(1)調査結果
実施形態の説明に先立ち、本願発明者が行った調査結果について説明する。
図1〜図4は、この調査で使用したサンプルの製造途中の平面図である。このサンプルは、プレーナ型のFeRAMであり、以下のようにして製造される。
まず、図1(a)に示すように、シリコン基板101の上方に、第1の導電膜102としてプラチナ膜をスパッタ法で150nmの厚さに形成する。なお、第1の導電膜102を形成する前に、密着膜としてアルミナ膜を20nmの厚さに形成してもよい。
次いで、第1の導電膜102の上にスパッタ法でPZT膜を140nmの厚さに形成し、そのPZT膜を強誘電体膜103とする。スパッタ法で形成された強誘電体膜103は成膜の時点では結晶化しておらず、強誘電体特性に乏しい。そこで、酸素含有雰囲気中で強誘電体膜103をアニールすることにより、その強誘電体膜103中のPZTを結晶化し、強誘電体膜103の強誘電体特性を高める。
その後に、強誘電体膜103の上に第2の導電膜104としてスパッタ法で酸化イリジウム膜を150nmの厚さに形成する。
続いて、図1(b)に示すように、フォトリソグラフィとエッチングにより第2の導電膜104をパターニングし、複数の島状の上部電極104aを形成する。
そして、図2(a)に示すように、シリコン基板1の上側全面にフォトレジスト105を塗布する。
その後、図2(b)に示すように、フォトレジスト105を露光、現像し、複数の上部電極104aを共通に覆うストライブ状のレジストパターン105aを形成する。
次に、図3(a)に示すように、レジストパターン105aをマスクにしながら強誘電体膜103をドライエッチングする。これにより、第1の導電膜102の上に、複数の上部電極104aに共通のストライプ状のキャパシタ誘電体膜103aが形成されることになる。
但し、そのようなドライエッチングでは、強誘電体膜103中のPZTから鉛がエッチング雰囲気に放出され、その鉛を含む反応性生物がレジストパターン105aの側面に付着する。そのような反応生成物は、以降の工程において飛散することにより、電極等のデバイスパターン同士を電気的に短絡させてしまい、歩留まり低下の原因となる。
特に、ストライプ状のレジストパターン105aの端部は、レジストパターン105aの配置が疎な部分と密な部分との境目にあり、このような部分では他の部分よりも反応生成物が多く付着する。
そこで、本工程では、レジストパターン105aの側面が後退するような条件を用いることにより、その側面の反応生成物を削ぎ落としながらドライエッチングを行い、反応生成物がなるべく残らないようにする。
レジストパターン105aの側面を後退させるには、例えば、塩素とアルゴンとの混合ガスをエッチングガスとして用いればよい。
この後に、レジストパターン105aは除去される。
続いて、図3(b)に示すように、フォトリソグラフィとエッチングにより第1の導電膜102をパターニングすることにより、ストライプ状の下部電極102aを形成する。
ここまでの工程により、シリコン基板101の上方には、各上部電極104aに対応して複数の強誘電体キャパシタQ1〜Q3が形成されたことになる。図示のように、各々のキャパシタQ1〜Q3は、下部電極102aとキャパシタ誘電体膜103aとを共有する。
次いで、図4に示すように、シリコン基板1の上側全面に層間絶縁膜107としてCVD法により酸化シリコン(SiO2)膜を1400nmの厚さに形成し、更にその上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により平坦化する。その後に、層間絶縁膜107をパターニングして、各上部電極104aの上にホール107aを形成する。
その後に、上部電極104aと電気的なコンタクトをとるために導体プラグ109をホール7a内に形成する。
図5は、図4のI−I線に沿う断面図である。
上記の導体プラグ109を形成するにあたっては、まず、スパッタ法によりグルー膜110として窒化チタン膜を100nmの厚さに形成し、更にその上にCVD法によりタングステン膜111を300nmの厚さに形成して、ホール7aを完全に埋め込む。
そして、層間絶縁膜107の上の余分なグルー膜110とタングステン膜111とをCMP法により研磨して除去し、それらをホール107a内にのみ導体プラグ109として残す。
以上により、このサンプルの基本構造が完成する。
図3(a)を参照して説明したように、この例では、強誘電体膜103をドライエッチングしてキャパシタ誘電体膜103aを形成するときに、レジストパターン105aの側面を後退させることにより、該側面に反応生成物が付着しないようにした。
図6(a)は、これとは異なり、レジストパターン105aの側面を後退させなかった場合のサンプルをSEM(Scanning Electron Microscope)により観察し、その観察像を基にして描いた斜視図である。また、図6(b)は、その断面図である。
これらに示されるように、レジストパターン105aの側面を後退させないと、その側面があった部分に反応生成物115がフェンス状に付着してしまう。その反応生成物115が剥離すると、後の工程でデバイス表面に反応生成物115が再付着して、歩留まりが低下するおそれがある。
そのような反応生成物115の発生は、上記のようにレジストパターンを後退させることで抑制することができる。
ところが、本願発明者が調査を進めたところ、反応生成物115のような顕著な副生成物ではないものの、レジストパターン105aを後退させた場合でも上部電極104a上にエッチング残渣が残ることがあることが明らかとなった。
図7は、レジストパターン105aを除去した後に、そのようなエッチング残渣をSEMにより観察し、それを基にして描いた平面図である。
これに示されるように、上部電極104aの上において、後退後のレジストパターン105aの側面があった部分にエッチング残渣116が残る。
そのエッチング残渣116は、強誘電体膜103中の鉛とレジストパターン105aとが反応して生成されたと考えられ、レジストパターン105aを除去するためのアッシング工程や水洗工程では取り難く、これらの工程以降にも残り続けてしまう。
しかしながら、そのエッチング残渣116は、以下のように強誘電体キャパシタQ1〜Q3の品質を劣化させる要因になり得る。
図8は、導体プラグ109を形成した後に、ストライプ状のキャパシタ誘電体膜103aの端部の強誘電体キャパシタQ1の断面をSEMにより観察し、それを基にして描いた断面図である。
なお、微小なエッチング残渣116は図8では現れていないが、そのエッチング残渣116の上に導体プラグ109は形成されている。
この場合、エッチング残渣116がある部分において、グルー膜110の膜厚が薄くなって水素等に対するバリア性が低下する。そのため、タングステン膜111を形成するときの水素がグルー膜110を透過し、その水素によって上部電極104aの酸化イリジウムが還元されてしまうので、還元によって酸素が抜けた部分の上部電極104aに図示のような空洞104xが形成されてしまうことになる。
空洞104xが形成されるのは、導体プラグ109とエッチング残渣116とが重なる端部のキャパシタQ1においてである。しかし、残りのキャパシタQ2、Q3も、以下のようにこのエッチング残渣116の影響を受ける。
