以下、添付図面に従って、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の一例を示すブロック図である。
図1にて、画像形成装置10は、画像形成装置10の全体を制御する制御部20と、プログラムおよびプログラムの実行に必要な各種の情報を記憶する記憶部21と、ホストコンピュータ18との間で通信を行う通信インターフェース22と、用紙(「記録媒体」ともいう)を給紙する給紙部31と、用紙に処理液を付与する処理液付与部32と、用紙上の処理液を乾燥させる処理液乾燥部33と、用紙にインクを付与するインク付与部34と、用紙上のインクを乾燥させるインク乾燥部35と、用紙にインクを定着させる定着部36と、用紙を搬送する搬送部37と、用紙を排出する排紙部38と、処理液付与部32に処理液を給液するとともにインク付与部34にインクを給液する給液部39と、制御部20の制御により符号31〜39の各部をそれぞれ駆動する駆動回路41〜49を含んで、構成されている。
本例の画像形成装置10は、処理液およびインクを記録媒体に付与することで記録媒体に画像を形成する。ここで、処理液は、インクが不溶化または凝集する反応(以下「2液反応」ということもある)を生じさせる液体である。記録媒体は「紙」に特に限定されない。例えばフイルムであってもよい。
本例の画像形成装置10では、片面印刷の場合、図2の概略フローチャートに示すように、記録媒体に対し、給紙部31による給紙(ステップS1)、処理液付与部32による処理液付与(ステップS2)、処理液乾燥部33による処理液乾燥(ステップS3)、インク付与部34によるインク付与(ステップS4)、インク乾燥部35によるインク乾燥(ステップS5)、定着部36によるインク定着(ステップS6)、排紙部38による排紙(ステップS7)が行われる。記録媒体は、給紙部31による給紙後、処理液付与部32から排紙部37に至るまで、搬送部37により搬送される。また、給液部39により、処理液付与部32に処理液が供給され、インク付与部34にインクが供給される。図2に示した各ステップは、制御部20を構成するCPU(Central Processing Unit)により、各駆動回路41〜49を介して行われる。
本例の画像形成装置10は、両面印刷可能である。両面印刷の方式としては、大別すると3種類に分けられる。第1に、表面を連続して所定枚数印刷した後に、印刷後の集積された用紙を反転し、裏面を連続して印刷する方法(以下「2回通し方式」という)がある。第2に、表面を1枚印刷した後、図示省略の用紙反転機構で反転された用紙の裏面を印刷する方法(以下「反転方式」という)がある。第3に、表面と裏面を同時に印刷する方法(以下「両面同時描画方式」という)がある。図1には、2回通し方式で両面印刷可能な構成を示した。
2回通し方式では、排紙部38に排出された用紙を裏返して給紙部31から給紙すればよい。反転方式や両面同時描画方式で両面印刷を行う場合には、周知の用紙反転部や両面同時描画手段を適用すればよく、図示および説明を省略する。
なお、本発明における画像処理は図2に示した例には特に限定されず、装置の小型化や低価格化などのために、処理液付与およびインク付与を除いたステップ(例えばステップS3、S5、S6)を適宜省略することも可能である。また、給紙(ステップS1)および排紙(ステップS7)を手動で行う構成にも本発明を適用可能である。また、高画質化などのために図2に示した以外のステップを付加してもよい。
制御部20は、用紙上の画像の寸法精度や両面印刷時の表裏レジストレーションズレを補正するため後述する画像データの拡縮処理を行うが、本発明における「変形特性情報」について理解を容易にするため、まず、画像データの拡縮処理を行わない場合の課題について、説明する。
画像データの拡縮処理を行わない場合、以下に詳説するように、第1に、処理液付与により経時の用紙変形が発生するという問題、第2に、インク付与量により用紙変形量が変化するという問題、第3に、両面印刷時に、表面の画像形成に起因して裏面の画像の寸法精度および位置精度が落ちるという問題がある。
図3(a)および(b)のグラフは、処理液乾燥部33による処理液乾燥処理終了後の経過時間と用紙の伸長率(%)との関係(用紙変形特性)を測定した結果を示す。マットコート紙の一種であるOKトップコート紙を用い、処理液付与後45℃で処理液を乾燥させた。なお、図3(a)は横目(用紙の目に直交する方向)の変形を示し、図3(b)は縦目(用紙の目の方向)の変形を示す。
処理液を付与した後、インク付与の前に処理液の乾燥処理を行うため、用紙は、処理液付与により膨張し、乾燥処理により収縮し、インク付与時点では初期の用紙サイズよりも小さい状態になっている。その後、時間が経過すると、最終的には初期のサイズに近づいていく。例えば、処理液の乾燥処理直後にインク付与がなされると、その時点(インク付与タイミング)では用紙のサイズが初期のサイズよりも小さく、その後に用紙のサイズが拡大するので、最終的に画像は拡大したものになる。
また、図4(a)および(b)のグラフは、グロスコート紙の一種であるユーライト紙を用い、処理液付与後45℃で処理液を乾燥させた場合の測定結果を示す。なお、図4(a)は横目の変形を示し、図4(b)は縦目の変形を示す。このように、用紙変形特性は、用紙の種類はもちろん、用紙の目の方向にも依存する。
図5(a)のグラフは、単位面積あたりのインク付与量(網%)を変えて、定着部36による定着後の経過時間と用紙の伸長率(%)との関係(用紙変形特性)を測定した結果を示す。なお、図5(a)は、グロスコート紙の一種であるユーライト紙を用い、定着後の環境温度を23℃に保った場合について、横目の変形を示す。図5(b)は、図5(a)にて矢印で示す伸長率0%近傍を拡大したグラフである。
