JP6036260B2 - 二次電池電極形成用組成物、二次電池電極、及び二次電池 - Google Patents
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Description
これは合材インキ中の活物質や導電助剤の分散状態や下地層形成用組成物中の導電助剤の分散状態が、合材層中の活物質や導電助剤の分布状態や下地層中の導電助剤の分布状態に関連しており、電極物性に影響し、ひいては電池性能に影響するからである。
そのため、活物質や導電助剤の分散は重要な課題である。とりわけ導電性に優れた炭素材料(導電助剤)は、ストラクチャーや比表面積が大きいため凝集力が強く、合材インキ中であれ、下地層形成用組成物中であれ、均一混合・分散することが困難である。
そして、導電助剤である炭素材料の分散性や粒度の制御が不十分な場合、均一な導電ネットワークが形成されないために電極の内部抵抗の低減が図れず、その結果、電極材料の性能を十分に引き出せないという問題が生じている。
また、これらの問題を解決するため、合材インキの作製時に、従来の材料に加えて分散剤を用いる方法も開発されている(特許文献5参照)しかし、それら分散剤の使用においても合材インキの良好な分散状態は不十分であり、所望の電極、および二次電池が得られないことが多く、特に導電助剤のさらなる分散性が均一な合材インキが望まれている。
即ち、本発明は、電極活物質(A)もしくは導電助剤である炭素材料(B)の少なくとも一方と、下記単量体を共重合してなる共重合体中のスルホ基あるいはリン酸基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和してなる両性樹脂型分散剤(C)と、水性液状媒体(D)とを含有する、二次電池電極形成用組成物であって、両性樹脂型分散剤(C)の酸価が、20mgKOH/g以上600mgKOH/g以下であり、両性樹脂型分散剤(C)の固形分20%水溶液における粘度が、5〜100,000mPa・sである二次電池電極形成用組成物に関する。
芳香族を有するエチレン性不飽和単量体(c1):5〜70重量%
スルホ基あるいはリン酸基を有するエチレン性不飽和単量体(c2):10〜70重量%
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3):1〜80重量%
前記(c1)〜(c3)以外のその他の単量体(c4):0〜79重量%
(但し、前記(c1)〜(c4)の合計を100重量%とする)
例えば、金属箔等の集電体の表面に、
(1)活物質と液状媒体とを含有するインキ状組成物(以下、合材インキという)や、
(2)活物質と導電助剤と液状媒体とを含有する合材インキや、
(3)活物質とバインダーと液状媒体とを含有する合材インキや、
(4)活物質と導電助剤とバインダーと液状媒体とを含有する合材インキを、
用いて合材層を形成し、電極を得ることができる。
両性樹脂型分散剤(C)は、活物質の凝集を緩和したり、導電助剤である炭素材料に対しても分散剤として機能したりする。
従って、本発明の二次電池電極形成用組成物は、活物質を必須とする合材インキとしても、活物質を必須とはしない下地層形成用組成物としても活用できる。
そこで、まず本発明における両性樹脂型分散剤(C)について説明する。
本発明における両性樹脂型分散剤(C)は、芳香族を有するエチレン性不飽和単量体(c1)と、スルホ基あるいはリン酸基を有するエチレン性不飽和単量体(c2)と、アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)と、を必須成分とする共重合体中のスルホ基あるいはリン酸基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和したものである。
本発明で使用する芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)としては、スチレン、α−メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレートを例示することが出来る。
本発明で使用するアミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)は、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。
(メタ)アクリレート系化合物としては、アルキル系(メタ)アクリレート、アルキレングリコール系(メタ)アクリレートがある。
メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等、末端にアルコキシ基を有し、ポリオキシアルキレン鎖を有するモノアクリレートまたは対応するモノメタアクリレート等、
フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート等、末端にフェノキシまたはアリールオキシ基を有するポリオキシアルキレン系アクリレートまたは対応するメタアクリレートがある。
