図1は、本発明の実施の一形態である印刷装置1の構成を模式的に示す図である。本発明に係る印刷方法は、印刷装置1で処理される。印刷装置1は、オフセット印刷方法を用いた印刷装置である。オフセット印刷方法は、印刷版7上に塗布されたインキをブランケット8に転写した後、さらに基板などの被印刷物9に転写する方法である。
印刷版7は、形状は特に限定されず、平板状であってもよいし、円胴に巻きつける形状であってもよいが、補正機構の簡便性から平版の方が好ましい。印刷版7の例としては、たとえばオフセット印刷に用いられる凹版、凸版、あるいは、凹凸がほとんどない平版を用いることができる。
ブランケット8は、繰り返し変形を行うため、弾性的に変形可能であることが必要である。さらに、ブランケット8の表面は、被印刷物9にインキを転写するために、被印刷物9よりも撥水性が高いことが求められ、たとえば表面がシリコンゴムである一般的なブランケットを使用することができる。
被印刷物9は、透明な平板状の基板、たとえば種々のパネル用のカラーフィルタ膜もしくはブラックマトリクスの基板、あるいは、トランジスタ素子をはじめとする種々の素子用の透明電極膜、配線形成、もしくは電子部品の基板である。
インキの材料は、特に限定されないが、用途によって、主成分をたとえば配線材料、透明電極材料、レジスト、絶縁材料、および着色材料などの材料の中から選択した上で、一般に知られる表面張力および粘度の調整方法を適用したものを利用することができる。さらに、沸点の異なる複数の溶媒を混合することによって、ブランケット8上でのインキの表面張力を調整し塗布性を改善したり、乾燥時間を調整して、プロセスマージンを改善したり、あるいは粘性を調整して、ブランケット8の伸縮時のパターン精度を維持することも可能である。
図1に示した印刷装置1は、平版の印刷版7および平版のブランケット8を用いる印刷装置である。複雑な補正を精密に行う補正機構を配置するには、回転機構を必要とし、かつ内部取り付けに制約の大きい円筒状よりも平板の印刷版の方が好ましい。さらに、必要に応じて実施する位置ずれ量を計測するためのカメラなどの撮影装置の取り付け、および計測の容易性からも、円筒状よりも平板印刷版の方がより好ましい。
印刷装置1は、印刷版定盤11、被印刷物定盤12、ブランケット定盤13、可動ステージ14、インキ塗布装置15、版補正装置16および制御部20を含んで構成される。印刷版定盤11は、印刷版7を載置する。被印刷物定盤12は、被印刷物9を載置する。ブランケット定盤13は、接着面でブランケット8を接着する。ブランケット定盤13は、図示しないブランケット昇降装置によって昇降する。
このように、印刷版7は、平板であるので、印刷版常盤11も平板となり、線形補正を含む非線形補正機構を設けることが容易になり、より高精度の補正を安価な補正機構で行うことができる。位置ずれ量を計測するカメラなどの撮影装置の設置も容易に行うことが可能になる。
可動ステージ14は、印刷版定盤11および被印刷物定盤12を載置し、図示しない駆動部によって駆動され、印刷版定盤11または被印刷物定盤12をブランケット定盤13の下方に移動することができる。ブランケット定盤13は、可動ステージ14によって移動される印刷版定盤11および被印刷物定盤12に対して相対的に移動可能である。インキ塗布装置15は、印刷版定盤11の上方に配置され、印刷版定盤11に載置される印刷版7の上部を移動し、印刷版7にインキを塗布する。
成分分割手段、算出手段および第2の算出手段である制御部20は、たとえば中央処理装置(Central Processing Unit:以下「CPU」という)ならびに制御プログラムおよび制御データを記憶する記憶装置によって構成され、CPUが記憶装置に記憶される制御プログラムを実行することによって、印刷版定盤11、被印刷物定盤12、ブランケット定盤13、可動ステージ14、図示しないブランケット昇降装置およびインキ塗布装置15を制御する。記憶装置は、制御プログラムの他に、CPUが制御を行うために必要なデータなども記憶する。
制御部20は、インキ塗布装置15によって印刷版7にインキを塗布し、可動ステージ14によって、印刷版7を載置した印刷版定盤11をブランケット定盤13の下方に移動する。さらに、図示しないブランケット昇降装置によってブランケット定盤13を下降し、ブランケット定盤13に吸着されたブランケット8に、印刷版7に塗布されたインキを転写する。印刷版7には、画像パターンが形成されており、ブランケット8には、印刷版7から転写されたインキによって、印刷版7に形成された画像ターンと同じ画像パターンが形成される。
さらに、制御部20は、図示しないブランケット昇降装置によってブランケット定盤13を上昇した後、可動ステージ14によって、ブランケット定盤13の下方に被印刷物定盤12を移動する。そして、図示しないブランケット昇降装置によってブランケット定盤13を下降し、ブランケット定盤13に転写されている画像パターンのインキを、被印刷物定盤12に載置されている被印刷物9に転写して印刷する。
図2は、印刷版定盤11の構成の一例を示す図である。印刷版定盤11は、印刷版定盤11の面のうち印刷版7を載置する表面に開口する複数の開口部30が形成されている。各開口部30には、それぞれ、印刷版7を吸着する吸引口31が1つずつ収納されている。吸引口31の位置は、印刷版7の補正点に相当する。
版補正装置16は、複数の吸引口31および複数の可動部32を含んで構成される。可動部32は、吸引口31を印刷版定盤11の表面に対して平行な平面上を可動させる機構であり、予め定める数の吸引口31に設けられる。可動部32が設けられた吸引口31は、各可動部32によって、それぞれ独立に可動する。可動部32の数は、被印刷物9の歪み方あるいは必要な精度に応じて増減すればよい。たとえば被印刷物9の歪みが線形な拡大縮小のみである場合には、印刷版7の4辺のそれぞれ辺に複数個配置すればよいし、被印刷物9の歪みが非線形な歪みの場合は、たとえば数十の位置に分散して配置する必要がある。
非線形補正を行う版補正機構16としては、可動部32を用いて補正するが、たとえば吸引口31に局所的過熱機構たとえばレーザ照射機を設け、局部の温度を上昇させて補正してもよい。あるいは、印刷版7の四辺を保持し、引っ張る力を場所によって個別に変化させるように構成して補正してもよい。版補正機構16および制御部20は、補正手段および印刷版補正手段である。
図3は、被印刷物9に印刷された画像の位置ずれを示す図である。図3に示した被印刷物9は、1500mm×1800mmのG6ガラス基板に、32インチワイド液晶テレビジョン(以下「TV」という)用のTFT(Thin Film Transistor)アレイを製造したものを模式的に示している。形成部90bは、被印刷物9に実際に形成されたTFTアレイであり、形成部90aは、被印刷物9に形成する予定であった設計上のTFTアレイの形状および位置を示している。形成部90aと形成部90bとは、数μmのずれが生じている。図3に示した例では、実際に形成された形成部90bの形状を模式化して示しているので単純な形状であるが、実際には非線形成分が含まれた複雑なずれが生じている。