図5(a)および(b)に示されるように、インク付与量により、用紙変形が収束した時点での最終的な用紙の変形量に差異が生じる。インク付与量が多いと、最終的には用紙の伸びが大きく、その結果、画像のサイズも大きくなる。逆に、インク付与量が少ないと、最終的には用紙の伸びが小さく、その結果、画像のサイズも小さくなる。このような用紙変形特性は、用紙の種類はもちろん、用紙の目の方向にも依存する。
図6は、両面印刷した場合の時間経過と用紙の伸長率との関係を模式的に示す。
2回通し方式では、表面印刷終了から裏面印刷開始までの時間が比較的長く(一般に数10分である)、裏面の処理液付与時点での用紙の変形量も安定するが、印刷枚数により表面印刷終了から裏面印刷開始までの時間が変わる。つまり、表面の定着から裏面の処理液付与までの時間間隔が用紙の処理枚数により変わることになる。したがって印刷枚数による用紙変形の差異が生じ、その結果、裏面印刷画像の寸法精度や表裏レジストレーション精度が落ちるという問題が生じる。
反転方式では、表面印刷終了から裏面印刷開始までの時間が短く(一般に数秒)、裏面のインク付与時点では、用紙が縮小していている途中であるだけでなく、用紙変形量の変化が大きい時間帯であるといえる。特に、図5に示したように、インク付与量により定着後の用紙変形量が変化するので、表面のインク付与量により裏面のインク付与時点での用紙変形量が変化する。したがって、2回通し方式と同様に、寸法精度や表裏レジストレーション精度の劣化の問題がある。
両面同時描画方式では、表裏レジストレーション精度の問題は小さいが、寸法精度の問題が残る。
また、図6にも示したように、処理液乾燥部33の乾燥力(乾燥温度など)によっても、インク付与時点での用紙変形量に差異が生じる。
そこで、本例の画像形成装置10は、用紙上の画像の寸法精度および両面印刷時の表裏レジストレーション精度を向上させるための画像データの拡縮処理を行う。具体的には、図1の制御部20にて、図3および図4に示したような処理液付与後の経過時間に対する用紙変形量の経時変化を示す変形特性情報と、図5に示したようなインクの付与量と用紙変形量との対応関係を示す変形特性情報を取得し、これらの変形特性情報に基づいてインク付与タイミングでの用紙変形量を特定し、その用紙変形量に基づいて画像データに対し縦横変倍の拡縮処理を施す。2回通し方式で両面印刷を行う場合には、さらに、印刷枚数(または表面の画像形成終了から裏面の画像形成開始までの時間間隔)に基づいて用紙変形量を算出し、拡縮処理を行う。
図7は、図1に示した制御部20の機能ブロック図である。
図7において、制御部20は、画像データに基づいて単位面積あたりのインク付与量(例えば網%)を算出するインク付与量算出部201と、記録媒体に対し処理液付与後にインクを付与する時機(以下「インク付与タイミング」または「インク付与時点」という)を決定するインク付与タイミング決定部202と、処理液付与およびインク付与量の少なくともいずれか一方による記録媒体の変形量を示す変形特性情報を取得する変形特性情報取得部203と、記録媒体に関する情報(例えば、記録媒体の種別、および、記録媒体の画像形成面の目の方向)を取得する記録媒体情報取得部204と、処理液付与情報(例えば、単位面積あたりの処理液付与量、および、処理液乾燥部33の乾燥力)を取得する処理液付与情報取得部205と、インク付与タイミングでの記録媒体の変形量を特定する変形量特定部206と、変形量特定部206により特定された記録媒体の変形量に基づいて、画像データに対し縦横変倍の拡縮処理を施す拡縮処理部207を含んで構成されている。
画像データは、本例にて、図1のホストコンピュータ18から送信された画像データを通信インターフェース22にて受信することで入力される。なお、本例のホストコンピュータ18は、各色ごとの多値の階調値を有するラスタ形式の画像データを送信する。入力された画像データは、画像形成装置10の制御部20によって、インク付与部34を駆動可能な階調値(例えば2値)の画像データに変換される。なお、画像データの入力態様は特に限定されない。例えば、画像データを記録したメモリカード等の媒体(画像データ記録媒体)から画像データを読み取ることで入力されてもよい。
単位面積あたりのインク付与量は、例えば網%で表される。ほかの単位を用いてもよい。
インク付与タイミングは、ある基準時点に対する相対的な時間で表される。例えば、処理液付与終了時点からの時間間隔で表される。処理液乾燥終了時点からの時間間隔を用いてもよい。
変形特性情報は、例えば、処理液付与から、処理液乾燥、インク付与、インク乾燥および定着を経て、記録媒体の変形が収束するまで、記録媒体の変化量の時間経過に沿った変化(「経時変形特性」という場合もある)を示す。記録媒体の変化量は、例えば、記録媒体の基本サイズ(処理液付与前のサイズである)に対する縦および横の変化量によって表される。
本例では、図3(a)および(b)に示したように、処理液乾燥終了時点からの経過時間と基本サイズに対する伸縮率(%)を示す時間プロファイル(経時変形特性情報)を用いる。また、記録媒体の目(縦目、横目)ごとに、時間プロファイルを記憶部(図1の21)に記憶させておく。また、記録媒体の種別(マットコート紙、グロスコート紙など)ごとに、時間プロファイルを記憶部21に記憶させておく。記録媒体の種別によって材質、紙厚などが異なり、同じインク付与量でも変形量が異なってくる。また、記録媒体の種別によって面の質(例えばマットコート紙とグロスコート紙)が異なり、単位面積あたりの処理液量が異なってくる。