N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、N−メチロール−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド等のジアルキロール(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系不飽和化合物を例示できる。
パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等のパーフルオロアルキル、アルキレン類等のパーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラノール基含有ビニル化合物及びその誘導体などを挙げることができ、これらの群から複数用いることができる。
芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)が5〜70重量%、
スルホ基あるいはリン酸基を有するエチレン性不飽和単量体(c2)が10〜70重量%、
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)が1〜80重量%、
前記(c1)〜(c3)以外のその他の単量体(c4)が0〜79重量%である。
好ましくは、(c1):20〜70重量%、(c2):15〜60重量%、(c3):1〜70重量%、(c4):0〜50重量%である。
そして、活物質(A)や導電助剤(B)に、芳香族やアミノ基を介してコポリマーが吸着し、中和され、イオン化されたスルホ基あるいはリン酸基の電荷反発により、活物質(A)や導電助剤(B)の水性液状媒体中における分散状態を安定に保つことができるようになったものと考察される。
尚、本発明における粘度とは、B型粘度計を用いて25℃の条件下で測定した値である。
本発明で使用するコポリマーの酸価が上記した範囲よりも低いと分散体の分散安定性が低下し、粘度が増加する傾向がある。また、本発明で使用するコポリマーの酸価が上記した範囲より高いと、顔料表面に対するコポリマーの付着力が低下し、分散体の保存安定性が低下する傾向がある。
例えば、上記単量体(c1)〜(c4)を、水と共沸し得る有機溶剤中で重合する。その後、水に代表される水性液状媒体と中和剤(塩基性化合物)とを加えて酸性官能基の少なくとも一部を中和し、共沸可能な溶剤を留去し、両性樹脂型分散剤(C)の水溶液を得ることができる。
重合時の有機溶剤としては、水と共沸するものであれば良いが、コポリマーに対し溶解性の高いものが良く、好ましくはエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールがあり、さらに好ましくは1−ブタノールがある。
この場合、用いられる親水性有機溶剤としては、コポリマーに対し溶解性の高いものが良く、好ましくはグリコールエーテル類、ジオール類、さらに好ましくは(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、炭素数3〜6のアルカンジオール類が良い。
例えば、アンモニア水、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤等を使用することができる。上記したようなコポリマーは、水性液媒体中に、溶解される。
前記したように、本発明の二次電池電極形成用組成物は、合材インキとしても使用できるし、下地層形成用組成物としても使用できる。
そこで、本発明の二次電池電極形成用組成物の好適な態様の1つである活物質を必須とする合材インキについて説明する。合材インキは、正極合材インキまたは負極合材インキがあり、既に説明したように、それぞれ下記(1)〜(4)に示すような種々の態様がある。
(1)活物質(A)と両性樹脂型分散剤(C)と水性液状媒体(D)とを含有する合材インキ。
(2)前記(1)に導電助剤(B)をさらに含有する合材インキ。
(3)前記(1)にバインダーをさらに含有する合材インキ。
(4)前記(1)に導電助剤(B)とバインダーとをさらに含有する合材インキ。
例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V2O5、V6O13、TiO2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルとコバルトとマンガンの三成分とリチウムとの複合酸化物である三元系活物質、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。
また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
本発明における導電助剤である炭素材料(B)としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、およびコスト面から、カーボンブラックの使用が好ましい。
ここでいう分散粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
本発明に使用する水性液状媒体(D)としては、水を使用することが好ましいが、必要に応じて、例えば、集電体への塗工性向上のために、水と相溶する液状媒体を使用しても良い。