図9は、上記の強誘電体キャパシタQ1〜Q3の残留分極電荷量(Qsw)を調査して得られたグラフである。
これに示されるように、各キャパシタQ1〜Q3のうち、空洞104xが形成された端部のキャパシタQ1の残留分極電荷量が最も小さい。
また、端から二個目のキャパシタQ2は、その上部電極104aに空洞104xが形成されていないにも関わらず、三個目のキャパシタQ3よりも残留分極電荷量が低下してしまっている。これは、端部のキャパシタQ1の空洞104xから水素等の還元性物質がキャパシタ誘電体膜103aに侵入し、二個目のキャパシタQ2の下のキャパシタ誘電体膜103aを劣化させたためと考えられる。
以上のように、この例では、複数のキャパシタの並びのうち端部のキャパシタQ1においてエッチング残渣116と導体プラグ109とが重なってしまう。その結果、キャパシタQ1の上部電極104aに空洞104xが形成されると共に、端から二個目のキャパシタQ2の強誘電体特性も劣化してしまう。
端部のキャパシタQ1では、上部電極104a等のデバイスパターンの配置の疎密が他のキャパシタQ2、Q3におけるのとは異なるので、エッチングレート等もこれらのキャパシタQ1、Q2とは異なった傾向となり、そもそもデバイスパターンの形状が崩れ易い。したがって、端部のキャパシタQ1については回路を構成しないダミーキャパシタとする場合が多く、空洞104xが形成された場合でも回路に特段の影響を与えない。
しかし、キャパシタQ2は回路を構成する真のキャパシタであるため、上記のように強誘電体特性が劣化したのでは、半導体装置の歩留まりが低下するおそれがある。
このような問題を回避するため、例えば、スパッタ法よりもカバレッジ特性が良好なCVD法でグルー膜110を形成することにより、エッチング残渣116が存在する部分のグルー膜110の膜厚を維持し、グルー膜110の水素バリア性を確保することも考えられる。
しかし、CVD法による窒化チタン膜の成膜雰囲気には水素が含まれているので、グルー膜110の成膜時に上部電極104aの酸化イリジウムが還元されてしまい、上部電極104aの還元を回避することはできない。
また、酸化イリジウムよりも還元され難いイリジウム等の貴金属を上部電極104aの材料とすることにより、上部電極104aの還元を防止することも考えられる。
しかしながら、貴金属は水素を活性化する機能を有するので、キャパシタの製造途中において外部雰囲気中の水素が上部電極104aに触れると、それにより活性化した水素によってキャパシタ誘電体膜103aが還元され、残留分極電荷量等の強誘電体特性が低下してしまう。
本願発明者は、このような調査結果に基づき、以下に説明するような実施形態を着想するに至った。
(2)第1実施形態
図10〜図33は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。これらのうち、図10〜図22はワード線方向に直交する方向の断面図であり、図23〜図33は、ワード線方向の断面図である。
また、図34〜図41は、この半導体装置の製造途中の平面図である。
この半導体装置はプレーナ型のFeRAMであって、以下のようにして製造される。
最初に、図10(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、n型又はp型のシリコン(半導体)基板1に素子分離溝を形成し、その中に酸化シリコン膜等の絶縁膜を素子分離絶縁膜2として埋め込む。このような素子分離構造はSTI(Shallow Trench Isolation)と呼ばれる。これに代えて、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)により素子分離を行ってもよい。
次いで、シリコン基板1のメモリセル領域にpウェル3を形成する。
その後、シリコン基板1の活性領域表面を熱酸化し、ゲート絶縁膜4となる熱酸化膜を形成する。更に、シリコン基板1の上側全面に多結晶シリコン膜を形成し、これをパターニングしてゲート電極5を形成する。メモリセル領域における一つのpウェル3上には、ワード線の一部となる二つのゲート電極5がほぼ平行に配置される。
続いて、ゲート電極5の両側のpウェル3内にn型不純物をイオン注入してn型ソース/ドレインエクステンション6a、6bを形成する。そして、シリコン基板1の上側全面に絶縁膜を形成した後、その絶縁膜をエッチバックしてゲート電極5の横に絶縁性サイドウォール7として残す。その絶縁膜として、例えば、CVD法により酸化シリコン膜を形成する。
更に、ゲート電極5と絶縁性サイドウォール7とをマスクに使用して、pウェル3にn型不純物を再びイオン注入することにより、ゲート電極5の横のシリコン基板1にn型ソース/ドレイン領域8a、8bを形成する。
なお、二つのゲート電極5に挟まれるn型ソース/ドレイン領域8bはビット線の一部として機能し、また、pウェル3の両側の二つのn型ソース/ドレイン領域8aは後述するキャパシタの上部電極に電気的に接続される。
次いで、シリコン基板1の上側全面にコバルト層等の高融点金属層をスパッタ法により形成する。そして、その高融点金属層をアニールしてシリコンと反応させ、n型ソース/ドレイン領域8a、8bの表層に高融点金属シリサイド層9を形成する。その後に、素子分離絶縁膜2等の上で未反応となっている高融点金属層をウエットエッチングにより除去する。
ここまでの工程により、pウェル3の上に、ゲート電極5とn型ソース/ドレイン領域8a、8b等を備えたn型MOSトランジスタの基本構造が完成する。
図34(a)はこの工程を終了した後の平面図である。なお、同図では、絶縁性サイドウォール7と高融点金属シリサイド層9を省略してある。また、先の図10(a)は、図34(a)のA1−A1線に沿う断面図に相当する。
次に、図10(b)に示すように、シリコン基板1の上側全面にCVD法によりカバー絶縁膜14を形成する。そのカバー絶縁膜14は、下から順に、厚さ約20nmの酸化シリコン膜と厚さ約80nmの窒化シリコン(SiN)膜とをこの順に積層してなる。
更に、このカバー絶縁膜14の上に、TEOSガスを使用するプラズマCVD法により第1の層間絶縁膜15として酸化シリコン膜を形成した後、その第1の層間絶縁膜15の上面をCMP法により研磨して平坦化する。そのような研磨の結果、第1の層間絶縁膜15の厚さは、シリコン基板1の平坦面上で約700nmとなる。
そして、これらカバー絶縁膜14と第1の層間絶縁膜15とをフォトリソグラフィとエッチングによりパターニングして、n型ソース/ドレイン領域8a、8bにコンタクトホール12a、12bを形成する。
続いて、コンタクトホール12a、12bの内面と第1の層間絶縁膜15の上面にスパッタ法によりグルー膜を形成した後、そのグルー膜の上にCVD法によりタングステン膜を形成し、このタングステン膜でコンタクトホール12a、12bを完全に埋め込む。なお、グルー膜としては、例えば厚さ約30nmのチタン膜と厚さ約20nmの窒化チタン膜がこの順に形成される。
そして、第1の層間絶縁膜15の上の余分なグルー膜とタングステン膜とをCMP法により研磨して除去し、これらの膜をコンタクトホール12a、12b内にのみ第1の導体プラグ13a、13bとして残す。
第1の導体プラグ13a、13bの直径は特に限定されない。本実施形態ではその直径を約0.25μmとする。
