集電体の表面に固着させた正極、及び、リチウムイオンの脱挿入可能な負極活物質、導電助剤、及び有機バインダー等からなる電極合剤を金属箔の集電体の表面に固着させた負極が使用されている。
一般的に、正極活物質としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、及びニッケル酸リチウム等のリチウム遷移金属複合酸化物が用いられているが、これらは電子伝導性が低く、単独での使用では十分な電池性能が得られない。そこで、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック)等の炭素材料を導電助剤として添加することで導電性を改善し、正極の内部抵抗を低減することが試みられている。
又、より少ないカーボンブラック量で効率的に内部抵抗を低減させるために、電極内で正極活物質と導電助剤の炭素材料の両者が、より細かいレベルで均一に混合されていることが求められる。
とりわけ電極の内部抵抗を低減することは、大電流での放電を可能とすることや、充放電の効率を向上させる上で非常に重要となっている。
しかしながら、親水性の高い無機成分である正極活物質と、疎水性の高いカーボンブラック等の炭素材料は、粒子表面の物性が大きく異なるため、そのままでは正極合剤ペースト中に均一に分散・混合させることは困難となり、正極活物質及び導電助剤である炭素材料の性能を最大限に生せず、電池性能としての高い向上が期待できない。又、正極合剤中の正極活物質と導電助剤の分散が不十分であると、部分的凝集に起因して電極板上に抵抗分布が生じ、電池として使用した際に電流が集中し、部分的な発熱及び劣化が促進される等の不具合が生ずることがある。
又、金属箔等の集電体上に正極合剤層を形成する場合、多数回充放電を繰り返すと、集電体と正極合剤層の界面や、正極合剤内部における正極活物質と導電助剤界面の密着性が悪化し、電池性能が低下する問題がある。これは、充放電におけるリチウムイオンのドープ、脱ドープにより正極活物質及び正極合剤層が膨張、収縮を繰り返すために、正極合剤層と集電体界面及び、正極活物質と導電助剤界面に局部的なせん断応力が発生し界面の密着性が悪化するためと考えられている。そしてこの場合も、正極活物質と導電助剤の分散が不十分であると、密着低下が著しくなる。これは、粗大な凝集粒子が存在すると、応力が緩和されにくくなるためであると考えられる。
リチウム二次電池においては、活物質と導電助剤である炭素材料の分散が重要なポイントの一つである。特許文献1、特許文献2には、活物質及びカーボンブラックを溶剤に分散する際に、分散剤として界面活性剤を用いる例が記載されている。しかしながら、界面活性剤は粒子表面への吸着力が弱いため、良好な分散安定性を得るには界面活性剤の添加量を多くしなければならず、この結果、含有可能な活物質の量が少なくなり、電池容量が低下してしまう。又、界面活性剤の粒子への吸着が不十分であると、活物質や炭素材料が凝集してしまう。又、一般的な界面活性剤では、水溶液中での分散と比較して、有機溶剤中での分散効果が著しく低い。
又、特許文献3には、負極活物質とカーボンブラックを水に分散する際に、分散樹脂を添加することで分散状態を改善する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、活物質及びカーボンブラックの分散性は向上するものの、分子量の大きな分散樹脂が粒子表面を被覆してしまうことから、導電ネットワークが阻害されやすく電極の抵抗が増大し、結果的に活物質及びカーボンブラックの分散向上による効果を相殺してしまう場合がある。
更に、電極材料の分散性の向上と併せて、充放電の効率を向上させる上で重要な要素としては、電極の電解液に対する濡れ性の向上が挙げられる。電極反応は、電極材料表面と電解液との接触界面で起こるため、電解液が電極内部まで浸透し電極材料が良く濡れることが重要となる。電極反応を促進させる方法としては、微細な活物質や導電助剤を用いて電極の表面積を増大させる方法が検討されているが、電解液に対する濡れが悪いため、実際の接触面積が大きくなりにくく、電池性能の向上が難しいといった問題がある。
電極の濡れ性を改善する方法として、特許文献4には、負極活物質、炭素粉末に高級脂肪酸アルカリ塩の様な界面活性剤を吸着させ、濡れ性を改善する方法が開示されているが、上述したように界面活性剤は特に非水系での分散性能が十分でないことが多く、均一な電極塗膜が得られない。これらの例では、いずれも電極材料の分散性を含めたトータルでの性能としては不十分であった。
特開昭63−236258号公報 特開平8−190912号公報 特表2006−516795号公報 特開平6−60877号公報
本発明は、リチウム二次電池用正極合剤ペーストにおいて、正極活物質の導電性を阻害せずに分散安定化を図ること、正極活物質の電解液に対する濡れ性を向上させること、並びに、本発明の電池用組成物を用いて作製される電池の電池性能を向上させることを目的とする。
前記課題は、塩基性官能基を有する樹脂と、正極活物質と、を含んでなるリチウム二次電池用正極合剤ペーストにより解決される。
又、本発明は、
塩基性官能基を有する樹脂が、
片末端領域に2個のヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のヒドロキシル基と、ジイソシアネート(B1)のイソシアネート基と、を反応してなる両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)のイソシアネート基と、
少なくともポリアミン(D1)を含むアミン化合物の一級及び/又は二級アミノ基と、
を反応してなるアミン価が1〜100mgKOH/gである重合体(G1)、
並びに、
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の(メタ)アクリロイル基と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B2)の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応してなるアミノ基を有する重合体(C2)の一級及び/又は二級アミノ基と、
2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基と、
を反応してなるアミン価が5〜100mgKOH/gである重合体(G2)、
からなる群から選ばれる1種類以上の塩基性官能基を有する樹脂である前記リチウム二次電池用正極合剤ペーストに関する。
又、本発明は、重合体(G1)を構成する片末端領域に2個のヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)が、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)の存在下に、エチレン性不飽和単量体(a12)をラジカル重合してなる前記リチウム二次電池用正極合剤ペーストに関する。
又、本発明は、重合体(G2)を構成する片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)が、ビニル重合体、又はポリエステルを含んでなる前記リチウム二次電池用正極合剤ペーストに関する。
又、正極活物質が、リン酸鉄リチウムである前記リチウム二次電池用正極合剤ペーストに関する。
本発明は、更に、塩基性官能基を有する樹脂以外のバインダー成分を含んでなる前記リチウム二次電池用正極合剤ペーストに関する。
又、バインダー成分が、分子内にフッ素原子を有する高分子化合物である前記リチウム二次電池用正極合剤ペーストに関する。
本発明は、更に、導電助剤を含んでなる前記リチウム二次電池用正極合剤ペーストに関する。
又、本発明は正極活物質と、塩基性官能基を有する樹脂と、を溶剤に分散するリチウム二次電池用正極合剤ペーストの製造方法に関する。
又、本発明は、正極活物質と、塩基性官能基を有する樹脂と、導電助剤と、バインダー成分と、を溶剤に共分散するリチウム二次電池用正極合剤ペーストの製造方法に関する。
又、本発明は、正極活物質と、塩基性官能基を有する樹脂と、を溶剤に分散してなる分散体に、導電助剤と、バインダー成分と、を混合するリチウム二次電池用正極合剤ペーストの製造方法に関する。
又、塩基性官能基を有する樹脂で、あらかじめ処理された正極活物質を使用する前記リチウム二次電池用正極合剤ペーストの製造方法に関する。
又、本発明は、集電体上に正極合剤層を有する正極と、集電体上に負極合剤層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備するリチウム二次電池であって、正極合剤層が、前記リチウム二次電池用正極合剤ペーストを使用して形成されてなるリチウム二次電池に関する。
前記製造方法により製造されたリチウム二次電池用正極合剤ペーストを使用して形成されてなるリチウム二次電池に関する。
本発明の好ましい実施態様によれば、正極活物質の導電性を阻害することなく、分散安定性に優れたリチウム二次電池用正極合剤ペーストを得ることができる。更に、本発明の好ましい実施態様に係るリチウム二次電池用正極合剤ペーストを、リチウム二次電池の正極に使用することにより、正極活物質が、正極合剤中に一次粒子レベルで均一に混合され、集電体と正極合剤との密着性、正極活物質と導電助剤との密着性、並びに正極合剤の電解液に対する濡れ性が、改善されて、正極の内部抵抗の低減を促すと共に、充放電の効率を向上することができ、電池性能を総合的に向上させることができる。
本発明におけるリチウム二次電池用正極合剤ペーストは、塩基性官能基を有する樹脂、正極活物質と、を含んでなることを特徴とするが、以下にその詳細を説明する。
なお、本願では、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、及び「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、及び「アクリロイルオキシ及び/又はメタクリロイルオキシ」を表すものとする。
≪正極活物質≫
本発明のリチウム二次電池用正極合剤ペーストに使用する正極活物質としては特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な、金属酸化物、及び金属硫化物等の金属化合物を使用することができる。例えば、Ti、Fe、Co、Ni、及びMn等の遷移金属の酸化物、前記遷移金属とリチウムとの複合酸化物、並びに、前記遷移金属の硫化物等の無機化合物等が挙げられる。
具体的には、
MnO、V25、V613、及びTiO2等の遷移金属酸化物粉末;
層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、及びスピネル構造のマンガン酸リチウム等のリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末;
オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料;並びに、
TiS2、及びFeS等の遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。
又、上記の無機化合物は2種類以上混合して用いてもよい。
用いる正極活物質の比表面積は、値が大きいほど、正極活物質粒子どうしの接触点が増えるため、正極電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、0.1m2/g以上、150m2/g以下、好ましくは1m2/g以上、120m2/g以下、更に好ましくは1.5m2/g以上、100m2/g以下のものを使用することが望ましい。比表面積が0.1m2/gを下回る正極活物質を用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、150m2/gを超える正極活物質は、製造が容易でない場合がある。
又、用いる正極活物質の粒径は、一次粒子径で0.01〜500μmが好ましく、特に、0.05〜100μmが好ましい。但し、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡等で測定された粒子径を平均したものである。
正極活物質のなかでも、オリビン構造のリン酸鉄リチウムは、コスト面や安全面の観点で好ましい材料である。
単なるオリビン構造のリン酸鉄リチウムでは、コバルト酸リチウム等と比較して電子伝導性が非常に低いため優れた電池特性が得られにくい。そこで、電子伝導性を向上させるために、炭素材料等の導電性物質を粒子に担持させたり、一次粒子径を小さくする方法が取られている。
炭素材料担持リン酸鉄リチウムは、特に限定されるものではないが、特開2003−292308号公報、及び特開2003−292309号公報等を参考に製造することができる。
例えば、リン酸第一鉄八水和物(Fe3(PO42・8H2O)とリン酸リチウム(Li3PO4)とを、リチウムと鉄の元素比率が1:1となるように混合し、これに導電性物質である炭素材料(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)、又は焼成することで分解し炭素材料となる有機化合物を、最終品で炭素材料成分が、0.1〜50重量%となるように更に加え、乾式粉砕機等で粉砕混合処理を行ったあと不活性ガス雰囲気下、600℃で数時間焼成を行い、得られた焼成物を粉砕することにより得られる。
正極活物質の中でも、炭素材料を担持したリン酸鉄リチウムの場合、粒子表面の疎水性の高いため、塩基性官能基を有する樹脂の吸着作用効果が向上し、より分散効果も発揮すると考えられる。
すなわち塩基性官能基を有する樹脂を一部溶解させ、その溶液中に正極活物質を添加、混合することで、これらの正極活物質への作用(例えば吸着)が進み、正極活物質表面に作用(例えば吸着)した塩基性官能基を有する樹脂の極性により、正極活物質表面の溶剤又は水に対する濡れが促進され、正極活物質の凝集が解しやすくなるものと考えられる。
更に、上記塩基性官能基を有する樹脂を介して、正極活物質とバインダー成分であるフッ素原子含有高分子化合物等との密着性も向上するため、電極集電体若しくは電極合剤中の活物質との密着性も向上すると考えられる。
≪塩基性官能基を有する樹脂≫
本発明の電池用組成物は、塩基性官能基を有する樹脂を含有している。また好ましい塩基性官能基としては、1〜3級のアミノ基である。塩基性官能基を有する樹脂は、分散安定性の観点から、以下に説明する、重合体(G1)、及び重合体(G2)からなる群から選ばれる1種類以上を使用するのが好ましい。
上記の塩基性官能基を有する樹脂は、電極活物質、及び導電助剤としての炭素材料どうしを結着する、又は、電極活物質、及び導電助剤としての炭素材料を集電極に結着するためのバインダーとしても機能するが、一方で分散樹脂として炭素材料の分散安定性及び、電極合剤層の密着性を向上させることができる。
すなわち、炭素材料表面と塩基性官能基を有する樹脂の塩基性官能基とが相互作用(例えば分子間力による作用)することにより、塩基性官能基を有する樹脂の炭素材料表面への吸着が促進され、炭素材料と樹脂成分との密着性が向上すると共に、樹脂の立体障害による反発により、炭素材料の分散安定性が向上するものと考えられる。又、炭素材料とバインダー成分である分子内にフッ素原子を含む高分子化合物との密着性も向上するため、使用するバインダー量を減らすことも期待できる。
<塩基性官能基を有する重合体(G1)>
本発明で用いることのできる塩基性官能基を有する重合体(G1)は、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のヒドロキシル基と、及びジイソシアネート(B1)のイソシアネート基とを反応してなる両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)のイソシアネート基と、並びに、ポリアミン(D1)及びモノアミン(E1)の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応させることによって合成される。
ビニル重合体(A)由来の側鎖にグラフトされたビニル重合体部位は、広範囲にわたる顔料担体及び分散媒との親和性に優れ、溶剤親和性部位として機能し、主鎖のウレア結合部位が、酸性官能基を有する有機色素誘導体、又は酸性官能基を有するトリアジン誘導体との相互作用能力に優れ、誘導体を介して酸性に偏った顔料表面への吸着基として機能する。さらに、より吸着性を向上させるために、主鎖にアミノ基を導入することも可能である。
塩基性官能基を有する重合体(G1)の各構成要素について説明する。
《片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)》
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)(以下、ビニル重合体(A1)と略記する場合がある。)は、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)の存在下に、エチレン性不飽和単量体(a12)をラジカル重合することで得ることができる。ビニル重合体(A1)のビニル重合体部位は、バインダー樹脂等の顔料担体及び分散媒である溶剤に親和性の高い部位であり、下記一般式(4)で表される。
一般式(1):
Figure 2010097816
[一般式(1)中、
501は、化合物(a11)からヒドロキシル基とチオール基とを除く残基であり、
502は、エチレン性不飽和単量体(a12)から二重結合部位及びR503を除く残基であり、
503は、水素原子又はメチル基であり、
501は、2以上の整数、好ましくは3〜200の整数である。
ここで,R501がビニル重合体(A1)でいう、末端領域となる。]
〈分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)〉
分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)(以下、化合物(a11)と表記する場合がある。)としては、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物であれば特に限定されず、例えば、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
目的とする片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)の分子量にあわせて、化合物(a11)とエチレン性不飽和単量体(a12)と、任意に重合開始剤とを混合して加熱することでビニル重合体(A1)を得ることができる。化合物(a11)は、エチレン性不飽和単量体(a12)100重量部に対して、0.5〜30重量部用いて、塊状重合又は溶液重合により得ることが好ましく、より好ましくは1〜20重量部、更に好ましくは2〜15重量部、特に好ましくは2〜10重量部である。反応温度は、40〜150℃、好ましくは50〜110℃である。0.5重量部未満であると、ビニル重合体部位の分子量が高すぎて、顔料担体及び溶剤に対する親和性部位として、その絶対量が増えてしまい、分散性の効果自体が低下する場合があり、30重量%を超えると、ビニル重合体部の分子量が低すぎて、顔料担体及び溶剤に対する親和性部位として、その立体反発の効果がなくなると共に、顔料の凝集を抑えることが困難になる。
〈重合開始剤〉
重合の際、エチレン性不飽和単量体(a12)100重量部に対して、任意に0.001〜5重量部の重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、アゾ系化合物及び有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、及び2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、及びジアセチルパーオキシド等があげられる。これらの重合開始剤は、単独で、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
〈重合溶剤〉
溶液重合の場合には、重合溶媒として、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、及びジエチレングリコールジエチルエーテル等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いても良いが、最終用途で使用する溶剤であることが好ましい。
〈エチレン性不飽和単量体(a12)〉