水と相溶する液状媒体としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられ、水と相溶する範囲で使用しても良い。
本発明の中のバインダーとは、導電助剤やその他活物質などの粒子を結着させるために使用されるものであり、それら粒子を溶媒中へ分散させる効果は小さいものである。
塗工可能な粘度範囲内において、活物質(A)はできるだけ多く含まれることが好ましく、例えば、合材インキ固形分に占める活物質(A)の割合は、80重量%以上、99重量%以下が好ましい。
また、合材インキ固形分に占める両性樹脂型分散剤(C)の割合は、0.1〜15重量%であることが好ましい。
導電助剤(B)を含む場合、合材インキ固形分に占める導電助剤(B)の割合は、0.1〜15重量%であることが好ましい。
バインダーを含む場合、合材インキ固形分に占めるバインダーの割合は、0.1〜15重量%であることが好ましい。
活物質(A)と導電助剤(B)と両性樹脂型分散剤(C)とバインダーと水性液状媒体(D)とを含有する、(4)の合材インキの場合を例にとって説明する。
例えば、
(4−1) 活物質(A)と両性樹脂型分散剤(C)と水性液状媒体(D)とを含有する活物質の水性分散体を得、該水性分散体に導電助剤(B)とバインダーとを加え、合材インキを得ることができる。
導電助剤(B)とバインダーは、同時に加えることもできるし、導電助剤(B)を加えた後、バインダーを加えてもよいし、その逆であってもよい。
(4−2) 導電助剤(B)と両性樹脂型分散剤(C)と水性液状媒体(D)と含有する導電助剤の水性分散体を得、該水性分散体に活物質(A)とバインダーとを加え、合材インキを得ることができる。
活物質(A)とバインダー同時に加えることもできるし、活物質(A)を加えた後、バインダーを加えてもよいし、その逆であってもよい。
(4−3) 活物質(A)と両性樹脂型分散剤(C)とバインダーと水性液状媒体(D)と含有する活物質の水性分散体を得、該水性分散体に導電助剤(B)を加え、合材インキを得ることができる。
(4−4) 導電助剤(B)と両性樹脂型分散剤(C)バインダーと水性液状媒体(D)と含有する導電助剤の水性分散体を得、該水性分散体に活物質(A)を加え、合材インキを得ることができる。
(4−5) 活物質(A)と導電助剤(B)と両性樹脂型分散剤(C)とバインダーと水性液状媒体(D)をほとんど同時に混合し、合材インキを得ることができる。
合材インキを得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
前記したように、本発明の二次電池電極形成用組成物は、合材インキとしても使用できる他、下地層形成用組成物としても使用できる。
下地層形成用組成物は、導電助剤(B)と両性樹脂型分散剤(C)と水性液状媒体(D)とを含有する。さらにバインダーを含有することもできる。各成分については、合材インキの場合と同様である。
電極下地層に用いる組成物の総固形分に占める導電助剤としての炭素材料(B)の割合は、5重量%以上、95重量%以下が好ましく、10重量%以上、90重量%以下が更に好ましい。導電助剤である炭素材料(B)が少ないと、下地層の導電性が保てない場合があり、一方、導電助剤である炭素材料(B)が多すぎると、塗膜の耐性が低下する場合がある。また、電極下地層インキの適正粘度は、電極下地層インキの塗工方法によるが、一般には、10mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
本発明の二次電池電極形成用組成物のうち合材インキを、集電体上に塗工・乾燥し、合材層を形成し、二次電池用電極を得ることができる。
あるいは、本発明の二次電池電極形成用組成物のうち下地層形成用組成物を、集電体上に下地層を形成し、該下地層上に、合材層を設け、二次電池用電極を得ることもできる。下地層上に設ける合材層は、上記した本発明の合材インキ(1)〜(4)を用いて形成してもよいし、他の合材インキを用いて形成することもできる。
電極に使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池にあったものを適宜選択することができる。
例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。リチウムイオン電池の場合、特に正極材料としてはアルミニウムが、負極材料としては銅が、それぞれ好ましい。
又、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
又、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。電極合材層の厚みは、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。また、下地層を具備する場合には下地層と合材層との厚みの合計は、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
正極もしくは負極の少なくとも一方に上記の電極を用い、二次電池を得ることができる。