図8は、両面印刷時における画像形成処理の一例の流れを示すフローチャートである。本フローチャートは、本発明の理解を容易にするため、用紙変形量特定および画像データ拡縮処理に関する部分のみを示す。本例の処理は、制御部(図1の20)を構成するCPUによって、プログラムに従って実行される。
ステップS12にて、画像データが入力される。本例では、ホストコンピュータ(図1の18)から送信された記録媒体の表面用の画像データと裏面用の画像データを、通信インターフェース(図1の22)により受信する。メモリカード等から画像データを読み込んでもよい。また、本例では、ラスタ形式の画像データが入力される場合を例に説明するが、非ラスタ形式の画像データが入力される場合には、画像形成装置10にて、ラスタ形式の画像データに変換する。ラスタ形式の画像データは、多階調値(例えば8bitの階調値)および2階調値のいずれでもよい。
ステップS14にて、インク付与量算出部201により、画像データに基づいて、単位面積あたりのインク付与量を算出する。本例では、表面用の画像データに基づいて、記録媒体の表面に付与される単位面積あたりのインク付与量(例えば網%)を算出するとともに、裏面用の画像データに基づいて、記録媒体の裏面に付与される単位面積あたりのインク付与量(例えば網%)を算出する。
ステップS16にて、変形特性情報取得部203により、処理液付与後の用紙変形量の経時変化を示す時間プロファイルを記憶部(図1の21)から取得する。すなわち、表面の処理液付与後の時間経過に対する用紙変形量の変化を示す変形特性情報を記憶部21から読み出す。
また、処理液付与量の違い、記録媒体の目の方向の違い、および、処理液乾燥部(図1の33)の乾燥力の違いにより、用紙の変形特性が異なるので、本例では、単位面積あたりの処理液付与量、記録媒体の種別(「用紙種別」ともいう)、記録媒体の目の方向、処理液乾燥時の乾燥力のいずれか一つ以上をパラメータとして、時間プロファイルが取得される。なお、単位面積あたりの処理液付与量は、マットコート紙、グロスコート紙などの用紙種別によって異なるので、記録媒体種別取得部204にて取得された用紙種別に基づいて、処理液付与部205にて単位面積あたりの処理液付与量を求める。
例えば、図3〜図5に示したような処理液付与後の用紙変形特性を示す時間プロファイルが取得される。
ステップS18にて、インク付与タイミング決定部202により、表面のインク付与タイミングを決定する。例えば、用紙を搬送する搬送部(図1の37)の用紙搬送速度により、処理液付与および処理液乾燥処理からインク付与までの時間間隔が異なるので、用紙搬送速度に基づいてインク付与タイミングを算出する。本例ではインク乾燥終了時点からインク付与時点までの時間間隔を算出する。
ステップS20にて、変形量特定部206により、表面のインク付与タイミングと表面用の時間プロファイルとに基づいて、表面のインク付与タイミングでの用紙変形量を算出する。例えば、用紙の基準サイズ(処理液付与前の用紙の縦横サイズ)に対するインク付与時点での用紙の変形量を算出する。なお、用紙変形が最終的に収束する時点での用紙の縦横サイズ(用紙変形収束サイズ)を算出し、その用紙変形収束サイズに対するインク付与時点での用紙の変形量を算出してもよい。
ステップS22にて、画像データ拡縮処理部207により、ステップS20で算出された用紙変形量に基づいて、表面用の画像データに対し縦横変倍の拡縮処理を施す。
ステップS24にて、インク付与部(図1の34)の駆動回路(図1の44)により、拡縮処理後の表面用の画像データに基づいてインク付与部34を駆動することで、用紙の表面に画像を形成する。
ステップS26にて、変形特性情報取得部203により、処理液付与後の用紙変形量の経時変化を示す時間プロファイルを取得する。本ステップでは、裏面に画像形成する場合の処理液付与後の時間経過に対する用紙量変形の変化を示す時間プロファイルを、記憶部21から読み出す。なお、本例では、表面と裏面とで用紙変形特性が異なり、表面用の時間プロファイルと裏面用の時間プロファイルとが記憶部21に予め記憶されているので、表面の画像形成の際には前述のステップS16にて表面用の時間プロファイルが読み出される一方で、本ステップでは裏面用の時間プロファイルが読み出される。
ステップS28にて、表面の単位面積あたりのインク付与量と用紙変形量との対応関係を示す用紙変形量データ(反対面の変形特性情報)を取得する。すなわち、表面の画像形成に起因する裏面のインク付与タイミングでの用紙変形量を示す変形特性情報を記憶部21から読み出す。
ステップS30にて、インク付与タイミング決定部202により、裏面のインク付与タイミングを決定する。
ステップS32にて、変形量特定部206により、裏面のインク付与タイミングと裏面用の時間プロファイルとに基づいて、裏面のインク付与タイミングでの用紙変形量(裏面の画像形成に起因する第1の用紙変形量)を算出する。
ステップS34にて、変形量特定部206により、表面の単位面積あたりのインク付与量とステップS28で得た変形特性情報とに基づいて、裏面のインク付与タイミングでの用紙変形量(表面の画像形成に起因する第2の用紙変形量)を算出する。
ステップS36にて、変形量特定部206により、ステップS32で算出された第1の用紙変形量と、ステップS34で算出された第2の用紙変形量とに基づいて、総合的な用紙変形量を算出する。例えば、第1の用紙変形量を示す係数と第2の用紙変形量を示す係数とを掛け算して、その演算結果を総合的な用紙変形量とする。
ステップS38にて、画像データ拡縮処理部207により、ステップS36で求めた総合的な用紙変形量に基づいて、裏面用の画像データに対し縦横変倍の拡縮処理を施す。