エチレン性不飽和単量体(a12)としては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及びフェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート類;
テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、及びオキセタン(メタ)アクリレート等の複素環式(メタ)アクリレート類;
メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及びエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、及びアクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類;
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;並びに、
(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類等があげられる。
又、上記アクリル系単量体と併用できる単量体として、
スチレン、及びα−メチルスチレン等のスチレン類;
エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;並びに、
酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類等が挙げられる。
又、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を併用することもできる。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、及びクロトン酸等から1種又は2種以上を選択することができる。
〈重合条件等〉
本発明においては、上記に例示したエチレン性不飽和単量体(a12)の中でも、分散性及び耐性の観点から、メチルメタクリレートが好ましく用いられ、顔料担体及び分散媒との親和性の観点から、メチルメタクリレートとブチルメタクリレート又はt−ブチルメタクリレートとを併用することがより好ましい。エチレン性不飽和単量体(a2)として、メチルメタクリレートを使用し、ブチルメタクリレートを使用しない場合には、エチレン性不飽和単量体(a12)の合計100重量%中、メチルメタクリレートの割合が30〜100重量%であることが好ましく、50〜100重量%であることがより好ましい。又、エチレン性不飽和単量体(a12)として、メチルメタクリレートとブチルメタクリレート又はt−ブチルメタクリレートとを併用する場合には、両者の合計が、エチレン性不飽和単量体(a12)の30〜100重量%を占めることが好ましく、50〜100重量%を占めることがより好ましい。エチレン性不飽和単量体(a12)として、メチルメタクリレートを使用した場合、さらには、メチルメタクリレートとブチルメタクリレート又はt−ブチルメタクリレートとを併用した場合には、分散性がより良好となる。メチルメタクリレートとブチルメタクリレート又はt−ブチルメタクリレートの共重合部位は、分散性等の基本物性を保ちつつ、バインダー樹脂や分散溶媒との親和性もよく、汎用性が高い。
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)の、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)としては、500〜30,000であることが好ましく、1,000〜15,000であることがより好ましく、1,000〜8,000であることが特に好ましい。該重量平均分子量が500未満では、溶媒親和部による立体反発の効果が少なくなるとともに、活物質の凝集を防ぐことが困難となり、分散安定性が不十分となる場合がある。又30,000を超えると、溶媒親和部の絶対量が増えてしまい、分散性の効果自体が低下する場合がある。さらに、分散体の粘度が高くなる場合がある。
該重量平均分子量が500〜30,000であれば、活物質の凝集を防ぐことにより、活物質分散体の粘度上昇を抑えることに有利である。
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のガラス転移温度(Tg)は、塗膜の耐性が向上するという点から、50〜200℃が好ましく、50〜120℃がより好ましい。
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のTgは、下記のFoxの式で算出した値を用いた。なお、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)由来の骨格もビニル重合体(A1)中に存在するが、ガラス転移温度を計算する以下の計算から除くものとする。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
W1からWnは、使用している各単量体の重量分率を示し、Tg1からTgnは、各単量体から得られるそれぞれのホモポリマーのガラス転移温度(単位は絶対温度「K」)を示す。
算出に使用する主なホモポリマーのTgを下記に例示する。
メチルメタクリレート:105℃(378K)
ブチルメタクリレート:20℃(293K)
t−ブチルメタクリレート:107℃(380K)
ラウリルメタクリレート:−65℃(208K)
2−エチルヘキシルメタクリレート:−10℃(263K)
シクロヘキシルメタクリレート:66℃(339K)
ブチルアクリレート:−45℃(228K)
エチルアクリレート:−20℃(253K)
ベンジルメタクリレート:54℃(327K)
スチレン:100℃(373K)
《ジイソシアネート(B1)》
塩基性官能基を有する重合体(G1)の構成要素であるジイソシアネート(B1)としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、芳香族含有ジイソシアネート(b11)、脂肪族含有ジイソシアネート(b12)、芳香脂肪族含有ジイソシアネート(b13)、及び脂環族含有ジイソシアネート(b14)等が挙げられる。
芳香族含有ジイソシアネート(b11)としては、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン等が挙げられる。
脂肪族含有ジイソシアネート(b12)としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
芳香脂肪族含有ジイソシアネート(b13)としては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
脂環族含有ジイソシアネート(b14)としては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、及びメチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート等を挙げることができる。
以上、列挙したジイソシアネート(B1)は、必ずしもこれらに限定されるものではなく、2種類以上を併用して使用することもできる。
本発明に用いられるジイソシアネート(B)としては、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート、IPDI)が難黄変性であるために好ましい。
《ポリアミン(D1)》
塩基性官能基を有する重合体(G1)の構成要素であるポリアミン(D1)としては、少なくとも2つの一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であり、イソシアネート基と反応しウレア結合を生成するために用いられる。このようなアミンとしてジアミン(d11)が挙げられる。
二つの一級アミノ基有するジアミン(d11)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
エチレンジアミン、プロピレンジアミン[別名:1,2−ジアミノプロパン又は1,2−プロパンジアミン]、トリメチレンジアミン[別名:1,3−ジアミノプロパン又は1,3−プロパンジアミン]、テトラメチレンジアミン[別名:1,4−ジアミノブタン]、2−メチル−1,3−プロパンジアミン、ペンタメチレンジアミン[別名:1,5−ジアミノペンタン]、ヘキサメチレンジアミン[別名:1,6−ジアミノヘキサン]、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、及びトリレンジアミン等の脂肪族ジアミン;
イソホロンジアミン、及びジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の脂環式ジアミン;並びに、
フェニレンジアミン、及びキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等を挙げることができる。
又、二つの二級アミノ基を有するジアミン(d11)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、及びN,N’−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン等を挙げることができる。
又、一級及び二級アミノ基を有するジアミン(d11)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
N−メチルエチレンジアミン[別名:メチルアミノエチルアミン]、N−エチルエチレンジアミン[別名:エチルアミノエチルアミン]、N−メチル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−メチル−1,3−ジアミノプロパン又はメチルアミノプロピルアミン]、N,2−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン[別名:イソプロピルアミノエチルアミン]、N−イソプロピル−1,3−ジアミノプロパン[別名:N−イソプロピル−1,3−プロパンジアミン又はイソプロピルアミノプロピルアミン]、及びN−ラウリル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−ラウリル−1,3−ジアミノプロパン又はラウリルアミノプロピルアミン]等挙げることができる。
本発明のポリアミンは少なくとも2つの一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であり、一級及び/又は二級アミンがイソシアネート基と反応してウレア基を生成する、このウレア基が活物質吸着部位になるが、ポリアミン(D1)が、両末端に2つの一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有する化合物である場合には、酸性顔料に対しての吸着性が上がるため、特に好ましい。
このようなポリアミン(D1)としては、以下の様な両末端に2つの一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有するポリアミン(d12)が挙げられる。
ポリアミン(d12)としては、
メチルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン〕、ラウリルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)ラウリルアミン〕、イミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)アミン〕、N,N‘−ビスアミノプロピル−1,3−プロピレンジアミン、及びN,N‘−ビスアミノプロピル−1,4−ブチレンジアミン等を挙げることができ、
2つの1級アミノ基と1つの3級アミノ基を有するメチルイミノビスプロピルアミン、及びラウリルイミノビスプロピルアミンは、ジイソシアネートとの反応制御がし易く好ましい。
2つの1級アミノ基と1つの2級アミノ基を有するイミノビスプロピルアミンは、活物質への吸着性が良く好ましい。
又、本発明のポリアミン(D1)としては、2つ以上の一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体(d13)も使用することができる。
一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体(d13)としては、一級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、例えば、ビニルアミンやアリルアミンの単独重合体(いわゆるポリビニルアミンやポリアリルアミン)、あるいはそれらと他のエチレン性不飽和単量体との共重合体、及び、エチレンイミンの開環重合体や塩化エチレンとエチレンジアミンとの重縮合体やオキサゾリドン−2の開環重合体(いわゆるポリエチレンイミン)から選ばれることが好ましい。重合体中における一級及び/又は二級アミノ基の含有率としては、重合体を基準として、単量体単位で10〜100重量%が好ましく、20〜100重量%がより好ましい。含有率が10重量%以上であれば、活物質の凝集を防ぎ、粘度の上昇を抑えることに効果的である。
一級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマール酸等の不飽和カルボン酸;
スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、クロロメチルスチレン、インデン、及びビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル;
グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基を有する(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の三級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル;
(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n−ブチル(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、及びtert−オクチル(メタ)アクリルアミド等のアルキル(メタ)アクリルアミド;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の置換アルキル(メタ)アクリルアミド;
1,3−ブタジエン、及びイソプレン等のジエン化合物;
片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー、及び片末端メタクリロイル化ポリエチレングリコール等の重合性オリゴマー(マクロモノマー);並びに
シアン化ビニル等を挙げることができる。
一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)としては、300〜75,000であることが好ましく、300〜20,000であることがより好ましく、500〜5,000であることが特に好ましい。該重量平均分子量が300〜75,000であれば、活物質の凝集を防ぐことにより、活物質分散体の粘度上昇を抑えることに効果的である。
《モノアミン(E1)》
塩基性官能基を有する重合体(G1)の構成要素であるアミン化合物としては、ポリアミン(D1)の他に、さらにモノアミン(E1)も使用することができる。モノアミン(E1)としては、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基を1個有するモノアミン化合物であり、モノアミン(E1)は、ジイソシアネート(B1)とポリアミン(D1)の反応において高分子量化しすぎるのを抑えるため、反応停止剤として使用される。モノアミン(E1)は、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基以外の他の極性官能基を有しても良い。このような極性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、ニトロキシル基等が挙げられる。
モノアミン(E1)としては、従来公知のものが使用でき、具体的には、
アミノメタン、アミノエタン、1−アミノプロパン、2−アミノプロパン、1−アミノブタン、2−アミノブタン、1−アミノペンタン、2−アミノペンタン、3−アミノペンタン、イソアミルアミン、N−エチルイソアミルアミン、1−アミノヘキサン、1−アミノヘプタン、2−アミノヘプタン、2−オクチルアミン、1−アミノノナン、1−アミノデカン、1−アミノドデカン、1−アミノトリデカン、1−アミノヘキサデカン、ステアリルアミン、アミノシクロプロパン、アミノシクロブタン、アミノシクロペンタン、アミノシクロヘキサン、アミノシクロドデカン、1−アミノ−2−エチルヘキサン、1−アミノ−2−メチルプロパン、2−アミノ−2−メチルプロパン、3−アミノ−1−プロペン、3−アミノメチルヘプタン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−イソブトキシプロピルアミン、2−エチルヘキシロキシプロピルアミン、3−デシロキシプロピルアミン、3−ラウリロキシプロピルアミン、3−ミリスチロキシプロピルアミン、2−アミノメチルテトラヒドロフラン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリニックアシッド、イソニペコチックアシッド、メチルイソニペコテート、エチルイソニペコテート、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンブチリックアシッド塩酸塩、4−ピペリジノール、ピロリジン、3−アミノピロリジン、3−ピロリジノール、インドリン、アニリン、N−ブチルアニリン、o−アミノトルエン、m−アミノトルエン、p−アミノトルエン、o−ベンジルアニリン、p−ベンジルアニリン、1−アニリノナフタレン、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、5−アミノイソキノリン、o−アミノジフェニル、4−アミノジフェニルエーテル、β−アミノエチルベンゼン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、o−アミノアセトフェノン、m−アミノアセトフェノン、p−アミノアセトフェノン、ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、3−ベンジルアミノプロピオニックアシッドエチルエーテル、4−ベンジルピペリジン、α−フェニルエチルアミン、フェネシルアミン、p−メトキシフェネシルアミン、フルフリルアミン、p−アミノアゾベンゼン、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、アリルアミン、及びジフェニルアミン等が挙げられる。
中でも、剛直性のない脂肪族アミンで第二級アミノ基のみを有するモノアミン化合物は、分散性も良好であり好ましい。
第二級アミノ基のみを有する脂肪族モノアミン化合物としては、
ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジノール、ピロリジン、3−アミノピロリジン、及び3−ピロリジノール等が挙げられる。
又、三級アミノ基は、イソシアネート基と反応する活性水素を有していないため、一級又は二級アミノ基と、三級アミノ基とを有するジアミンは、モノアミン(E1)として使用することができ、本発明に分散剤の重合体末端に、活物質吸着能を向上させる効果がある三級アミノ基を導入することができる。
一級又は二級アミノ基と、三級アミノ基とを有するジアミンとしては、
N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、及びN,N,2,2−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン等の一級アミノ基と三級アミノ基とを有するジアミン;並びに、
N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン等の二級アミノ基と三級アミノ基とを有するジアミンを挙げることができる。
これらのモノアミン(E1)化合物は、一種類又は二種類以上混合して用いてもよい。なお、一級アミノ基とイソシアネート基が反応した後のウレア結合の活性水素は、反応性が低く、本発明の分散剤の重合条件では、それ以上イソシアネート基と反応し、分子量が大きくなることはない。