さらに、図3に示した被印刷物9は、8面取りのTFTアレイであるが、TFTアレイの四辺形の画像パターンの辺のうち被印刷物9の端に近い辺の周辺では、隣接するTFTアレイの画像パターンがなく、非対称であるために複雑なずれが生じる。すなわち、その周辺付近では、パターン形成のための膜が、エッチングによってすべて除去され、またはすべて残され、かつその面積が大きいために、TFTアレイが隣接する部分に比べて、周辺付近の膜応力による歪みの非対称性が大きくなり、複雑なずれが生じる。
このような位置ずれは、印刷版7に画像パターンを転写したマスク原画パターン像のずれ、画像が形成される膜の内部応力に起因するずれ、画像が形成される膜の膜厚分布、設定温度の微小な誤差に起因する熱膨張差等の要因が複雑に絡み合って形成されるものである。すなわち、このようなずれは、現状の技術では、制御しきれないずれであり、何らかの補正が必要である。
図4は、図3に示した形成部90bの1つを拡大した図である。白丸で示す位置A1、B1、C1、D1およびE1は、形成部90aつまり設計上のTFTアレイの計測点の位置であり、黒丸で示す位置A2、B2、C2、D2およびE2は、形成部90bつまり実際に形成されたTFTアレイの計測点の位置であり、それぞれ白丸で示す位置A1、B1、C1、D1およびE1に対応する。
位置ずれ量の計測は、たとえば被印刷物9内の原点を基準にして、まず、被印刷物9に印刷された画像の各計測点までの距離を計測する。原点は、たとえば中央の特定パターン、あるいは基板端部に形成されるアライメントマークである。次に、前記計測した印刷画像の各計測点までの距離と、設計上の画像における原点から各計測点までの距離との差を、各計測点での位置ずれ量として求めることによって行う。設計上の画像における原点と、被印刷物9に印刷された画像の原点とが異なる位置にある場合は、その差を調整して位置ずれ量とする。
図5は、計測装置および印刷装置1によって実行される第1の印刷処理を示すフローチャートである。計測手段である図示しない別置きの計測装置は、カメラなどの撮影装置によって撮影し、撮影した画像から画像処理を行うことによって位置ずれ量を計測する。あるいは印刷装置1に同様のカメラなどの撮影装置を設け、画像処理などの処理機能を制御部20に設けることによって印刷装置1で行うことも可能である。計測装置は、操作者によって、計測の開始指示を受けると、ステップA1に移る。
ステップA1およびステップA2は、事前行程である。事前行程では、印刷装置1によって被印刷物9に印刷を行う前に、被印刷物9に形成されている画像パターンと設計上の画像パターン、すなわち被印刷物9の予め定める位置に形成されるべき画像パターンとの位置ずれ量を、複数の被印刷物9の複数の計測点で計測する。さらに、計測された位置ずれ量に基づいて各補正点での補正量を算出し、算出した補正量を表す補正量データを生成する。そして、生成した補正量データを印刷装置1の制御部20の記憶装置に1つのレシピ(以下「補正データ」ともいう)として記憶する。ステップA3〜ステップA8は、すでに画像パターンが印刷されている被印刷物9ごとに、印刷版7に形成されている画像パターンを重ね合わせて印刷する印刷工程である。
計測ステップであるステップA1では、計測装置は、被印刷物9(以下「基板」ともいう)に形成された実際の画像パターン、たとえば図4に示した形成部90bの画像パターン(以下単に「画像」ともいう)と、設計上の画像パターン、たとえば図4に示した形成部90aの画像パターン(以下「基準画像」ともいう)とのずれ量を計測する。
具体的には、図4に示した例では、まず画像が印刷された最初の基板9について、印刷位置A1から位置A2へのシフト量XA1およびYA1、位置B1から位置B2へのシフト量XB1およびYB1など、基板9内の所定位置、たとえば位置A1,B1,C1…での位置ずれ量を計測する。XA1,XB1は、XY座標におけるX軸方向の位置ずれ量であり、YA1,YB2は、Y軸方向の位置ずれ量である。続いて、第2の基板9についても同様に計測する。このようにして、n枚の基板9について所定位置での位置ずれ量を計測する。ここに、「n」は自然数である。計測装置は、計測した位置ずれ量を表すデータを印刷装置1に、たとえばネットワークを介して、あるいは記録媒体を介して送る。
算出ステップおよび成分分割ステップであるステップA2では、印刷装置1が計測装置からずれ量を表すデータを受け取ると、制御部20は、ずれ量データ処理を行い、処理結果を格納する。ずれ量データ処理では、計測したn枚の基板9についての位置ずれ量から、所定位置ごと、つまり補正点ごとの位置ずれ量の平均を算出し、算出した平均値に基づいて、各所定位置での補正量を算出する。平均は、単純平均でもよいが、特異な位置ずれを示すデータを除いて平均値を算出する等、それぞれの製造工程での事情を反映した算出方法での平均でもよい。具体的には、所定位置、たとえば位置A1,B1,C1…について、それぞれ、X軸方向およびY軸方向の平均値XA0およびYA0,XB0およびYB0,XC0およびYC0…が算出される。
これらのデータ、XA0およびYA0,XB0およびYB0,XC0およびYC0…は、非線形歪に起因する非線形成分と、アライメント位置合せ誤差および熱膨張差などに起因する線形成分とを含んでいる。線形成分の誤差は、X成分、Y成分および回転成分(以下「θ成分」ともいう)からなる。これらのデータは、各成分に分離され、たとえば回転成分θA0,θB0…、線形成分XA0LおよびYA0L,XB0LおよびYB0L…、および非線形成分XA0NLおよびYA0NL,XB0NLおよびYB0NL…に分離され、補正データとして、制御部20の記憶装置に格納つまり記憶される。
基板9の補正データは、製造工程の中に複数の印刷工程が含まれる場合、印刷工程ごとに位置ずれ量を計測して、それぞれの印刷工程で補正する方が、重ね合わせの精度が上がり好ましい。しかし、経験的に位置ずれ量の変化量が僅かであり、必要とされる精度の許容範囲内であることがわかっていれば、複数の印刷工程のうち、いくつかの印刷工程をまとめて、必要とする工程の後に位置ずれ量を計測して補正してもよい。
通常の電子デバイス製造に用いられるフォト工程によって所定の画像パターンを形成した後に、本発明に係る印刷方法あるいは印刷装置を用いて、基板9に画像を形成する場合、すべての基板9は、外見上では、同じ工程を経ている。しかしながら、使用するフォトマスク、あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)装置などの使用成膜装置の違いによって、位置ずれ量が異なる場合がある。その場合には、ある特定のフォトマスク、あるいは特定の成膜装置の製造条件に基づいてグループ分けを行い、そのグループごとに1つの補正データを生成し、それぞれの補正データに基づいて補正する方が、重ね合わせ精度が良くなり、より好ましい。
印刷版7については、面積の小さい印刷版あるいは設計上での基準画像との位置ずれ量が少ない場合などを除いて、基準画像からの位置ずれ量と要求される重ね合わせ精度とから判断して、必要があれば、計測ステップであるステップA1に、印刷版7に形成された画像についても、設計上での基準画像との位置ずれ量を計測し、計測した位置ずれ量に基づいて補正量を算出して、補正データとして保存する第2の計測ステップを含めてもよい。そして、補正を行う際に、前記算出した被印刷物9の補正量と合算して、全体として、版補正機構16による補正量を決定してもよい。さらに、補正量および版補正機構16の駆動条件は、シミュレーション、および必要に応じて試し印刷によって決定され、決定された補正量および版補正機構16の駆動条件などの情報は、制御部20の記憶装置に記憶される。