ステップS40にて、インク付与部34の駆動回路44により、拡縮処理後の裏面用の画像データに基づいてインク付与部34を駆動することで、用紙の裏面に画像を形成する。
なお、本例では、反対面の画像形成に起因するインク付与タイミングでの用紙変形量として、反対面の単位面積あたりのインク付与量による変形特性情報に基づいて算出した値を用いたが、このような場合に本発明は特に限定されない。
例えば、両面同時描画方式の場合には、反対面の画像形成に起因するインク付与タイミングの用紙変形量として、反対面の処理液付与量、反対面の目の方向、反対面の処理液乾燥力などに基づく用紙変形量を算出することが、好ましい。
また、2回通し方式の場合には、画像形成する用紙枚数により、表面印刷終了から裏面印刷開始までの時間が変わる。したがって、変形量特定部206にてインク付与タイミングでの用紙変形量を算出する際に、例えば、用紙枚数、および、表面の画像形成終了時点から裏面の画像形成終了時点までの時間間隔のうちいずれか一方に基づいて、表面の画像形成に起因する用紙変形量(第2の用紙変形量)を算出する。
用紙枚数に基づく算出の場合には、例えば、一枚あたりの画像形成に要する時間と用紙枚数との積と、表面のインク付与量とに基づいて、第2の用紙変形量を算出する。
図9は、片面印刷時における画像形成処理の一例の流れを示すフローチャートである。図9の画像形成処理におけるステップS112〜S124は、図8に示した両面印刷時のステップS12〜S24と同様であり、ここでは詳細な説明を省略する。簡単に説明すると、画像データが入力され(ステップS112)、画像データに基づいて単位面積あたりのインク付与量を算出し(ステップS114)、時間プロファイルを取得し(ステップS116)、インク付与タイミングを決定し(ステップS118)、インク付与タイミングと時間プロファイルとに基づいてインク付与タイミングでの用紙変形量を算出し(ステップS120)、算出された用紙変形量に基づいて画像データに対し縦横変倍の拡縮処理を施し(ステップS122)、拡縮処理後の表面用の画像データに基づいて画像形成を行う
(ステップS124)。
〔画像形成装置の構成例〕
次に、上述した画像形成装置10の例について説明する。
図10は、本発明に係る画像形成装置が適用されたインクジェット記録装置の一例を示す全体構成図である。図10に示すインクジェット記録装置100は、インク及び処理液を用いて、記録媒体114上に画像形成を行う2液反応型の画像形成装置である。
インクジェット記録装置100は、主として、記録媒体114を供給する給紙部102と、記録媒体114に対して浸透抑制剤を付与する浸透抑制剤付与部104と、記録媒体114に処理液を付与する処理液付与部106と、記録媒体114にインクを打滴するインク打滴部108と、記録媒体114上に形成された画像を定着させる定着部110と、画像が形成された記録媒体114を搬送して排出する排紙部112を備えて構成される。
給紙部102には、記録媒体114を積載する給紙台120が設けられている。給紙台120の前方(図10において左側)にはフィーダボード122が接続されており、給紙台120に積載された記録媒体114は1番上から順に1枚ずつフィーダボード122に送り出される。フィーダボード122に送り出された記録媒体114は、渡し胴124aを介して、浸透抑制剤付与部104の圧胴(浸透抑制剤剤ドラム)126aに受け渡される。
圧胴126aの表面(周面)には、記録媒体114の先端を保持する保持爪115a,115b(グリッパ)が形成されており、渡し胴124aから圧胴126aに受け渡された記録媒体114は、保持爪115a,115bによって先端を保持されながら圧胴126aの表面に密着した状態(即ち、圧胴126a上に巻きつけられた状態)で圧胴126aの回転方向(図10において反時計回り方向)に搬送される。後述する他の圧胴126b〜126dについても同様な構成が適用される。また、渡し胴124aの表面(周面)には、記録媒体114の先端を圧胴126aの保持爪115a,115bに受け渡す部材116が形成されている。後述する他の渡し胴124b〜124dについても同様な構成が適用される。
浸透抑制剤付与部104には、圧胴126aの回転方向(図10において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126aの表面に対向する位置に、用紙予熱ユニット128、浸透抑制剤吐出ヘッド130、及び浸透抑制剤乾燥ユニット132がそれぞれ設けられている。
用紙予熱ユニット128及び浸透抑制剤乾燥ユニット132には、それぞれ所定の範囲で温度や風量を制御可能な熱風乾燥器が設けられる。圧胴126aに保持された記録媒体114が、用紙予熱ユニット128や浸透抑制剤乾燥ユニット132に対向する位置を通過する際、熱風乾燥器によって加熱された空気(熱風)が記録媒体114の表面に向かって吹き付けられる構成となっている。
浸透抑制剤吐出ヘッド130は、圧胴126aに保持される記録媒体114に対して浸透抑制剤を含有した溶液(以下、単に「浸透抑制剤」ともいう。)を吐出する。本例では、記録媒体114の表面に対して浸透抑制剤を付与する手段として、打滴方式を適用したが、これに限定されず、例えば、ローラ塗布方式、スプレー方式、などの各種方式を適用することも可能である。
浸透抑制剤は、後述する処理液およびインク液に含まれる溶媒(及び親溶媒的な有機溶剤)の記録媒体114への浸透を抑制する。浸透抑制剤としては、樹脂粒子を溶液中に分散(または溶解)させたものを用いる。浸透抑制剤の溶液としては、例えば、有機溶剤または水を用いる。浸透抑制剤の有機溶剤としては、メチルエチルケトン、石油類、等が好適に用いられる。