《ウレタンプレポリマー(C1)》
塩基性官能基を有する重合体(G1)の構成要素であるウレタンプレポリマー(C1)は、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のヒドロキシル基と、ジイソシアネート(B1)のイソシアネート基と、を反応して得られる。
例えば、ビニル重合体(A1)のモル数をα、ジイソシアネート(B1)のモル数をβとした場合、α/β=α/(α+1)の時、理論上、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが得られる。αを正の整数とすると、αが大きくなるほど分子量が高くなる。実際の構造制御については、詳しくは後述する。
〈合成触媒(F1)〉
ウレタンプレポリマー(C1)の合成時には、公知の触媒(F1)を使用することができ、例えば三級アミン系化合物、及び有機金属系化合物等を挙げることができる。
三級アミン系化合物としては、例えば、
トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、及びジアザビシクロウンデセン(DBU)等を挙げることができる。
有機金属系化合物としては錫系化合物、及び非錫系化合物を挙げることができる。
錫系化合物としては、例えば、
ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、及び2−エチルヘキサン酸錫等を挙げることができる。
非錫系化合物としては、例えば、
ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系、オレイン酸鉛;
2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、及びナフテン酸鉛等の鉛系;
2−エチルヘキサン酸鉄、及び鉄アセチルアセトネート等の鉄系;
安息香酸コバルト、及び2−エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系;
ナフテン酸亜鉛、及び2−エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系;並びに、
ナフテン酸ジルコニウム等のジルコニウム系を挙げることができる。
上記触媒の中で、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、及び2−エチルヘキサン酸錫等が反応性や衛生性の点で好ましい。
上記3級アミン系化合物、及び有機金属系化合物等の触媒は、場合によっては単独でも使用できるが、併用することもでる。
ウレタンプレポリマー(E)合成時に用いる有機金属化合物触媒は、後述のアミンとの更なる反応においても、該反応を著しく促進する。
〈合成溶剤〉
ウレタンプレポリマー(C1)の合成時には公知の溶剤が好適に使用される。溶剤の使用は反応制御を容易にする役割を果たす。
かかる目的で使用される溶剤としては、例えば、
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びジエチレングリコールジエチルエーテル等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。
ウレタンプレポリマー(C1)の溶解性、溶剤の沸点等、アミンの溶解性の点から特に酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、又はこれらの混合溶剤が好ましい。
又、溶剤を使用した場合のウレタンプレポリマー反応系内の濃度は、ウレタンプレポリマーの固形分濃度に換算して、反応制御の観点から、好ましくは30〜95重量%であり、粘度制御の観点から、さらに好ましくは40〜90重量%である。30重量%未満では、反応が遅くなり、未反応物が残ることがあるため好ましくない。95重量%を超えると、反応が部分的に急激に進む場合があり、分子量等のコントロールが難しくなるため好ましくない。
〈合成条件〉
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のヒドロキシル基とジイソシアネート(B1)のイソシアネート基とを反応させてウレタンプレポリマー(C1)をつくるウレタン化反応は、種々の方法が可能である。1)全量仕込みで反応する場合と、2)片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)及び必要に応じて、溶剤をフラスコに仕込み、ジイソシアネート(B1)を滴下した後必要に応じて触媒を添加する方法に大別されるが、反応を精密に制御する場合は2)が好ましい。ウレタンプレポリマー(C1)を得る反応の温度は120℃以下が好ましい。更に好ましくは50〜110℃である。110℃より高くなると反応速度の制御が困難になり、所定の分子量と構造を有するウレタンプレポリマーが得られなくなる。ウレタン化反応は、触媒の存在下、50〜110℃で1〜20時間行うのが好ましい。
片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)とジイソシアネート(B1)の配合比は、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のモル比率を整数αとした時、ジイソシアネート(B1)のモル比率がα+1で、理論上、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)が合成できる。αの最小が1なので、ビニル重合体(A1)に対するジイソシアネート(B1)の配合モル比率(α+1)/αは2以下となる。ジイソシアネートをさらに増やした場合、ウレタンプレポリマー(C1)と過剰のジイソシアネート(B)の混合物中のイソシアネート基すべてを、ポリアミン(D1)とモノアミン(E1)の一級及び/又は二級アミノ基と反応するように設計すれば過剰のジイソシアネート(B1)を本発明の分散剤分子の中に取り込むことが可能である。通常のウレタンプレポリマー(C1)を合成する場合、ポリオールを残さないために、次工程のポリアミンによる鎖延長を見込んで、過剰のポリイソシアネートを配合する場合が多いが、本発明の分散剤では、過剰なジイソシアネート(B1)由来の重合体の構成単位や過剰なジイソシアネート(B1)の加水分解物由来の不純物が、活物質分散性や経時安定性に悪影響を与えることが多い。
従って、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)に対するジイソシアネート(B1)の配合モル比は、ウレタンプレポリマー(C1)の生産性の観点から、1.01〜3.00が好ましく、最終合成物である分散剤の設計(活物質吸着部位と溶剤親和性部位のバランス)の観点から、1.30〜2.30がより好ましく、最終合成物である分散剤を使った活物質分散体の分散安定性の観点から、1.50〜2.00が最も好ましい。前記配合モル比が小さすぎると、最終製品である分散剤が高分子量になり、それを用いた活物質分散体、さらにそれを用いた正極合剤ペーストの粘度が高くなり実用上問題がある。又、前述通り、前記配合モル比が2.00より大きいと、ビニル重合体(A1)由来のビニル重合部を持たないジイソシアネート(B1)及びそれ由来のウレタン部位が増え、活物質分散性能に重大な悪影響を及ぼす。
《塩基性官能基を有する重合体(G1)の製造方法及び合成条件等》
本発明の組成物を構成する塩基性官能基を有する重合体(G1)は、
分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)の存在下、エチレン性不飽和単量体(a12)をラジカル重合してなる、片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)を製造する第一の工程と、
前記片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のヒドロキシル基とジイソシアネート(B1)のイソシアネート基とを反応してなる両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)を製造する第二の工程と、
両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)のイソシアネート基とポリアミン(D1)及びモノアミン(E2)の一級及び/又は二級アミノ基とを反応させる第三の工程と、により製造することができる。
塩基性官能基を有する重合体(G1)において、ウレタンプレポリマー(C1)、ポリアミン(D1)、及びモノアミン(E1)、からウレタンウレア樹脂、又は末端に一級又は二級のアミノ基を有するポリウレタンウレアを得るためのウレア反応は、
1)ウレタンプレポリマー(C1)溶液をフラスコに仕込み、ポリアミン(D1)、及びモノアミン(E1)を滴下する方法、
2)ポリアミン(D1)、及びモノアミン(E1)、及び必要に応じて溶剤からなる溶液をフラスコに仕込み、ウレタンプレポリマー(C1)溶液を滴下する方法、
に大別される。
安定した反応になる方で合成を行うが、反応に問題がなければ、操作が容易な1)の方法が好ましい。本発明のウレア反応の温度は、100℃以下が好ましい。更に好ましくは70℃以下である。70℃でも反応速度は大きく、制御できない場合は、50℃以下が更に好ましい。100℃より高くなると反応速度の制御が困難であり、所定の分子量と構造を有するウレタンウレア樹脂を得ることは難しい。
又、ウレタンプレポリマー(C1)、及びポリアミン(D1)、さらに必要に応じてモノアミン(E1)との配合比は、特に限定されず、用途と要求性能により任意に選択される。
反応の終点は、滴定に因るイソシアネート%測定、IR測定によるイソシアネートピークの消失により判断する。
塩基性官能基を有する重合体(G1)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは1,500〜50,000、特に好ましくは1,500〜20,000である。重量平均分子量が1,000未満であれば、活物質分散体の安定性が低下する場合があり、100,000を超えると樹脂間の相互作用が強くなり、活物質分散体の増粘が起きる場合がある。又、得られた重合体のアミン価は、1〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは2〜50mgKOH/g、さらに好ましくは3〜30mgKOH/gである。アミン価が1mgKOH/g未満であれば活物質と吸着する官能基が不足し、活物質分散に寄与することが困難になる場合があり、100mgKOH/gを超えると、活物質同士の凝集が起こり、粘度低下効果の不足や塗膜外観に不具合を生じさせる場合がある。
<塩基性官能基を有する重合体(G2)>
本発明で用いることのできる塩基性官能基を有する重合体(G2)は、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の(メタ)アクリロイル基と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を含むポリアミン(B2)の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応してなる、アミノ基を有する重合体(C2)の一級及び/又は二級アミノ基と、2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基と、を反応させることによって合成される。
すなわち、重合体(A2)由来の溶媒親和性部位と、ポリアミン(C2)の一級及び/又は二級アミノ基と、ポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基と、を反応してなる、アミノ基及びウレア結合部位を有する活物質吸着性部位を有する構造となっている。前記アミノ基及びウレア結合部位を有する活物質吸着部位が、活物質表面に対する活物質吸着性に優れ、分散安定化をはかることが可能である。
《片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)》
本発明における重合体(A)の重量平均分子量は500〜30,000が好ましく、これによって、立体反発効果に優れ、高い分散性、流動性、及び保存安定性を得ることが可能である。重合体(A)の重量平均分子量はさらに好ましくは2,000から20,000であり、最も好ましくは5,000から10,000である。500未満では、溶媒親和性ブロックによる立体反発効果が少なくなるため、好ましくない場合がある。また、30,000を超える場合は、分散体の粘度が高くなり好ましくない場合がある。
本発明における重合体(A)は、ポリエステル(A21)、又はビニル重合体(A22)であることが好ましい。これらは溶剤への親和性が良好であり、また、分子量を調整することが容易である。また、片末端領域の(メタ)アクリロイル基は、一級及び/又は二級アミノ基との反応制御の観点から、比較的低温で反応が進むアクリロイル基が好ましい。
<ポリエステル(A21)>
ポリエステル(A21)は、公知の方法で製造することができ、例えば、(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコールを開始剤としてラクトン及び/又はラクチドを開環重合することで容易に得ることができる。
[(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコール]
開環重合の開始剤として使用する(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコールとしては、特に限定はなく、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、及び2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる、ヒドロキシル基の反応性の観点から、4−ヒドロキシブチルアクリレート、及び2−ヒドロキシエチルアクリレートからなる群から選ばれる1種類以上を使用するのが好ましい。
[ラクトン及びラクチド]
ラクトンとしては、特に限定はなく、具体的にはβ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、及びアルキル置換されたε−カプロラクトン等が挙げられるが、開環重合性の観点から、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、及びアルキル置換されたε−カプロラクトンからなる群から選ばれる1種類以上を使用するのが好ましい。
本発明の製造方法において、ラクトンは、前記例示に限定されることなく用いることができ、また単独で用いても、2種類以上を併用して用いても構わない。
ラクチドとしては、下記一般式(2)で示されるものが好ましい(グリコリドを含む)。
一般式(2):
Figure 2010097816
〔一般式(2)中、
1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、又は、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝の炭素原子数1〜20のアルキル基であり、
3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝の炭素原子数1〜9の低級アルキル基である。〕
本発明の製造方法において、特に好適なラクチドは、ラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)及びグリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)である。
前記ラクトン及びラクチドは、単独で用いても、2種以上併用しても構わない。ラクトンとラクチドとでは、溶媒親和性の観点から、ラクトンを用いるのが好ましい。
開始剤1モルに対するラクトン及び/又はラクチドの重合モル数は、3〜60モルの範囲が好ましく、更には10〜40モルが好ましく、最も好ましくは15〜30モルである。3モル未満では、分子量が小さくなり、溶媒親和性部位として、十分機能しない。60モルを超えると、分子量が大きくなりすぎて、活物質の分散剤として使用した時に、活物質分散体の粘度が高くなり、問題を生ずる。
[開環重合触媒]
開環重合触媒としては、公知のものを制限なく使用することができるが、例えば、
テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムヨード、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、及びベンジルトリメチルアンモニウムヨード等の四級アンモニウム塩;
テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨード、テトラブチルホスホニウムヨード、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヨード、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、及びテトラフェニルホスホニウムヨード等の四級ホスホニウム塩;
トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;、
酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、及び安息香酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩;
ナトリウムアルコラート、及びカリウムアルコラート等のアルカリ金属アルコラート;
トリエチルアミン、及びトリフェニルアミン等の三級アミン類;
ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシド、及びジオクチル錫オキシド等の有機錫化合物;
アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等の有機アルミニウム化合物;
テトラ−n−ブチルチタネート、前記ダイマー、テトライソブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、及びジイソプロポキシ・ビス(トリエタノールアミネート)チタン等の有機チタネート化合物;並びに、
塩化亜鉛等の亜鉛化合物等が挙げられる。
開環重合触媒の使用量は、ラクトン及び/又はラクチド100重量%に対して、0.1ppm〜3000ppm、好ましくは1ppm〜1000ppmである。触媒量が3000ppmを超えると、樹脂の着色が激しくなる場合がある。逆に、触媒の使用量が0.1ppm未満ではラクトン及び/又はラクチドの開環重合速度が極めて遅くなるので好ましくない場合がある。
[合成条件]
ラクトン及び/又はラクチドの開環重合温度は、100℃〜220℃、好ましくは、110℃〜210℃の範囲で行う。反応温度が100℃未満では反応速度がきわめて遅い場合があり、220℃を超えるとラクトン及び/又はラクチドの付加反応以外の副反応、例えば、ラクトン付加体のラクトンモノマーへの解重合、環状のラクトンダイマーやトリマーの生成等が起こりやすい場合がある。
[ラジカル重合禁止剤]
(メタ)アクリロイル基を有する化合物を重合する際には、ラジカル重合禁止剤を添加し、乾燥空気流下で反応を行うことが好ましい。ラジカル重合禁止剤としては、公知のものを制限なく使用することができるが、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、及びフェノチアジン等が好ましい。これらを単独もしくは併用で、(メタ)アクリロイル基を有するアルコール100重量%に対して、0.01重量%〜6重量%、好ましくは、0.05重量%〜1.0重量%の範囲で用いる。
ポリエステル(A21)は、(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコールを開始剤としてラクトンを開環重合して得られた片末端にヒドロキシル基を有するポリエステルに、ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させることでも得ることができる。
[ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物]
ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、イソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。
又、ポリエステル(A21)は、(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコールを開始剤としてラクトンを開環重合して得られた片末端にヒドロキシル基を有するポリエステルに、二塩基酸無水物基を一個有する化合物を反応させて得られた、片末端にカルボキシル基を有するポリエステルに、更に、エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させ、更に、エポキシ基が開環して得られたヒドロキシル基と反応しうる基及び前記(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させることでも得ることができる。この場合、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(A21)が得られる。
[(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコール]
(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコールとしては、水酸基を一個有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。
例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、イソノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−ミリスチルアルコール、セチルアルコール、1−ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、及びオレイルアルコールなどの脂肪族モノアルコール;
ベンジルアルコール、フェノキシエチルアルコール、及びパラクミルフェノキシエチルアルコール等の芳香環含有モノアルコール;並びに、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、及びテトラジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。
[二塩基酸無水物基を一個有する化合物]
二塩基酸無水物基を一個有する化合物は、二塩基酸無水物基を一個有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。
例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロヘキセン1−2−ジカルボン酸無水物、ジシクロ[2,2,2]−オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、ナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物、アントラセン−1,2−ジ
カルボン酸無水物、及びアントラセン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。又、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基、複素環、芳香環、及びハロゲン等の置換基を有する前記ニ塩基酸無水物も挙げられる。
[エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物]
エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、グリシジルアクリレート、メチルグリシジルアクリレート、3,2−グリシドキシエチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート、3,4−エポキシブチルアクリレート、及び4,5−エポキシペンチルアクリレート等が挙げられる。
又、ポリエステル(A21)は、(メタ)アクリロイル基を有さないモノカルボン酸を開始剤としてラクトンを開環重合して得られた片末端にカルボキシル基を有するポリエステルに、更に、前記エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させ、更に、エポキシ基が開環して得られたヒドロキシル基と反応しうる、ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させることでも得ることができる。この場合、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(A21)が得られる。
[(メタ)アクリロイル基を有さないモノカルボン酸]
(メタ)アクリロイル基を有さないモノカルボン酸は、(メタ)アクリロイル基を有しない、カルボキシル基を有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。
例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸等が挙げられる。
<ビニル重合体(A22)>
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(A22)は、片末端領域に1個又は2個のヒドロキシル基を有するビニル重合体(a23)に、ヒドロキシル基と反応しうる基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a24)を反応させることで得ることができる。
片末端領域に1個又は2個のヒドロキシル基を有するビニル重合体(a23)(以下、ビニル重合体(a23)と略記する場合がある。)は、分子内に1個又は2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s)の存在下に、エチレン性不飽和単量体(a21)をラジカル重合することで得ることができる。分子内に1個又は2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s)のチオール基が連鎖移動剤として働き、S原子を介してビニル重合体(a23)が合成されるので、その分子量は、エチレン性不飽和単量体(a21)に対する前記化合物(s)の使用量によってビニル重合体(a23)の分子量を上記範囲に調整することが容易であり、その結果、溶剤への親和性も好適に調整することができる。
[分子内に1個又は2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s)]
分子内に1個又は2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s)としては、例えば、 1−メルカプトエタノール、及び2−メルカプトエタノール等の分子内に1個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s1);並びに、
1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の分子内に2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s2)が挙げられる。
本発明では、分子内に2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s2)であることが好ましく、さらに好ましくは3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)である。
分子内に2個のヒドロキシル基と1個のチオール基を有する化合物(s2)を用いることによって、最終的に得られる分散剤が、複数のアミノ基を有する活物質吸着部位と、複数の溶媒親和性部位と、を有する理想的な構造となる。
[エチレン性不飽和単量体(a21)]
エチレン性不飽和単量体(a21)としては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート類;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、及びテトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリロキシ変性ポリジメチルシロキサン(シリコーンマクロマー)類;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、及び3−メチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート類;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコールモノステアリルエーテル(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート類;
アクリル酸、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、及びクロトン酸等の不飽和カルボン酸類;
前記カルボン酸のカプロラクトン付加物(付加モル数1〜5)類;
2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及びω-カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート類;
スチレン、及びα−メチルスチレン等のスチレン類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリル酸ビニル、及び(メタ)アクリル酸アリル等のビニル類;
エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、
(メタ)アクリルアミド、及びN−ビニルホルムアミド等のアミノ基を有しないアミド類;並びに、
アミノ基を有しないアクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。
本発明においては、上記に例示したエチレン性不飽和単量体(a21)の中でも、下記一般式(3)で表わされるエチレン性不飽和単量体(a22)を使用することが好ましい。下記一般式(3)で表されるエチレン性不飽和単量体(a22)の使用量は、エチレン性不飽和単量体(a21)全体に対して20重量%〜100重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましい。一般式(3)で表わされる単量体を用いると、溶媒親和性が良くなり、活物質分散性が良好になる。20重量%未満では、溶媒親和性を向上させる効果が不十分である。
一般式(3):
Figure 2010097816
〔一般式(3)中、R5は、炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。〕
[化合物(s)の使用量]
前記化合物(s)を連鎖移動剤として、目的とするビニル重合体(a23)の分子量にあわせて、エチレン性不飽和単量体(a21)と、任意に重合開始剤とを混合して加熱することでビニル重合体(a23)を得ることができる。化合物(s)は、エチレン性不飽和単量体(a21)100重量部に対して、0.8〜30重量部を用い、塊状重合または溶液重合を行うのが好ましく、より好ましくは1.5〜15重量部、さらに好ましくは2〜9重量部、特に好ましくは5〜9重量部である。1重量部未満では、分子量が大きくなり、分散体の粘度が高くなり好ましくない場合がある。30重量部を超えると、分子量が小さくなり、溶媒親和性ブロックによる立体反発効果が少なくなるため、好ましくない場合がある。
反応温度は40〜150℃、好ましくは50〜110℃である。40℃未満では、十分に重合が進行せず、150℃を超えると、高分子量化が進む等、分子量のコントロールが困難になる。
[ラジカル重合開始剤]
ラジカル重合の際、エチレン性不飽和単量体(a21)100重量部に対して、任意に0.001〜5重量部の重合開始剤を使用することができる。
重合開始剤としては、例えば、
2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、及び2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等のアゾ系化合物および有機過酸化物;並びに、
過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、及びジアセチルパーオキシド等の有機過酸化物な等が挙げられ、これらの重合開始剤は、単独で、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
[ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a24)]
ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物a24)としては、イソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。
[重合溶剤]
ポリエステル(A21)及びビニル重合体(A22)は、無溶剤、又は、必要に応じて溶剤を使用して合成することができる。
溶液重合の場合には、重合溶媒として、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及びN−メチルピロリドン等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いても良い。重合反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま次の工程の溶剤として使用したり、製品の一部として使用することもできる。
《ポリアミン(B2)》
本発明のポリアミン(B2)は1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であり、一級及び/又は二級アミンが片末端領域に(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の(メタ)アクリロイル基に付加反応し、アミノ基を有する重合体(C2)を生成する。さらに、アミノ基を有する重合体(C2)の一級及び/又は二級アミンの内、一部又は全部をポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基と反応させてウレア基を生成する。すなわち、本発明の分散剤は片末端領域に存在するアミノ基及びウレア結合が顔料吸着部位になる。このようなポリアミン(B2)としてジアミン(b21)が挙げられる。また、ポリアミン(B2)が、両末端に2個の一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有する化合物である場合には、活物質に対しての吸着性が上がるため、特に好ましい。
2個の一級アミノ基を有するジアミン(b21)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
エチレンジアミン、プロピレンジアミン[別名:1,2−ジアミノプロパン又は1,2−プロパンジアミン]、トリメチレンジアミン[別名:1,3−ジアミノプロパン又は1,3−プロパンジアミン]、テトラメチレンジアミン[別名:1,4−ジアミノブタン]、2−メチル−1,3−プロパンジアミン、ペンタメチレンジアミン[別名:1,5−ジアミノペンタン]、ヘキサメチレンジアミン[別名:1,6−ジアミノヘキサン]、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、及びトリレンジアミン等の脂肪族ジアミン;
イソホロンジアミン、及びジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジアミン等の脂環式ジ
アミン;並びに、
フェニレンジアミン、及びキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等を挙げることができる。
又、2個の二級アミノ基を有するジアミン(b21)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、及びN,N'−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン等を挙げることができる。
又、一級及び二級アミノ基を有するジアミン(b21)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
N−メチルエチレンジアミン[別名:メチルアミノエチルアミン]、N−エチルエチレンジアミン[別名:エチルアミノエチルアミン]、N−メチル−1,3−プロパンジアミ
ン[別名:N−メチル−1,3−ジアミノプロパン又はメチルアミノプロピルアミン]、N,2−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン[別名:イソプロピルアミノエチルアミン]、N−イソプロピル−1,3−ジアミノプロパン[別名:N−イソプロピル−1,3−プロパンジアミン又はイソプロピルアミノプロピルアミン]、及びN−ラウリル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−ラウリル−1,3−ジアミノプロパン又はラウリルアミノプロピルアミン]等挙げることができる。
又、一級及び三級アミノ基を有するジアミン(b21)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
N,N−ジメチルエチレンジアミン[別名:ジメチルアミノエチルアミン]、N,N−ジエチルエチレンジアミン[別名:ジエチルアミノエチルアミン]、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン[別名:N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン又はジメチルアミノプロピルアミン]等挙げることができる。
両末端に2個の一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有するポリアミン(b22)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
メチルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン〕、ラウリルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)ラウリルアミン〕、イミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)アミン〕、N,N'−ビスアミノプロピル−1,3−プロピレンジアミン、及びN,N'−ビスアミノプロピル−1,4−ブチレンジアミン等を挙げることができ、
2個の一級アミノ基と1個の三級アミノ基を有するメチルイミノビスプロピルアミン、及びラウリルイミノビスプロピルアミンは、ジイソシアネートとの反応制御がし易く好ましい。
2個の一級アミノ基と1個の二級アミノ基を有するイミノビスプロピルアミンは、活物質への吸着性が良く好ましい。
又本発明のポリアミン(B2)としては、2個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体(b23)も使用することができる。
一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体(b23)としては、一級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、例えば、ビニルアミンやアリルアミンの単独重合体(いわゆるポリビニルアミンやポリアリルアミン)、あるいはそれらと他のエチレン性不飽和単量体との共重合体、及び、エチレンイミンの開環重合体や塩化エチレンとエチレンジアミンとの重縮合体やオキサゾリドン−2の開環重合体(いわゆるポリエチレンイミン)から選ばれることが好ましい。重合体中における一級及び/又は二級アミノ基の含有率としては、重合体を基準として、単量体単位で10〜100重量%が好ましく、20〜100重量%がより好ましい。含有率が10重量%以上であれば、活物質の凝集を防ぎ、粘度の上昇を抑えることに効果的である。
一級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマール酸等の不飽和カルボン酸;
スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、クロロメチルスチレン、インデン、及びビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル;
グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基を有する(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の三級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル;
(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n−ブチル(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、及びtert−オクチル(メタ)アクリルアミド等のアルキル(メタ)アクリルアミド;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の置換アルキル(メタ)アクリルアミド;
1,3−ブタジエン、及びイソプレン等のジエン化合物;
片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー、及び片末端メタクリロイル化ポリエチレングリコール等の重合性オリゴマー(マクロモノマー);並びに
シアン化ビニル等を挙げることができる。
一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)としては、300〜75,000であることが好ましく、300〜20,000であることがより好ましく、500〜5,000であることが特に好ましい。該重量平均分子量が300〜75,000であれば、活物質の凝集を防ぐことにより、活物質分散体の粘度上昇を抑えることに効果的である。
《モノアミン》
本発明の分散剤を構成するアミン化合物としては、ポリアミン(B2)の他に、さらにモノアミンも使用することができる。モノアミンとしては、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基を1個有するモノアミン化合物であり、モノアミンは、重合体(A2)とポリアミン(B)の反応において高分子量化しすぎるのを抑えるため、反応停止剤として使用される。モノアミンは、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基以外の他の極性官能基を有しても良い。このような極性官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、ニトロキシル基等が挙げられる。
モノアミンとしては、従来公知のものが使用でき、具体的には、
アミノメタン、アミノエタン、1−アミノプロパン、2−アミノプロパン、1−アミノブタン、2−アミノブタン、1−アミノペンタン、2−アミノペンタン、3−アミノペンタン、イソアミルアミン、N−エチルイソアミルアミン、1−アミノヘキサン、1−アミノヘプタン、2−アミノヘプタン、2−オクチルアミン、1−アミノノナン、1−アミノデカン、1−アミノドデカン、1−アミノトリデカン、1−アミノヘキサデカン、ステアリルアミン、アミノシクロプロパン、アミノシクロブタン、アミノシクロペンタン、アミノシクロヘキサン、アミノシクロドデカン、1−アミノ−2−エチルヘキサン、1−アミノ−2−メチルプロパン、2−アミノ−2−メチルプロパン、3−アミノ−1−プロペン、3−アミノメチルヘプタン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−イソブトキシプロピルアミン、2−エチルヘキシロキシプロピルアミン、3−デシロキシプロピルアミン、3−ラウリロキシプロピルアミン、3−ミリスチロキシプロピルアミン、2−アミノメチルテトラヒドロフラン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリニックアシッド、イソニペコチックアシッド、メチルイソニペコテート、エチルイソニペコテート、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンブチリックアシッド塩酸塩、4−ピペリジノール、ピロリジン、3−アミノピロリジン、3−ピロリジノール、インドリン、アニリン、N−ブチルアニリン、o−アミノトルエン、m−アミノトルエン、p−アミノトルエン、o−ベンジルアニリン、p−ベンジルアニリン、1−アニリノナフタレン、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、5−アミノイソキノリン、o−アミノジフェニル、4−アミノジフェニルエーテル、β−アミノエチルベンゼン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、o−アミノアセトフェノン、m−アミノアセトフェノン、p−アミノアセトフェノン、ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、3−ベンジルアミノプロピオニックアシッドエチルエーテル、4−ベンジルピペリジン、α−フェニルエチルアミン、フェネシルアミン、p−メトキシフェネシルアミン、フルフリルアミン、p−アミノアゾベンゼン、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、アリルアミン、及びジフェニルアミン等が挙げられる。
《アミノ基を有する重合体(C2)》
アミノ基を有する重合体(C2)は、下記一般式(8)に示すように、ポリアミン(B2)の一級又は二級のアミノ基が、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の(メタ)アクリロイル基に対して、付加反応することによって得られる。この反応は、一般にMichael付加反応と呼ばれている。重合体(A2)及びポリアミン(B2)の配合を調整することにより、イソシアネート基と反応しうる一級又は二級のアミノ基を有する構造にすることができる。
一般式(4):
Figure 2010097816
〔一般式(4)中、X1は、重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y1は、ポリアミン(B2)の内、一級及び二級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、R7は、水素原子、又はアルキル基である。〕
例えば、下記一般式(5)のように、片末端領域に1個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の分子1個に対し、一級アミノ基を2個有するジアミン(B2)の分子1個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基1個と二級アミノ基1個とを有する重合体(C2)の分子1個が得られる。
一般式(5):
Figure 2010097816
〔一般式(5)中、X1は、重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y2は、ポリアミン(B2)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基である。〕
又、例えば、下記一般式(6)のように、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の分子1個に対し、一級アミノ基1個と二級アミノ基1個を有するジアミン(B2)の分子2個を反応させた場合、理論上、二級アミノ基4個を有する重合体(C2)の分子1個が得られる。
一般式(6):
Figure 2010097816
〔一般式(6)中、X2は、重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y2は、ポリアミン(B2)の内、一級及び二級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、R8は、アルキル基である。〕
更に、例えば、下記一般式(7)のように、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の分子n個に対し、一級アミノ基2個を有するジアミン(B)の分子(n+1)個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基2個と二級アミノ基2n個とを有する重合体(C2)の分子1個が得られる。(nは、正の整数である。)
一般式(7):
Figure 2010097816
〔一般式(7)中、X2は、重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y2は、ポリアミン(B2)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、nは、正の整数である。〕
又、例えば、下記一般式(8)のように、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の分子n個に対し、二級アミノ基2個を有するジアミン(B2)の分子(n+1)個を反応させた場合、理論上、二級アミノ基2個と三級アミノ基2n個とを有する重合体(C2)の分子1個が得られる。(nは、正の整数である。)
一般式(8):
Figure 2010097816
〔一般式(8)中、X2は、重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y2は、ポリアミン(B2)の内、二級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、R8は、アルキル基であり、nは、正の整数である。〕
理論上としたのは、上記4例は、一級アミノ基が、二級アミノ基より反応性が高いため、必ず優先的に反応するとした場合であり、実際は、反応条件等により、一級アミノ基が残っていても、先に二級アミノ基が反応する場合もあるので、一部、予想とは異なる構造の重合体(C2)が得られる場合もあるが、上記付加反応は、ほぼ量論的に反応が進行するので、大部分が目的とする構造の重合体(C2)が得られ、その後の反応や、最終的な分散剤としての機能に問題はない。
〈合成条件〉
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B2)と、からアミノ基を有する重合体(C2)を得るためのMichael付加反応は、1)全量仕込みで反応する方法、2)ポリアミン(B2)及び必要に応じて溶剤からなる溶液をフラスコに仕込み、重合体(A2)溶液を滴下する方法に大別される。安定した反応になる方で合成を行うが、反応に問題がなければ、反応制御(分子設計制御)が容易な2)の方法が好ましい。
本発明のマイケル反応の温度は、70℃以下が好ましい。更に好ましくは60℃以下である。60℃でも反応速度は大きく、制御できない場合は、50℃以下が更に好ましい。70℃より高くなると反応速度の制御が困難であり、所定の分子量と構造を有する重合体(C2)を得ることは難しい。
又、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B2)の配合比は、特に限定されず、用途と要求性能により任意に選択される。反応の終点は、滴定に因るアミン%測定により判断する。
《アミノ基及びウレア結合を有する分散剤》
本発明の組成物を構成する塩基性官能基を有する重合体(G2)は、アミノ基及びウレア結合を有する分散剤であり、アミノ基を有する重合体(C2)の一級又は二級のアミノ基と、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基を反応して得られる。アミノ基を有する重合体(C2)の一級又は二級のアミノ基は、反応させるポリイソシアネートの量を調整することにより、一部又は全部がウレア結合を形成し、残りは分散剤中にアミノ基として存在する。
また、アミノ基を有する重合体(C2)は一級又は二級のアミノ基以外にも三級アミノ基を有している場合は、三級アミノ基はイソシアネート基と反応せずそのまま活物質吸着基として分散剤中に残る。
例えば、下記一般式(9)のように、一級アミノ基1個と二級アミノ基2個を有する重合体(C2)の分子2個に対し、ジイソシアネート(D2)の分子1個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基が、イソシアネート基と反応してウレア結合を形成し、二級アミノ基4個とウレア結合2個とを有する分散剤が得られる。下記一般式(9)中のW1及びW2が、ポリアミン(B2)及び/又は重合体(C2)由来の三級アミノ基を有する
場合、前記分散剤は、三級アミノ基も有する。
一般式(9):
Figure 2010097816
〔一般式(9)中、X1は、重合体(C2)の前駆体である重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、W1、及びW2は、重合体(C2)の前駆体であるポリアミン(B2)内、一級及び二級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、Z1は、ポリイソシアネート(D2)の内、イソシアネート基を除いた部分である。〕
又、例えば、下記一般式(10)のように、二級アミノ基1個を有する重合体(C2)の分子2個に対し、ジイソシアネート(D2)の分子1個を反応させた場合、理論上、二級アミノ基が、イソシアネート基と反応してウレア結合を形成し、ウレア結合を有する分散剤が得られる。下記一般式(10)中のW3が、ポリアミン(B2)及び/又は重合体(C2)由来の三級アミノ基を有する場合、前記分散剤は、三級アミノ基も有する。前記分散剤は、活性水素を有するアミノ基は有しない。
一般式(10):
Figure 2010097816
〔一般式(10)中、X1は、重合体(C2)の前駆体である重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、W3は、重合体(C2)の前駆体であるポリアミン(B2)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、Z1は、ポリイソシアネート(D2)の内、イソシアネート基を除いた部分である。〕
更に、例えば、下記一般式(11)のように、前記一般式(9)の生成物である、一級アミノ基2個と二級アミノ基2n個とを有する重合体(C2)の分子(m+1)個に対し、ジイソシアネート(D2)の分子m個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基とイソシアネート基とが反応してウレア結合を形成し、一級アミノ基2個と二級アミノ基(2nm+2n)個とウレア結合2m個とを有する分散剤が得られる。下記一般式(15)中のY2が、ポリアミン(B2)及び/又は重合体(C2)由来の三級アミノ基を有する場合、前記分散剤は、三級アミノ基も有する。(n及びmは、正の整数である。)
一般式(11):
Figure 2010097816
〔一般式(11)中、X2は、重合体(C2)の前駆体である重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y2は、重合体(C2)の前駆体であるポリアミン(B2)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、W4は、重合体(C2)の内、アミノ基を有する部位を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、Z1は、ポリイソシアネート(D2)の内、イソシアネート基を除いた部分であり、n及びmは、正の整数である。〕
又、例えば、下記一般式(12)のように、一級アミノ基1個を有するポリアミン(B2)の分子2個と(メタ)アクリロイル基2個を有する重合体(A2)の分子1個とを反応して得られる、重合体(A2)由来の部分から見て両末端領域に、二級アミノ基を1個ずつ、合わせて2個を有する重合体(C2)の分子(m+1)個に対し、ジイソシアネート(D2)の分子m個を反応させた場合、理論上、前記二級級アミノ基とイソシアネート基とが反応してウレア結合を形成し、ポリウレア鎖から見てり両末端領域に、二級アミノ基を1個ずつ、合わせて2個有する分散剤が得られる。(mは、正の整数である。)
一般式(12):
Figure 2010097816
〔一般式(12)中、X2は、重合体(C2)の前駆体である重合体(A2)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y3は、ポリアミン(B2)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、W5は、重合体(C2)の内、アミノ基を有する部位を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、Z1は、ポリイソシアネート(D2)の内、イソシアネート基を除いた部分であり、mは、正の整数である。〕
理論上としたのは、上記4例は、一級アミノ基が、二級アミノ基より反応性が高いため、必ず優先的に反応するとした場合であり、実際は、反応条件等により、一級アミノ基が残っていても、先に二級アミノ基が反応する場合もあるので、一部、予想とは異なる構造の分散剤が得られる場合もあるが、上記反応は、ほぼ量論的に反応が進行するので、大部分が目的とする構造の重合体(C2)が得られ、分散剤としての機能に問題はない。
以上のように、アミノ基を有する重合体(C2)とポリイソシアネート(D2)との反応比を変えることによって、分散剤の分子量やアミノ基(一級、二級、及び/又は三級)並びにウレア結合の量を調整することができる。
《ポリイソシアネート(D2)》
本発明に用いられるポリイソシアネート(D2)としては、従来公知のものを使用することができるが、分散体の低粘度効果から、ジイソシアネートであることが好ましく、例えば、芳香族系ジイソシアネート(d21)、脂肪族系ジイソシアネート(d22)、芳香族−脂肪族系ジイソシアネート(d23)、脂環族系ジイソシアネート(d24)、これらジイソシアネートのニ量体(ウレトジオン)、これらジイソシアネートの三量体(イソシアヌレート)とモノアルコールとの反応物、及びこれらジイソシアネートとジオールとの反応物(両末端イソシアネートのウレタンプレポリマー)等が挙げられる。
芳香族系ジイソシアネート(d21)としては、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、ジアニシジンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−トルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン等を挙げることができる。
脂肪族系ジイソシアネート(d22)としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記する場合がある。)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
芳香族−脂肪族系ジイソシアネート(d23)としては、ω,ω'−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω'−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω'−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
脂環族系ジイソシアネート(d24)としては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(以下、IPDIと略記する場合がある。)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、及びメチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート等を挙げることができる。
以上、列挙したジイソシアネート(D2)は、必ずしもこれらに限定されるものではなく、2種類以上を併用して使用することもできる。
本発明に用いられるジイソシアネート(D2)としては、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート、IPDI)が難黄変性であるために好ましい。