補正ステップであるステップA3では、制御部20は、印刷版7が印刷版定盤11に載置されると、版補正機構16の吸引口31によって印刷版7を吸着する。そして、制御部13の記憶装置に記憶される補正データが示す補正量に基づいて、吸着した印刷版7を可動部32によって引っ張りあるいは縮めて、位置ずれを補正する。すなわち、印刷版7に形成されている画像の位置を補正する。印刷版7に形成された画像を補正した後、図示しない印刷版保持機構、たとえば真空吸着あるいはクランプ機構などによって、印刷版7を固定して保持する。被印刷版9に画像パターンが印刷されていないときは、位置ずれ量を「0」つまり補正量を「0」とする。すなわち、印刷版7に対する版補正機構16による補正を行うことなくステップA4に進む。印刷版7の画像と設計上の画像との位置ずれ量が大きい場合には、上述した第2の計測ステップで計測した位置ずれ量も用いて補正する。
このように、図5に示したステップA1では、被印刷物9に第2の画像パターンが印刷されていないときは、計測した位置ずれ量を「0」とするので、被印刷物9に何も印刷されていない場合にも、位置ずれの少ない印刷をすることができる。そして、被印刷物9に重ね合わせられる画像が形成されていない最初の画像形成時には、印刷版7に形成された画像を設計上の画像を元に位置ずれ量を算出することによって、設計値に近い画像形成が可能になり、その後のデバイス製造において高精細な重ね合わせが可能になる。
ステップA4では、制御部20は、インキ塗布装置15によって印刷版7上に所定のインキを塗布する。ステップA5では、制御部20は、図示しない駆動部によって移動ステージ14を駆動して、印刷版定盤11をブランケット定盤13の下方(以下「印刷ステージ」という)まで移動する。そして、図示しないブランケット昇降装置によってブランケット定盤13を下降させ、ブランケット8を所定の圧力で印刷版7に押圧した後、ブランケット定盤13を上昇させることによって、印刷版7に塗布されたインキによって形成された画像をブランケット8に転写する。
ステップA6では、制御部20は、図示しない駆動部によって移動ステージ14を駆動して、被印刷物9が載置された被印刷物定盤12を印刷ステージまで移動する。そして、図示しないブランケット昇降装置によってブランケット定盤13を下降させ、ブランケット8を所定の圧力で被印刷物9に押圧した後、ブランケット定盤13を上昇させることによって、ブランケット8に転写されたインキによる画像を被印刷物9に転写した後、第1の印刷処理を終了する。ステップA3〜ステップA6は、補正印刷ステップである。
被印刷物9に転写されたインキは、必要に応じて所定温度で焼成され、所望の画像パターン、たとえばデバイス構成層が被印刷物9に形成される。
図5に示した印刷方法のフローチャートでは、ステップA1での位置ずれ量の計測およびステップA2での計測した位置ずれ量に基づく補正量の算出を、印刷装置1の制御部20によって行ったが、印刷装置1への負荷が大きい場合は、印刷装置1とは別の検査装置によって行ってもよい。別の検査装置で行う場合は、検査装置で計測した位置ずれ量に基づいて算出された補正量を表す補正データを、検査装置から印刷装置1に入力し、制御部20の記憶装置に記憶しておく。
印刷装置1を用いて、以下の条件で行なった第1の印刷例について説明する。印刷版7は、水なし平版であり、パターン領域の大きさが巾600mm×長さ1000mm×厚1mmである。ブランケット8は、シリコンゴムまたは基布であり、大きさが巾650mm×長さ1050mm×厚み2mmである。被印刷物9は、透明無アルカリガラスの基板であり、大きさが巾650mm×長さ1050mm×厚0.7mmである。インキ材料は、ノボラック系レジストインキである。
上述した図示しない別置きの計測装置によって、複数の被印刷物9の画像の位置ずれ量を50mm間隔で計測し、計測した位置ずれ量を、非線形成分と線形成分とに分け、非線形成分と線形成分とに分けた位置ずれ量に基づいて算出した補正量の補正データを、予め印刷装置1の制御部20の記憶装置に保存つまり記憶しておく。制御部20は、記憶装置に記憶される補正量を版補正機構16に指示する。版補正機構16は、制御部20から指示される補正量だけ印刷版7の補正を行う。
その後、制御部20は、印刷版7を真空吸着固定した後、インキ塗布装置15によってレジストインキを塗布する。次に、ブランケット8に印刷版7に塗布されたレジストインキによって形成される画像を転写し、さらに、その画像をカラス基板9に転写する。ブランケット8に転写された画像とガラス基板9の下地画像、つまりガラス基板9にすでに印刷されている画像との位置合せは、たとえばアライメントカメラによって撮影した撮影画像に基づいて、被印刷物定盤12の位置を微調整することによって行うことができる。
第1の実施例では、印刷装置1は、±0.1〜10μmの非線形成分を含む±0.1〜50μmの位置ずれ量がある画像を、印刷版9で補正を行うことによって、±15μm以下の重ね合わせ精度で被印刷物9に印刷することができた。
さらに、印刷装置1を用いて、以下の条件で行なった第2の印刷例について説明する。部材、つまり印刷版7、ブランケット8、被印刷物9およびインキ材料は、第1の印刷例と同じである。第2の印刷例では、第1の印刷例と同様に、制御部20は、複数の被印刷物9から求められた補正データ、つまり被印刷物9に起因する補正データを記憶装置に記憶している。さらに、制御部20は、印刷版7に形成されている画像と設計上の画像との位置ずれ量から算出された印刷に起因する補正データも記憶装置に記憶している。これらの2つの補正データに基づいて、版補正機構16を用いて印刷版7を補正する。
ここで、印刷版7の画像とその設計上の画像との位置ずれ量の計測は、被印刷物9での計測と同様に、別置きの計測装置で、50mm間隔の計測点で事前に計測し、計測した位置ずれ量に基づいて算出した補正量を補正データとして制御部20の記憶装置に記憶させておく。印刷装置1で計測し、計測した位置ずれ量に基づいて算出した補正量を補正データとして制御部20の記憶装置に記憶させておくことも可能である。
また、印刷版7画像の設計上の画像からの位置ずれ量の計測は、1つの画像に対して1枚の印刷版7の画像のみで、そのずれ量を計測することも可能であるが、印刷版7は、印刷版7を構成する材料の厚み分布および画像パターンの焼付け精度などによって、同じ画像を形成しようとした印刷版でも実際に形成されている画像は、数μmレベルでは形成されている位置が異なったものとなっている。したがって、複数枚の印刷版7についての位置ずれ量の平均を取って、その平均の位置ずれ量をその画像を有する印刷版7の位置ずれ量とするほうが、製造するロット全体での位置ずれ量は、相対的に少ないものとなり、より好ましい。1つ1つの印刷版7ごとに個別に計測し、印刷版7ごとの個別の補正データとする方が重ね合わせ的には、より好ましい。印刷版7は、複数の被印刷物9に対して同じものを使用するため、被印刷物9に比べて枚数も多くなく、個別に印刷版7を計測しても、被印刷物9を個別に計測する場合ほどには時間がかからず、生産性の大きな低下にはならない。