用紙予熱ユニット128は、記録媒体114の温度T1を、浸透抑制剤の樹脂粒子の最低造膜温度Tf1よりも高くする。
温度T1の調整方法には、圧胴126aの内部に設置したヒータ等の発熱体を用いて記録媒体114を下面から加熱する方法、記録媒体114の上面に熱風を当てて加熱する方法などがあり、本例では赤外線ヒータ等を用いて記録媒体114の上面から加熱する方法を用いている。これらの方法を組み合わせてもよい。
浸透抑制剤の付与方法には、打滴、スプレー塗布、ローラ塗布等が好適に用いられる。打滴の場合には、後述するインク液の打滴箇所及びその周辺のみに、選択的に浸透抑制剤を付与することができるので、好適である。
また、カールが発生し難い記録媒体114の場合には、浸透抑制剤の付与を省略してもよい。
浸透抑制剤付与部104に続いて処理液付与部106が設けられている。浸透抑制剤付与部104の圧胴(浸透抑制剤ドラム)126aと処理液付与部106の圧胴(処理液ドラム)126bとの間には、これらに対接するようにして渡し胴124bが設けられている。これにより、浸透抑制剤付与部104の圧胴126aに保持された記録媒体114は、浸透抑制剤が付与された後、渡し胴124bを介して処理液付与部106の圧胴126bに受け渡される。
処理液付与部106には、圧胴126bの回転方向(図10において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126bの表面に対向する位置に、用紙予熱ユニット134、処理液吐出ヘッド136、及び処理液乾燥ユニット138がそれぞれ設けられている。
用紙予熱ユニット134は、浸透抑制剤付与部104の用紙予熱ユニット128と同一構成が適用されるため、ここでは説明を省略する。もちろん、異なる構成が適用されてもよい。
処理液吐出ヘッド136は、圧胴126bに保持される記録媒体114に対して処理液を打滴するものであり、後述するインク打滴部108の各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kと同一構成が適用される。
本例で用いられる処理液は、後段のインク打滴部108に配置される各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kから記録媒体114に向かって吐出されるインクに含有される色材を凝集させる作用を有する。
処理液乾燥ユニット138には、所定の範囲で温度や風量を制御可能な熱風乾燥器が設けられており、圧胴126bに保持された記録媒体114が処理液乾燥ユニット138の熱風乾燥器に対向する位置を通過する際、熱風乾燥器によって加熱された空気(熱風)が記録媒体114上の処理液に吹き付けられる構成となっている。
熱風乾燥器の温度や風量は、圧胴126bの回転方向上流側に配置される処理液吐出ヘッド136により記録媒体114上に付与された処理液を乾燥させて、記録媒体114の表面上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤層(処理液が乾燥した薄膜層)が形成されるような値に設定される。
本例の如く、記録媒体114上に処理液が付与される前に、用紙予熱ユニット134によって記録媒体114を予備加熱する態様が好ましい。この場合、処理液の乾燥に要する加熱エネルギーを低く抑えることが可能となり、省エネルギー化を図ることができる。
処理液付与部106に続いてインク打滴部108が設けられている。処理液付与部106の圧胴(処理液ドラム)126bとインク打滴部(描画ドラム)108の圧胴126cとの間には、これらに対接するようにして渡し胴124cが設けられている。これにより、処理液付与部106の圧胴126bに保持された記録媒体114は、処理液が付与されて固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成された後に、渡し胴124cを介してインク打滴部108の圧胴126cに受け渡される。
インク打滴部108には、圧胴126cの回転方向(図10において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126cの表面に対向する位置に、CMYKの4色のインクにそれぞれ対応したインク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kが並んで設けられており、更に、その下流側に溶媒乾燥ユニット142a、142bが設けられている。
各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kは、上述した処理液吐出ヘッド136と同様に、液体を吐出する方式の記録ヘッド(液体吐出ヘッド)が適用される。即ち、各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kは、それぞれ対応する色インクの液滴を圧胴126cに保持された記録媒体114に向かって吐出する。
インク貯蔵/装填部(不図示)は、各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kにそれぞれ供給するインクを各々貯蔵するインクタンクを含んで構成される。各インクタンクは所要の流路を介してそれぞれ対応するヘッドと連通されており、各インク打滴ヘッドに対してそれぞれ対応するインクを供給する。インク貯蔵/装填部は、タンク内の液体残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