又、分散剤の分子量を上げる目的で、1分子内に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネ−ト(d25)を使用しても良く、芳香族系ポリイソシアネ−ト、脂肪族系ポリイソシアネ−ト、芳香族−脂肪族系ポリイソシアネ−ト、及び脂環族系ポリイソシアネ−ト等を挙げることができる。
1分子に3個以上イソシアネート基を有するポリイソシアネート(d25)として、具体的には、上記ジイソシアネートのイソシアヌレート体、及び上記ジイソシアネートのビウレット体等のジイソシアネートの三量体、上記ジイソシアネートのポリオールアダクト体、二種以上の上記ジイソシアネートの共重合体、芳香族系トリイソシアネート、並びに、ポリメリック型の芳香族系イソシアネートオリゴマー等が挙げられる。
1分子に3個以上イソシアネート基を有するポリイソシアネート(d25)としては、例えば、 トリレンジイソシアネート(以下、TDI略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、HDIのビウレット体、HDIのトリメチロールプロパン(以下、TMPと略記する場合がある。)アダクト体、TDIのTMPアダクト体、及びTDI/HDIコポリマー等のジイソシアネート変性物;
2,4,6−トリイソシアネ−トトルエン、1,3,5−トリイソシアネ−トベンゼン、及び4,4',4"−トリフェニルメタントリイソシアネ−ト等の芳香族系トリイソシアネート;並びに、
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(別名MDIオリゴマー)等のポリメリック型芳香族系イソシアネートオリゴマー)等が挙げられる。
〈合成条件〉
アミノ基を有する重合体(C2)とポリイソシアネート(D2)との反応は、1)全量仕込みで反応する場合と、2)重合体(C2)溶液をフラスコに仕込み、ポリイソシアネート(D2)を滴下する方法に大別されるが、反応を精密にする場合は2)が好ましい。本発明のウレア化反応の温度は、70℃以下が好ましい。更に好ましくは60℃以下である。60℃でも反応速度は大きく、制御できない場合は、50℃以下が更に好ましい。70℃より高くなると反応速度の制御が困難であり、所定の分子量と構造を有する分散剤を得ることは難しい。
また、アミノ基を有する重合体(C2)に対するポリイソシアネート(D2)の配合比は、重合体(C2)の活性水素を有するアミノ基(一級及び二級アミノ基)当量を〔C2〕、ポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基当量を〔D2〕とすると、〔D2〕/〔C2〕は0.25〜1.00で、イソシアネート基の全てを活性水素を有するアミノ基と反応させるとことが好ましく、最終合成物である分散剤の設計(活物質吸着部位と溶剤親和性部位のバランス)の観点から、0.35〜0.9がより好ましく、最終合成物である分散剤を使った顔料分散体の分散安定性の観点から、0.5〜0.8が最も好ましい。
前記配合当量比が0.25より小さいと、最終製品である分散剤中のウレア結合の量が少なくなり、分散性が悪くなる場合がある。又、配合当量比が1.00より大きいと、反応活性が高いイソシアネート基が残り、水等と反応し、高分子量化して粘度が高くなることがあり、好ましくない。又、前記配合当量が、1.00であると、例えば、活性水素を有するアミノ基を2個有するポリアミン(C2)とイソシアネート基を2個有するジイソシアネート(D2)との反応では、理論上、分子量が無限大となるため、分子量制御の観点で、好ましくない。
更に、三級アミノ基、及びウレア結合に加えて一級及び/又は二級アミノ基(活性水素を有するアミノ基)が、分散剤骨格中に存在すると、活物質に対する吸着性が向上し、溶剤親和性部位とのバランスも良くなり、活物質分散性及びその経時安定性も良くなる。
又、活性水素を有するアミノ基が多く残り過ぎると、活物質吸着必要量を超えてしまい、例えば、活物質同士の凝集の原因となるなどの問題を生じる。
従って、適度に、活性水素を有するアミノ基が残るように配合することが、好ましい。
即ち、前記のように、配合当量比が、0.35〜0.9、好ましくは0.5〜0.8の時、三級アミノ基、ウレア結合、活性水素を有するアミノ基、及び溶剤親和部位のバランスが良くなり、優れた分散安定性を示す。
本発明の組成物を構成する塩基性官能基を有する重合体(G2)は、
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)を製造する第一の工程と、
前記片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の(メタ)アクリロイル基と、1以上の一級及び/又は二級アミノ基を含むポリアミン(B2)の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応する、アミノ基を有する重合体(C2)を製造する第二の工程と、並びに、
アミノ基を有する重合体(C2)の一級及び/又は二級アミノ基と、少なくとも2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基と、を反応させる第三の工程と、
を含む製造法により製造することができる。
各工程の合成方法及び条件等は前述のとおりである。
本発明の組成物を構成する塩基性官能基を有する重合体(G2)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは1,500〜50,000、特に好ましくは2,000〜30,000である。重量平均分子量が、1,000未満であれば、活物質分散体の安定性が低下する場合があり、100,000を超えると樹脂間の相互作用が強くなり、活物質分散体の増粘が起きる場合がある。又、得られた分散剤のアミン価は、5〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは10〜70mgKOH/g、さらに好ましくは20〜50mgKOH/gである。アミン価が5mgKOH/g未満であれば活物質と吸着する官能基が不足し、活物質分散に寄与することが困難になる場合があり、100mgKOH/gを超えると、活物質同士の凝集が起こり、粘度低下効果の不足や塗膜外観に不具合を生じさせる場合がある。
塩基性官能基を有する樹脂は、上記記載の二つのタイプのみに限定されるものでなく、二つのタイプ以外のポリビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ホルマリン縮合物、シリコーン系、及びこれらの複合系ポリマー等が挙げられる。更に、これらの塩基性官能基を有する樹脂は2種類以上を併用することもできる。
<その他の市販の塩基性官能基を有する樹脂>
市販の塩基性官能基を有する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
ビックケミー社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、Disperbyk−108、109、112、116、130、161、162、163、164、166、167、168、180、182、183、184、185、2000、2001、2050、2070、2150、又はBYK−9077が挙げられる。
日本ルーブリゾール社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、SOLSPERSE9000、13240、13650、13940、17000、18000、19000、20000、24000SC、24000GR、28000、31845、32000、32500、32600、33500、34750、35100、35200、37500、38500、又は39000が挙げられる。
エフカアディティブズ社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、EFKA4008、4009、4010、4015、4020、4046、4047、4050、4055、4060、4080、4300、4330、4400、4401、4402、4403、4406、4500、4550、4560、4570、4580、又は4800が挙げられる。
味の素ファインテクノ社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、アジスパーPB711、アジスパーPB821、又はアジスパーPB822が挙げられる。
楠本化成社製の塩基性官能基を有する樹脂としては、ディスパロン1850、1860、又はDA−1401が挙げられる。
共栄社化学製の塩基性官能基を有する樹脂としては、フローレンDOPA−15B、フローレンDOPA−17等が挙げられる。
≪導電助剤≫
本発明におけるリチウム二次電池用正極合剤ペーストに添加する導電助剤としては、炭素材料が最も好ましい。炭素材料としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー、及びフラーレン等を単独で、若しくは2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、及びコスト面から、カーボンブラックの使用が好ましい。
カーボンブラックとしては、気体若しくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、及び、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラック等の各種のものを単独で、若しくは2種類以上併せて使用することができる。又、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m2/g以上、1500m2/g以下、好ましくは50m2/g以上、1500m2/g以下、更に好ましくは100m2/g以上、1500m2/g以下のものを使用することが望ましい。比表面積が20m2/gを下回るカーボンブラックを用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、1500m2/gを超えるカーボンブラックは、市販材料での入手が困難となる場合がある。
又、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡等で測定された粒子径を平均したものである。
市販のカーボンブラックとしては、例えば、
トーカブラック#4300、#4400、#4500、及び#5500等の東海カーボン社製ファーネスブラック;
プリンテックスL等のデグサ社製ファーネスブラック;
Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA、Conductex SC ULTRA、975 ULTRA、PUER BLACK100、115、及び205等のコロンビヤン社製ファーネスブラック;
#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、及び#5400B等の三菱化学社製ファーネスブラック;
MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、及びBlackPearls2000等のキャボット社製ファーネスブラック;
Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、及びSuperP−Li等のTIMCAL社製ファーネスブラック;
ケッチェンブラックEC−300J、及びEC−600JD等のアクゾ社製ケッチェンブラック; 並びに、
デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35等の電気化学工業社製アセチレンブラック等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
≪溶剤≫
本発明に使用する溶剤としては、例えば、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、及び水等が挙げられる。
バインダー樹脂成分の溶解性や、導電助剤である炭素材料の分散安定性を得るためには、極性の高い溶剤を使用するのが好ましい。
例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN,N−ジエチルアセトアミド等の様な窒素をジアルキル化したアミド系溶剤、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチル燐酸トリアミド、並びに、ジメチルスルホキシド等が挙げられるが、これらに限定されない。二種類以上を併用することもできる。
≪バインダー≫
本発明のリチウム二次電池用正極合剤ペーストには、更に、塩基性官能基を有する樹脂以外のバインダー成分を含有させることができる。
使用するバインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、カルボキシルメチルセルロース等のセルロース樹脂、スチレン−ブタジエンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴム、ポリアニリンやポリアセチレン等の導電性樹脂等が挙げられる。又、これらの樹脂の変性体、混合物、又は共重合体でも良い。
具体的には、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、及びビニルピロリドン等を構成単位として含む共重合体が挙げられる。
特に、耐性面から分子内にフッ素原子を有する高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、及びポリテトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。
又、バインダーとしてのこれらの樹脂類の重量平均分子量は、10,000〜1,000,000が好ましい。分子量が小さいとバインダーの耐性が低下することがある。分子量が大きくなるとバインダーの耐性は向上するものの、バインダー自体の粘度が高くなり作業性が低下するとともに、凝集剤として働き、合剤成分が著しく凝集してしまうことがある。
≪リチウム二次電池用正極合剤ペースト≫
本発明の正極合剤ペーストは、リチウム二次電池用正極合剤ペーストとして用いることができる。正極合剤ペーストとして用いる場合は、上記の塩基性官能基を有する樹脂と、正極活物質と、溶剤とを含んでなるペーストに、導電助剤としての炭素材料、及びバインダー成分を含有させ正極合剤ペーストとして使用することが好ましい。
正極合剤ペースト中の総固形分に占める正極活物質の割合は、70重量%以上、98.5重量%以下、好ましくは80重量%以上、95重量%以下で使用することが望ましい。正極活物質の割合が70重量%を下回ると、十分な導電性、放電容量を得ることが難しくなる場合があり、98.5重量%を超えると、バインダー成分の割合が低下するため、集電体への密着性が低下し、正極活物質が脱離しやすくなる場合がある。
又、正極合剤ペースト中の総固形分に占める、導電助剤としての炭素材料の固形分の割合は、0.5重量%以上、25重量%以下、好ましくは1.0重量%以上、15重量%以下で使用することが望ましい。導電助剤としての炭素材料の割合が、0.5重量%を下回ると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、25重量%を超えると、電池性能に大きく関与する正極活物質の割合が低下するため、放電容量が低下する等の問題が発生する場合がある。
又、正極合剤ペースト中の総固形分に占める、バインダー成分(塩基性官能基を有する樹脂以外の樹脂成分)の割合は、1重量%以上、10重量%以下が好ましい、好ましくは2重量%以上、8重量%以下で使用することが望ましい。バインダー成分の割合が1重量%を下回ると、結着性が低下するため、集電体から正極活物質や導電助剤としての炭素材料等が脱離しやすくなる場合があり、10重量%を超えると、正極活物質及び導電助剤としての炭素材料の割合が低下するため、電池性能の低下に繋がる場合がある。
又、正極合剤ペーストの適正粘度は、正極合剤ペーストの塗工方法によるが、一般には、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
本発明における正極合剤ペーストは、正極活物質の分散性に優れるだけでなく、正極活物質の凝集を緩和する効果もある。正極活物質の分散性が優れるため、正極活物質及び導電助剤としての炭素材料を溶剤に混合・分散する際のエネルギーが、正極活物質の凝集物に阻害されることなく効率よく炭素材料(導電助剤)に伝わり、結果的に炭素材料(導電助剤)の分散性も向上させることができるものと考えられる。
本発明の正極合剤ペーストでは、正極活物質の周りに導電助剤である炭素材料粒子を均一に配位・付着させることができ、正極合剤層に優れた導電性及び密着性を付与できる。又、導電性が向上することにより、導電助剤としての炭素材料の添加量を減らすことができるため、正極活物質の添加量を相対的に増やすことができ、電池の大きな特性である容量を大きくすることができる。
更に、本発明の正極合剤ペーストは、正極活物質、炭素材料(導電助剤)の凝集が少ないため、集電体に塗布した際に平滑性の高い均一な塗膜を得ることができ、集電体と正極合剤との密着性が改善される。又、塩基性官能基を有する樹脂が正極活物質表面に作用(例えば吸着)しているため、リチウム遷移金属複合酸化物のような正極活物質の表面と炭素材料(導電助剤)表面との相互作用が強まり、塩基性官能基を有する樹脂を使用しない場合と比較して正極活物質と炭素材料(導電助剤)との密着性が向上する。
≪本発明のリチウム二次電池用正極合剤ペーストの製造方法≫
次に、本発明の正極合剤ペーストの製造方法について説明する。
本発明の正極合剤ペーストは、例えば、塩基性官能基を有する樹脂と、正極活物質と、を溶剤に分散し、該分散体に、必要に応じて導電助剤としての炭素材料、又は追加のバインダー成分(塩基性官能基を有する樹脂以外の樹脂成分)を混合することにより、製造することができる。各成分の添加順序等については、これに限定されるわけではない。又、必要に応じて更に溶剤を追加しても良い。
上記製造方法は、塩基性官能基を有する樹脂を、溶剤中に完全又は一部溶解させ、その溶液中に正極活物質を添加、混合することで、前記塩基性樹脂を正極活物質に作用(例えば吸着)させつつ、溶剤に分散するのが好ましい。
このときの分散体中における正極活物質の濃度は、使用する正極活物質の比表面積や表面官能基量等の正極活物質固有の特性値等にもよるが、1重量%以上、90重量%以下が好ましく、更に好ましくは10重量%以上、80重量%以下である。正極活物質の濃度が低すぎると、生産効率が悪くなり、更に合剤ペーストの粘度が低くなりやすく経時で正極活物質が沈降しやすくなり、均一な正極が作成しにくい場合がある。一方、正極活物質の濃度が高すぎると、分散体の粘度が著しく高くなり、分散効率や分散体のハンドリング性が低下する場合がある。
又、正極活物質を溶剤に分散するにあたり、塩基性官能基を有する樹脂を添加することが好ましい。そして、正極活物質を分散する時に添加する塩基性官能基を有する樹脂としては、正極活物質100重量部に対して0.01重量部以上、30重量部以下、好ましくは0.05重量部以上、25重量部以下、更に好ましくは、0.1重量部以上、20重量部以下で添加する。
塩基性官能基を有する樹脂を正極活物質に作用(例えば吸着)させつつ溶剤に分散するための装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機が使用できる。
例えば、
ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;
エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;
ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;
湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;又は、
その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、又は、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。又、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