第2の実施例では、印刷装置1は、±0.1〜10μmの非線形成分を含む±0.1〜50μmの位置ずれ量がある画像を、±12μm以下の重ね合わせ精度で被印刷物9に印刷することができた。第2の実施例では、印刷装置1は、印刷版7に形成された画像の位置ずれ量も加味して補正しているので、第1の印刷例よりも精度高く印刷することができる。
さらに、印刷装置1を用いて、以下の条件で行なった第3の印刷例について説明する。第3の印刷例は、分割印刷を行う印刷例である。
図6は、分割印刷の概念を説明するための図である。被印刷物9は、領域1〜4の4つの領域に分割されており、領域ごとに、同じ印刷版7によって同じ画像が印刷される。すなわち、被印刷版9には、印刷版7の画像が、各領域に1回ずつ、計4回印刷される。
第3の印刷例では、印刷版7は、水なし平版であり、パターン領域の大きさが巾800mm×長さ950mm×厚1mmである。ブランケット8は、シリコンゴムまたは基布であり、大きさが巾650mm×長さ1050mm×厚み2mmである。被印刷物9は、透明無アルカリガラスの基板であり、大きさが巾1500mm×長さ1600mm×厚0.7mmである。インキ材料は、ノボラック系レジストインキである。
制御部20は、第1の印刷例と同様に、印刷版7および被印刷物であるガラス基板9の位置ずれ量に基づいて印刷版7を補正する。予め計測するガラス基板9の位置ずれ量は、ガラス基板9全体で計測するが、第3の印刷例では、各々の分割領域で、各分割領域内での基準点に対する設計上の画像との位置ずれ量を計測する。基準点は、たとえば画像パターンのアライメントマーク、各分割領域の中央部のマーク、あるいは画像パターンの特定可能なエッジなどの原点であり、基準点をあわせることによって、設計上の画像との位置ずれ量を計測することができる。
さらに、制御部20は、第21の印刷例と同様に、印刷版7を版補正機構16によって補正した後、印刷版7にレジストインキを塗布し、ガラス基板9の領域のうち、まず、領域1へ印刷するため、印刷版7に必要な補正、インク塗布、および印刷版のアライメントを行った後、ブランケット8への転写を行う。次に、領域1のアライメントマークとブランケット8に形成された画像(以下「レジスト画像」ともいう)のアライメントマークとによって位置合せを行った後、ブランケット8に転写されたレジスト画像をガラス基板9に転写する。領域2から領域4についても、同様に印刷する。
第3の実施例では、印刷装置1は、ガラス基板9を4つの領域に分割して印刷するので、誤差の累積などの精度劣化要因を低減することができ、第2の印刷例と同様に、±12μm以下の重ね合わせ精度を確認することができた。
事前行程において、被印刷物9に形成されている画像パターンは、第1の画像パターンであり、被印刷物9の設計上の画像パターン、すなわち被印刷物9の予め定める位置に形成されるべき画像パターンは、第2の画像パターンである。印刷装置1によって印刷を行う印刷工程において、被印刷物9に形成されている画像パターンは、第3の画像パターンであり、印刷版7に形成された画像パターンは、第4の画像パターンであり、印刷版7からブランケット8に転写された画像パターンは、第5の画像パターンであり、印刷版の設計上の画像パターン、すなわち印刷版7の予め定める位置に形成されるべき画像パターンは、第6の画像パターンである。
このように、被印刷物9は、複数の領域に分割され、図5に示したステップA3では、分割された領域単位で補正するので、印刷範囲を相対的に小さくすることができ、精度を向上することができる。したがって、比較的大きな1つの被印刷物9に対し、複数回に分割して印刷する場合に、印刷版7に形成された画像と被印刷物9に形成された画像の位置ずれ量の計測、印刷版7での補正、およびブランケット8での補正を分割単位で実施することによって、高精度な計測が可能になる。分割単位で補正することによって、先の補正誤差、すなわち完全に重ね合わせられない微小なずれの影響を少なくすることができ、補正することができるので、かつ、小面積単位の補正であるので、完全に制御し切れない温度誤差による新たな位置ずれの影響を小さくすることが可能になり、被印刷物9全体としての補正精度を上げることが可能になる。さらに、補正機構は小面積で構成することができるので、その制御が容易になり、かつ補正機構もより簡単に構成することができ、補正機構に要するコストを低減することが可能になる。
本実施例で、領域1〜4に同じ画像を形成する例を示したが、必ずしも同じ画像である必要は無く、それぞれ異なる画像であってもよい。異なる画像とする場合は、領域1〜4の個別計測、および対応する印刷版の個別計測等は必要であるが、小面積印刷による位置ずれ誤差を少なくするという効果が得られる。
さらに、印刷版7に塗布されるインキをブランケット8に転写し、ブランケット8に転写されたインキを被印刷物9に転写することによって、印刷版7に形成された画像パターンを被印刷物9に印刷するにあたって、図5に示したステップA1では、複数の被印刷物9に形成された第1の画像パターンと被印刷物9の予め定める位置に形成されるべき画像パターンとの位置ずれ量を各被印刷物9について複数の計測点で予め計測する。図5に示したステップA2では、図5に示したステップA1で予め計測された位置ずれ量に基づいて補正すべき補正量を補正点ごとに予め算出する。
そして、図5に示したステップA3では、第3の画像パターンが印刷されている被印刷物9に、印刷版7に形成された第4の画像パターンを印刷するとき、各補正点を図5に示したステップA2で算出された補正量に基づいて補正する。
したがって、本発明に係る印刷方法を適用すれば、被印刷物9に印刷される画像の位置ずれを補正して高精細に画像を重ね合わせることができる。特に、大面積デバイスあるいは大型被印刷物で、高精細な重ね合わせを行うことができる。
そして、予め、次の画像が重ね合わせられる画像の設計上でのずれを計測することで、あるいは、複数の被印刷物9について計測した位置ずれ量に基づいて補正量を算出することによって、複数の被印刷物9の印刷を予め決まった補正データの元で、被印刷物1枚ごとに補正し直すことなく印刷が可能になる。したがって、効率よく、かつ、微細な非線形成分補正も実施した高精細な重ね合わせ印刷が可能になる。
したがって、高精細な重ね合わせが要求される電子デバイスの製造に、本発明に係る印刷方法が適用可能になり、かつ、電子デバイスを高歩留まりで製造可能になり、電子デバイス等を安価に製造することできる。
さらに、前記補正点は、印刷版7に設けられる補正点であり、 図5に示したステップA3では、印刷版7に塗布されたインキによって形成された画像パターンのインキをブランケット8に転写する前に、印刷版7の補正点を、図5に示したステップA2で算出された補正量だけ移動することによって、印刷版7に形成された画像パターンを補正する。すなわち、版補正機構16によって補正するので、補正機構の設定が容易になり、より高精細な補正を実施することができる。
さらに、図5に示したステップA2では、図5に示したステップA2で算出された補正量を、位置ずれ量の線形成分による補正量と非線形成分による補正量とに分割する。そして、図5に示したステップA3では、図5に示したステップA2で分割された補正量のうち非線形成分の補正量を補正するので、印刷版7から被印刷版9に転写して印刷することによって生じる平均的位置ずれのうち、非線形成分の補正を行うことができる。そして、より複雑な補正作業を要する線形成分の一部もしくは全部を含む非線形成分の補正を、印刷版7で行うことができ、より簡単な印刷装置1の構成で、再現性良く、かつ効率的に補正を行うことが可能になる。したがって、高精細な重ね合わせが要求される電子デバイスの製造に、本発明に係る印刷方法が適用可能になり、かつ、電子デバイスを高歩留まりで製造可能になり、電子デバイス等を安価に製造することができる。