インク貯蔵/装填部の各インクタンクから各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kにインクが供給され、画像信号に応じて各140C、140M、140Y、140Kから記録媒体114に対してそれぞれ対応する色インクが打滴される。
各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kは、それぞれ圧胴126cに保持される記録媒体114における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し、そのインク吐出面には画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズル(図10中不図示)が複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kが圧胴126cの回転方向(記録媒体114の搬送方向)と直交する方向に延在するように固定設置される。
記録媒体114の画像形成領域の全幅をカバーするノズル列を有するフルラインヘッドがインク色毎に設けられる構成によれば、記録媒体114の搬送方向(副走査方向)について、記録媒体114と各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体114の画像形成領域に1次画像を記録することができる。これにより、記録媒体114の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドが適用される場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
本例のインクジェット記録装置100は、例えば最大菊半サイズの記録媒体(記録用紙)までの記録が可能であり、圧胴(描画ドラム)126cとして、例えば記録媒体幅720mmに対応した直径810mmのドラムが用いられる。また、各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kのインク吐出体積は例えば2plであり、記録密度は主走査方向(記録媒体114の幅方向)及び副走査方向(記録媒体114の搬送方向)ともに例えば1200dpiである。
また、本例では、CMYKの4色の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて、R(赤)、G(緑)、B(青)インク、淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
溶媒乾燥ユニット142a、142bは、上述した用紙予熱ユニット128、134や浸透抑制剤乾燥ユニット132、処理液乾燥ユニット138と同様に、所定の範囲で温度や風量を制御可能な熱風乾燥器を含んで構成される。後述するように、記録媒体114の表面上に形成された固体状又は半固溶状の凝集処理剤層上にインク液滴が打滴されると、記録媒体114上にはインク凝集体(色材凝集体)が形成されるとともに、色材と分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が形成される。このようにして記録媒体114上に残った溶媒成分(液体成分)は、記録媒体114のカールだけでなく、画像劣化を招く要因となる。そこで、本例では、各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kからそれぞれ対応する色インクが記録媒体114上に打滴された後、溶媒乾燥ユニット142a、142bの熱風乾燥器によって、溶媒成分を蒸発させ、乾燥を行っている。
インク打滴部108に続いて定着部110が設けられている。インク打滴部108の圧胴(描画ドラム)126cと定着部110の圧胴(定着ドラム)126dとの間には、これらに対接するように渡し胴124dが設けられている。これにより、インク打滴部108の圧胴126cに保持された記録媒体114は、各色インクが付与された後に、渡し胴124dを介して定着部110の圧胴126dに受け渡される。
定着部110には、圧胴126dの回転方向(図10において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126dの表面に対向する位置に、インク打滴部108による印字結果を読み取る印字検出部144、加熱ローラ148a、148bがそれぞれ設けられている。
印字検出部144は、インク打滴部108の印字結果(各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kの打滴結果)を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
加熱ローラ148a、148bは、所定の範囲(例えば100℃〜180℃)で温度制御可能なローラであり、加熱ローラ148a、148bと圧胴126dとの間に挟みこまれた記録媒体114を加熱加圧しながら、記録媒体114上に形成された画像を定着させる。加熱ローラ148a、148bの加熱温度は、処理液又はインクに含有されているポリマー微粒子のガラス転移点温度などに応じて設定することが好ましい。
定着部110に続いて排紙部112が設けられている。排紙部112には、画像が定着された記録媒体114を受ける排紙胴150と、該記録媒体114を積載する排紙台152と、排紙胴150に設けられたスプロケットと排紙台152の上方に設けられたスプロケットとの間に掛け渡され、複数の排紙用グリッパを備えた排紙用チェーン154とが設けられている。
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッドの構造について説明する。各ヘッド130、136、140C、140M、140Y、140Kの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