二次電池としては、リチウムイオン二次電池の他、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池、アルカリ二次電池、鉛蓄電池、ナトリウム硫黄二次電池、リチウム空気二次電池等が挙げられ、それぞれの二次電池で従来から知られている、電解液やセパレーター等を適宜用いることができる。
リチウムイオン二次電池の場合を例にとって説明する。電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。
電解質としては、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)3C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN、又はLiBPh4等が挙げられるがこれらに限定されない。
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等のラクトン類;
テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び
1,2−ジブトキシエタン等のグライム類;
メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;
ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、
アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。又これらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びそれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明の組成物を用いたリチウムイオン二次電池の構造については特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、n−ブタノール200.0部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、スチレン100.0部、2−アクリルアミド−2−メチルプロピルスルホン酸60.0部、ジメチルアミノエチルメタクリレート40.0部、およびV−601(和光純薬製)12.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、共重合体(1)溶液を得た。また、共重合体(1)の酸価は73.4(mgKOH/g)であった。
さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール23.3部添加し中和した。これは、スルホン酸を100%中和する量である。さらに、水を400部添加して水性化した後、100℃まで加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去した。
水で希釈し、不揮発分20%の両性樹脂型分散剤(1)の水溶液を得た。また、不揮発分20%の両性樹脂型分散剤(1)の水溶液の粘度は、40mPa・sであった。
表1に示す配合組成で、合成例1と同様の方法で合成し、合成例2〜22の分散剤を得た。
BzMA:ベンジルメタクリレート
ATBS:2−アクリルアミド−2−メチルプロピルスルホン酸
NaSS:4−スチレンスルホン酸ナトリウム
2−SEMA:2−スルホエチルメタクリレート
P−1M:2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学社製)
DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
DMAE:ジメチルアミノエタノール
導電助剤である炭素材料としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100)10部、合成例(1)に記載の両性樹脂型分散剤(1)の水溶液を10部(固形分として2部)、水80部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行い、二次電池電極用炭素材料分散体(1)を得た。
導電助剤である炭素材料としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100)10部、合成例(2)に記載の分散剤10部、水80部をニーダーに入れて分散を行い、二次電池電極用炭素材料分散体(2)を得た。
表2に示す導電助剤である炭素材料、分散剤を使用して、二次電池電極用炭素材料分散体(1)と同様の方法で、実施例3〜17の二次電池電極用炭素材料分散体(3)〜(17)と、比較例1〜9の二次電池電極用炭素材料分散体(18)〜(26)とを得、以下の方法にて、炭素材料分散体としての分散度を求めた。
二次電池電極用炭素材料分散体及び合材インキの分散度は、グラインドゲージによる判定(JISK5600−2−5に準ず)より求めた。
評価結果を炭素材料分散体の場合の結果を表2に示す。表中の数字は粗大粒子の大きさを示し、数値が小さいほど分散性に優れ、均一な二次電池電極用炭素材料分散体であることを示している。
[実施例18]