さらに、図5に示したステップA1では、印刷版7に形成された画像パターンと前記印刷版の予め定める位置に形成されるべき画像パターンとの位置ずれ量を印刷版7の複数の第2の計測点で計測する。図5に示したステップA2では、図5に示したステップA1で計測された被印刷物9の位置ずれ量、および図5に示したステップA1で計測された印刷版7の位置ずれ量に基づいて、補正すべき補正量を補正点ごとに算出するので、印刷版7に形成された画像パターンのずれを補正することができ、高精度の重ね合わせを行うことができる。そして、印刷版7に形成された画像の設計上の基準画像からの位置ずれも含めて補正することができ、より精度の高い補正を行うことができ、特に、大面積印刷および高精細電子デバイスの歩留まりを向上することができる。さらに、個々の印刷版7の補正量と予め算出した被印刷物9の補正量とを用いることによって、特定の印刷版7と特定の被印刷物8とでなければならない等の制約を解消し、生産性を向上することができる。
さらに、印刷版7に塗布されるインキをブランケット8に転写し、ブランケット8に転写されたインキを被印刷物9に転写することによって、印刷版7に形成された画像パターンを被印刷物9に印刷するにあたって、計測装置によって、複数の被印刷物9に印刷された画像パターンと被印刷物9の予め定める位置に形成されるべき画像パターンとの位置ずれ量が各被印刷物9について複数の計測点で予め計測され、制御部20によって、計測装置によって計測された位置ずれ量に基づいて補正すべき補正量が補正点ごとに予め算出される。
そして、版補正機構16および制御部20によって、第3の画像パターンが印刷されている被印刷物9に、印刷版に形成された第4の画像パターンを印刷するとき、各補正点が制御部20によって算出された算出量に基づいて補正される。
したがって、被印刷物9に印刷される画像の位置ずれを補正して高精細に画像を重ね合わせることができる。特に、大面積デバイスあるいは大型被印刷物で、高精細な重ね合わせを行うことができる。
そして、予め、次の画像が重ね合わせられる画像の設計上でのずれを計測することで、あるいは、複数の被印刷物9について計測した位置ずれ量に基づいて補正量を算出することによって、複数の被印刷物9の印刷を予め決まった補正データの元で、被印刷物1枚ごとに補正し直すことなく印刷が可能になる。したがって、効率よく、かつ、微細な非線形成分補正も実施した高精細な重ね合わせ印刷が可能になる。
したがって、高精細な重ね合わせが要求される電子デバイスの製造に、本発明に係る印刷装置が適用可能になり、かつ、電子デバイスを高歩留まりで製造可能になり、電子デバイス等を安価に製造することができる。
さらに、前記補正点は、印刷版7に設けられる補正点であり、版補正機構16および制御部20によって、印刷版7に塗布されたインキによって形成された画像パターンのインキをブランケット8に転写する前に、印刷版7の補正点を、制御部20によって算出された補正量だけ移動することによって、印刷版7に形成された画像パターンが補正される。すなわち、版補正機構16によって補正するので、補正機構の設定が容易になり、より高精細な補正を実施することができる。
さらに、制御部20によって、算出した補正量が、位置ずれ量の線形成分による補正量と位置ずれ量の非線形成分による補正量とに分割され、版補正機構16および制御部20によって、制御部20によって分割された補正量のうち非線形成分の補正量が補正される。したがって、印刷版7から被印刷版9に転写して印刷することによって生じる平均的位置ずれのうち、非線形成分の補正を行うことができる。
さらに、第2の計測手段によって、前記印刷版に形成された第4の画像パターンと前記印刷版の予め定める位置に形成されるべき第6の画像パターンとの位置ずれ量が前記印刷版の複数の第2の計測点で計測され、前記算出手段によって、前記計測手段によって計測された位置ずれ量、および第2の計測手段によって計測された位置ずれ量に基づいて、補正すべき補正量が補正点ごとに算出される。したがって、印刷版7に形成された画像パターンのずれを補正することができ、高精度の重ね合わせを行うことができる。そして、印刷版7に形成された画像の設計上の基準画像からの位置ずれも含めて補正することができ、より精度の高い補正を行うことができ、特に、大面積印刷および高精細電子デバイスの歩留まりを向上することができる。さらに、個々の印刷版7の補正量と予め算出した被印刷物9の補正量とを用いることによって、特定の印刷版7と特定の被印刷物8とでなければならない等の制約を解消し、生産性を向上することができる。
図7は、本発明の実施の他の形態である印刷装置2の構成を模式的に示す図である。本発明に係る印刷方法は、印刷装置2で処理される。図7に示した印刷装置2は、図1に示した印刷装置1で用いる平版の印刷版7および平版のブランケット8の代わりに、円筒状の印刷版7および円筒状のブランケット8を用いる印刷装置である。
印刷装置2は、印刷版定盤211、被印刷物定盤212、ブランケット定盤213、可動ステージ214、図示しないインキ塗布装置、版補正装置216および制御部220を含んで構成される。印刷版定盤211、被印刷物定盤212、ブランケット定盤213、可動ステージ214、図示しないインキ塗布装置、版補正装置216および制御部220は、それぞれ、図1に示した印刷版定盤11、被印刷物定盤12、ブランケット定盤13、可動ステージ14、インキ塗布装置15、版補正装置16および制御部20に対応し、対応する部位についての説明は重複を避けるために省略する。
印刷版定盤211は、印刷版207を巻き付けて保持する。被印刷物定盤212は、被印刷物209を載置する。ブランケット定盤213は、ブランケット208を巻き付けて、印刷版207とブランケット208とが円筒状の表面の一部でお互いに接するように、かつブランケット208と被印刷物219とがお互いに接するように保持する。ブランケット定盤213は、図示しない回転装置によって回転する。図示しない回転装置によってブランケット定盤213が回転することによって、図示しないインキ塗布装置によって印刷版207に塗布されたインキが、印刷版207からブランケット208に転写され、さらにブランケット208に転写されたインキが被印刷版209に転写され、印刷版207に形成された画像が被印刷版209に印刷される。
図8は、本発明の実施のさらに他の形態である印刷装置3の構成を模式的に示す図である。本発明に係る印刷方法は、印刷装置3で処理される。図8に示した印刷装置3は、図1に示した印刷装置1と同様に、平版の印刷版7および平版のブランケット8を用いる印刷装置である。
印刷装置3は、印刷版定盤311、被印刷物定盤312、ブランケット定盤313、可動ステージ314、インキ塗布装置315、版補正装置316、ブランケット補正装置317、計測カメラ318および制御部320を含んで構成される。印刷版定盤311、被印刷物定盤312、ブランケット定盤313、可動ステージ314、インキ塗布装置315、版補正装置316および制御部320は、それぞれ、図1に示した印刷版定盤11、被印刷物定盤12、ブランケット定盤13、可動ステージ14、インキ塗布装置15、版補正装置16および制御部20に対応し、対応する部位についての説明は重複を避けるために省略する。