図11(A) はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図11(B) はその一部の拡大図である。また、図12はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図13は記録素子単位となる1チャネル分の液滴吐出素子(1つのノズル51に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図11中のA−A線に沿う断面図)である。
記録媒体114上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図11に示したように、インク吐出口であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影(正射影)される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体114の送り方向(矢印S方向;副走査方向)と略直交する方向(矢印M方向;主走査方向)に記録媒体114の全幅Wmに対応する長さ以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図11(A) の構成に代えて、図12に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体114の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており(図11(A)、(B) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル51への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)54が設けられている。なお、圧力室52の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図13に示したように、ヘッド50は、ノズルプレート51P、流路板52P、及び振動板56等を積層接合した構造から成る。
ノズルプレート51Pは、ヘッド50のノズル面(インク吐出面)50Aを構成し、各圧力室52にそれぞれ連通する複数のノズル51が2次元的に形成されている。
流路板52Pは、圧力室52の側壁部を構成するとともに、共通流路55から圧力室52にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口54を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図13では簡略的に表示しているが、流路板52Pは一枚又は複数の基板を積層した構造である。
振動板56は、圧力室52の一壁面(図13の上面)を構成するとともに、ステンレス鋼(SUS)やニッケル(Ni)導電層付きのシリコン(Si)などの導電性材料から成り、各圧力室52に対応して配置される複数のアクチュエータ(ここでは、圧電素子)58の共通電極を兼ねる。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様も可能であり、この場合は、振動板部材の表面に金属などの導電材料による共通電極層が形成される。
振動板56の圧力室52側と反対側(図13において上側)の面には、各圧力室52に対応する位置に圧電体59が設けられており、該圧電体59の上面(共通電極を兼ねる振動板56に接する面と反対側の面)に個別電極57が形成されている。この個別電極57と、これに対向する共通電極(本例では振動板56が兼ねる)と、これら電極間に挟まれるように介在する圧電体59とによりアクチュエータ58として機能する圧電素子が構成される。圧電体59には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電材料が好適に用いられる。
各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
アクチュエータ58の個別電極57と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル51からインクが吐出される。インク吐出後、アクチュエータ58の変位が元に戻る際に、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に再充填される。
上述した構造を有するインク室ユニット53を図14に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度ψを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