強い衝撃で粒子が割れたり、潰れたりしやすい正極活物質の場合は、メディア型分散機よりは、ロールミルやホモジナイザー等のメディアレス分散機が好ましい。
又、正極活物質の溶剤への濡れ性を向上させ、より溶剤中での分散性を向上させるために、塩基性官能基で、あらかじめ処理された正極活物質を使用することができる。
この時の処理方法は、乾式処理機としては、2本ロールや3本ロール等のロールミル、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサー等の高速攪拌機、マイクロナイザーやジェットミル等の流体エネルギー粉砕機、アトライター等が挙げられる。一方、湿式処理機としては、ニーダーが挙げられる。しかし、処理方法は上記方法に限定されるものではない。正極活物質の種類によって、処理時に正極活物質自身が破壊され電池性能を落とす場合があるため、正極活物質にあった処理方法を選択することが好ましい。
又、乾式処理機を使用する際、処理剤は、そのまま直接添加しても良いが、より均一に正極活物質表面に処理を行うために、前もって処理剤を少量の溶剤に溶解、又、分散させておき、正極活物質の凝集粒子を解しながら添加する方法が好ましい。更に、処理効率を上げるために、加温することが好ましい場合もある。
追加分のバインダー成分(塩基性官能基を有する樹脂以外の樹脂成分)の添加方法としては、上記の酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体と、正極活物質と、を溶剤に分散してなる分散体、又は、上記分散体に更に塩基性官能基を有する樹脂を添加し分散してなる分散体を攪拌しつつ、追加のバインダー成分(塩基性官能基を有する樹脂以外の樹脂成分)を固形のまま添加し、溶解させる方法が挙げられる。又、追加のバインダー成分(塩基性官能基を有する樹脂以外の樹脂成分)を溶剤に溶解させたものを事前に作製しておき、上記分散体と混合する方法が挙げられる。又、追加のバインダー成分(塩基性官能基を有する樹脂以外の樹脂成分)を上記分散体に添加した後に、上記分散装置で再度分散処理を行っても良い。
導電助剤としての炭素材料の添加方法としては、上記の塩基性官能基を有する樹脂と、正極活物質と、を溶剤に分散してなる分散体を攪拌しつつ、導電助剤としての炭素材料を添加し分散させる、又は導電助剤としての炭素材料を前もって溶剤中に分散させた分散体を上記正極活物質分散体に添加し混合する方法が挙げられる。
又、塩基性官能基を有する樹脂と、正極活物質と、を溶剤に分散するときに、導電助剤としての炭素材料の一部ないしは全量を、同時に添加して共分散処理を行うこともできる。このときの混合、分散を行うための装置としては、通常の顔料分散等に用いられている上述の分散装置が使用できる。
正極活物質の分散粒径は、使用する正極活物質の一次粒子径の大きさで変化するが、0.05μm以上、100μm以下、好ましくは、0.1μm以上、70μm以下、更に好ましくは0.15μm以上、50μm以下に微細化することが望ましい。正極活物質の分散粒径が0.05μm未満の正極合剤ペーストは、その作製が難しい場合がある。又、正極活物質の分散粒径が100μmを超える組成物を用いた場合には、電極の抵抗分布のバラつきや、低抵抗化のために導電助剤の添加量を増やさなければならなくなる等の不具合が生じる場合がある。ここでいう分散粒径については、グラインドゲージによる判定(JIS K5600−2−5に準ず)より求めることができる。分散粒径が1.0μm以下の場合は、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
本発明の正極合剤ペーストは、上述するように、通常は溶剤を含む分散体(液)、又はペースト等として、製造、流通、使用される。これは、導電助剤や活物質と、塩基性官能基を有する樹脂、を乾燥粉体の状態で混合しても、正極活物質や導電助剤に均一に作用させることは難しく、液相法で、正極活物質や導電助剤を溶剤に分散することにより、正極活物質や導電助剤に、均一に、塩基性官能基を有する樹脂、を作用させることができるからである。又、以下に説明するように、集電体に電極合剤層を形成する場合には、液状の分散体をできるだけ均一に塗布してこれを乾燥させることが好ましいからである。
しかしながら、例えば、液相法で作製した分散体を、運搬コスト等の理由から、一度溶剤を除去して乾燥粉体とすることも考えられる。そして、この乾燥粉体を適当な溶剤で再分散させて、電極合剤層の形成に用いることも考えられる。したがって、本発明の正極合剤ペーストは、液状の分散体に限られず、このような、乾燥粉体の状態の組成物であってもよい。
≪リチウム二次電池≫
次に、本発明の正極合剤ペーストを用いたリチウム二次電池について説明する。
リチウム二次電池は、集電体上に正極合剤層を有する正極と、集電体上に負極合剤層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備する。前記正極合剤層と前記集電体との間や、前記負極合剤層と前記集電体との間には、電極下地層が形成されていてもよい。
電極について、使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が用いられるが、特に正極材料としてはアルミニウムが、負極材料としては銅が、好ましい。又、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状のものも使用できる。
集電体上に電極下地層を形成する方法としては、導電性材料であるカーボンブラックとバインダー成分を溶剤中に分散させた電極下地ペーストを電極集電体に塗布、乾燥する方法が挙げられる。電極下地層の膜厚としては、導電性及び密着性が保たれる範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.05μm以上、20μm以下であり、好ましくは0.1μm以上、10μm以下である。
集電体上に電極合剤層を形成する方法としては、集電体上に上述の電極合剤ペーストを直接塗布し乾燥する方法、及び集電体上に電極下地層を形成した後に電極合剤ペーストを塗布し乾燥する方法等が挙げられる。又、電極下地層の上に電極合剤層を形成する場合、集電体上に電極下地ペーストを塗布した後、湿潤状態のうちに電極合剤ペーストを重ねて塗布し、乾燥を行っても良い。電極合剤層の厚みとしては、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
塗布方法については、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、又は静電塗装法等が挙げられる。又、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。
≪電解液≫
本発明のリチウム二次電池を構成する電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。電解質としては、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、Li(CF3SO23C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN、又はLiBPh4等が挙げられるがこれらに限定されない。
非水系の溶剤としては特に限定はされないが、例えば、
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等のラクトン類;
テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び1,2−ジブトキシエタン等のグライム類;
メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、
アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。又、これらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
更に上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持しゲル状とした高分子電解質とすることもできる。ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、及びポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の正極合剤ペーストを用いたリチウム二次電池の構造については特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレータとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
以下、実施例に基づき本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。実施例中、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ表す。正極活物質分散体、及び電極合剤ペーストの分散粒度については、グラインドゲージによる判定(JIS K5600−2−5に準ず)より求めた。又、正極活物質分散体の粘度は、E型粘度計(東機産業社製「RE80型粘度計」)で、5rpmの回転速度における25℃での粘度を測定した。
又、以下、塩基性官能基を有する樹脂の重合平均分子量(Mw)は、装置としてHLC−8320GPC(東ソー株式会社製)を用い、カラムとして SUPER−AW3000を使用し、溶離液として30mMトリエチルアミン及び10mM LiBrのN,N−ジメチルホルムアミドを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
又、アミン価はASTM D 2074の方法に準拠し、測定した全アミン価(mgKOH/g)である。
≪塩基性官能基を有する樹脂≫
<塩基性官能基を有する樹脂 重合体(G1)タイプ>
[アミノ基を有するビニル系樹脂 重合体(G1−1)の合成]
<ビニル重合体(A1−1)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート 500部、チオグリセロール 28部と、N−メチル−2−ピロリドン 528部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を90℃に加熱して、AIBN 0.50部を添加した後7時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認後、室温まで冷却して、重量平均分子量4200の、片末端領域に2つの遊離ヒドロキシル基を有するビニル重合体(A−1)の固形分50%溶液を得た。
<重合体(G1−1)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ビニル重合体(A1−1)の固形分50%溶液 1022部と、イソホロンジイソシアネート 45.2部と、触媒としてジブチル錫ジラウレート 0.11gを仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、3時間反応した後、40℃まで冷却して、イミノビスプロピルアミン 26.7部、N−メチル−2−ピロリドン 363.3部の混合液中に30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、室温まで冷却して反応を終了した。固形分を40%に調整し、重合体(G1−1)の淡黄色透明溶液を得た。重合体(G1−1)の重量平均分子量は13500であり、アミン価27.5mg KOH/gであった。
[アミノ基を有するビニル系樹脂 重合体(G1−2)の合成]
<ビニル重合体(A1−2)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、n−ブチルメタクリレート 500部と、チオグリセロール 28部と、N−メチル−2−ピロリドン 528部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を90℃に加熱して、AIBN 0.50部を添加した後7時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認後、室温まで冷却して、重量平均分子量4800の、片末端領域に2つの遊離ヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1−2)の固形分50%溶液を得た。
<重合体(G1−2)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ビニル重合体(A1−2)の固形分50%溶液 1056部と、イソホロンジイソシアネート 115.1部と、触媒としてジブチル錫ジラウレート 0.12gを仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、3時間反応した後、40℃まで冷却して、イミノビスプロピルアミン 25.5部と、2−アミノ−2−メチル−プロパノール 11.5部と、N−メチル−2−ピロリドン 492.0部の混合液中に30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、室温まで冷却して反応を終了した。固形分を40%に調整し、重合体(G1−2)の淡黄色透明溶液を得た。重合体(G1−2)の重量平均分子量は21600であり、アミン価17.4mg KOH/gであった。
[アミノ基を有するビニル系樹脂 重合体(G1−3)の合成]
<ビニル重合体(A1−3)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート 400部と、ブチルアクリレート 100部と、チオグリセロール 56部と、N−メチル−2−ピロリドン 556部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を90℃に加熱して、AIBN 0.50部を添加した後7時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認後、室温まで冷却して、重量平均分子量3000の、片末端領域に2つの遊離ヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1−3)の固形分50%溶液を得た。
<重合体(G1−3)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ビニル重合体(A1−3)の固形分50%溶液 1112部と、イソホロンジイソシアネート 230.2部と、触媒としてジブチル錫ジラウレート 0.13gを仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、3時間反応した後、40℃まで冷却して、メチルイミノビスプロピルアミン 56.4部と、ジブチルアミン 33.4部と、N−メチル−2−ピロリドン 757.9部の混合液中に30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、室温まで冷却して反応を終了した。固形分を40%に調整し、重合体(G1−3)の淡黄色透明溶液を得た。重合体(G1−3)の重量平均分子量は11900であり、アミン価25.2mg KOH/gであった。
<塩基性官能基を有する樹脂 重合体(G2)タイプ>
[アミノ基を有するポリエステル系重合体(G2−1)の合成]
<片末端にアクリロイル基を有するポリエステル(A2−1)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、4−ヒドロキシブチルアクリレート20.8部とε−カプロラクトン379部、触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシド0.1部、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1部を仕込み、乾燥空気流下で120℃で4時間加熱、撹拌し固形分測定により95%が反応したことを確認し反応を終了し、N−メチル−2−ピロリドン171部を加えて希釈し、更に、固形分70重量%に調整して、重量平均分子量6500の、片末端に1つのアクリロイ基を有するポリエステル(A2−1)の固形分70重量%溶液を得た。
<重合体(G2−1)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、イミノビスプロピルアミン18.9部と、N−メチル−2−ピロリドン248部を仕込み、50℃に加熱してポリエステル(A2−1)の固形分70重量%溶液571部を30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、イソホロンジイソシアネート16.0部、N−メチル−2−ピロリドン112部の混合液を30分かけて滴下し、更に2時間反応し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、固形分30重量%に調整して、重量平均分子量13000、アミン価36mgKOH/gの重合体(G2−1)の固形分30重量%溶液を得た。
[アミノ基を有するポリエステル系重合体(G2−2)の合成]
<重合体(G2−2)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルイミノビスプロピルアミン23.9部と、N−メチル−2−ピロリドン248部を仕込み、50℃に加熱してポリエステル(A2−1)の固形分70重量%溶液571部を30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、イソホロンジイソシアネート18.3部、N−メチル−2−ピロリドン207部の混合液を30分かけて滴下し、更に2時間反応し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、固形分30重量%に調整して、重量平均分子量27000、アミン価41mgKOH/gの重合体(G2−2)の固形分30重量%溶液を得た。
[アミノ基を有するビニル系重合体(G2−3)の合成]
<片末端にアクリロイル基を有するビニル重合体(A2−2)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート400部とブチルアクリレート100部、N−メチル−2−ピロリドン100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール27.5部に、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.5部を溶解した溶液を添加して、10時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認し、N−メチル−2−ピロリドン427部を加えて希釈したのち、乾燥空気流下でアクリロイルオキシエチルイソシアネート32.6部、DBTDL 1部、メチルハイドロキノン0.3部を加え、さらに2時間加熱攪拌し、更に、固形分50重量%に調整して、重量平均分子量4500の、片末端に2つのアクリロイル基を有するビニル重合体(A2−2)の固形分50重量%溶液を得た。
<重合体(G2−3)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、イミノビスプロピルアミン27.8部と、N−メチル−2−ピロリドン184部を仕込み、50℃に加熱してビニル重合体(A2−2)の固形分70重量%溶液500部を30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、イソホロンジイソシアネート15.7部、N−メチル−2−ピロリドン121部の混合液を30分かけて滴下し、更に2時間反応し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて、固形分30重量%に調整して、重量平均分子量15200、アミン価94mgKOH/gの重合体(G2−3)の固形分30重量%溶液を得た。
<(G1)、(G2)タイプ以外の塩基性官能基を有する樹脂(H)>
(H1)アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製):アミノ基を有する樹脂
(H2)SOLSPERSE24000GR(日本ルーブリゾール社製):アミノ基を 有する樹脂
<塩基性官能基を有する樹脂で表面処理された正極活物質の調整>