ブランケット補正装置317は、ブランケット308の周辺部を保持し、制御部320から指示される補正量だけ、ブランケット308を引っ張って拡大、あるいは押圧して縮小することによって、位置ずれ量を補正する。ブランケット補正装置317は、位置ずれ量の線形成分を補正する補正機構である。ブランケット補正装置317がブランケット308を保持する位置は、ブランケット308の補正点に相当する。
第3の計測手段である計測カメラ318は、ブランケット308に転写されたインキによって形成された画像(以下「ブランケット画像」という)を撮影し、撮影したブランケット画像を制御部320に送る。制御部320は、計測カメラ318から受け取ったブランケット画像で位置ずれ量を計測し、計測した位置ずれ量に基づいて補正量を算出し、算出した補正量をブランケット補正装置317に指示して補正する。制御部320および計測カメラ318は、第3の算出手段である。ブランケット補正装置317および制御部320は、ブランケット補正手段および第2の補正手段である。
図9は、計測装置および印刷装置3によって実行される第2の印刷処理を示すフローチャートである。印刷装置3は、キーボードなどの図示しない操作部によって、印刷の開始指示を受けると、ステップB1に移る。ステップB1〜B5は、図5に示したステップA1〜A5と同じであり、重複を避けるために説明は省略する。
第3の計測ステップおよび第2の算出ステップであるステップB6では、制御部320は、ブランケット画像の位置ずれ量を計測する。具体的には、制御部320は、計測カメラ318によってブランケット308に転写されたブランケット画像を撮影し、撮影した画像に基づいて、ブランケット画像の位置ずれ量、すなわち、ブランケット画像が重ねて印刷される被印刷物309の設計上の位置にある画像からの位置ずれ量を計測する。そして、計測した位置ずれ量に基づいて、線形誤差に対する補正量を算出する。印刷版7で補正量のうちの一部の補正量のみを補正し、残余の補正量がある場合には、その残余の補正量を合わせて、ブランケット308で補正する線形成分の補正量を算出する。
ブランケット補正ステップおよび第2の補正ステップであるステップB7では、制御部320は、算出した補正量をブランケット補正機構317に指示し、ブランケット画像を線形補正する。そして、図示しないアライメントカメラによって被印刷物309に印刷された画像を撮影し、撮影した画像のアライメントマークが、ステップB6で撮影したブランケット画像のアライメントマークに一致するように、被印刷物定盤312の位置を調整して位置合わせを行う。
ステップB8では、制御部320は、図示しないブランケット昇降装置によってブランケット定盤313を下降させ、ブランケット308を所定の圧力で被印刷物309に押圧した後、ブランケット定盤313を上昇させることによって、ブランケット308に転写されたインキによる画像を被印刷物309に転写した後、第2の印刷処理を終了する。被印刷物309に転写されたインキは、必要に応じて所定温度で焼成され、所望の画像パターン、たとえばデバイス構成層が被印刷物309に形成される。
上述した実施の形態では、ステップB6で、残余の補正量がある場合は、残余の補正量と合わせて補正量を算出し、ブランケット補正機構317によって補正したが、ステップB6の前に、残余の補正量をブランケット補正機構317によって補正した後、ステップB6で計測を行い、計測した位置ずれ量に基づいて、ブランケット308で補正する線形成分の補正量を算出し、ステップB7で補正してもよい。あるいは、残余の補正量があっても、ブランケット補正機構317による補正は行わずに、ステップB6で計測を行い、計測した位置ずれ量に基づいて、ブランケット308で補正する線形成分の補正量を算出し、ステップB7で補正してもよい。
印刷装置3を用いて、以下の条件で行なった第4の印刷例について説明する。第4の印刷例は、使用する部材および位置ずれ量の測定については、第3の印刷例と同じである。第4の印刷例では、印刷版307には、被印刷物309に形成すべき画像のサイズに対して拡大あるいは縮小されたサイズの画像が形成されている。
制御部20は、第3の印刷例と同様に、印刷版309の画像、および分割領域ごとの画像の位置ずれ量を計測し、補正量を算出する。そして、まず版補正機構316によって補正量の非線形成分について印刷版307を補正して、印刷版307に塗布されたインキをブランケット308に転写する。
次に、計測カメラ318によってブランケット画像を撮影し、撮影したブランケット画像を、被印刷物309に形成すべき画像に対して拡大または縮小する補正量を算出し、算出した補正量をブランケット補正機構317に指示し、ブランケット画像の位置ずれを補正する。さらに、ブランケット画像と、被印刷物309にすでに印刷されている画像とのX軸方向およびY軸方向の位置ずれならびに回転ずれをなくすように、被印刷物定盤312によって被印刷版309の位置を調整した後、ブランケット画像を被印刷物309に転写する。
第4の印刷例では、印刷装置3は、±10μm以下の重ね合わせ精度で被印刷物309に印刷することができた。印刷装置3は、ブランケット308で線形成分補正を行うので、印刷版307からブランケット308への画像転写時のブランケット温度と、ブランケット308から被印刷物309への画像転写時のブランケット温度との温度差、および被印刷物つまり基板309とブランケット308との温度差に起因する線形ずれ量を低減することができ、第3の印刷例よりも高精度で印刷することが可能である。
さらに、印刷装置3を用いて、以下の条件で行なった第5の印刷例について説明する。第5の印刷例は、図示しないが、図3に示した被印刷版9のように、被印刷版309に8個の繰り返し画像が形成されている例である。第5の印刷例は、使用する部材および位置ずれ量の測定については、第3の印刷例と同じである。被印刷版309は、サブ画像パターンである繰返し画像が形成されている場合、画像が形成されている部分と画像間の空きスペースの部分とがあり、TFTアレイなどの場合、中央部の回路の画像と周辺部の回路の画像とでは、画像が大きく異なる。すなわち、形成される画像が異なると、基板の表面に形成される膜などの構成材料が除去されているか量と残存している量との割合が異なるので、非線形歪が大きくなっている。このような場合、版補正機構316による補正は、繰返し画像ごとに行うことによって、画像ごとに位置ずれ量が異なっていても異なる位置ずれ量に応じた補正が可能になる。
このように、被印刷物309に印刷される画像パターンは、複数の同一の繰返し画像から構成され、図9に示したステップB3〜B5,B8では、繰返し画像単位で補正して印刷するので、相対的に小さい印刷版307を用いることができ、精度を向上することができる。したがって、1つの被印刷物309に繰り返し画像が所定の間隔で複数形成されている場合、被印刷物309に形成される画像は、被印刷物309の端部を除き、繰り返し画像ごとに個別の非線形歪を生じるが、類似の非線形歪であることが多い。したがって、少なくとも1つ以上の繰り返し画像単位で補正を行うことによって、被印刷物309全体としては複雑な非線形補正をより簡単な処理、および補正機構で高速かつ高精度に行うことが可能になる。