このようにして形成された第1の導体プラグ13a、13bは、酸化され易いタングステンを主成分とするため、酸素含有雰囲気において容易に酸化してコンタクト不良を起こし易い。
そこで、次の工程では、図11(a)に示すように、第1の導体プラグ13a、13bと第1の層間絶縁膜の15の上に、プラグの酸化を防ぐ酸化防止絶縁膜16として、酸窒化シリコン(SiON)膜をCVD法により100nmの厚さに形成する。
次いで、この酸化防止絶縁膜16の上に絶縁性密着膜17としてCVD法により酸化シリコン膜を厚さ約130nmに形成する。
更に、この絶縁性密着層17の上にスパッタ法でアルミナ膜を厚さ約20nmに形成し、それを下地絶縁膜18とする。
次に、図11(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、下地絶縁膜18の上に、スパッタ法により第1の導電膜19としてプラチナ膜を形成する。第1の導電膜19は、後でパターニングされてキャパシタ下部電極になり、その膜厚は約150nmである。
また、第1の導電膜19はプラチナ膜に限定されない。プラチナに代えて、イリジウム等の貴金属、あるいは酸化プラチナや酸化イリジウム(IrO2)等の酸化貴金属を第1の導電膜19の材料として採用してもよい。
更に、第1の導電膜19の上に、スパッタ法によりPZT(Lead Zirconate Titanate: PbZrTiO3)膜を約140nmの厚さに形成して、このPZT膜を強誘電体膜20とする。
なお、強誘電体膜20の成膜方法としては、スパッタ法の他に、MOCVD(Metal Organic CVD)法やゾル・ゲル法もある。
強誘電体膜20の材料はPZTに限定されない。その材料としては、SrBi2Ta2O9、SrBi2(TaxNb1-x)2O9、Bi4Ti2O12等のBi層状構造化合物や、PZTにランタンをドープしたPLZT(Pb1-xLaxZr1-yTiyO3)、或いはその他の金属酸化物強誘電体を採用し得る。
ここで、スパッタ法で形成されたPZTは、成膜直後では殆ど結晶化しておらず、強誘電体特性に乏しい。そこで、強誘電体膜20のPZTを結晶化させるための結晶化アニールとして、酸素含有雰囲気中で基板温度を約585℃とするRTA(Rapid Thermal Anneal)を約90秒間行う。なお、MOCVD法で強誘電体膜20を形成する場合は、この結晶化アニールは不要である。
また、上記のように下地絶縁膜18の上に第1の導電膜19を形成したことで、下地絶縁膜18を省く場合と比較して第1の導電膜19中のプラチナの配向性が良好となっている。そして、このような第1の導電膜19の配向の作用によって、強誘電体膜20中のPZTの配向が揃えられ、強誘電体膜20の強誘電体特性が向上する。
更に、上記の強誘電体膜20の上に、スパッタ法で酸化イリジウム膜を厚さ約250nmに形成し、この酸化イリジウム膜を第2の導電膜21とする。
第2の導電膜21は酸化イリジウム膜に限定されず、イリジウム、プラチナ、SRO(SrRuO3)、LNO(LaNiO)、LSCO(LaSrCuO)、ルテニウム、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化ロジウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、及び酸化パラジウムのいずれかの単層膜、或いはこれらの積層膜を第2の導電膜21として形成し得る。
このうち、酸化イリジウム膜等の酸化貴金属膜は、プラチナ等の純粋な貴金属膜と比較して、成膜雰囲気や外部雰囲気に含まれる水素を活性化する能力が低いので、活性化された水素によって強誘電体膜20が還元される危険性を低減することができる。
続いて、図12(a)及び図23(a)に示すように、第2の導電膜21の上に、マスク材料膜22としてスパッタ法により窒化チタン膜を約20nmの厚さに形成する。なお、マスク材料膜22は、レジストよりもエッチレートが低い膜であれば特に限定されない。例えば、窒化チタン膜に代えて窒化チタンアルミニウム(TiNAl)膜をマスク材料膜22として形成してもよい。
更に、このマスク材料膜22の上にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像して、キャパシタ上部電極形状の第1のレジストパターン23を形成する。
そして、図12(b)及び図23(b)に示すように、第1のレジストパターン23をマスクにしてマスク材料膜22をドライエッチングすることにより、上部電極形状のハードマスク22aを形成する。このドライエッチングは、ICP(Inductively Coupled Plasma)エッチング装置を用いて行われ、塩素ガスとアルゴンガスとの混合ガスがエッチングガスとして使用される。
次に、図13(a)及び図24(a)に示すように、上記のICPエッチング装置を引き続き用いて、ハードマスク22aと第1のレジストパターン23とをマスクにして第2の導電膜21aをドライエッチングすることにより、上部電極21aを形成する。
このドライエッチングにおけるエッチングガスは特に限定されないが、本実施形態では塩素とアルゴンとの混合ガスが使用される。
このようなエッチング雰囲気に曝された第1のレジストパターン23はダメージを受けその側面が後退するが、上部電極21aの上面はハードマスク22aによって保護されているので、上部電極21aの上面にエッチングが及ぶことはない。
図35はこの工程を終了した後の平面図である。先の図13(a)は、図35のA2−A2線に沿う断面図に相当する。また、図24(a)は、図35のB1−B1線に沿う断面図に相当する。
図35に示されるように、上部電極21aは島状の平面形状を有し、ワード線の一部であるゲート電極5の延在方向に沿って間隔をおいて複数形成される。
本実施形態では、そのような上部電極21aの並びのうち、両端部にある上部電極21aの幅W1を、他の上部電極21aの幅W2よりもゲート電極5の延在方向に広くする。
この後に、過酸化水素水(H2O2)と水酸化アンモニウム(NH4OH)溶液との混合溶液よりなるエッチング液にシリコン基板1を浸すことにより、ハードマスク22a(図13(a)参照)をウエットエッチングして除去する。
なお、上部電極21aを形成したときに強誘電体膜20が受けたダメージを回復させるため、ハードマスク22aを除去後に酸素含有雰囲気中でアニールを行ってもよい。そのアニールは回復アニールと呼ばれ、本実施形態では基板温度を650℃として回復アニールを行う。
続いて、図13(b)及び図24(b)に示すように、シリコン基板1の上側全面にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像して、上部電極21aの上に第2のレジストパターン27を形成する。
図36は、本工程を終了後の平面図である。なお、先の図13(b)は、図36のA3−A3線に沿う断面図に相当する。また、図24(b)は、図36のB2−B2線に沿う断面図に相当する。
図36に示されるように、第2のレジストパターン27の平面形状は、ワード線方向、すなわちゲート電極5の延在方向に延びるストライプ状であって、上部電極21aの各々がその第2のレジストパターン27によって覆われる。
