JP2010089726A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】耐BES性の悪化を抑制しつつ、軽量化を図った空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】左右一対のビードコア間に跨ってトロイド状に延在するカーカスと、そのクラウン部半径方向外側に配置されたベルト層と、を備える空気入りタイヤである。ベルト層10中で、隣接するスチールコード1間の距離が他の部分Xに比して広い箇所Xを、コード長手方向に直交する方向に対し、最大100mm以下の間隔Dをおいて1箇所ずつ設けた。スチールコードとしては、モノフィラメントコードを好適に用いることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、スチールベルト層の改良に係る空気入りタイヤに関する。
近年、空気入りラジアルタイヤにおいては、自動車の燃費を向上させるために、軽量で転がり抵抗が小さいことが要求されるようになってきている。軽量化を達成するためには、タイヤに用いる各部材をより薄く設計する手法がよく用いられる。
例えば、スチールベルト層についても、特許文献1等に開示されているように、モノフィラメントのようなコード径の小さい部材を用いることでベルト層を薄く設計して、軽量化を図る方法が知られている。しかし、この場合、径が小さいコードを同じ本数で単純置換するのみでは使用されるスチール量が減少するため、ベルト層に要求される強度および形状保持性を満足できない。必要なスチール量を確保するためには、単位ベルト幅あたりのコード本数を増やさなければならない。
しかし、コード本数を増やすと、隣接コード間の距離が短くなって、ベルト端部からの亀裂の伝播に起因する故障に係る耐ベルトエンドセパレーション性(以下「耐BES性」と称する)が悪化してしまう。これに対し、コード本数を増やしつつ、かつ、隣接するコード間の距離を広げる方法として、特許文献2に開示されているように、コードを複数本の偏平な束状に配置して、コード間距離を一様に確保する方法が知られている。
その他、ベルト層におけるコード配置に係る技術として、例えば、特許文献3には、補強素子を数本以内の束毎に区分して、その束とこれに隣接する補強素子との分散間隔を広げた補強素子の並置配列になるベルト層を有し、補強素子に直交する方向における束の幅d、および、その束とこれに隣接する補強素子との間隔lの比d/lが所定範囲内にある空気入りラジアルタイヤが開示されている。また、特許文献4には、交差補強層が、2本以上の補強素子を1ユニットとする補強素子の束として平行配列されて形成され、同一の補強素子束を構成する補強素子同士の配列間隔が狭く、補強素子束同士の配列間隔が広い空気入りタイヤが開示されている。
実開昭63−19404号公報 特開平11−208210号公報 特開平05−213007号公報 特開2004−9974号公報
上述のように、ベルト層におけるコード配置については種々提案されてきているが、十分なものではなく、軽量化と耐BES性とをより良好に両立できる技術の確立が求められていた。
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、耐BES性の悪化を抑制しつつ、軽量化を図った空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、隣接するコード間の距離を一様に広げる従来の方法とは異なり、コード長手方向に直交する方向に対して最大100mmの長周期で、部分的にコード間隔が広い箇所を設けることによって、耐BES性の向上に効果が発揮されることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の空気入りタイヤは、左右一対のビードコア間に跨ってトロイド状に延在するカーカスと、該カーカスのクラウン部半径方向外側に配置されたベルト層と、を備える空気入りタイヤにおいて、
前記ベルト層中で、隣接するスチールコード間の距離が他の部分に比して広い箇所を、コード長手方向に直交する方向に対し、最大100mm以下の間隔をおいて1箇所ずつ設けたことを特徴とするものである。
本発明においては、前記スチールコードのコード径をb、コード間隔をaとしたとき、Σb/Σ(b+a)(ここで、Σbはベルト層断面内におけるコード径の総和を示し、Σaはベルト層断面内におけるコード間隔の総和を示す)で示される前記ベルト層内における前記スチールコードの占有率cが、0.5<c<1を満足することが好ましい。また、前記スチールコードとしては、モノフィラメントコードを好適に用いることができる。
本発明によれば、上記構成としたことにより、耐BES性の悪化を抑制しつつ、軽量化を図った空気入りタイヤを実現することが可能となった。