図10は、印刷版定盤11の他の例を示す図である。図10に示した印刷版定盤11は、複雑な非線形歪を補正するために、繰返し画像周辺部に多くの吸引口31aを配置し、繰返し画像内部の対象性の良い部分には、吸引口31aを比較的少なく配置することによって、制御パラメータを少なくするとともに、高精度に非線形成分の補正を行うことができる。第5の印刷例では、印刷装置3は、図10に示した印刷版定盤11を用いているので、±10μm以下の重ね合わせ精度で被印刷物309に印刷することができた。
さらに、印刷装置3を用いて、以下の条件で行なった第6の印刷例について説明する。第6の印刷例は、使用する部材および位置ずれ量の測定については、第3の印刷例と同じである。第6の印刷例では、印刷版307には、被印刷物309に形成すべき画像のサイズに対して20〜50ppm縮小されたサイズの画像が形成されている。ppmは、100万分の1を表す単位である。画像補正時には、印刷版307に縮小した分の補正量と、計測した位置ずれ量による補正量とを合算した線形補正を行う。
印刷版307およびブランケット308の補正は、引っ張りによって補正をすることは容易に可能であるが、圧縮によって補正をすることは困難である。したがって、印刷版307に形成する画像を予め縮小しておくことによって、引っ張りのみで容易に補正をすることができる。印刷装置3内部の温度分布によって大きな線形伸びあるいは線形縮小が発生するが、第6の印刷例のように、1mサイズのアルミ母材の印刷版307を用いる場合、環境温度が1度異なると、23ppm、たとえば1m長さでは23μm、長さが変化することになる。
20μmを引っ張ることは可能であるが、均一に全体として20μm縮小することは容易でなく、歩留まりを低下させる結果となる。20〜50ppm予め縮小した印刷版307を用いることによって、温度管理精度を緩和することができ、付帯設備に要する投資およびランニングコスト等の負荷等を削減することができる。ブランケット補正機構317との併用によって、温度管理制御の負荷をさらに低減することができる等の効果が期待することができる。
第6の印刷例では、印刷装置3は、印刷版307に、被印刷物309に形成すべき画像のサイズに対して40ppm縮小されたサイズの画像を形成したとき、±10μm以下の重ね合わせ精度で被印刷物309に印刷することができた。20ppm以下の小さい縮小率では、予め縮小させておく効果が少ない。逆に、必要以上に大きな縮小率、たとえば100ppm以上の縮小率では、補正するために大きな力が必要となり、版の変形および制度管理が難しくなる。
このように、印刷版307は、第3の画像パターンが被印刷物309に印刷されるべき大きさよりも縮小された大きさで形成されているので、拡大によって補正することができ、位置ずれ量を正確に補正することができる。さらに、印刷版307の画像が被印刷物309に印刷される画像よりも縮小されているので、線形補正を引っ張り機構で行うことができ、容易に補正することが可能である。
さらに、図9に示したステップB6では、ブランケット308に転写されたインキによって形成される第3の画像パターンの位置ずれ量のうち線形成分の位置ずれ量を被印刷物309の各計測点に対応する位置の計測点で計測する。図9に示したステップB6では、図9に示したステップB6で計測された位置ずれ量に基づいてブランケット308の各計測点で補正すべき第2の補正量を算出する。図9に示したステップB7では、ブランケット308の各計測点の位置を、図9に示したステップB6で算出された第2の補正量だけ移動することによって補正する。
そして、図9に示したステップB3〜B5,B8では、ブランケット308に転写されたインキを被印刷物309に転写するとき、図9に示したステップB6で補正されたブランケット308に転写されているインキを被印刷物309に転写して印刷するので、ブランケット308を介して転写するときの線形成分のずれを減らすことができ、より高精度の重ねあらわせを行うことができる。そして、少なくとも非線形補正を印刷版307で実施した後、最終転写工程であるブランケット308から被印刷物309への転写前に、ブランケット308で線形補正を行うことによって、誤差計測時と印刷時との被印刷物309の温度差による線膨張誤差などの線形誤差、およびブランケット308と被印刷物309との微妙な温度差による膨張差等による位置ずれを解消することが可能になる。
さらに、ブランケット308での補正は線形補正のみであるので、補正機構も引っ張り補正等の簡易な構成で高速に実施することができるので、インキが転写される為、被印刷物309に転写するまでの時間的制約がある。複雑な補正機構を設けることが困難なブランケット定盤313でも容易に設置可能な機構で構成することができるので、より高精細な重ね合わせが可能になる。
このように、前記補正点は、印刷版307およびブランケット308に設けられる補正点であり、図9に示したステップB3では、印刷版307に形成された画像パターンをブランケット308に転写する前に、印刷版307の補正点を、図9に示したステップB2で算出された補正量のうちの一部の補正量だけ移動することによって、印刷版307に形成された画像パターンを補正する。そして、図9に示したステップB7では、画像パターンのインキを印刷版307からブランケット308に転写した後、ブランケット308に転写されたインキによって形成される画像パターンのインキを被印刷物309に転写する前に、ブランケット308の補正点で、図9に示したステップB2で算出された補正量のうち前記一部の補正量を除く残余の補正量だけ移動することによって、ブランケット308に形成された画像パターンを補正する。したがって、画像補正を印刷版307およびブランケット308の2段で行うので、使用する印刷装置3の構成および特徴に合わせることが可能になり、より簡易な方法で、さらに高精度の重ね合わせが可能になる。
さらに、図9に示したステップB6では、画像パターンのインキを印刷版307からブランケット308に転写した後、ブランケット308に転写されたインキによって形成される画像パターンと、被印刷物309に形成されている画像パターンとの位置ずれ量を計測する。そして、計測した位置ずれ量に基づいて、ブランケット308に設けられる第2の補正点ごとに移動すべき線形成分の第2の補正量を算出する。さらに、図9に示したステップB7では、第3の画像パターンが形成されている被印刷物309に、ブランケット308に転写された第5の画像パターンを印刷するとき、各第2の補正点をステップB6で算出された第2の補正量に基づいて補正する。したがって、ブランケット308でもさらに線形成分の補正を行うので、使用する印刷装置3の構成および特徴に合わせることが可能になり、より高精度の重ね合わせが可能になる。