次に、図14(a)及び図25(a)に示すように、第2のレジストパターン27をマスクにして強誘電体膜20をドライエッチングし、キャパシタ誘電体膜20aを形成する。このドライエッチングも、第2の導電膜21のエッチング(図13(a))と同様に、ICPエッチング装置を用いて行われる。
このドライエッチングでは、強誘電体膜20に含まれる鉛がエッチング雰囲気中に放出され、その鉛が第2のレジストパターン27の側面に反応生成物としてフェンス状に付着することがある。
そのように反応生成物が付着するのを防止するため、本実施形態では第2のレジストパターン27の側面が後退するエッチング条件でこのドライエッチングを行い、レジスト側面に付着する反応生成物を削ぎ落とすようにする。
第2のレジストパターン27の側面を後退させるエッチング条件は特に限定されないが、塩素ガスを含むエッチングガスを使用することにより側面の後退が容易になるので、本実施形態では塩素ガスとアルゴンガスとの混合ガスをエッチングガスとして使用する。
図37は、このようにして強誘電体膜20をドライエッチングした後の平面図であって、
先の図14(a)は図37のA4−A4線に沿う断面図に相当し、図25(a)は図37のB3−B3線に沿う断面図に相当する。
図37に示されるように、キャパシタ誘電体膜20aは、島状の複数の上部電極21aに共通のストライプ状の平面形状を有する。
また、上記したようなレジスト側面の後退の結果、第2のレジストパターン27の端部の側面27bは、上部電極21aの並びのうちの両端の上部電極21a上に位置するようになる。
但し、両端の上部電極21aについては、既述のようにゲート電極5の延在方向に幅を広げ、その上部電極21aを覆うように当初の第2レジストパターン27を形成したので、側面27bの後退は上部電極21aの周縁部にのみ留まることになる。
その結果、第2のレジストパターン27の側面27bが、後で形成される層間絶縁膜のホールの形成予定領域Cに重なることはなく、形成予定領域Cは第2のレジストパターン27に覆われたままとなる。よって、仮に後退後の第2のレジストパターン27の側面27bに対応する部分の上部電極21a上にエッチング残渣が発生しても、ホールの形成予定領域Cにそのエッチング残渣が重なるのを防止できる。
この後に、第2のレジストパターン27は除去される。
ここで、強誘電体膜20をパターニングしてキャパシタ誘電体膜20aを形成したとき、キャパシタ誘電体膜20aがダメージを受け、その強誘電体特性が劣化しているおそれがある。そのダメージは酸素雰囲気中での回復アニールにより回復される。その回復アニールは、例えば基板温度650℃の条件下で行われる。
続いて、図14(b)、図25(b)に示すように、第1の導電膜19、キャパシタ誘電体膜20a、及び上部電極21aの上に、第1の水素バリア絶縁膜28としてスパッタ法によりアルミナ膜を厚さ約50nmに形成する。
第1の水素バリア絶縁膜28は、還元され易いキャパシタ誘電体膜20aを水素等の還元性物質から保護するために形成され、アルミナ膜の他、PZT膜、PLZT膜、及び酸化チタン膜のいずれかであってもよい。
次に、図15(a)及び図26(a)に示すように、第1の水素バリア絶縁膜28の上にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像して第3のレジストパターン30とする。
図38は、この工程を終了後の平面図である。そして、先の図15(a)は図38のA5−A5線に沿う断面図に相当し、図26(a)は図38のB4−B4線に沿う断面図に相当する。
図38に示されるように、第3のレジストパターン30の平面形状は、キャパシタ誘電体膜20aを覆うストライプ状である。
次に、図15(b)及び図26(b)に示すように、第3のレジストパターン30をマスクにして第1の水素バリア絶縁膜28、第1の導電膜19、及び下地絶縁膜18をドライエッチングして、エッチングされずに残存する第1の導電膜19を下部電極19aとする。
そのドライエッチングの条件は特に限定されないが、本実施形態ではICPエッチング装置を用い、塩素ガスとアルゴンガスとの混合ガスをエッチングガスとして使用することにより行われる。
図39は、本工程を終了した後の平面図である。そして、先の図15(b)は図39のA6−A6線に沿う断面図に相当し、図26(b)は図39のB5−B5線に沿う断面図に相当する。
図39に示されるように、ここまでの工程により、シリコン基板1のセル領域には、ゲート電極5の延在方向に沿って複数の強誘電体キャパシタQ1〜Qnが並んで形成されたことになる。キャパシタQ1〜Qnの各々は、下部電極19aとキャパシタ誘電体膜20aとを共有しており、複数の上部電極21aに対応して形成される。
ここで、キャパシタQ1〜Qnの並びにおいて、両端以外のキャパシタQ2、Q3を含む領域では、上部電極19a等のデバイスパターンの配置の疎密が場所によらず略一定であるため、エッチング速度等が場所により大きく異なることはない。
これに対し、両端のキャパシタQ1、Qnでは、デバイスパターンの配置の疎密が他のキャパシタのそれとは異なるため、エッチング速度等が他のキャパシタにおけるのと異なる値になり、上部電極19a等の平面形状が崩れ易い。そのため、本実施形態では、回路を構成する真のキャパシタとして両端のキャパシタQ1、Qnを使用せず、それらをダミーキャパシタとして使用する。ダミーキャパシタQ1、Qnの上部電極19aは、デバイス内の他の素子等と電気的に接続されることはなく、電気的に孤立した状態となる。
一方、キャパシタQ2、Q3については、回路を構成する真のキャパシタとして使用する。
この後に、第3のレジストパターン30は除去される。
次いで、図16及び図27に示されるように、水素等の還元性物質からキャパシタ誘電体膜20aを保護する第2の水素バリア絶縁膜32として、厚さが約20nmのアルミナ膜をシリコン基板1の上側全面にスパッタ法で形成する。なお、アルミナ膜に代えて、PZT膜、PLZT膜、及び酸化チタン膜のいずれかを形成してもよい。
そして、この第2の水素バリア絶縁膜32の上に第2の層間絶縁膜33としてCVD法により酸化シリコン膜を約1400nmの厚さ形成した後、その表面をCMP法により研磨して平坦化する。研磨後の第2の層間絶縁膜33の膜厚は、上部電極21a上で約770nmとなる。
このCMPを終了した後に、第2の層間絶縁膜33を脱水するためのアニールを行ってもよい。そのような脱水アニールは、例えばN2Oプラズマ雰囲気中で行われる。
更に、第2の層間絶縁膜33の上にスパッタ法によりアルミナ膜を厚さ約50nmに形成し、そのアルミナ膜を第3の水素バリア絶縁膜34とする。第3の水素バリア絶縁膜34は、第2の水素バリア絶縁膜32と同様に、水素等の還元性物質からキャパシタ誘電体膜20aを保護する役割を担う。そのような機能を有する膜には、アルミナ膜の他に、PZT膜、PLZT膜、及び酸化チタン膜もある。
そして、この第3の水素バリア絶縁膜34の上にCVD法で酸化シリコン膜を厚さ約300nmに形成し、その酸化シリコン膜をキャップ絶縁膜35とする。
次いで、図17及び図28に示すように、キャップ絶縁膜35の上にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像して第4のレジストパターン36を形成する。