すなわち、主走査方向に対してある角度ψの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPNはd× cosψとなり、主走査方向については、実質的に各ノズル51が一定のピッチPNで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり例えば1200個(1200ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図14に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル51-11 、51-12 、51-13、51-14 、51-15 、51-16を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36を1つのブロック、…として)、記録媒体114の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16を順次駆動することで記録媒体114の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では、記録媒体114の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータの変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
〔液体供給系の構成〕
図15はインクジェット記録装置100におけるインク供給系の構成を示した概要図である。なお、インク供給系について説明するが、処理液を打滴する場合には同様な供給系を設けてもよい。
インクタンク60はヘッド50にインクを供給する基タンクである。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
図15に示したように、インクタンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下とすることが好ましい。図15には示さないが、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置100には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングワイパ66とが設けられている。これらキャップ64及びクリーニングワイパ66を含むメンテナンスユニット(回復手段)は、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aをキャップ64で覆う。
クリーニングワイパ66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬワイパ移動機構によりヘッド50のノズル面50A(ノズルプレート表面)に摺動可能である。ノズルプレート表面にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングワイパ66をノズルプレートに摺動させることでノズル面を拭き取る。
印字中又は待機中において、特定のノズルの使用頻度が低くなり、ノズル近傍のインク粘度が上昇した場合、その劣化インクを排出すべくキャップ64(インク受けとして兼用)に向かって予備吐出(空打ち)が行われる。
ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(アクチュエータ58の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、アクチュエータ58を動作させ、粘度上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。
また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているクリーニングワイパ66等のワイパによってノズルプレート表面の汚れを清掃した後に、このワイパ摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。
その一方で、ノズル51や圧力室52に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記空打ちではインクを吐出できなくなる。このような場合、ヘッド50のノズル面50Aに吸引手段たるキャップ64を当接させて、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク又は増粘インク)を吸引する。かかる吸引動作によって吸引除去されたインクは回収タンク68へ送られる。回収タンク68に集められたインクは、再利用してもよいし、再利用不能な場合は廃棄してもよい。
上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きいため、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出による回復を行うことが好ましい。なお、上記の吸引動作は、ヘッド50へのインク初期装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも行われる。 なお、処理液を打滴する場合について説明したが、本発明はこのような場合に特に限定されない。処理液を周知の塗布技術により、塗布してもよい。
本発明は、本明細書において説明した例や図面に図示された例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行ってよいのはもちろんである。
なお、本発明は、本明細書において説明した例や図面に図示された例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行ってよいのはもちろんである。
10、100…画像形成装置、20…制御部、21…記憶部、22…通信インターフェース、31…給紙部、32…処理液付与部、33…処理液乾燥部、34…インク付与部、35…インク乾燥部、36…定着部、37…搬送部、38…排紙部、39…給液部、201…インク付与量算出部、202…インク付与タイミング決定部、203…変形特性情報取得部、204…記録媒体情報取得部、205…処理液付与情報取得部、206…変形量特定部、207…画像データ拡縮処理部