さらに、計測カメラ318によって、第4の画像パターンのインキを印刷版からブランケットに転写した後、ブランケットに転写されたインキによって形成される第5の画像パターンと、被印刷物に形成されている第3の画像パターンとの位置ずれ量が計測され、制御部20によって、計測カメラ318によって計測された位置ずれ量に基づいて、ブランケットに設けられる第2の補正点ごとに移動すべき線形成分の第2の補正量が算出される。そして、ブランケット補正装置317および制御部320によって、第3の画像パターンが形成されている被印刷物309に、ブランケット308に転写された第5の画像パターンを印刷するとき、各第2の補正点が制御部20によって算出された第2の補正量に基づいて補正される。したがって、画像補正をブランケット308でさらに行うので、使用する印刷装置3の構成および特徴に合わせることが可能になり、より高精度の重ね合わせが可能になる。
さらに、図9に示したステップB2では、算出した補正量を、位置ずれ量の線形成分による補正量と非線形成分による補正量とに分割する。図9に示したステップB6では、画像パターンのインキを印刷版307からブランケット308に転写した後、ブランケット308に転写されたインキによって形成される画像パターンと、被印刷物309に形成されている画像パターンとの位置ずれ量を計測する。さらに、図9に示したステップB6では、計測した位置ずれ量に基づいて、ブランケット308に設けられる第2の補正点ごとに移動すべき第2の補正量を算出する。そして、図9に示したステップB3では、図9に示したステップB2で分割された補正量のうち、非線形成分の補正量、または線形成分の補正量の一部と非線形線分の補正量とを加算した補正量を移動することによって、印刷版307に形成された画像パターンを補正する。図9に示したステップB7では、前記残余の補正量を移動し、さらに図9に示したステップB6で算出された第2の補正量を移動することによって、ブランケット308に形成された画像パターンを補正する。したがって、線形成分の一部および非線形成分の補正、または非線形成分の補正を、印刷版307で行い、さらにブランケット308でも線形成分の補正を行うので、使用する印刷装置3の構成および特徴に合わせることが可能になり、より簡易な方法で、さらに高精度の重ね合わせが可能になる。
さらに、前記補正点は、印刷版307およびブランケット308に設けられる補正点であり、版補正機構316によって、印刷版307に塗布されたインキによって形成された画像パターンのインキをブランケット308に転写する前に、印刷版307の補正点を、制御部320によって算出された補正量のうちの一部の補正量だけ移動することによって、印刷版307に形成された画像パターンを補正する。そして、ブランケット補正機構317によって、画像パターンのインキを印刷版307からブランケット308に転写した後、ブランケット308に転写されたインキによって形成される画像パターンのインキを被印刷物309に転写する前に、ブランケット308の補正点で、制御部320によって算出された補正量のうち前記一部の補正量を除く残余の補正量を移動することによって、ブランケット308に形成された画像パターンを補正する。したがって、画像補正を印刷版307およびブランケット308の2段で行うので、使用する印刷装置3の構成および特徴に合わせることが可能になり、より簡易な方法で、さらに高精度の重ね合わせが可能になる。
さらに、制御部320によって、算出した補正量が、位置ずれ量の線形成分による補正量と非線形成分による補正量とに分割され、計測カメラ318によって、画像パターンのインキを印刷版307からブランケット308に転写した後、ブランケット308に転写されたインキによって形成される画像パターンと、被印刷物309に形成されている画像パターンとの位置ずれ量が計測され、制御部320によって、計測カメラ318によって計測された位置ずれ量に基づいて、ブランケット308に設けられる第2の補正点ごとに移動すべき第2の補正量が算出される。そして、版補正機構316によって、制御部320によって分割された補正量のうち、非線形成分の補正量、または線形成分の補正量の一部と非線形線分の補正量とを加算した補正量が移動されることによって、印刷版307に形成された画像パターンが補正され、ブランケット補正機構317によって、前記残余の補正量が移動され、さらに制御部320によって算出された第2の補正量が移動されることによって、ブランケット308に形成された画像パターンが補正される。したがって、線形成分の一部および非線形成分の補正、または非線形成分の補正を、印刷版307で行い、さらにブランケット308でも線形成分の補正を行うので、使用する印刷装置3の構成および特徴に合わせることが可能になり、より簡易な方法で、さらに高精度の重ね合わせが可能になる。
上述した印刷装置3では、版補正機構316によって印刷版307を補正し、かつブランケット補正機構317によってブランケット308を補正したが、版補正機構316による印刷版307の補正を行わずに、図9に示したフローチャートのステップB2で算出した線形線分の補正量を、ブランケット補正機構317によってブランケット308で補正することも可能である。
このように、前記補正点は、ブランケット308に設けられる補正点であり、図9に示したステップB7では、画像パターンのインキを印刷版307からブランケット308に転写した後、ブランケット308に転写されたインキによって形成される画像パターンを被印刷物309に転写する前に、ブランケット308の補正点を、図9に示したステップB2で算出された補正量だけ移動することによって、に形成された画像パターンを補正する。すなわち、ブランケット補正機構317によって補正するので、容易に、かつ高精細な補正を実施することができる。
さらに、前記補正点は、ブランケット308に設けられる補正点であり、ブランケット補正機構317および制御部320によって、画像パターンのインキを印刷版307からブランケット308に転写した後、ブランケット308に転写されたインキによって形成される画像パターンを被印刷物309に転写する前に、ブランケット308の補正点が、制御部320によって算出された補正量だけ移動されることによって、ブランケット308に形成された画像パターンが補正される。すなわち、ブランケット補正機構317によって補正するので、容易に、かつ高精細な補正を実施することができる。
印刷装置1〜3のうちのいずれかによって製造された被印刷物、たとえばTFTパネルのレジスト印刷を表示装置に適用することができる。印刷装置3を用いて製造した被印刷物309を適用した表示装置について、以下の条件で行なった第7の印刷例について説明する。第7の印刷例は、使用する部材、位置ずれ量の測定および補正について、第3の印刷例と同じ条件で、表示装置、たとえばTFTパネルのレジスト印刷を被印刷物309に印刷した例である。印刷装置3を用いて製造したTFTパネルについて、所定の特性、たとえば配線抵抗、画素電極抵抗、およびリーク特性などのデバイス特性が発揮されていることを確認した。印刷装置3を用いることによって、TFTパネル製造工程で最も高価な露光装置を削減することができ、初期投資の削減、減価償却費の削減、メンテナンスコストの削減による製造原価の低減を期待することができる。
このように、本発明に係る印刷方法を用いて製造され、または印刷装置1〜3のいずれか1つを用いて製造された被印刷物を用いるので、高精度な重ね合わせを可能にすることができ、歩留まり良く、安価な製造コストで製造することができるTFTパネル等用の表示装置を提供することができる。すなわち、安価な印刷装置で、大幅に製造プロセスを短縮し、かつ、デバイス性能を確保するに必要な高精度な重ね合わせが可能になるので、信頼性のある安価な表示装置を提供することが可能になる。