そして、第4のレジストパターン36の窓36aを通じてドライエッチングを行うことにより、上部電極21aの上の各絶縁膜28、32〜35に第1のホール33aを形成する。このドライエッチングは、例えば、C4F8、Ar、O2、及びCOの混合ガスをエッチングガスとする平行平板プラズマエッチング装置で行われる。
また、図28に示されるように、このエッチングによって下部電極19aの端部のコンタクト領域CRの上の各絶縁膜28、32〜35には第2のホール33bが形成される。
ここで、図37を参照して説明したように、ホールの形成予定領域Cには第2のレジストパターン27に起因したエッチング残渣は存在しないので、第1のホール33a内にそのエッチング残渣が現れることはない。
この後に、第4のレジストパターン36は除去される。
次に、図18及び図29に示すように、ここまでの工程でキャパシタ誘電体膜20aが受けたダメージを回復させるため、酸素含有雰囲気中において回復アニールを行う。
このとき、第1の導体プラグ13a、13bは、酸化防止絶縁膜16により酸化が防止される。
次いで、図19及び図30に示すように、シリコン基板1の上側全面にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像して第5のレジストパターン39を形成する。
そして、第5のレジストパターン39が備える窓39aを通じてドライエッチングを行い、第1の導体プラグ13a、13bの上方の各絶縁膜17、32〜35に第3のホール33cを形成する。
このドライエッチングは、C4F8、Ar、O2、及びCOの混合ガスをエッチングガスとする平行平板プラズマエッチング装置で行われ、酸窒化シリコンよりなる酸化防止絶縁膜16がこのエッチングにおけるストッパとなる。
この後に、第5のレジストパターン39は除去される。
続いて、図20及び図31に示すように、CHF3、Ar、及びO2の混合ガスをエッチングガスとして用い、平行平板型エッチング装置において第3のホール33cの下の酸化防止絶縁膜16をエッチングする。
これにより、第3のホール33c内に第1の導体プラグ13a、13bが露出すると共に、第1及び第2のホール33a、33b内の異物が除去されて、これらのホール33a、33bから露出する上部電極21aと下部電極19aの上面が清浄化される。
次に、図21及び図32に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、第1〜第3ホール33a〜33cの内面とキャップ絶縁膜35の上面に、グルー膜37aとして窒化チタン膜をスパッタ法で約100nm程度の厚さに形成する。そのスパッタ法は、例えば、窒素ガスとアルゴンガスとの混合雰囲気中でチタンターゲットをスパッタすることにより行われる。このように水素を含まない雰囲気中でグルー膜37aを成膜することで、上部電極21aが還元してその中に空洞が発生するのを抑制できる。
そして、グルー膜37aの上にCVD法でタングステン膜37bを300nm程度の厚さに形成し、このタングステン膜37bで各ホール33a〜33cを完全に埋め込む。
タングステン膜37bを形成するにあたっては、シラン(SiH4)ガス、六フッ化タングステン(WF6)ガス、及び水素ガスの混合ガスが反応ガスとして使用される。
その後に、キャップ絶縁膜35の上の余分なグルー膜37aとタングステン膜37bとをCMP法により研磨して除去し、これらの膜を各ホール33a〜33c内にのみ第2の導体プラグ(導電材料)37として残す。これらの導体プラグ37のうち、キャパシタQの上方に形成されたものは、上部電極21aと電気的に接続される。
このように導体プラグ37を形成するとき、既述のように第1のホール33a内には第2のレジストパターン27に起因したエッチング残渣がないので、そのエッチング残渣に起因してグルー膜37aのカバレッジが低下するのを防止できる。
これにより、第1のホール33aの内面において、タングステン膜37bの成膜雰囲気に含まれる水素等の還元性物質をバリアするのに十分な厚さにグルー膜37を形成することができ、水素等によって上部電極21a中の酸化イリジウムが還元されるのを抑制できる。
図40は、この工程を終了した後の平面図である。なお、先の図21は図40のA7−A7線に沿う断面図に相当し、図32は図40のB6−B6線に沿う断面図に相当する。
上記したような上部電極21aの還元を防止するには、端部の上部電極21aの幅W1をなるべく広くするのが好ましい。そして、そのような効果を得やすくするには、キャパシタ誘電体膜20aの側面20bと端部の第1のホール33aとの間隔Dが、端部以外の上部電極21aの幅W2よりも大きくなる程度に、端部の上部電極21aの幅W1を広くするのが好ましい。
次いで、図22及び図33に示すように、キャップ絶縁膜35と第2の導体プラグ37のそれぞれの上面にスパッタ法により金属積層膜を形成し、それをパターニングして一層目金属配線40とする。
その金属積層膜としては、例えば、厚さ約60nmのチタン膜、厚さ約30nmの窒化チタン膜、厚さ約360nmの銅含有アルミニウム膜、厚さ約5nmのチタン膜、及び厚さ約70nmの窒化チタン膜をこの順に形成する。
なお、パターニングの前に、この金属積層膜の上に反射防止膜として酸窒化シリコン膜を形成してもよい。
図41は、この工程を終了後の平面図であり、先の図22は図41のA8−A8線に沿う断面図に相当し、図33は図41のB7−B7線に沿う断面図に相当する。
図41に示されるように、上部電極21aの並びのうち、端部以外の上部電極21aは、この一層目金属配線40と第2の導体プラグ37とを介してn型ソース/ドレイン領域8aと電気的に接続される。
一方、端部の上部電極21aの上では一層目金属配線40は電気的に孤立しており、端部の上部電極21aはn型ソース/ドレイン領域8aとは接続されない。これについては、後述の第2〜第4実施形態でも同じである。
この後は、層間絶縁膜と金属配線とを交互に積層して多層配線構造を作製する工程に移るが、その詳細については省略する。
以上により、本実施形態に係る半導体装置の基本構造が完成した。
上記した半導体装置の製造方法によれば、図35を参照して説明したように、上部電極21aの並びの両端の上部電極21aの幅W1を、他の上部電極21aの幅W2よりも広くした。これにより、図37に示したように、第2のレジストパターン27の側面27bが後退する条件で強誘電体膜20をドライエッチングしても、後退後の第2のレジストパターン27の側面27bを上部電極21aのホール形成予定領域Cから隔離することができる。
その結果、端部の上部電極21aの上面において第2のレジストパターン27の側面27bが存在していた部位に、第2のレジストパターン27に起因したエッチング残渣が残っても、第1のホール33a(図40参照)内にそのエッチング残渣が現れない。したがって、このエッチング残渣に起因してグルー膜37bのカバレッジが低下するのを防止できりため、タングステン膜37bの成膜雰囲気に含まれる水素が上部電極21aに侵入しようとするのをグルー膜37bによって阻止でき、上部電極21aの還元を防止できるようになる。
このような利点を得るための上部電極21aの幅W1の広さは特に限定されないが、端部以外の上部電極21aの幅W2よりも幅W1を広くするのが好ましい。