以下、本発明の好適実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の空気入りタイヤは、左右一対のビードコア間に跨ってトロイド状に延在するカーカスと、そのクラウン部半径方向外側に配置されたベルト層と、を備えるものである。
図1に、本発明に係るベルト層の、コード長手方向に直交する方向における断面図を示す。図示するように、本発明においては、ベルト層10中で、隣接するスチールコード1間の距離が他の部分X(コード間隔a)に比して広い箇所X(コード間隔a)を設けるとともに、この隣接するスチールコード1間の距離が広い箇所Xを、コード長手方向に直交する方向に対し最大100mm以下の間隔Dをおいて1箇所ずつ配置している。
すなわち、隣接するスチールコード1間の距離が他の部分と比して広い箇所Xを、一定の間隔Dをおいて1箇所ずつ設けるとともに、その間隔Dを最大100mmとする。これにより耐BES性の悪化を抑制しつつ軽量化を図ることが可能となるのは、以下のような理由による。
BES故障は、ベルト端部の亀裂がタイヤ周方向に大きく伝播してトレッド部が剥離する故障である。BES故障を抑制するためには、隣接するコード間隔を広げて、亀裂伝播を抑制する方法が有効である。しかし、ベルト層を薄くするために細いコード径のスチールコードを用いると、必然的にコード打込み数が増加して、コード間隔の確保が困難となる。
これに対し、本発明におけるように、コード長手方向に直交する方向に対し一定周期ごとにコード間隔が広い箇所を設けることで、ベルト端部に、適度にコード間隔の広い箇所が存在することになり、これにより、タイヤ故障を発生させるような大きな亀裂の発生を抑止することが可能となるのである。
ここで、ベルト端部に発生する亀裂の大きさは、コード間隔の広い箇所が存在する周期に略比例する。この周期が大きいと、発生する亀裂が大きくなって本発明の効果が十分得られないため、本発明においては、コード間距離が広い箇所Xの間隔Dを100mm以下としている。
本発明においては、スチールコード1のコード径をb、コード間隔をaとしたとき、Σb/Σ(b+a)で示される、ベルト層10内におけるスチールコード1の占有率cが、0.5<c<1を満足することが好ましい(図2参照)。ここで、Σbはベルト層断面内におけるコード径の総和を示し、Σaはベルト層断面内におけるコード間隔の総和を示す。このスチールコード1の占有率cが0.5以下であるとスチール量が不足し、強度、形状保持性を満足できない。一方、1であるとコード間にゴムが存在せず亀裂がつながりやすいため、いずれも好ましくない。
また、本発明において、ベルト層10に用いるスチールコード1としては、モノフィラメントコードを好適に用いることができる。軽量化の観点からは、より好ましくは、φ0.20〜0.30mmのモノフィラメントコードを用いる。本発明によれば、かかるコード径の小さいスチールコードを多数打ち込んだスチールベルト層を持つタイヤにおいて、優れた耐BES性を確保することができる。モノフィラメントコードは、図3に例示するように、3〜10本で偏平になるように束状に配置することが好ましい。
本発明においては、ベルト層におけるスチールコードの配置に関して上記条件を満足するものであればよく、それ以外のタイヤ構造の詳細については特に制限されず、常法に従い適宜設定することが可能である。例えば、本発明においてベルト層は1〜4層にて設けることができ、そのコード角度は、タイヤ周方向に対し0°〜90°とすることができる。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記表中に示す条件で、2層のスチールベルト層を備える構造の空気入りラジアルタイヤを作製した。タイヤサイズは195/65R15とし、スチールコードの打込み角度は、タイヤ周方向に対して夫々+24°および−24°とした。
得られた各実施例および比較例の供試タイヤにつき、従来例1を基準とした重量の度合い(従来例1を100とした指数にて示し、数値が小なるほど軽量である)と、耐BES性について以下のようにして評価した。その結果を、下記の表中に併せて示す。
<耐BES性>
各供試タイヤをJATMAで規定する正規リムに組みつけ、220kPaの内圧を充填してテスト用乗用車に装着し、ドラム上を一定値の横力をかけて走行させた後、各供試タイヤを解剖して、ベルト層端部に発生している亀裂の長さを測定した。結果は、従来例1の亀裂長さを100とした指数にて示した。この指数の値が小さいほど、耐BES性に優れており良好である。