実施例1で調製した二次電池電極用炭素材料分散体(1)50部(アセチレンブラック固形分量として5部)に対して、正極活物質としてLiFePO4 45部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)8.3部、水50部を混合して、正極用の二次電池電極用合材インキを作製した。合材インキの分散度を、前述の炭素材料分散体の分散度の場合と同様にして求めた。
そして、この正極用の二次電池電極用合材インキを、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥して電極の厚みが100μmとなるよう調整した。
さらに、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが85μmとなる正極を作製し、柔軟性と密着性を以下の方法にて評価した。
上記で作製した電極を短冊状にして集電体側を直径3mmの金属棒に接するように巻きつけ、巻きつけ時に起こる電極表面のひび割れを、目視観察により判定した。ひび割れが起こらないものほど、柔軟性が良い。
○:「ひび割れなし(実用上問題のないレベル)」
○△:「ごくまれにひび割れが見られる(問題があるが、使用可能レベル)」
△:「部分的にひび割れが見られる」
×:「全体的にひび割れが見られる」
上記で作製した電極に、ナイフを用いて電極表面から集電体に達する深さまでの切込みを2mm間隔で縦横それぞれ6本の碁盤目の切込みを入れた。この切り込みに粘着テープを貼り付けて直ちに引き剥がし、活物質の脱落の程度を目視判定で判定した。評価基準を下記に示す。
○:「剥離なし(実用上問題のないレベル)」
○△:「わずかに剥離(問題はあるが使用可能レベル)」
△:「半分程度剥離」
×:「ほとんどの部分で剥離」
得られたコイン型電池について、充放電装置(北斗電工社製SM−8)を用い、充放電測定を行った。
使用する活物質がLiFePO4の場合は、充電電流1.2mAにて充電終止電圧4.2Vまで定電流充電を続けた。電池の電圧が4.2Vに達した後、放電電流1.2mAで放電終止電圧2.0Vに達するまで定電流放電を行った。これらの充電・放電サイクルを1サイクルとして5サイクルの充電・放電を繰り返し、5サイクル目の放電容量を初回放電容量とした。(初回放電容量を維持率100%とする)。
○:「変化率が95%以上。特に優れている。」
○△:「変化率が90%以上、95%未満。全く問題なし。」
△:「変化率が85%以上、90%未満。問題はあるが使用可能なレベル。」
×:「変化率が85%未満。実用上問題あり、使用不可。」
さらに、負極電極用の活物質として人造黒鉛を使用する場合(後述)は、充電電流1.5 mA、充電終止電圧0.1V、放電電流1.5mA,放電終止電圧2.0Vとした以外は、LiFePO4の場合と同様に充放電保存特性を測定出来る。
表3に示すように二次電池電極用炭素材料分散体を用いた以外は実施例18と同様にして、正極二次電池電極用合材インキ、および正極を得、同様に評価した。
正極活物質としてLiFePO4 45部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)8.3部、水50部を用い、二次電池電極用炭素材料分散体を用いない代わりに表3に示す導電助剤や分散剤とを用いた以外は実施例18と同様にして、正極二次電池電極用合材インキ、および正極を得、同様に評価した。
[実施例36]
実施例1で調製した二次電池電極用炭素材料分散体(1)10部(アセチレンブラック固形分量として1部)に対して、負極活物質として人造黒鉛96部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)5部、水90部を混合して、負極用の二次電池電極用合材インキを作製した。
この負極合材インキを集電体となる厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥して電極の厚みが100μmとなるよう調整した。ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが85μmとなる負極を作製し、正極の場合と同様に評価した。なお、充放電保持特性は、負極を作用極、金属リチウム箔を対極とした評価用コイン型電池を用いて、評価した。
表3に示すように二次電池電極用炭素材料分散体を用いた以外は実施例36と同様にして、負極二次電池電極用合材インキ、および負極を得、同様に評価した。
負極活物質として人造黒鉛96部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)5部、水90部を用い、二次電池電極用炭素材料分散体を用いない代わりに表3に示す導電助剤や分散剤とを用いた以外は実施例36と同様にして、負極二次電池電極用合材インキ、および負極を得、同様に評価した。
このことについては、導電助剤である炭素材料または活物質が、合材インキ中での分散制御が不十分な場合、電極とした時の均一な導電ネットワークが形成されないために、電極中で部分的凝集に起因する抵抗分布が生じてしまい、電池として使用した際の電流集中が起こるために劣化促進を引き起こしているのではないかと考察している。