本願発明者は、このように端部の上部電極21aの幅を広げることで、実際にキャパシタの特性がどの程度改善するのかについて調査した。
その調査結果を図42に示す。
この調査では、端部の上部電極21aの幅W1をそれ以外の上部電極21aの幅W2よりも1μm広くし、キャパシタQ1〜Q3のスイッチング電荷量(Qsw)を測定した。
図42に示されるように、ダミーキャパシタとして使用する端部のキャパシタQ1は、他のキャパシタQ2、Q3よりもスイッチング電荷量が低下しているものの、上部電極を広げない場合(図9)よりもスイッチング電荷量が改善している。これにより、端部のキャパシタQ1をダミーとしてではなく真のキャパシタとして使用することもできるようになる。
また、図9に示したように、上部電極を広げない場合では端部から二つ目のキャパシタQ2のスイッチング電荷量は、端部のキャパシタQ1につられてそのスイッチング電荷量が低下した。
これに対し、本実施形態では、図42のように二つ目のキャパシタQ2のスイッチング電荷量も図9の場合よりも向上する。このことから、端部のキャパシタQ1の上部電極21aの幅W1を広げることが、その隣に形成した真のキャパシタQ2のスイッチング電荷量を向上するのに有効であり、強誘電体キャパシタを備えた半導体装置の品質向上に寄与することが明らかとなった。
また、図43は、端部の上部電極21aの幅W1を図42の場合よりも更に広げ、他の上部電極21aの幅W2との差を2μmとした場合の調査結果である。
図43に示されるように、端部から二つ目のキャパシタQ2のスイッチング電荷量は、図42の場合と同じ程度に改善されている。
なお、図43では端部のキャパシタQ1のスイッチング電荷量が図42の場合よりも劣化している。これは、真のデバイスとして使用するキャパシタQ2、Q3に製造プロセスの条件出しを行ったため、これらのキャパシタよりも上部電極21aの幅が広いキャパシタQ1の特性が出難くなったことが原因と考えられる。
また、図42及び図43では、端部の上部電極21aの拡幅の大きさW1−W2をそれぞれ1μm、2μmとしたが、キャパシタQ2のスイッチング電荷量の改善が現れるのは拡幅の大きさが0.5μm程度からと期待される。そして、拡幅の大きさW1−W2が大きくなるにつれてキャパシタQ2のスイッチング電荷量が更に改善できると期待できるので、端部の上部電極21aの幅W1はチップサイズが許す限り広くするのが好ましい。
(3)第2実施形態
第1実施形態では、強誘電体キャパシタの並びの端部において上部電極を拡幅したが、本実施形態では端部において以下のようにキャパシタ誘電体膜を延長することにより、第1実施形態と同様にスイッチング電荷量の改善を図るようにする。
図44〜図46は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中のワード線方向に沿った断面図である。これらの図において第1実施形態で説明した要素には第1実施形態と同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
なお、ワード線に直交する方向の断面図については、第1実施形態の図10〜図22と同じなので、以下では省略する。
また、図47〜図50は、この半導体装置の製造途中の平面図である。
この半導体装置を製造するには、まず、第1実施形態で説明した図23(a)、(b)の工程を行うことにより、図44(a)に示すように複数の上部電極21aを形成する。
図47は、この工程を終了後の平面図であり、先の図44(a)は図47のB10−B10線に沿う断面図である。
図47に示されるように、本実施形態では、複数の上部電極21aのワード線方向の幅は同一であり、第1実施形態のように端部の上部電極21aの幅W3を他の上部電極21aよりも広げることはしない。
この後に、エッチングのマスクに使用した第1のレジストパターン23とハードマスク22a(図44(a)参照)とを除去する。
次いで、図44(b)に示すように、シリコン基板1の上側全面にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像して、上部電極21aの上に第2のレジストパターン27を形成する。
図48は、本工程を終了後の平面図である。なお、先の図44(b)は、図48のB11−B11線に沿う断面図に相当する。
図48に示されるように、ストライプ状の第2のレジストパターン27は、複数の上部電極21aを覆うように形成されると共に、複数の上部電極21aの並びのうち端部における上部電極21aからはみ出し量W4だけはみ出すように形成される。
そのはみ出し量W4の値は特に限定されないが、次のドライエッチング工程における第2のレジストパターン27のワード線方向の後退量よりも大きくするのが好ましく、更に好適には各上部電極21aの幅W3以上であるのがよい。本実施形態では、上部電極21aの幅W3を1.15μmとするので、はみ出し量W4は1.15μmよりも大きな値とする。
次に、図45(a)に示すように、第2のレジストパターン27をマスクにし、ICPエッチング装置内において強誘電体膜20をドライエッチングし、キャパシタ誘電体膜20aを形成する。
このドライエッチングでは、強誘電体膜20に起因した反応生成物が第2のレジストパターン27の側面に付着するのを防止すべく、塩素ガスとアルゴンガスとの混合ガスをエッチングガスとして使用し、レジスト側面を後退させるようにする。
図49は、このドライエッチングが終了した後の平面図であって、先の図45(a)は図49のB12−B12線に沿う断面図である。
本実施形態では、既述のように形成当初の第2のレジストパターン27のはみ出し量W4をレジストの後退量よりも大きくしたので、後退後の第2のレジストパターン27の側面27bはキャパシタ誘電体膜20a上に位置し、上部電極21a上にまで後退することはない。
そのため、第2のレジストパターン27の側面27bが、後で形成される層間絶縁膜のホールの形成予定領域Cに重なることはなく、形成予定領域Cは第2のレジストパターン27に覆われたままとなる。
したがって、端部の上部電極21aの上には側面27bに対応したエッチング残渣が残らず、上部電極21a上に後で形成される層間絶縁膜のホールがそのエッチング残渣に重なるのを防止できる。
この後は、マスクに用いた第2のレジストパターン27を除去した後、第1実施形態で説明した図25(b)〜図33に示す工程を行うことにより、図46に示すように一層目金属配線40を形成する。
図50は、ここまでの工程を終了後の平面図であり、上記の図46は図50のB13−B13線に沿う断面図に相当する。
以上により、本実施形態に係る半導体装置の基本構造が完成した。
図48及び図49を参照して説明したように、本実施形態では、第2のレジストパターン27の上部電極21aからのはみ出し量W4を、ドライエッチング時における第2のレジストパターン27の後退量よりも大きくした。
そのため、複数の上部電極21aの並びのうち、端部における上部電極21aの上面に後退後のレジストパターン27の側面27bが位置しなくなる。したがって、第2のレジストパターン27に起因したエッチング残渣が側面27bに存在しても、そのエッチング残渣が上部電極21a上の第1のホール33a(図50参照)に重ならなくなり、第1実施形態と同様の理由により上部電極21aの還元を抑制できる。