なお、下記表中、打込み数はベルト層に配置される単位幅あたりのスチールコード本数を示す。また、コード径は、タイヤから切り出したスチールベルト層内に存在するコード径を測定した値である。さらに、コード間距離は、タイヤ中のコード長手方向に直交する方向に対するコード表面間の距離の平均値を測定したものである。さらにまた、広い箇所の間隔とは、コード長手方向に直交する方向に対するコード間隔が広い箇所が存在する間隔を示す。
Figure 2010089726
*1)コード径をb、コード間隔(コード間距離)をaとしたとき、c=Σb/Σ(b+a)(ここで、Σbはベルト層断面内におけるコード径の総和を示し、Σaはベルト層断面内におけるコード間隔の総和を示す)で示される、ベルト層内におけるスチールコードの占有率である。
上記表1は、従来一般的に使用されている1×5構造のスチールコード(フィラメント径φ0.23mm)を従来例1とし、比較例および実施例についてはスチールコード構造を4本撚りにしてコード径を小さくし、ベルト層を軽量化した場合の耐BES性の結果である。この場合、比較例および実施例については、スチール量を確保するために、従来例1よりもスチール本数を増やしている。これら比較例および実施例のいずれの供試タイヤにおいても、ベルト層を薄くすることでタイヤ重量の軽減が達成されている。
比較例1の供試タイヤは、コード間隔の広い箇所を設けないベルト層を有している。そのため、スチール本数が増え、一様にコード間距離が狭まることで、耐BES性が従来例1より悪化している。また、比較例2の供試タイヤにおいては、一定の間隔でコード間隔が広い箇所が設けられているが、その周期が大きすぎるため、コード間隔が広い箇所を設けない比較例1より耐BES性は向上しているものの、ベルト層における亀裂伝播の抑制は不十分であることがわかる。
これらに対し、実施例1の供試タイヤは、本発明を満足する範囲の一定の間隔でコード間隔が広い箇所を設けているため、平均コード間距離が狭くても、ベルト層における亀裂伝播が適度に抑制され、十分に効果が発揮されていることがわかる。
Figure 2010089726
上記表2は、ベルト層内におけるスチールコードの占有率が好適範囲外である供試タイヤ、および、ベルト層のスチールコードとしてモノフィラメントスチールコードを適用した供試タイヤにおける評価結果を示す。比較例4および実施例4,5は、モノフィラメントコードの複数本を、偏平状に束状に配置した場合である(図3参照)。この場合は、束状配置された長さをコード径と定義して、コード間距離およびスチールコード占有率を算出する。
従来例2および実施例2は、スチールコード占有率が好適範囲外である場合を示している。スチールコード占有率が低いタイヤは元来耐BES性に優れ、周期的にコード間隔が広い箇所を設けても、大きな性能の向上は見られない。
また、比較例3および実施例3はモノフィラメントスチールコードを適用した供試タイヤであり、コード径が小さくスチールコード占有率が大きいために、実施例3におけるように周期的に間隔が広い箇所を設けることで、大きな耐BES性向上効果が得られていることがわかる。
さらに、比較例4および実施例4、5は、特許文献2にあるように、モノフィラメントスチールコードの複数本を偏平状に束状配置した場合である。束状配置された場合でも、実施例におけるように周期的にコード間隔が広い箇所を設けることにより、大きな耐BES性向上効果が得られていることがわかる。
本発明に係るベルト層の、コード長手方向に直交する方向における断面図である。 ベルト層内におけるスチールコードの占有率cの説明に係るベルト層の断面図である。 モノフィラメントコードを束状に配置した場合のベルト層の断面図である。
符号の説明
1 スチールコード
10 ベルト層

Claims (3)

  1. 左右一対のビードコア間に跨ってトロイド状に延在するカーカスと、該カーカスのクラウン部半径方向外側に配置されたベルト層と、を備える空気入りタイヤにおいて、
    前記ベルト層中で、隣接するスチールコード間の距離が他の部分に比して広い箇所を、コード長手方向に直交する方向に対し、最大100mm以下の間隔をおいて1箇所ずつ設けたことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記スチールコードのコード径をb、コード間隔をaとしたとき、Σb/Σ(b+a)(ここで、Σbはベルト層断面内におけるコード径の総和を示し、Σaはベルト層断面内におけるコード間隔の総和を示す)で示される前記ベルト層内における前記スチールコードの占有率cが、0.5<c<1を満足する請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記スチールコードがモノフィラメントコードである請求項1または2記載の空気入りタイヤ。
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