また、導電助剤である炭素材料または活物質の分散制御が不十分な場合、電極の柔軟性、密着性も不十分な傾向が見られている。特に導電助剤である炭素材料の分散制御が不十分な場合、その傾向は顕著である。
そのため、本発明の二次電池電極用合材インキを使用した場合においては、導電助剤である炭素材料または活物質が合材インキ中で均一に分散されているため、改善が可能になったと考えられる。
正極活物質としてLiFePO4 45部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)5部、水50部を用い、合成例(1)に記載の両性樹脂型分散剤(1)の水溶液を10部(固形分として2部)用いた以外は実施例18と同様にして、二次電池正極用合材インキ、および正極を得、同様に評価した。
表4に示す分散剤、またはヒドロキシエチルセルロース2部を用いた以外は実施例42と同様にして、二次電池正極用合材インキ、および正極を得、同様に評価した。
負極活物質として人造黒鉛94部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)7部、水90部を用い、合成例(1)に記載の両性樹脂型分散剤(1)の水溶液を10部(固形分として2部)用いた以外は実施例36と同様にして、二次電池負極用合材インキ、および負極を得、同様に評価した。
[実施例46、47、比較例30、31]
表4に示す分散剤、またはヒドロキシエチルセルロース2部を用いた以外は実施例45と同様にして、二次電池負極用合材インキ、および負極を得、同様に評価した。
導電助剤である炭素材料としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100)10部、合成例(1)に記載の両性樹脂型分散剤(1)の水溶液を5部(固形分として1部)、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)4部、水81部をミキサーに入れて混合し、
更にサンドミルに入れて分散を行い、二次電池電極用下地層形成用組成物を得、グラインドゲージにて分散度を測定した。
そして、この下地層形成用組成物を、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、加熱乾燥し、厚みが8μmとなるように下地層を形成した。
次いで、前記下地層上に実施例35の二次電池正極用合材インキを塗布した後、減圧加熱乾燥して、以下実施例18と同様にして正極を得、同様に評価した。
[実施例49、比較例32]
表4に示す分散剤、またはヒドロキシエチルセルロース1部を用いた以外は実施例48と同様にして、二次電池電極用下地層形成用組成物を得、同様に評価した。
次いで、前記下地層上に表4に示す二次電池正極用合材インキを塗布した後、減圧加熱乾燥して、以下実施例18と同様にして正極を得、同様に評価した。
さらに、本発明の二次電池電極形成用組成物を下地層へ用いた場合、下地層を使用しない実施例35、および比較例11の評価結果と比較して、さらに良好となっていることが分かる。このことは、本発明の二次電池電極形成用組成物が、集電体と合材層との密着部分をより均一、かつ強固にしたためと考えられる。しかしながら、比較例32では、下地層用の二次電池電極形成用組成物の分散状態が不十分であり、電極とした場合においても、実施例49の評価結果と比較して劣る結果であった。このことは、集電体と合材層との密着状態がかえって不十分な状態となってしまったため、下地層を使用しない場合よりも電極として不均一な状態になってしまったためと考えられる。
Claims (3)
- 電極活物質(A)もしくは導電助剤である炭素材料(B)の少なくとも一方と、下記単量体を共重合してなる共重合体中のスルホ基あるいはリン酸基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和してなる両性樹脂型分散剤(C)と、水性液状媒体(D)とを含有する、二次電池電極形成用組成物であって、両性樹脂型分散剤(C)の酸価が、20mgKOH/g以上600mgKOH/g以下であり、両性樹脂型分散剤(C)の固形分20%水溶液における粘度が、5〜100,000mPa・sである二次電池電極形成用組成物。
芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1):5〜70重量%
スルホ基あるいはリン酸基を有するエチレン性不飽和単量体(c2):10〜70重量%
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3):1〜80重量%
前記(c1)〜(c3)以外のその他の単量体(c4):0〜79重量%
(但し、前記(c1)〜(c4)の合計を100重量%とする) - 集電体と、請求項1記載の二次電池電極形成用組成物から形成される合材層もしくは電極下地層の少なくとも一層とを具備する二次電池用電極。
- 正極と負極と電解液とを具備する二次電池であって、前記正極もしくは前記負極の少なくとも一方が、請求項2記載の二次電池用電極である、二次電池。
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