本願発明者は、このように第2のレジストパターン27のはみ出し量W4を広げることで、実際にキャパシタの特性がどの程度改善するのかについて調査した。
その調査結果を図51に示す。この調査では、はみ出し量W4を1μmとし、キャパシタQ1〜Q3のスイッチング電荷量(Qsw)を測定した。
図51に示されるように、はみ出し量W4を1μmとすると、図9の場合と比較して、端部のキャパシタQ1と二つ目のキャパシタQ2のスイッチング電荷量が向上することが明らかとなった。
図52は、上記のはみ出し量W4を更に大きくして2μmとし、各キャパシタQ1〜Q3のスイッチング電荷量を調査して得られたグラフである。
図52に示されるように、はみ出し量W4を大きくしてもキャパシタQ1、Q2のスイッチング電荷量が向上することには変わりはない。
これらの結果から、第2のレジストパターン27のはみ出し量W4を、エッチング時の第2のレジストパターン27の側面の後退量よりも大きくすることが、端部付近のキャパシタQ1、Q2の特性の改善に有効であることが明らかとなった。
(4)第3実施形態
図53は、本実施形態に係る半導体装置の断面図である。なお、同図において第1及び第2実施形態で説明したのと同じ要素にはこれらの実施形態と同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
図53に示されるように、本実施形態では、複数の上部電極21aの並びのうち、ダミーキャパシタとして供される端部のキャパシタQ1、Qnの上部電極21aの上に第1のホール33aを形成しない。その第1のホール33aを形成する工程では、端部以外の上部電極21a上には第1のホール33aを形成するが、端部の上部電極21についてはその全面を第2の層間絶縁膜33で覆ったままにする。
図54はこの半導体装置の平面図であり、先の図53は図54のB14−B14線に沿う断面図である。なお、図54ではキャパシタQ1〜Q3の平面レイアウトを見易くするために、一層目金属配線40は省略している。
図53及び図54に示すように、端部の上部電極21aの上に第1のホール33aを形成しないことにより、第2のレジストパターン27(図37参照)に起因したエッチング残渣が端部の第1のホール33a内に現れない。したがって、そのエッチング残渣による第2の導体プラグ37のカバレッジ不良が原因で端部のキャパシタQ1、Qnの上部電極21aが還元するのを防止でき、キャパシタQ1につられて真のキャパシタQ2の特性が劣化するのを抑制できる。
図55は、このように端部のキャパシタQ1上に第1のホール33aを形成しないことにより、実際にキャパシタの特性がどの程度改善するのかについて調査して得られた結果を示す図である。
図55に示されるように、端部のキャパシタQ1上にホールを形成する場合(図9参照)と比較すると、端部から二つ目のキャパシタQ2の残留分極電荷量が向上しているのが分かる。この結果から、端部のキャパシタQ1上にホールを形成しないことが、その隣の真のキャパシタQ2の特性向上に有効であることが明らかとなった。
(5)第4実施形態
図56は、本実施形態に係る半導体装置の断面図である。なお、同図において第1〜第3実施形態で説明したのと同じ要素にはこれらの実施形態と同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
図56に示されるように、本実施形態では、上部電極21aのうちで端部にある上部電極21a上の第1のホール33aの直径を、他の上部電極21a上の第1のホール33aの直径よりも小さくする。具体的な直径の値は限定されないが、端部にある上部電極21a上の第1のホール33aの直径を0.3μmとし、それ以外のホール33aの直径を0.5μmとする。
また、図57はこの半導体装置の平面図であり、先の図56は図57のB15−B15線に沿う断面図である。なお、図57ではキャパシタQ1〜Qnの平面レイアウトを見易くするために、一層目金属配線40は省略している。
図56及び図57に示すように、端部の上部電極21a上の第1のホール33aの直径を小さくすることにより、その第1のホール33aと形成当初の第2のレジストパターン27の側面27b(図37参照)との間隔を確保することができる。
そのため、側面27bが第1のホール33aの形成予定領域に重なり難くなり、該形成予定領域は第2のレジストパターン27に覆われたままとなるので、側面27bに対応したエッチング残渣が第1のホール33a内に現れにくくなる。
その結果、第2のレジストパターン27のエッチング残渣が原因で第2の導体プラグ37の形成時に端部のキャパシタQ1の上部電極21aが還元されるのを防止でき、キャパシタQ1につられて隣の真のキャパシタQ2の特性が劣化するのを抑制できる。
図58は、このように端部のキャパシタQ1上の第1のホール33aの直径を他のキャパシタQ2、Q3におけるよりも小さくすることにより、実際にキャパシタの特性がどの程度改善するのかについて調査して得られた結果を示す図である。
なお、この調査では、端部における第1のホール33aの設計上の直径を0.3μmとし、それ以外の第1のホール33aの設計上の直径を0.5μmとしている。
図58に示されるように、端部のキャパシタQ1上のホールの直径を他のキャパシタQ2、Q3におけるのと同じにする場合(図9)と比較して、端部から二つ目のキャパシタQ2の残留分極電荷量が向上している。なお、端部のキャパシタQ1は、第1実施形態と同様にダミーキャパシタとして供せられるので、その残留分極電荷量が図示のように低くても実害はない。
この結果から、本実施形態のように端部のキャパシタQ1上の第1のホール33aの直径を小さくすることが、ダミーであるキャパシタQ1の隣の真のキャパシタQ2の特性向上に寄与することが明らかとなった。
なお、図58では、端部のキャパシタQ1のスイッチング電荷量が取得できていない。これは、エッチングマスクである第4のレジストパターン36(図17及び図28参照)を形成するとき、フォトレジストに対する露光光として解像度の悪いi線を用いたため、端部において第1のホール33aが未開口になったためと推測される。
但し、既述のように、端部のキャパシタQ1はダミーキャパシタであるから、このようにホールが未開口となっても実害はない。更に、i線よりも波長が短いエキシマレーザを用いればこのようにホールが未開口になるのを防止できる。
また、本願発明者が行った更なる調査によれば、このような特性向上の効果は、端部のキャパシタQ1上の第1のホール33aの直径を、他のキャパシタQ2、Q3における直径の0%〜60%の直径にする場合に特に得られると期待される。
更に、このように小さいながらも端部のキャパシタQ1上に第1のホール33aを形成することにより、回復アニール(図29参照)の時の酸素がその第1のホール33aを通じてキャパシタ誘電体膜20aに供給されるようになる。そのため、本実施形態では、端部のキャパシタQ1上に第1のホール33aを形成しない第3実施形態と比較して、回復アニールによるキャパシタ誘電体膜20aの回復の実効を図りやすくなる。
そして、図57に示すように、端部の上部電極21aの中央部に第1のホール33aを形成することにより、回復アニール時の酸素がその第1のホール33aを通じて端部付近のキャパシタ誘電体膜20aに均一に広がり、回復アニールの効果の均一化を図ることができる。