表1に示す組成及び処理方法に従って、塩基性官能基を有する樹脂による正極活物質の表面処理を行った。塩基性基を有する樹脂の使用量は、固形分換算で表記した。
[表面処理正極活物質(1)]
正極活物質となるコバルト酸リチウム(LiCoO2、HLC−17、平均一次粒径2.5μm、比表面積0.54m2/g、本荘ケミカル社製)100部、塩基性分散樹脂(G1−1)溶液0.5部(固形分0.2部)、及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を25部仕込み、2本ロールにて処理し、乾燥することで表面処理正極活物質(1)を得た。
[表面処理正極活物質(2)]
ニーダーに、正極活物質であるマンガン酸リチウム(LiMn24、CELLSEED S-LM、平均一次粒径12.0μm、比表面積0.48m2/g、日本化学工業社製)100部、塩基性分散樹脂(G1−2)溶液0.25部(固形分0.1部)、及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を25部仕込み、混練処理を行った。得られた処理物を乾燥、粉砕し、表面処理正極活物質(2)を得た。
[表面処理正極活物質(3)]
ニーダーに、正極活物質となるリン酸鉄リチウム(LiFePO4、平均一次粒径0.2μm、比表面積15m2/g、TIANJIN STL ENERGY TECHNOLOGY社製)100部、塩基性分散樹脂(G1−3)溶液0.5部(固形分0.2部)、及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を43部仕込み、混練処理を行った。得られた処理物をヘキサン1000部中に添加して攪拌した後、凝集物を濾取、乾燥、粉砕して表面処理正極活物質(3)を得た。
[表面処理正極活物質(4)]
正極活物質となるリン酸鉄リチウム(LiFePO4、平均一次粒径0.2μm、比表面積15m2/g、TIANJIN STL ENERGY TECHNOLOGY社製)100部に対して
、塩基性官能基を有する樹脂(G2−1)1.67部(固形分0.5部)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)15部に溶解させ、乾式ジェットミルにて解砕しながら処理し、乾燥することで表面処理正極活物質(4)を得た。
[表面処理正極活物質(5)]
正極活物質であるリン酸鉄リチウム(LiFePO4、平均一次粒径0.2μm、比表面積15m2/g、TIANJIN STL ENERGY TECHNOLOGY社製)100部、塩基性分散樹脂(G2−2)3.33部(固形分1.0部)、及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を25部仕込み、2本ロールにて処理し、乾燥することで表面処理正極活物質(5)を得た。
<表面処理の有無による正極活物質の濡れ性評価>
分散剤未処理の各種正極活物質及び、各種分散剤処理正極活物質を80℃で10時間減圧乾燥した。続いて乾燥物をメノウ製の乳鉢で粉砕した後、更に80℃で12時間減圧乾燥した。得られた乾燥物を再度メノウ製乳鉢で粉砕した後、錠剤成型器(Specac社製)にて500kgf/cm2で荷重をかけ、正極活物質のペレットを作製(直径10mm、厚0.5mm)した。このペレットにマイクロシリンジにて、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1混合した液滴を落とし、液滴がペレットに浸透する時間を測定した。この測定を各サンプルとも5回行い、それらの平均浸透時間が1秒未満であったものを「◎」、1秒以上、5秒未満であったものを「○」、5秒以上、10秒未満であったものを「△」、10秒以上であったものを「×」とした。正極活物質の濡れ性評価の結果を表1に示した。
Figure 2010097816
表1中、略称は以下に示す通りである。
塩基性樹脂:塩基性官能基を有する樹脂
≪正極活物質分散体の調製≫
[正極活物質分散体(1)]
容器に、溶剤として、N−メチル−2−ピロリドン 29.72部、塩基性分散樹脂(G1−1)溶液3.5部(固形分1.4部)を仕込み、混合攪拌して該誘導体を完全ないしは一部溶解させた。次に、正極活物質として、コバルト酸リチウムLiCoO2 70部を加え、メディアレス分散機であるホモジナイザーで分散し、正極活物質分散体(1)を得た。
[正極活物質分散体(2)〜(8)の調整]
正極活物質分散体(1)の調整と同様の方法で、表6の組成になるように、正極活物質分散体(2)〜(8)を得た。
[正極活物質分散体(9)]
容器に、溶剤として、 N−メチル−2−ピロリドン 29.56部、塩基性官能基を有する樹脂(G2−2)30%溶液0.23部を仕込み、混合攪拌して該樹脂を完全ないしは一部溶解させた。次に、表面処理正極活物質(3) 70.21部加え、メディアレス分散機であるホモジナイザーで分散し、正極活物質分散体(8)を得た。
[正極活物質分散体(10)の調整]
正極活物質分散体(9)の調整と同様の方法で、表6の組成に従い、正極活物質分散体(10)を得た。
[正極活物質分散体(11)]
容器に、溶剤として、精製水 29.53部、バインダー2、すなわち、60%ポリテトラフルオロエチレンPTFE水系分散体(PTFE、30−J、三井・デュポンフルオロケミカル製)0.47部を仕込み、混合攪拌して該樹脂を完全ないしは一部溶解させた。次に、正極活物質として、リン酸鉄リチウムLiFePO4 70部加え、メディアレス分散機であるホモジナイザーで分散し、正極活物質分散体(11)を得た。
[正極活物質分散体(12)の調整]
容器に、溶剤として、 N−メチル−2−ピロリドン 30部、リン酸鉄リチウムLiFePO4 70部加え、メディアレス分散機であるホモジナイザーで分散し、正極活物質分散体(12)を得た。
[正極活物質分散体(1)〜(12)の分散評価]
得られた正極活物質分散体(1)〜(12)の分散評価結果を、表3に示した。
Figure 2010097816
表2中、略称は以下に示す通りである。
塩基性樹脂:塩基性官能基を有する樹脂
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン(水性分散体)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
Figure 2010097816
表1及び2に記載した材料、並びに、実施例及び比較例で使用した材料について示す。
≪正極活物質≫
LiCoO2:コバルト酸リチウム HLC−17(本荘ケミカル社製);平均一次粒径2.5μm、比表面積0.54m2/g。
LiMn24:マンガン酸リチウム CELLSEED S-LM(日本化学工業社);平均一次粒径12.0μm、比表面積0.48m2/g。
LiNiO2:ニッケル酸リチウム(本荘ケミカル社製);平均一次粒径9.0μm、比表面積0.3m2/g。
LiFePO4:リン酸鉄リチウム(TIANJIN STL ENERGY TECHNOLOGY社製);平均一次粒径0.2μm、比表面積15m2/g。
≪塩基性官能基を有する樹脂≫
<塩基性官能基を有する樹脂 重合体(G1)タイプ>
G1−1:アミノ基を有するポリビニル系重合体;重量平均分子量は13500、アミン価27.5mg KOH/g。
G1−2:アミノ基を有するポリビニル系重合体;重量平均分子量は21600、アミン価17.4mg KOH/g。
G1−3:アミノ基を有するポリビニル系重合体;重量平均分子量は11900、アミン価25.2mg KOH/g。
<塩基性官能基を有する樹脂 重合体(G2)タイプ>
G2−1:アミノ基を有するポリエステル系重合体;重量平均分子量13000、アミン価36mgKOH/g。
G2−2:アミノ基を有するポリエステル系重合体;重量平均分子量27000、アミン価41mgKOH/g。
G2−3:アミノ基を有するポリビニル系重合体;重量平均分子量15200、アミン価94mgKOH/g。
<(G1)、(G2)タイプ以外の塩基性官能基を有する樹脂(H)>
H1:アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製);アミノ基を有する樹脂
H2:SOLSPERSE24000GR(日本ルーブリゾール社製);アミノ基を有する樹脂
≪バインダー≫
PVDF:KFポリマーW#1100(クレハ社製);ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、重量平均分子量約28万。
PTFE:PTFE 30−J(三井・デュポンフロロケミカル社製);60%ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)水系分散体。
≪導電助剤用カーボンブラック≫
HS−100:デンカブラックHS−100(電気化学工業社製);アセチレンブラック、一次粒径48nm、比表面積48m2/g。
≪リチウム二次電池用正極合剤ペーストの調製≫
下記のように、正極活物質分散体(1)〜(12)、前記カーボンブラック、バインダー、及び溶剤を用いて、正極合剤ペースト(1)〜(12)、及び比較正極合剤ペースト(1)〜(2)を調整した。
[実施例1]
正極活物質分散体(1) 64.3部に対して、バインダーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製)1.6部、及びN−メチル−2−ピロリドン31.6部をプラネタリーミキサーで混合した後に、導電助剤として、デンカブラックHS−100 2.5部を加え、更に、プラネタリーミキサーで混練し、正極合剤ペースト(1)〔固形分:50%、固形分組成重量比:正極活物質/カーボンブラック/その他(塩基性官能基を有する樹脂+バインダー)=90/5/5〕を得た。その結果を表4に示す。
[実施例2〜9、比較例2]
実施例1と同様の方法で、表4の組成に従い、正極合剤ペースト(2)〜(10)、及び比較正極合剤ペースト(2)〔固形分:50%、固形分組成重量比:正極活物質/カーボンブラック/その他(塩基性官能基を有する樹脂+バインダー)=90/5/5〕を得た。
[実施例10]
正極活物質分散体(10)64.3部に対して、バインダーとして、60%ポリテトラフルオロエチレンPTFE水系分散体(PTFE 30−J、三井・デュポンフロロケミカル社製)3.79部(固形分2.275部)、及び精製水29.41部をプラネタリーミキサーで混合した後に、導電助剤として、デンカブラックHS−100 2.5部を加え、更にプラネタリーミキサーにより混練し、正極合剤ペースト(10)〔固形分:50%、固形分組成重量比:正極活物質/カーボンブラック/その他(塩基性官能基を有する樹脂+バインダー)=90/5/5〕を得た。
[比較例1]
正極活物質分散体(11)を用いた以外は実施例10と同様の方法で表4の組成に従い、比較正極合剤ペースト(1)〔固形分:50%、固形分組成重量比:正極活物質/カーボンブラック/その他(塩基性官能基を有する樹脂+バインダー)=90/5/5〕を得た。
正極合剤ペースト(1)〜(10)、並びに、比較正極合剤ペースト(1)及び(2)の分散安定性の評価結果(初期及び50℃3日経過後の分散粒径)を表4に示す。
Figure 2010097816
表4中、略称は以下の通りである。
塩基性樹脂:塩基性官能基を有する樹脂
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン(水性分散体)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
<リチウム二次電池用負極合剤ペーストの調製>
カーボンブラックHS−100 2部に対して、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンPVDF(KFポリマーW#1100、クレハ社製)5部、N−メチル−2−ピロリドン100部を高速ディスパーで混合した後に、負極活物質としてメソフェーズカーボン(MCMB 6−28、平均粒径5〜7μm、比表面積4m2/g大阪ガスケミカル社製)93部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、負極合剤ペースト(固形分:50%、固形分組成重量比:負極活物質/カーボンブラック/その他(塩基性官能基を有する分散樹脂+バインダー)=93/2/5)を得た。
≪リチウム二次電池正極特性評価≫
[実施例1〜12、比較例1〜2]
<リチウム二次電池用正極の作製>
先に調製した正極合剤ペースト(1)〜(12)、比較正極合剤ペースト(1)〜(2)を、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥し、ロールプレス等による圧延処理を行い、厚さ50μmの正極合剤層を作製した。(表4を参照)
<リチウム二次電池用負極の作製>
先に調製した負極合剤ペーストを、集電体となる厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥し、ロールプレス等による圧延処理を行い、厚さ50μmの負極合剤層を作製した。
<リチウム二次電池正極評価用セルの組み立て>
先に作製した正極を、直径9mmに打ち抜き作用極とし、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極及び対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(セルガード社製 #2400)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1に混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝仙社製 HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立てはアルゴンガス置換したグロ−ボックス内で行い、セル組み立て後、所定の電池特性評価を行った。
<リチウム二次電池負極評価用セルの組み立て>
先に作製した負極を、直径9mmに打ち抜き作用極とし、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極及び対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(セルガード社製 #2400)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1に混合した混合溶媒にLiPF6 を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝仙社製 HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立てはアルゴンガス置換したグロ−ボックス内で行い、セル組み立て後、所定の電池特性評価を行った。
<リチウム二次電池正極特性評価>
[充放電サイクル特性 実施例1〜12、比較例1〜2]
作製した電池評価用セルを室温(25℃)で、充電レート0.2C、1.0Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.2V)で満充電とし、充電時と同じレートの定電流で放電下限電圧3.0Vまで放電を行う充放電を1サイクル(充放電間隔休止時間30分)とし、このサイクルを合計20サイクル行い、充放電サイクル特性評価(評価装置:北斗電工社製SM−8)を行った。又、評価後のセルを分解し、電極塗膜の外観を目視にて確認した。評価結果を表5に示した。
[直流内部抵抗測定 実施例1〜12、比較例1〜2]
作製した電池評価用セルを室温(25℃)、充電レート0.2Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.2V)で満充電とし、0.1C、0.2C、0.5C、1.0Cのレートの定電流で5秒放電後、電池電圧を測定した。電流値に対し電圧値をプロットし、得られた直線関係の傾きを内部抵抗とした。評価結果を表5に示すが、実施例1の内部抵抗測定値を100としたときの相対値として示した。
Figure 2010097816
表1〜5から分かるように、実施例では、塩基性官能基を有する分散樹脂を使用することで、正極活物質の分散性が向上したため、比較例に比べて正極合剤ペーストでの分散性及び経時安定性が向上した。又、比較例に比べて、内部抵抗の低下傾向が見られるとともに、電池容量及び、20サイクル容量維持率が向上した。

Claims (14)

  1. 塩基性官能基を有する樹脂と、正極活物質と、を含んでなるリチウム二次電池用正極合剤ペースト。
  2. 塩基性官能基を有する樹脂が、
    片末端領域に2個のヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)のヒドロキシル基と、ジイソシアネート(B1)のイソシアネート基と、を反応してなる両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)のイソシアネート基と、
    少なくともポリアミン(D1)を含むアミン化合物の一級及び/又は二級アミノ基と、
    を反応してなるアミン価が1〜100mgKOH/gである重合体(G1)、
    並びに、
    片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)の(メタ)アクリロイル基と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B2)の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応してなるアミノ基を有する重合体(C2)の一級及び/又は二級アミノ基と、
    2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(D2)のイソシアネート基と、
    を反応してなるアミン価が5〜100mgKOH/gである重合体(G2)、
    からなる群から選ばれる1種類以上の塩基性官能基を有する樹脂である請求項1記載のリチウム二次電池用正極合剤ペースト。
  3. 重合体(G1)を構成する片末端領域に2個のヒドロキシル基を有するビニル重合体(A1)が、分子内に2つのヒドロキシル基と1つのチオール基とを有する化合物(a11)の存在下に、エチレン性不飽和単量体(a12)をラジカル重合してなることを特徴とする請求項1又は2記載のリチウム二次電池用正極合剤ペースト。
  4. 重合体(G2)を構成する片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A2)が、ビニル重合体、又はポリエステルを含むことを特徴とする請求項1又は2記載のリチウム二次電池用正極合剤ペースト。
  5. 正極活物質が、リン酸鉄リチウムである請求項1〜4いずれか記載のリチウム二次電池用正極合剤ペースト。
  6. 更に、塩基性官能基を有する樹脂以外のバインダー成分を含んでなる請求項1〜5いずれか記載のリチウム二次電池用正極合剤ペースト。
  7. バインダー成分が、分子内にフッ素原子を有する高分子化合物である請求項6記載のリチウム二次電池用正極合剤ペースト。
  8. 更に、導電助剤を含んでなる請求項1〜7いずれか記載のリチウム二次電池用正極合剤ペースト。
  9. 正極活物質と、塩基性官能基を有する樹脂と、を溶剤に分散するリチウム二次電池用正極合剤ペーストの製造方法。
  10. 正極活物質と、塩基性官能基を有する樹脂と、導電助剤と、バインダー成分と、を溶剤に共分散するリチウム二次電池用正極合剤ペーストの製造方法。
  11. 正極活物質と、塩基性官能基を有する樹脂と、を溶剤に分散してなる分散体に、導電助剤と、バインダー成分と、を混合するリチウム二次電池用正極合剤ペーストの製造方法。
  12. 塩基性官能基を有する樹脂で、あらかじめ処理された正極活物質を使用する請求項9〜11いずれか記載のリチウム二次電池用正極合剤ペーストの製造方法。
  13. 集電体上に正極合剤層を有する正極と、集電体上に負極合剤層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備するリチウム二次電池であって、前記正極合剤層が、請求項1〜8いずれか記載のリチウム二次電池用正極合剤ペーストを使用して形成されてなるリチウム二次電池。
  14. 請求項9〜12いずれか記載の製造方法により製造されたリチウム二次電池用正極合剤ペーストを使用して形成されてなる請求項13記載のリチウム二次電池。
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