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 半導体基板の上方に、第1の導電膜、誘電体膜、及び第2の導電膜をこの順に形成する工程と、
前記第2の導電膜をパターニングして、複数の上部電極を少なくとも一方向に間隔をおいて形成する工程と、
前記上部電極を覆うレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンの側面が後退するエッチング条件を用いて、該レジストパターンをマスクにしながら前記誘電体膜をエッチングすることにより、キャパシタ誘電体膜を形成する工程と、
前記レジストパターンを除去する工程と、
前記第1の導電膜をパターニングして下部電極を形成する工程と、
前記下部電極を形成した後、前記上部電極を覆う絶縁膜を形成する工程と、
前記上部電極の上の前記絶縁膜にホールを形成する工程と、
前記ホールに、前記上部電極と電気的に接続された導電材料を埋め込む工程とを有し、
前記上部電極の並びのうちで端部における該上部電極上の前記ホールの形成予定領域が、前記側面が後退した後の前記レジストパターンにより覆われることを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記2) 前記上部電極の並びのうちで端部における該上部電極の幅を、他の前記上部電極の幅よりも広い大きさで前記一方向に広げたことを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記3) 前記キャパシタ誘電体膜を形成する工程において、
前記上部電極の並びのうちで端部における該上部電極からはみ出る前記レジストパターンのはみ出し量を、該レジストパターンの前記後退量よりも大きくすることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記4) 前記ホールを形成する工程において、前記上部電極の並びのうちで端部にある該上部電極上の前記ホールの直径を、他の前記上部電極上の前記ホールの直径よりも小さくすることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記5) 前記ホールを形成する工程において、前記上部電極の並びのうちで端部にある該上部電極上の前記ホールを、該上部電極の中央部に形成することを特徴とする付記4に記載の半導体装置の製造方法。
(付記6) 前記レジストパターンを形成する工程において、複数の前記上部電極を共通に覆うストライプ状の平面形状に前記レジストパターンを形成することを特徴とする付記1〜5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
(付記7) 半導体基板の上方に、第1の導電膜、誘電体膜、及び第2の導電膜をこの順に形成する工程と、
前記第2の導電膜をパターニングすることにより、複数の上部電極を少なくとも一方向に並べて形成する工程と、
前記上部電極を覆うレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンの側面が後退するエッチング条件を用いて、該レジストパターンをマスクにしながら前記誘電体膜をエッチングすることにより、キャパシタ誘電体膜を形成する工程と、
前記レジストパターンを除去する工程と、
前記第1の導電膜をパターニングして下部電極を形成する工程と、
前記下部電極を形成した後、前記上部電極を覆う絶縁膜を形成する工程と、
前記上部電極の並びのうちで端部における該上部電極の全面に前記絶縁膜を残しながら他の前記上部電極上の前記絶縁膜にホールを形成する工程と、
前記ホールに、前記上部電極と電気的に接続された導電材料を埋め込む工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記8) 前記第2の導電膜として、酸化貴金属膜を形成することを特徴とする付記1〜7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
(付記9) 半導体基板と、
前記半導体基板の上方に形成される下部電極と、
前記下部電極上に形成されるキャパシタ誘電体膜と、
前記キャパシタ誘電体膜上に少なくとも一方向に並べて形成される複数の上部電極と、
前記複数の上部電極の各々を覆って形成され、該上部電極の上にホールが形成された絶縁膜と、
前記ホール内に形成されて前記上部電極と電気的に接続された導電材料とを有し、
前記上部電極の並びのうちで端部における上部電極上の前記ホールと、前記キャパシタ誘電体膜の側面との前記一方向の間隔を、前記端部以外における前記上部電極の前記一方向の幅よりも大きくしたことを特徴とする半導体装置。
(付記10) 前記端部における前記上部電極の前記一方向の幅を、前記端部以外における前記上部電極の幅よりも広くしたことを特徴とする付記9に記載の半導体装置。
(付記11) 半導体基板と、
前記半導体基板の上方に形成される下部電極と、
前記下部電極上に形成されるキャパシタ誘電体膜と、
前記キャパシタ誘電体膜上に少なくとも一方向に並べて形成される複数の上部電極と、
前記複数の上部電極の各々を覆って形成され、少なくとも前記上部電極の並びのうちで端部におけるもの以外の上部電極の上にホールが形成された絶縁膜と、
前記ホール内に形成されて前記上部電極と電気的に接続された導体プラグとを有し、
前記端部における前記上部電極の全面が前記絶縁膜で覆われたか、又は前記端部における前記上部電極の上の前記絶縁膜に、他の上部電極よりも直径が小さいホールが形成されたことを特徴とする半導体装置。
1、101…シリコン基板、2…素子分離絶縁膜、3…pウェル、4…ゲート絶縁膜、5…ゲート電極、6a、6b…n型ソース/ドレインエクステンション、7…絶縁性サイドウォール、8a、8b…n型ソース/ドレイン領域、9…高融点金属シリサイド層、12a、12b…コンタクトホール、13a、13b…第1の導体プラグ、14…カバー絶縁膜、15…第1の層間絶縁膜、16…酸化防止絶縁膜、17…絶縁性密着膜、18…下地絶縁膜、19、102…第1の導電膜、19a、104a…下部電極、20、103…強誘電体膜、20a、103a…キャパシタ誘電体膜、20b…キャパシタ誘電体膜の側面、21、104…第2の導電膜、21a、104a…上部電極、22…マスク材料膜、22a…ハードマスク、23…第1のレジストパターン、27…第2のレジストパターン、27b…第2のレジストパターンの側面、28…第1の水素バリア絶縁膜、30…第3のレジストパターン、32…第2の水素バリア絶縁膜、33…第2の層間絶縁膜、33a〜33c…第1〜第3のホール、34…第3の水素バリア絶縁膜、35…キャップ絶縁膜、36…第4のレジストパターン、36a…窓、37…第2の導体プラグ、37a…グルー膜、37b…タングステン膜、39…第5のレジストパターン、39a…窓、40…一層目金属配線、104x…空洞、105…フォトレジスト、105a…レジストパターン、107…層間絶縁膜、107a…ホール、109…導体プラグ、110…グルー膜、111…タングステン膜、115…反応生成物、116…エッチング残渣、Q1〜Qn…強誘電体キャパシタ。